以下に説明する、発明を実施するための形態(以下実施例と記す)は、実際の製品として要望されている色々な課題を解決しており、特に車両の吸入空気量を計測する計測装置として使用するために望ましい色々な課題を解決し、色々な効果を奏している。下記実施例が解決している色々な課題の内の一つが、上述した発明が解決しようとする課題の欄に記載した内容であり、また下記実施例が奏する色々な効果の内の一つが、発明の効果の欄に記載された効果である。下記実施例が解決している色々な課題について、さらに下記実施例により奏される色々な効果について、下記実施例の説明の中で、述べる。従って下記実施例の中で述べる、実施例が解決している課題や効果は、発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄の内容以外の内容についても記載されている。
以下の実施例で、同一の参照符号は、図番が異なっていても同一の構成を示しており、同じ作用効果を成す。既に説明済みの構成について、図に参照符号のみを付し、説明を省略する場合がある。
1. 内燃機関制御システムに本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例
図1は、電子燃料噴射方式の内燃機関制御システムに、本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例を示す、システム図である。エンジンシリンダ112とエンジンピストン114を備える内燃機関110の動作に基づき、吸入空気が被計測気体30としてエアクリーナ122から吸入され、主通路124である例えば吸気ボディ、スロットルボディ126、吸気マニホールド128を介してエンジンシリンダ112の燃焼室に導かれる。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は本発明に係る熱式流量計300で計測され、計測された流量に基づいて燃料噴射弁152より燃料が供給され、吸入空気である被計測気体30と共に混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、本実施例では、燃料噴射弁152は内燃機関の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が吸入空気である被計測気体30と共に混合気を成形し、吸気弁116を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
近年、多くの車では排気浄化や燃費向上に優れた方式として、内燃機関のシリンダヘッドに燃料噴射弁152を取り付け、燃料噴射弁152から各燃焼室に燃料を直接噴射する方式が採用されている。熱式流量計300は、図1に示す内燃機関の吸気ポートに燃料を噴射する方式だけでなく、各燃焼室に燃料を直接噴射する方式にも同様に使用できる。両方式とも熱式流量計300の使用方法を含めた制御パラメータの計測方法および燃料供給量や点火時期を含めた内燃機関の制御方法の基本概念は略同じであり、両方式の代表例として吸気ポートに燃料を噴射する方式を図1に示す。
燃焼室に導かれた燃料および空気は、燃料と空気の混合状態を成しており、点火プラグ154の火花着火により、爆発的に燃焼し、機械エネルギを発生する。燃焼後の気体は排気弁118から排気管に導かれ、排気24として排気管から車外に排出される。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度が変化するスロットルバルブ132により制御される。前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量に基づいて燃料供給量が制御され、運転者はスロットルバルブ132の開度を制御して前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量を制御することにより、内燃機関が発生する機械エネルギを制御することができる。
1.1 内燃機関制御システムの制御の概要
エアクリーナ122から取り込まれ主通路124を流れる吸入空気である被計測気体30の流量および温度が、熱式流量計300により計測され、熱式流量計300から吸入空気の流量および温度を表す電気信号が制御装置200に入力される。また、スロットルバルブ132の開度を計測するスロットル角度センサ144の出力が制御装置200に入力され、さらに内燃機関のエンジンピストン114や吸気弁116や排気弁118の位置や状態、さらに内燃機関の回転速度を計測するために、回転角度センサ146の出力が、制御装置200に入力される。排気24の状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するために、酸素センサ148の出力が制御装置200に入力される。
制御装置200は、熱式流量計300の出力である吸入空気の流量、および回転角度センサ146の出力に基づき計測された内燃機関の回転速度、に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算する。これら演算結果に基づいて、燃料噴射弁152から供給される燃料量、また点火プラグ154により点火される点火時期が制御される。燃料供給量や点火時期は、実際にはさらに熱式流量計300で計測される吸気温度やスロットル角度の変化状態、エンジン回転速度の変化状態、酸素センサ148で計測された空燃比の状態に基づいて、きめ細かく制御されている。制御装置200はさらに内燃機関のアイドル運転状態において、スロットルバルブ132をバイパスする空気量をアイドルエアコントロールバルブ156により制御し、アイドル運転状態での内燃機関の回転速度を制御する。
1.2 熱式流量計の計測精度向上の重要性と熱式流量計の搭載環境
内燃機関の主要な制御量である燃料供給量や点火時期はいずれも熱式流量計300の出力を主パラメータとして演算される。従って熱式流量計300の計測精度の向上や経時変化の抑制、信頼性の向上が、車両の制御精度の向上や信頼性の確保に関して重要である。特に近年、車両の省燃費に関する要望が非常に高く、また排気ガス浄化に関する要望が非常に高い。これらの要望に応えるには熱式流量計300により計測される吸入空気である被計測気体30の流量の計測精度の向上が極めて重要である。また熱式流量計300が高い信頼性を維持していることも大切である。
熱式流量計300が搭載される車両は温度変化の大きい環境で使用され、また風雨や雪の中で使用される。雪道を車が走行する場合には、凍結防止剤が散布された道路を走行することとなる。熱式流量計300は、その使用環境における温度変化への対応や、塵埃や汚染物質などへの対応も、考慮されていることが望ましい。さらに熱式流量計300は内燃機関の振動を受ける環境に設置される。振動に対しても高い信頼性の維持が求められる。
また熱式流量計300は内燃機関からの発熱の影響を受ける吸気管に装着される。このため内燃機関の発熱が主通路124である吸気管を介して、熱式流量計300に伝わる。熱式流量計300は、被計測気体と熱伝達を行うことにより被計測気体の流量を計測するので、外部からの熱の影響をできるだけ抑制することが重要である。
車に搭載される熱式流量計300は、以下で説明するように、単に発明が解決しようとする課題の欄に記載された課題を解決し、発明の効果の欄に記載された効果を奏するのみでなく、以下で説明するように、上述した色々な課題を十分に考慮し、製品として求められている色々な課題を解決し、色々な効果を奏している。熱式流量計300が解決する具体的な課題や奏する具体的な効果は、以下の実施例の記載の中で説明する。
2. 熱式流量計300の構成
2.1 熱式流量計300の外観構造
図2および図3、図4は、熱式流量計300の外観を示す図であり、図2(A)は熱式流量計300の左側面図、図2(B)は正面図、図3(A)は右側面図、図3(B)は背面図、図4(A)は平面図、図4(B)は下面図である。熱式流量計300はハウジング302と表カバー303と裏カバー304とを備えている。ハウジング302は、熱式流量計300を主通路124である吸気ボディに固定するためのフランジ312と、外部機器との電気的な接続を行うための外部端子306を有する外部接続部305と、流量等を計測するための計測部310を備えている。計測部310の内部には、副通路を作るための副通路溝が設けられており、さらに計測部310の内部には、主通路124を流れる被計測気体30の流量を計測するための流量検出部602(図19参照)や主通路124を流れる被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452を備える回路パッケージ400が設けられている。
2.2 熱式流量計300の外観構造に基づく効果
熱式流量計300の入口350が、フランジ312から主通路124の中心方向に向かって延びる計測部310の先端側に設けられているので、主通路124の内壁面近傍ではなく、内壁面から離れた中央部に近い部分の気体を副通路に取り込むことができる。このため熱式流量計300は主通路124の内壁面から離れた部分の気体の流量や温度を測定することができ、熱などの影響による計測精度の低下を抑制できる。主通路124の内壁面近傍では、主通路124の温度の影響を受け易く、気体の本来の温度に対して被計測気体30の温度が異なる状態となり、主通路124内の主気体の平均的な状態と異なることになる。特に主通路124がエンジンの吸気ボディである場合は、エンジンからの熱の影響を受け、高温に維持されていることが多い。このため主通路124の内壁面近傍の気体は、主通路124の本来の気温に対して高いことが多く、計測精度を低下させる要因となる。
主通路124の内壁面近傍では流体抵抗が大きく、主通路124の平均的な流速に比べ、流速が低くなる。このため主通路124の内壁面近傍の気体を被計測気体30として副通路に取り込むと、主通路124の平均的な流速に対する流速の低下が計測誤差につながる恐れがある。図2乃至図4に示す熱式流量計300では、フランジ312から主通路124の中央に向かって延びる薄くて長い計測部310の先端部に入口350が設けられているので、内壁面近傍の流速低下に関係する計測誤差を低減できる。また、図2乃至図4に示す熱式流量計300では、フランジ312から主通路124の中央に向かって延びる計測部310の先端部に入口350が設けられているだけでなく、副通路の出口も計測部310の先端部に設けられているので、さらに計測誤差を低減することができる。
熱式流量計300の計測部310はフランジ312から主通路124の中心方向に向かって長く延びる形状を成し、その先端部には吸入空気などの被計測気体30の一部を副通路に取り込むための入口350と副通路から被計測気体30を主通路124に戻すための出口352が設けられている。計測部310は主通路124の外壁から中央に向かう軸に沿って長く延びる形状を成しているが、幅は、図2(A)および図3(A)に記載の如く、狭い形状を成している。即ち熱式流量計300の計測部310は、側面の幅が薄く正面が略長方形の形状を成している。これにより、熱式流量計300は十分な長さの副通路を備えることができ、被計測気体30に対しては流体抵抗を小さい値に抑えることができる。このため、熱式流量計300は、流体抵抗を小さい値に抑えられると共に高い精度で被計測気体30の流量を計測することが可能である。
2.3 温度検出部452の構造
計測部310の先端側に設けられた副通路よりもフランジ312側の方に位置して、図2および図3に示すように、被計測気体30の流れの上流側に向かって開口する入口343が成形されており、入口343の内部には被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452が配置されている。入口343が設けられている計測部310の中央部では、ハウジング302を構成する計測部310内の上流側外壁が下流側に向かって窪んでおり、前記窪み形状の上流側外壁から温度検出部452が上流側に向かって突出する形状を成している。また前記窪み形状の外壁の両側部には表カバー303と裏カバー304が設けられており、前記表カバー303と裏カバー304の上流側端部が、前記窪み形状の外壁より上流側に向かって突出した形状を成している。このため前記窪み形状の外壁とその両側の表カバー303と裏カバー304とにより、被計測気体30を取り込むための入口343が成形される。入口343から取り込まれた被計測気体30は入口343の内部に設けられた温度検出部452に接触することで、温度検出部452によって温度が計測される。さらに窪み形状を成すハウジング302の外壁から上流側に突出した温度検出部452を支える部分に沿って被計測気体30が流れ、表カバー303と裏カバー304に設けられた表側出口344および裏側出口345が主通路124に排出される。
2.4 温度検出部452に関係する効果
被計測気体30の流れに沿う方向の上流側から入口343に流入する気体の温度が温度検出部452により計測され、さらにその気体が温度検出部452を支える部分である温度検出部452の根元部分に向かって流れることにより、温度検出部452を支える部分の温度を被計測気体30の温度に近づく方向に冷却する作用を為す。主通路124である吸気管の温度が通常高くなり、フランジ312あるいは熱絶縁部315から計測部310内の上流側外壁を通って、温度検出部452を支える部分に熱が伝わり、温度の計測精度に影響を与える恐れがある。上述のように、被計測気体30が温度検出部452により計測された後、温度検出部452の支える部分に沿って流れることにより、前記支える部分が冷却される。従ってフランジ312あるいは熱絶縁部315から計測部310内の上流側外壁を通って温度検出部452を支える部分に熱が伝わるのを抑制できる。
