以下、本発明の一実施形態について説明する。尚、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」のうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとのうち少なくとも一方を意味する。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、エチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも一つ有する不飽和化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、エポキシ化合物(D)と、カルボキシル基を有する有機フィラー(E1)を含む有機フィラー(E)と、メラミン及びメラミン誘導体の群から選択される少なくとも1種のメラミン化合物(F)とを含有する。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)が、芳香環を含むことで、カルボキシル基含有樹脂(A)を含有する感光性樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性及び絶縁信頼性を付与できる。カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、及びアントラセン骨格のうちいずれかの多環芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことがより好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)が、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、及びアントラセン骨格のうちいずれかの多環芳香環を含むことで、カルボキシル基含有樹脂(A)を含有する感光性樹脂組成物の硬化物に、より高い耐熱性及び絶縁信頼性を付与できる。カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂を含むことがさらに好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)が、ビスフェノールフルオレン骨格を含むことで、カルボキシル基含有樹脂(A)を含有する感光性樹脂組成物の硬化物に、さらに高い耐熱性及び絶縁信頼性を付与できる。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、下記説明の、ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有することが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、例えば、下記式(1)で示され、式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンであるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2)との反応物である中間体と、酸無水物(a3)との反応物である。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させ、それにより、得られた中間体と、酸無水物(a3)とを反応させることで合成される。
式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンである。すなわち、式(1)におけるR1〜R8の各々は、水素でもよいが、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンでもよい。芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有樹脂(A1)の物性に悪影響は与えられず、むしろ置換されることでカルボキシル基含有樹脂(A1)を含む感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性或いは難燃性が向上する場合もあるからである。
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、例えば下記説明のようにして合成され得る。カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成するためには、まず式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基(式(2)参照)の少なくとも一部と、不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させることで、中間体を合成する。中間体は、エポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応で生じた下記式(3)に示す構造を有する。すなわち、中間体は、式(3)に示す構造中に、エポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応で生じた二級の水酸基を有する。式(3)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基である。
次に、中間体中の二級の水酸基と酸無水物(a3)とを反応させる。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成できる。
酸無水物(a3)が酸一無水物(a3−1)及び酸二無水物(a3−2)のうち少なくとも1つを含有してもよい。酸無水物(a3)が酸一無水物(a3−1)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格と、下記式(4)に示す構造とを有する。
式(4)に示す構造は、中間体の式(3)で示す構造中の二級の水酸基と、酸一無水物(a3−1)における酸無水物基とが反応することで生じる。式(4)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、Bは酸一無水物残基である。
酸無水物(a3)が酸二無水物(a3−2)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格と、下記式(5)に示す構造とを有する。
式(5)に示す構造は、酸二無水物(a3−2)中の二つの酸無水物基と、中間体における二つの二級の水酸基とが、それぞれ反応することで生じる。すなわち、式(5)に示す構造は、二つの二級の水酸基同士を酸二無水物(a3−2)が架橋することで生成する。なお、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合とが、ありうる。中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋されると、分子量の増大が得られる。式(5)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、Dは酸二無水物残基である。
中間体中の二級の水酸基と酸無水物(a3)とを反応させることでカルボキシル基含有樹脂(A1)を得ることができる。酸無水物(a3)が酸一無水物(a3−1)及び酸二無水物(a3−2)を含有する場合、中間体中の二級の水酸基のうちの一部と酸二無水物(a3−2)とを反応させ、中間体中の二級の水酸基のうちの別の一部と酸一無水物(a3−1)とを反応させる。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成できる。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格と、上記式(4)に示す構造と、上記式(5)に示す構造とを有する。
カルボキシル基含有樹脂(A1)が、更に下記式(6)で示す構造を有することもありうる。式(6)で示す構造は、酸二無水物(a3−2)中の二つの酸無水物基のうち、一つのみが、中間体における二級の水酸基と反応することで生じる。式(6)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、Dは酸二無水物残基である。
中間体の合成時にエポキシ化合物(a1)中のエポキシ基の一部が未反応のまま残存する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は式(2)に示す構造、すなわちエポキシ基を有することがありうる。また、中間体における式(3)に示す構造の一部が未反応のまま残存する場合に、カルボキシル基含有樹脂(A1)は式(3)に示す構造を有することもありうる。
酸無水物(a3)が酸二無水物(a3−2)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件を最適化することで、カルボキシル基含有樹脂(A1)中の式(2)に示す構造、及び式(6)に示す構造を低減し、或いは殆どなくすことが可能である。
上記のように、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有し、酸無水物(a3)が酸一無水物(a3−1)を含有する場合は式(4)に示す構造を有し、酸無水物(a3)が酸二無水物(a3−2)を含有する場合は式(5)に示す構造を有することができる。さらに、酸無水物(a3)が酸一無水物(a3−1)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(2)に示す構造と式(3)に示す構造とのうち少なくとも一種を有することがある。また、酸無水物(a3)が酸二無水物(a3−2)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(2)に示す構造と、式(6)に示す構造とのうち少なくとも一種を有することがある。また更に、酸無水物(a3)が酸一無水物(a3−1)と酸二無水物(a3−2)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(2)に示す構造と、式(3)に示す構造と、式(6)に示す構造とのうち少なくとも一種を有することがある。
また、エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合、すなわち例えば後述する式(7)においてn=1以上である場合には、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基と酸無水物(a3)とが反応することで生じる構造を有することもある。
なお、上述のカルボキシル基含有樹脂(A1)の構造は技術常識に基づいて合理的に類推されたものであり、カルボキシル基含有樹脂(A1)の構造を分析によって同定することは現実にはできない。その理由は次の通りである。エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合(例えば式(7)においてnが1以上である場合)には、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基の数によってカルボキシル基含有樹脂(A1)の構造が大きく変化してしまう。また、中間体と酸二無水物(a3−2)とが反応する際には、上述の通り、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が酸二無水物(a3−2)で架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が酸二無水物(a3−2)で架橋される場合とが、ありうる。このため、最終的に得られるカルボキシル基含有樹脂(A1)は、互いに構造の異なる複数の分子を含み、カルボキシル基含有樹脂(A1)を分析してもその構造を同定できなくなる。
