本発明はそのいくつかの実施形態において、クローン病および関節リウマチを含む炎症性障害を処置するためのTNFα転換酵素阻害剤(TACE阻害剤)に関連する。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるかまたは実施例において例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
TACE(腫瘍壊死因子−α−変換酵素;EC番号3.4.24.86)は、ADAMメタロペプチダーゼドメイン17(ADAM17)とも呼ばれるものであり、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼのADAMタンパク質ファミリーに属する70kDaの酵素である。
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)ファミリーの他のメンバーと同様に、TACEは潜在型チモーゲンとして生じ、阻害性プロドメインが放出されたときに活性化される。TACEチモーゲンの活性化が、プロドメインと触媒ドメインとの接合部におけるフリンコンセンサス部位である211RVKR214/R215を介して後期ゴルジ区画において、主にフリン様プロテアーゼ(プロタンパク質転換酵素)によって行われる。
本発明者らは今回、第2の非標準的なフリン切断部位、すなわち、R56KR58/D59を発見している。この第2の切断部位は、明確に定義された最小のフリンコンセンサス部位、すなわち、Molloy,S.S.他(J.Biol.Chem.、1992、267、16396)によって定義されるようなArg−X−X−Arg/Xに似ていない。
Nakayama,K.[Biochem J、1997、327(Pt 3)、625]によれば、フリン認識のための他の要件として、下記が挙げられる:
(i)P1の位置において、Argが必須である;
(ii)P1のArgに加えて、P2、P4およびP6における3つの残基のうちの少なくとも2つが、効率的な切断のために塩基性であることが要求される;
(iii)P’1の位置において、疎水性側鎖を有するアミノ酸は適していない。
R56KR58/D59の部位は、ArgをP1位に有することを除いて、塩基性要件に適合していない。ArgがP2位に存在せず(Lys)、P4位に存在せず(Val)、かつ、P6位に存在しない(His)(HSVRKR/D)。
本発明者らは、改変をタンパク質のR56位に有するTACEプロドメインが野生型TACEプロメインよりもフリン分解に対して抵抗性であることを示している(図10A〜図10B)。
発現および精製の新規なシステムを使用して、本発明者らは、多量の可溶性TACEプロドメインを細菌の細胞質ゾルにおいて合成することに成功している。このプロドメインはその生来的な折り畳まれた状態で存在しており、このことはそれにより、その後の込み入ったリフォールディング工程が必要であることを除いている。
TACEプロドメインの大量供給を武器にして、本発明者らは今回、このタンパク質を治療活性について、関連性があるインビボモデルにおいて試験することができた。
それによれば、本発明者らは、改変をタンパク質のR58位に有するTACEプロドメインの投与が、野生型TACEプロドメインと比較した場合、敗血症をインビボモデルにおいて防止することにおいてより効果的であることを明らかにしている(図12)。
TACEプロドメインの治療的可能性を自己免疫疾患において評価するために、TNBS/エタノールの投与によって誘導される炎症性腸疾患マウスモデルを使用した。TACEプロドメインにより処置されるマウスの方が、コントロールマウスと比較した場合、低い死亡率および少ない体重減少を示した(図8A、図8B)。プロドメインの効力はまた、肉眼的スコアおよび組織学的スコアにおける改善により明らかであった(図8C、図8D)。TACEプロドメイン処置のマウスは、より長い結腸長さ、固形便、および、より少ない病変部を示した(図8E)。そのうえ、この処置はまた、PBSコントロールにおいて見られるような、マクロファージおよび免疫細胞の結腸内腔への広範囲にわたる浸潤を防止した(図8F)。
図9は、TACEプロドメインが、結腸に沿って限局性斑点で突き止められてTNBS処置マウスの結腸において、静脈内投与後10時間から検出できたことを明らかにする(図9A、図9B)。
全体として、これらの結果は、阻害性のTACEプロドメインがかなりの効力をTヘルパー細胞依存的な炎症性腸疾患状態において有することを示している。
TACEプロドメインの治療的可能性をさらなる自己免疫疾患において評価するために、II型コラーゲンの免疫化によって誘導される関節炎マウスモデルを使用した。
図13A〜図13Cに例示されるように、TACEプロドメインにより処置されるマウスの方が、コントロールと比較した場合、有意に低い関節炎重篤度指数(A)、組織学的スコア(B)、同様にまた、濃度依存的様式でのII型コラーゲンに対して特異的である低下した血清中抗体(C)を示した。
したがって、本発明の1つの局面によれば、TNF−α変換酵素(TACE)のプロドメインを含む単離されたポリペプチドであって、前記TACEの触媒ドメインを欠き、かつ、該ポリペプチドをフリン分解に対して抵抗性にする、R58、R56およびK57からなる群から選択される部位における改変を含み、かつ、TACEの活性をダウンレギュレーションすることができる単離されたポリペプチドが提供される。