特に、温度検出部452の支え部分では、計測部310内の上流側外壁が下流側に向かって凹む形状(図5および図6を用いて以下で説明する)を成しているので、計測部310内の上流側外壁と温度検出部452との間の距離を長くできる。熱伝導距離が長くなるとともに、被計測気体30による冷却部分の距離が長くなる。従ってフランジ312あるいは熱絶縁部315からもたらされる熱の影響を低減できる。これらのことから計測精度が向上する。上記上流側外壁が下流側に向かって凹む形状(図5および図6を用いて以下で説明する)を成しているので、以下で説明する回路パッケージ400(図5と図6参照)の固定が容易となる。
2.5 計測部310の上流側側面と下流側側面の構造と効果
熱式流量計300を構成する計測部310の上流側側面と下流側側面にそれぞれ上流側突起317と下流側突起318とが設けられている。上流側突起317と下流側突起318は根元に対して先端に行くに従い細くなる形状を成しており、主通路124内を流れる吸入空気である被計測気体30の流体抵抗を低減できる。熱絶縁部315と入口343との間に上流側突起317が設けられている。上流側突起317は断面積が大きく、フランジ312あるいは熱絶縁部315からの熱伝導が大きいが、入口343の手前で上流側突起317が途切れており、さらに上流側突起317の温度検出部452側から温度検出部452への距離が、後述するようにハウジング302の上流側外壁の窪みにより、長くなる形状を成している。このため温度検出部452の支え部分への熱絶縁部315からの熱伝導が抑制される。
またフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間には空隙が作られている。このためフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間が長くなっており、この長い部分に表カバー303や裏カバー304が設けられ、この部分が冷却面として作用している。従って主通路124の壁面の温度が温度検出部452に及ぼす影響を低減できる。またフランジ312あるいは熱絶縁部315と温度検出部452との間が長くなることにより、副通路に導く被計測気体30の取り込み部分を主通路124の中央に近づけることができる。主通路124壁面からの伝熱による計測精度の低下を抑制できる。
図2(B)や図3(B)に示すように、主通路124内に挿入される計測部310は、その両側面が大変狭く、さらに下流側突起318や上流側突起317が空気抵抗を低減する根元に対して先端が狭い形状を成している。このため、熱式流量計300を主通路124に挿入したことによる流体抵抗の増大を抑制できる。また下流側突起318や上流側突起317が設けられている部分では、表カバー303や裏カバー304の両側部より、上流側突起317や下流側突起318が両サイドに突出する形状をしている。上流側突起317や下流側突起318は樹脂モールドで作られるので、空気抵抗の少ない形状に成形し易く、一方表カバー303や裏カバー304は広い冷却面を備える形状を成している。このため熱式流量計300は、空気抵抗が低減され、さらに主通路124を流れる被計測空気により冷却されやすい効果を有している。
2.6 フランジ312の構造と効果
フランジ312には、その下面である主通路124と対向する部分に、窪み314が複数個設けられており、主通路124との間の熱伝達面を低減し、熱式流量計300が熱の影響を受け難くしている。フランジ312のねじ孔313は熱式流量計300を主通路124に固定するためのもので、これらのねじ孔313の周囲の主通路124に対向する面が主通路124から遠ざけられるように、各ねじ孔313の周囲の主通路124に対向する面と主通路124との間に空間が成形されている。このようにすることで、熱式流量計300に対する主通路124からの熱伝達を低減し、熱による測定精度の低下を防止できる構造をしている。さらにまた前記窪み314は、熱伝導の低減効果だけでなく、ハウジング302の成形時にフランジ312を構成する樹脂の収縮の影響を低減する作用をしている。
フランジ312の計測部310側に熱絶縁部315が設けられている。熱式流量計300の計測部310は、主通路124に設けられた取り付け孔から内部に挿入され、熱絶縁部315は主通路124の前記取り付け孔の内面に対向する。主通路124は例えば吸気ボディであり、主通路124が高温に維持されていることが多い。逆に寒冷地での始動時には、主通路124が極めて低い温度であることが考えられる。このような主通路124の高温あるいは低温の状態が温度検出部452や後述する流量計測に影響を及ぼすと、計測精度が低下する。このため主通路124の孔内面と近接する熱絶縁部315には、窪み316が複数個並べて設けられており、隣接する窪み316間の前記孔内面と近接する熱絶縁部315の幅は極めて薄く、窪み316の流体の流れ方向の幅の3分の1以下である。これにより温度の影響を低減できる。また熱絶縁部315の部分は樹脂が厚くなる。ハウジング302の樹脂モールド時に、樹脂が高温状態から低温に冷えて硬化する際に体積収縮が生じ、応力の発生による歪が生じる。熱絶縁部315に窪み316を成形することで体積収縮をより均一化でき、応力集中を低減できる。
熱式流量計300の計測部310は、主通路124に設けられた取り付け孔から内部に挿入され、熱式流量計300のフランジ312によりねじで主通路124に固定される。主通路124に設けられた取り付け孔に対して所定の位置関係で熱式流量計300が固定されることが望ましい。フランジ312に設けた窪み314を、主通路124と熱式流量計300との位置決めに使用できる。主通路124に凸部を成形することで、前記凸部と窪み314とが嵌め込みの関係を有する形状とすることが可能となり、熱式流量計300を正確な位置で主通路124に固定できる。
2.7 外部接続部305およびフランジ312の構造と効果
図4(A)は熱式流量計300の平面図である。外部接続部305の内部に4本の外部端子306と補正用端子307が設けられている。外部端子306は熱式流量計300の計測結果である流量と温度を出力するための端子および熱式流量計300が動作するための直流電力を供給するための電源端子である。補正用端子307は生産された熱式流量計300の計測を行い、それぞれの熱式流量計300に関する補正値を求めて、熱式流量計300内部のメモリに補正値を記憶するのに使用する端子であり、その後の熱式流量計300の計測動作では上述のメモリに記憶された補正値を表す補正データが使用され、この補正用端子307は使用されない。従って外部端子306が他の外部機器との接続において、補正用端子307が邪魔にならないように、補正用端子307は外部端子306とは異なる形状をしている。この実施例では外部端子306より補正用端子307が短い形状をしており、外部端子306に接続される外部機器への接続端子が外部接続部305に挿入されても、接続の障害にならないようになっている。また外部接続部305の内部には外部端子306に沿って複数個の窪み308が設けられており、これら窪み308は、フランジ312の材料である樹脂が冷えて固まる時の樹脂の収縮による応力集中を低減するためのものである。
熱式流量計300の計測動作中に使用する外部端子306に加えて、補正用端子307を設けることで、熱式流量計300の出荷前にそれぞれについて特性を計測し、製品のばらつきを計測し、ばらつきを低減するための補正値を熱式流量計300内部のメモリに記憶することが可能となる。上記補正値の設定工程の後、補正用端子307が外部端子306と外部機器との接続の邪魔にならないように、補正用端子307は外部端子306とは異なる形状に作られている。このようにして熱式流量計300はその出荷前にそれぞれについてのばらつきを低減でき、計測精度の向上を図ることができる。
3. ハウジング302の全体構造とその効果
3.1 副通路と流量検出部の構造と効果
熱式流量計300から表カバー303および裏カバー304を取り外したハウジング302の状態を図5および図6に示す。図5(A)はハウジング302の左側面図であり、図5(B)はハウジング302の正面図であり、図6(A)はハウジング302の右側面図であり、図6(B)はハウジング302の背面図である。ハウジング302はフランジ312から計測部310が主通路124の中心方向に延びる構造を成しており、その先端側に副通路を成形するための副通路溝が設けられている。この実施例ではハウジング302の表裏両面に副通路溝が設けられており、図5(B)に表側副通路溝332を示し、図6(B)に裏側副通路溝334を示す。副通路の入口350を成形するための入口溝351と出口352を成形するための出口溝353が、ハウジング302の先端部に設けられているので、主通路124の内壁面から離れた部分の気体を、言い換えると主通路124の中央部分に近い部分を流れている気体を被計測気体30として入口350から取り込むことができる。主通路124の内壁面近傍を流れる気体は、主通路124の壁面温度の影響を受け、吸入空気などの主通路124を流れる気体の平均温度と異なる温度を有することが多い。また主通路124の内壁面近傍を流れる気体は、主通路124を流れる気体の平均流速より遅い流速を示すことが多い。実施例の熱式流量計300ではこのような影響を受け難いので、計測精度の低下を抑制できる。
上述した表側副通路溝332や裏側副通路溝334で作られる副通路は外壁窪み部366や上流側外壁335や下流側外壁336により熱絶縁部315に繋がっている。また上流側外壁335には上流側突起317が設けられ、下流側外壁336には下流側突起318が設けられている。このような構造により、フランジ312で熱式流量計300が主通路124に固定されることにより、回路パッケージ400を有する計測部310が高い信頼性を持って主通路124に固定される。
この実施例ではハウジング302に副通路を成形するための副通路溝を設けており、カバーをハウジング302の表面及び裏面にかぶせることにより、副通路溝とカバーとにより副通路が完成する構成としている。このような構造とすることで、ハウジング302の樹脂モールド工程でハウジング302の一部としてすべての副通路溝を成形することができる。またハウジング302の成形時にハウジング302の両面に金型が設けられるので、この両方の金型を使用することにより、表側副通路溝332と裏側副通路溝334の両方をハウジング302の一部として全て成形することが可能となる。ハウジング302の両面に表カバー303と裏カバー304を設けることでハウジング302の両面の副通路を完成させることができる。金型を利用してハウジング302の両面に表側副通路溝332と裏側副通路溝334を成形することで高い精度で副通路を成形できる。また高い生産性が得られる。
図6(B)において主通路124を流れる被計測気体30の一部が入口350を成形する入口溝351から裏側副通路溝334内に取り込まれ、裏側副通路溝334内を流れる。裏側副通路溝334は進むにつれて深くなる形状をしており、溝に沿って流れるにつれ表側の方向に被計測気体30は徐々に移動する。特に裏側副通路溝334は回路パッケージ400の上流部342で急激に深くなる急傾斜部347が設けられていて、質量の小さい空気の一部は急傾斜部347に沿って移動し、回路パッケージ400の上流部342で図5(B)に記載の計測用流路面430の方を流れる。一方質量の大きい異物は慣性力によって急激な進路変更が困難なため、図6(B)に示す計測用流路面裏面431の方を移動する。その後回路パッケージ400の下流部341を通り、図5(B)に記載の計測用流路面430の方を流れる。
熱伝達面露出部436近傍の被計測気体30の流れについて図7を用いて説明する。図5(B)に記載の表側副通路溝332において、上述の回路パッケージ400の上流部342から表側副通路溝332側に移動した被計測気体30である空気は、計測用流路面430に沿って流れ、計測用流路面430に設けられた熱伝達面露出部436を介して流量を計測するための流量検出部602との間で熱伝達が行われ、流量の計測が行われる。計測用流路面430を通過した被計測気体30や回路パッケージ400の下流部341から表側副通路溝332に流れてきた空気は共に表側副通路溝332に沿って流れ、出口352を成形するための出口溝353から主通路124に排出される。
被計測気体30に混入しているごみなどの質量の大きい物質は慣性力が大きく、溝の深さが急激に深まる図6(B)に示す、急傾斜部347の部分の表面に沿って、溝の深い方向に急激に進路を変えることが困難である。このため質量の大きい異物は計測用流路面裏面431の方を移動し、異物が熱伝達面露出部436の近くを通るのを抑制できる。この実施例では気体以外の質量の大きい異物の多くが、計測用流路面430の背面である計測用流路面裏面431を通過するように構成しているので、油分やカーボン、ごみなどの異物による汚れの影響を低減でき、計測精度の低下を抑制できる。すなわち主通路124の流れの軸を横切る軸に沿って被計測気体30の進路を急に変化させる形状を有しているので、被計測気体30に混入する異物の影響を低減できる。