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基を有することで光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)は感光性樹脂組成物に感光性、具体的には紫外線硬化性、を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸無水物(a3)に由来するカルボキシル基を有することで、感光性樹脂組成物に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。さらに、酸無水物(a3)が酸二無水物(a3−2)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸二無水物(a3−2)によって架橋されていることで分子量が調整されている。このため、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。酸無水物(a3)が酸一無水物(a3−1)及び酸二無水物(a3−2)を含有する場合、酸一無水物(a3−1)及び酸二無水物(a3−2)の量、並びに酸二無水物(a3−2)に対する酸一無水物(a3−1)の量を制御することで、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量及び酸価を容易に調整できる。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量は700〜10000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が700以上であると、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。また、重量平均分子量が10000以下であると、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。重量平均分子量は、900〜8000の範囲内であることが更に好ましく、1000〜5000の範囲内であることが特に好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の固形分酸価は60〜140mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の現像性が特に向上する。酸価が80〜135mgKOH/gの範囲内であればより好ましく、酸価が90〜130mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の多分散度は1.0〜4.8の範囲内であってもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される硬化物の良好な絶縁信頼性を確保しながら、感光性樹脂組成物に優れた現像性を付与できる。多分散度は1.1〜4.0であることがより好ましく、1.2〜2.8であることが更に好ましい。なお、多分散度は、カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値(Mw/Mn)である。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量測定結果から算出される。ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィでの分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
GPC装置:昭和電工社製 SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF−800P,KF−005,KF−003,KF−001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の原料、並びにカルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件について詳しく説明する。
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(7)に示す構造を有する。式(7)中のnは、例えば0〜20の範囲内の数である。カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量を適切に制御するためには、nの平均は0〜1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0〜1の範囲内であれば、特に酸無水物(a3)が酸二無水物(a3−2)を含有する場合、酸二無水物(a3−2)の付加による過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。
不飽和基含有カルボン酸(a2)は、例えば一分子中にエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、不飽和基含有カルボン酸(a2)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。好ましくは、不飽和基含有カルボン酸(a2)がアクリル酸を含有する。
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させるに当たっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)の溶剤溶液に不飽和基含有カルボン酸(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法で、好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の温度で反応させることで、中間体を得ることができる。溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。熱重合禁止剤は例えばハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。触媒は例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応が特に促進され、95%以上、或いは97%以上、或いはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。このため、式(3)に示す構造を有する中間体が高い収率で得られる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁信頼性が更に向上する。
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2)の量は0.8〜1.2モルの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の優れた感光性と保存安定性が得られる。
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、不飽和基の付加重合反応を抑制して、中間体の分子量の増大及び中間体の溶液のゲル化を抑制できる。また、最終生成物であるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な着色を抑制できる。
このようにして得られる中間体は、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)におけるカルボキシル基とが反応することで生成した水酸基を備える。
酸一無水物(a3−1)は、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸一無水物(a3−1)は、ジカルボン酸の無水物を含有できる。酸一無水物(a3−1)は、例えばフタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物、及びイタコン酸無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。特に酸一無水物(a3−1)が1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸を含有することが好ましい。すなわち、酸無水物(a3)が1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸を含有することが好ましい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A1)が式(4)に示す構造を有し、式(4)におけるBが1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸残基を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。酸一無水物(a3−1)全体に対して、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸は20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、40〜100モル%の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。
酸二無水物(a3−2)は、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物(a3−2)は、テトラカルボン酸の無水物を含有できる。酸二無水物(a3−2)は、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト〔1,2−c〕フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特に酸二無水物(a3−2)が3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。すなわち、式(5)及び式(6)におけるDが3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。酸二無水物(a3−2)全体に対して、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、40〜100モル%の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。
中間体と酸無水物(a3)とを反応させるに当たっては、公知の方法が採用され得る。例えば中間体の溶剤溶液に酸無水物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法で、好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の温度で反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A1)を得ることができる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、中間体の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、中間体と、酸無水物(a3)とを反応させることが好ましい。この場合、中間体における二級の水酸基と酸無水物(a3)との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、或いはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。このため、式(4)に示す構造及び式(5)に示す構造のうち少なくとも一方の構造を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)が高い収率で得られる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁信頼性が更に向上する。