本明細書中で使用される場合、表現「TNF−α変換酵素(TACE)のプロドメイン」は、当該酵素をその不活性形態で維持すること(すなわち、触媒活性を含まないこと)を担うTACEのポリペプチド部分を示す。
1つの実施形態によれば、変異させたプロドメインがヒトTACEに由来し、だが、TACEの他の哺乳動物型配列もまた意図される。
ヒトTACEについてのmRNA配列およびアミノ酸配列がGenBankアクセション番号NM_003183のもとで見出され得る。
特定の実施形態によれば、TACEプロドメインは、全長型TACEのAsp23〜Arg214に由来するポリペプチド配列を含む。
述べられたように、本発明のこの局面のプロドメインはTACE触媒活性(シェダーゼ活性)を欠いている。
述べられたように、本明細書中に記載されるTACEプロドメインは、TACEの活性(例えば、シェダーゼ活性またはディスインテグリン活性)をダウンレギュレーションすることができる(例えば、阻害することができる)。阻害によって、TACE活性が、プロドメインの非存在下における活性に対して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%または98%低い活性であることを意味することが意図される。TACEプロドメインポリペプチドがTACEを阻害することができるかどうかを分析する様々な方法が、本明細書中下記の実施例の節において記載される。
表現「フリン分解に対して抵抗性(である)」は、本明細書中で使用される場合、フリン分解に対する抵抗性が、同じ反応条件のもとでの生来的配列よりも大きいこと(少なくとも10%大きい抵抗性であること、少なくとも20%大きい抵抗性であること、少なくとも30%大きい抵抗性であること、少なくとも40%大きい抵抗性であること、少なくとも50%大きい抵抗性であること)を示す。当該ポリペプチドのフリン抵抗性を分析することが、ポリペプチドをフリンの存在下でインキュベーションし、(例えば、SDSゲル分析によって)フラグメントの生成について分析することによって行われる場合がある。
R58、R56およびK57の位置における意図される改変には、欠失または置換が含まれる。これらの変異の番号表記は全長型TACE酵素に対応しており、TACEプロドメインに対応しないことが理解されるであろう。
特定の実施形態によれば、R58、R56および/またはK57が、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンによって置換される場合がある。
別の実施形態によれば、代替アミノ酸は正荷電アミノ酸(例えば、アルギニンまたはリシン)ではない。
好ましくは、58位におけるアルギニンが、例えば、配列番号6に示されるように、アラニンによって置換される。
本発明では、標準的なフリン切断部位を含めて、TACEプロドメインにおけるさらなる改変(例えば、置換または欠失)が意図され、これらには、R211、R214を含む位置のいずれか1つにおける改変が含まれるが、これに限定されない。本発明者らはさらに、C184位におけるアミノ酸改変を意図する。
本発明では、本明細書中上記で記載される改変のどのような組合せも意図され、例えば、本明細書中上記で記載される少なくとも2つの改変、少なくとも3つの改変、または、4つすべての改変が意図されることが理解されるであろう(例えば、配列番号8を参照のこと)。
特定の実施形態によれば、R211および/またはR214が、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンによって置換される場合がある。
特定の実施形態によれば、C184が、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンによって置換される場合がある。
より好ましくは、211位における改変は、アルギニンからアラニンへの置換である。
より好ましくは、214位における改変は、アルギニンからグリシンへの置換である。
より好ましくは、改変には、211位におけるアルギニンからアラニンへの置換、および、214位におけるアルギニンからグリシンへの置換が含まれる(例えば、配列番号7を参照のこと)。
より好ましくは、184位における改変は、システインからアラニンへの置換である。
特定の実施形態によれば、TNF−α変換酵素(TACE)のプロドメインは改変を上記で規定された位置のそれぞれにおいて含む。TACEプロドメインのアミノ酸配列は、初期設定済みパラメーターを使用する全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBlastPソフトウエアを使用して決定される場合、配列番号5に記載されるTACEプロドメイン配列に対して、好ましくは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも89%、少なくとも91%、少なくとも93%、少なくとも95%またはそれ以上、例えば、100%の相同性を有しており、TACEの酵素活性を阻害することができる(ただし、パーセント相同性は、本明細書中に記載される変異を含まない)。相同性を、ペプチドと、より大きいサイズのタンパク質との間で測定する際には、相同性は、対応する領域においてのみ測定される;すなわち、タンパク質は、ギャップおよび挿入を考慮してペプチドと同じ全体的な長さを有するのみであると見なされる。
