以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔使い捨ておむつ1の基本構成〕
本発明に係る使い捨ておむつ1は、図1に示されるように、不織布などからなる透液性トップシート11と、ポリエチレンなどからなるバックシート12と、前記透液性トップシート11とバックシート12との間に介在される綿状パルプなどからなる吸収体13と、この吸収体13を囲繞する被包シート14と、前記被包シート14と透液性トップシート11との間に介在される親水性不織布からなるセカンドシート18とを含み、表面がわ両側部に立体ギャザーBS、BSが形成された吸収性本体10と、前記バックシート12の外面側に一体的に設けられた外装シート20とからなり、製品状態で前記外装シート20の前身頃Fと後身頃Bとが両側部21、22において接合されることによりウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成された構造のパンツ型おむつである。
前記吸収性本体10は、前述したように、不織布などからなる透液性トップシート11と、ポリエチレン等からなるバックシート12との間に、綿状パルプ等の繊維集合体と高吸収性ポリマー等の高吸収材などからなる吸収体13を介在させた構造とされ、体液を吸収保持するものである。
前記吸収体13は、坪量が50〜600g/m2程度が好ましく、200〜400g/m2程度がより好ましい。前記高吸収性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸収性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力(吸収倍率)と吸水速度の調整が可能である。前記吸収体13における高吸収性ポリマーの含有比率は、30〜70%程度が適当であるが、これに限るものではない。また、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。前記吸収体13の繊維配向方向は特に限定されないが、一般に前後方向に長い縦長に形成されるため、横漏れ防止のために吸収体幅方向への拡散を抑制し、吸収体前後方向へ拡散しやすくするため、主として前後方向に沿う方向を繊維配向方向とすることが好ましい。
前記吸収体13は、被包シート14によって囲繞されている。被包シート14は、ティシュー等の紙材あるいは不織布等の透液性のシートを用いることができるが、吸収体13に含有される前記繊維集合体や高吸収材又は水溶性香料が抜け出さない程度の繊維密度を有するものを用いることができる。また、水溶性香料が被包シート14に囲繞される場合は、外部に香りが放散し易くするため、薄く低坪量のものが適当である。厚みは0.05〜0.5mm程度が好ましく、0.05〜0.2mm程度がより好ましい。坪量は5〜25g/m2程度が好ましく、5〜15g/m2程度がより好ましい。不織布を用いる場合は、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布、特にSMS法により加工された不織布が、薄さと強度のバランスに優れる点で好適である。なお、被包シート14は、少なくとも吸収体13の表面側(肌当接面側)の面が撥水性でなければシートの親水度は特に問わない。また、吸収体13に含有される前記繊維集合体や高吸収材又は水溶性香料が抜け出さないように構成されておれば、被包シート14の表側面または裏側面あるいはその両方を省略することも可能である。特に、吸収体13の裏側には通常防漏シート12が配置されるため、製造工程上問題なければ被包シート14の裏側面は省略するとよい。
前記吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う透液性トップシート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。特には、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布が薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、エアスルー法により加工された不織布は低坪量でも吸収が速やかでかつドライタッチ性に優れるため好適である。これらは1層からなるシートでも2層以上(同一種類あるいは複数種類)からなるシートでもよいが、合計の坪量としては、10〜40g/m2が好ましく、10〜22g/m2がより好ましく、10〜15g/m2が特に好ましい。厚みは1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.3mm以下が特に好ましい。透液性トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。前記透液性トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
