JP6201289B2 - 画像表示体及び情報媒体 - Google Patents
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Description
回折格子を利用した表示体では、複数の溝を形成してなるレリーフ型の回折格子を使用することが一般的である。レリーフ型回折格子は、通常、フォトリソグラフィを利用して製造した原版から複製することにより得られる。
その後、このようにして得られた表示体を、例えば紙又はプラスチックフィルムからなる基材上に接着層又は粘着層を介して貼り付ける。以上のようにして、偽造防止対策を施した表示体を得る。
しかしながら、偽造防止対策が必要な物品の多くでレリーフ型回折格子を含んだ表示体が用いられるようになった結果、この技術が広く認知され、これに伴い、表示体自体の偽造の発生が増加する傾向にある。そのため、回折光によって虹色の光を呈することのみを特徴とした表示体を用いて充分な偽造防止効果を達成することが難しくなってきている。
特許文献2及び特許文献3は何れも、一般的なレリーフ型回折格子とは異なる視覚効果によって差別化しており、より高い偽造防止効果を期待できる。
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、従来の回折格子とは異なる特徴的な視覚効果、及びより高い意匠性を併せ持つ画像表示体及び情報媒体を提供することを目的とする。
また、上記の画像表示体において、前記凹凸構造は、前記凹凸構造の深さ及び/又は高さが徐々に変化してなる階段パターンからなることとしてもよい。
また、上記の画像表示体において、前記凹凸構造は、ブレーズド格子であることとしてもよい。
また、上記の画像表示体において、前記構造領域の一辺の寸法は、87μm以下であることとしてもよい。
本発明の別の態様は、上述の画像表示体と、前記画像表示体を支持する物品とを具備したことを特徴とする情報媒体である。
図1は、本発明の一態様に係る画像表示体を概略的に示す平面図である。
図2は、図1に示す画像表示体のA−A線に沿った断面図である。
この画像表示体10は、光透過層11と光反射層14とからなる。図1及び図2に示す例では、光透過層11の一方の面に複数の構造領域12a及び非構造領域13を備えている。そして、この複数の構造領域12aはマトリクス状に配置されている。
また、図1及び図2に示す例では、光反射層14は構造領域12a及び12b及び非構造領域13の全体を被覆するように備えてあるが、光反射層14は構造領域の少なくとも一部を被覆するように備えて有ればよい。
また、図1及び図2に示す例では、光透過層11自体に複数の凹部が形成してあるが、実際には平坦な光透過層11の一方の面上に積層した光透過性の層に凹部及び/又は凸部が備えてあってもよい。
なお、立体原画像又は平面原画像及び、それに基づきディザリングを用いて設定した構造パターン、構造領域の配置方法については後述するため、ここでは構造領域の配置を簡略化した図1及び図2を用いて説明する。
上記した材料を、所望の凹凸構造を賦型して硬化させることにより、凹凸構造を成型することができる。
光反射層14の材料には、透明被膜もしくは、金属被膜等を用いることができる。光反射層14の材料が透明被膜である場合には、光透過層11と屈折率が異なる誘電体層、誘電体多層膜、もしくは高屈折率材料を使用することができる。透明被膜としては、例えば、屈折率が2.0以上であるZnS、TiO2、PbTiO2、ZrO、ZnTe、PbCrO4等が好ましい。これは、光透過層11との屈折率差が小さい場合、凹凸構造からの射出光の視覚効果が弱まってしまうためである。具体的には、光透過層11と透明被膜との屈折率差は、少なくとも0.5以上あるとよい。
図3は、凸レンズを概略的に示す平面図である。
図4は、図3に示す凸レンズのA−A線に沿う断面図である。
図5は、フレネルレンズを概略的に示す平面図である。
図6は、図5に示すフレネルレンズのA−A線に沿う断面図である。
図4に示す凸レンズ21には、入射光23が入射しており、凸レンズ21からは入射光23に対応する反射光24が射出される。
