JP6191520B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

この発明は、ステンレス鋼等の溶着を発生し易い被削材の切削加工を、切刃に大きな機械的・衝撃的負荷がかかる断続切削条件で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性とすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイインサート、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイインサートを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
そして、切刃に大きな機械的・衝撃的負荷がかかる断続切削条件における、耐チッピング性と耐摩耗性を向上させるための被覆工具について、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1に示すように、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金で構成された基体の表面に、3〜20μmの層厚を有し、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、窒酸化物層、酸化アルミニウム層等の硬質被覆層を蒸着形成した被覆超硬工具の硬質被覆層の表面に、粒径10〜2000μmのショットを、投射速度20〜120m/sec、投射角度30°以上で投射し、ショットピーニング処理を施すことにより、耐欠損性、耐摩耗性を改善することが提案されている。
また、特許文献2に示すように、WC基超硬合金で構成された基体の表面に、TiC/Ti(C,N)/酸化アルミニウムからなる硬質被覆層を蒸着形成した被覆超硬工具の硬質被覆層の表面に、粒径200μmの鋳鉄球を速度10〜80m/sec、投射角度70〜90°で投射し、クラック長さの平均値を、皮膜表面から垂直方向に皮膜厚以上で被覆厚+5μm以下、また、クラック幅の平均値を5μm以下、さらに、クラック間隔の平均値が10〜200μmのサイズのクラックを形成することにより、耐欠損性の改善を図ることが提案されている。
さらに、特許文献3には、WC基超硬合金基体の表面に、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、および炭窒酸化物、並びに酸化アルミニウムのうちの1種の単層または2種以上の複層からなる硬質被覆層を被覆した被覆超硬工具において、ショットピーニング処理を施すことにより、硬質被覆層の表面側上方部分と基体側下方部分とでクラック分布密度が異なるクラックを形成し、クラック分布密度を、表面側上方部分に比して基体側下方部分の方を高くすることにより、鋼の高送り、高切り込み切削加工における耐欠損性及び耐摩耗性の向上を図ることが提案されている。
特開平2−254144号公報 特開平3−92204号公報 特許第3087503号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化・高能率化の傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具を、ステンレス鋼等の溶着を発生し易く、その結果、チッピング、欠損を発生しやすい被削材の切削加工、特に、切刃に大きな機械的・衝撃的負荷がかかる断続切削加工に供した場合には、耐チッピング性、耐欠損性が十分であるとはいえない。
すなわち、特許文献2,3に記載の被覆超硬工具は、最外層表面側から機械的処理をほどこすため、最表面にクラック開口部が多数存在し、そのため開口部を起点として溶着チッピング、欠損、剥離が発生し、これらの異常損傷を原因として摩耗進行も促進されるために、早期に寿命となるという問題があった。
また、上記特許文献1、2で提案されている被覆超硬工具は、エッジのホーニングサイズが大きく、逃げ角が0度のネガインサートでホーニングが大きいインサートの場合には特段の問題はないが、所謂、S種、M種用インサートまたは逃げ角が0度より大きいポジインサートのエッジのように、シャープエッジ(ホーニング小)で、かつ、Al層は被覆されたインサートに適用する場合においては、最表面からの機械的処理により切れ刃部のAl層がチッピング、欠損、剥離を起こしやすいという問題があった。特に、特許文献2に記載のものにおいては、クラックが工具基体に達するほどの高負荷機械的処理を施すため上記損傷が起こりやすい。
本発明者は、上述のような観点から、ステンレス鋼等の溶着を発生し易い被削材の切削加工を断続切削条件、即ち、高熱発生を伴うとともに、切刃に大きな機械的・衝撃的負荷が作用する断続切削条件、で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性とともにすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具を開発すべく、鋭意研究を行った。
