以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る運転支援装置を示す構成図である。本実施形態に係る運転支援装置100は、図1に示すように、体圧分布センサー110と、制御装置120と、記憶装置130と、ディスプレイ140とを備える。
体圧分布センサー110は、運転席のシート内に設けられており、運転者の臀部が接する座面と、運転者の背部が接するシートの背もたれ面に設けられた複数の圧電素子から構成されている。体圧分布センサー110を構成する各圧電素子は、運転者の運転姿勢に応じた圧力を電圧信号に変換することで、運転者の体圧分布を検出する。なお、体圧分布センサー110により検出された運転者の体圧分布は、制御装置120に出力される。
図2は、本実施形態に係る体圧分布センサー110の設置例を示す図である。体圧分布センサー110は、複数の圧電素子を被覆材で被覆したシート状に形成されており、運転席21の着座部22および背もたれ部23のシート面の内側に設けられている。本実施形態では、図2に示すように、体圧分布センサー110を構成する電圧素子を着座部22および背もたれ部23に8点ずつ配設している。これにより、体圧分布センサー110は、運転者の運転姿勢に応じた各圧電素子の電圧信号を、運転者の運転姿勢に応じた運転者の身体信号として検出することができる。
制御装置120は、運転者の運転姿勢を表示するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
制御装置120は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行環境を検出する走行環境検出機能と、運転者の運転姿勢を検出する運転姿勢検出機能と、運転者の運転姿勢を判定するための適正姿勢範囲を補正する補正機能と、運転者の運転姿勢と適正姿勢とを表示する運転姿勢表示機能とを実現する。以下において、制御装置120が備える各機能について説明する。
走行環境検出機能は、自車両前方を撮像する車載カメラやナビゲーション装置などの車載機器(不図示)から、自車両の走行環境に関する情報を検出する。具体的には、走行環境検出機能は、自車両の走行速度、自車両が走行する道路の幅、自車両周囲の運転視界の状況などを含む道路状況と、運転操作により運転者にかかる筋負荷の負荷状況とを、自車両の走行環境として検出する。
たとえば、走行環境検出機能は、ナビゲーション装置から自車両が走行している道路の種別情報を取得し、取得した道路の種別情報に基づいて、自車両の走行速度を、自車両の走行環境として検出する。たとえば、本実施形態において、走行環境検出機能は、自車両が「一般道路」を走行している場合には、自車両の走行速度を「低速」として検出することができる。また、走行環境検出機能は、自車両が「幹線道路」を走行している場合には、自車両の走行速度を「中速」として検出し、自車両が「高速道路」を走行している場合には、自車両の走行速度を「高速」として検出することができる。なお、走行環境検出機能は、車速センサー(不図示)から自車両の走行速度を取得する構成としてもよい。
また、走行環境検出機能は、ナビゲーション装置から自車両が走行している道路の種別情報を取得し、取得した道路の種別情報に基づいて、自車両が走行している道路の幅を、自車両の走行環境として検出する。たとえば、本実施形態において、走行環境検出機能は、自車両が「駐車場」を走行している場合には、道路の幅を一番「狭い」ものとして検出し、自車両が「狭路」を走行している場合には、道路の幅を次に「狭い」ものとして検出することができる。また、走行環境検出機能は、自車両が「幹線道路」を走行している場合には、道路の幅を一番「広い」ものとして検出し、自車両が「幹線道路」を走行している場合には、道路の幅を次に「広い」ものとして検出することができる。なお、走行環境検出機能は、ナビゲーション装置から実際の道路の幅を取得する構成としてもよい。
さらに、走行環境検出機能は、たとえば、昼夜に関する情報と天候情報とを、ナビゲーション装置、照度センサー、雨滴センサーなどの車載機器から取得することで、自車両周囲の運転視界の状況を、自車両の走行環境として検出する。たとえば、本実施形態において、走行環境検出機能は、夜間かつ雨天である場合には自車両周囲の視界を一番「悪い」と検出し、夜間かつ晴天の場合には自車両周囲の運転視界を次に「悪い」と検出することができる。また、走行環境検出機能は、昼間かつ晴天の場合には車両周囲の運転視界を一番「良い」と検出し、昼間かつ晴天の場合には車両周囲の運転視界を次に「良い」と検出することができる。
加えて、走行環境検出機能は、運転操作により運転者にかかる筋負荷を、自車両の走行環境として検出する。たとえば、本実施形態において、走行環境検出機能は、ステアリング操作による運転者の筋負荷、ペダル操作による運転者の筋負荷、さらに、運転操作により運転者の体幹にかかる筋負荷を、自車両の走行環境として検出することができる。なお、運転者の筋負荷を検出する方法は、特に限定されないが、たとえば、逆動力学により、運転者の運転姿勢に基づいて運転者の筋肉や腱などにかかる負荷(筋負荷)を算出することが可能であり、走行環境検出機能は、たとえば、後述する運転姿勢検出機能により検出された運転者の運転姿勢に基づいて、運転者の運転姿勢に応じた筋負荷を検出することができる。