前記吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆うバックシート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。具体的には、JIS Z0208に準じて測定された透湿度が3000〜12000g/m2・24hr、好ましくは6000〜12000g/m2・24hr、より好ましくは8000〜12000g/m2・24hrの不透液性シートを使用するのが望ましい。
一方、立体ギャザーBSを形成するギャザー不織布16は、折返しによって二重シートとした不織布が用いられ、前記透液性トップシート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、前記ギャザー不織布16は、紙おむつの長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、前記幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、前記立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
前記二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布16の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材17、17…が配設されている。前記糸状弾性伸縮部材17、17…は、製品状態において弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
前述のギャザー不織布16を構成する素材繊維も前記透液性トップシート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法により得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために、坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。具体的には、不織布の加工方法としてはスパンボンド法やSMS法によるものが薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、坪量としては、8〜30g/m2が好ましく、10〜22g/m2がより好ましく、10〜15g/m2が特に好ましい。厚みは0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.2mm以下が特に好ましい。さらに前記ギャザー不織布16については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
また、図示しないが、前記二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布16の内部には、バックシート12と同様の不透液性のシートを挟んで防水性を向上させても良い。
また、前記透液性トップシート11の下面側(吸収体側)には、体液の吸収速度を速めるとともに、体液の逆戻りを防止するため、透液性トップシート11と被包シート14との間に、親水性不織布からなるセカンドシート18を配置するのが好ましい。このセカンドシート18はなくても良いが、配設する場合には、透液性トップシート11と被包シート14との間に配置される。セカンドシート18は、体液の浸透性を向上し、かつ逆戻りを防止できるよう、吸収体13のほぼ全域を覆うように配置するのが好ましい。
さらに、吸収体13の裏面側にはボトムシート19を設けることができる。ボトムシート19は、吸収体13だけでは不足する剛性を補ったり、製品外面の手触りを改善したりするために設けられるものである。ボトムシート19の素材としては、特に限定されないが、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等を例示することができる。ボトムシート19は、吸収体13の下方にのみ設けても、吸収体13の側面を通り吸収体13の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。また、ボトムシート19を複数枚重ねて使用することも可能である。
