以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
(第1実施形態)
本発明の一例である第1実施形態の電池パック1について図1〜図5を参照しながら説明する。電池パック1は、例えば、内燃機関と電池に充電された電力によって駆動されるモータとを組み合わせて走行駆動源とするハイブリッド自動車、モータを走行駆動源とする電気自動車等に用いられる。電池パック1に含まれる複数の電池セル2は、例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池、有機ラジカル電池である。
電池パック1は、通電可能に接続される複数の電池セル2からなる組電池と、密閉空間を形成するパックケース3と、パックケース3内で空気を循環させる送風手段と、を備える。パックケース3は、複数の電池セル2、及び送風手段の一例である送風機6を収容する筐体である。
電池セル2は、外装ケースから外部に突出する正極端子及び負極端子を備える。外装ケースから露出する電極端子であって、隣り合う電池セル2における異極の端子間は、バスバー等の導電部材によって電気的に接続される。バスバーと電極端子との接続は、例えばネジ締めや、溶接等により行われる。したがって、バスバー等によって電気的に接続された複数の電池セル2の両端に配された総端子部は、外部から電力が供給されたり、他の電気機器へ向けて放電したりする。
電池パック1は、電池管理ユニット(Battery Management Unit)を備える。電池管理ユニットは、少なくとも電池セル2の蓄電量を管理する機器であり、電池セル2に係る制御を行う電池制御ユニットの一例である。また、電池管理ユニットは、電池セル2に関する電流、電圧、温度を監視するとともに、電池セル2の異常状態、漏電等を管理する機器であってもよい。
また、電池管理ユニットには、電流センサによって検出された電流値に係る信号が入力される。電池管理ユニットは、車両ECUと同様に入力回路、マイクロコンピュータ、及び出力回路を備えている。マイクロコンピュータが有する記憶手段には、電池情報がデータとして随時蓄積されている。蓄積される電池情報のデータは、例えば、電池パック1における電池電圧、充電電流、放電電流及び電池温度等である。また、電池管理ユニットは、送風機6のモータ60の作動を制御する機器として機能することができる。電池管理ユニットは、車両に搭載された各種の電子制御装置と通信可能に構成されている。
パックケース3の内部には、送風機6によって強制的に流れる流体の循環経路をなす循環通路7が形成されている。循環通路7は、パックケース3の内部に形成され、流体が循環する通路である。循環通路7は、送風機6により送風された空気が各電池セル2と熱交換した後、送風機6に吸い込まれる一連の流体の主流経路をなす。すなわち、パックケース3の内部において、流体が送風機6から流出する箇所は一箇所であり、流体が送風機6に流入する箇所も一箇所である。したがって、パックケース3の内部の流体は、必ず送風機6を経由して循環通路7を循環することになる。
図1に図示するように、循環通路7は、少なくとも吸入通路74、吹出し通路70、天壁側通路71、電池通路72及び集合通路73を結ぶ一連の流通経路によって構成される。吹出し通路70は、送風機6によって吐出される流体が通る流体吐出通路を構成する。吸入通路74、集合通路73は、吹出し通路70から吐出された流体が複数の電池セル2と熱交換して冷却した後に流通する通路を構成する。
パックケース3は、内部の空間を包囲する複数の壁からなる箱形を呈し、例えばアルミニウム板または鉄板の成型品で形成される。パックケース3は、例えば、6面(例えば、側壁34、35、天壁30、底壁33を含む)を有するケースである。対向する側壁は、2組あり、各組の側壁は、他の組の側壁に対して直交する関係にある。天壁30と底壁33は、対向する面をなし、2組の側壁に対して直交する。
また、パックケース3は、複数のケース体を接合して組み立てることにより、内部に箱体状の空間を形成して作製することができる。また、パックケース3の複数の壁のうち、所定の壁の表面には、放熱面積を大きくするために複数の凸部または凹部を形成するようにしてもよい。
複数の電池セル2は、パックケース3の内部空間において複数のセル積層体を構成する。複数のセル積層体を構成する複数の電池セル2は、それぞれ所定の間隔をあけて設置され、隣り合う電池セル2間には、流体が流通可能な隙間である電池通路72が形成される。電池通路72は、セル間に設けられたスペーサ部材によって形成される。このスペーサ部材は、セル間に挟まれて支持されることにより、セル間に流体が上下方向に流れる通路を形成する。すなわち、各電池通路72は、セル間において、側壁側が閉じられて天壁30側が天壁側通路71に向けて開放し、底壁33側が集合ダクト83に接続されて、集合通路73に通じる。これにより、各電池通路72は、天壁30側で流体の入口部を備え、底壁33側で集合通路73に集まる流体の出口部を備える。
