JP6184898B2 - クロロシラン類、クロロシラン類の精製方法、および、シリコン結晶 - Google Patents

クロロシラン類、クロロシラン類の精製方法、および、シリコン結晶 Download PDF

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Description

本発明は、トリクロロシランをはじめとするクロロシラン類の精製技術に関し、より詳細には、半導体デバイスの製造に用いられるシリコン結晶の製造原料として好適な高純度のクロロシラン類を製造するための技術に関する。
半導体グレードの高純度多結晶シリコンは、通常、水素存在下でトリクロロシランを主成分とするクロロシラン類ガスを原料として「シーメンス法」と呼ばれるCVD法により製造される。従って、高純度多結晶シリコンの原料となるクロロシラン類もまた、その純度は極めて高いものであることが要求される。
特に、原料クロロシラン類中に含有されている不純物が、シリコン結晶中でドナーとなるリンやヒ素といった不純物であったり、アクセプタとなるホウ素やアルミニウムといった不純物である場合には、例えこれらの不純物が微量であっても、製造される多結晶シリコンの電気的特性(抵抗率)に著しい影響を与える。このため、原料クロロシラン類中に含有されているドナー不純物およびアクセプタ不純物を効率的に除去して高純度化する技術の提供は、実用的に大きな意義をもつ。
一般に、多結晶シリコン製造用のクロロシラン類は、不純物を比較的多量に含む冶金級シリコン(いわゆる金属グレードシリコンであり、以下では「金属シリコン」と呼ぶ)から公知の方法によってクロロシラン類留出物を得た後に、当該クロロシラン類留出物をさらに蒸留などの手法により精製して高純度化して製造される。
しかし、通常、金属シリコン中には、上述したドナー不純物やアクセプタ不純物が原子数比換算で数百ppba〜数百ppmaのオーダーで含まれている。このため、クロロシラン類留出物の精製過程でこれらの不純物が充分には除去されず、最終的に得られたクロロシラン類中にドナー不純物やアクセプタ不純物が残留してしまい、このような残留不純物が多結晶シリコンの品質を低下させてしまうという問題が生じ得る。
クロロシラン類留出物を得るための方法として、金属シリコンの存在下でテトラクロロシラン(SiCl4)含有物と水素を反応させてトリクロロシラン(SiHCl3)を含むクロロシラン類留出物を得る水素化工程が知られている(例えば、特表2008-532907号公報(特許文献1)、特開昭58-217422号公報(特許文献2)、特開昭58-161915号公報(特許文献3)など参照)。
また、クロロシラン類留出物を得るための他の方法として、触媒の存在下で金属シリコンと塩化水素を接触させて塩素化反応を行い、トリクロロシランを含むクロロシラン類留出物を得る塩素化工程も知られている(例えば、特開2005-67979号公報(特許文献4)を参照)。
金属シリコンに含まれるドナー不純物やアクセプタ不純物は、粗クロロシラン類を生成する際に同時に水素化や塩素化される等して、粗クロロシラン類中に種々の構造の化合物等の態様として混入すると考えられている。このような粗クロロシラン類を精製して高純度クロロシラン類を得るが、ドナー不純物やアクセプタ不純物の化合物等の沸点がトリクロロシランの沸点と近接している場合には、これらの不純物を一般的な蒸留方法によって分離・除去することは困難である。そして、ドナー不純物およびアクセプタ不純物の除去が不充分なクロロシラン類を原料として多結晶シリコンを製造すると、所望の特性の多結晶シリコンが得られない結果となる。
このような事情から、クロロシラン類留出物中のドナー不純物やアクセプタ不純物を除去する方法として、種々の方法が提案されてきた。例えば、クロロシラン類留出物に有機物を添加し、ドナー不純物やアクセプタ不純物との付加物を生成させた後、蒸留精製して高純度クロロシラン類を得る方法が提案されている。
具体的には、特開2005-67979号公報(特許文献4)には、クロロシラン類にエーテル類を添加して蒸留精製する方法が開示されている。また、米国特許第3,126,248号明細書(特許文献5)には、ジオキサン、ベンズアルデヒド、メチルエチルケトン、ジメチルグリオキシム、バレロラクトンからなる有機化合物を添加して不純物を除去する方法が開示されている。さらに、特開2009-62213号公報(特許文献6)には、クロロシラン類をベンズアルデヒドの存在下で酸素と反応させて不純物を高沸点化合物に転化させ、当該処理後のクロロシラン類を蒸留等して不純物の高沸点化合物とクロロシラン類とを分離する方法が開示されている。