その結果、WC基超硬合金で構成された基体の表面に、少なくとも、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物および炭窒酸化物からなるTi化合物の一種又は二種以上を下部層として蒸着形成し、さらに、この上に酸化アルミニウム層を上部層として蒸着形成した被覆超硬工具において、工具基体表面の下部層にのみショットブラスト等によりクラックを形成し、この上に、通常通りの方法で酸化アルミニウム層を蒸着形成すると、引張残留応力が低減された下部層・上部層が形成されるとともに、上部層には、下部層からクラックが伝播・進展し、しかも、上部層と下部層との界面側に形成されるクラック密度に比し、上部層表面側には、小さなクラック密度の上部層が形成されることを見出したのである。
そして、クラックが形成された下部層と、上部層と下部層との界面側に形成されるクラック密度に比し、上部層表面側に形成されるクラック密度が小さな上部層を備える被覆超硬工具は、引張残留応力が低減されるとともに、溶着性の高い被削材を切削加工した場合でも、長期の使用にわたって、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金基体の表面に、下部層と中間層と上部層からなる硬質被覆層が被覆形成され、前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層及び炭窒酸化物層の内の1種または2種以上のTi化合物層からなり、前記中間層は、α型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の混相からなり、また、前記上部層は、α型酸化アルミニウム層からなる表面被覆WC基超硬合金製切削工具において、
(a)前記下部層には、物理的処理による下部層を貫通する微細クラックが形成され、
(b)前記中間層には、下部層から伝播・進展したクラックが形成され、
(c)前記上部層には、中間層から伝播・進展したクラックが形成され、しかも、中間層と上部層の縦断面を観察した時に、上部層の表面に形成されているクラック密度は、中間層との界面に形成されている上部層のクラック密度より小さいことを特徴とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
(2)表面被覆WC基超硬合金製切削工具の切れ刃稜線部に、請求項1に記載の下部層と中間層と上部層が形成されている請求項1に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
(3)WC基超硬合金からなる基体の表面に、化学蒸着装置によりTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層及び炭窒酸化物層の内の1種または2種以上のTi化合物層からなる下部層を被覆形成した後、下部層表面に物理的処理を施して下部層を貫通する微細クラックを形成し、ついで、化学蒸着装置によりα型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の混相からなる中間層を蒸着形成し、さらに、α型酸化アルミニウム層からなる上部層を被覆形成した後、これを室温まで冷却することにより、下部層から中間層へクラックを伝播・進展させ、さらに、中間層から上部層へクラックを伝播・進展させ、中間層との界面に形成されている上部層のクラック密度に比して、クラック密度が小さいクラックを上部層の表面に形成することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具の製造方法。」
を特徴とするものである。
以下、本発明について、詳細に説明する。
下部層(Ti化合物層):
本発明では、硬質被覆層の下部層として、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層及び炭窒酸化物層の内の1種または2種以上のTi化合物層を化学蒸着により被覆形成するが、Ti化合物層により下部層を形成した場合、Ti化合物層は、それ自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と酸化アルミニウムからなる上部層のいずれにも強固に密着し、硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用を有することはよく知られている。
この発明でも、前記理由と同様な理由により、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層及び炭窒酸化物層の内の1種または2種以上のTi化合物層からなる下部層を被覆形成する。
下部層の層厚は、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方、その合計平均層厚が20μmを越えると、チッピング、欠損、剥離等の発生の原因となることから、その合計平均層厚は3〜20μmとすることが望ましい。