集合ダクト83は、各電池セル2の下流側端部(下端部)と、吸入用ダクト82内の吸入通路74とを繋ぐダクトである。集合ダクト83は、各電池通路72を流出した流体が底壁33に熱的に接続しうる集合通路73を形成する。換言すれば、集合通路73を流通する流体の熱は、底壁33へ移動しうる。
集合通路73は、各電池通路72の出口部から、吸入通路74までにわたって底壁33に平行に延びる通路であり、吸入用ダクト82及びダクト接続部材80を介して、送風機6の吸込み部61に連通している。天壁側通路71は、天壁30と複数の電池セル2との間に形成される天壁30に平行に延びる通路である。
送風機6は、パックケース3内の流体を循環通路7に循環させる送風手段の一例である。送風機6は、モータ60と、モータ60により回転されるシロッコファンと、シロッコファンを内蔵するファンケーシングとを備える。このファンケーシングは、内部にシロッコファンの吸込み口に通じる空気の吸込み部61を形成する。吸込み部61と吸入用ダクト82内の吸入通路74とは、ダクト接続部材80によって接続されて連通する。ダクト接続部材80は、ファンケーシングと吸入用ダクト82とを連結するアタッチメントである。ダクト接続部材80は、直方体状のチャンバを内部に有しているため、循環流体の流通抵抗を低減することにも寄与している。
送風機6は、ファンの回転軸を天壁30や底壁33に沿う方向に配して、回転軸に沿う方向に流体を吸入し、遠心方向に吹き出すように設置されている。送風機6は、パックケース3の側壁34にモータ60側、すなわち、吸込み部61とは反対側である背面側(モータ60側)を向けて設置されている。
ファンケーシングの吹出し部には、循環通路7の一通路である吹出し通路70を形成する吹出し用ダクト81が接続されている。送風機6の吹出し通路70は、ファンの遠心方向であって、天壁30寄りでこの壁に沿うように延びている。したがって、送風機6によって吹出し通路70を通じて吹き出される空気は、天壁30に沿うように天壁側通路71を進み、さらに天壁側通路71から各電池通路72に向けて流れる。そして、空気は、送風機6の流体吸引力によって、各電池通路72に流入して下方に流れ、各電池通路72の下端部から集合通路73に流入するようになり、さらに空気は吸入通路74、吸込み部61を経て、送風機6に必ず戻ってくる。
また、循環通路7を流れる空気は、各電池通路72を流れるときに、各電池セル2から吸熱したり、各電池セル2を加熱したりする。各電池セル2を冷却したり加熱したりした空気は、それぞれ、集合通路73に集められ、吸入通路74、吸込み部61を通して送風機6に吸入される。また、空気は、パックケース3内を循環する際に、正極端子、負極端子からなる電池セル2の電極端子や、異極端子間を電気的に接続するバスバーにも接触するため、電極端子やバスバーも伝熱手段の一つを構成しうる。
電池セル2は、電流が取り出される出力時及び充電される入力時に自己発熱する。例えば、電池管理ユニットは、電池パック1内の電池セル2の温度を常時モニターし、電池セル2の温度に基づいて送風機6の運転を制御する。電池管理ユニットは、送風機6のモータ60に、最大電圧に対して0%〜100%に含まれる任意の値のデューティ比に制御した電圧を印加して、各ファンの回転数を可変させる。電池パック1では、このデューティ制御によってファンの回転数を変化させることにより、送風機6がもたらす風量を、多段階または無段階的に調節することができる。
電池パック1は、送風機6の吸引力によって吸い込まれるパックケース3の外部の空気をパックケース3の内部に導入する空気導入通路75を備える。電池パック1は、パックケース3を形成する壁を貫通する通路であって、送風機6から吐出された空気の一部がパックケース3の内部から外部へ排出される空気排出通路76を備える。
送風機6に吸い込まれる空気が通る通路は、空気吸入通路(吸入通路74、集合通路73)と空気導入通路75である。空気導入通路75は、パックケース3の外部と送風機6とを連通させる通路である。例えば、空気導入通路75は、吸入通路74や集合通路73よりも通路横断面積が小さい通路である。空気導入通路75は、ダクト接続部材80に接続される給気用ダクト84の内部通路である。空気導入通路75は、電池通路72よりも下流であり、かつ送風機6における吸込み部61よりも上流に位置する特定部位に接続される。したがって、特定部位は、集合通路73、吸入通路74、及び吸込み部61を含む範囲の任意の位置に設定される。