制御装置120の運転姿勢検出機能は、体圧分布センサー110により検出された運転者の体圧分布に基づいて、運転者の運転姿勢を検出する。ここで、図3は、体圧分布と運転姿勢との関係を示す図である。本実施形態において、運転姿勢検出機能は、図3に示すように、運転者の前後方向の運転姿勢を前傾、中位、後傾の中から特定するとともに、運転者の左右方向における運転姿勢を左傾、中位、右傾の中から特定することで、運転者の運転姿勢を、図3に示す9種類の運転姿勢の中から検出する。以下に、図4および図5を参照して、運転者の運転姿勢の検出方法について説明する。なお、図4は、運転者の前後方向の運転姿勢を検出する方法を説明するための図であり、図5は、運転者の左右方向の運転姿勢の検出方法を説明するための図である。
具体的には、運転姿勢検出機能は、まず、図4に示すように、運転者の臀部の体圧分布と、運転者の背部の体圧分布とに基づいて、運転者の前後方向の運転姿勢を判定するための判定値を算出する。図4に示す判定値は、運転者の前後方向の運転姿勢を判定するための判定値であり、この判定値の値が高いほど、運転者の運転姿勢は前傾姿勢であると判定することができ、この判定値が低いほど、運転者の運転姿勢は後傾姿勢であると判定することができる。
たとえば、運転者の運転姿勢が後傾姿勢となるほど、運転者の臀部の重心位置は前方に移動する。そのため、運転姿勢検出機能は、運転者の臀部の体圧分布に基づいて、運転者の臀部の重心位置を算出し、運転者の臀部の重心位置が前方に移動しているほど、運転者の運転姿勢が後傾姿勢と判定されるように、前後方向の運転姿勢に対応する判定値を大きくする。
また、運転者の運転姿勢が前傾姿勢となるほど、運転者の背部の重心位置は下方に移動する。そのため、運転姿勢検出機能は、運転者の背部の体圧分布に基づいて、運転者の背部の重心位置を算出し、運転者の背部の重心位置が下方に移動するほど、運転者の運転姿勢が前傾姿勢と判定されるように、前後方向の運転姿勢に対応する判定値を小さくする。さらに、運転者の運転姿勢が前傾姿勢となるほど、運転者の背部の荷重は小さくなる。そこで、運転姿勢検出機能は、運転者の背部の荷重が小さいほど、運転者の運転姿勢が前傾姿勢と判定されるように、前後方向の運転姿勢に対応する判定値を小さくする。なお、運転姿勢検出機能は、運転者の背部の重心位置および運転者の背部の荷重の両方を用いて、前後方向の運転姿勢に対応する判定値を算出してもよいし、運転者の背部の重心位置および運転者の背部の荷重のうち一方を用いて、前後方向の運転姿勢に対応する判定値を算出してもよい。
そして、運転姿勢検出機能は、図4に示すように、前後方向の運転姿勢に対応する判定値が適正姿勢範囲にあるか否かを判断し、前後方向の運転姿勢に対応する判定値が適正姿勢範囲にある場合には、運転者の前後方向の運転姿勢を「中位」として検出する。また、運転姿勢検出機能は、前後方向の運転姿勢に対応する判定値が適正姿勢範囲よりも大きい後傾姿勢範囲にある場合には、運転者の前後方向の運転姿勢を「後傾」として検出する。さらに、運転姿勢検出機能は、前後方向の運転姿勢に対応する判定値が適正姿勢範囲よりも小さい前傾姿勢範囲にある場合には、運転者の前後方向の運転姿勢を「前傾」として検出する。
なお、適正姿勢範囲は、運転者の運転姿勢の評価値が適正姿勢範囲にある場合に、運転者が腰痛や疲労を生じにくい運転姿勢(適正姿勢)となるように、実験などにより統計的に設定された範囲である。本実施形態では、記憶装置130に、このような適正姿勢範囲が記憶されている。なお、記憶装置130に記憶されている適正姿勢範囲は、複数の運転者の運転姿勢のデータから統計的に設定された範囲であり、運転者の嗜好・癖などに応じた運転者に個有の運転姿勢の傾向や、自車両の走行環境や、自車両の車両特性などに適合していない場合がある。そこで、本実施形態では、後述する補正機能により、運転者に個有の運転姿勢の傾向や、自車両の走行環境や、自車両の車両特性に基づいて、適正姿勢範囲の補正が行われる。
また、運転姿勢検出機能は、運転者の前後方向の運転姿勢の検出方法と同様に、運転者の左右方向の運転姿勢を検出する。具体的には、運転姿勢検出機能は、まず、図5に示すように、運転者の臀部の体圧分布と、運転者の背部の体圧分布とに基づいて、運転者の左右方向の運転姿勢を判定するための判定値を算出する。図5に示す判定値は、運転者の左右方向の運転姿勢を判定するための判定値であり、この判定値が高いほど運転者の運転姿勢は左傾姿勢であると判定することができ、この判定値が低いほど運転者の運転姿勢は右傾姿勢であると判定することができる。
たとえば、運転者の運転姿勢が左傾姿勢となるほど、運転者の臀部の重心位置および背部の重心位置は左方向に移動する。そのため、運転姿勢検出機能は、運転者の臀部の体圧分布に基づいて、運転者の臀部の重心位置を算出するとともに、運転者の背部の体圧分布に基づいて、運転者の背部の重心位置を算出する。そして、運転姿勢検出機能は、運転者の臀部の重心位置、および、運転者の背部の重心位置が左方向に移動しているほど、運転者の運転姿勢が左傾姿勢と判定されるように、左右方向の運転姿勢に対応する判定値を大きくする。
また、運転者の運転姿勢が右傾姿勢となるほど、運転者の臀部の重心位置および背部の重心位置は右方向に移動する。そこで、運転姿勢検出機能は、運転者の臀部の重心位置、および、運転者の背部の重心位置が右方向に移動しているほど、運転者の運転姿勢が右傾姿勢と判定されるように、左右方向の運転姿勢に対応する判定値を小さくする。