相同体はまた、欠失変化体、挿入変化体または置換変化体(それらのアミノ酸置換を含む)およびそれらの生物学的に活性なポリペプチドフラグメントを参照する場合がある。
さらなる改変および変化を、現時点で開示された主題のTACEプロドメインの構造において行うことができ、これらの改変および変化により、TACEを阻害することができる分子を依然として得ることができる。例えば、特定のアミノ酸を、ペプチド活性の認められるほどの喪失を伴うことなく、配列において他のアミノ酸の代わりに使用することができる。当該ポリペプチドの生物学的な機能的活性を定義することはポリペプチドの相互作用的な能力および性質であるので、特定のアミノ酸配列置換をポリペプチド配列(または、当然のことながら、その根本的なDNAコード配列)において行うことができ、それにもかかわらず、そのようなアミノ酸配列置換により、同様な性質を有するポリペプチドを得ることができる。
そのような変化を行う際には、アミノ酸のヒドロパシー指標を検討することができる。相互作用的な生物学的機能をポリペプチドに与えることにおけるアミノ酸のヒドロパシー指標の重要性がこの技術分野では一般に理解されている。ある特定のアミノ酸を、類似するヒドロパシー指標またはヒドロパシースコアを有する他のアミノ酸の代わりに使用することができ、かつ、そのような特定のアミノ酸は依然として、類似する生物学的活性を有するポリペプチドをもたらすことができることが知られている。それぞれのアミノ酸には、ヒドロパシー指標がその疎水性および電荷特性に基づいて割り当てられている。それらの指標は下記の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。
アミノ酸の相対的なヒドロパシー特性により、生じたポリペプチドの二次構造が決定され、このことが結果として、当該ポリペプチドと他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、抗体および抗原など)との相互作用を明確にすると考えられる。アミノ酸を、類似するヒドロパシー指標を有する別のアミノ酸によって置換することができ、かつ、機能的に同等なポリペプチドを依然として得ることができることがこの技術分野では知られている。そのような変化において、ヒドロパシー指標が±2の範囲内であるアミノ酸同士の置換が好ましく、±1の範囲内であるものが特に好ましく、±0.5の範囲内であるものが一層より特に好ましい。
似ているアミノ酸の置換はまた、それによりもたらされる生物学的または機能的で、同等なポリペプチドまたはペプチドが免疫学的実施形態における使用のために意図される場合には特に、親水性に基づいて行うことができる。米国特許第4554101号(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)は、その隣接アミノ酸の親水性によって左右されるようなポリペプチドの最大局所的平均親水性が、その免疫原性および抗原性と相関すること、すなわち、当該ポリペプチドの生物学的性質と相関することを述べている。米国特許第4554101号において詳述されるように、下記の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0.+−.1);グルタミン酸(+3.0.+−.1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(−0.5.+−.1);トレオニン(−0.4);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。アミノ酸を、類似する親水性値を有する別のアミノ酸の代わりに使用することができ、生物学的に同等なポリペプチド、特に、免疫学的に同等なポリペプチドを依然として得ることができることが理解される。そのような変化において、親水性値が±2の範囲内であるアミノ酸同士の置換が好ましく、±1の範囲内であるものが特に好ましく、±0.5の範囲内であるものが一層より特に好ましい。
上記で概略されるように、したがって、アミノ酸置換は一般には、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性に基づいており、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷およびサイズなどに基づく。前記特徴のいくつかを考慮に入れる様々な例示的な置換が当業者には広く知られており、これらには、アルギニンおよびリシン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;そして、バリン、ロイシンおよびイソロイシンが含まれる。したがって、現時点で開示された主題には、上記で示されるようなTACEプロドメインの機能的または生物学的な同等物が意図される。
ポリペプチドの生物学同等物または機能的同等物を、部位特異的変異誘発をこの技術分野では広く知られている手順に従って使用して調製することができる。それによれば、アミノ酸残基を、ペプチドの機能性を変化させることなく、標準的な分子生物学的技術の使用により、現時点で開示された主題のTACEプロドメインに付加することができ、または、現時点で開示された主題のTACEプロドメインから欠失することができる。
1つの実施形態によれば、プロドメインのアミノ酸配列が、その安定性、生物学的利用能および/または薬理学的効力を増大させるために改変される。
