JP6196931B2 - スナバ回路内蔵モジュール - Google Patents
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Description
電流をスイッチングする半導体素子は動作すると発熱する。特に、SiCを母材とする半導体素子は損失が少ない一方において、動作温度が高いという特徴を備えている。またスナバ回路はコンデンサを必要とする。多くのコンデンサの場合、その容量は温度によって変化する。そのために半導体素子とスナバ回路を一体化してモジュール化すると、半導体素子の発熱によってコンデンサが加熱され、コンデンサが昇温してコンデンサの容量が適値からずれてしまう現象が生じる。コンデンサの容量が適値からずれてしまうと、リンギングを抑えることができず、無駄な損失が増大してしまう。
本明細書では、コンデンサが加熱されてコンデンサ容量が適値からずれてしまう現象の発生を避けながら、半導体素子とスナバ回路を一体化してモジュール化する技術を開示する。
本明細書で開示するモジュールでは、上面側配線層と下面側配線層の間に、電流をスイッチングする半導体素子と、スナバ回路を構成する積層体が並列に接続されている。半導体素子と積層体は、共通の樹脂形成体内に封止されている。
上面側配線層と下面側配線層は、それ自体が形状を維持する金属部材等であってもよいが、絶縁板上に形成されているものでもよい。後者の場合は、上面側絶縁板の下面に上面側配線層を形成し、下面側絶縁板の上面に下面側配線層を形成する。
グラファイトシートとコンデンサとグラファイトシートの順で積層すると、中間にあるコンデンサは熱伝導率が低い(その意味では断熱性の)シートで挟まれた状態となり、周囲から断熱される。半導体素子が昇温しても、コンデンサは断熱され、コンデンサの昇温幅が低く抑えられる。共通の樹脂形成体内に半導体素子とコンデンサを封止しても、コンデンサに生じる温度変化幅を抑えることができる。
上面側配線層とコンデンサの間に上面側グラファイトシートが介在し、下面側配線層とコンデンサの間に下面側グラファイトシートが介在していると、上面側配線層と下面側配線層の間に、上面側グラファイトシートとコンデンサと下面側グラファイトシートを直列に接続した回路が提供される。上面側グラファイトシートと下面側グラファイトシートのシート面に直交する方向の電気抵抗が高いので、上面側グラファイトシートと下面側グラファイトシートがスナバ抵抗として動作する。
上記の技術によると、動作すると発熱する半導体素子と、熱変化に抗してスナバ容量とスナバ抵抗を適値に維持する必要があるスナバ回路を一体化してモジュール化することができる。
なお冷却器を用いる場合は、上面側絶縁板の下面に上面側配線層を形成することで上面側冷却器と上面側配線層を絶縁することが多い。同様に、下面側絶縁板の上面に下面側配線層を形成することで下面側冷却器と下面側配線層を絶縁することが多い。配線層と絶縁板は分離可能なものであってもよいし、配線層が絶縁板上に形成されていてもよい。絶縁方法はこれに限られない。冷却器側に絶縁層を形成してもよいし、冷却器自体を絶縁材料で形成してもよい。
発熱量は微小であるもののコンデンサも動作すると発熱する。コンデンサの発熱が問題となる場合は、複数個のコンデンサに分割し、その複数個のコンデンサを半導体素子の周囲に配置するのが有利である。コンデンサを冷却する効率が増大する。
コンデンサを複数個に分割してスナバ容量を適値に維持するためには、モジュール内に複数個のツェナーダイオードを付加し、個々のツェナーダイオードが対応するコンデンサに通電するか否かを切換えるようにすることが好ましい。ツェナーダイオードの降伏電圧は温度によって変化する。その特性を利用することで、コンデンサごとに、温度によって導通させるか否かを切換えることができる。
ツェナーダイオードに代えて、トランジスタを用いてもよい。温度によってトランジスタのオン・オフを制御すれば、コンデンサごとに、温度によって導通させるか否かを切換えることができる。
(第1特徴)半導体素子は、上面側電極と下面側電極を備えている。
(第2特徴)半導体素子の上面に、上面側電極と制御電極が形成されている。
(第3特徴)上面側電極は金属ブロックを介して上面側配線層に接続され、制御電極の上方は金属ブロックで覆われない。
(第4特徴)制御電極の上方にある、金属ブロックで覆われない空間を、制御電極に対する導電路が伸びている。
上面側配線板30は、上面側絶縁板32と、その下面に形成されている第1上面側配線層34と、第2上面側配線層36を備えている。下面側配線板80は、下面側絶縁板82と、その上面に形成されている下面側配線層84を備えている。上面側配線層34,36と下面側配線層84の間に、半導体素子40が挟まれている。半導体素子40の上面には、制御電極42と、第1上面側電極44と、第2上面側電極46が形成されており、半導体素子40の下面には、図示しない下面側電極が形成されている。半導体素子40の第1上面側電極44は第1上面側配線層34に導通し、半導体素子40の第2上面側電極46は第2上面側配線層36に導通し、半導体素子40の下面側電極は下面側配線層84に導通する。制御電極42には、図示しない導電体が接続される。
本明細書でいう半導体素子は、半導体装置または半導体部品と区別されるものでなく、半導体装置または半導体部品と称されることがある。
モジュール10の第2上面側配線層36は直流電源の正極に接続され、第1上面側配線層34は電気機器に接続され、下面側配線層84は接地されて用いられる。モジュール10は、コンバータ回路として機能する。上面側グラファイトシート50とコンデンサ60と下面側グラファイトシート70の直列回路100は、電流のスイッチングに伴って生じるリンギングを抑えるスナバ回路である。
モジュール10では、半導体素子40とスナバ回路100が極めて近接した位置におかれている。そのために寄生インダクタンスが小さい。モジュール10によると、寄生インダクタンスが小さくてスナバ回路に電流が流れやすいことから、リンギング抑制効果が高い。
