従来の感熱転写シートは、例えば図9に示すように、フィルム基材20の一方の面に耐熱滑性層10が形成され、他方の面に色材を含む染料層40が少なくとも形成された構成である。また、例えば図10に示すように、必要に応じてフィルム基材20の一方の面に耐熱滑性層10が形成され、他方の面に染料層40が形成され、該染料層40が形成された面に、離型層51、剥離層52及び接着層53が順次積層されてなる、感熱転写される保護層50、染料層40の下地層30、センサーマーク60が形成された構成である。
これに対して、本発明の一実施例の感熱転写シートは、図1に示すように、フィルム基材20の一方の面に耐熱滑性層10が形成され、該フィルム基材20の他方の面に色材を含む染料層40が少なくとも形成されており、その少なくとも片面にスペーサー帯70が形成された構成である。
本発明において、スペーサー帯70が、感熱転写シートの少なくとも片面において、実質的に感熱転写される有効領域からシート幅方向に外れた両端に形成されているので、染料層40と耐熱滑性層10との密着性や接着性が低減し、裏移りや裏裏移り、ブロッキングを低減させる効果が発現される。
スペーサー帯70は、感熱転写シートの一方の面に形成してもよく、両面に形成してもよい。図1は、染料層40側にスペーサー帯70を形成した構成であり、図2は、耐熱滑性層10側にスペーサー帯70を形成した構成である。
スペーサー帯は、少なくとも樹脂成分からなることが好ましい。少なくとも樹脂成分が用いられている場合、スペーサー帯の形成は、染料層や耐熱滑性層と同様に、インキ化して加工する(スペーサー帯形成用塗布液として、従来公知の塗布方法にて塗布し、乾燥する)ことができるからである。
スペーサー帯を形成する樹脂成分としては、従来公知の樹脂を使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等のビニル系樹脂や、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。
スペーサー帯は、前記樹脂成分に加えて粒子成分を含むことができる。粒子成分は、その立体的な体積物の効果として、効率的にスペーサー効果を発現することができる。
粒子成分としては、従来公知の有機粒子及び無機粒子を使用することができる。例えば、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等が挙げられる。これらの粒子は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、粒子成分の形状は、板状、粒状、針状、羽毛状、不定形等、特に限定されない。
スペーサー帯の厚さに関して、スペーサー帯を含む感熱転写シートの総厚が、実質的に感熱転写される有効領域の感熱転写シートの総厚に対して、1.05〜1.5倍であり、1.1〜1.4倍であることが好ましい。1.05倍よりも小さい場合は、スペーサー効果が低減し、巻取り状態において染料層と耐熱滑性層とが接触し、染料の裏移りが生じる。また、保護層が設けられている場合には、該保護層と耐熱滑性層とが接触し、ブロッキングが生じる。一方、1.5倍よりも大きい場合は、感熱転写シートの巻き経が大きくなったり、巻きズレが発生する。
スペーサー帯の幅は、感熱転写シートの幅の0.001倍以上であり、0.005〜0.02倍であることが好ましい。0.001倍未満である場合、感熱転写シートを巻取る際の位置ズレや巻圧による潰れで、スペーサー効果が低減する。
本発明の感熱転写シートは、フィルム基材の染料層が形成された面に、保護層、下地層及びセンサーマークが形成されていてもよく、この場合、スペーサー帯は、染料層、耐熱滑性層、保護層、下地層及びセンサーマークの少なくとも1つからなるものとすることができる。例えば、離型層51、剥離層52及び接着層53が順次積層されてなる保護層をスペーサー帯70とすることができ、これによれば、新たにスペーサー帯のインキや加工設備を準備する必要がなくなり、より効率的な加工が可能になる(図3)。
スペーサー帯70を形成する位置は、感熱転写シートの少なくとも片面において、実質的に感熱転写される有効領域からシート幅方向に外れた両端であれば特に限定がなく、染料層40の上でも可能であり(図1)、染料層40に下でも可能である(図4)。さらに、耐熱滑性層10の上でも可能であり(図2)、耐熱滑性層の下でも可能である。また、フィルム基材20の上の両端にスペーサー帯70を形成し、スペーサー帯70の間のフィルム基材20の上に染料層40を形成することも可能である(図5)。
スペーサー帯70は、連続した線状に限定されるものではなく(図6)、スペーサー効果が発現する範囲で、点線状や破線状の不連続なものであってもよい(図7)。
感熱転写シートを加工する際、製造効率を図るために、通常、目的とする感熱転写シートの幅よりも広い幅のフィルム基材で中間加工体として加工し、最終的に所定の幅となるように中間加工体をスリット断裁する。つまり、染料層や耐熱滑性層を並列に一度に加工し、複数の感熱転写シートを加工することができる。このような中間加工体においても、スペーサー帯を形成することができる。つまり、スペーサー帯の形成は、感熱転写シートの各層を加工した後に限定されるものではなく、中間加工体の段階で一度に形成し、その後、スリット断裁することも可能である(図8)。
このように、中間加工体でスペーサー帯を形成する場合には、1本のスペーサー帯の中間部をスリット断裁し、隣り合う感熱転写シートのスペーサー帯とすることもできる。