次に外装シート20の構造について詳述する。外装シート20は、上層不織布20A及び下層不織布20Bが、ホットメルト接着剤などにより接着された2層構造の不織布シートとされ、前記上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に各種弾性伸縮部材がホットメルト接着剤などにより接着され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々脚部開口を形成するための凹状の脚回りカットライン29により、全体として擬似砂時計形状を成している。
上層不織布20A及び下層不織布20Bを構成する素材繊維も、前記透液性トップシート11やギャザー不織布16と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、SMS法、メルトブローン法、サーマルボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特には外部へ香りを放散しやすくするため、また、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。具体的には、不織布の加工方法としてはスパンボンド法やSMS法によるものが薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、坪量としては、8〜30g/m2が好ましく、10〜22g/m2がより好ましく、10〜15g/m2が特に好ましい。厚みは0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.2mm以下が特に好ましい。さらに前記ギャザー不織布16と同様の撥水処理を施した不織布を用いるのが好ましい。
前記外装シート20においては、前記弾性伸縮部材として、ウエスト開口部回り23に配置されたウエスト部弾性伸縮部材24,24…と、前身頃F及び後身頃Bに、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置され、腰回りにシャーリングを形成するための複数の腰回り弾性伸縮部材群25,25…とを有する。
前記ウエスト部弾性伸縮部材24,24…は、前身頃Fと後身頃Bとが接合された脇部接合縁21の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数本の糸ゴム状弾性伸縮部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることにより紙おむつを身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性伸縮部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
前記腰回り弾性伸縮部材群25,25…は、脇部接合縁21のウエスト開口縁23を除く上部位置から下部位置まで、あるいは図示されるように、脇部接合縁21よりも股下側に及ぶ範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状弾性伸縮部材であり、前身頃F及び後身頃Bの腰回り部分に夫々、水平方向の伸縮力を与え腰回りシャーリングゾーンK1、K2を形成するためのものである。なお、前記ウエスト部弾性伸縮部材24、24…と腰回り弾性伸縮部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、前身頃F及び後身頃Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性伸縮部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性伸縮部材24として機能し、残りの弾性伸縮部材が腰回り弾性伸縮部材25として機能していればよい。前記吸収体13の縮こまりを防止するため、前記腰回り弾性部材25…は、吸収性本体が接合される中央付近において連続しておらず、前記吸収性本体10を横切る弾性伸縮部材25…を切断して不連続とし、前記腰回り弾性部材25…による伸縮性が付与されていない構造としてもよい。
なお、外装シート20において、弾性伸縮部材を配置しない股下部の長手方向(前後方向)中間部は、前述のような2層構造ではなく、上層不織布20Aあるいは下層不織布20Bを有さない1層構造、あるいは股下部の長手方向中間部には外装シート20を有さず、外装シート20が前身頃外装シートと後身頃外装シートとに分離している形態であるのが好ましい。このように、股下部に外装シートを有さない、あるいは外装シートの重なり枚数が少ない領域を有すると、この領域においては、外部へ香りが放散しやすくなるため、好ましい。なお、股下部の長手方向中間部に外装シート20を有さない場合は、吸収性本体の裏面側に、不織布などからなる股下部外装シートを配置してもよい。股下部外装シートには、上層不織布20Aや下層不織布20Bと同様の不織布を用いればよいが、1枚(1層)の不織布から構成するのが適当である。