酸無水物(a3)が酸二無水物(a3−2)と酸一無水物(a3−1)とを含有する場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸二無水物(a3−2)の量は、0.05〜0.24モルの範囲内であることが好ましい。また、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a3−1)の量は0.3〜0.7モルの範囲内であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)のみ又はカルボキシル基含有樹脂(A1)以外のカルボキシル基含有樹脂のみを含有してもよく、カルボキシル基含有樹脂(A1)とカルボキシル基含有樹脂(A1)以外のカルボキシル基含有樹脂とを含有してもよい。カルボキシル基含有樹脂(A1)以外のカルボキシル基含有樹脂は、ビスフェノールフルオレン骨格を有さないカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂(A2)ともいう)を含む。
カルボキシル基含有樹脂(A2)は、例えば、カルボキシル基を有し光重合性を有さない化合物(以下、(A2−1)成分という)を含有できる。(A2−1)成分は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート等の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等と二塩基酸無水物との反応物も含有できる。エチレン性不飽和単量体は、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。
カルボキシル基含有樹脂(A2)は、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、(A2−2)成分という)を含有してもよい。またカルボキシル基含有樹脂(A2)は、(A2−2)成分のみを含有してもよい。(A2−2)成分は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(g1)とエチレン性不飽和化合物(g2)との反応物である中間体と、多価カルボン酸及びその無水物の群から選択される少なくとも一種の化合物(g3)との反応物である樹脂(第一の樹脂(g)という)を含有する。第一の樹脂(g)は、例えばエポキシ化合物(g1)中のエポキシ基と、エチレン性不飽和化合物(g2)中のカルボキシル基とを反応させて得られた中間体に化合物(g3)を付加させて得られる。エポキシ化合物(g1)は、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物等の適宜のエポキシ化合物を含有できる。特にエポキシ化合物(g1)は、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物(g1)は、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物のみを含有してもよく、或いはクレゾールノボラック型エポキシ化合物のみを含有してもよい。この場合、エポキシ化合物(g1)の主鎖に芳香族環が含まれるので、感光性樹脂組成物の硬化物が、例えば過マンガン酸カリウムを含有する酸化剤で、著しく腐食される程度を低減することができる。エポキシ化合物(g1)は、エチレン性不飽和化合物(h)の重合体を含有してもよい。エチレン性不飽和化合物(h)は、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する化合物(h1)を含有し、或いは更に2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート等のエポキシ基を有さない化合物(h2)を含有する。エチレン性不飽和化合物(g2)は、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。化合物(g3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸と、これらの多価カルボン酸の無水物とからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。特に化合物(g3)は、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸の群から選択される少なくとも1種の多価カルボン酸を含有することが好ましい。
(A2−2)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体とエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応物である樹脂(第二の樹脂(i)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。第二の樹脂(i)は、重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。エチレン性不飽和単量体は、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の化合物を含有する。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を含有する。エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)のみ、カルボキシル基含有樹脂(A2)のみ、又はカルボキシル基含有樹脂(A1)とカルボキシル基含有樹脂(A2)とを含有し得る。カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を30質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、100質量%含有することが更に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性及び絶縁信頼性を特に向上させることができる。また、感光性樹脂組成物から形成される皮膜のタック性を十分に抑制することができる。更に、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性を確保することができる。
不飽和化合物(B)は、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与できる。不飽和化合物(B)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
特に不飽和化合物(B)が、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上すると共に、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート及びε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
不飽和化合物(B)が、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド)との付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。
不飽和化合物(B)が、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
光重合開始剤(C)は、例えばアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)を含有する。すなわち、感光性樹脂組成物は例えばアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)を含有する。この場合、感光性樹脂組成物を紫外線で露光する場合に感光性樹脂組成物に高い感光性を付与できる。また、感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁信頼性が更に向上する。
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)は、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。特にアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含有することが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドのみを含有することも好ましい。
光重合開始剤(C)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に加えてヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有することが好ましい。すなわち感光性樹脂組成物がヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有することが好ましい。この場合、ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有しない場合と比べて、感光性樹脂組成物に更に高い感光性を付与できる。これにより、感光性樹脂組成物から形成される塗膜に紫外線を照射して硬化させる場合、塗膜をその表面から深部に亘って十分に硬化させることが可能となる。ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)とヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)との質量比は、1:0.01〜1:10の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の表面付近における硬化性と深部における硬化性とを、バランス良く向上させることができる。感光性樹脂組成物が有機フィラー(E1)を含有することにより、有機フィラー(E1)が、露光時に、感光性樹脂組成物内で光散乱を生じさせる場合がある。この場合、感光性樹脂組成物で良好な現像性が得られない問題が生じる可能性がある。このような観点から、解像性を向上させて良好な現像性を感光性樹脂組成物で得るために、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)とヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)との質量比は、1:0.01〜1:1の範囲内であることが特に好ましい。
光重合開始剤(C)がビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有することも好ましい。すなわち、感光性樹脂組成物がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)及びビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有し、或いはアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)、ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)及びビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を部分的に露光してから現像する場合、露光されない部分の硬化が抑制されることで、解像性が特に高くなる。このため感光性樹脂組成物の硬化物で非常に微細なパターンを形成することが可能となる。特に、感光性樹脂組成物から多層プリント配線板の層間絶縁層を作製すると共にこの層間絶縁層にスルーホールのための小径の穴をフォトリソグラフィー法で設ける場合(図1参照)、小径の穴を精密且つ容易に形成することが可能となる。
ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に対して0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)が0.5質量%以上であると、解像性が特に高くなる。また、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)が20質量%以下であると、感光性樹脂組成物の硬化物の電気絶縁性をビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)が阻害しにくい。感光性樹脂組成物が有機フィラー(E1)を含有することにより、有機フィラー(E1)が、露光時に、感光性樹脂組成物内で光散乱を生じさせる場合がある。この場合、感光性樹脂組成物で良好な現像性が得られない問題が生じる可能性がある。このような観点から、良好な解像性を感光性樹脂組成物で得るために、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に対して1〜18質量%の範囲内であることが特に好ましい。
感光性樹脂組成物は、更に公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えば感光性樹脂組成物は、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;並びに2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。感光性樹脂組成物が、光重合開始剤(C)と共に、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤や増感剤等を含有してもよい。感光性樹脂組成物が、必要に応じて、可視光露光用の光重合開始剤及び近赤外線露光用の光重合開始剤のうちの少なくとも一種を含有してもよい。感光性樹脂組成物が、光重合開始剤(C)と共に、レーザ露光法用増感剤である7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン誘導体、カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
エポキシ化合物(D)は、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。エポキシ化合物(D)は、結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の現像性を向上させることができる。更に、上記の通り有機フィラー(E1)がカルボキシル基を有するので、有機フィラー(E1)で結晶性エポキシ樹脂の相溶性を向上させ、感光性樹脂組成物における結晶性エポキシ樹脂の再結晶化を防ぐことができる。またエポキシ化合物(D)は、非晶性エポキシ樹脂を更に含有してもよい。ここで「結晶性エポキシ樹脂」は融点を有するエポキシ樹脂であり、「非晶性エポキシ樹脂」は融点を有さないエポキシ樹脂である。
結晶性エポキシ樹脂は、例えば、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名YX−4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR−1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として式(7)に示す構造を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
結晶性エポキシ樹脂は、1分子中に2個のエポキシ基を有することが好ましい。
結晶性エポキシ樹脂は150〜300g/eqのエポキシ当量を有することが好ましい。このエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する結晶性エポキシ樹脂のグラム重量である。結晶性エポキシ樹脂は融点を有する。結晶性エポキシ樹脂の融点としては、例えば70〜180℃が挙げられる。
特にエポキシ化合物(D)が、融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂は、例えばビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX−4000)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、及びビスフェノール型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学製の品番YSLV−80XY)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として式(7)に示す構造を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。より具体的には、結晶性エポキシ樹脂は、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の品番YX−4000)及びビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学製の品番YSLV−80XY)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
非晶性エポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX−156)、並びにゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX−136)からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
エポキシ化合物(D)がリン含有エポキシ樹脂を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂は結晶性エポキシ樹脂に含有されてもよいし、或いは非晶性エポキシ樹脂に含有されてもよい。リン含有エポキシ樹脂としては、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−9726、及びEPICLON EXA−9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX−305等が挙げられる。
有機フィラー(E)は、感光性樹脂組成物にチクソ性を付与することができる。有機フィラー(E)は、有機フィラー(E1)を含む。有機フィラー(E1)は、カルボキシル基を有する。このカルボキシル基のうち、一部のカルボキシル基は有機フィラー(E1)の表面で露出しているとよい。
有機フィラー(E1)は、感光性樹脂組成物中で高い相溶性を有し、より強いチクソ性を感光性樹脂組成物に付与することができる。感光性樹脂組成物が、カルボキシル基を有する有機フィラー(E1)を含有することで、感光性樹脂組成物の現像性を向上させることができる。また、有機フィラー(E1)のカルボキシル基は、熱硬化時に、感光性樹脂組成物中のエポキシ化合物(例えば、エポキシ化合物(D))と反応することができる。これにより、熱硬化後の硬化物は、その内部で均一に分散された有機フィラー(E1)を含有することができる。更に、硬化物の表面を粗化する段階で有機フィラー(E1)の未反応のカルボキシル基を変性させることもできる。すなわち、硬化物に含有される有機フィラー(E1)のうち硬化物の表面付近に位置する有機フィラー(E1)が硬化物の表面を粗化する段階で変質され易くなる。このようにして変質した有機フィラー(E1)は、硬化物に粗面を付与する際に、硬化物から取り除かれ易くなる。これにより、硬化物の表面に粗面を付与して硬化物とメッキ層との密着性を向上することができる。
また更に感光性樹脂組成物が有機フィラー(E1)を含有することで、感光性樹脂組成物の流動性に起因する塗膜の不均一性を低減することができる。これにより、感光性樹脂組成物で形成された層の膜厚を均一にさせ易くすることができる。この場合、感光性樹脂組成物はレオロジーコントロール剤を含有しなくてもよい。なお、レオロジーコントロール剤としては、例えば、ウレア変性中極性ポリアマイド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK−430、BYK−431)、ポリヒドロキシカルボン酸アミド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK−405)、変性ウレア(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK−410、BYK−411、BYK−420)、高分子ウレア誘導体(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK−415)、ウレア変性ウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK−425)、ポリウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK−428)、ひまし油ワックス、ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、ベントナイト、シリカ、シリカゲル、カオリン、クレーが挙げられる。
有機フィラー(E1)のカルボキシル基は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸モノマーを重合あるいは架橋させることで、その生成物における側鎖として形成される。前記カルボン酸モノマーは、カルボキシル基と重合性不飽和二重結合とを有する。有機フィラー(E1)は、感光性樹脂組成物のチクソ性を高めるため、感光性樹脂組成物の安定性(特に保存安定性)を向上させる。さらに、有機フィラー(E1)は、カルボキシル基を有するため、硬化物の現像性を向上させると共に、結晶性エポキシ樹脂の相溶性を向上させて感光性樹脂組成物中での結晶化を防ぐことができる。有機フィラー(E1)のカルボキシル基含有量は特に制限されないが、有機フィラー(E1)の酸価が、酸−塩基滴定による酸価で1〜60mgKOH/gであることが好ましい。酸価が1mgKOH/gより小さいと感光性樹脂組成物の安定性及び硬化物の現像性が低下するおそれがある。酸価が60mgKOH/gより大きいと硬化物の耐湿信頼性が低下するおそれがある。有機フィラー(E1)の酸価は3〜40mgKOH/gであることがより好ましい。
有機フィラー(E1)は、水酸基を有することも好ましい。この水酸基のうち、一部の水酸基が、有機フィラー(E1)の表面で露出しているとよい。このように、有機フィラー(E1)が水酸基を有することで、感光性樹脂組成物中における有機フィラー(E1)の分散性が更に向上する。
有機フィラー(E1)は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましい。有機フィラー(E1)の平均一次粒子径が1μm以下となることで、硬化物に形成される粗面の粗さを細かくすることができる。これにより、硬化物の表面積が増加することに伴ってアンカー効果が大きくなり粗面と前記メッキ層との密着性を向上させることができる。有機フィラー(E1)の平均一次粒子径は、その下限は特に限定されないが、例えば、0.001μm以上であることが好ましい。平均一次粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により、D50として測定される。有機フィラー(E1)の平均一次粒子径が0.4μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。この場合、硬化物に形成される粗面の粗さを特に細かくすることができる。加えて露光時の散乱を感光性樹脂組成物中で抑えることができ、これにより、感光性樹脂組成物の解像性をさらに向上させることができる。