さらに、裏移りや裏裏移り、ブロッキングが感熱転写シートの製造工程中のみ懸念される場合、一例として、製造した後に保管することなく、短時間で印画する場合には、中間加工体でスペーサー帯を形成し、そのスペーサー帯をスリットで除去することも可能である。
以下に、本発明に使用することができる、スペーサー帯以外の材料に関して説明する。
フィルム基材20としては、感熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度とが必要とされ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、及びコンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類等を単独で又は組み合わされた複合体として使用可能である。中でも、物性面、加工性、コスト面等を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、その厚さは、操作性、加工性を考慮し、2μm以上、50μm以下の範囲のものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2μm以上、9μm以下程度のものが好ましい。
また、フィルム基材20においては、耐熱滑性層10又は/及び染料層40を形成する面に、接着処理を施すことも可能である。接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理を2種以上併用することもできる。
次に、耐熱滑性層10は、従来公知のもので対応することができ、例えば、バインダーとなる樹脂、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤等を配合して耐熱滑性層形成用塗布液を調製し、塗布、乾燥して形成することができる。この耐熱滑性層10の乾燥後の塗布量は、0.1g/m2以上、2.0g/m2以下程度が適当である。
ここで、耐熱滑性層10の乾燥後の塗布量とは、耐熱滑性層形成用塗布液を塗布し、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。また、後述する染料層40の乾燥後の塗布量、保護層50の乾燥後の塗布量、下地層30の乾燥後の塗布量及びセンサーマーク60の乾燥後の塗布量も、同様に、後述する染料層形成用塗布液、保護層形成用塗布液、下地層形成用塗布液及びセンサーマーク形成用塗布液を各々塗布し、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。
耐熱滑性層に用いる樹脂の一例としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、及びそれらの変性体等を挙げることができる。
機能性添加剤としては、例えば、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
次に、染料層40は、従来公知のもので対応することができ、例えば、熱移行性染料、バインダー、溶剤等を配合して染料層形成用塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成される。なお、染料層は、1色の単一層で構成することもでき、色相の異なる染料を含む複数の染料層を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成することもできる。
前記熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料である。例えば、イエロー成分としては、C.I.ソルベントイエロー56、16、30、93、33、あるいはC.I.ディスパースイエロー201、231、33等を挙げることができる。マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースバイオレット31、26、C.I.ディスパースレッド60、あるいはC.I.ソルベントレッド27、19等を挙げることができる。シアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、257、24、あるいはC.I.ソルベントブルー63、36、266等を挙げることができる。なお、墨の染料としては、前記各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
染料層に含まれるバインダーは、従来公知の樹脂バインダーをいずれも使用することができ、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
ここで、染料層を形成する際の熱移行性染料とバインダーとの質量基準での配合比率は、熱移行性染料/バインダー=10/100〜300/100であることが好ましい。これは、熱移行性染料/バインダーの配合比率が10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不充分となり、良好な熱転写画像が得られず、また、この配合比率が300/100を越えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、得られる感熱転写シートは、保存安定性が低下し、染料が析出し易くなる恐れがあるためである。
また、染料層には、前記性能を損なわない範囲で、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤が含まれていてもよい。
染料層の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、例えば0.5〜1.5g/m2程度が適当である。