給気用ダクト84の給気導入口は、パックケース3の外部で開口している。給気用ダクト84は、パックケース3の底壁33を貫通してダクト接続部材80の下部とパックケース3の外部とを接続する。開閉装置4による開放状態のときに送風機6の吸引力によって、給気用ダクト84内に吸い込まれた空気は、空気導入通路75を通して送風機6の吸込み部61に導入される。さらに空気は、吹出し通路70から吹き出されることで、循環通路7を流れてパックケース3の内部に取り込まれる。
電池パック1は、検知した温度に応じて空気導入通路75を開放及び閉鎖する開閉装置4を備える。開閉装置4は、空気導入通路75を介したパックケース3の内部への空気の導入を許可及び禁止する空気導入許否手段の一例である。
開閉装置4は、パックケース3の内部に設けられ、パックケース3の内部で空気導入通路75を開放及び閉鎖する。開閉装置4は、予め定めた規定温度に基づいて、空気導入通路75を開放する開放状態と閉鎖する閉鎖状態とに切り替わる機械駆動方式の装置である。したがって、開閉装置4は、温度を検知する感温部を備え、電気を駆動源とする動作ではなく、感温部で検知した温度に基づいて機械構造を動作させて、開放状態と閉鎖状態とに切り替わる。
開閉装置4は、感温部によって検知された温度が規定温度に対して高温であるときと低温であるときとで、その状態が切り替わる装置である。規定温度は、電池セル2が充電、放電等でその能力を発揮できる温度に管理するために設定される温度である。規定温度は、電池セル2がその能力を発揮するために、電池セル2の温度が冷却を必要とする温度の下限値に対して所定温度高い温度に設定される。規定温度は、所定の幅をもつ温度範囲に設定することもできる。開閉装置4は、感温部によって検知された温度が規定温度よりも高温である場合は機械駆動により開放状態に切り替わり、規定温度よりも低い場合は機械駆動により閉鎖状態に切り替わる。
このような機械式の開閉装置4は、予め定めた規定温度により開状態と閉状態とに切り替わるように動作する方式である。つまり、機械式の開閉装置4は、予め定められた温度だけで単純にドア、弁等を開閉する方式である。
開閉装置4は、感温部と、検知した温度に応じて形状変化したり、移動して変位したりする駆動部とを兼ねる機械駆動部40を備える。図2及び図3に示すように、給気用ダクト84は、底壁33及びダクト接続部材80に接続される。給気用ダクト84は、その筒状端部751がパックケース3の内部またはダクト接続部材80の内部に存在するように接続されている。これらの内部に位置する筒状端部751の開口端には、循環通路7と空気導入通路75との接続部位に位置し、開閉装置4によって開閉される空気混入口部750が形成されている。
例えば、開閉装置4には、サーモスタットによって開閉する開閉弁を採用することができる。開閉装置4は、回動軸部を中心として角変位するドア部を有する弁である。図2は開閉装置4による閉鎖状態を図示している。この閉鎖状態では、感温部が検知する温度は規定温度よりも低いため、機械駆動部40は、図2に図示するように、開閉装置4のドア部に対して外力を作用してドア部を押し上げて移動させることができる位置に変位していない。このため、開閉装置4のドア部は、その自重によって筒状端部751の先端を覆う位置で静止し、空気混入口部750に蓋をする状態である。
図3は開閉装置4による開放状態を図示している。この開放状態では、感温部が検知する温度は規定温度よりも高いため、機械駆動部40は、図3に図示するように、開閉装置4のドア部に対して外力を作用してドア部を押し上げて移動可能とする位置に変位する。このため、開閉装置4のドア部は、図3の二点鎖線で図示する位置から実線で図示する位置まで押し上げられて、空気混入口部750を開放する。すなわち、機械駆動部40は、パックケース3内のより内側に移動して、またはより内側に向けて形状変化して、開閉装置4のドア部に外力を働かせてこれを角変位させる。
パックケース3の内部は、送風機6によって循環空気流が形成されているため、空気混入口部750近傍の空気は循環通路7に引き込まれる。この吸引作用により、外部空気は空気導入通路75を通じて空気混入口部750から循環通路7に混入する。このように混入した外部空気は、循環空気とともに循環通路7を循環し、この循環空気のうち、混入した空気量と同等の空気量が空気排出通路76から外部に排気される。