上記吸収性本体10と外装シート20とは、外装シート20の上面側に吸収性本体10がホットメルト等の接着剤によって接着され一体化されている。そして、吸収性本体10および外装シート20が前後方向に折り重ねられ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることにより、パンツ型の使い捨ておむつ1に組み立てられる。
〔水溶性香料〕
水溶性香料は、体液との接触によりはじめて香りを発し、接触前はほとんど香りを発しないように構成されたもので、具体的には、香料成分自体が水分と反応して香りを発するもの、香料成分を包接化合物(クラスレート)に取り込んだもの、香料成分を芯材(内包材)とし水溶性成分を膜材としてマイクロカプセル化したものなどによって構成することができる。前記水溶性香料は、マイクロカプセル化又は粉末化され、所定の部材に対し所定の方法で担持されている。
前記香料成分としては、天然香料及び合成香料のいずれを用いてもよく、これらを組み合わせて使用してもよい。香料成分の具体例としては、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。香料成分として市販品のものを広く使用することもできる。前記香料成分は、揮発性の高い香料を使用することが好ましい。
また、前記香料成分として、香料自体に消臭効果があるものや、***物の不快臭と調和して新たに不快を感じさせない香りを発生させるハーモナイズド香料を使用することもできる。
香料成分自体が水分と反応して香りを発するものとしては、香料ベースをアルコールと水で溶解、抽出した飲料などに使用される水溶性香料(エッセンス)などがある。
前記包接化合物としては、シクロデキストリン、デキストリン、難消化性デキストリンなどを使用することができ、特に、シクロデキストリンを使用した場合には、香りを発するだけでなく、***物の臭い成分を吸着するのに有効であるため好ましい。前記シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンのいずれか又は2種以上の混合物とすることができる。
香料成分をマイクロカプセル化したものは、尿や便等の***物中の水分と接触すると芯材の香料成分が流出し、香りを発する性質を有するものである。どのような仕組みで香料成分が流出するかは、特に限定されない。例えば、***物中の液分を吸うと膜材が壊れる形態、***物中の液分を吸うと膨潤して膜材に形成されている細孔が開く形態、***物中の液分を吸うと膜材が溶解する形態、などを例示することができる。また、このような液分の吸収による形態に変えて、***物との接触による受熱、pH変化などによって同様の現象が生じる形態も例示することができる。
前記膜材としては、水溶性のものであればよく、例えば、ゼラチン、寒天、天然ゲル化剤、グリセリンなどを使用することができる。また、カプセルの構造も特に限定されず、例えば、単純単核のものを例示することができる。さらに、マイクロカプセルの形状も特に限定されない。ただし、着用者に異物感を与えないよう、突起部のない形状であるのが好ましい。マイクロカプセルの大きさも、特に限定されない。着用者の異物感防止などの観点から、適宜設計することができる。異物感防止という観点からは、通常、0.1〜1000μm、好ましくは1〜50μmである。
上述の構成からなる水溶性香料は、使い捨ておむつ1上の平面位置が吸収体13の外周部のうちの少なくとも一部である所定の領域に塗布され、吸収体13の体液排出部に対応する部分及びその周辺には塗布されていない。
前記水溶性香料が塗布されない部分は、少なくとも着用者の体液排出部に対応する部位を含む部分であって、好ましくは1回目の平均的な量の排尿によって吸収体13内に吸収された尿が拡散した範囲を含む部分とする。
排尿によって尿が拡散する範囲は、後段の実施例で詳述するように、透液性トップシート11や吸収体13の材質、高吸収材の量及び配合比率、吸収体13の前後方向及び幅方向の配置位置、更には単位時間当たりの***量や***時の着用者の姿勢などによって異なるが、例えば、綿状パルプと高吸収性ポリマーの配合比率が重量比率1:2からなる体重9〜14kgの子供を対象とした幅140mm、全長385mmの吸収体13を備えた使い捨ておむつの場合、このサイズのおむつを使用する女児の平均排尿位置の中心が吸収体13の前側端部より30mmの幅方向中央部とし、この位置に1回目の平均排尿量である約35ccの排尿があったとき、この排尿位置から最大で半径約80mmの範囲に拡散する吸収体13の場合、吸収体13の前後方向に対し、前側端部より30mm〜170mmの範囲を水溶性香料を塗布しない領域と設定することが可能である。