そして、運転姿勢検出機能は、左右方向の運転姿勢に対応する判定値が適正姿勢範囲にあるか否かを判断し、図3に示すように、左右方向の運転姿勢に対応する判定値が適正姿勢範囲にある場合には、運転者の左右方向の運転姿勢を「中位」として検出する。また、運転姿勢検出機能は、左右方向の運転姿勢に対応する判定値が適正姿勢範囲よりも大きい左傾姿勢範囲にある場合には、運転者の左右方向の運転姿勢を「左傾」として検出し、左右方向の運転姿勢に対応する判定値が適正姿勢範囲よりも小さい右傾姿勢範囲にある場合には、運転者の左右方向の運転姿勢を「右傾」として検出する。
そして、運転姿勢検出機能は、運転者の前後方向の運転姿勢の検出結果と、運転者の左右方向の運転姿勢の検出結果とに基づいて、運転者の運転姿勢が、図3に示す9つの運転姿勢のうち、いずれの運転姿勢に該当するかを判定することで、運転者の運転姿勢を検出する。すなわち、運転姿勢検出機能は、運転者の前後方向の運転姿勢が「中位」であり、運転者の左右方向の運転姿勢も「中位」である場合には、運転者の運転姿勢は適正姿勢であると検出し、また、運転者の前後方向の運転姿勢が「前傾」であり、運転者の左右方向の運転姿勢が「中位」である場合には、運転者の運転姿勢は適正姿勢ではなく、図3において「2」で示す前傾姿勢であると検出する。他の運転姿勢についても同様である。
次に、制御装置120の補正機能について説明する。補正機能は、運転姿勢検出機能が運転者の運転姿勢を検出する際に用いる適正姿勢範囲を補正する。具体的には、補正機能は、以下の3通りの方法により、適正姿勢範囲の補正を行う。なお、以下においては、前後方向の適正姿勢範囲を補正する構成を例示しているが、左右方向における適正姿勢範囲の補正も同様に行うことができる。
第1に、補正機能は、運転者の運転姿勢の傾向に基づいて、適正姿勢範囲を補正する。ここで、図6は、運転者の運転姿勢の傾向に基づく適正姿勢範囲の補正方法を説明するための図である。本実施形態では、運転姿勢検出機能により、運転者の前後方向の運転姿勢に対する判定値が時系列に沿って繰り返し検出されており、検出された判定値の時系列データが、図6(A)に示すように、判定値の履歴情報として、記憶装置130に記憶されている。
補正機能は、たとえば、前後方向の運転姿勢に対する判定値の履歴情報に基づいて、前後方向における運転者の運転姿勢の傾向を推測し、推測した運転者の運転姿勢の傾向に基づいて、前後方向に対応する適正姿勢範囲を補正する。たとえば、補正機能は、図6(B)に示すように、前後方向の判定値の履歴情報に基づいて、前後方向の判定値の平均値s2を算出し、算出した平均値s2が適正姿勢範囲の中央値となるように、適正姿勢範囲をシフトさせることで、適正姿勢範囲を補正することができる。
第2に、補正機能は、自車両の車両特性に基づいて、適正姿勢範囲を補正する。本実施形態において、補正機能は、運転者の目線の高さ(アイポイント)、運転者の腰の高さ(ヒップポイント)、および、背もたれ部23の傾き角度を、自車両の車両特性として取得し、これら車両特性に基づいて、適正姿勢範囲の補正を行う。以下に、図7を参照して、自車両の車両特性に基づく適正姿勢範囲の補正方法について説明する。なお、図7は、自車両の車両特性に基づく適正姿勢範囲の補正方法を説明するための図である。
本実施形態では、図7(A)に示すように、アイポイント、ヒップポイント、および背もたれ部23の傾き角度のそれぞれに応じた一般的な運転姿勢の評価値のプロファイルが予め統計的に算出され、記憶装置130に記憶されている。たとえば、図7(A)に示すように、アイポイントに応じた評価値のプロファイルでは、アイポイントが低い車両ほど、運転者の運転姿勢は前傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に小さくなり、アイポイントが高い車両ほど、運転者の運転姿勢は後傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に大きくなる。また、ヒップポイントに応じたプロファイルでは、ヒップポイントが低い車両ほど、運転者の運転姿勢は後傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に大きくなり、ヒップポイントが高い車両ほど、運転者の運転姿勢は前傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に大きくなる。さらに、背もたれ部23の傾き角度に応じたプロファイルでは、背もたれ部23の傾き角度が小さい場合には、運転者の運転姿勢は前傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に小さくなり、背もたれ部23の傾き角度が大きい場合には、運転者の運転姿勢が後傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に大きくなる。