この実施例では、裏側副通路溝334で構成される流路は曲線を描きながらハウジング302の先端部からフランジ方向に向かい、最もフランジ側の位置では副通路を流れる気体は主通路124の流れに対して逆方向の流れとなり、この逆方向の流れの部分で一方側である裏面側の副通路が、他方側である表面側に成形された副通路につながる。このようにすることで、回路パッケージ400の熱伝達面露出部436の副通路への固定が容易となり、さらに被計測気体30を主通路124の中央部に近い位置で取り込むことが容易となる。
この実施例では、流量を計測するための計測用流路面430の流れ方向における前後に裏側副通路溝334と表側副通路溝332とに貫通する構成から成り、かつ回路パッケージ400の先端側はハウジング302で支持した構成ではなく空洞部382を有し、回路パッケージ400の上流部342の空間と回路パッケージ400の下流部341の空間が繋がった構成である。この回路パッケージ400の上流部342と回路パッケージ400の下流部341を貫通する構成として、ハウジング302の一方面に成形した裏側副通路溝334からハウジング302の他方の面に成形した表側副通路溝332へ被計測気体30が移動する形状で副通路を成形している。このような構成とすることで、1回の樹脂モールド工程でハウジング302の両面に副通路溝を成形でき、また両面の副通路溝を繋ぐ構造を合わせて成形することが可能となる。
ハウジング302の成形時には、回路パッケージ400に形成された計測用流路面430の両側を成型金型でクランプすることで回路パッケージ400の上流部342と回路パッケージ400の下流部341を貫通する構成を形成することができると共に、ハウジング302の樹脂モールド成形と同時に、回路パッケージ400をハウジング302に実装することができる。このようにハウジング302の成形金型に回路パッケージ400をインサートして成形することにより、副通路に対して回路パッケージ400及び熱伝達面露出部436を高精度に実装することが可能となる。
この実施例では、この回路パッケージ400の上流部342と回路パッケージ400の下流部341を貫通する構成としている。しかし、回路パッケージ400の上流部342と下流部341どちらか一方を貫通した構成とすることで、裏側副通路溝334と表側副通路溝332とをつなぐ副通路形状を1回の樹脂モールド工程で成形することも可能である。
なお、裏側副通路溝334の両側には裏側副通路内周壁392と裏側副通路外周壁391が設けられ、これら裏側副通路内周壁392と裏側副通路外周壁391のそれぞれの高さ方向の先端部と裏カバー304の内側面とが密着することで、ハウジング302の裏側副通路が成形される。また表側副通路溝332の両側には表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394が設けられ、これら表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394の高さ方向の先端部と表カバー303の内側面とが密着することで、ハウジング302の表側副通路が成形される。
この実施例では、計測用流路面430とその背面の両方に分かれて被計測気体30が流れ、一方側に流量を計測する熱伝達面露出部436を設けているが、被計測気体30を2つの通路に分けるのではなく、計測用流路面430の表面側のみを通過するようにしても良い。主通路124の流れ方向の第1軸に対してこれを横切る方向の第2軸に沿うように副通路を曲げることにより、被計測気体30に混入する異物を、第2軸の曲りの小さい片側に寄せることができ、第2軸の曲りの大きい方に計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設けることにより、異物の影響を低減できる。
またこの実施例では表側副通路溝332と裏側副通路溝334の繋ぎの部分に計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設けている。しかし表側副通路溝332と裏側副通路溝334の繋ぎの部分ではなく、表側副通路溝332にあるいは、裏側副通路溝334に設けても良い。
計測用流路面430に設けられた流量を計測するための熱伝達面露出部436の部分に絞り形状が成形されており(図7を用いて以下で説明する)、この絞り効果により流速が
速くなり、計測精度が向上する。また仮に熱伝達面露出部436の上流側で気体の流れに渦が発生していたとしても上記絞りにより渦を消滅あるいは低減でき、計測精度が向上する。
図5および図6で、上流側外壁335が温度検出部452の根元部で下流側に窪む形状を成す、外壁窪み部366を備えている。この外壁窪み部366により、温度検出部452と外壁窪み部366との間の距離が長くなり、上流側外壁335を介して伝わってくる熱の影響を低減できる。
また、回路パッケージ400を固定部372で包むことにより、回路パッケージ400を固定しているが、外壁窪み部366によりさらに回路パッケージ400を固定することにより、回路パッケージ400を固定する力を増大することができる。固定部372は被計測気体30の流れ軸に沿う方向に回路パッケージ400を包含している。一方外壁窪み部366は被計測気体30の流れ軸を横切る方向に回路パッケージ400を包含している。すなわち固定部372に対して包含する方向が異なるようにして回路パッケージ400を包含している。2つの異なる方向で回路パッケージ400を包含しているので、固定する力が増大している。外壁窪み部366は上流側外壁335の一部であるが、固定する力を増大するためであれば、上流側外壁335の代わりに下流側外壁336で、固定部372と異なる方向に回路パッケージ400を包含しても良い。例えば、下流側外壁336で回路パッケージ400の板部を包含するとか、あるいは下流側外壁336に上流方向に窪む窪み、あるいは上流方向に突出する突出部を設けて回路パッケージ400を包含しても良い。上流側外壁335に外壁窪み部366を設けて回路パッケージ400を包含したのは、回路パッケージ400の固定に加えて、温度検出部452と上流側外壁335との間の熱抵抗を増大する作用を持たせたためである。
温度検出部452の根元部に外壁窪み部366が設けられ、これによりフランジ312あるいは熱絶縁部315から上流側外壁335を介して伝わってくる熱の影響を低減できる。さらに上流側突起317と温度検出部452との間に切欠きにより成形された測温用窪み368が設けられている。この測温用窪み368により上流側突起317を介して温度検出部452にもたらされる熱の伝わりを低減できる。これにより温度検出部452の検出精度が向上する。特に上流側突起317はその断面積が大きいので熱が伝わり易く、熱の伝わりを阻止する測温用窪み368の働きは重要である。
3.2 副通路の流量検出部の構造と効果
図7は、回路パッケージ400の計測用流路面430が副通路溝の内部に配置されている状態を示す部分拡大図であり、図6のA−A断面図である。なお、この図は概念図であり、図5や図6に示す詳細形状に対して、図7では細部の省略および単純化を行っており、細部に関して少し変形している。図7の左部分が裏側副通路溝334の終端部であり、右側部分が表側副通路溝332の始端部分である。図7では明確に記載していないが、計測用流路面430を有する回路パッケージ400の左右両側には、貫通部が設けられていて、計測用流路面430を有する回路パッケージ400の左右両側で裏側副通路溝334と表側副通路溝332とが繋がっている。
入口350から取り込まれ、裏側副通路溝334により構成される裏側副通路を流れた被計測気体30は、図7の左側から導かれ、被計測気体30の一部は、回路パッケージ400の上流部342の貫通部を介して、回路パッケージ400の計測用流路面430の表面と表カバー303に設けられた突起部356で作られる流路386の方を流れ、他の被計測気体30は計測用流路面裏面431と裏カバー304で作られる流路387の方を流れる。その後、流路387を流れた被計測気体30は、回路パッケージ400の下流部341の貫通部を介して表側副通路溝332の方に移り、流路386を流れている被計測気体30と合流し、表側副通路溝332を流れ、出口352から主通路124に排出される。
裏側副通路溝334から回路パッケージ400の上流部342の貫通部を介して流路386に導かれる被計測気体30の方が、流路387に導かれる流路よりも曲りが大きくなるように、副通路溝が成形されているので、被計測気体30に含まれるごみなどの質量の大きい物質は、曲りの少ない流路387の方に集まる。このため流路386への異物の流入はほとんど無い。
流路386では、表側副通路溝332の最先端部に連続して、表カバー303に設けられ突起部356が計測用流路面430の方に徐々に突出することにより、絞りが成形される構造を成している。流路386の絞り部の一方側に計測用流路面430が配置され、計測用流路面430には流量検出部602が被計測気体30との間で熱伝達を行うための熱伝達面露出部436が設けられている。流量検出部602の計測が高精度で行われるためには、熱伝達面露出部436の部分で被計測気体30が渦の少ない層流であることが望ましい。また流速が速い方が計測精度が向上する。このために計測用流路面430に対向して表カバー303に設けられた突起部356が計測用流路面430に向かって滑らかに突出することにより絞りが成形される。この絞りは、被計測気体30の渦を減少させて層流に近づけている作用をする。さらに絞り部分では流速が速くなり、この絞り部分に流量を計測するための熱伝達面露出部436が配置されているので、流量の計測精度が向上している。
計測用流路面430に設けた熱伝達面露出部436に対向するようにして突起部356を副通路溝内に突出させることで絞りを成形して、計測精度を向上することができる。絞りを成形するための突起部356は、計測用流路面430に設けた熱伝達面露出部436に対向する方のカバーに設けることになる。図7では計測用流路面430に設けた熱伝達面露出部436に対向する方のカバーが表カバー303であるので表カバー303に突起部356を設けているが、表カバー303あるいは裏カバー304の内の計測用流路面430に設けた熱伝達面露出部436に対向する方のカバーに設ければ良い。回路パッケージ400における計測用流路面430および熱伝達面露出部436を設ける面がどちらになるかにより、熱伝達面露出部436に対向する方のカバーがどちらになるかが変わる。
図5および図6において、計測用流路面430に設けられた熱伝達面露出部436の裏面である計測用流路面裏面431に、回路パッケージ400の樹脂モールド工程で使用された金型の押さえ跡442が残っている。押さえ跡442は特に流量の計測の障害となるものではなく、そのまま押さえ跡442が残っていても問題ない。また後述するが、回路パッケージ400を樹脂モールドで成形する際に、流量検出部602が有する半導体ダイヤフラムの保護が重要となる。このために熱伝達面露出部436の裏面の押さえが重要である。また熱伝達面露出部436に回路パッケージ400を覆う樹脂が流れ込まないようにすることが大切である。このような観点から、熱伝達面露出部436を含む計測用流路面430を金型で囲い、また熱伝達面露出部436の背面を他の金型で押さえつけ、樹脂の流入を阻止する。回路パッケージ400はトランスファモールドで作られるので、樹脂の圧力が高く、熱伝達面露出部436の背面からの押さえが重要である。また流量検出部602には半導体ダイヤフラムが使用されており、半導体ダイヤフラムにより作られる空隙の通気用通路を成形することが望まれる。通気用通路を成形するためのプレートなどを保持固定するために、熱伝達面露出部436の裏面からの押さえは重要である。
3.3 表カバー303と裏カバー304の形状と効果
図8は表カバー303の外観を示す図であり、図8(A)は左側面図、図8(B)は正面図、図8(C)は平面図である。図9は裏カバー304の外観を示す図であり、図9(A)は左側面図、図9(B)は正面図、図9(C)は平面図である。図8および図9において、表カバー303や裏カバー304はハウジング302の副通路溝を塞ぐことにより、副通路を作るのに使用される。また突起部356を備え、流路に絞りを設けるために使用される。このため成形精度が高いことが望ましい。表カバー303や裏カバー304は金型に熱可塑性樹脂を注入する樹脂モールド工程により、作られるので、高い成形精度で作ることができる。また、表カバー303と裏カバー304には、突起部380と突起部381が形成されており、ハウジング302の嵌合した際に、図5(B)及び図6(B)に表記した回路パッケージ400の先端側の空洞部382の隙間を埋めると同時に回路パッケージ400の先端部を覆う構成となる。
図8や図9に示す表カバー303や裏カバー304には、表保護部322や裏保護部325が成形されている。図2や図3に示すように入口343の表側側面に表カバー303に設けられた表保護部322が配置され、また入口343の裏側側面に、裏カバー304に設けられた裏保護部325が配置されている。入口343内部に配置されている温度検出部452が表保護部322と裏保護部325で保護され、生産中および車への搭載時に温度検出部452が何かとぶつかることなどによる温度検出部452の機械的な損傷を防止できる。