本発明では、図1に示すように、化学蒸着により前記下部層を形成した後、室温で、ショットブラスト等の物理処理を施すことにより、下部層の残留応力の低減化を図るとともに、該層を貫通する微細クラックを形成する。
そして、図1に示すように、下部層に形成されたこの微細クラックの存在によって、下部層上に形成された中間層を介して上部層に、特段の物理的なクラック形成処理を追加して行わずとも、クラックが導入され、その結果、上部層の残留応力が低減される。
上部層(α型酸化アルミニウム層):
α型酸化アルミニウム層は、一般的にすぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができない。一方、その平均層厚10μmを越えて厚くなりすぎると、上部層表面に、後記する所望のクラック分布を形成することができなくなり、そのため、チッピング発生抑制効果が低下することから、平均層厚の上限は10μmとすることが望ましい。α型酸化アルミニウム層のより好ましい平均層厚は、1〜5μmであり、さらに好ましくは、1〜3μmである。
上部層のクラックの形成:
本発明では、微細クラックを形成した下部層上に、中間層を介して上部層を蒸着形成し、これを室温にまで冷却することにより、特段の追加的なクラック形成処理を行わずに、上部層に所望のクラック分布を形成することができ、これによって、上部層の残留応力低減を図ることができる。
ここで、所望のクラック分布とは、上部層の層厚方向に沿ったクラックの分布形態であって、本発明では、中間層と上部層の縦断面を観察した時、上部層の表面に形成されているクラック密度が、中間層と上部層との界面に形成されている上部層のクラック密度より小さいクラックの分布形態を有する。
本発明の上部層において、このようなクラックの分布形態を示すのは、下部層あるいは中間層に形成されたクラックの全てが上部層を貫通するクラックとして伝播・進展するのではなく、下部層あるいは中間層から導入されたクラックの一部は、そのクラック先端が、上部層を貫通せず上部層内部に止まっているという理由による。
つまり、下部層に形成されたクラックの先端は、中間層との界面を通して上部層に伝播・進展するものの、一部のクラック先端は上部層内部でその伝播・進展を停止し、上部層表面にまで貫通しない内部クラックとして止まることとなり、その結果として、上部層の表面に形成されているクラック密度が、中間層との界面に形成されている上部層のクラック密度より小さいクラックの分布形態が形成される。
また、本発明におけるクラック分布において、上部層表面に形成されるクラックの溝幅、クラック間隔は、中間層との界面に形成されるクラックの溝幅より小さく、また、クラック間隔が大きいこと、即ち、上部層表面で形成されるクラックはクラック溝が狭く、かつ、クラックの分布が疎であることを確認している。
本発明の被覆超硬工具は、中間層と上部層の縦断面を観察した時、上部層の表面に形成されているクラック密度を、中間層との界面に形成されている上部層のクラック密度より小さいものとして形成することによって、ステンレス鋼等の溶着性の高い被削材を、切刃に大きな機械的・衝撃的負荷がかかる断続切削条件で切削加工した場合でも、特に溶着に起因するチッピング、欠損、剥離等の発生を抑制することができるとともに、上部層の残留応力が緩和されていることから機械的・衝撃的負荷に対する耐性にすぐれ、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する。
先行技術文献として示した特許文献1〜3においても、少なくとも、ショットブラストを施すことにより、耐チッピング、耐欠損性等の改善を図っているが、本発明の被覆超硬工具及びその製造方法は、特許文献1〜3記載のものとは、上部層にショットブラストを施すか否かという点で、本質的に異なるものである。
即ち、特許文献1〜3においては、少なくとも、上部層表面にショットブラストを施すことにより、クラックを形成しているが、例えば、クラック密度を高めようとしてブラスト圧力を高めると、上部層の表面粗さが低下するとともに、クラック開口部が増加し、その結果、耐溶着性が低下することとなり、また、過度のブラスト圧力によって、上部層自体の損傷も発生することとなる。
これに対して、本発明の被覆超硬工具は、下部層のクラックを、中間層を介して上部層に導入することによって上部層にクラックを形成しており、上部層表面からのショットブラスト処理は行わないため、上部層の表面粗さの低下、上部層最表面のクラック開口部の増加を回避することができ、しかも、上部層の内部には高密度のクラックが形成されていることによって、残留応力がより緩和され、上部層の損傷発生が抑えられる。
本発明は、下部層へのショットブラスト等による物理的処理を調整することにより、下部層に形成される微細クラックの密度ばかりか、クラック溝幅をコントロールすることができ、その結果として、中間層と上部層との界面に形成されるクラックの密度とともに、その溝幅をコントロールすることができる。