図3に示される例では、前記水溶性香料は、吸収体13の前後方向の両端部に形成された塗布範囲30、30にそれぞれ塗布されているが、吸収体13の幅方向の両側部のみにそれぞれ配設してもよいし、前後方向の両端部及び幅方向の両側部にそれぞれ離間して又は連続的に塗布してもよい。図3の塗布範囲30は、水溶性香料が塗布される平面的範囲を示したものである。
このように水溶性香料を吸収体13の外周部に塗布し、体液排出部に対応する部分及びその周辺には塗布しないことによって、1回目に吸収体13の体液排出部に対応する部分及びその周辺のみに吸収保持されるような排尿や排便等の***があったときから香りを発するのではなく、2回目以降の***があったとき又は1回目であっても大量の***があったときであって、吸収体13に吸収保持される尿や便の液分等の***物が吸収体13の外周部まで達し吸収体13の吸収容量に近づいた時点で香りを発するため、この香りによって適切なおむつの交換時期が認識できるようになる。つまり、図3に示されるように、排尿回数が増す度に、吸収体13に吸収保持される尿の範囲(排尿範囲H1、H2…)が外周部に拡大するが、その外縁が水溶性香料の塗布範囲30に達したとき、図示例では4回目の排尿時に初めて香りが発するようになる。
水溶性香料の塗布範囲30については、吸収体13の体液排出部に対応する部分及びその周辺以外であれば特に限定はされないが、あまり吸収体13の外縁部に近い部分のみとすると、香りの発生と同時に容量オーバーとなって漏れが発生するおそれがあるので、各回の排尿で吸収体13に拡がる尿の範囲を予め得ておき、2回目以降、好ましくは2回目〜5回目程度の排尿があったときにはじめて香りを発するような範囲に塗布することが好ましい。例えば、前述と同様に吸収体の幅が140mm、長さが385mmの方形状のものを使用し、体重目安が9〜14kgの子供用の使い捨ておむつにおいて、吸収体13の前後方向中央から前側に30mm(このサイズのおむつを使用する女児の平均排尿位置)の幅方向中央部に位置する排尿位置に、約35cc(このサイズのおむつを使用する子供の平均排尿量)の量の1回目の排尿があった場合、この排尿位置から最大で半径約80mmの範囲に拡散するため、水溶性香料の塗布範囲30は、前後方向端部より60mmの位置より外側、好ましくは前後方向端部より50mmの位置より外側、更に好ましくは前後方向端部より30mmの位置より外側に形成することが好ましい。これにより2回目以降の***があったときにはじめて香りが発するようになる。
子供用の使い捨ておむつなどのように吸収体の幅が150mm以下の場合、1回目の排尿で吸収体の全幅方向に尿が拡散する場合もあるので、上述のように吸収体13の前後方向の端部に水溶性香料の塗布範囲30を設けることが望ましいが、大人用の使い捨ておむつなどのように吸収体の幅が150mmを超える場合は、吸収体13の幅方向両端部に水溶性香料の塗布範囲30を設けることが好ましい。これにより、大人が夜間に使用していて、寝返りをうったときなど吸収体に吸収される前に少量の尿漏れがあった場合には香りが発生しないが、吸収体13に吸収される一定量以上の排尿があった場合には香りが発生するようになる。
前記水溶性香料を塗布する部材(断面位置)は、***物と接触する位置であれば特に定めはなく、吸収体13中に混入することも可能であるし、透液性トップシート11とセカンドシート18との間、セカンドシート18と被包シート14との間、上層側の被包シート14と吸収体13との間、ボトムシート19と下層側の被包シート14との間及び/又は下層側の被包シート14とバックシート12との間に塗布することも可能である。着用者の肌への負担や香りの拡散性などを考慮すると、ボトムシート19と下層側の被包シート14との間及び/又は下層側の被包シート14とバックシート12との間に塗布するのが好ましい。
前記水溶性香料を各部材に塗布するとは、通常のハケなどによる塗布の他、スプレーやロール転写等の公知の吹付又は散布方法によって担持させることも含むし、ホットメルト接着剤等の塗布面に対しマイクロカプセル化又は粉末化した水溶性香料を散布することによって担持させることも含む。すなわち、水溶性香料がシート材などの別部材に担持されるのではなく、前記使い捨て紙おむつ1の構成部材に直接的に担持されたものであることを意味する。