有機フィラー(E1)は、感光性樹脂組成物中において最大粒子径が1.0μm未満で分散されていることが好ましく、0.5μm未満で分散されていることがより好ましい。最大粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により、D50として測定される。あるいは、最大粒子径は、硬化物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで測定される。有機フィラー(E1)は、感光性樹脂組成物中において凝集することがある(たとえば二次粒子を形成し得る)が、その場合、最大粒子径は凝集後の粒子のサイズを意味する。分散状態での有機フィラー(E1)の最大粒子径が前記の範囲であると、硬化物に形成される粗面の粗さを更に細かくすることができる。加えて露光時の散乱が感光性樹脂組成物中で抑えられ、これにより、感光性樹脂組成物の解像性がさらに向上する。なお、粒子の凝集が起こった場合、最大粒子径は、通常、平均一次粒子径よりも大きい。
有機フィラー(E1)は、ゴム成分を含むことが好ましい。また、有機フィラー(E1)は、ゴム成分のみを含むことが好ましい。ゴム成分は、感光性樹脂組成物の硬化物に柔軟性を付与できる。ゴム成分は、樹脂により構成され得る。ゴム成分は、架橋アクリルゴム、架橋NBR、架橋MBS及び架橋SBRから選ばれる少なくとも1つの重合体を含むことが好ましい。この場合、ゴム成分が感光性樹脂組成物の硬化物に優れた柔軟性を付与することができる。更に、硬化物の表面に、より適度な粗面を付与することができる。ここでゴム成分は、前記重合体を構成するモノマーを共重合させる際に形成される架橋構造を含む。NBRは、一般的に、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、ニトリルゴムに分類される。MBSは、一般的に、メチルメタアクリレート、ブタジエン、スチレンの3成分で構成される共重合体であり、ブタジエン系ゴムに分類される。SBRは、一般的に、スチレンとブタジエンとの共重合体であり、スチレンゴムに分類される。有機フィラー(E1)の具体例として、JSR株式会社製の品番XER−91−MEK、JSR株式会社製の品番XER−32−MEK、JSR株式会社製の品番XSK−500等が挙げられる。これらの有機フィラー(E1)のうち、XER−91−MEKは、平均一次粒子径0.07μmのカルボキシル基を有する架橋ゴム(NBR)であり、この架橋ゴムの含有割合15重量%のメチルエチルケトン分散液で提供され、その酸価が10.0mgKOH/gである。XER−32−MEKは、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴムのポリマー(線状粒子)を、分散液全量に対して含有量17重量%で、メチルエチルケトン中で分散させた分散液である。また、XSK−500は、平均一次粒子径0.07μmのカルボキシル基及び水酸基を有する架橋ゴム(SBR)であり、この架橋ゴムの含有割合15重量%のメチルエチルケトン分散液で提供される。このように、有機フィラー(E1)は、分散液で、感光性樹脂組成物に配合されてもよい。すなわち、ゴム成分は、分散液で、感光性樹脂組成物に配合され得る。また、有機フィラー(E1)の具体例として、上記の他に、JSR株式会社製の品番XER−92等が挙げられる。
有機フィラー(E1)は、ゴム成分以外の粒子成分を含有してもよい。この場合、有機フィラー(E1)は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂微粒子、及びカルボキシル基を有するセルロース微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子成分を含有することができる。カルボキシル基を有するアクリル樹脂微粒子は、非架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子及び架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子成分を含有することができる。非架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子の具体例として、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製の品番FS−201(平均一次粒子径0.5μm)が挙げられる。架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子の具体例として、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製の、品番MG−351(平均一次粒子径1.0μm)、及び品番BGK−001(平均一次粒子径1.0μm)が挙げられる。また、有機フィラー(E1)は、上記の、ゴム成分、アクリル樹脂微粒子、及びセルロース微粒子から選択される粒子成分以外の粒子成分を含有してもよい。この場合、有機フィラー(E1)は、カルボキシル基を有する粒子成分を含有することができる。すなわち、このカルボキシル基を有する粒子成分は、ゴム成分、アクリル樹脂微粒子、及びセルロース微粒子から選択される粒子成分と異なっていてよい。
有機フィラー(E)は、前記有機フィラー(E1)以外の有機フィラーをさらに含んでいてもよい。前記有機フィラー(E1)以外の有機フィラーは、カルボキシル基を有さなくてよい。前記有機フィラー(E1)以外の有機フィラーは、平均一次粒子径が1μmより大きくてよい。ただし、硬化物に粗面を付与する観点、及び感光性樹脂組成物の解像性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物は、前記有機フィラー(E1)以外の有機フィラーを含まなくてよい。
有機フィラー(E)は、有機フィラー(E1)のみ、又は有機フィラー(E1)と有機フィラー(E1)以外の有機フィラーとを含有してもよい。有機フィラー(E)は、有機フィラー(E1)を30質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、100質量%含有することが更に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物に粗面を更に付与しやすくなる。これにより、硬化物とメッキ層との密着性を更に向上させることができる。
メラミン化合物(F)は、上記の通り、メラミン及びメラミン誘導体の群から選択される少なくとも1種の化合物である。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物を、例えば過マンガン酸カリウムを含有する酸化剤で、著しく腐食させる程度を低減することができる。すなわち感光性樹脂組成物がメラミン化合物(F)を含有することで、感光性樹脂組成物の硬化物表面を、メッキ処理の前工程で、粗化する際に、前記硬化物を含む層の厚みを薄くさせにくくできる。このようにして前記硬化物に粗面を付与することで、感光性樹脂組成物の硬化物と、銅や金等からなるメッキ層との密着性を向上させることができる。
感光性樹脂組成物がメラミン化合物(F)と有機フィラー(E)との両方を含有することにより、感光性樹脂組成物の硬化物に適度な粗面を付与することができる共に硬化物とメッキ層との密着性を向上させることができる。メッキ処理の前工程で硬化物に粗面を付与する際に、感光性樹脂組成物で形成された層の膜厚を過度に薄くしにくくすることもできる。
本実施形態では、メラミン化合物(F)が、メラミンのみを含有してもよく、メラミン誘導体のみを含有してもよく、メラミン及びメラミン誘導体を含有してもよい。メラミンは、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジンであり、一般的に市販されている化合物から入手可能である。また、メラミン誘導体は、その一分子中に1つのトリアジン環と、アミノ基とを有する化合物であるとよい。メラミン誘導体としては、例えばグアナミン;アセトグアナミン;ベンゾグアナミン;2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体;並びにメラミン−テトラヒドロフタル酸塩等のメラミンと酸無水物との反応物が、挙げられる。メラミン誘導体の、より詳細な具体例として、四国化成工業株式会社の製品名VD−1、製品名VD−2、製品名VD−3が挙げられる。メラミン誘導体は、その一分子中に1つのトリアジン環と、2つ以上のアミノ基とを有する化合物であることが好ましい。この2つ以上のアミノ基のうち、少なくとも1つは−NH2の基を含まない置換基である。すなわち、メラミン誘導体はメラミンを含まない。このような場合、感光性樹脂組成物中に分散しているメラミン誘導体が、例えばメッキ層やコア材の導体配線に含まれ、且つ感光性樹脂組成物との接触面に位置する金属元素と配位結合する。このため感光性樹脂組成物の密着性を向上させることができる。前記金属元素として、例えば金、銀、銅、ニッケルが挙げられる。
メラミン化合物(F)は感光性樹脂組成物に対して溶解可能であってもよい。或いはメラミン化合物(F)が感光性樹脂組成物に対して難溶解である場合、平均粒子径が20μm以下、好ましくは15μm以下のメラミン化合物(F)が、感光性樹脂組成物中で分散されることが好ましい。感光性樹脂組成物中にメラミン化合物(F)が均一に分散していることで、メラミン化合物(F)は前記金属元素と更に配位結合しやすくなる。これにより、感光性樹脂組成物の密着性を更に向上させることができる。メラミン化合物(F)の平均粒子径の下限は、特に限定されないが、0.01μm以上にすることができる。なお、メラミン化合物(F)の平均粒子径は、メラミン化合物(F)を未硬化の感光性樹脂組成物中で分散させた状態でレーザ回折式粒度分布測定装置により、D50として測定される。
感光性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。この場合、有機フィラー(E)の分散性を向上させることができる。更に感光性樹脂組成物の解像性を向上させることもできる。
シランカップリング剤は、例えば、ケイ素原子を含有し、且つ−OCH3基、−OC2H5基、及び−OCOCH3基の群から選択される2〜4つの加水分解性基を含有する化合物である。シランカップリング剤は加水分解性基の他に、アミノ基、エポキシ基、ビニル(アリル)基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフィド基等の反応性基、あるいはメチル基を含有してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、ジエトキシ(3−グリシジロキシプロピル)メチルシラン等のエポキシ類、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のビニル化合物、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアリル化合物、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル化合物、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート類、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド類、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン等のメルカプト化合物類、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド類、オルトケイ酸テトラエチル、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