感温部を備える機械駆動部40は、空気導入通路75に存在せず循環通路7に位置するように設置される。したがって、開閉装置4は、外部空気の温度ではなく、循環通路7を流れる循環空気の温度を検知する。
開閉装置4は、空気導入通路75が接続される接続部位(空気混入口部750)よりも循環空気流れの上流である位置に、感温部でもある機械駆動部40を有する。したがって、図3に図示するように、開放状態のときに、外部空気が空気導入通路75を通じてパックケース3内に流入しても、開閉装置4の感温部には、外部空気が直接当たることはなく、感温部は循環空気に接触して循環空気の温度を検知する。
さらに、電池パック1は、開閉装置4が開放状態である場合に、空気導入通路75を通じてパックケース3の内部に流入する空気の流れに沿うように立設された壁部をパックケース3の内部に備える。このパックケース3内で立設する壁部は、前述の筒状端部751によって構成することができる。開閉装置4の機械駆動部40は、筒状端部751の外側に位置するように設けられる。筒状端部751の内側を流れる外部空気は、筒状端部751に沿って指向されるため、筒状端部751が遮蔽壁となり、機械駆動部40には直接接触しない。つまり、開閉装置4の感温部は、壁部によって指向される空気が壁部に沿って流れる側に対して、壁部が間に位置するように反対側に設置される。
前述したように電池パック1は、電池セル2が所定の能力を発揮するためにも、セル温度を適正な温度範囲に制御する必要がある。例えば、セル温度が低温である場合、例えば、感温部の検出温度が30℃未満である場合には、開閉装置4は、空気導入通路75を閉じ、ケース内への空気の出入りはなく、パックケース3の内部には循環通路7を循環する空気流れが形成される。例えば、感温部の検出温度が40℃以上である場合には、開閉装置4は、空気導入通路75を開放して、ケース内への外部空気が流入し、空気排出通路76から排出されるため、パックケース3の内部には循環空気の流れと、給気及び排気の流れとが形成される。
また、開閉装置4は、図4及び図5に図示する他の形態によっても構成することもできる。この形態の開閉装置4は、機械駆動部140がドア部に対して直接接触してドア部を開放状態に角変位させるものではない。図4及び図5に図示する開閉装置4は、ドア部に接続されたワイヤ部材1400等を引っ張ることによって、ドア部を角変位させる点が前述の開閉装置4とは相違する。
図4は閉鎖状態を図示している。この閉鎖状態では、感温部が検知する温度は規定温度よりも低いため、機械駆動部140は変位していない。開閉装置4のドア部は、その自重によって筒状端部751の先端を覆う位置で静止し、空気混入口部750に蓋をする状態である。
図5は開放状態を図示している。この閉鎖状態では、感温部が検知する温度は規定温度よりも高いため、機械駆動部140は、筒状端部751から離れる方向に変位してワイヤ部材1400を引っ張る。ワイヤ部材1400が接続されたドア部は、回転軸部を中心として角変位し、ドア部が空気混入口部750から持ち上がる。これにより、開閉装置4のドア部は、図5の二点鎖線で図示する位置から実線で図示する位置まで押し上げられて、空気混入口部750を開放する。
電池パック1は、パックケース3内で循環する流体の一部が外部に漏れ出る空気排出通路76を有する。空気排出通路76は、パックケース3の内部と外部とを連通する通路である。空気排出通路76は、吹出し通路70から吐出された空気が空気吸入通路(吸入通路74、集合通路73)に至る前に接触するパックケース3の壁に設けられる通路である。循環流体は、各電池通路72を流通するときに圧力損失によって、空気の圧力が減圧されることになる。このため、電池パック1では、高い圧力を有する吐出された空気が電池セル2と熱交換することによって減圧されてしまう前に、パックケース3の壁を貫通する空気排出通路76から高圧の空気を排出するのである。
第1実施形態では、空気排出通路76は、側壁35の上部を貫通する通路である。図1に示すように、空気排出通路76は、側壁35において、電池セル2の外装ケースよりも高い位置、すなわち、天壁30に近い高さの位置に設けられている。空気排出通路76は、側壁35において、天壁30と平行に延びる幅の中間に位置するように設けられることが好ましい。これによれば、空気を、パックケース3の内部空間において一方の側壁側に偏らないように、バランスのとれた風量で空気排出通路76から排出させることができる。このように、空気排出通路76は、パックケース3を形成する壁のうち、吹出し通路70との間に複数の電池セル2が位置するように設けられた壁である側壁35を貫通する通路である。