なおさらなる局面において、プロドメインポリペプチドは、第1の成分(これはプロドメインポリペプチドである)と、第2の成分(これは異種のペプチドまたはタンパク質である)とを有する融合タンパク質を構成する場合がある。融合タンパク質は、myc、HAタグまたはHis6タグを含む場合がある。融合タンパク質はさらに、ヒトIgGのFcドメインに融合されるプロドメインを含む。特定の局面において、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域、または、ヒンジ領域、CH1領域、CH2領域およびCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、米国特許第5428130号もまた参照のこと。Fc成分はマウスIgG1またはヒトIgG2M4に由来することができる。ヒトIgG2M4(米国特許出願公開第20070148167号および米国特許出願公開第20060228349号を参照のこと)は、抗体が、当該変異により、正常な薬物動態学的プロフィルを維持し、しかし、知られているエフェクター機能を何ら有しない、変異を有するIgG2由来の抗体である。
Fcドメインに融合されるプロドメインの例示的なアミノ酸配列が配列番号9および配列番号10に示される。
融合タンパク質はさらに、ヒト血清アルブミン、トランスフェリンまたは抗体に融合されるプロドメインを含む。
さらにさらなる局面において、プロドメインが、キャリアタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、トランスフェリンまたは抗体分子など)にコンジュゲート化される。
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」は、天然または合成のアミノ酸のポリマーに言及し、天然のペプチド(分解産物または合成的に合成されたポリペプチドまたは組換えポリペプチドのいずれか)、ペプチド模倣体(典型的には合成的に合成されたペプチド)そしてポリペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドが含まれ、これらは、例えば、ポリペプチドを体内でより安定化させる修飾、またはポリペプチドの細胞浸透能力を高める修飾を有し得る。
そのような修飾には、N末端修飾、C末端修飾、ポリペプチド結合の修飾(CH2−NH、CH2−S、CH2−S=O、O=C−NH、CH2−O、CH2−CH2、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれるが、これらに限定されない。ペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される(これは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)。これに関するさらなる詳細が本明細書中下記に示される。
ポリペプチド内のポリペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH3)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH2−)、o−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH2−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH2−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ポリペプチド誘導体(−N(R)−CH2−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。
これらの修飾は、ポリペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在させることができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在させることができる。
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、フェニルグリシン、Tic、ナフチルアラニン(Nal)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成された非天然型の酸に置換することができる。
上述のことに加えて、本発明のポリペプチドは一以上の修飾されたアミノ酸または一以上の非アミノ酸モノマー(例えば脂肪酸、複合体炭水化物など)も含むことができる。
従って、本明細書において使用される用語「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;インビボで多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、この用語が本明細書中で定義されるように少なくとも1つの付加アミノ酸にペプチド結合またはペプチド結合アナログを介して連結されるD−アミノ酸およびL−アミノ酸(立体異性体)の両方が含まれる。
下記の表1〜表2には、天然に存在するアミノ酸のすべて(表1)および非通常型アミノ酸または修飾型アミノ酸(表2)が示される。