本実施形態において、補正機能は、たとえば、図7(A)に示すように、各車両特性の大きさ(ヒップポイントの高さ、アイポイントの高さ、背もたれ部の傾き角度)の中央値において、各車両特性に応じた評価値が、補正前の適正姿勢範囲の中央値s3となるように、補正前の適正姿勢範囲に、各車両特性に応じた評価値のプロファイルを重畳する。そして、補正機能は、制御装置120のROMまたはRAMに記憶されている自車両のアイポイント、自車両のヒップポイント、および現在の背もたれ部23の傾き角度を取得し、自車両のアイポイントに対応する一般的な運転姿勢の判定値と、自車両のヒップポイントに対応する一般的な運転姿勢の判定値と、現在の背もたれ部23の傾き角度に対応する一般的な運転姿勢の判定値とをそれぞれ算出する。そして、補正機能は、自車両のアイポイントに対応する判定値と、自車両のヒップポイントに対応する判定値と、現在の背もたれ部23の傾き角度に対応する判定値のうち、補正前の適正姿勢範囲の中央値s3から最も離れた判定値を最大シフト値s4として求め、適正姿勢範囲の中央値s3が最大シフト値s4となるように適正姿勢範囲をシフトさせることで、適正姿勢範囲の補正を行う。
たとえば、図7(A)に示す例において、自車両のアイポイント、自車両のヒップポイント、および現在の背もたれ部23の傾き角度がそれぞれp1である場合に、補正機能は、自車両のアイポイントに対応する判定値と、自車両のヒップポイントに対応する判定値と、現在の背もたれ部23の傾き角度に対応する判定値のうち、補正前の適正姿勢範囲の中央値s3から最も離れている現在の背もたれ部23の傾き角度に対応する判定値s4を最大シフト値として算出する。そして、補正機能は、図7(B)に示すように、最大シフト値s4が適正姿勢範囲の中央値となるように、適正姿勢範囲を判定値の小さい方向(前傾姿勢の方向)にシフトさせる。
第3に、補正機能は、自車両の走行環境に基づいて、適正姿勢範囲を補正する。本実施形態では、走行環境検出機能により、自車両の走行速度、自車両が走行している道路の道幅、および自車両周囲の運転視界を含む道路状況や、運転操作により運転者にかかる筋負荷の状態が、自車両の走行環境として検出されており、補正機能は、これらの走行環境に基づいて、適正姿勢範囲を補正する。なお、補正機能は、自車両の走行環境に基づく適正姿勢範囲の補正を繰り返し実行することで、自車両の走行環境が変化した場合でも、適正姿勢範囲を、自車両の現在の走行環境に適したものとすることができる。
以下においては、図8を参照して、自車両の走行環境のうち、自車両の走行速度、および、自車両が走行している道路の道幅に基づいて、適正姿勢範囲を補正する方法を説明する。図8は、自車両の走行速度、および、自車両が走行している道路の幅に基づいて、適正姿勢範囲を補正する方法を説明するための図である。
本実施形態では、図8(A)に示すように、車両の走行速度、および、道路幅に応じた、一般的な運転姿勢の判定値のプロファイルが予め統計的に算出され、記憶装置130に記憶されている。なお、車両の走行速度に応じた判定値のプロファイルでは、車両が「一般道路」を走行している場合の判定値を、車両の走行速度が低速である場合の判定値として算出しており、車両が「幹線道路」を走行している場合の判定値を、車両の走行速度が中速である場合の判定値として算出しており、車両が「高速道路」を走行している場合の判定値を車両の走行速度が高速である場合の判定値として算出している。また同様に、車両が走行している道路の幅に応じた評価値のプロファイルでは、車両が「駐車場」を走行している場合の判定値を道路幅が一番「狭い」場合の判定値として算出しており、車両が「狭路」を走行している場合の判定値を道路幅が次に「狭い」場合の判定値として算出している。また、車両が「幹線道路」を走行している場合の判定値を道路幅が一番「広い」場合の判定値として算出しており、車両が「対向車線」を走行している場合の判定値を道路幅が次に「広い」場合の判定値として算出している。
たとえば、図8(A)に示すように、車両の走行速度に応じた評価値のプロファイルでは、一般道路を走行しており、車両の走行速度が低速である場合ほど、運転者の運転姿勢は前傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に小さくなり、高速道路などを走行しており、車両の走行速度が高速である場合ほど、運転者の運転姿勢が後傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に大きくなる。また、図8(A)に示すように、車両が走行する道路の道路幅に応じた評価値のプロファイルでは、駐車場や狭路など道路幅が狭い場合には、運転者の運転姿勢は前傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に小さくなり、対向車線や幹線道路など道路幅が広い場合には、運転者の運転姿勢が後傾姿勢となる傾向があるため、前後方向における運転姿勢の判定値は一般的に大きくなる。
本実施形態において、補正機能は、たとえば、図8(A)に示すように、車両の走行速度の大きさの中央値において、車両の走行速度に応じた評価値が補正前の適正姿勢範囲の中央値s5となるように、補正前の適正姿勢範囲に、車両の走行速度に応じた評価値のプロファイルを重畳する。また、補正機能は、たとえば、図8(A)に示すように、車両が走行する道路幅の大きさの中央値において、車両が走行する道路幅に応じた評価値が補正前の適正姿勢範囲の中央値s5となるように、補正前の適正姿勢範囲に、車両が走行する道路幅に応じた評価値のプロファイルを重畳する。そして、補正機能は、自車両の現在の走行速度と、自車両が現在走行している道路の幅とを走行環境検出機能から取得し、自車両の現在の走行速度に対応する運転姿勢の判定値と、自車両が現在走行している道路の幅に対応する運転姿勢の判定値とをそれぞれ算出する。そして、補正機能は、自車両の現在の走行速度に対応する判定値と、自車両が現在走行している道路の幅に対応する判定値のうち、補正前の適正姿勢範囲の中央値s5から最も離れた判定値を最大シフト値s6として求め、適正姿勢範囲の中央値が最大シフト値s6となるように適正姿勢範囲をシフトさせることで、適正姿勢範囲の補正を行う。