表カバー303の内側面には突起部356が設けられ、図7の例に示す如く、突起部356は計測用流路面430に対向して配置され、副通路の流路の軸に沿う方向に長く延びた形状をしている。突起部356の断面形状は、図8(C)に示したように突起部の頂点を境に下流側に向かって傾斜になっていてもよい。計測用流路面430と突起部356とにより上述した流路386に絞りが成形され、被計測気体30に生じている渦を減少させ、層流に生じさせる作用をする。この実施例では、絞り部分を有する副通路を、溝の部分と溝を塞いで絞りを備えた流路を完成する蓋の部分とにわけ、溝の部分を、ハウジング302を成形するための第2樹脂モールド工程で作り、次に突起部356を有する表カバー303を他の樹脂モールド工程で成形し、表カバー303を溝の蓋として溝を覆うことにより、副通路を作っている。ハウジング302を成形する第2樹脂モールド工程で、計測用流路面430を有する回路パッケージ400のハウジング302への固定も行っている。このように形状の複雑な溝の成形を樹脂モールド工程で行い、絞りのための突起部356を表カバー303に設けることで、高い精度で図7に示す流路386を成形することができる。また溝と計測用流路面430や熱伝達面露出部436の配置関係を高い精度で維持できるので、量産品においてのばらつきを小さくでき、結果として高い計測結果が得られる。また生産性も向上する。
裏カバー304と計測用流路面裏面431による流路387の成形も同様である。流路387の溝部分と蓋部分とに分け、溝部分をハウジング302を成形する第2樹脂モールド工程で作り、裏カバー304で溝を覆うことにより、流路387を成形している。流路387をこのようにして作ることにより、流路387を高精度で作ることができ、生産性も向上する。
3.4 回路パッケージ400のハウジング302による固定構造と効果
次に再び図5および図6を参照して、回路パッケージ400のハウジング302への樹脂モールド工程による固定について説明する。副通路を成形する副通路溝の所定の場所、例えば図5および図6に示す実施例では、表側副通路溝332と裏側副通路溝334のつながりの部分に、回路パッケージ400の表面に成形された計測用流路面430が配置されるように、回路パッケージ400がハウジング302に配置され固定されている。回路パッケージ400をハウジング302に樹脂モールドにより埋設して固定する部分が、副通路溝より少しフランジ312側に、回路パッケージ400をハウジング302に埋設固定するための固定部372として設けられている。固定部372は第1樹脂モールド工程により成形された回路パッケージ400の外周を覆うようにして埋設している。
図5(B)に示す如く、回路パッケージ400は固定部372により固定されている。固定部372は表カバー303に接する高さの面と薄肉部376により回路パッケージ400を包含している。薄肉部376の箇所を覆う樹脂の厚みを薄肉にすることで、固定部372の成形時に樹脂の温度が冷える時の収縮を緩和することができると共に、回路パッケージ400に加わる応力の集中を低減できる効果がある。図6(B)に示すとおり、回路パッケージ400の裏側も上述のような形状とすると、より効果が得られる。
また、回路パッケージ400の全面を、ハウジング302を成形する樹脂で覆うのではなく、固定部372のフランジ312側に、回路パッケージ400の外壁が露出する部分を設けている。この図5および図6の実施例では、回路パッケージ400の外周面の内のハウジング302の樹脂に包含される部分の面積より、ハウジング302の樹脂に包含されないでハウジング302の樹脂から露出している面積の方が広くなっている。また回路パッケージ400の計測用流路面430の部分も、ハウジング302を形成している樹脂から露出している。
回路パッケージ400の外壁を帯状に全周にわたって覆っている固定部372の一部を薄肉とすることで、ハウジング302を成形するための第2樹脂モールド工程において、回路パッケージ400の周囲を包含するようにして固定部372を硬化させる過程での体積収縮による過度な応力の集中を低減している。過度な応力の集中は回路パッケージ400に対しても悪影響を及ぼす可能性がある。
また、回路パッケージ400の外周面の内のハウジング302の樹脂に包含される部分の面積を少なくして、少ない面積で、より強固に回路パッケージ400を固定するには、固定部372における回路パッケージ400の外壁との密着性を高めることが望ましい。ハウジング302を成形する趣旨として熱可塑性樹脂を使用する場合には、熱可塑性樹脂の粘性が低い状態で回路パッケージ400の外壁の細かい凹凸に入り込み、前記外壁の細かい凹凸に入り込んだ状態で、熱可塑性樹脂が硬化することが望ましい。ハウジング302を成形する樹脂モールド工程において、熱可塑性樹脂の入口を固定部372にあるいはその近傍に設けることが望ましい。熱可塑性樹脂は温度の低下に基づいて粘性が増大し、硬化する。従って高温状態の熱可塑性樹脂を固定部372にあるいはその近傍から流し込むことで、粘性の低い状態の熱可塑性樹脂を回路パッケージ400の外壁に密着させ、硬化させることができる。このことにより、熱可塑性樹脂の温度低下が抑えられ、低粘性状態を長引かせ、回路パッケージ400と固定部372との密着性が向上する。
回路パッケージ400の外壁面を粗くすることにより回路パッケージ400と固定部372との密着性を向上することができる。回路パッケージ400の外壁面を粗くする方法として、回路パッケージ400を第1樹脂モールド工程で成形後に、例えば梨地処理といわれる処理方法のように、回路パッケージ400の表面に細かい凸凹を成形する粗化方法がある。回路パッケージ400の表面に細かい凹凸加工を施す粗化方法として、例えばサンドブラストにより粗化することができる。さらにレーザ加工により粗化することができる。
また、他の粗化方法としては、第1樹脂モールド工程に使用する金型の内面に凹凸の付いたシートを張り付け、シートを表面に設けた金型に樹脂を圧入する。このようにしても回路パッケージ400の表面に細かい凸凹を成形して粗化することができる。さらに回路パッケージ400を成形する金型の内部に凹凸をつけておき、回路パッケージ400の表面を粗化することができる。このような粗化を行う回路パッケージ400の表面部分は、少なくとも固定部372が設けられる部分である。さらに加えて外壁窪み部366が設けられる回路パッケージ400の表面部分を粗化することでさらに密着度が強くなる。
また、溝の深さは、上述のシートを利用して回路パッケージ400の表面を凹凸加工する場合は前記シートの厚さに依存する。前記シートの厚みを厚くすると第1樹脂モールド工程でのモールドが難しくなるので、前記シートの厚みに限界があり、前記シートの厚みが薄いと前記シートにあらかじめ設けておく凹凸の深さに限界がでる。このため前記シートを使用する場合は、凹凸の底と頂点との間である凹凸の深さが10μm以上20μm以下であることが望ましい。10μmより少ない深さでは、密着の効果が弱い。20μmより大きい深さは、前記シートの厚みから困難である。
前記シート以外の粗化方法の場合には、回路パッケージ400を成形している第1樹脂モールド工程での樹脂の厚さが2mm以下であることが望ましいとの理由から、凹凸の底と頂点との間である凹凸の深さを1mm以上とすることが困難である。概念的には、回路パッケージ400の表面の凹凸の底と頂点との間である凹凸の深さを大きくすると、回路パッケージ400を覆う樹脂とハウジング302を成形する樹脂との間の密着度が増す、と考えられるが、前記理由により、凹凸の底と頂点との間である凹凸の深さは1mm以下が良い。すなわち10μm以上で1mm以下の範囲の凹凸を回路パッケージ400の表面に設けることで、回路パッケージ400を覆う樹脂とハウジング302を成形する樹脂との間の密着度を増加させることが望ましい。
回路パッケージ400を成形する熱硬化性樹脂と固定部372を備えるハウジング302を成形する熱可塑性樹脂とでは、熱膨張係数に差があり、この熱膨張係数差に基づいて生じる過度な応力が回路パッケージ400に加わらないようにすることが望ましい。
さらに回路パッケージ400の外周を包含する固定部372の形状を帯状とし、帯の幅を狭くすることにより、回路パッケージ400に加わる熱膨張係数差による応力を低減できる。固定部372の帯の幅を10mm以下に、好ましくは8mm以下にすることが望ましい。本実施例では回路パッケージ400を固定部372だけでなく、ハウジング302の上流側外壁335の一部である外壁窪み部366でも回路パッケージ400を包含し回路パッケージ400を固定しているので、固定部372の帯の幅をさらに細くすることができる。例えば3mm以上の幅があれば回路パッケージ400を固定できる。
回路パッケージ400の表面に、熱膨張係数差による応力を低減するなどの目的のため、ハウジング302を成形する樹脂で覆う部分と覆わないで露出させる部分とを設けている。これら回路パッケージ400の表面がハウジング302の樹脂から露出する部分を、複数個設け、この内の一つは先に説明した熱伝達面露出部436を有する計測用流路面430であり、また他に、固定部372よりフランジ312側の部分に露出する部分を設けている。さらに外壁窪み部366を成形し、この外壁窪み部366より上流側の部分を露出させ、この露出部を、温度検出部452を支える支持部としている。回路パッケージ400の外表面の固定部372よりフランジ312側の部分は、その外周、特に回路パッケージ400の下流側からフランジ312に対向する側にかけて、さらに回路パッケージ400の端子に近い部分の上流側にかけて、回路パッケージ400を取り巻くように空隙が成形されている。このように回路パッケージ400の表面が露出している部分の周囲に空隙が成形されていることで、主通路124からフランジ312を介して回路パッケージ400に伝わる熱量を低減でき、熱の影響による計測精度の低下を抑制している。
回路パッケージ400の接続端子412と外部端子306のハウジング302側に位置する外部端子内端361とがそれぞれスポット溶接あるいはレーザ溶接、または加締めなどにより電気的に接続され、端子接続部320が形成されている。端子接続部320は、後述するように、ハウジング302を構成する第2の樹脂で被覆されている。
3.5 端子接続部320の構造と効果
図10は図5および図6に示すハウジング302内に形成された端子接続部320まわりの拡大図である。図11は、表裏カバーを配置した状態における、図10に示すD−D線に沿った模式的矢視断面図であり、吸気管124aに取り付けられた状態の断面図である。
上述したように、回路パッケージ400は、流量検出部602を備えるとともに、流量検出部602に接続された接続端子412,412,…を第1の樹脂401により一体的にモールド成形したものである。ハウジング302は、副通路の一部である副通路溝を形成するとともに、回路パッケージを固定するように、第2の樹脂によりモールド成形されたものである。
図10に示すように、回路パッケージ400の接続端子412と、外部端子306の回路パッケージ400側に位置する外部端子内端361とは、ハウジング302によるモールド成形がされる前に、電気的に接続され、端子接続部320が形成されている。端子接続部320を含む部分は、ハウジング302の上流側外壁335および下流側外壁336、回路パッケージ400の固定部372により囲われている。この囲われた空間が回路収納部である。そして、ハウジング302の両側から表カバー303と裏カバー304で、ハウジング302を覆うことにより、上述した如く副通路が形成されるとともに、上流側外壁335、下流側外壁336および固定部372からなる回路室形成壁により囲われた空間(回路収納部)を密閉する回路室321が形成される。具体的には、回路室321は
、回路室形成壁を表カバー303と裏カバー304で覆うことにより、回路パッケージ400の接続端子412を含む部分を収納する密閉空間を形成している。
ここで、回路室321は、直接的には被計測気体30に晒されないものの、吸気管内の主通路124内に配置されるため、回路室321内には、腐食性ガスや水分が入り込むおそれがある。一旦、回路室321内に入り込んだ腐食性ガスや水分は、回路室321内部が略密閉空間となっているため、外部に抜け難い。この結果、外部端子306に電気的に接続された端子接続部320は、腐食し易い環境下に晒されることになる。
さらに、熱式流量計300が使用される環境下では、温度変化によりハウジング302自体が膨張・収縮する。このハウジング302の膨張・収縮に伴い、ハウジング302とともに固定された外部端子306および接続端子412にも応力が作用することになる。この結果、外部端子306に電気的に接続された端子接続部320にも応力が作用することになり、外部端子306および接続端子412の接合部が剥がれるおそれもある。
そこで、このような点を鑑みて、本実施例では、接続端子412と外部端子306とが電気的に接続された端子接続部320を、ハウジング302を構成する第2の樹脂301により被覆した樹脂被覆部330がハウジング302に形成されている。すなわち、樹脂被覆部330により、端子接続部320が被覆されているとともに、樹脂被覆部330は、ハウジング302を構成する第2の樹脂でハウジング本体とともに一体的に成形されている。そして、本実施例の場合、樹脂被覆部330は、回路室形成壁の一部を構成している。
このような結果、樹脂被覆部330により、端子接続部320が被覆されるので、回路室321内に腐食性ガスや水分が入り込んだとしても、端子接続部320が直接的に腐食環境下に晒されることを回避することができる。端子同士の接続部である端子接続部320の信頼性を高めることができる。また、本実施例の場合、樹脂被覆部330は、密閉空間を形成した回路室形成壁の一部を構成しているので、よりクリーンな環境下に、樹脂被覆部330を設けることができる。これにより、被計測気体に直接晒される環境下に配置される場合に比べて、樹脂被覆部330の樹脂の吸湿を低減し、端子接続部320の腐食をより確実に回避することができる。