組換え技術が典型的には、本発明のプロドメインポリペプチドを作製するために使用される。これは、これらの技術は、比較的長いポリペプチド(例えば、20アミノ酸よりも長いもの)およびその比較的多い量を作製するためにより良く適しているからである。そのような組換え技術が、Bitter他(1987)(Methods in Enzymol.、153:516〜544)、Studier他(1990)(Methods in Enzymol.、185:60〜89)、Brisson他(1984)(Nature、310:511〜514)、Takamatsu他(1987)(EMBO J.、6:307〜311)、Coruzzi他(1984)(EMBO J.、3:1671〜1680)、Brogli他(1984)(Science、224:838〜843)、Gurley他(1986)(Mol.Cell.Biol.、6:559〜565)、および、Weissbach&Weissbach(1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、NY、第VIII節、421頁〜463頁)によって記載される。
本発明のポリペプチドを、組換え技術を使用して製造するために、本発明のプロドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが核酸発現ベクターに連結される。この場合、核酸発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列を、宿主細胞における本発明のポリペプチドの構成的転写、組織特異的転写または誘導可能な転写を行わせるために好適なシス調節配列(例えば、プロモーター配列)の転写制御下に含む。
表現「単離されたポリヌクレオチド」は、RNA配列、相補的ポリヌクレオチド配列(cDNA)、ゲノムポリヌクレオチド配列および/または複合ポリヌクレオチド配列(例えば、上記の組合せ)の形態で単離および提供される一本鎖または二本鎖の核酸配列を示す。
本明細書中で使用される表現「相補的ポリヌクレオチド配列」は、逆転写酵素または任意の他のRNA依存性DNAポリメラーゼを使用してメッセンジャーRNAの逆転写から生じる配列を示す。そのような配列は続いて、DNA依存性DNAポリメラーゼを使用してインビボまたはインビトロで増幅することができる。
本明細書中で使用される表現「ゲノムポリヌクレオチド配列」は、染色体に由来する(染色体から単離される)配列を示し、従って、ゲノムポリヌクレオチド配列は染色体の隣接した一部分を表す。
本明細書中で使用される表現「複合ポリヌクレオチド配列」は、少なくとも一部分が相補的であり、かつ、少なくとも一部分がゲノムである配列を示す。複合配列は、本発明のポリペプチドをコードするために要求されるいくつかのエキソン配列、ならびに、エキソン配列の間に介在するいくつかのイントロン配列を含むことができる。イントロン配列は、他の遺伝子のものを含めて、任意の供給源のものが可能であり、典型的には、保存されたスプライシングシグナル配列を含む。そのようなイントロン配列はさらに、シス作用の発現調節エレメントを含むことができる。
本明細書中上記で述べられたように、本発明のポリヌクレオチド配列は、組換えポリペプチドの発現を可能にするために発現ベクター(すなわち、核酸構築物)に挿入される。本発明の発現ベクターは、このベクターを原核生物または真核生物または好ましくは両方における複製および組込みのために好適にするさらなる配列(例えば、シャトルベクター)を含むことができる。典型的なクローニング用ベクターは、転写開始配列および翻訳開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)、ならびに、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含有する。発現ベクターはまた、本発明の核標的化ペプチドに転写的に連結される他のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む場合があることが理解されるであろう。そのようなポリペプチドが本明細書中下記においてさらに記載される。
発現ベクターにおいて使用されるプロモーターは構成的または誘導可能である場合がある。組織特異的プロモーターもまた意図される。
様々な原核生物細胞または真核生物細胞を、本発明のペプチドを発現させるための宿主−発現システムとして使用することができる。これらには、微生物、例えば、ポリペプチドコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌;ポリペプチドコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換される酵母など;ポリペプチドコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)が感染させられるか、または、ポリペプチドコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミドなど)により形質転換される植物細胞システムが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のこの局面のこの実施形態によれば、本発明のプロドメインポリペプチドをコードする核酸配列が、発現レベルを発現系(例えば、細菌発現系)においてさらに改善するために変化させられる場合がある。したがって、プロドメインをコードするポリヌクレオチド配列が細菌のための好ましいコドン使用頻度に従って改変される場合がある。したがって、特定の系におけるプロドメインポリペプチドの増大した発現が、改変されたヌクレオチド配列または誘導体ヌクレオチド配列を利用することによって得られる場合がある。そのような配列改変の例には、関連系において典型的に見出されるG/C含有量により近づけるための変化させたG/C含有量、および、コドン最適化として一般に示される、関連系において典型的に見出されないコドンの除去が挙げられるが、これらに限定されない。