また、上部層表面に形成されるクラックの密度は、その溝幅とともに、形成する上部層の層厚によってコントロールすることができる。
例えば、一定の条件で下部層を形成し、また、一定の条件でショットブラストを施した場合には、上部層の層厚が大きくなるほど、上部層表面に形成されるクラックの密度、溝幅が減少する。すなわち、上部層表面において溝幅が小さく、かつ、低密度のクラックを形成することができる。
より具体的に、上部層表面のクラック密度に限っていえば、本発明の被覆超硬工具の上部層表面のクラック密度は、通常条件で成膜した従来被覆超硬工具の酸化アルミニウムからなる上部層のクラック(所謂、クーリングクラック)より、クラック密度が高く、クラック形成間隔も密であるが、クラックの溝幅については、従来被覆超硬工具のそれとほぼ同等である。
つまり、本発明の被覆超硬工具は、上部層表面のクラック分布は従来の被覆超硬工具とほぼ同等であるが、上部層の内部にも、その先端が内部に止まるクラックが形成されていることから、従来被覆超硬工具に比して、はるかに残留応力が緩和されているために、溶着性の高い被削材の断続切削加工においても、溶着に起因するチッピング、欠損等の発生を抑制することができる。
一方、前記特許文献1〜3記載のものは、上部層表面のクラック密度、溝幅は、本発明のものに比してはるかに大きく、また、硬質被覆層内の残留応力は、本発明と同程度に緩和されているものの、クラック開口部が多数存在し、表面粗さが大であり、クラックの溝幅が大きいため、溶着性の高い被削材の断続切削加工においては、溶着に起因するチッピング、欠損等の発生を防止する効果は本発明に比して劣るものとなっている。
本発明では、上部層におけるクラック分布をコントロールするために、下部層と上部層との層間に、α型酸化アルミニウムとκ型酸化アルミニウムの混相からなる中間層を蒸着形成している。
これは、α型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の混相からなる層は、α相とκ相が隣接する相界面の靭性が低いため、下部層に物理的処理を施すことによって形成したクラックを起点として、中間層のα相とκ相の相界面を経由してクラックが進展・伝播しやすいという理由による。
つまり、中間層におけるα型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の混相比率を調整することによって、クラックの経路となるα相とκ相の隣接する相界面の密度を調節することができ、その結果として、上部層におけるクラックの密度を容易にコントロールすることができるととともに、残留応力が低減されたあるいは残留応力が実質的に0の酸化アルミニウム層を得ることができる。
α型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の混相比率が50:50であれば、α相とκ相の隣接する相界面の密度が最大となるため、例えば、上部層の耐摩耗性を高めるために上部層表面のクラック密度を下げる場合には、混相比率が50:50の状態と比較してα型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相のいずれか一方の含有割合を高めることによって、α相とκ相が隣接する相界面の密度を減ずることにより、低クラック密度の上部層表面を形成することができる。
中間層の平均層厚は0.1μm未満では、下部層からのクラックが上部層に伝播しづらくなる。一方、その平均層厚1μmを越えて厚くなりすぎると、中間層の靭性に悪影響を及ぼし、剥離またはチッピングを発生する可能性がある。したがって中間層の平均層厚は0.1〜1μmとすることが望ましい。
本発明では、溶着性の高い被削材との断続切削における切れ刃部のチッピング、欠損等の発生を防止するために、図2に示す切れ刃稜線部に、前述の下部層と中間層と上部層とからなる硬質被覆層を被覆形成することが望ましい。
このためには、工具基体の全体に対して前記硬質被覆層を被覆形成しても良いし、切れ刃稜線部のみに前記硬質被覆層を被覆形成しても良い。
図3に示す切れ刃稜線部に対してのみ前記硬質被覆層を形成する場合には、下部層にショットブラスト等の物理的処理を施す際に、切れ刃稜線部以外の領域にマスキングを施し、切れ刃稜線部に対してのみショットブラスト等の物理的処理を施せばよい。
なお、本発明では、被覆超硬工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じ上部層最表面に蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよい。これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