なお、ここでは、図3から図6に示す凸レンズ21及びフレネルレンズ22の表面は鏡面として説明している。実際には凸レンズ及びフレネルレンズの表面は必ずしも鏡面である必要はなく、透過型レンズであってもよい。ここでは、説明を簡略化するために反射型レンズの例のみを図示及び説明するが、透過型レンズにおいても同様である。
すなわち、レンズの曲率を同一とすることにより、フレネルレンズ22は凸レンズ21と同一のレンズとして機能することが出来る。
ここで、図4及び図6から明らかなように、フレネルレンズ22の場合、レンズの高さ(Z方向の大きさ)を、同一の機能を有する凸レンズ21よりも小さくすることが可能である。
ここまで、図3から図6を用いてフレネルレンズ22について説明した。一方で、同様の手法で領域を分割することにより、レンズに限らず、様々な自由曲面を薄膜化させて表現することが可能である。つまり、様々な自由曲面を薄膜化した平面上に表現した画像表示体を作製することが可能である。
フレネルレンズ22を作製する方法として、例えば、切削が挙げられる。しかし、より薄膜化するためには、前記したように、領域の分割数をより増加させなければならない。そのため、非常に微細な画像を表現する場合には、電子ビームを用いて感光性材料上に凹凸を形成する方法がある。
電子線描画装置の露光方式としては、ポイントビーム方式、可変矩形方式、部分一括露光方式の3つに大きく分類できる。
ゆえに、ポイントビーム方式の主用途は研究開発であり、量産用途には適していない。量産用途の方式としては、可変矩形方式、又は部分一括露光方式と可変矩形方式の組み合わせが用いられる。
図7に示すフレネルレンズ22は単一であり、XY平面で5×5に分割された構造領域12cがある。構造領域12cは、画像における画素に相当している。複数の画素の集合として画像が表現されるように、単一の該フレネルレンズ22は、複数の構造領域12cの集合からなっている。
例えば、同一の構造パターンを有する構造領域が規則的に配置することで特定の画像が表現されている場合、その画像のデータは高い圧縮率で圧縮可能である。一方で、図7に示すフレネルレンズ22の場合、同一の構造パターンを有する構造領域が無いため、そのデータを高圧縮率で圧縮するのは困難となる。
なお、図8に示す構造領域12cは、図7にて最も左上に位置する構造領域に相当する。
前記したように、量産用途として用いられるEB(電子線描画装置)の露光方式は、一般的には可変矩形方式、又は部分一括露光方式と可変矩形方式の組み合わせである。ゆえに、図7において曲線で示されている構造パターンは何れも、図8に示すように、複数の微小な矩形の組み合わせで描かれている。
また、異なるサイズの矩形が不規則に配置されているため、そのデータを高圧縮率で圧縮するのは困難である。
格子の方向がX軸又はY軸に平行な場合は言うまでもなく、それ以外の格子角度の場合でも、比較的限られた数の矩形パターンの組み合わせで置き換えることができ、かつ、その配置方法も比較的規則的となる。
つまり、図7に示すフレネルレンズ22の構造パターンを直接矩形パターンに置き換えた場合、そのデータ量は非常に膨大なものとなり、かつ、描画時間が長時間となることより、描画負荷は非常に大きくなる。
図9は、本発明の一態様に係る画像表示体を概略的に示す平面図である。
図9に示す例では、表示体10は25個の構造領域12dを備えている。
ところで、図9に備えてある25個の構造領域12dは、図7に示す構造領域12cをそれぞれ単純な回折格子パターンに置き換えたものである。
ここでは、各構造領域12cから射出する射出光のうちの代表的な射出方向を定め、それに対応した回折格子を設定することで、図9に示す画像表示体10を構成している。
図10に示す画像表示体10は、4種類の構造領域12e、12f、12g、12hを備えており、何れも回折格子パターンである。
構造領域12e、12f、12g、12hの順で格子のピッチがより細かくなっている。例えば、リニアフレネルレンズの構造パターンに対して、図9と同様に回折格子パターンへの置き換えを行った場合、図10に示す画像表示体10のような、ピッチが徐々に変化する配置となる。
ここで、構造領域12e、12f、12g、12hが備える回折格子パターンのピッチをそれぞれ、500本/mm、1000本/mm、1500本/mm、2000本/mmとおく。
図10に示す画像表示体10は、XY平面上で4×6の構造領域、すなわち6行4列の構造領域を備えている。また、最も左の列から順に第1列、第2列、第3列、第4列と呼ぶとする。この呼び方は図11以降でも同様であるとする。