また、クロロシラン類留出物に金属塩化物を添加し、ドナー不純物やアクセプタ不純物との付加物を生成した後、蒸留精製して高純度クロロシラン類を得る方法も提案されている。
具体的には、米国特許第2,821,460号明細書(特許文献7)には、クロロシラン類に塩化アルミニウムを添加してAlCl3・PCl5錯体を形成した後に蒸留精製する方法が開示されている。また、特開平4-300206号公報(特許文献8)には、TiCl4等の無機塩水溶液を高濃度に添加し、不純物を加水分解して高沸点化合物とした後に蒸留精製する方法が開示されている。
さらに、クロロシラン類に含有されている不純物をアルミナやシリカゲルあるいは活性炭などに吸着させることにより除去する方法も提案されている。
具体的には、米国特許第3,252,752号明細書(特許文献9)には、孤立電子対をもつ物質(例えば、窒素原子をもつプロピオニトリルや酸素原子をもつベンズアルデヒドなどの物質)を、活性炭やシリカゲル等の吸着剤に固定化し、これにクロロシラン類ガスを流して不純物を捕捉除去する方法が開示されている。また、ドイツ国特許第1,289,834号明細書(特許文献10)には、クロロシラン類を、液体または蒸気の状態で、活性アルミナと接触させて不純物除去する方法が開示されている。さらに、米国特許第4,112,057号明細書(特許文献11)には、クロロシラン類を、水和したシリカゲルやアルミナゲル等の金属酸化物と接触させて不純物除去する方法が開示されており、特開2001-2407号公報(特許文献12)には、クロロシラン類を、アルカリまたはアルカリ土類フッ化物塩と接触させて不純物除去する方法が開示されている。
これらの方法以外にも、高温条件でクロロシラン類に少量の酸素を導入して反応させることによって錯体を形成させ、この錯体とドナー不純物やアクセプタ不純物との反応により新たな錯体を形成させ、これをクロロシラン類の蒸留工程で分離することにより不純物濃度の低いクロロシラン類を得る方法も提案されている(特表昭58-500895号公報(特許文献13)を参照)。
特表2008-532907号公報 特開昭58-217422号公報 特開昭58-161915号公報 特開2005-67979号公報 米国特許第3,126,248号明細書 特開2009-62213号公報 米国特許第2,821,460号明細書 特開平4-300206号公報 米国特許第3,252,752号明細書 ドイツ国特許第1,289,834号明細書 米国特許第4,112,057号明細書 特開2001-2407号公報 特表昭58-500895号公報
半導体グレードのトリクロロシランの品質は、これを原料として合成したシリコン多結晶の抵抗値で評価した場合に、汎用品レベルのトリクロロシランの場合には500Ω−cm以上、高級グレードのトリクロロシランの場合には1000Ω−cm以上が求められ、特に高抵抗が求められることとなるセンサー用、検出器用、高電圧用のシリコン結晶を合成するためのトリクロロシランの場合には、5000Ω−cm以上の値が求められる。
上述した従来の精製方法のうち、クロロシラン類留出物に有機物や金属塩化物を添加してドナー不純物やアクセプタ不純物との付加物を生成する方法は、付加物と主成分であるトリクロロシランとの間で沸点差が生じる場合には、その後の蒸留工程により、クロロシラン類を高純度で精製することが可能である。
しかし、先に列挙した先行文献にも記載されているように、クロロシラン類留出物に有機物を添加する精製方法において不純物除去に効果を奏する有機物は孤立電子対を保有する元素を含む有機物であるところ、かかる有機物の選定には相当の制限がある。
例えば、添加される有機物は、精製工程中に極めて容易に分解等するものであってはならず、また、クロロシラン類留出物中の物質との反応等によってクロロシラン類の沸点付近の生成物を生じないことも必要である。特に、孤立電子対を保有する元素を含む有機物が固体の場合は、クロロシラン類留出物の取扱い温度において溶解するかどうかや、取扱い途中の運転条件により析出しないかなどについても検討する必要が生じるし、投入時に水分が混入しないための十分な配慮も必要である。つまり、精製工程の諸条件を勘案した上で、不純物除去に有効な有機物を慎重に選定する必要がある。