前記水溶性香料の塗布範囲30の平面形状は、図3に示されるように、略方形状としてもよいが、吸収体13の中央側より周縁側の方が広くなるように設定された形状とすることが好ましい。具体的には、図4に示されるように、吸収体13の前後方向の両端部にそれぞれ、幅方向に沿う3本の帯状範囲30a、30b、30cが吸収体中央側から前後方向に間隔をあけて配置されるとともに、吸収体13の中心側に位置する帯状範囲の方が(30a側の方が)、漸次幅方向長さ及び/又は前後方向長さが小さくなるように形成されている。これにより、吸収体13の中央部から外側に排尿範囲が徐々に拡大していくのにつれて(H1→H4)、この排尿範囲がかかる水溶性香料の配設範囲が徐々に拡大していくため、段階的により強い香りが発せられるようになり、吸収体13の吸液余力が少なくなるにつれて香りをより気付きやすくなる。
前記3本の帯状範囲30a、30b、30cは、図5に示されるように、中央部からほぼ楕円状又は円状に拡大する排尿範囲の外形線に合わせて、外側に凸の湾曲状に設けることもできる。
一方、図6に示されるように、前記塗布範囲30の平面形状は、吸収体13の前後方向の両端部を底辺とし、中央側を頂点とする三角形状とすることも可能である。これにより、吸収体13の中央部から外側に排尿範囲が徐々に拡大して行くにつれて、連続的により強い香りが発せられるようになる。この三角形の頂点は、2回目の排尿範囲にかかる程度の位置とすることが好ましい。また、図示例では、連続的な三角形状としてあるが、おむつ前後方向に離間する複数の領域に区画された不連続的な三角形状としてもよい。
また、前記水溶性香料の塗布範囲30は、図7に示されるように、円、楕円、多角形などの離散的な図形の組合せとしてもよい。図示例では、おむつ前後方向の両端部にそれぞれ、おむつ幅方向に間隔をあけて配列された3つの円形の区画部がおむつ前後方向に間隔をあけて3段に亘って設けられ、吸収体13の中央寄りの段に位置する各区画部の直径が漸次小さくなるように形成されている。
前記水溶性香料の塗布範囲30は、吸収体13の中央側から周縁側に向けて複数の区画部に区画され、各区画部にそれぞれ異なる香りを発する水溶性香料を配設するようにしてもよい。例えば、図4及び図5に示されるように、帯状範囲30a、30b、30cがおむつ前後方向に間隔をあけて離散的に配置される場合、各帯状範囲30a、30b、30cに、それぞれ異なる香りを発する水溶性香料を配設することができる。また、図3及び図6に示されるように、塗布範囲30がおむつ前後方向に連続的に設けられる場合、図示しないが塗布範囲30をおむつ前後方向に複数に区画し、各区画部にそれぞれ異なる香りを発する水溶性香料を塗布することができる。この場合、区画部がおむつ前後方向に2つ〜5つ程度形成されるように区画することが好ましい。これにより、香りの種類によっておむつ交換時期の目安とすることが可能になる。
このように、水溶性香料の塗布範囲30をおむつ前後方向に複数に区画し、各区画部にそれぞれ異なる香りを発する水溶性香料を塗布した場合の効果について実証試験を行った。実験では、吸収体の前端を0とし後端を100としたときに、第1の水溶性香料Aを70〜85の範囲に塗布し、第2の水溶性香料Bを85〜100の範囲に塗布した吸収体13を用意し、前記水溶性香料Aの一部が吸水した使い捨ておむつと、水溶性香料AとBの両方が吸水した使い捨ておむつとについて、被験者5人に臭いを嗅いでもらい、両者に香りの違いがあるかどうかを回答してもらった。その結果、5人の被験者全員が香りに違いがあると回答し、香りが同じと答えた者はいなかった。
ここで、各区画部に異なる種類の水溶性香料を塗布する場合、水溶性香料は、吸収体中央側の区画部に塗布されたものと、その吸収体周縁側の区画部(その直ぐ外側の区画部)に塗布されたものとが混合することにより、これらの区画部に塗布された香料自体の香りとは異なる他の香りに変化するような香料を使用することが好ましい。具体的には、図4に示されるように、帯状範囲30aに尿が接触して発せられた香りと、その直ぐ外側に塗布された帯状範囲30bに尿が接触して発せられた香りとが混合することにより、これら帯状範囲30a、30bに塗布された香料とは異なる香りを発するような変調作用のある香料を使用する。これにより、帯状範囲30aの香りによって次の帯状範囲30bの香りがかき消されて気付かないという問題が解決でき、香りが確実に識別でき、おむつの交換時期を適切に知ることができるようになる。このような変調作用のある香料としては、例えば甘いフルーツの香りとフレッシュなベリーやシトラスの香りが合わさることでフルーティフローラルのような香りに感じるなど、通常の香りの調合の際に複数の香りを合わせることで香りの感じ方が変わるもの等を使用することができる。