図11に示す画像表示体10も同様に、4×6の構造領域を備えている。第1列、第2列、第3列、第4列はいずれも6つの構造領域からなり、それぞれの列が備える構造領域の空間周波数の平均値はそれぞれ、500本/mm、1000本/mm、1500本/mm、2000本/mmとなる。
図12及び図13は、本発明の一態様に係る画像表示体を概略的に示す平面図である。
ここで、構造領域12i、12j、12k、12lが備える回折格子の格子角度をそれぞれ、0°、22.5°、45°、67.5°とおく。
図13に示す画像表示体10において、それぞれの列が備える構造領域の格子角度の平均値はそれぞれ、0°、22.5°、45°、67.5°となる。
つまり、図12に示す画像表示体10と図13に示す画像表示体のそれぞれが備える構造領域の格子角度を列単位で比較すると、類似していると言える。
つまり、図11及び図13に示す画像表示体10が備える構造領域の種類は、図10及び図12に示す画像表示体10に備えてある構造領域の種類よりも少ないが、同等の視覚効果を有している。
前記したように、構造領域は画像における画素に相当している。
ゆえに、図11及び図13に示す画像表示体10が備える構造領域の配置は、図10及び図12に示す画像表示体が備える構造領域の配置に対してディザリングを施したものであると言える。ここで言うディザリングは、それぞれ、図11では空間周波数の値に対して行われており、図13では格子角度の値に対して行われている。なお、図11及び図13に示す画像表示体10は概略図であって、該画像表示体10が備える構造領域の配置方法は具体的なアルゴリズムに従って算出されたものではなく、説明を簡便とするために便宜上定めたものである。
一点目は、データ量が大きくなる点である。しかし、本実施形態によれば、描画時の矩形数を減らし、かつ高い圧縮率で圧縮可能なデータを作成できるため、データ量を著しく減らすことができる。
二点目は、描画時間が長くなる点である。しかし、本実施形態によれば、描画時の矩形数を減らし、かつ矩形サイズの種類を減らすことにより、描画時間を大きく短縮することが可能となる。
つまり、本実施形態によれば、画像の高精細さ、視覚効果を損なうことなく、構造パターン作製の負荷を大きく軽減することが可能となる。
図14は、本発明の一態様に係る構造パターンを概略的に示す平面図である。
図14に示す構造パターン15は、Y軸に平行な直線状の凹凸構造がランダムな間隔で配置されている。該構造パターンは本発明の一態様として実施可能な構造パターンである。
ここまで、本発明で実施可能な構造パターンとして、例えば図2に示すような、深さが2段階となる2値構造をベースとして説明してきた。しかし、本発明で実施可能な構造パターンは2値構造に限らない。
図15は、断面形状が鋸歯状となる構造パターン15bの断面図である。構造パターン15bも本発明で実施可能な構造パターンとして採用することができる。ここで、上述の「断面形状」とは、Y軸に平行な直線状の凹凸構造をX軸に沿って切断した場合の断面の形状を指す。
なお、図15に示す構造パターン15bは、ブレーズド格子となっている。ブレーズド格子の場合、虚像となる射出光をより抑えることが可能となり、かつ、所望の射出光をより強くすることができる。ゆえに本実施形態によれば、構造パターン15bをブレーズド格子とすることによって、より高い意匠性を有する画像表示体及び情報媒体を提供することが可能となる。
図16は、本発明の一態様に係る構造パターンを概略的に示す断面図である。
図16に示す構造パターン15cは、構造の高さが徐々に変化する階段状のパターンである。該階段状のパターンを用いた場合でも、前記した鋸歯状の構造と同様に、虚像となる射出光を無くすことができるか、又は著しく弱くすることが可能となる。
前記したように、量産用途として用いられるEB(電子線描画装置)の露光方式は、一般的には可変矩形方式、又は部分一括露光方式と可変矩形方式の組み合わせである。ゆえに、図16に示す構造パターン15cのような階段形状は、図15に示す鋸歯状のパターンよりも容易に作製可能である。
一般的に、可視光線の波長域は、概ね380nmから750nmの範囲である。以降、可視光線の波長を「λ」で表記する。