たとえば、図8(A)に示す例において、自車両の現在の走行速度がp3であり、自車両が現在走行する道路の幅がp2である場合に、補正機能は、自車両の現在の走行速度に対応する判定値と、自車両が現在走行する道路の幅に対応する判定値のうち、補正前の適正姿勢範囲の中央値s5から最も離れた、自車両の現在の走行速度p3に対応する判定値s6を最大シフト値として算出する。そして、補正機能は、図8(B)に示すように、最大シフト値s6が適正姿勢範囲の中央値となるように、適正姿勢範囲を判定値の大きい方向(後傾姿勢の方向)にシフトさせる。
同様に、補正機能は、自車両の走行環境のうち、自車両周囲の運転視界に基づいて、適正姿勢範囲を補正することもでき、運転操作により運転者にかかる筋負荷に基づいて、適正姿勢範囲を補正することもできる。また、運転者にかかる筋負荷に基づいて適正姿勢範囲を補正する場合には、ステアリング操作による運転者の現在の筋負荷に応じた判定値と、ペダル操作による運転者の現在の筋負荷に応じた判定値と、運転操作による運転者の体幹の現在の筋負荷に応じた判定値とを算出し、補正前の適正姿勢範囲の中央値から最も離れた判定値を最大シフト値として求めることで、適正姿勢範囲の補正を行うことできる。
以上のように、補正機能は、適正姿勢範囲を補正することができる。なお、補正機能は、自車両の走行環境に基づいて、適正姿勢範囲を補正する場合には、上述した走行環境のうち、いずれか1つの走行環境のみに基づいて適正姿勢範囲を補正する構成としてもよいし、2以上の走行環境に基づいて適正姿勢範囲を補正する構成としてもよし、あるいは、全ての走行環境に基づいて適正姿勢範囲を補正する構成としてもよい。
制御装置120の運転姿勢表示機能は、運転姿勢検出機能により検出された運転者の運転姿勢と適正姿勢とを、ディスプレイ140に備える画面に表示する。ここで、図9は、運転者の前後方向の運転姿勢と適正姿勢とを表示する画面例を示す図であり、図10は、運転者の左右方向の運転姿勢と適正姿勢とを表示する画面例を示す図である。具体的には、運転姿勢表示機能は、運転姿勢検出機能により運転者の運転姿勢が「後傾」と判定された場合には、図9(A)に示すように、適正姿勢に対して運転者の運転姿勢が後傾姿勢であることが対比可能なように、運転者の運転姿勢と適正姿勢とをディスプレイ140に表示させる。同様に、運転姿勢表示機能は、運転者の運転姿勢が「適正姿勢」と判定された場合には、図9(B)に示すように、運転者の運転姿勢が適正勢であることが対比可能なように、運転者の運転姿勢と適正姿勢とをディスプレイ140に表示させ、運転者の運転姿勢が「前傾」と判定された場合には、図9(C)に示すように、適正姿勢に対して運転者の運転姿勢が前傾姿勢であることが対比可能なように、運転者の運転姿勢と適正姿勢とをディスプレイ140に表示させる。また、運転姿勢表示機能は、図10に示すように、運転者の左右方向の運転姿勢と適正姿勢とが対比可能となるように、運転者の左右方向の運転姿勢と適正姿勢とをディスプレイ140に表示させる。なお、図10に示す例では、運転者の運転姿勢が「左傾姿勢」と判定された場合における運転者の運転姿勢と適正姿勢とを表示している。
また、本実施形態において、運転姿勢表示機能は、運転者にかかる筋負荷を算出し、運転者の筋負荷が所定値以上となる身体部位をディスプレイ140に表示させる。具体的には、逆動力学に基づいて、運転者の運転姿勢から、運転者の筋肉や腱などにかかる負荷(筋負荷)を算出することができ、運転姿勢表示機能は、運転姿勢検出機能により検出された運転姿勢に基づいて、運転者にかかる筋負荷を算出することができる。そして、運転姿勢表示機能は、運転者の各身体部位の筋負荷の算出結果に基づいて、たとえば、所定値以上の筋負荷が所定の判定時間以上継続している身体部位を、疲労が蓄積して、痛みが生じる可能性がある過負荷部位として判断し、図11に示すように、ディスプレイ140に表示させる。なお、図11は、運転者の過負荷部位を表示する画面例を示す図である。
たとえば、図11(A)に示す例では、運転者の腰部から上の上体が前傾姿勢となっているために、運転者の腰部に所定値以上の筋負荷が判定時間以上継続している場面を例示しており、この場合に、運転姿勢表示機能は、図11(A)に示すように、運転者の腰部を過負荷部位として表示させる。同様に、図11(B)に示す例では、運転者が後傾姿勢であり、運転者の腕部に所定値以上の筋負荷が判定時間以上継続している場面を例示しており、この場合に、運転姿勢表示機能は、図11(B)に示すように、運転者の腕部を過負荷部位として表示する。
また、本実施形態において、運転姿勢表示機能は、過負荷部位の筋負荷の大きさに応じて、その表示態様を異ならせる。たとえば、運転姿勢表示機能は、過負荷部位の筋負荷が大きい場合には、過負荷部位を点滅させたり、赤色などの警告を示す色で表示させたりすることで、過負荷部位ではない部位との差異を強調することができる。また、運転姿勢表示機能は、過負荷部位の筋負荷が大きいほど過負荷部位を段階的に強調して表示し、過負荷部位の筋負荷が小さいほど過負荷部位の強調表示を段階的に緩和する。これにより、運転者の運転姿勢が改善され、運転者の運転姿勢が適正姿勢に変化する際に、過負荷部位の筋負荷が軽減していることを、運転者に実感させることができ、これにより、運転者の運転姿勢の矯正を促進することができる。