ところで、吸収体13に吸収された***物の拡散範囲は、図示例では楕円状又は円状に示してあるが、実際には着用者の体勢や吸収体13の繊維配向方向などによって定かではない。このような吸収体13における前後方向と幅方向の拡散範囲の不整合を調整するため、図8に示されるように、吸収体13の前後方向の両端部又は幅方向の両側部に、吸収体13の中央側から周縁側に向かう方向とほぼ直交する方向にエンボス凹部32を設けることができる。図8に示される例では、前後方向の両端部に、ほぼ吸収体幅方向に沿うとともに吸収体前後方向の端縁側(外側)に凸の湾曲形状の3本の帯状範囲30a、30b、30cが吸収体13の前後方向に間隔をあけて配設された吸収体13において、この帯状範囲30a、30b、30cの吸収体中央側の側縁に沿うとともに、この側縁から若干の間隔をあけて線状のエンボス凹部32が配設されている。これによって、前記エンボス凹部32を設けない場合、図9(A)に示されるように、2回目の排尿で香りが発生するように設定されていたとすると、まだ吸収体13の幅方向両側部に吸収できる余力が残っているにもかかわらず、吸収体13の前後方向に拡散し過ぎて広範囲に亘る水溶性香料と尿とが接触し強い香りが発生しておむつ交換時期が早く認識されるおそれがあるのに対して、吸収体13の前後方向の両端部にエンボス凹部32を設けた場合には、図9(B)に示されるように、エンボス凹部32において吸収体13に吸収された尿がエンボス凹部32の端縁を回り込むようにして外側に拡散するため、吸収体13の前後方向への拡散が抑制され、吸収体13の幅方向への拡散にシフトしやすくなる結果、吸収体13の前後方向への拡散と幅方向への拡散とが整合し、香りの強さと適切なおむつ交換時期との適合性が確保されるようになる。
前記エンボス凹部32は、吸収体13の幅方向への拡散が強い場合、吸収体13幅方向と前後方向との拡散がほぼ均等であっても前後方向の両端部に設けた水溶性香料の塗布範囲30に拡散領域が到達する前に吸収体13の幅方向両端部からの横漏れを生じるおそれがある場合、又は吸収体13の幅方向両側部に水溶性香料の塗布範囲30を設けた場合などには、吸収体13の幅方向両側部に、吸収体13のほぼ前後方向に沿って設けることが可能である。
前記エンボス凹部32は、図示例のように、吸収体13の中央側周縁側に間隔をあけて複数本に亘って設けることもできるし、1本だけ設けることもできる。複数本設ける場合には、2本から5本程度が好ましい。また、図示例では、エンボス凹部32は、吸収体13に対して水溶性香料の塗布範囲30と同じ部分、すなわち図示例では水溶性香料の塗布範囲30が設けられる吸収体13の前後方向の両端部に設けられているが、***物の拡散状態によっては、水溶性香料の塗布範囲30が形成されない部分、すなわち図示例では吸収体13の幅方向両側部に設けてもよい。なお、図示例では、エンボス凹部32は、連続するエンボス線によって形成してあるが、点線状、鎖線状としてもよい。また、前記エンボス凹部32に代えて、吸収体13を厚み方向に所定幅で貫通させたスリットとすることによってもほぼ同様の効果が得られるようになる。
1回の排尿が吸収体を拡散する範囲について、種々の条件で測定した。実験では、サイズ及び材質の異なる使い捨ておむつを3種類用意し(下表1〜表4参照)、ダミー人形に装着させて人工尿を750cc/分の速度で女児排尿口から排出させ、排出から3分後に脱着させて排尿口位置からの拡散距離を測定した。前記排尿口の位置は、吸収体の前後方向中央から前側に、おむつAでは25mm、おむつBでは30mm、おむつCでは35mmの幅方向中央とした。前記人工尿(10,000g)は、尿素:200g、塩化ナトリウム:80g、塩化カルシウム二水和物:3g、硫化マグネシウム七水和物:8g、及びイオン交換水:9,709gを混合して調整し、食用の青色染料を添加して着色したものである。
実験の結果を表4に示す。表4より、1回の排尿に対する拡散範囲の目安が判るので、これより外側に水溶性香料の塗布範囲30を設けることができる。
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、水溶性香料を各部材に塗布する他に、吹付、散布方法及び接着剤による固定方法を例示したが、図10に示されるように、予め水溶性香料を担持した香りシート31を、各部材間に配設してもよい。その場合、製造工程では、図10に示されるように、連続吸収体の切断予定線LDに跨って香りシート31を配設し、吸収体13の切断とともに、香りシート31が切断されるようにするのが好ましい。これによって、資材の無駄がなくなり、製造工程が簡略化できる。
(2)上記形態例では、使い捨ておむつを例に説明したが、本発明は、尿取りパッドや失禁パッド等の吸収性物品に広く使用できる。