電池パック1は、パックケース3の内部の熱を外部に効率的に放出するために、循環空気の形成と、外部空気のパックケース3内への導入量の確保とを実現する。外部空気の導入量は、空気排出通路76と空気導入通路75との圧力差を高めることによって、向上することができる。このため、電池パック1では、空気導入通路75を通じた外部空気の導入量を確保するために、空気排出通路76は、吸入通路74や集合通路73よりも流体圧力が高圧となる部位に設けられている。吸入通路74や集合通路73よりも流体圧力が高い部位は、吹出し通路70から吐出された空気が、電池通路72に流入する前に接触するパックケース3の壁に空気排出通路76を設けることでもある。
電池パック1は、車両のトランクルーム、トランクルームより下方に設けられたトランクルーム裏エリア等のパック収容スペースに設置される。車両のパック収容スペースは、例えば、スペアタイヤ、工具等も収納することができる。電池パック1は、底壁33や集合通路73を下側にした姿勢で、パック収容スペースに設置される。例えば、空気導入通路75は、車両の車室内に通じている。給気用ダクト84は、その空気吸入部が車室内に位置するように延びている。例えば、給気用ダクト84は、車室内の内装部材を貫通して車室内に通じるように設けられたり、車室内の側部に這わすように設けられたりする。したがって、空気導入通路75を通して送風機6が吸い込む流体は、車室内90の空気である。
車両に車室内を空調する空調装置が搭載されている場合には、空調装置は、車外または車室内から空気を取り入れて、温度調節した空気を車室内に提供する。したがって、空気導入通路75は、パックケース3の周囲温度よりも低温である、外気または車室内の空気(内気)をパックケース3内に導入する通路である。
また、パックケース3は、車両に設けられた床面に接触するように車両に搭載してもよい。これにより、パックケース3内の熱は、ケースの壁を介して床面に伝達される。したがって、パックケース3内の熱は、電池セル2と熱交換した後の集合通路73を流れる空気から、底壁33を介して車両の床面に伝達される。また、底壁33と床面との接触部には、熱伝導性に優れた放熱シートを介在させるようにしてもよい。この場合、パックケース3内の熱は、底壁33から放熱シートを介して床面に伝達される。
また、循環通路7を循環する過程で流体は、各側壁、天壁30、底壁33等に接触する。循環空気は、電池セル2との熱交換の前に、側壁や天壁30を通してパックケース3の外部に放熱する。また、循環空気は、天壁側通路71を流れる際に、電池セル2との熱交換の直前に、天壁30を通してパックケース3の外部に放熱する。したがって、天壁30の全体、天壁30と直交する側壁の全体が、パックケース3内の電池セル2の熱を外部に放出する際の放熱面として機能することになる。
次に、第1実施形態の電池パック1がもたらす作用効果について説明する。電池パック1は、複数の電池セル2、複数の電池セル2を冷却する空気を送風する送風機6、複数の電池セル2及び送風機6を収容するパックケース3、及びパックケース3内に一連の空気の流通経路をなす循環通路7を備える。電池パック1は、パックケース3の内外を連通させる通路であって、送風機6の吸引力によって外部空気が循環通路7に導入されるときに通る空気導入通路75と、空気導入通路75を開放及び閉鎖する開閉装置4と、を備える。空気導入通路75は、循環通路7において、循環空気が複数の電池セル2と熱交換するときに流通する電池通路72よりも下流であり、かつ送風機6における吸込み部61よりも上流に位置する範囲の特定部位に接続される。開閉装置4は、空気導入通路75に存在せず循環通路7に位置する感温部が検知する空気温度に応じて、空気導入通路75を開放及び閉鎖する。
この電池パック1によれば、空気導入通路75は開閉装置4によって開放及び閉鎖されるため、開放時のみパックケース3内に空気が導入されることになる。これにより、開放時には、循環空気の形成と給気及び排気とが行われ、閉鎖時には、給気用の開口部と排気用の開口部の両方ともが開放されず、循環空気が形成されるだけである。したがって、送風機6の運転音の漏れや水分及び埃のパックケース3内への侵入を軽減することができるとともに、パックケース3内の保温性の低下を軽減することができる。