ここで、第2の樹脂である熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、アクリル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン/ポリアミド(PA)、ポリカーボネイト(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂を挙げることができ、熱式流量計の使用環境下において、溶融・軟化しないものであれば特に限定されるものではない。さらに、これらの樹脂にガラス、マイカなどの無機材料からなるフィラーがさらに添加されていてもよい。より好ましい熱可塑性樹脂としては、エラストマーポリフェニレンサルファイド(PPS)、ABS、PBTなどの熱可塑性樹脂である。なお、第1の樹脂である熱硬化性樹脂としては、エポキシ(EP)、フェノール(PF)、メラミン(MF)、ユリア(UF)、熱硬化性ポリイミド(PI)などの樹脂を挙げることができ、熱式流量計の使用環境下において、溶融・軟化しないものであれば特に限定されるものではない。
パッケージを構成する接続端子412を構成する材料としては、リードとともにプレス成形されることから、プレス性に優れた材料であり、さらには耐食性、熱伝導性に優れ、少なくとも第1の樹脂および第2の樹脂との密着性が良い材料であるが好ましい。このような材料としては、銅合金、鉄ニッケル合金などを挙げることができる。
銅合金を用いた場合には、耐食性および外部端子との接合性を高めるために、銅合金、鉄ニッケル合金を母材として、メッキ層がさら形成された端子を用いることが好ましい。たとえば、母材を銅合金とした場合には、その表面にニッケルめっき層のみが形成されていてもよい。しかしながら、好ましい態様としては、めっき層として、銅またはニッケルからなる下地めっき層と、下地めっき層の表面に被覆された錫からなる表層めっき層が形成されている。このような下地メッキ層を設けることにより、銅合金からなる端子の母材と、錫からなる表層メッキ層との接合性を高めることができる。これらの如き材料構成にすることにより、例えばレーザにより外部端子との接合性を高めることができる。また、錫からなる表層めっき層は、ニッケルよりも錫のほうが低融点であるため、スポット溶接を行うのに適している。
一方、外部端子306を構成する材料としては、外部に接続される端子であることから、バネ性に優れた材料であることが好ましい。このような材料としては、たとえば、リン青銅、黄銅などを挙げることができる。リン青銅または黄銅を用いた場合には、これらの耐食性を高めるため、リン青銅または黄銅を母材として、メッキ層がさらに形成された端子を用いることが好ましい。
たとえば、外部端子306の母材をリン青銅とした場合には、その表面にニッケルめっき層のみが形成されていてもよい。しかしながら、好ましい態様としては、めっき層として、銅からなる下地めっき層と、下地めっき層の表面に被覆された錫からなる表層めっき層が形成されている。このような下地メッキ層を設けることにより、リン青銅からなる端子の母材と、錫からなる表層メッキ層との接合性を高めることができる。特に黄銅を母材に用いた場合には、レーザ溶接を行った場合、母材が溶融しやすいところ、リン青銅を母材として用いることにより、レーザにより接続端子との容易に接合することができる。
このようにして、接続端子412および外部端子306を、上述した材料構成にすることにより、端子同士の接合性を高めることができる。また、いずれの好ましい態様においても、接続端子412および外部端子306の表層めっき層は、錫からなるので、両者の接合性をより高めることができる。
図12は、図11に示す形態のさらなる他の実施例を示した模式的断面図である。図12に示す熱式流量計が、図11に示すものと相違する点は、樹脂被覆部330は、接続端子412および外部端子306が露出しないように、接続端子412と外部端子306とを被覆している点である。
このように、ハウジング302を成形する際に、ハウジング302を構成する第2の樹脂301により、接続端子412と外部端子306を被覆した樹脂被覆部330を設けることにより、接続端子412と外部端子306との端子接続部320ばかりでなく、接続端子412と外部端子306の腐食をも防止することができる。
ここで、ハウジング302を構成する第2の樹脂301に被覆され接続端子412の部分のうち、少なくとも第1の樹脂401に隣接する部分412aには、粗化処理がされていることがよりこのましい。このように、接続端子412のうち第1の樹脂401に隣接する部分412aを粗化処理することにより、熱式流量計300の使用時の温度変化により第2の樹脂301が膨張・収縮した場合であっても、第1の樹脂401および第2の樹脂301の境界部において、接続端子412が露出することを抑えることができる。
接続端子412のうち第1の樹脂401に隣接する部分412aの表面を粗化処理する際には、回路パッケージ400を第1の樹脂401で成形後、接続端子412の露出した部分を、サンドブラスト等を吹き付けて機械的にその表面を粗くしてもよく、エッチング溶液中に浸漬させて化学的にその表面を粗くしてもよい。
さらに、好ましい態様としては、回路パッケージ400を構成する第1の樹脂401に被覆された接続端子412の部分のうち、少なくとも、第2の樹脂301に隣接する部分412bに、粗化処理がされている。このように、第1の樹脂401に被覆された接続端子412の部分のうち第2の樹脂301に隣接する部分412bに、粗化処理を行なうことにより、熱式流量計300の使用時の温度変化により第1の樹脂401が膨張・収縮した場合であっても、第1の樹脂401および第2の樹脂301の境界部において、接続端子412が露出することを抑えることができる。
第1の樹脂401に被覆された接続端子412の部分のうち第2の樹脂301に隣接する部分412bの表面を粗化処理する際には、回路パッケージ400を第1の樹脂401で成形する前に、接続端子412に、上述した粗化処理によりその表面を粗くすればよい。
図13は、図12に示す形態のさらなる他の実施例を示した模式的断面図である。図13に示す熱式流量計が、図11に示すものと相違する点は、樹脂被覆部330と回路パッケージ400との境界部に、第1の樹脂401および第2の樹脂301により、溝部440が形成されている点である。
このように、樹脂被覆部330と回路パッケージ400との境界部に溝部440を設けることにより、線膨張係数の異なる第1の樹脂401と第2の樹脂301の熱膨張差が起因して、樹脂被覆部330と回路パッケージ400との境界部に応力が作用したとしても、溝部440により、構造的にその応力を逃がすことができる。
3.6 第1樹脂モールド工程による完成品の検査
図10に示す実施例では、外部端子内端361の数より回路パッケージ400が有する端子の数が多い。回路パッケージ400が有する端子の内、接続端子412が外部端子内端361にそれぞれ接続されており、端子414は外部端子内端361に接続されない。すなわち端子414は、回路パッケージ400に設けられているが、外部端子内端361に接続されない端子である。
図10では外部端子内端361と接続される接続端子412の他に、外部端子内端361に接続されない端子414が設けられている。第1樹脂モールド工程で回路パッケージ400が生産された後、回路パッケージ400が正しく動作するか、第1樹脂モールド工程で電気的な接続において異常が発生していないかを検査する。このようにすることで各回路パッケージ400に関して高い信頼性を維持できる。外部端子内端361に接続されない端子414はこのような回路パッケージ400の検査に使用される。検査作業の後は、端子414は使用されないので、これら使用しない端子414は検査後、回路パッケージ400の根元で切断しても良いし、図10に示す如く端子側固定部362である樹脂の内部に埋めてしまっても良い。このように外部端子内端361に接続されない端子414を設けることで、第1樹脂モールド工程で生産された回路パッケージ400に異常が生じていないかどうかを検査でき、高い信頼性を維持できる。
3.7 ハウジング302内部の空隙と熱式流量計300外部との連通構造と効果
図10の部分拡大図に示す如く、ハウジング302には孔364が設けられている。孔364は図4(A)に示す外部接続部305の内部に設けられた開口309につながっている。実施例では、ハウジング302の両面が表カバー303と裏カバー304で密閉されている。もし孔364が設けられていないと、ハウジング302、表カバー303、および裏カバー304により形成された回路室321内の空気の温度変化により、回路室321内の気圧と外気圧との間に差が生じる。このような圧力差は、上述した腐食性ガスまたは水分が回路室321に浸入する要因となるので、できるだけ小さいことが望ましい。このため外部接続部305内に設けられた開口309につながる孔364がハウジング302の空隙内に設けられている。外部接続部305は電気的接続の信頼性向上のため、水などによる悪影響を受けない構造としており、開口309を外部接続部305内に設けることで、開口309からの水の浸入を防止でき、さらにごみや埃などの異物の侵入も防止できる。
3.8 第2樹脂モールド工程によるハウジング302成形と効果
上述した図5および図6に示すハウジング302において、流量検出部602や処理部604を備える回路パッケージ400を第1樹脂モールド工程により製造し、次に、被計測気体30を流す副通路を成形する例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334を有するハウジング302を、第2樹脂モールド工程にて製造する。この第2樹脂モールド工程で、前記回路パッケージ400をハウジング302の樹脂内に内蔵して、ハウジング302内に樹脂モールドにより固定する。このようにすることで、流量検出部602が被計測気体30との間で熱伝達を行って流量を計測するための熱伝達面露出部436と副通路、例えば表側副通路溝332や裏側副通路溝334の形状との関係、例えば位置関係や方向の関係を、極めて高い精度で維持することが可能となる。回路パッケージ400毎に生じる誤差やばらつきを非常に小さい値に抑え込むことが可能となる。結果として回路パッケージ400の計測精度を大きく改善できる。例えば従来の接着剤を使用して固定する方式に比べ、2倍以上、計測精度を向上できる。熱式流量計300は量産により生産されることが多く、ここに厳密に計測しながら接着剤で接着する方法には、計測精度の向上に関して限界がある。しかし、本実施例のように第1樹脂モールド工程により回路パッケージ400を製造し、その後被計測気体30を流す副通路を成形する第2樹脂モールド工程にて副通路を成形すると同時に回路パッケージ400と前記副通路とを固定することで、計測精度のばらつきを大幅に低減でき、各熱式流量計300の計測精度を大幅に向上することが可能となる。このことは、図5や図6に示す実施例だけでなく、図7に示す実施例においても同様である。
例えば図5や図6に示す実施例でさらに説明すると、表側副通路溝332と裏側副通路溝334と熱伝達面露出部436との間に関係を、規定の関係となるように高い精度で回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。このことにより、量産される熱式流量計300においてそれぞれ、各回路パッケージ400の熱伝達面露出部436と副通路との位置関係や形状などの関係を、非常に高い精度で、定常的に得ることが可能となる。回路パッケージ400の熱伝達面露出部436を固定した副通路溝、例えば表側副通路溝332と裏側副通路溝334とが非常に高い精度で成形できるので、この副通路溝から副通路を成形する作業は、表カバー303や裏カバー304でハウジング302の両面を覆う作業である。この作業は大変シンプルで、計測精度を低下させる要因が少ない作業工程である。また、表カバー303や裏カバー304は成形精度の高い樹脂モールド工程により生産される。従って回路パッケージ400の熱伝達面露出部436と規定の関係で設けられる副通路を高い精度で完成することが可能である。このような方法により、計測精度の向上に加え、高い生産性が得られる。
これに対して従来は、副通路を製造し、次に副通路に計測部を接着剤で接着することにより、熱式流量計を生産していた。このように接着剤を使用する方法は、接着剤の厚みのばらつきが大きく、また接着位置や接着角度が製品毎にばらつく。このため計測精度を上げることには限界があった。さらにこれらの作業を量産工程で行う場合に、計測精度の向上が大変難しくなる。
本発明に係る実施例では、先ず、流量検出部602を備える回路パッケージ400を第1樹脂モールドにより生産し、次に回路パッケージ400を樹脂モールドにより固定すると共に同時に前記樹脂モールドで副通路を成形するための副通路溝を第2樹脂モールドにより、成形する。このようにすることにより、副通路溝の形状、および前記副通路溝に極めて高い精度で流量検出部602を固定できる。