語句「コドン最適化」は、関連系におけるコドン使用頻度に近づける、構造遺伝子またはそのフラグメントにおける使用のための適切なDNAヌクレオチドの選択をいう。
本発明のプロドメインを発現させるために使用されることがあるポリヌクレオチド配列の例が配列番号11〜配列番号16において提供される。
本発明者らは、細菌発現系を使用した場合、細胞質ゾルにおいて発現され、封入体において発現されない組換えTACEプロドメインを作製することが可能であることを示している。このTACEプロドメインは可溶性であり、かつ、正しく折り畳まれ、その結果、さらなる折り畳み工程がその単離のために何ら要求されなかった。
本発明のポリヌクレオチドはまた、対象において直接に発現させられる場合があり(すなわち、インビボ遺伝子治療)、または、細胞系(自己または非自己)においてエクスビボ発現させられ、その後、対象に投与される場合があることが理解されるであろう。様々な遺伝子治療技術が本明細書中下記でさらに記載される。
(ポリペプチドをコードする)挿入されたコード配列の転写および翻訳のための必要なエレメントを含有すること以外に、本発明の発現構築物はまた、発現ペプチドの安定性、産生、精製、収量または活性を最適化するために操作される配列を含むことができる。
様々な方法を、本発明の発現ベクターを宿主細胞系に導入するために使用することができる。そのような方法が、一般には、Sambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Laboratory、New York(1989、1992);Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、Baltimore、Md.(1989);Chang他、Somatic Gene Therapy、CRC Press、Ann Arbor、Mich.(1995);Vega他、Gene Targeting、CRC Press、Ann Arbor Mich.(1995);Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses、Butterworths、Boston Mass.(1988);および、Gilboa他[Biotechniques 4(6):504〜512、1986]に記載され、そのような方法には、例えば、組換えウイルスベクターを用いた安定的トランスフェクションまたは一過性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションおよび感染が含まれる。加えて、陽性−陰性の選択法については米国特許第5464764号および同第5487992号を参照のこと。
形質転換された細胞が、多量の組換えポリペプチドの発現を可能にする効果的な条件のもとで培養される。効果的な培養条件には、タンパク質の産生を可能にする効果的な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が挙げられるが、これらに限定されない。効果的な培地は、細胞が、本発明の組換えポリペプチドを産生するために培養される任意の培地を示す。そのような培地には典型的には、同化可能な炭素源、窒素源およびリン酸源、ならびに、適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養分(例えば、ビタミンなど)を有する水溶液が含まれる。本発明の細胞は、従来の発酵用バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリ皿で培養することができる。培養を、組換え細胞に適切な温度、pHおよび酸素含有量において行うことができる。そのような培養条件は当業者の専門的知識の範囲内である。
産生のために使用されるベクターおよび宿主の系に依存して、得られる本発明のペプチドおよび/またはポリペプチドは組換え細胞内に留まり得るか、または、発酵培地に分泌され得るか、または、2つの細胞膜の間の空間(例えば、E.coliにおける細胞膜周辺腔など)に分泌され得るか、または、細胞膜もしくはウイルス膜の外側表面に保持され得るかのいずれかである。
培養での所定期間の後、組換えペプチドおよび/またはポリペプチドの回収が行われる。
本明細書中で使用されるとき、語句「組換えポリペプチドを回収する」は、ポリペプチドを含有する発酵培地全体を集めることを示し、分離または精製のさらなる工程を意味する必要はない。
したがって、本発明のプロドメインポリペプチドは、様々な標準的なタンパク質精製技術を使用して、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ろ過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシングおよび示差的可溶化など(これらに限定されない)を使用して精製することができる。