さらに、空気導入通路75は、前述の特定部位に接続されることにより、電池セル2との熱交換により温度上昇した循環空気に外部の空気を混入させることができる。このため、外部空気の混入後に、次に電池セル2と熱交換させる空気の温度を低下させることができる。さらに開閉装置4の感温部は、空気導入通路75に存在せず循環通路7に位置する。開閉装置4は、この位置で検知した空気温度に応じて空気導入通路75を開放及び閉鎖する。このため、電池パック1は、外部空気の温度に影響されることなく、電池セルの温度を反映した循環空気の温度に応じたタイミングで、外部空気を循環通路7に導入することができる。電池パック1は、電池セル2の冷却能力を向上可能な外部の空気を、適切なタイミングで循環空気に導入することができる。
また、電池パック1は、外部空気導入の条件を満たした場合にだけ、開閉装置4によって空気流通を許可する。これにより、パックケース3内に空気の循環流を継続して形成できる程度も新鮮な空気を取り入れつつ、循環通路7における空気の循環によって電池を冷却することができる。これにより、冷却のために大量の空気を出し入れして電池セル2を冷却する従来の方式に比べて、パックケース3の外部への騒音伝搬を抑制できるとともに、電池セル2からの十分な吸熱量を得るための循環流量を確保することができる。
さらに、開閉装置4による空気流通の許可動作によって、パックケース3の外部の新鮮な空気を空気導入通路75を介して循環通路7に吸引し、吸引流量に対応した空気量を空気排出通路76から排出する。これにより、空気循環の継続に伴う継続的な吸熱作用によって空気に蓄積した熱を確実に循環空気を通じて筐体の外部へ放出しつつ、新たに吸熱機能を発揮し得る新鮮な空気を循環空気に取り込むことができる。したがって、この電池パック1によれば、電池冷却のための大掛かりな装置を要することなく、騒音の抑制と電池セル2の効果的な空冷とを両立することができる。
さらに、電池セル2の温度が低い場合には、開閉装置4による空気流通の禁止によって、外部への騒音の伝わりを抑制するとともに、外部への放熱量を抑制してパックケース3の内部を保温することができる。この場合には、電池の温度上昇を早めて、電池からの出力を早期に実施することができる。
また、電池パック1が備える空気導入許否手段は、予め定めた規定温度に基づいて、空気導入通路75を開放する開放状態と閉鎖する閉鎖状態とに切り替わる機械駆動方式の開閉装置4で構成される。これによれば、電力を必要としないで、規定温度を基準として動作する機械的構造によって、空気導入通路75を開放及び閉鎖可能な開閉装置4を提供することができる。したがって、開閉装置4は、その動作を制御するための制御装置や、電気駆動に係る各種の部品を不要とすることができ、部品点数、電子部品、コスト等を軽減することができる。
さらに開閉装置4は、空気導入通路75が接続される接続部位(空気混入口部750)よりも循環空気流れの上流である位置に、感温部(機械駆動部40)を有する。これによれば、開閉装置4は、電池セル3と熱交換して温度上昇した後の空気の温度にしたがって、開放状態及び閉鎖状態に制御される。さらにこれによれば、電池パック1は、開放状態のときに外部空気がパックケース3内に流入した場合に、外部空気が開閉装置4の感温部に直接当たることを回避できる。これにより、感温部は、外部空気温度の影響をうけることなく、電池セル2の温度と関係性が高い循環空気の温度を検知することができる。
また、感温部は、外部空気に接触しにくい位置に設置されるため、開放状態になったときに感温部が外部空気に接触して、低温の空気を検知してしまうことを回避できる。これにより、開閉装置4が開放状態と閉鎖状態とに頻繁に切り替わるという事態を防止することができる。したがって、開閉装置4の不必要な切り替わりを抑止し、開放状態及び閉鎖状態を適正に制御することができる電池パックが得られる。
また、電池パック1は、開閉装置4が開放状態である場合に、空気導入通路75を通じてパックケース3の内部に流入する空気の流れに沿うように立設された壁部(筒状端部751)をパックケース3の内部に備える。開閉装置4の感温部は、パックケース3の内部に流入した空気が当該壁部に沿って流れる側に対して、当該壁部が間に位置するように反対側に設置される。
これによれば、開放状態のときに外部空気がパックケース3内に流入した場合に、感温部に外部空気が接触する可能性を、当該壁部の空気流れの指向性によって、一層低減することができる。これにより、さらに、開閉装置4の開放状態及び閉鎖状態を適正に制御することが可能な電池パックを提供できる。
また、電池パック1は、側壁35において、電池セル2の外装ケースよりも高い位置、すなわち、天壁30に近い高さに設けられる空気排出通路76を有する。この構成によれば、吹出し通路70から吐出された空気は、天壁30を沿うように天壁側通路71を側壁35に向かって流れる過程で天壁30を介して外部に放熱するとともに、下方に向けて各電池通路72に流入する。空気の一部は、吐出による高い圧力を維持しつつ、側壁35まで流れ、高い位置に設けられた空気排出通路76からスムーズにパックケース3の外部に排出される。したがって、天壁側通路71から空気排出通路76に至るまでに、流体流れの上下動が抑制できるため、通気抵抗が小さく、高い圧力を保った状態で流体を排出することができる。