流量の計測に関係する部分、例えば流量検出部602の熱伝達面露出部436や熱伝達面露出部436が取り付けられる計測用流路面430を、回路パッケージ400の表面に成形する。その後、計測用流路面430と熱伝達面露出部436はハウジング302を成形する樹脂から露出させる。すなわち熱伝達面露出部436および熱伝達面露出部436周辺の計測用流路面430を、ハウジング302を成形する樹脂で覆わないようにする。回路パッケージ400の樹脂モールドで成形した計測用流路面430や熱伝達面露出部436を、あるいは温度検出部452を、そのままハウジング302の樹脂モールド後も利用し、熱式流量計300の流量計測や温度計測に使用する。このようにすることで計測精度が向上する。
本発明に係る実施例では、回路パッケージ400をハウジング302に一体成形することにより、副通路を有するハウジング302に回路パッケージ400を固定しているので、少ない固定面積で回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。すなわち、ハウジング302に接触していない回路パッケージ400の表面積を多く取ることができる。前記ハウジング302に接触していない回路パッケージ400の表面は、例えば空隙に露出している。吸気管の熱はハウジング302に伝わり、ハウジング302から回路パッケージ400に伝わる。ハウジング302で回路パッケージ400の全面あるいは大部分を包含するのではなく、ハウジング302と回路パッケージ400との接触面積を小さくしても、高精度でしかも高い信頼性を維持して、回路パッケージ400をハウジング302に固定できる。このためハウジング302から回路パッケージ400への熱伝達を低く抑えることが可能となり、計測精度の低下を抑制できる。
図5や図6に示す実施例では、回路パッケージ400の露出面の面積Aを、ハウジング302の成形用モールド材で覆われている面積Bと同等あるいは、面積Aを面積Bより多くすることが可能である。実施例では面積Aの方が面積Bより多くなっている。このようにすることにより、ハウジング302から回路パッケージ400への熱の伝達を抑制できる。また回路パッケージ400を成形している熱硬化性樹脂の熱膨張係数とハウジング302を成形している熱可塑性樹脂の膨張係数の差による応力を低減できる。
4. 回路パッケージ400の外観
4.1 熱伝達面露出部436を備える計測用流路面430の成形
図14に第1樹脂モールド工程で作られる回路パッケージ400の外観を示す。なお、回路パッケージ400の外観上に記載した斜線部分は、第1樹脂モールド工程で回路パッケージ400を製造した後に、第2樹脂モールド工程でハウジング302を成形する際に、第2樹脂モールド工程で使用される樹脂により回路パッケージ400が覆われる固定面432を示す。図14(A)は回路パッケージ400の左側面図、図14(B)は回路パッケージ400の正面図、図14(C)は回路パッケージ400の背面図である。回路パッケージ400は、後述する流量検出部602や処理部604を内蔵し、熱硬化性樹脂でこれらがモールドされ、一体成形される。
図14(B)に示す回路パッケージ400の表面には、被計測気体30を流すための面として作用する計測用流路面430が被計測気体30の流れ方向に長く延びる形状で成形されている。この実施例では計測用流路面430は、被計測気体30の流れ方向に長く延びる長方形を成している。この計測用流路面430は、図14(A)に示す如く、他の部分より薄く作られていて、その一部に熱伝達面露出部436が設けられている。内蔵されている流量検出部602は、熱伝達面露出部436を介して被計測気体30と熱伝達を行い、被計測気体30の状態、例えば被計測気体30の流速を計測し、主通路124を流れる流量を表す電気信号を出力する。
内蔵されている流量検出部602(図19参照)が高精度で被計測気体30の状態を計測するには、熱伝達面露出部436の近傍を流れる気体が層流であり乱れが少ないことが望ましい。このため熱伝達面露出部436の流路側面と気体を導く計測用流路面430の面との差が所定値以下であることが望ましい。例えば熱伝達面露出部436の流路側面と計測用流路面430の面との段差はない方が好ましい。このような構成により、流量計測精度を高精度に保ちつつ、流量検出部602に不均等な応力および歪が作用するのを抑制することが可能となる。なお、上記段差は流量計測精度に影響を与えない程度の段差であれば設けてもよい。
熱伝達面露出部436を有する計測用流路面430の裏面には、図14(C)に示す如く、回路パッケージ400の樹脂モールド成形時に内部基板あるいはプレートを支持する金型の押さえの押さえ跡442が残っている。熱伝達面露出部436は被計測気体30との間で熱のやり取りを行うために使用される場所であり、被計測気体30の状態を正確に計測するためには、流量検出部602と被計測気体30との間の熱伝達が良好に行われることが望ましい。このため、熱伝達面露出部436の部分が第1樹脂モールド工程での樹脂で覆われるのを避けなければならない。熱伝達面露出部436とその裏面である計測用流路面裏面431の両面に金型を当て、この金型により熱伝達面露出部436への樹脂の流入を防止する。熱伝達面露出部436の裏面に凹部形状の押さえ跡442が成形されている。この部分は、流量検出部602等を構成する素子が近くに配置されており、これら素子の発熱をできるだけ外部に放熱することが望ましい。成形された凹部は、樹脂の影響が少なく、放熱し易い効果を奏している。
半導体素子で構成される流量検出部(流量検出素子)602には、熱伝達面露出部436に相当する半導体ダイヤフラムが形成されており、半導体ダイヤフラムは、流量検出素子602の裏面に空隙を成形することによりえることができる。前記空隙を密閉すると温度変化による前記空隙内の圧力の変化により、半導体ダイヤフラムが変形し、計測精度が低下する。このためこの実施例では、半導体ダイヤフラム裏面の空隙と連通する開口438を回路パッケージ400の表面に設け、半導体ダイヤフラム裏面の空隙と開口438とを繋ぐ連通路を回路パッケージ400内部に設けている。なお、前記開口438は、第2樹脂モールド工程で、樹脂により塞がれることがないように、図14に示す斜線が記載されていない部分に設けられている。
第1樹脂モールド工程で前記開口438を成形することが必要であり、開口438の部分とその裏面とに金型を当て、表裏両面を金型で押すことにより、開口438の部分への樹脂の流入を阻止し、開口438を成形する。開口438および半導体ダイヤフラムの裏面の空隙と開口438とを繋ぐ連通路の成形については、後述する。
4.2 温度検出部452および突出部424の成形と効果
回路パッケージ400に設けられた温度検出部452は、温度検出部452を支持するために被計測気体30の上流方向に延びている突出部424の先端も設けられて、被計測気体30の温度を検出する機能を備えている。高精度に被計測気体30の温度を検出するには、被計測気体30以外部分との熱の伝達をできるだけ少なくすることが望ましい。温度検出部452を支持する突出部424は、その根元より、先端部分が細い形状を成し、その先端部分に温度検出部452を設けている。このような形状により、温度検出部452への突出部424の根元部からの熱の影響が低減される。
また、温度検出部452で被計測気体30の温度が検出された後、被計測気体30は突出部424に沿って流れ、突出部424の温度を被計測気体30の温度に近づける作用を為す。このことにより、突出部424の根元部の温度が温度検出部452に及ぼす影響が抑制されている。特にこの実施例では、温度検出部452を備える突出部424の近傍が細く、突出部424の根元に行くに従って太くなっている。このため、被計測気体30がこの突出部424の形状に沿って流れ、突出部424を効率的に冷却する。
突出部424の根元部で斜線部は第2樹脂モールド工程でハウジング302を成形する樹脂により覆われる固定面432である。突出部424の根元部の斜線部に窪みが設けられている。これは、ハウジング302の樹脂に覆われない窪み形状の部分が設けられていることを示している。このように突出部424の根元部のハウジング302の樹脂に覆われない窪み形状の部分を作ることにより、被計測気体30により突出部424がさらに冷却し易くしている。
4.3 回路パッケージ400の端子
回路パッケージ400には、内蔵する流量検出部602や処理部604を動作させるための電力の供給、および流量の計測値や温度の計測値を出力するために、接続端子412が設けられている。さらに、回路パッケージ400が正しく動作するかどうか、回路部品やその接続に異常が生じていないかの検査を行うために、端子414が設けられている。この実施例では、第1樹脂モールド工程で流量検出部602や処理部604を、熱硬化性樹脂を用いてトランスファモールドすることにより回路パッケージ400が作られる。トランスファモールド成形を行うことにより、回路パッケージ400の寸法精度を向上することができるが、トランスファモールド工程では、流量検出部602や処理部604を内蔵する密閉した金型の内部に加圧した高温の樹脂が圧入されるので、出来上がった回路パッケージ400について、流量検出部602や処理部604およびこれらの配線関係に損傷が無いかを検査することが望ましい。この実施例では、検査のための端子414を設け、生産された各回路パッケージ400についてそれぞれ検査を実施する。検査用の端子414は計測用には使用されないので、上述したように、端子414は外部端子内端361には接続されない。なお各接続端子412には、機械的弾性力を増すために、湾曲部416が設けられている。各接続端子412に機械的弾性力を持たせることで、第1樹脂モールド工程による樹脂と第2樹脂モールド工程による樹脂の熱膨張係数の相違に起因して発生する応力を吸収することができる。すなわち、各接続端子412は第1樹脂モールド工程による熱膨張の影響を受け、さらに各接続端子412に接続される外部端子内端361は第2樹脂モールド工程による樹脂の影響を受ける。これら樹脂の違いに起因する応力の発生を吸収することができる。
4.4 第2樹脂モールド工程による回路パッケージ400の固定とその効果
図14で斜線の部分は、第2樹脂モールド工程において、ハウジング302に回路パッケージ400を固定するために、第2樹脂モールド工程で使用する熱可塑性樹脂で回路パッケージ400を覆うための、固定面432を示している。図5や図6を用いて説明したとおり、計測用流路面430および計測用流路面430に設けられている熱伝達面露出部436と副通路の形状との関係が、規定された関係となるように、高い精度で維持されることが重要である。第2樹脂モールド工程において、副通路を成形すると共に同時に副通路を成形するハウジング302に回路パッケージ400を固定するので、前記副通路と計測用流路面430および熱伝達面露出部436との関係を極めて高い精度で維持できる。すなわち、第2樹脂モールド工程において回路パッケージ400をハウジング302に固定するので、副通路を備えたハウジング302を成形するための金型内に、回路パッケージ400を高い精度で位置決めして固定することが可能となる。この金型内に高温の熱可塑性樹脂を注入することで、副通路が高い精度で成形されると共に、回路パッケージ400が高い精度で固定される。
この実施例では、回路パッケージ400の全面を、ハウジング302を成形する樹脂で覆う固定面432とするのではなく、回路パッケージ400の接続端子412側に表面が露出する、すなわちハウジング302用樹脂で覆われない部分を設けている。図14に示す実施例では、回路パッケージ400の表面の内、ハウジング302用樹脂に包含される固定面432の面積より、ハウジング302の樹脂に包含されないでハウジング302用樹脂から露出している面積の方が広くなっている。
回路パッケージ400を成形する熱硬化性樹脂と固定部372を備えるハウジング302を成形する熱可塑性樹脂とでは熱膨張係数に差があり、この熱膨張係数差に基づく応力が回路パッケージ400にできるだけ加わらないようにすることが望ましい。回路パッケージ400の表面の固定面432を少なくすることで、熱膨張係数の差に基づく影響を低減できる。例えば幅Lの帯状とすることにより、回路パッケージ400の表面の固定面432を少なくすることができる。
また突出部424の根元に固定面432を設けることで、突出部424の機械的強度を増すことができる。回路パッケージ400の表面において、被計測気体30が流れる軸に沿う方向に帯状の固定面を設け、さらに被計測気体30が流れる軸と交差する方向の固定面を設けることで、より強固に回路パッケージ400とハウジング302とを互いに固定することができる。固定面432において、計測用流路面430に沿って幅Lで帯状に回路パッケージ400を取り巻いている部分が上述した被計測気体30の流れ軸に沿う方向の固定面であり、突出部424の根元を覆う部分が、被計測気体30の流れ軸を横切る方向の固定面である。
5. 回路パッケージへの回路部品の搭載
図15は、図14(B)のC−C断面の1部を示す図であり、ダイヤフラム672および流量検出部(流量検出素子)602の内部に設けられた空隙674と孔520とを繋ぐ連通孔676を説明する、説明図である。
後述するように被計測気体30の流量を計測する流量検出部602にはダイヤフラム672が設けられており、ダイヤフラム672の背面には空隙674が設けられている。ダイヤフラム672には図示していないが被計測気体30と熱のやり取りを行い、これによって流量を計測するための素子が設けられている。ダイヤフラム672に成形させている素子間に、被計測気体30との熱のやり取りとは別に、ダイヤフラム672を介して素子間に熱が伝わると、正確に流量を計測することが困難となる。このためダイヤフラム672は熱抵抗を大きくする必要があり、ダイヤフラム672ができるだけ薄く作られている。