保護層50は、染料層40から被写体である受像紙の上に形成された画像を保護するための層である。保護層50は、感熱転写法により感熱転写シートから剥離して受像紙上に転写される。一方で、紫外線等からの耐候性が要求される場合がある。このため、保護層50は、耐候性のある剥離層52の一層で構成されていてもよく、受像紙表面との密着性を向上させるために剥離層52の上に接着層53が設けられていてもよい。また、剥離層52が基材から容易に転写できるように、剥離層52と基材との間に離型層51が設けられていてもよい。
離型層は、基材からの保護層の剥離の程度を適当な範囲内に調整し、基材からの安定的な剥離性を確保するために設けられるものであり、剥離の程度が適当な範囲であれば必ずしも必要ではない。
離型層を構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、メチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子化合物、塩化ゴム、環化ゴム等の天然ゴム誘導体、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロース誘導体、アクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアセタール系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の熱可塑性樹脂、メラミン系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
剥離層は、少なくとも樹脂成分から構成され、厚さは0.3〜3μm程度であることが好ましい。また、紫外線吸収剤や、離型性、滑り性等を付与する機能性添加剤を添加することもできる。
剥離層を構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類等が挙げられる。これらの中でも特に、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体、エポキシ樹脂が好ましい。
剥離層に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、トリアジン系等の化合物が挙げられる。剥離層に用いられる機能性添加剤としては、例えば、ストレートシリコーン、変性シリコーン等のシリコーンオイル、フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を持つ界面活性剤、リン酸エステル系に代表される離型剤、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ライスワックス等のワックス類、有機又は無機フィラーに代表される滑り剤等が挙げられる。
接着層を構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸エチル樹脂等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類が挙げられる。これらの中でも特に、アクリル系樹脂、セルロース誘導体が好ましい。
また接着層には、必要に応じて、シリコーンオイル、界面活性剤、離型剤、ワックス類、有機又は無機フィラーに代表される滑り剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、触媒促進剤、着色剤、光散乱剤、艶調整剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等を添加することができる。
保護層全体の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、例えば1.5〜2.0g/m2程度が適当である。
次に、下地層30は、フィルム基材20と染料層40との密着性を補助する機能を有する成分からなるものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコールであるクラレポバールPVA−117、クラレポバールPVA−217(以上、(株)クラレ製)や、その他の水溶性高分子化合物を用いることができる。その他の水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコールの変性/共重合体、ポリビニルピロリドンとその変性/共重合体、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。
下地層は、例えば前記ポリビニルアルコールやその他の水溶性高分子化合物を配合して下地層形成用塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成されるが、下地層形成用塗布液には、前記性能を損なわない範囲で、無機顔料微粒子、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤を配合することができる。
下地層の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、例えば0.05〜0.3g/m2程度が適当である。
センサーマーク60は、プリンタが昇華型熱転写媒体を搬送する際の目印として機能する。センサーマークは、主にカーボンブラックとバインダーとからなる。