反射型の場合、光透過層11の面に対する凹凸構造の最深部の深さ又は最高部の高さがλ/2となる時に最も明るく観察することが出来る。一方で、透過型の場合、光透過層11の面に対する凹凸構造の最深部の深さ又は最高部の高さの光路長がλとなるときに最も明るく観察することが出来る。透過型で観察する場合、通常、樹脂で成型された凹凸構造と界面をなすのは空気層となる。一般的に樹脂の屈折率は約1.5であり、空気層の屈折率は約1.0である。ゆえに、透過型で観察する場合に光路長がλとなるときのその実際の距離は2λとなる。
ゆえに、本実施形態によれば、光透過層11の面に対する凹凸構造の最深部の深さ又は最高部の高さが190nm以上1.5μm以下の範囲内であることによって、より高い意匠性を有する画像表示体及び情報媒体を提供することが可能となる。
この情報媒体200は、磁気カードであって、基材51を含んでいる。基材51には、印刷層52と帯状の磁気記録層53とが形成されている。更に、基材51には、画像表示体10が偽造防止用又は個人識別用ラベルとして貼り付けられている。
この情報媒体200は、画像表示体10を含んでいる。ゆえに、この情報媒体200の偽造又は模造は困難である。
11…光透過層
12a、12b、12c、12d…構造領域
13…非構造領域
14…光反射層
15a、15b、15c…構造パターン
21…凸レンズ
22…フレネルレンズ
23…入射光
24…反射光
51…基材
52…印刷層
53…磁気記録層
200…情報媒体
Claims (7)
- 光透過層の少なくとも一方の面上に複数の構造領域を配置することにより画像を表示する画像表示体であって、
前記画像は、立体原画像又は平面原画像に基づく画像であり、
前記複数の構造領域は、マトリクス状に配置されており、
前記各構造領域は、方向の揃った複数の直線状の凹部及び/又は凸部からなる凹凸構造を備えており、
前記複数の構造領域の少なくとも一部は、光反射層を備えており、
前記凹凸構造の前記凹部同士の間及び/又は前記凸部同士の間及び/又は前記凹部と前記凸部との間の距離、及び前記凹凸構造の深さ及び/又は高さによって決定される空間周波数、及び前記凹凸構造の延在方向によって決定される格子角度、及び前記構造領域の面積の少なくとも一つは、前記立体原画像又は前記平面原画像に基づきディザリングを用いて設定され、
前記複数の構造領域は、前記空間周波数及び前記格子角度が同じ複数の構造領域が連続して配置された第1の連続構造領域と、前記第1の連続構造領域に隣接し、前記空間周波数及び前記格子角度が同じ複数の構造領域が連続して配置された第2の連続構造領域と、を少なくとも備え、
前記第1の連続構造領域と、前記第2の連続構造領域とは、前記空間周波数及び前記格子角度の少なくとも一方が互いに異なり、
前記第1の連続構造領域内に、前記第1の連続構造領域を構成する前記構造領域とは前記空間周波数及び前記格子角度の少なくとも一方が異なる前記構造領域は配置されておらず、
前記第2の連続構造領域内に、前記第2の連続構造領域を構成する前記構造領域とは前記空間周波数及び前記格子角度の少なくとも一方が異なる前記構造領域は配置されていないことを特徴とする画像表示体。 - 前記凹凸構造は、前記凹部及び/又は前記凸部の延在方向と直交する方向における断面形状が鋸歯状となるパターンからなることを特徴とする請求項1に記載の画像表示体。
- 前記凹凸構造は、前記凹凸構造の深さ及び/又は高さが徐々に変化してなる階段パターンからなることを特徴とする請求項1に記載の画像表示体。
- 前記凹凸構造は、ブレーズド格子であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示体。
- 前記凹凸構造の最深部の深さ及び/又は最高部の高さは、190nm以上1.5μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の画像表示体。
- 前記構造領域の一辺の寸法は、87μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の画像表示体。
- 請求項1から請求項6の何れか1項に記載の画像表示体と、前記画像表示体を支持する物品とを具備したことを特徴とする情報媒体。
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