本実施形態では、例えば、感光性樹脂組成物は無機フィラーを含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される膜の硬化収縮が低減する。無機フィラーは、例えば硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び酸化チタンからなる群から選択される一種以上の材料を含有できる。無機フィラーに酸化チタン、酸化亜鉛等の白色の材料を含有させることで、感光性樹脂組成物及びその硬化物を白色化してもよい。感光性樹脂組成物中の無機フィラーの割合は適宜設定されるが、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して0〜300質量%の範囲内であることが好ましい。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、感光性樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。
感光性樹脂組成物中の成分の量は、感光性樹脂組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、感光性樹脂組成物の固形分量に対して5〜85質量%の範囲内であれば好ましく、10〜75質量%の範囲内であればより好ましく、30〜60質量%の範囲内であれば更に好ましい。
不飽和化合物(B)は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して1〜50質量%の範囲内であれば好ましく、10〜45質量%の範囲内であればより好ましく、21〜40質量%の範囲内であれば更に好ましい。
光重合開始剤(C)は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、1〜25質量%の範囲内であれば更に好ましい。
エポキシ化合物(D)の量に関しては、エポキシ化合物(D)に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.7〜2.5の範囲内であることが好ましく、0.7〜2.3の範囲内であることがより好ましく、0.7〜2.0の範囲内であれば更に好ましい。また、結晶性エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.1〜2.0の範囲内であることが好ましく、0.2〜1.9の範囲内であればより好ましく、0.3〜1.5の範囲内であれば更に好ましい。
有機フィラー(E)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量を100質量部としたときに、1〜40質量部の範囲内であることが好ましい。有機フィラー(E)の含有量がこの範囲となることで、感光性樹脂組成物の硬化物における表面を適度に粗化することができ、これにより、硬化物の粗面とメッキ層との密着性を向上することができる。有機フィラー(E)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量を100質量部としたときに、5〜20質量部の範囲内であることがより好ましく、10〜17質量部の範囲内であることが更に好ましい。また、有機フィラー(E1)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量を100質量部としたときに、1〜40質量部の範囲内であることが好ましい。有機フィラー(E1)の含有量がこの範囲となることで、感光性樹脂組成物の硬化物における表面をより適度に粗化することができる。有機フィラー(E1)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量を100質量部としたときに、5〜20質量部の範囲内であることがより好ましく、10〜17質量部であることが更に好ましい。ゴム成分の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(A)の含有量を100質量部としたときに、1〜40質量部の範囲内であることが好ましく、5〜20質量部の範囲内であることがより好ましく、10〜17質量部であることが更に好ましい。
メラミン化合物(F)は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲内であれば更に好ましい。
感光性樹脂組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、有機フィラー(E)の含有量を100質量部としたときに、0.01〜7質量部の範囲内であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量がこの範囲となることで、感光性樹脂組成物における有機フィラー(E)の凝集を防ぎ、分散性が向上する。シランカップリング剤の含有量は、有機フィラー(E)の含有量を100質量部としたときに、0.05〜5質量部の範囲内であることがより好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、有機フィラー(E1)の含有量を100質量部としたときに、0.01〜7質量部の範囲内であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量がこの範囲となることで、感光性樹脂組成物における有機フィラー(E1)の凝集を効率よく防ぎ、分散性が効果的に向上する。シランカップリング剤の含有量は、有機フィラー(E1)の含有量を100質量部としたときに、0.05〜5質量部の範囲内であることがより好ましい。
感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の量は、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に速やかに有機溶剤が揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、感光性樹脂組成物全体に対して、有機溶剤が0〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜60質量%の範囲内であれば更に好ましい。なお、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などで異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
なお、固形分量とは、感光性樹脂組成物から溶剤などの揮発性成分を除いた、全成分の合計量のことである。
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、感光性樹脂組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
感光性樹脂組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
感光性樹脂組成物は、エポキシ化合物(D)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、硬化促進剤;着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;レオロジーコントロール剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;顔料;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有してもよい。なお、感光性樹脂組成物は顔料を含まなくてもよい。
感光性樹脂組成物中のアミン化合物の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層の電気絶縁性が損なわれにくい。特にカルボキシル基含有樹脂(A)に対してアミン化合物が6質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であれば更に好ましい。
上記のような感光性樹脂組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、感光性樹脂組成物が調製され得る。感光性樹脂組成物の原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、感光性樹脂組成物を調製してもよい。
保存安定性等を考慮して、感光性樹脂組成物の成分の一部を混合することで第一剤を調製し、成分の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、感光性樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。この場合、例えば、感光性樹脂組成物の成分のうち不飽和化合物(B)及び有機溶剤の一部及び熱硬化性成分を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、感光性樹脂組成物の成分のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合して混合液を調製し、この混合液を硬化させて硬化物を得ることができる。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、プリント配線板用の電気絶縁性材料として適している。特に感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の、電気絶縁性の層を形成するために適している。
本実施形態に係る感光性樹脂組成物が厚み25μmの皮膜に成形された場合に、皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であることが好ましい。この場合、十分に厚みの大きい電気絶縁性の層を感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィー法で作製することが可能であるため、感光性樹脂組成物を、プリント配線板における層間絶縁層、ソルダーレジスト層等を作製するために広く適用可能である。勿論、感光性樹脂組成物から厚み25μmより薄い電気絶縁性の層を作製することも可能である。
皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であることは、次の方法で確認できる。適当な基材上に感光性樹脂組成物を塗布することで湿潤塗膜を形成し、この湿潤塗膜を80℃で40分加熱することで、厚み25μmの皮膜を形成する。この皮膜に紫外線を透過する露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して皮膜に500mJ/cm2の条件で紫外線を照射する。露光後の皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射してから、純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射する。この処理後の皮膜を観察した結果、皮膜における非露光部に対応する部分が除去されて残渣が認められない場合に、現像可能であると判断できる。
以下に、本実施形態による感光性樹脂組成物から形成された層間絶縁層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を、図1Aから図1Eを参照して説明する。本方法では、層間絶縁層にフォトリソグラフィー法でスルーホールを形成する。
まず、図1Aに示すようにコア材1を用意する。コア材1は、例えば少なくとも一つの絶縁層2と少なくとも一つの導体配線3とを備える。コア材1の一面上に設けられている導体配線3を、以下、第一の導体配線3という。図1Bに示すように、コア材1の第一の導体配線3が設けられている面上に、感光性樹脂組成物から皮膜4を形成する。皮膜4の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。
塗布法では、例えばコア材1上に感光性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。感光性樹脂組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、感光性樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60〜120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、皮膜4を得ることができる。