カーボンブラックには特に限定がなく、市販のものを使用することができる。例えば、#980B、#850B、MCF88B、#44B(以上、三菱化成工業(株)製)、BP−800、BP−L、REGAL−660、REGAL−330(以上、キャボット社製)、RAVEN−1255、RAVEN−1250、RAVEN−1020、RAVEN−780、RAVEN−760(以上、コロンビヤンカーボン社製)、Printex−55、Printex−75、Printex−25、Printex−45、SB−550(以上、デグサ社製)等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
また、バインダーとしては、例えば、変成又は非変成の塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を使用することができ、これらの他にも、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステルも使用することができる。
センサーマークの乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、例えば0.1〜0.3g/m2程度が適当である。
なお、スペーサー帯70、耐熱滑性層10、下地層30、染料層40、保護層50及びセンサーマーク60は、いずれも従来公知の塗布方法にて塗布液を塗布し、乾燥することで形成することが可能である。塗布方法としては、例えば、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法等を挙げることができる。
以下に、本発明の各実施例及び各比較例を示す。実施例及び比較例では、染料層としてシアン層を用い、裏移りや裏裏移り、ブロッキングの改善効果を検証する。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<感熱転写シートの巻取り状中間加工体の作製>
まず、各実施例及び各比較例に共通するスペーサー帯を形成しない感熱転写シートの巻取り状中間加工体の作製手順を説明する。
<耐熱滑性層の形成>
中間加工体のフィルム基材として、幅500mm、厚さ4.5μmの片面易接着処理済ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に、以下の耐熱滑性層形成用塗布液をグラビアコーティング法により全面塗布し、100℃で1分間乾燥することで、乾燥後の塗布量が0.5g/m2の耐熱滑性層付きフィルム基材1000mを得た。
<耐熱滑性層形成用塗布液>
ポリビニルアセタール 30.0部
メチルエチルケトン 70.0部
<センサーマーク、下地層、染料層、保護層の形成>
次に、この耐熱滑性層付きフィルム基材の易接着処理面に、以下のセンサーマーク形成用塗布液、下地層形成用塗布液、染料層(シアン層)形成用塗布液、保護層(離型層、剥離層、接着層)形成用塗布液をグラビアコーティング法により塗布し、長さ1000mの巻取り状中間加工体を得た。
各層の塗布パターンの概要は図10に示すとおりである。500mm幅のフィルム基材に対して、センサーマークは480mm幅×5mm、下地層は480mm幅×110mm、染料層は下地層の上に積層するように480mm幅×110mm、保護層は染料層の間に離型層、剥離層、接着層の順に積層して480mm幅×110mmとした。乾燥温度は、センサーマーク、下地層、染料層、保護層で、それぞれ100℃、100℃、90℃、100℃(離型層、剥離層、接着層の3層)とし、乾燥時間は、それぞれ30秒とした。乾燥後の塗布量は、センサーマーク、下地層、染料層、保護層(離型層、剥離層、接着層)で、それぞれ0.2g/m2、0.1g/m2、0.7g/m2、1.7g/m2(0.3g/m2、0、4g/m2、1.0g/m2)であり、耐熱滑性層/フィルム基材/下地層/染料層の全層の厚さは6.0μmであり、耐熱滑性層/フィルム基材/保護層の全層の厚さは6.7μmであった。
<センサーマーク形成用塗布液>
カーボンブラック 12.0部
ポリエチレンテレフタレート 12.0部
メチルエチルケトン 76.0部
<下地層形成用塗布液>
ポリビニルアルコール 3.0部
ポリビニルピロリドン 0.9部
純水 57.7部
イソプロピルアルコール 38.4部
<染料層(シアン層)形成用塗布液>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
<保護層形成用塗布液:離型層>
酢酸セルロース 10.0部
メチルエチルケトン 90.0部
<保護層形成用塗布液:剥離層>
ポリメタクリル酸メチル 30.0部
トルエン 35.0部
メチルエチルケトン 35.0部
<保護層形成用塗布液:接着層>
ポリエチレンテレフタレート 30.0部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 10.0部
メチルエチルケトン 60.0部
以上が、各実施例及び各比較例に共通する手順と材料であり、これにより、500mm幅×1000mの感熱転写シートの巻取り状中間加工体を得た。
本発明は、前記感熱転写シートの巻取り状中間加工体にスペーサー帯を形成したものであり、以下に、スペーサー帯を形成する実施例と、比較例とを説明する。なお、スペーサー帯の形成条件は、以下の表1にまとめて示す。
以下に、実施例及び比較例で用いたスペーサー帯形成用塗布液−1〜3を示す。
<スペーサー帯形成用塗布液−1>
ポリエチレンテレフタレート 20.0部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
<スペーサー帯形成用塗布液−2>