また、回路パッケージ400は、リードに相当する第2プレート536に、連通通路を形成するための第1のプレート532が配置されている。第1プレート532には、チップ状の流量検出部602およびLSIとして作られている処理部604が搭載されている。流量検出部602の各端子と処理部604とがアルミパッドを介してワイヤ542で電気的に接続されている。さらに、処理部604は、アルミパッドを介してワイヤ543で第2プレート536に接続されている。
流量検出部(流量検出素子)602は、ダイヤフラム672の熱伝達面437が露出するように、第1樹脂モールド工程により成形された回路パッケージ400の第1樹脂に埋設されて固定されている。ダイヤフラム672の表面は図示しない前記素子(図20に示す発熱体608、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654と下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658など)が設けられている。前記素子は、ダイヤフラム672に相当する熱伝達面露出部436において素子表面の熱伝達面437を介して図示していない被計測気体30と互いに熱の伝達を行う。熱伝達面437は各素子の表面で構成しても良いし、その上に薄い保護膜を設けても良い。素子と被計測気体30との熱伝達がスムーズに行われ、一方で素子間の直接的な熱伝達ができるだけ少ない方が望ましい。
流量検出部(流量検出素子)602の前記素子が設けられている部分は、計測用流路面430の熱伝達面露出部436に配置されていて、熱伝達面437が計測用流路面430を成形している樹脂から露出している。流量検出素子602の外周部は計測用流路面430を成形している第1樹脂モールド工程で使用された熱硬化性樹脂で覆われている。仮に流量検出素子602の側面のみが前記熱硬化性樹脂で覆われ、流量検出素子602の外周部の表面側(すなわちダイヤフラム672の周りの領域)に熱硬化性樹脂で覆われていないとすると、計測用流路面430を成形している樹脂に生じる応力を流量検出素子602の側面のみで受けることとなり、ダイヤフラム672に歪が生じ、特性が劣化する恐れがある。図15に示すように流量検出素子602の表側外周部も前記熱硬化性樹脂で覆われる状態とすることにより、ダイヤフラム672の歪が低減される。一方熱伝達面437と被計測気体30が流れる計測用流路面430との段差が大きいと、被計測気体30の流れが乱れ、計測精度が低下する。従って熱伝達面437と被計測気体30が流れる計測用流路面430との段差Wが小さいことが望ましい。
ダイヤフラム672は各素子間の熱伝達を抑制するために非常に薄く作られていて、流量検出素子602の裏面に空隙674を成形することにより薄肉化が図られている。この空隙674を密閉すると温度変化により、ダイヤフラム672の裏面に形成されている空隙674の圧力が温度に基づき変化する。空隙674とダイヤフラム672の表面との圧力差が大きくなると、ダイヤフラム672が圧力を受けて歪を生じ、高精度の計測が困難となる。このため、第1プレート532には外部に開口する開口438に繋がる孔520が設けられ、この孔520と空隙674とを繋ぐ連通孔676が設けられている。この連通孔676は例えば第1プレート532と第2プレート536の2枚のプレートで作られる。第1プレート532には孔520と孔521が設けられ、さらに連通孔676を作るための溝が設けられている。第2プレート536で溝および孔520と孔521を塞ぐことで、連通孔676が作られる。この連通孔676と孔520とにより、ダイヤフラム672の表面および裏面に作用する気圧が略等しくなり、計測精度が向上する。
上述のとおり、第2プレート536で溝および孔520と孔521を塞ぐことにより、連通孔676を作ることができるが、他の方法として、リード(リードフレーム)を第2プレート536として使用することができる。プレート532の上にはダイヤフラム672および処理部604として動作するLSIが設けられている。これらの下側には、ダイヤフラム672および処理部604を搭載したプレート532を支えるためのリードフレームが設けられている。従ってこのリードフレームを利用することにより、構造がよりシンプルとなる。また前記リードフレームをグランド電極として使用することができる。このように第2プレート536の役割を前記リードフレームに持たせ、このリードフレームを用いて、第1プレート532に成形された孔520と孔521を塞ぐと共に第1プレート532に成形された溝を前記リードフレームで覆うようにして塞ぐことにより連通孔676を形成することで、全体構造がシンプルとなるのに加え、リードフレームのグランド電極としての作用により、ダイヤフラム672および処理部604に対する外部からのノイズの影響を低減できる。
回路パッケージ400において、熱伝達面露出部436が形成されている回路パッケージ400の裏面に、押さえ跡442が残っている。第1樹脂モールド工程において、熱伝達面露出部436への樹脂の流入を防止するために熱伝達面露出部436の部分に金型、例えば入れ駒を当て、さらにその反対面の押さえ跡442の部分に金型を当て、両金型により熱伝達面露出部436への樹脂の流入を阻止する。このようにして熱伝達面露出部436の部分を成形することにより、極めて高い精度で、被計測気体30の流量を計測できる。
図16は第1樹脂モールド工程により第2のプレート、端子等を含む金属製のフレーム枠を熱硬化性樹脂でモールドし、熱硬化性樹脂で覆われた状態を示す。このモールド成形により、回路パッケージ400の表面に計測用流路面430が成形され、熱伝達面露出部436が計測用流路面430に設けられている。また熱伝達面露出部436に相当するダイヤフラム672の裏面の空隙674は開口438とつながる構成となっている。突出部424の先端部に被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452が設けられており、内部に温度検出素子518が内蔵されている。突出部424の内部では、熱伝達を抑制するために、温度検出素子518の電気信号を取り出すためのリードが分断され、熱抵抗の大きい接続線546が配置されている。これにより、温度検出部452への突出部424の根元からの熱伝達が抑制され、熱による影響が抑制される。
さらに突出部424の根元に傾斜部594や傾斜部596が作られている。第1樹脂モールド工程での樹脂の流れがスムーズになると共に、車に装着されて動作している状態で、傾斜部594や傾斜部596により、温度検出部452で計測された被計測気体30が突出部424からその根元の方にスムーズに流れ、突出部424の根元が冷却され、温度検出部452への熱の影響を低減できる効果がある。この図16の状態の後、リード514が端子毎に切り離され、接続端子412や端子414となる。
第1樹脂モールド工程において、熱伝達面露出部436や開口438への樹脂の流れ込みを防ぐことが必要である。このため、第1樹脂モールド工程では、熱伝達面露出部436や開口438の位置に、樹脂の流れ込みを阻止する、例えばダイヤフラム672より大きい入れ駒を当て、その裏面に押さえを当て、両面から挟み込む。図14(C)には、図16の熱伝達面露出部436や開口438あるいは図14(B)の熱伝達面露出部436や開口438と対応する裏面に、押さえ跡442や押さえ跡441が残っている。
図16で枠512から切り離されたリードの切断面が、樹脂面から露出することにより、リードの切断面から水分などが使用中に内部に侵入する恐れがある。このようなことがないようにすることが耐久性向上の観点や信頼性向上の観点で重要である。例えば傾斜部594や傾斜部596のリード切断部が第2樹脂モールド工程で樹脂により覆われ、リードの切断面が、前記樹脂により覆われる。このことによりリードの切断面の腐食や切断部からの水の侵入が防止される。リードの切断面は温度検出部452の電気信号を伝える重要なリード部分と近接している。従って切断面を第2樹脂モールド工程で覆うことが望ましい。
6. 熱式流量計300の生産工程
6.1 回路パッケージ400の生産工程
図17および図18は熱式流量計300の生産工程を示し、図17は回路パッケージ400の生産工程を示し、図18は熱式流量計の生産工程を示す。図17において、ステップ1は金属製のフレーム枠を生産する工程を示す。このフレーム枠は例えばプレス加工によって作られる。
ステップ2は、ステップ1で作られた第2のプレートを含むフレーム枠に、まず第1プレート532を搭載し、さらに第1プレート532に流量検出部602や処理部604を搭載し、さらに温度検出素子518、チップコンデンサなどの回路部品を搭載する。またステップ2では、回路部品間や回路部品とリード間、リード同士の電気的な配線を行う。このステップ2で、リード544とリード548間を、熱抵抗を大きくするための接続線546で接続する。ステップ2では、回路部品がフレーム枠512に搭載され、さらに電気的な接続がなされた電気回路が作られる。
次にステップ3で、第1樹脂モールド工程により、熱硬化性樹脂でモールドされる。この状態を図16に示す。また、ステップ3で、接続されているリードをそれぞれフレーム枠512から切り離し、さらにリード間も切り離し、図14に示す回路パッケージ400を完成する。この回路パッケージ400には、図14に示す通り、計測用流路面430や熱伝達面露出部436が成形されている。
ステップ4で、出来上がった回路パッケージ400の外観検査や動作の検査を行う。ステップ3の第1樹脂モールド工程では、ステップ2で作られた電気回路を金型内に固定し、金型に高温の樹脂を高い圧力で注入するので、電気部品や電気配線の異常が生じていないかを検査することが望ましい。この検査のために図14に示す接続端子412に加え端子414が使用される。なお、端子414はその後使用されないので、この検査の後、根元から切断しても良い。
6.2 熱式流量計300の生産工程と特性の補正
図18で、図17により生産された回路パッケージ400と外部端子306とが使用され、第2樹脂モールド工程の前にステップ5で接続端子412と外部端子内端361との接続が行われる。ステップ6で第2樹脂モールド工程によりハウジング302がつくられる。このハウジング302は樹脂製の副通路溝やフランジ312や外部接続部305が作られると共に、図14に示す回路パッケージ400の斜線部分が第2樹脂モールド工程の樹脂で覆われ、回路パッケージ400がハウジング302に固定される。これと同時に、図10〜図13で示した、樹脂被覆部330が成形される。前記第1樹脂モールド工程による回路パッケージ400の生産(ステップ3)と第2樹脂モールド工程による熱式流量計300のハウジング302の成形との組み合わせにより、流量検出精度が大幅に改善される。さらに、樹脂被覆部330を第2樹脂モールド工程においてハウジング本体とともに一体的に成形することにより、端子接続部320を別工程において樹脂等により被覆する場合に比べて、安価かつ効率的に端子接続部320の防食を実施することができる。さらに、樹脂被覆部330を第2樹脂モールド工程においてハウジング本体とともに一体的に成形することにより、熱式流量計の使用時の温度変化に伴い、ハウジング本体とともに樹脂被覆部330も一体となって膨張収縮するため、端子接続部320に温度変化に伴う負荷が作用し難い構造とすることができる。
ステップ6によりハウジング302が完成すると、次にステップ8で、表カバー303と裏カバー304がハウジング302に取り付けられ、ハウジング302の内部が表カバー303と裏カバー304で密閉されるとともに、被計測気体30を流すための副通路が完成する。表カバー303と裏カバー304をハウジング302に取り付ける際には、接着剤によりこれらを接着してもよいが、レーザを用いてこれらを溶着することが好ましい。これにより、表カバー303と裏カバー304がハウジング302との接着性(溶着性)を高めることができる。これにより、たとえ熱式流量計300は使用される環境下においても、上述した回路室321内の密閉性を継続的に維持することができる。さらに、表カバー303と裏カバー304の材質に、ハウジング302の材料に比べてレーザが透過する熱可塑性樹脂(例えば透明または白色の樹脂)を用い、ハウジング302にカバーの材料に比べてレーザが吸収し易い熱可塑性樹脂(例えばカバーの樹脂を黒色に着色した樹脂)を用いることにより、表カバー303または裏カバー304と、ハウジング302との界面における溶着性をより高めることができる。
ここで、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネイト(PC)、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの熱可塑性樹脂を用いた場合には、これらの樹脂はそのままの状態で透明または白色であるので、これらの樹脂にレーザを透過することができる。したがって、これらの樹脂でカバーを成形すればよい。一方、レーザを吸収させるために、レーザを吸収する樹脂(ハウジングを構成する樹脂)は、これらの樹脂に対して、レーザ吸収性を有する着色剤を添加したものを用いる。その着色剤として、例えば、カーボンブラック等の炭素系材料、複合酸化物系顔料等の無機系着色料等を挙げることができる。このような結果、カバー側からレーザを照射することにより、レーザはカバーを透過して、ハウジングの樹脂に吸収され、カバーに接触した(または略接触した)ハウジングの樹脂が溶融し、ハウジングとカバーとの対向した部分を溶着することができる。さらに、カバーとハウジングの溶着性を高めるためには、双方の樹脂が同じ樹脂であることが好ましい。