ドライフィルム法では、まずポリエステル製などの適宜の支持体上に感光性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に感光性樹脂組成物を含むドライフィルムを形成する。これにより、ドライフィルムと、ドライフィルムを支持する支持体とを備える支持体付きドライフィルムが得られる。この支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、ドライフィルムとコア材1に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上からコア材1上へ転写する。これにより、コア材1上に、ドライフィルムからなる皮膜4が設けられる。
皮膜4を露光することで図1Cに示すように部分的に光硬化させる。そのために、例えばネガマスクを皮膜4に当てがってから、ネガマスクを介して皮膜4に紫外線を照射する。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部はスルーホール10の位置と合致する位置に設けられる。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
なお、露光方法として、ネガマスクを用いる方法以外の方法が採用されてもよい。例えば光源から発せられる紫外線を皮膜4上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で皮膜を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。
また、ドライフィルム法では、支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、支持体を剥離することなく、支持体を透過させて紫外線をドライフィルムからなる皮膜4に照射することで皮膜4を露光し、続いて現像処理前に皮膜4から支持体を剥離してもよい。
続いて、皮膜4に現像処理を施すことで、図1Cに示す皮膜4の露光されていない部分5を除去し、これにより、図1Dに示すようにスルーホール10が形成される位置に穴6を設ける。現像処理では、感光性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
続いて、皮膜4を加熱することで熱硬化させる。加熱の条件は、例えば加熱温度120〜200℃の範囲内、加熱時間30〜120分間の範囲内である。このようにして皮膜4を熱硬化させると、層間絶縁層7の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜4に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜4の光硬化を更に進行させることができる。
以上により、コア材1上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層間絶縁層7が設けられる。この層間絶縁層7上に、アディティブ法などの公知の方法で、第二の導体配線8及びホールめっき9を設けることができる。これにより、図1Eに示すように、第一の導体配線3、第二の導体配線8、第一の導体配線3と第二の導体配線8との間に介在する層間絶縁層7、並びに第一の導体配線3と第二の導体配線8とを電気的に接続するスルーホール10を備えるプリント配線板11が得られる。なお、図1Eにおいて、ホールめっき9は穴6の内面を覆う筒状の形状を有するが、穴6の内側全体にホールめっき9が充填されていてもよい。
また、図1Eのようなホールめっき9を設ける前に、穴6の内側面全体と層間絶縁層7の外表面の一部とを粗化することができる。このようにして、層間絶縁層7の外表面の一部と、穴6の内側面とを粗化することでコア材1とホールめっき9との密着性を向上することができる。
層間絶縁層7の外表面の一部と穴6の内側面全体とを粗化するにあたって、酸化剤を用いた一般的なデスミア処理と同じ手順で行うことができる。例えば、層間絶縁層7の外表面に酸化剤を接触させて層間絶縁層7に粗面を付与する。しかし、これに限らず、プラズマ処理、UV処理やオゾン処理等の硬化物に粗面を付与する手法を適宜採用することができる。
前記酸化剤は、デスミア液として入手可能な酸化剤であってもよい。このような酸化剤は、例えば過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムの群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸塩を含有することができる。
ホールめっき9を設けるにあたって、粗化された外表面の一部と、穴6の内側面とに無電解金属メッキ処理を施して初期配線を形成することができる。その後、電解金属メッキ処理で初期配線に電解質メッキ液中の金属を析出させることでホールめっき9を形成することができる。
本実施形態による感光性樹脂組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
まず、コア材を用意する。コア材は、例えば少なくとも一つの絶縁層と少なくとも一つの導体配線とを備える。コア材の導体配線が設けられている面上に、感光性樹脂組成物から皮膜を形成する。皮膜の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。塗布法とドライフィルム法としては、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。皮膜を露光することで部分的に光硬化させる。露光方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。続いて、皮膜に現像処理を施すことで、皮膜の露光されていない部分を除去し、これにより、コア材上に、皮膜の露光された部分が残存する。続いて、コア材上の皮膜を加熱することで熱硬化させる。現像方法及び加熱方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜の光硬化を更に進行させることができる。
以上により、コア材上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるソルダーレレジスト層が設けられる。これにより、絶縁層とその上の導体配線とを備えるコア材、並びにコア材における導体配線が設けられている面を部分的に覆うソルダーレジスト層を備える、プリント配線板が得られる。なお、ソルダーレジスト層には、前記層間絶縁層と同様に粗面が付与されてもよい。それにより、ソルダーレジスト層と、導体配線やはんだ等を構成する金属材料との密着性を向上させることができる。
本実施形態では、感光性樹脂組成物の乾燥物を含有するドライフィルムから、ソルダーレジスト層や層間絶縁層等の電気絶縁性層を特に良好に形成することができる。この電気絶縁性層に粗面を付与することで、電気絶縁性層と前記金属材料との密着性を向上することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(1)カルボキシル基含有樹脂の合成
(1−1)合成例A−1〜合成例A−4及び合成例B−1〜合成例B−3
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、表1中の「第一反応」欄に示す成分を加えて、これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内でエアバブリング下で攪拌しながら、「反応条件」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に表1の「第二反応」欄に示す成分を投入し、エアバブリング下で攪拌しながら「反応条件(1)」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。続いて、合成例B−1〜合成例B−3を除き、エアバブリング下で攪拌しながら「反応条件(2)」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂の多分散度(但し、合成例B−1〜合成例B−3のカルボキシル基含有樹脂を除く)、重量平均分子量、及び酸価は表1中に示す通りである。成分間のモル比も表1に示している。
なお、表1中の(a1)欄に示す成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ化合物1:式(7)で示され、式(7)中のR1〜R8がすべて水素であるエポキシ当量250g/eqのビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物。
・エポキシ化合物2:式(7)で示され、式(7)中のR1及びR5がいずれもメチル基、R2〜R4及びR6〜R8がいずれも水素であるエポキシ当量279g/eqのビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物。
また、表1中の(g1)欄に示す成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ化合物3:ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製の品名NC−3000−H、エポキシ当量288g/eq)。
・エポキシ化合物4:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDC−700−5、エポキシ当量203g/eq)。
・エポキシ化合物5:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、品番jER1001、エポキシ当量472g/eq)。
また、表1中の(a2)又は(g2)欄に示される成分の詳細は次の通りである。
・ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート:東亜合成株式会社製、商品名アロニックスM−5300(数平均分子量290)。
[実施例1〜12、比較例1〜3]
後掲の表に示す成分の一部を3本ロールで混練してから、後掲の表に示す全成分をフラスコ内で撹拌混合することで、感光性樹脂組成物を得た。感光性樹脂組成物を作製する際、メラミン化合物(F)を感光性樹脂組成物中で均一に分散させた。なお、表2〜表4に示される成分の詳細は次の通りである。
・不飽和化合物A:トリメチロールプロパントリアクリレート。
・不飽和化合物B:ε―カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPCA−20)。
・光重合開始剤A:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、品番Irgacure TPO)。
・光重合開始剤B:1−ヒドロキシ-シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製、品番Irgacure 184)。
・光重合開始剤C:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン。
・結晶性エポキシ樹脂A:ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の品名YX−4000、融点105℃、エポキシ当量187g/eq)。
・結晶性エポキシ樹脂B:ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−80XY、融点75〜85℃、192g/eq)。
・非晶性エポキシ樹脂Cの溶液:長鎖炭素鎖含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製、品番EPICLON EXA−4816、液状樹脂、エポキシ当量410g/eq)を固形分90%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させた溶液(固形分90%換算のエポキシ当量は、455.56g/eq)。