ドナー不純物やアクセプタ不純物の除去に有効な孤立電子対を保有する元素を含む有機物としてはベンズアルデヒド(C65CHO)が知られている(特許文献5、特許文献6、特許文献9など参照)。ベンズアルデヒドは、添加時の取扱いが容易であり入手も容易であるが、ベンズアルデヒド類は塩化鉄などの金属塩化物などの存在下において、固形の高重合物を形成する。このような高重合物は固形化し、配管や容器中に閉塞物を生成するため、かかる固形物を除去するために製造設備を定期的に停止させる必要がある。
クロロシラン類留出物に金属塩化物を添加する精製方法は、その取り扱いが容易とは言えず、しかも、廃棄物処理が煩雑である等の問題がある。
クロロシラン類に含有されている不純物をアルミナやシリカゲルあるいは活性炭などに吸着させることにより除去する方法は、吸着塔などの装置が必要となり設備が複雑になることに加え、吸着物の担持方法が容易でなかったり、破過後の吸着物の取扱いや廃棄物処理が煩雑であったりする等の問題もある。
その他の不純物除去方法においても、高温条件でクロロシラン類に少量の酸素を導入して、高温にて反応させることが必要であり、簡便かつ穏やかな条件で操作することができないなど種々の問題を抱えている。
本発明は、上述したような従来のクロロシラン類の精製方法の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、クロロシラン類留出物中からドナー不純物であるリン(P)およびアクセプタ不純物であるボロン(B)を同時に除去して、精製工程を複雑化することなく、高純度クロロシラン類の製造を可能とする技術を提供することにある。
上述の課題を解決するために、本発明に係るクロロシラン類の精製方法は、三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)を不純物として含むトリクロロシランを、不均化反応触媒としての陰イオン交換樹脂に流通させ、前記三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)を不均化せしめてホスフィン(PH3)とボラン(BH3)の複合物(PH3−BH3)を生成させる第1工程を備えている。
本発明に係るクロロシラン類の精製方法は、前記第1工程後のクロロシラン類から、前記複合物(PH3−BH3)を蒸留分離して、前記トリクロロシランからリン不純物とボロン不純物を同時に除去する第2工程を備えている。
本発明に係るクロロシラン類の精製方法は、前記第2工程後のクロロシラン類をさらに蒸留して、精製されたジクロロシラン、トリクロロシラン、若しくは、テトラクロロシランの少なくとも一種のクロロシラン類を分離する第3工程を備えている態様とすることができる。
例えば、前記陰イオン交換樹脂は、第三級アミンを交換基とする弱塩基性陰イオン交換樹脂である。
また、例えば、前記陰イオン交換樹脂は、トリメチルアンモニウムを交換基とするI型強塩基性陰イオン交換樹脂である。
本発明に係るシリコン結晶は、上述の精製方法により得られたトリクロロシランなどのクロロシラン類を原料として育成されたシリコン結晶であって、リンの不純物濃度が0.03ppba未満でボロンの不純物濃度が0.01ppba未満である。
本発明に係るクロロシラン類の精製方法では、精製対象であるトリクロロシランを、不均化反応触媒としての陰イオン交換樹脂に流通させることにより、トリクロロシランに含まれている三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)を不均化せしめてホスフィン(PH3)とボラン(BH3)の複合物(PH3−BH3)を生成させる工程を設けることとした。
そして、上記工程後のクロロシラン類から複合物(PH3−BH3)を蒸留分離することとすれば、精製工程を複雑化することなく、トリクロロシランからリン不純物とボロン不純物を同時に除去することが可能となる。
本発明に係るクロロシラン類の精製方法を説明するためのフローチャートである。 GC−FPDの測定例である。 GC−MSの測定例である。 PH3−BH3の蒸留分離工程後に得られたクロロシラン類をさらに蒸留分離して得られた各ガスを原料として用いてエピタキシャル成長させて得られたシリコン結晶の比抵抗値を比較した図(深さ方向マッピング)である。
以下に、図面を参照して、本発明に係るクロロシラン類の精製方法を具体的に説明する。
図1は、本発明に係るクロロシラン類の精製方法を説明するためのフローチャートである。