回収を容易にするために、発現したコード配列は、本発明のポリペプチドと、融合された切断可能な成分とをコードするように操作することができる。そのような融合タンパク質は、ポリペプチドがアフィニティークロマトグラフィーによって、例えば、切断可能な成分に対して特異的なカラムでの固定化によって容易に単離され得るように設計することができる。切断部位が、ポリペプチドと、切断可能な成分との間で操作される場合、ポリペプチドは、融合タンパク質をこの部位において特異的に切断する適切な酵素または薬剤による処理によってクロマトグラフィーカラムから遊離させることができる[例えば、Booth他、Immunol.Lett.、19:65〜70(1988);および、Gardella他、J.Biol.Chem.、265:15854〜15859(1990)を参照のこと]。
本発明の目的のための例示的な精製タグには、ポリヒスチジン、V5、myc、プロテインA、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)およびセルロース結合ドメイン(CDB)[Sassenfeld、1990、TIBTECH、8、88〜9]が含まれるが、これらに限定されない。CBD融合タンパク質の場合、プロドメインポリペプチドがポリサッカリダーゼ(セルラーゼ、キチナーゼおよびアミラーゼ、同様にまた、キシラナーゼおよびbeta.−1,4−グリカナーゼ)の基質結合領域に融合される。基質(例えば、セルロースなど)を含有する親和性マトリックスを、プロドメインポリペプチドを固定化するために用いることができる。プロドメインポリペプチドを、プロテアーゼ切断部位を使用してマトリックスから除くことができる。
プロテアーゼ部位と一緒での例示的なポリヒスチジンタグ配列が配列番号18において提供される。
ポリヒスチジンタグを含む例示的なプロドメインアミノ酸配列が配列番号17に示される。
本発明のポリペプチドは好ましくは、「実質的に純粋な」形態で回収される。
本明細書中で使用されるとき、語句「実質的に純粋な」は、本明細書中に記載される適用におけるタンパク質の効果的な使用を可能にする純度を示す。
本発明のいくつかの実施形態のプロドメインは、生物学的利用能を増大させるために発現後に化学的に改変される場合がある。
したがって、例えば、本発明では、プロドメインポリペプチドがポリマーに連結される改変が意図される。選択されるポリマーは通常、ただ1つの反応性基(例えば、アシル化のための活性エステル、または、アルキル化のためのアルデヒドなど)を有するように改変され、その結果、改変の程度が制御され得るようにされる。ポリマーの範囲には、ポリマーの混合物が含まれる。好ましくは、最終製造物調製物の治療的使用のためには、ポリマーは医薬的に許容可能であろう。
そのようなポリマーまたはその混合物が、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロースまたは他の炭水化物系ポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化されたポリオール(例えば、グリセロール)、および、ポリビニルアルコールからなる群から選択される場合がある。
さらにさらなる実施形態において、プロドメインポリペプチドは、PEG化、HES化CTP(C末端ペプチド)、アルブミンへの架橋、カプセル化、多糖による改変、および、多糖交代によって改変される。改変は、プロドメインポリペプチドにおけるどのアミノ酸残基に対してでも可能である。
1つの実施形態によれば、改変がプロドメインポリペプチドのN末端アミノ酸またはC末端アミノ酸に対してである。これは、直接的に、あるいは、N末端もしくはC末端に付加されるシステイン残基のチオール基、または、N末端もしくはC末端に付加されるリンカー(例えば、Ttdsなど)へのカップリングを介してそのどちらでも行われる場合がある。さらなる実施形態において、プロドメインポリペプチドのN末端またはC末端は、保護基がシステイン残基のN端側アミノ基にカップリングされるシステイン残基を含み、システインチオラート基が官能基(例えば、N−エチルマレイミド、PEG基、HES化CTPなど)により誘導体化される。
特定のタンパク質の性質がポリエチレングリコール(PEG)ポリマーの結合によって調節され得ることが広く知られており、この場合、ポリエチレングリコールはタンパク質の流体力学的容積を増大させ、かつ、それにより、腎臓ろ過によるそのクリアランスを遅くする(例えば、Clark他、J.Biol.Chem.、271:21969〜21977(1996)を参照のこと)。したがって、コアペプチド残基が、強化された治療的利益(例えば、半減期を生体内で延ばすことによる増大した効力など)を提供するためにPEG化され得ることが想定される。したがって、プロドメインポリペプチドをPEG化することにより、プロドメインポリペプチドの薬物動態学および薬力学が改善されるであろう。