ポリメタクリル酸メチル 15.0部
シリコーンビーズ(平均粒子径1.8μm) 5.0部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
<スペーサー帯形成用塗布液−3>
ポリメタクリル酸メチル 15.0部
アクリルビーズ(平均粒子径2.0μm) 5.0部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
(実施例1)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは1.8μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(実施例2)
前記耐熱滑性層付きフィルム基材を作製する際に、耐熱滑性層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1をグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された耐熱滑性層付きフィルム基材を得た。その後、前記説明した作製手順を経て、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは1.8μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(実施例3)
前記中間加工体を作製する際に、耐熱滑性層上及び染料層上の両方に、スペーサー帯形成用塗布液−1をグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは、それぞれ0.9μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(実施例4)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは0.4μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.07〜1.06倍(6.4〜7.1μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(実施例5)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは3.0μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.50〜1.45倍(9.0〜9.7μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(実施例6)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは1.8μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.001倍(0.16mm)とした。
(実施例7)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは1.8μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.03倍(4.8mm)とした。
(実施例8)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−2を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは1.8μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(実施例9)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−3を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは1.8μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(実施例10)
実施例1において、保護層の位置に加えて、スペーサー帯の位置にも保護層(離型層、剥離層、接着層の3層)をさらに形成し、これをスペーサー帯としたほかは、実施例1と同様にして、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは3層の合計で1.8μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(比較例1)
前記説明のとおりの作製手順でそのまま中間加工体を作製し、スペーサー帯が形成されていない中間加工体を得た。
(比較例2)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは0.1μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.02〜1.01倍(6.1〜6.8μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(比較例3)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは6.0μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを2.0〜1.9倍(12.0〜12.7μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.01倍(1.6mm)とした。
(比較例4)