また、空気導入通路75は、車両の車室内に連通するように設けられる。車室内の空気は流体導入通路を通してパックケース3の内部に引きこまれる。この電池パック1によれば、空調された車室内空気を空気導入通路75を通してパックケース3内に導入することができるため、空気排出通路76から排出される空気との温度差を大きくすることができる。したがって、このように温度差が大きくなることによって外部への放熱量を増加できるため、電池パック1の冷却性能をさらに向上させることができる。
また、複数の電池セル2は、電極端子を上にした姿勢で設けられる。送風機6から流出した空気は、電極端子の周囲を通過した後、各電池通路72に流入する。この構成によれば、各電池セル2の発熱が集まりやすい電極端子を冷却した後、各電池セル2の外装ケースを冷却することができる。したがって、効率的な電池冷却を実施できる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、開閉装置に係る他の形態について図6を参照して説明する。図6において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、第2実施形態において第1実施形態と同様の構成を有するものは、第1実施形態で説明した同様の作用、効果を奏するものとする。
図6に示すように、第2実施形態の開閉装置104は、開閉装置4のように機械駆動式でなく、電気を駆動源とする装置である。開閉装置104は、複数の電池セル2に蓄電された電力を用いて駆動することができる。開閉装置104の作動は、制御装置5によって制御される。制御装置5は、温度センサ41が検出する温度に基づいて、開閉装置104のドア部を駆動するサーボモータ等の装置の作動を制御することにより、ドア部の角変位を制御して、空気導入通路75を開閉する。
開閉装置104は、空気導入通路75が接続される接続部位(空気混入口部750)よりも循環空気流れの上流である位置に、温度検知部である温度センサ41を有する。したがって、開放状態のときに、外部空気が空気導入通路75を通じてパックケース3内に流入しても、温度センサ41には、外部空気が直接当たることはなく、温度センサ41は循環空気に接触して循環空気の温度を検知する。
さらに、電池パック101は、開閉装置104が開放状態である場合に、空気導入通路75を通じてパックケース3の内部に流入する空気の流れに沿うように立設された壁部(前述の筒状端部751)をパックケース3の内部に備える。温度センサ41は、筒状端部751の外側に位置するように設けられる。筒状端部751の内側を流れる外部空気は、筒状端部751に沿って指向されるため、筒状端部751が遮蔽壁となり、温度センサ41には直接接触しない。つまり、温度センサ41は、壁部によって指向される空気が壁部に沿って流れる側に対して、壁部が間に位置するように反対側に設置される。
制御装置5は、内蔵する演算部、記憶装置等に予め記憶された演算プログラムを用いた演算結果にしたがい、送風機6の回転数、開閉装置104の開度位置等を制御する。また、制御装置5は、温度センサ41によって検出される温度が前述の規定温度に対して、高い場合に開閉装置104を開放状態に制御し、低い場合に開閉装置104を閉鎖状態に制御する。また、制御装置5は、電池セル2の温度情報に応じて、送風機6の運転を制御する。
(第3実施形態)
第3実施形態では、開閉装置に係る他の形態について図7を参照して説明する。図7において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、第3実施形態において第1実施形態と同様の構成を有するものは、第1実施形態で説明した同様の作用、効果を奏するものとする。
図7に示すように、給気用ダクト84は、パックケース3の天壁30を貫通してダクト接続部材80の上部とパックケース3の外部とを接続する。送風機6の吸引力によって、給気用ダクト84内に吸い込まれた流体は、空気導入通路75を通して送風機6の吸込み部61に導入され、吹出し通路70から吹き出されることで、循環通路7を流れてパックケース3の内部に取り込まれる。