さらに、本実施形態において、運転姿勢表示機能は、運転者の運転姿勢が適正姿勢ではない場合に、運転者の運転姿勢を適正姿勢に矯正するための表示を、ディスプレイ140に行わせる。具体的には、運転姿勢表示機能は、図12に示すように、運転者の運転姿勢を矯正するために必要な身体部位の移動方向を体幹、下肢などの身体部位ごとに表示する。たとえば、図12に示す例では、運転者の運転姿勢が後傾姿勢であると判定されている場面を例示しており、この場面において、運転者の運転姿勢を適正姿勢に矯正するためには、運転者の臀部を後方に、運転者の頭部を上方に移動させればよい。そこで、運転姿勢表示機能は、図12に示すように、運転者の臀部を後方に移動させるための表示と、運転者の頭部を上方に移動させるための表示とを、ディスプレイ140に表示させる。
また、運転姿勢表示機能は、運転者の運転姿勢を矯正するために移動する必要がある身体部位が複数ある場合には、これら複数の身体部位を一度に動かすための動作をディスプレイ140に表示することもできる。たとえば、図13(A)に示す例では、図12に示す場面例と同様に、運転者の運転姿勢が後傾姿勢となっており、後傾姿勢を適正姿勢に矯正するために、運転者の臀部を後方に、運転者の頭部を上方にそれぞれ移動させる必要がある。たとえばこの場合に、運転者に背筋を伸ばさせることで、運転者の臀部を後方に移動させ、運転者の頭部を上方に移動させることを、運転者に一度で行わせることができる。そこで、運転姿勢表示機能は、運転者の臀部を後方に、運転者の頭部を上方に、一度に移動させるために、図13(A)に示すように、運転者が背筋を伸ばす動作をディスプレイ140に表示させることができる。同様に、図13(B)に示す例では、運転者の運転姿勢が前方姿勢となっており、前傾姿勢を適正姿勢に矯正するために、運転者の頭部を後方に、運転者の背部を上方にそれぞれ移動させる必要がある。たとえばこの場合に、運転者に肩を引かせることで、運転者の頭部を後方に移動させ、運転者の背部を上方に移動させることを、運転者に一度で行わせることができる。そこで、運転姿勢表示機能は、運転者の頭部を後方に、運転者の背部を上方に一度で移動させるために、図13(B)に示すように、運転者が肩を引く動作をディスプレイ140に表示させることができる。
そして、運転姿勢表示機能は、運転者の運転姿勢が適正姿勢に改善された場合に、図14に示すように、運転者の運転姿勢と適正姿勢とを表示するとともに、運転者の運転姿勢が改善されたことを示すメッセージを、ディスプレイ140に表示させる。
次に、図15を参照して、本実施形態に係る運転支援処理を説明する。図15は、本実施形態に係る運転支援処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態に係る運転支援処理は、たとえば、イグニッションがオンとなった場合に、制御装置120により実行される。
まず、ステップS101では、運転姿勢検出機能により運転者の運転姿勢の判定値の算出が行われる。具体的には、運転姿勢検出機能は、体圧分布センサー110により検出された運転者の体圧分布に基づいて、運転者の臀部および背部の重心位置、運転者の背部の重心位置、および運転者の背部の荷重を算出する。そして、運転姿勢検出機能は、たとえば、運転者の臀部の重心位置が前方に移動しているほど、運転者の運転姿勢は前傾姿勢であると判断し、運転者の運転姿勢の判定値を高く算出する。また、運転姿勢検出機能は、運転者の背部が下方に移動しているほど、または、運転者の背部の荷重が小さいほど、運転者の運転姿勢は前傾姿勢であると判断し、運転者の運転姿勢の判定値を低く算出する。
ステップS102では、補正機能により、図6に示すように、運転者の運転姿勢を判定するための判定値の履歴情報が、記憶装置130に記憶されているか否かの判断が行われる。判定値の履歴情報が記憶装置130に記憶されている場合には、ステップS103に進み、一方、判定値の履歴情報が記憶装置130に記憶されていない場合には、ステップS104に進む。
ステップS103では、判定値の履歴情報が記憶されているため、図6に示すように、補正機能により、判定値の履歴情報に基づいて、適正姿勢範囲の補正が行われる。たとえば、補正機能は、図6に示すように、判定値の履歴情報に基づいて、判定値の平均値を算出し、算出した平均値が補正前の適正姿勢範囲の中央値となるように、適正姿勢範囲をシフトさせることで、適正姿勢範囲を補正することができる。
一方、ステップS102おいて、判定値の履歴情報が記憶されていないと判定された場合には、ステップS104に進む。ステップS104では、補正機能により、自車両の車両特性の取得が行われ、ステップS105において、補正機能により、ステップS104で取得された自車両の車両特性に基づいて、適正姿勢範囲の補正が行われる。
たとえば、補正機能は、記憶装置130に記憶されている、アイポイント、ヒップポイント、および背もたれ部23の傾き角度のそれぞれに応じた一般的な運転姿勢の判定値のプロファイルに基づいて、自車両のアイポイント、自車両のヒップポイント、および現在の背もたれ部23の傾き角度に対応する一般的な運転姿勢の判定値をそれぞれ算出し、図7(A)に示すように、算出した3つの判定値のうち、補正前の適正姿勢範囲の中央値s3から最も離れている判定値s4を最大シフト値として算出する。そして、補正機能は、図7(B)に示すように、最大シフト値s4が適正姿勢範囲の中央値となるように、適正姿勢範囲を判定値の小さい方向(前傾姿勢の方向)にシフトさせる。