・非晶性エポキシ樹脂Dの溶液:ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製の品名NC−3000、軟化点53〜63℃、エポキシ当量280g/eq)を固形分80%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させた溶液(固形分80%換算のエポキシ当量は、350g/eq)。
・カルボキシル基を有する有機フィラーAの分散液:平均一次粒子径0.07μmの架橋ゴム(NBR)を、分散液全量に対して含有量15重量%で、メチルエチルケトン中で分散させた分散液(JSR株式会社製、品番XER−91−MEK;酸価10.0mgKOH/g)。
・カルボキシル基を有する有機フィラーBの分散液:カルボキシル基変性水素化ニトリルゴムのポリマー(線状粒子)を、分散液全量に対して含有量17重量%で、メチルエチルケトン中で分散させた分散液(JSR株式会社製、品番XER−32−MEK)。
・カルボキシル基及び水酸基を有する有機フィラーCの分散液:平均一次粒子径0.07μmの架橋ゴム(SBR)を、分散液全量に対して含有量15重量%で、メチルエチルケトン中で分散させた分散液(JSR株式会社製、品番XSK−500)。
・エポキシ基を有する有機フィラー:パウダー状で、平均一次粒子径0.3μmのグリシジル変性アクリロニトリルブタジエンゴム。
・メラミン:日産化学工業株式会社製、微粉メラミン;感光性樹脂組成物中において平均粒子径8μmで分散。
・メラミン誘導体:メラミンと1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸の反応物であるメラミン−テトラヒドロフタル酸塩;感光性樹脂組成物中において平均粒子径6μmで分散。
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製、品番IRGANOX 1010)。
・シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
・界面活性剤:DIC製、品番メガファックF−477。
・レオロジーコントロール剤:ビッグケミー・ジャパン株式会社製、品番BYK−430。
・溶剤A:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
・溶剤B:メチルエチルケトン。
[テストピースの作製]
各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を次のように用いてテストピースA及びBを作製した。
<テストピースA>
各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、95℃で25分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み25μmのドライフィルムを形成した。
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR−4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/スペース幅が50μm/50μmであるくし型電極を形成し、これにより、プリント配線板(コア材)を得た。このプリント配線板の導体配線における厚み1μm程度の表面部分を、エッチング剤(メック株式会社製の品番CZ−8100)で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。このプリント配線板の一面全面に上記ドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件を、0.5MPa、80℃、1分間に設定した。これにより、プリント配線板上に、上記ドライフィルムからなる皮膜を形成した。この皮膜に、直径50μmの円形形状を含むパターンを有する非露光部を有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して皮膜に250mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて皮膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して皮膜に穴を形成した。なお、露光後に上記ドライフィルムからポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。続いて皮膜に1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。そして、皮膜を160℃で60分間加熱した。これにより、プリント配線板上に、感光性樹脂組成物の硬化物(ドライフィルムの硬化物ともいえる)からなる層を形成した。これにより、テストピースAを得た。
<テストピースB>
各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物から形成されたドライフィルムの厚みを30μmにした以外は、テストピースAと同様の手順で、テストピースBを得た。
[評価試験]
(1)現像性
各実施例及び比較例のテストピースAについて、前記現像処理後のプリント配線板の非露光部を観察し、その結果を次のように評価した。
良:露光されていない皮膜が全て除去されている。
不適:露光されていない皮膜の一部がプリント配線板上に残存した。
(2)解像性
各実施例及び比較例のテストピースAについて、硬化物からなる層に形成された穴を観察し、その結果を次のように評価した。
A:穴の底の直径が40μm以上である。
B:穴の底の直径が25μm以上40μm未満である。
C:穴の底の直径が25μm未満であるか、或いは明確な穴が形成されない。
(3)耐メッキ性
各実施例及び比較例のテストピースAの導体配線における外部に露出する部分の上に、市販の無電解ニッケルメッキ浴を用いてニッケルメッキ層を形成してから、市販の無電解金メッキ浴を用いて金メッキ層を形成した。これにより、ニッケルメッキ層及び金メッキ層からなる金属層を形成した。硬化物からなる層及び金属層を目視で観察した。また、硬化物からなる層に対してセロハン粘着テープ剥離試験をおこなった。その結果を次のように評価した。
A:硬化物からなる層及び金属層の外観に異常は認められず、セロハン粘着テープ剥離試験による硬化物からなる層の剥離は生じなかった。
B:硬化物からなる層に変色が認められるが、セロハン粘着テープ剥離試験による硬化物からなる層の剥離は生じなかった。
C:硬化物からなる層の浮き上がりが認められ、セロハン粘着テープ剥離試験による硬化物からなる層の剥離が生じた。
(4)線間絶縁性
各実施例及び比較例のテストピースAにおける導体配線(くし型電極)にDC30Vのバイアス電圧を印加しながら、プリント配線板を121℃、97%R.H.の試験環境下に100時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層のくし型電極間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次の評価基準で評価した。
A:試験開始時から100時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に106Ω以上を維持した。
B:試験開始時から80時間経過するまでは電気抵抗値が常に106Ω以上を維持したが、試験開始時から100時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
C:試験開始時から80時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
(5)層間絶縁性
各実施例及び比較例のテストピースAについて、硬化物からなる層の上に導電テープを貼り付けた。この導電テープにDC100Vのバイアス電圧を印加しながら、テストピースAを85℃、85%R.H.の試験環境下に2000時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層の導体配線と導電テープとの間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次の評価基準で評価した。
A:試験開始時から2000時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に108Ω以上を維持した。
B:試験開始時から1000時間経過するまでは電気抵抗値が常に108Ω以上を維持したが、試験開始時から2000時間経過する前に電気抵抗値が108Ω未満となった。
C:試験開始時から1000時間経過する前に電気抵抗値が108Ω未満となった。
(6)PCT(プレッシャクッカ試験)
各実施例及び比較例のテストピースAを121℃、100%RHの環境下で100時間放置した後、硬化物からなる層の外観を次の評価基準で評価した。
A:硬化物からなる層に異常は見られなかった。
B:硬化物からなる層に変色が見られた。
C:硬化物からなる層に大きな変色が見られ、一部膨れが発生していた。
(7)粗化耐性
各実施例及び比較例のテストピースBについて、硬化物からなる層の外表面を、メッキ処理の前工程において一般的なデスミア処理に基いた下記手順で粗化させた。デスミア用膨潤液として市販されている膨潤液(アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP)を用いて膨潤処理を60℃で5分間行い、硬化物の表面を膨潤させた。そして、この膨潤された表面に対して湯洗を行った。続いて過マンガン酸カリウムを含有し、デスミア液として市販されている酸化剤(アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクトCP)を用いて粗化処理を80℃で10分間行い、湯洗後の硬化物表面を粗化した。このように粗化された硬化物表面に対して湯洗を行い、更に、この硬化物表面におけるデスミア液の残渣を中和液(アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューション・セキュリガントP)を用いて40℃で5分間除去した。そして、中和後の硬化物表面を水洗した。このようにして粗面が付与された皮膜(感光性樹脂組成物の硬化物からなる層)の膜厚を測定し、デスミア液に対する硬化物の粗化耐性を次の評価基準で評価した。
A:粗化による膜厚の減少が5μm未満である。
B:粗化による膜厚の減少が5μm以上、10μm未満である。
C:粗化による膜厚の減少が10μm以上である。
(8)銅メッキ層の密着性
各実施例及び比較例のテストピースBについて、硬化物からなる層に、上記(7)の方法で粗面を付与した後、市販の薬液を用いてテストピースBの粗面に無電解銅メッキ処理で初期配線を形成した。この初期配線が設けられたテストピースBを150℃で1時間加熱した。次に電解銅メッキ処理により、2A/dm2の電流密度の下で市販の薬液から初期配線に厚さ33μmの銅を直接析出させ、続いて銅を析出させたテストピースBを180℃で30分間加熱して銅メッキ層を形成した。このようにして形成された銅メッキ層と、テストピースBにおける硬化物との密着性を次の評価基準で評価した。ここで、無電解銅メッキ処理後及び電解銅メッキ処理後の両方の加熱時にテストピースBにブリスターが確認されない場合、銅メッキ層と硬化物との密着強度を下記の手順で評価した。この密着強度はJIS−C6481に準拠して測定された。
A:無電解銅メッキ処理後の加熱時にブリスターが確認されず、電解銅メッキ処理後の加熱時でもブリスターが確認されなかった。また、銅の密着強度は0.4kN/m以上であった。
B:無電解銅メッキ処理後の加熱時にブリスターが確認されず、電解銅メッキ処理後の加熱時でもブリスターが確認されなかった。また、銅の密着強度は、0.4kN/m未満であった。
C:無電解銅メッキ処理後の加熱時、或いは電解銅メッキ処理後の加熱時にブリスターが確認された。
表2〜表4に、以上の結果を示す。