本発明の被覆超硬工具は、下部層に物理的処理で微細クラックを形成し、これを中間層を介して上部層に伝播・進展させ、上部層中にクラックを形成することによって、硬質被覆層の残留応力が緩和されるばかりか、上部層表面に直接にショットブラストを施していないため、上部層表面に形成されるクラック密度が少なく、しかも、平滑表面となっているため、ステンレス鋼等の溶着性の高い被削材を、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する断続切削加工に供した場合であっても、チッピング、欠損、剥離等を発生することなく、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
本発明の実施の態様における硬質被覆層の縦断面の模式図であり、(a)は、ショットブラスト(図中、SB)を施されたことによって、微細クラックが形成された下部層、(b)は、下部層の上に形成された中間層、上部層に、クラックが伝播したことによって形成されたクラックが存在する中間層、上部層を示す。 (a)は、被覆工具の外観斜視図を示し、(b)は、本発明でいう切れ刃稜線部の概略模式図を示す。
つぎに、本発明の被覆超硬工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TaC粉末、NbC粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.02mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体Aを製造した。
ついで、工具基体Aを、通常の化学蒸着装置に装入し、
まず、表2(表2中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4に示される目標層厚のTi化合物層を蒸着形成した後、その表面にショットブラスト処理を施した。ついで、同じく表2に示される条件で、α型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の混相の酸化アルミニウム層を、表4に示される所定の相比率で、また、同じく表4に示される所定の目標層厚で蒸着形成することにより中間層を形成した。
ついで、中間層の表面に、表2に示される条件にて、上部層のAl層を表4に示される目標層厚で形成することにより、表4に示す本発明被覆超硬工具(以下、「本発明工具」という)1〜10を製造した。
なお、いくつかのものについては、上部層のAl層の表面に、表2に示される条件で、表4に示される目標層厚のTiN層を最表面層として被覆形成した。
また、切れ刃稜線部にのみ本発明の下部層、中間層、上部層を形成するものについては、マスキングをしてショットブラスト処理を施した。
また、比較の目的で、工具基体Aを、通常の化学蒸着装置に装入し、
まず、表2に示される条件にて、表5に示される目標層厚のTi化合物層を蒸着形成し、
ついで、表2に示される条件にて、上部層のAl層を表5に示される目標層厚で形成し、
ついで、表3に示される条件にて、上部層の表面に、ショットブラスト処理を施すことにより、表5に示す比較例被覆超硬工具(以下、「比較例工具」という)1〜10を製造した。
なお、いくつかのものについては、上部層のAl層の表面に、表2に示される条件で、表5に示される目標層厚のTiN層を被覆形成した。
また、切れ刃稜線部の上部層のみにショットブラスト処理を行うものについては、マスキングをしてショットブラスト処理を施した。
さらに、参考のため、工具基体Aを、通常の化学蒸着装置に装入し、
まず、表2に示される条件にて、表5に示される目標層厚のTi化合物層を蒸着形成し、
ついで、表2に示される条件にて、上部層のAl層を表5に示される目標層厚で形成することにより、表5に示す参考例被覆超硬工具(以下、「参考例工具」という)1〜3を製造した。
なお、参考例工具1〜3については、上部層のAl層の表面に、表2に示される条件で、表5に示される目標層厚のTiN層を被覆形成した。
ついで、上記本発明工具1〜10、比較例工具1〜10及び参考例工具1〜3について、上部層におけるクラック分布を調査した。
すなわち、硬質被覆層の縦断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、中間層との界面の上部層のクラック密度を、界面の長さ1mm内に存在するクラック本数をカウントし、5箇所の測定値を平均することにより求めた。
また、上部層表面のクラック密度を、表面の長さ1mm内に存在するクラック本数をカウントし、5箇所の測定値を平均することにより求めた。
また、本発明工具1〜10について、中間層におけるα型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の相比率(中間層縦断面に占めるκ型酸化アルミニウム相の面積割合(%))をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、電子線後方散乱回折法によって求めた。
また、本発明工具1〜10、比較例工具1〜10及び参考例工具1〜3の硬質被覆層の各構成層の厚さを、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