前記中間加工体を作製する際に、染料層の上に、スペーサー帯形成用塗布液−1を他層と同様にグラビアコーティング法により塗布し、100℃で30秒間乾燥して、スペーサー帯が形成された中間加工体を得た。
スペーサー帯の厚さは1.8μmであり、スペーサー帯を含まない感熱転写シートの厚さ6.0〜6.7μmに対し、スペーサー帯を含む厚さを1.30〜1.27倍(7.8〜8.5μm)とした。また、スペーサー帯の幅は、中間加工体をスリット加工した後の感熱転写シート幅160mmの0.0005倍(0.08mm)とした。
次に、各実施例及び各比較例で得られた感熱転写シートの中間加工体に共通した後工程を説明する。具体的には、中間加工体の保管手順、中間加工体をスリット加工して感熱転写シートを得る手順、中間加工体保管後の感熱転写シートの特性評価手順、感熱転写シートの保管手順、保管後の感熱転写シートの特性評価手順、及び受像紙の作製手順である。
<中間加工体の保管>
得られた感熱転写シートの中間加工体(500mm幅×1000mの巻取り状態)を、30℃、80%RHの高温高湿の環境下で4日間放置して保管した。
<中間加工体のスリット加工>
前記のとおり保管した後、感熱転写シートの中間加工体(500mm幅×1000mの巻取り状態)をスリット加工機に設置し、巻取りながら160mm幅×250mとなるように断裁し、感熱転写シートを得た。
<中間加工体保管後の感熱転写シートの特性評価>
前記スリット加工時、感熱転写シートを部分的に抜き取り、染料層から耐熱滑性層への染料移り(裏移り)の有無と、耐熱滑性層/染料層の間及び耐熱滑性層/保護層の間のブロッキングの有無とを調べた。これらの結果を表2に示す。
裏移りの評価は、透明である保護層部分において、分光光度計(UV−3600型、(株)島津製作所製)にて吸光度を測定してシアン濃度を求め、形成時の染料層のシアン濃度と比較して、その低下の有無を調べて行った。評価基準は以下のとおりである。
○:シアン濃度の低下がほとんどなく、染料の裏移りが認められない
×:シアン濃度が大きく低下しており、染料の裏移りが認められる
ブロッキングの評価は、耐熱滑性層/染料層の間及び耐熱滑性層/保護層の間を目視にて観察して行った。評価基準は以下のとおりである。
○:耐熱滑性層/染料層の間及び耐熱滑性層/保護層の間のいずれにおいても、ブロッキングが認められない
×:耐熱滑性層/染料層の間及び耐熱滑性層/保護層の間の少なくともいずれかにおいて、ブロッキングが認められる
<感熱転写シートの保管>
前記のとおりスリット加工した後、感熱転写シート(160mm幅×250mの巻取り状態)を、40℃、90%RHの高温高湿の環境下で7日間放置して保管した。
<保管後の感熱転写シートの特性評価>
前記のとおり保管した感熱転写シートを、巻取り装置で巻き返して、部分的に抜き取り、耐熱滑性層から保護層への染料移り(裏裏移り)の有無と、耐熱滑性層/染料層の間及び耐熱滑性層/保護層の間のブロッキングの有無とを調べた。これらの結果を表2に示す。
裏裏移りの評価は、受像紙への全面白色印画の印画物から、保護層の着色の有無を調べて行った。評価基準は以下のとおりである。
○:保護層の着色がほとんどなく、染料の裏裏移りが認められない
×:保護層の着色が著しく、染料の裏裏移りが認められる
ブロッキングの評価は、前記中間加工体保管後の感熱転写シートの特性評価と同様にして行った。
なお、受像紙の作製方法は以下のとおりである。
<受像紙(被転写体)の作製>
基材として、厚さ188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/m2になるように塗布し、乾燥することで、160mm幅の感熱転写シート用の受像紙を作製した。
<受像層形成用塗布液>
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
実施例1〜10及び比較例1〜4の中間加工体保管後の感熱転写シートについて、表2に示すように、実施例1〜10では、適切なスペーサー帯が形成されているので、染料層から耐熱滑性層への染料移り(裏移り)も、耐熱滑性層/染料層の間及び耐熱滑性層/保護層の間のブロッキングも、認められなかった。
一方、比較例1では、スペーサー帯が形成されていないため、巻取り状のシートが密着し、裏移り及びブロッキングが発生した。また、比較例2では、ブロッキングは発生しなかったが、形成されたスペーサー帯の厚さが充分でないため、裏移りが発生した。また、比較例4では、スペーサー帯の幅が感熱転写シートの幅に対して小さいため、シートの巻き圧に耐えることができず、スリット加工の際に巻きズレを起こした。
次に、実施例1〜10及び比較例2〜4の保管後の感熱転写シート(前記中間加工体保管後にブロッキングが発生した比較例1の感熱転写シートを除く)について、表2に示すように、実施例1〜10では、耐熱滑性層から保護層への染料移り(裏裏移り)も、耐熱滑性層/染料層の間及び耐熱滑性層/保護層の間のブロッキングも、認められなかった。
一方、比較例2では、スペーサー帯の厚さが充分でないため、裏裏移り及びブロッキングが発生した。また、比較例3では、裏裏移り及びブロッキングともに問題はなかったが、スペーサー帯の厚さが過剰であるため、スリット加工後にシートの巻きズレが起こり、さらに巻き径が2倍近くに膨れて大きくなり、実用性が難しいものとなった。また、比較例4では、前記のようにスリット加工の際に巻きズレを起こしたことに加え、ブロッキングも発生した。
以上のように、実施例及び比較例から、本発明の感熱転写シートにおいて、スペーサー帯が裏移り、裏裏移り及びブロッキングの制御に効果を発現することが確認された。