さらに、図7で説明した絞り構造が表カバー303あるいは裏カバー304に設けられた突起部356により、作られる。なお、この表カバー303はステップ10でモールド成形により作られ、裏カバー304はステップ11でモールド成形によって作られる。また、これら表カバー303と裏カバー304はそれぞれ別工程で作られ、それぞれ異なる金型により成形されて作られる。
ステップ9で、実際に副通路に気体が導かれ、特性の試験が行われる。上述したように副通路と流量検出部の関係が高い精度で維持されているので、特性の試験による特性補正を行うことで、非常に高い計測精度が得られる。また第1樹脂モールド工程と第2樹脂モールド工程で副通路と流量検出部の関係を左右する位置決めや形状関係の成形が行われるので、長期間使用しても特性の変化が少なく、高精度に加え高信頼性が確保される。
7. 熱式流量計300の回路構成
7.1 熱式流量計300の回路構成の全体
図19は熱式流量計300の流量検出回路601を示す回路図である。なお、先に実施例で説明した温度検出部452に関する計測回路も熱式流量計300に設けられているが、図19では省略している。熱式流量計300の流量検出回路601は、発熱体608を有する流量検出部602と処理部604とを備えている。処理部604は、流量検出部602の発熱体608の発熱量を制御すると共に、流量検出部602の出力に基づいて流量を表す信号を、端子662を介して出力する。前記処理を行うために、処理部604は、Central Processing Unit(以下CPUと記す)612と入力回路614、出力回路616、補正値や計測値と流量との関係を表すデータを保持するメモリ618、一定電圧をそれぞれ必要な回路に供給する電源回路622を備えている。電源回路622には車載バッテリなどの外部電源から、端子664と図示していないグランド端子を介して直流電力が供給される。
流量検出部602には被計測気体30を熱するための発熱体608が設けられている。電源回路622から、発熱体608の電流供給回路を構成するトランジスタ606のコレクタに電圧V1が供給され、CPU612から出力回路616を介して前記トランジスタ606のベースに制御信号が加えられ、この制御信号に基づいて前記トランジスタ606から端子624を介して発熱体608に電流が供給される。発熱体608に供給される電流量は前記CPU612から出力回路616を介して発熱体608の電流供給回路を構成するトランジスタ606に加えられる制御信号により制御される。処理部604は、発熱体608で熱せられることにより被計測気体30の温度が当初の温度より所定温度、例えば100℃、だけ高くなるように発熱体608の発熱量を制御する。
流量検出部602は、発熱体608の発熱量を制御するための発熱制御ブリッジ640と、流量を計測するための流量検知ブリッジ650と、を有している。発熱制御ブリッジ640の一端には、電源回路622から一定電圧V3が端子626を介して供給され、発熱制御ブリッジ640の他端はグランド端子630に接続されている。また流量検知ブリッジ650の一端には、電源回路622から一定電圧V2が端子625を介して供給され、流量検知ブリッジ650の他端はグランド端子630に接続されている。
発熱制御ブリッジ640は、熱せられた被計測気体30の温度に基づいて抵抗値が変化する測温抵抗体である抵抗642を有しており、抵抗642と抵抗644、抵抗646、抵抗648はブリッジ回路を構成している。抵抗642と抵抗646の交点Aおよび抵抗644と抵抗648との交点Bの電位差が端子627および端子628を介して入力回路614に入力され、CPU612は交点Aと交点B間の電位差が所定値、この実施例ではゼロボルト、になるようにトランジスタ606から供給される電流を制御して発熱体608の発熱量を制御する。図19に記載の流量検出回路601は、被計測気体30のもとの温度に対して一定温度、例えば常に100℃、高くなるように発熱体608で被計測気体30を加熱する。この加熱制御を高精度に行えるように、発熱体608で暖められた被計測気体30の温度が当初の温度に対して一定温度、例えば常に100℃、高くなったときに、前記交点Aと交点B間の電位差がゼロボルトとなるように発熱制御ブリッジ640を構成する各抵抗の抵抗値が設定されている。従って図19に記載の流量検出回路601では、CPU612は交点Aと交点B間の電位差がゼロボルトとなるよう発熱体608への供給電流を制御する。
流量検知ブリッジ650は、抵抗652と抵抗654、抵抗656、抵抗658の4つの測温抵抗体で構成されている。これら4つの測温抵抗体は被計測気体30の流れに沿って配置されており、抵抗652と抵抗654は発熱体608に対して被計測気体30の流路における上流側に配置され、抵抗656と抵抗658は発熱体608に対して被計測気体30の流路における下流側に配置されている。また計測精度を上げるために抵抗652と抵抗654は発熱体608までの距離が互いに略同じくなるように配置されており、抵抗656と抵抗658は発熱体608までの距離が互いに略同じくなるように配置されている。
抵抗652と抵抗656との交点Cと、抵抗654と抵抗658との交点Dとの間の電位差が端子631と端子632を介して入力回路614に入力される。計測精度を高めるために、例えば被計測気体30の流れがゼロの状態で、前記交点Cと交点Dとの間の電位差がゼロとなるように流量検知ブリッジ650の各抵抗が設定されている。従って前記交点Cと交点Dとの間の電位差が、例えばゼロボルトの状態では、CPU612は被計測気体30の流量がゼロとの計測結果に基づき、主通路124の流量がゼロを意味する電気信号を端子662から出力する。
被計測気体30が図19の矢印方向に流れている場合、上流側に配置されている抵抗652や抵抗654は、被計測気体30によって冷却され、被計測気体30の下流側に配置されている抵抗656と抵抗658は、発熱体608により暖められた被計測気体30により暖められ、これら抵抗656と抵抗658の温度が上昇する。このため、流量検知ブリッジ650の交点Cと交点Dとの間に電位差が発生し、この電位差が端子631と端子632を介して、入力回路614に入力される。CPU612は流量検知ブリッジ650の交点Cと交点Dとの間の電位差に基づいて、メモリ618に記憶されている前記電位差と主通路124の流量との関係を表すデータを検索し、主通路124の流量を求める。このようにして求められた主通路124の流量を表す電気信号が端子662を介して出力される。なお、図19に示す端子664および端子662は新たに参照番号を記載しているが、先に説明した図5や図6あるいは図10に示す接続端子412に含まれている。
上記メモリ618には、上記交点Cと交点Dとの電位差と主通路124の流量との関係を表すデータが記憶されており、さらに回路パッケージ400の生産後に、気体の実測値に基づいて求められた、ばらつきなどの測定誤差の低減のための補正データが記憶されている。なお、回路パッケージ400の生産後の気体の実測およびそれに基づく補正値のメモリ618への書き込みは、図4に示す外部端子306や補正用端子307を使用して行われる。本実施例では、被計測気体30を流す副通路と計測用流路面430との配置関係や、被計測気体30を流す副通路と熱伝達面露出部436との配置関係が、高精度に非常にばらつきが少ない状態で、回路パッケージ400が生産されているので、前記補正値による補正で、極めて高い精度の計測結果が得られる。
7.2 流量検出回路601の構成
図20は、上述した図19の流量検出回路601の回路配置を示す回路構成図である。流量検出回路601は矩形形状の半導体チップとして作られており、図20に示す流量検出回路601の左側から右側に向って、矢印の方向に、被計測気体30が流れる。
半導体チップで構成される流量検出部(流量検出素子)602には、半導体チップの厚さを薄くした矩形形状のダイヤフラム672が成形されて、このダイヤフラム672には、破線で示す薄厚領域(すなわち上述した熱伝達面)603が設けられている。この薄厚領域603の裏面側には、上述した空隙が成形されており、前記空隙が図14や図5に示す開口438に連通し、前記空隙内の気圧は開口438から導かれる気圧に依存する。
ダイヤフラム672の厚さを薄くすることで、熱伝導率が低くなっており、ダイヤフラム672の薄厚領域(熱伝達面)603に設けられた抵抗652や抵抗654、抵抗658、抵抗656へのダイヤフラム672を介しての熱伝達が抑えられ、被計測気体30との熱伝達により、これらの抵抗の温度が略定まる。
ダイヤフラム672の薄厚領域603の中央部には、発熱体608が設けられており、この発熱体608の周囲に発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642が設けられている。そして、薄厚領域603の外側に発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗644、646、648が設けられている。このように成形された抵抗642、644、646、648によって発熱制御ブリッジ640が構成される。
また、発熱体608を挟むように、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654と下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658が配置されており、発熱体608に対して被計測気体30が流れる矢印方向の上流側に、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654が配置され、発熱体608に対して被計測気体30が流れる矢印方向の下流側に下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658が配置されている。このようにして、薄厚領域603に配置されている抵抗652、抵抗654と抵抗656、抵抗658とにより流量検知ブリッジ650が成形される。
また、上記発熱体608の双方の端部は、図20の下側に記載した端子624および629にそれぞれ接続されている。ここで、図19に示すように、端子624にはトランジスタ606から発熱体608に供給される電流が加えられ、端子629はグランドとして接地される。
発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642、抵抗644、抵抗646、抵抗648は、それぞれ接続されて、端子626と630に接続される。図19に示すように、端子626には電源回路622から一定電圧V3が供給され、端子630はグランドとして接地される。また、上記抵抗642と抵抗646との間、抵抗646と抵抗648との間かの接続点は、端子627と端子628に接続される。図20に記載の如く、端子627は抵抗642と抵抗646との交点Aの電位を出力し、端子627は抵抗644と抵抗648との交点Bの電位を出力する。図19に示すように、端子625には、電源回路622から一定電圧V2が供給され、端子630はグランド端子として接地グランドされる。また、上記抵抗654と抵抗658との接続点は端子631に接続され、端子631は図19の点Bの電位を出力する。抵抗652と抵抗656との接続点は端子632に接続され、端子632は図19に示す交点Cの電位を出力する。
図20に示すように、発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642は、発熱体608の近傍に成形されているので、発熱体608からの発熱で暖められた気体の温度を精度良く計測することができる。一方、発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗644、646、648は、発熱体608から離れて配置されているので、発熱体608からの発熱の影響を受け難い構成に成っている。抵抗642は発熱体608で暖められた気体の温度に敏感に反応するように構成されており、抵抗644や抵抗646、抵抗648は発熱体608の影響を受けにくい構成となっている。このため、発熱制御ブリッジ640による被計測気体30の検出精度が高く、被計測気体30をその初期温度に対して所定温度だけ高める制御を高精度で行うことができる。
この実施例では、ダイヤフラム672の裏面側に空隙が形成されており、この空隙が図14や図5に記載の開口438に連通しており、ダイヤフラム672の裏面側空隙の圧力とダイヤフラム672の表側の圧力との差が大きくならないようにしている。この圧力差によるダイヤフラム672の歪を抑制できる。このことは流量計測精度の向上に繋がる。
上述したようにダイヤフラム672は薄厚領域603を成形し、薄厚領域603を含む部分の厚さを非常に薄くしており、ダイヤフラム672を介しての熱伝導を極力抑制している。従って流量検知ブリッジ650や発熱制御ブリッジ640は、ダイヤフラム672を介しての熱伝導の影響が抑制され、被計測気体30の温度に依存して動作する傾向がより強まり、計測動作が改善される。このため高い計測精度が得られる。