電池パック101は、検知した温度に応じて空気導入通路75を開放及び閉鎖する開閉装置4をパックケース3内の上部に備える。第3実施形態の開閉装置104は、空気導入通路75を介したパックケース3の内部への空気の導入を許可及び禁止する空気導入許否手段の一例である。開閉装置204の機械駆動部240は、開閉装置204のドア部とワイヤ部材2400によって接続されている。
図7に図示する開放状態では、感温部が検知する温度は規定温度よりも高いため、機械駆動部240は、筒状端部751から離れる方向に変位してワイヤ部材2400を引っ張る。ワイヤ部材2400が接続されたドア部は、回転軸部を中心として角変位し、ドア部が空気混入口部750から引き下ろされる。これにより、開閉装置204のドア部は、図7に図示する位置まで引き下ろされて空気混入口部750を開放する。
感温部を備える機械駆動部240は、空気導入通路75を通じて導入される外部空気が直接当たらない場所であって、外部空気に直接接触する場所または外部空気が循環空気に混入した後の空気に接触する場所に設置されている。機械駆動部240は、例えば、吸込み部61、吸入通路74、ダクト接続部材80の内部の下部または中央部に設置することができる。このように感温部を設置することによれば、感温部は外部空気に接触しにくい位置に設置されるため、開放状態になったときに感温部が外部空気に接触して、低温の空気を検知してしまうことを回避できる。したがって、開閉装置204が開放状態と閉鎖状態とに頻繁に切り替わるという事態を防止することができる。したがって、開閉装置204の不必要な切り替わりを抑止し、開放状態及び閉鎖状態を適正に制御することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、空気排出通路76の設置場所に係る他の形態について図8を参照して説明する。図8において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態及び第3実施形態と同様である。以下、第1実施形態及び第3実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、第4実施形態において第1実施形態及び第3実施形態と同様の構成を有するものは、第1実施形態及び第3実施形態で説明した同様の作用、効果を奏するものとする。
図8に示すように、空気排出通路76は、側壁35において、天壁側通路71よりも下方に位置する部位に設けられる通路である。
第4実施形態の電池パック301によれば、空気排出通路76は、天壁側通路71よりも下方に位置するため、電池通路72の流体入口部から離れた位置に存在する高圧の空気を外部に排出しやすい。このため、電池通路72に向かって流れにくい位置に存在する空気を高圧状態で排出することができる。例えば、電池パック201によれば、淀んでいる高圧の空気を排出して、外部空気の導入量確保のために活用することができる。
(他の実施形態)
前述の実施形態では、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
前述の各実施形態に係る電池パックにおいては、空気排出通路76を開放及び閉鎖する開閉装置は設けられていないが、空気導入通路75を開放及び閉鎖する開閉装置と連動する、空気排出通路76を開放及び閉鎖する開閉装置を設けるようにしてもよい。この場合には、空気導入通路75が開放状態であるときには、空気排出通路76も開放状態になるように、各開閉装置の状態は制御される。
前述の各実施形態の開閉装置は、一端部が回動するドア構造であるが、この形態以外の構成であってもよい。例えば、各実施形態の開閉装置は、スライド動作することにより開放及び閉鎖する方式のドアやシートに置き換えることもできる。この場合、開閉装置の機械駆動部は、移動または形状変化してドア等をスライドさせる駆動力を発揮する。
前述の実施形態に係る空気排出通路76は、側壁35全体の任意の部位に設けることができる。
前述の実施形態において、パックケース3を形成する壁を貫通する空気排出通路76は、図面に開示される個数に限定されない。例えば、空気排出通路76は、貫通する各壁において、複数個設けるように構成してもよい。
前述の実施形態において集合通路73は、集合ダクト83によって形成されているが、集合通路73は、例えば、ダクトではなく、底壁33及び側壁によって囲まれる通路として構成してもよい。
また、前述の実施形態の電池パックは、1個の送風機6を用いて、循環通路7を主流経路とする循環流を形成するが、複数個の送風機による吸入、吹出しによって、循環流を形成することもできる。
また、パックケース3の内部に設けられる送風機6が内蔵するファンには、前述の実施形態に記載するシロッコファンの他、軸流ファン、ターボファン等を用いることができる。