ステップS106では、走行環境検出機能により、自車両の走行環境の検出が行われる。たとえば、本実施形態において、走行環境検出機能は、自車両の走行速度、自車両が走行する道路の幅、および自車両周囲の運転視界の状況を含む道路状況と、運転操作により運転者にかかる筋負荷の状態とを、自車両の走行環境として検出する。
ステップS107では、補正機能により、ステップS106で取得された自車両の走行環境に基づいて、ステップS103またはステップS105で補正された適正姿勢範囲の再補正が行われる。具体的には、補正機能は、図8(A)に示すように、自車両の現在の走行環境に対応する一般的な運転姿勢の判定値を走行環境ごとに算出し、算出した判定値のうち、ステップS103またはステップS105で補正された適正姿勢範囲の中央値から最も離れた判定値を最大シフト値として算出し、図8(B)に示すように、最大シフト値が適正姿勢範囲の中央値となるように、適正姿勢範囲をシフトさせることで、適正姿勢範囲の補正を行う。
そして、ステップS108では、運転姿勢検出機能により、ステップS101で検出された運転者の運転姿勢の判定値と、ステップS107で補正された適正姿勢範囲とに基づいて、運転者の運転姿勢の検出が行われる。具体的には、運転姿勢検出機能は、図4に示すように、運転者の前後方向の運転姿勢の判定値と、補正後の前後方向の適正姿勢範囲とに基づいて、運転者の前後方向の運転姿勢を検出するとともに、図5に示すように、運転者の左右方向の運転姿勢の判定値と、補正後の左右方向の適正姿勢範囲とに基づいて、運転者の左右方向の運転姿勢を検出する。そして、運転者姿勢検出機能は、運転者の前後方向の運転姿勢の検出結果と、運転者の左右方向の運転姿勢の検出結果とに基づいて、運転者の運転姿勢が、図3に示す9つの運転姿勢のうち、いずれの運転姿勢に該当するかを判定することで、運転者の運転姿勢を検出する。
ステップS109では、運転姿勢検出機能により、ステップS101で検出された判定値の記憶が行われる。これにより、今回検出された判定値が、判定値の履歴情報として記憶装置130に記憶され、次回処理時に、運転者に個有の運転姿勢の傾向を推測するために用いられることとなる。
続いて、ステップS110では、運転姿勢表示機能により、ステップS108で検出された運転者の運転姿勢と適正姿勢とを、ディスプレイ140に表示する運転姿勢表示処理が行われる。以下に、図16を参照して、ステップS110の運転姿勢表示処理について説明する。図16は、ステップS110の運転姿勢表示処理を示すフローチャートである。
ステップS201では、まず、運転姿勢表示機能により、ステップS108で検出された運転者の運転姿勢と適正姿勢との表示が行われる。たとえば、運転姿勢表示機能は、運転姿勢検出機能により運転者の運転姿勢が「後傾」と判定された場合には、図9(A)に示すように、適正姿勢に対して運転者の運転姿勢が後傾姿勢であることを運転者が把握できるように、運転者の運転姿勢と適正姿勢とを対比可能に表示し、運転者の運転姿勢が「適正姿勢」と判定された場合には、図9(B)に示すように、運転者の運転姿勢が適正姿勢であることを運転者が把握できるように、運転者の運転姿勢と適正姿勢とを対比可能に表示し、運転者の運転姿勢が「前傾」と判定された場合には、図9(C)に示すように、適正姿勢に対して運転者の運転姿勢が前傾姿勢であることを運転者が把握できるように、運転者の運転姿勢と適正姿勢とを対比可能に表示する。また同様に、運転姿勢表示機能は、図10に示すように、左右方向における運転者の運転姿勢と適正姿勢とが対比可能となるように、左右方向における運転者の運転姿勢と適正姿勢との表示も行う。
ステップS202では、運転姿勢表示機能により、運転者の運転姿勢が適正姿勢ではない状態の乖離時間が、所定の判定時間を超えているか否かの判断が行われる。乖離時間が判定時間を超えている場合には、運転者に疲労や腰痛などが生じる可能性があるものと判断し、ステップS203に進む。一方、乖離時間が判定時間を超えていない場合には、ステップS206に進む。
ステップS203では、運転姿勢表示機能により、運転者の筋負荷の算出が行われる。たとえば、運転姿勢表示機能は、逆動力学に基づいて、運転者の運転姿勢から運転者の各身体部位の筋負荷を算出することができる。そして、ステップS204では、運転姿勢表示機能により、ステップS203での筋負荷の算出結果に基づいて、図11に示すように、筋負荷が過大に生じている過負荷部位を、ディスプレイ140に表示させる処理が行われる。また、本実施形態形態において、運転姿勢表示機能は、過負荷部位の筋負荷の大きいほど、過負荷部位と他の部位との差異が強調されるように、過負荷部位の表示態様を異ならせる。
次いで、ステップS205では、運転姿勢表示機能により、運転者の運転姿勢を矯正するための表示が行われる。具体的には、運転姿勢表示機能は、図12に示すように、運転者の適正姿勢を矯正するために必要な身体部位の動作方向を体幹、下肢などの身体部位ごとに表示する。また、運転姿勢表示機能は、運転者の運転姿勢を適正姿勢に矯正するために、図13に示すように、運転者の身体部位を一度に移動させるための動作をディスプレイ140に表示させることもできる。