先ず、金属ケイ素と塩酸からトリクロロシランを合成する(S101)。このトリクロロシランにはリン化合物とボロン化合物が不純物として多量に含まれているため、従来の方法により蒸留精製して半導体グレードのトリクロロシランを得ておく(S102)。
この蒸留精製後のトリクロロシランには、僅かではあるが、三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)が不純物として含まれている。そこで、このトリクロロシランを、不均化反応触媒としての陰イオン交換樹脂に流通させる(S103)。この陰イオン交換樹脂への流通により、三塩化リン(PCl3)と三塩化ボロン(BCl3)を不均化させ、ホスフィン(PH3)とボラン(BH3)の複合物(PH3−BH3)が生成する。
なお、トリクロロシランが流通する際に、陰イオン交換樹脂に三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)が吸着する可能性が考えられるため、当該吸着の有無について確認したところ、樹脂への吸着は全く認められなかった。この事実は、上記流通に用いる陰イオン交換樹脂の再生処理が不要であることを意味しており、樹脂の再生処理操作が不要である点は実用上、極めて重要な利点である。このように、本発明によれば、精製工程を複雑化することがなく、低コストでの精製が可能である。
上記複合物(PH3−BH3)の生成理由について、本発明者らは下記のように理解している。陰イオン交換樹脂表面にある窒素(N)原子はプラスの分極性を有する一方、Cl原子はその電気陰性度によりマイナスの分極性を有している。このため、上記分極の効果により、プラスに分極した陰イオン交換樹脂表面の窒素(N)に、三塩化リン(PCl3)と三塩化ボロン(BCl3)が引き付けられる。このとき同時に、トリクロロシランの不均化反応(−Hと−Clの交換反応)も同時に進行する。三塩化リン(PCl3)と三塩化ボロン(BCl3)は、上記トリクロロシランの不均化反応により生成する水素源から−Hの供給を受け、ホスフィン(PH3)とボラン(BH3)の複合物(PH3−BH3)を形成する。そして、上述のように、この複合物(PH3−BH3)は陰イオン交換樹脂表面には吸着しないため、トリクロロシランと一緒に流出される。
上記トリクロロシランの流通は、具体的には下記のように行う。陰イオン交換樹脂を円筒の管に充填し、エタノールで十分に洗浄を行い、エタノール中の水分が10ppm以下になるまで洗浄を繰り返す。次いで、トルエンを通液し、トルエン中のエタノールが50ppm以下になるまで洗浄を繰り返す。上記洗浄後の陰イオン交換樹脂を55〜60℃の温度範囲に制御し、例えば4kg/分の速度(線速度2.8mm/秒)でトリクロロシランを流通(通液)し、トリクロロシランを主成分とした液を得る。
なお、陰イオン交換樹脂は、弱塩基性陰イオン交換樹脂でも強塩基性陰イオン交換樹脂でもよい。好ましくは、弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、第三級アミンを交換基とする弱塩基性陰イオン交換樹脂を選択し、強塩基性陰イオン交換樹脂としては、トリメチルアンモニウムを交換基とするI型強塩基性陰イオン交換樹脂を選択する。
陰イオン交換樹脂への通液後の液を蒸留フラクション別に分析すると、トリクロロシラン側のPとBの量は極めて少なく、不均化反応の結果として生成したジクロロシラン側に多く存在することが確認された。このことから、複合物(PH3−BH3)は低沸点のものであると結論付けられる。また、GC−FPD(Flame Photometric Detector:炎光光度検出器)、および、GC−MSによる定性分析の結果、この低沸点成分は、PH3−BH3であると結論付けた。
図2はGC−FPDの測定例で、この測定では、検出器に水素−酸素の燃焼炎によるリン(P)の発光による検出を行い、リン(P)の発光のみを透過させる光学フィルタ(526nm)を使用して選択的な検出を図った。用いた装置は、島津製作所(株)製のGC−2010FPDである。
GCの分離カラムには、感度を確保するために、多くの試料を注入できるパックドカラムを使用した。液相には信越化学工業(株)製のKF−96H(1,000,000cps)を使用し、担体にはテフロン(登録商標)PTFEを破砕した粒子を使用し、低沸点成分の分離を上げるためにカラム温度を10℃に設定した。
図3はGC−MSの測定例で、GC−MSの測定には、アジレント社製のAgilent 5975 MSD を使用した。また、分離カラムは、DB−1ms(60m×0.53mm径、液相1.5μm)を使用した。なお、質量分析は、EIモード(電子衝撃イオン化)とし、印加電圧が+200Vの条件で行った。