表4、5に、上記で求めた値を示す。




つぎに、上記本発明工具1〜10、比較例工具1〜10及び参考例工具1〜3を、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔2本縦溝入り丸棒、
切削速度: 120 m/min、
切り込み: 2 mm、
送り: 0.1 mm/rev、
衝撃回数の最大値:1000回
の条件(切削条件Aという)でのステンレス鋼の乾式断続切削試験、
つぎに、上記本発明工具1〜10、比較例工具1〜10及び参考例工具1〜3を、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SUS304の丸棒、
切削速度: 200 m/min、
切り込み: 2 mm、
送り: 0.3 mm/rev、
切削時間:10分
の条件(切削条件Bという)でのステンレス鋼の乾式連続切削試験、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅の測定と刃先の状態観察を行った。
表6にこの結果を示した。

表4〜6に示される結果から、本発明工具1〜10は、下部層に物理的処理で微細クラックを形成し、これを中間層を介して上部層に伝播・進展させ、上部層中にクラックを形成することによって、硬質被覆層の残留応力が緩和されるばかりか、上部層表面に直接にショットブラストを施していないため、上部層表面に形成されるクラック密度が少なく、しかも、平滑表面となっているため、ステンレス鋼等の溶着性の高い被削材を、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する断続切削加工に供した場合であっても、チッピング、欠損、剥離等を発生することなく、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、上部層表面にショットブラストを施した比較例工具1〜10は断続切削において溶着によるチッピングまたは剥離を発生し、また連続切削においても溶着チッピングにより摩耗が進行し、また、ショットブラストを全く施していない参考例工具1〜3においては、短時間でチッピング、欠損、剥離等を発生し、工具寿命が短命であることが分かる。

























Claims (3)

  1. WC基超硬合金基体の表面に、下部層と中間層と上部層からなる硬質被覆層が被覆形成され、前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層及び炭窒酸化物層の内の1種または2種以上のTi化合物層からなり、前記中間層は、α型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の混相からなり、また、前記上部層は、α型酸化アルミニウム層からなる表面被覆WC基超硬合金製切削工具において、
    (a)前記下部層には、物理的処理による下部層を貫通する微細クラックが形成され、
    (b)前記中間層には、下部層から伝播・進展したクラックが形成され、
    (c)前記上部層には、中間層から伝播・進展したクラックが形成され、しかも、中間層と上部層の縦断面を観察した時に、上部層の表面に形成されているクラック密度は、中間層との界面に形成されている上部層のクラック密度より小さいことを特徴とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
  2. 表面被覆WC基超硬合金製切削工具の切れ刃稜線部に、請求項1に記載の下部層と中間層と上部層が形成されている請求項1に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
  3. WC基超硬合金からなる基体の表面に、化学蒸着装置によりTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層及び炭窒酸化物層の内の1種または2種以上のTi化合物層からなる下部層を被覆形成した後、下部層表面に物理的処理を施して下部層を貫通する微細クラックを形成し、ついで、化学蒸着装置によりα型酸化アルミニウム相とκ型酸化アルミニウム相の混相からなる中間層を蒸着形成し、さらに、α型酸化アルミニウム層からなる上部層を被覆形成した後、これを室温まで冷却することにより、下部層から中間層へクラックを伝播・進展させ、さらに、中間層から上部層へクラックを伝播・進展させ、中間層との界面に形成されている上部層のクラック密度に比して、クラック密度が小さいクラックを上部層の表面に形成することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆WC基超硬合金製切削工具の製造方法。



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