一方、ステップS202において、乖離時間が判定時間を超えていないと判定された場合には、ステップS206に進む。ステップS206では、運転姿勢表示機能により、運転者の運転姿勢が適正姿勢に改善されたか否かの判断が行われる。運転者の運転姿勢が適正姿勢に改善された場合には、ステップS207に進み、運転姿勢表示機能により、図14に示すように、運転者の運転姿勢が適正姿勢に改善されたことが、ディスプレイ140に表示される。一方、運転者の運転姿勢が適正姿勢に改善されていない場合には、図16に示す運転姿勢表示処理を終了する。
このように、ステップS110の運転姿勢表示処理が行われる。そして、ステップS110の運転姿勢表示処理が終了すると、図15に戻り、ステップS111に進む。
ステップS111では、運転姿勢検出機能により、イグニッションがオフであるか否かの判定が行われる。イグニッションがオンである場合には、ステップS101に戻り、図15に示す運転支援処理が繰り返し実行される。一方、イグニッションがオフである場合には、図15に示す運転支援処理を終了する。
以上のように、本実施形態では、運転者の体圧分布から運転者の運転姿勢の判定値を算出し、運転者の運転姿勢を検出する。そして、本実施形態では、図9および図10に示すように、検出した運転者の運転姿勢と適正姿勢とを対比可能に表示することで、運転者に、運転者の運転姿勢と適正姿勢との対応関係を把握させることができ、これにより、運転者の運転姿勢を適正姿勢に適切に誘導することができる。
また、本実施形態では、運転者の身体部位の筋負荷を算出し、所定値以上の筋負荷が所定の判定時間以上継続している運転者の身体部位を過負荷部位と特定し、特定した過負荷部位をディスプレイ140に表示することで、運転者にどの部位に筋負荷がかかっているかを把握させることができ、これにより、運転者が運転姿勢を改善することを容易にすることができる。また、本実施形態では、過負荷部位の筋負荷の大きさに応じて、過負荷部位の表示態様を変更することで、運転者の運転姿勢が改善されている場合に、その効果を運転者の視覚を通して運転者に実感させることができる。
さらに、本実施形態では、図12に示すように、運転者の運転姿勢が適正姿勢ではない場合に、運転者の運転姿勢を適正姿勢に矯正するために必要な身体部位の動作方向を、身体部位ごとに表示する。これにより、本実施形態では、運転者がどの身体部地をどのように動かせば、適正姿勢を取ることができるのかを把握し易くなり、運転者に運転姿勢の改善を促すことができる。また、図13に示すように、運転者の身体部位を一度に移動させるための動作を表示することで、運転姿勢を適正姿勢に矯正する方法を、運転者に、より容易に把握させることができるため、運転者の運転姿勢を適正姿勢により適切に誘導することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述した本実施形態では、ディスプレイ140により運転者の運転姿勢と適正姿勢とを表示する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、運転者の運転姿勢と適正姿勢とを、スピーカーにより音声で出力する構成としてもよい。この場合、たとえば、運転者の運転姿勢が適正姿勢である場合には、運転者の運転姿勢が適正姿勢である旨の音声を出力し、運転者の運転姿勢が後傾姿勢である場合には、運転者の運転姿勢が後傾姿勢である旨の音声を出力することができる。また、運転者の運転姿勢が適正姿勢ではない場合に、どの身体部位をどのように動作させることで運転者の運転姿勢が改善されるかの情報を、スピーカーにより音声を用いて案内する構成としてもよい。さらに、過負荷部位や、運転者の運転姿勢を改善する際に意識すべきポイントなどを音声で出力する構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、運転者の運転姿勢と適正姿勢とを表示する構成を例示したが、この構成に加えて、運転者が運転する運転席21の形状を表示する構成としてもよい。たとえば、運転席21の背もたれ部23の傾き角度が大きい場合などでは、適正姿勢と運転席21の形状とが一致しない場合があり、このような場合に運転席21の形状を表示することで、運転者に、運転席21の形状との対比において適正姿勢をより適切に把握させることができる。
さらに、上述した実施形態では、体圧センサー110により検出された運転者の体圧分布に基づいて、運転者の運転姿勢を検出してディスプレイ140に表示する構成を例示したが、この構成に加えて、運転者の体格を加味して、運転者の運転姿勢をディスプレイ140に表示する構成としてもよい。たとえば、図17(A),(B)に示すように、運転者の体圧分布に基づいて身体部位の傾きθ1〜θ4,θ2’を求めることで、運転者の運転姿勢を表示する場合に、運転者の体格に応じたパラメータを加味して、傾きθ1〜θ4,θ2’を算出する構成としてもよい。
加えて、上述した実施形態では、体圧センサー110により検出した運転者の体圧分布に基づいて、運転者の運転姿勢を検出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、カメラで撮像した運転者の運転姿勢の画像信号に基づいて、運転者の運転姿勢を検出する構成としてもよい。
なお、上述した実施形態の体圧分布センサー110は本発明の検出手段に、制御装置120は本発明の検出手段および報知手段に、それぞれ対応する。