上記流通により生成した複合物(PH3−BH3)の沸点は、−85℃〜−87.5の間にあると考えられる。これは、GC測定において、溶出時間が沸点順に溶出する無極性のシリコーンオイル系の上述のGC用分離カラムを使用した時に、沸点−85℃のHClと沸点−87.5のB26の間に溶出することによる。
複合物(PH3−BH3)の沸点がこのような低温領域にあれば、沸点32℃のトリクロロシランとの分離は容易であり、トリクロロシランの不均化反応により生成したテトラクロロシラン(沸点57℃)との分離は更に容易である。また、トリクロロシランの不均化反応によりジクロロシラン(沸点8℃)も生成するが、ジクロロシランと複合物(PH3−BH3)の分離も困難ではない。
そこで、PH3−BH3の蒸留分離(S104)を行い、分離されたPH3−BH3を除去する。このとき、蒸留時の還流比を高めに設定すると、ppbwレベルまで分離することができる。
因みに、PCl3の沸点は76℃であり、BCl3の沸点は12℃である。つまり、三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)が不均化により複合物(PH3−BH3)となった結果、低沸点化合物へと誘導され、クロロシラン類との分離が容易なものとなったことになる。
上述の如く、トリクロロシランの不均化反応により、テトラクロロシラン(沸点57℃)およびジクロロシラン(沸点8℃)が生成しているから、これらのクロロシラン類を更に蒸留分離して、精製されたジクロロシラン、トリクロロシラン、若しくは、テトラクロロシランの少なくとも一種のクロロシラン類を分離することができる。図1に示した例では、このクロロシラン類の蒸留分離を2段で行い、ステップS106の蒸留工程の前に、ステップS105の粗蒸留の工程を設けている。
なお、ステップ106で得られたトリクロロシランを、ステップS103に戻し、その後の工程を繰り返して更なる精製を行うようにしてもよいことは言うまでもない。
[実施例1]エピタキシャル膜の比抵抗
図4は、上述の複合物(PH3−BH3)の蒸留分離工程(S104)後に得られたクロロシラン類をさらに蒸留分離(S105、S106)して得られた各ガスを原料として用いてエピタキシャル成長させて得られたシリコン結晶の比抵抗値を比較した図(深さ方向マッピング)である。
試料1A〜1Eは、それぞれ、ステップS105で蒸留分離されたジクロロシラン(1A)、ステップS106で蒸留分離されたジクロロシラン(1B)、ステップS106で蒸留分離されたジクロロシランを更に精密蒸留して得られたジクロロシラン(1C)、ステップS106で蒸留分離されたトリクロロシラン(1D)、ステップS106で蒸留分離されたテトラクロロシラン(1E)を原料として用いてエピタキシャル成長させて得られたシリコン結晶である。尚、エピタキシャル基板には、何れの試料についても、ノンドープ(n型)の比抵抗990Ω−cmのシリコン基板(10mm×5mm、厚さ0.75mm)を使用した。
エピタキシャル膜の成長には、石英製の透明反応管を使用し、その外側から赤外線ランプの光を集光し加熱させ、サセプタには高純度グラッシーカーボンを使用した。シリコン基板の表面温度は放射温度計でモニタし、1120〜1126℃に制御した。
試料1A(ステップS105で蒸留分離されたジクロロシラン)についてみると、平均比抵抗値は1,152Ω−cm(n型)と比較的低抵抗であり、このことから、PH3−BH3は、トリクロロシランやテトラクロロシランよりも、相対的に低沸点のジクロロシランのフラクション側により高濃度で残存することが分かる。
また、基板表面とエピタキシャル膜の界面において、局所的に比抵抗値が高い領域が認められる。この現象は、ジクロロシランに残存するPH3−BH3が源となり、PとBがエピタキシャル膜中に取り込まれ、それぞれがドナーおよびアクセプタとなって補償し合う結果であると考えられる。しかし、エピタキシャル成長を続けると、比抵抗値は1,100Ω−cm程度の一定値を示す。これは、上述したようにPH3−BH3の沸点は低いため、ジクロロシランを充填した容器(10リットル)のバルブを開けた瞬間から気化が始まり徐々に濃度が低下してしまうことによる。