図4に示すように、第2実施例のモジュール10bでは、半導体素子40aのz方向の厚みが薄いために、半導体素子40aと上面側配線層34の間に金属ブロック48が挿入されている。適当な厚みの金属ブロック48を選択することで、半導体素子40aと金属ブロック48の合計高さをスナバ回路100の高さに揃えることができる。また、金属ブロック48を利用すると、制御電極42に対する導電路の配置スペースを確保することができる。
図5に示すように、第3実施例のモジュール10cでは、コンデンサ60が複数個(この場合は8個)に分割され、半導体素子40の周囲に配置されている。この場合、グラファイトシート50cについては、全部のコンデンサ60a〜60hに共通に接し、かつ半導体素子40とは干渉しない形状とする。
第3実施例のモジュール10cによると、小型コンデンサの夫々が、樹脂モールド110と活発に熱交換するために、コンデンサが動作すると発熱するような場合にも対応することができる。
図6に示すように、本実施例では、コンデンサが3個に分割され、それぞれにツェナーダイオードが接続されている。コンデンサは温度が上昇すると、容量が低下する。本実施例では、上記の容量低下を補償するために、温度がT1以下だとツェナーダイオードZD1がオンしてツェナーダイオードZD2,ZD3がオフする。温度がT1〜T2だとツェナーダイオードZD1,ZD2がオンしてツェナーダイオードZD3がオフする。温度がT2以上だとツェナーダイオードZD1,ZD2,ZD3の全部がオンする。T1<T2である。上記の関係が得られると、コンデンサの温度上昇によって容量が低下することが補償され、スナバ容量が適値に維持される。グラファイトシート50,70の断熱性によってコンデンサの温度変化幅を小さく抑え、それにかかわらず生じる温度変化を上記のようにして補償する技術によると、スナバ回路によるリンギング抑制効果を十分に得ながら、スナバ回路による損失を最小限に抑えることが可能となる。図示はしないが、この実施例のモジュールでは、コンデンサとツェナーダイオードの組を樹脂モールド110内に封止する。
図7に示すように、本実施例では、ツェナーダイオードに代えてトランジスタTR1〜TR3を用い、温度によってトランジスタTR1〜TR3のオン・オフを制御する。図8は、温度によってトランジスタTR1〜TR3をオン・オフする関係を示し、低温であればトランジスタTR1のみをオンしてコンデンサC1のみを利用する。高温になればトランジスタTR1,TR2,TR3の全部をオンしてコンデンサC1,C2,C3の全部を利用する。上記によって、コンデンサ温度が上昇するとコンデンサ容量が低下する現象が補償され、温度によらないでスナバ容量を適値に維持することが可能となる。
図9に示すように、半導体素子40が一個のスイッチと一個のダイオードの並列回路を備えており、その半導体素子40と並列にスナバ回路100を接続することがある。この場合は、第1の半導体素子40aと第1のスナバ回路100aで第1のモジュールを構成し、第2の半導体素子40bと第2のスナバ回路100bで第2のモジュールを構成することができる。2つのモジュールを用いて、図9のコンバータ回路を実現することができる。これに代えて、第1半導体素子40aと第1スナバ回路100aと第2半導体素子40bと第2スナバ回路100bの全部を、1個のモジュールに組み込むこともできる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
20:上面側冷却器
30:上面側配線板
32:上面側絶縁板
34:第1上面側配線層
36:第2上面側配線層
40:半導体素子
42:制御電極
44:第1上面側電極
46:第2上面側電極
48:金属ブロック
50:上面側グラファイトシート
60:コンデンサ
70:下面側グラファイトシート
80:下面側配線板
82:下面側絶縁板
84:下面側配線層
90:下面側冷却器
110:樹脂成形体(樹脂モールド)
ZD:ツェナーダイオード
TR:トランジスタ
Claims (6)
- 電流をスイッチングする半導体素子と、電流のスイッチングに伴って生じるリンギングを抑えるスナバ回路と、を備えているモジュールであり、
前記スナバ回路を構成する「グラファイトシートとコンデンサとグラファイトシート」の積層体と、前記半導体素子とが、上面側配線層と下面側配線層の間に並列に接続された状態で、共通の樹脂形成体内に封止されており、
前記積層体が、複数個のコンデンサと複数個のツェナーダイオードを備えており、
各コンデンサに各ツェナーダイオードが接続されており、
個々のツェナーダイオードが、対応するコンデンサに通電するか否かを切換えることを特徴とするモジュール。 - 上面側配線層の上側に上面側冷却器が付加されており、
下面側配線層の下側に下面側冷却器が付加されていることを特徴とする請求項1に記載のモジュール。 - 前記複数個のコンデンサが前記半導体素子の周囲に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のモジュール。
- 電流をスイッチングする半導体素子と、電流のスイッチングに伴って生じるリンギングを抑えるスナバ回路と、を備えているモジュールであり、
前記スナバ回路を構成する「グラファイトシートとコンデンサとグラファイトシート」の積層体と、前記半導体素子とが、上面側配線層と下面側配線層の間に並列に接続された状態で、共通の樹脂形成体内に封止されており、
前記積層体が、複数個のコンデンサと複数個のトランジスタを備えており、
各コンデンサに各トランジスタが接続されており、
個々のトランジスタが、対応するコンデンサに通電するか否かを切換えることを特徴とするモジュール。 - 上面側配線層の上側に上面側冷却器が付加されており、
下面側配線層の下側に下面側冷却器が付加されていることを特徴とする請求項4に記載のモジュール。 - 前記複数個のコンデンサが前記半導体素子の周囲に配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載のモジュール。
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