次に、試料1B(ステップS106で蒸留分離されたジクロロシラン)および試料1C(ステップS106で蒸留分離されたジクロロシランを更に精密蒸留して得られたジクロロシラン)についてみると、試料Aよりも高抵抗のものとなっており、試料1Bの平均比抵抗値は1,503Ω−cm(n型)、試料1Cの平均比抵抗値は1,751Ω−cm(n型)である。つまり、蒸留によりジクロロシラン中のPH3−BH3含有量が低減している。
試料1D(ステップS106で蒸留分離されたトリクロロシラン)および試料1E(ステップS106で蒸留分離されたテトラクロロシラン)についてみると、平均比抵抗値はそれぞれ、7,484Ω−cm(n型)および6,495Ω−cm(n型)であり、高抵抗のエピタキシャルシリコン膜が得られていることが確認できた。
上記の結果を、表1に纏めた。
[実施例2]エピタキシャル膜の比抵抗
表2は、ステップS102後(ステップS103前)のトリクロロシラン、ステップS106後のジクロロシラン、トリクロロシラン、およびテトラクロロシランを原料ガスとして用いてエピタキシャル成長させたシリコン結晶の比抵抗、PおよびB濃度([P]および[B])等の評価結果を纏めた表である。
トリクロロシランの流通に用いた陰イオン交換樹脂は何れもローム・アンド・ハース社製のものであり、実施例2Aでは弱塩基性(アンバーリストB20)、実施例2Bでは強塩基性(アンバーライトIRA400J)、比較例では強酸性(アンバーライトIR120B)である。
比抵抗測定は2探針による広がり抵抗測定法による(装置:日本SSM(株)製SSM−150)。また、エピタキシャルシリコン膜中のPとBの濃度は、JISH0615(1996)に則り、フォトルミネッセンス法により定量した。
蒸留分離工程において、沸点の低いPH3−BH3は、相対的に沸点の低いジクロロシラン側に混ざり易い。一方、沸点の高いPOCl3は、相対的に沸点の高いテトラクロロシラン側に混ざり易い。このため、沸点がジクロロシランとテトラクロロシランの中間となるトリクロロシランにはPとBの不純物が取り込まれ難くなる。
その結果、本発明により精製されたトリクロロシランを原料としてシリコン結晶を育成すると、実施例2A、2Bに示したように、リンの不純物濃度が0.03ppba未満でボロンの不純物濃度が0.01ppba未満といった、十分に純度の高いものを得ることができる。
上述したように、本発明に係るクロロシラン類の精製方法では、精製対象であるトリクロロシランを、不均化反応触媒としての陰イオン交換樹脂に流通させることにより、トリクロロシランに含まれている三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)を不均化せしめてホスフィン(PH3)とボラン(BH3)の複合物(PH3−BH3)を生成させる工程を設けることとした。
そして、上記工程後のクロロシラン類から複合物(PH3−BH3)を蒸留分離することとすれば、精製工程を複雑化することなく、トリクロロシランからリン不純物とボロン不純物を同時に除去することが可能となる。
本発明は、クロロシラン類留出物中からドナー不純物であるリン(P)およびアクセプタ不純物であるボロン(B)を同時に除去して、精製工程を複雑化することなく、高純度クロロシラン類の製造を可能とする技術を提供する。

Claims (3)

  1. 三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)を不純物として含むトリクロロシランを、不均化反応触媒としての陰イオン交換樹脂に流通させ、前記三塩化リン(PCl3)および三塩化ボロン(BCl3)を不均化せしめてホスフィン(PH3)とボラン(BH3)の複合物(PH3−BH3であって沸点が−85℃〜−87.5の間にある複合物を生成させる第1工程と、
    前記第1工程後のクロロシラン類から、前記複合物(PH 3 −BH 3 )を蒸留分離して、前記トリクロロシランからリン不純物とボロン不純物を同時に除去する第2工程と、
    前記第2工程後のクロロシラン類をさらに蒸留して、精製されたトリクロロシランを分離する第3工程を備えている、クロロシラン類の精製方法。
  2. 前記陰イオン交換樹脂は、第三級アミンを交換基とする弱塩基性陰イオン交換樹脂である、請求項1に記載のクロロシラン類の精製方法。
  3. 前記陰イオン交換樹脂は、トリメチルアンモニウムを交換基とするI型強塩基性陰イオン交換樹脂である、請求項1に記載のクロロシラン類の精製方法。



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