様々なPEG化方法が文献において広く知られており、また、下記の参考文献(それらのそれぞれが参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される:Lu他、Int.J.Pept.Protein Res.、43:127〜38(1994);Lu他、Pept.Res.、6:140〜6(1993);Felix他、Int.J.Pept.Protein Res.、46:253〜64(1995);Gaertner他、Bioconjug.Chem.、7:38〜44(1996);Tsutsumi他、Thromb.Haemost.、77:168〜73(1997);Francis他、Int.J.Hematol.、68:1〜18(1998);Roberts他、J.Pharm.Sci.、87:1440〜45(1998);および、Tan他、Protein Expr.Purif.、12:45〜52(1998)。ポリエチレングリコールまたはPEGは、モノ−(C.sub.1〜10)アルコキシ−ポリエチレングリコールまたはアリールオキシ−ポリエチレングリコール(これらに限定されない)を含めて、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている形態のPEGのいずれをも包含することが意味される。好適なPEG成分には、例えば、40kDaのメトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアルデヒド(Dow、Midland、Mich.)、60kDaのメトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアルデヒド(Dow、Midland、Mich.)、40kDaのメトキシポリ(エチレングリコール)マレイミド−プロピオンアミド(Dow、Midland、Mich.)、31kDaのアルファ−メチル−w−(3−オキソプロポキシ),ポリオキシエチレン(NOF Corporation、Tokyo)、mPEG.sub.2−NHS−40k(Nektar)、mPEG2−MAL−40k(Nektar)、SUNBRIGHT GL2−400MA((PEG).sub.240kDa)(NOF Corporation、Tokyo)、SUNBRIGHT ME−200MA(PEG20kDa)(NOF Corporation、Tokyo)が含まれる。PEG基は一般に、プロドメインポリペプチド上の反応性基(例えば、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシル基またはチオール基)に対するPEG成分上の反応性基(例えば、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシル基またはチオール基)を介したアシル化、アミド化、チオエーテル化または還元的アルキル化によりプロドメインポリペプチドに結合させられる。
PEG分子は、プロドメインポリペプチドにおけるいずれか位置においていずれかのLys残基またはCys残基に対して共有結合により結合させられる場合がある。使用することができる他のアミノ酸がTyrおよびHisである。選択肢として、カルボン酸側鎖を有するアミノ酸もまた挙げられる。本明細書中に記載されるプロドメインポリペプチドは、N末端アミノ基を介してN末端におけるどのようなアミノ酸に対してでも直接にPEG化することができる。「リンカーアーム」が、PEG化を容易にするためにプロドメインポリペプチドに付加される場合がある。システインのチオール側鎖におけるPEG化が広範囲に報告されている(例えば、Caliceti&Veronese、Adv.Drug Deliv.Rev.、55:1261〜77(2003)を参照のこと)。システイン残基がプロドメインポリペプチドに存在しないならば、システイン残基を、置換を介して、または、システインをN末端アミノ酸に付加することによって導入することができる。他の選択肢には、チオールをポリペプチドに付加する試薬(例えば、トラウト試薬およびSATAなど)が含まれる。
特定の局面において、PEG分子は分岐しており、一方、他の局面において、PEG分子は線状である場合がある。特定の局面において、PEG分子は分子量が1kDa〜150kDaの間である。より具体的には、PEG分子は分子量が1kDa〜100kDaの間である。さらなる局面において、PEG分子は、5kDa、10kDa、20kDa、30kDa、40kDa、50kDaおよび60kDaから選択される。
プロドメインポリペプチドのPEG化のための有用な戦略が、共役連結を溶液中で形成することを介して、ペプチドおよびPEG成分(それぞれが、他方に対して相互に反応性である特別な機能性を有する)を組み合わせることからなる。プロドメインポリペプチドを本明細書中上記で記載されるような組換え手段によって容易に調製することができる。
1つの実施形態によれば、PEGが、プロドメインポリペプチドへの結合に先立って「事前に活性化される」。例えば、カルボキシル末端を有するPEGが、当該PEGをリシンおよびN末端に対してより反応性にする活性化のためにNHSエステルに変換される場合がある。
別の実施形態によれば、プロドメインポリペプチドが、特定の部位において、適切な官能基により「事前に活性化される」。プロドメインポリペプチドのPEGとのコンジュゲート化が水相または有機共溶媒において行われる場合があり、このコンジュゲート化を、SDS−PAGE、等電点フォーカシング(IEF)、SECおよび質量分析によって容易にモニターすることができる。PEG化されたプロドメインポリペプチドがその後、精製される。小さいPEGが限外ろ過によって除かれる場合がある。より大きいPEGが典型的には、アニオンクロマトグラフィー、カチオンクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製される。PEG化ポリペプチドの特徴づけが、分析的HPLC、アミノ酸分析、IEF、酵素活性の分析、電気泳動、PEG:タンパク質比の分析、レーザー脱離質量分析およびエレクトロスプレー質量分析によって行われる場合がある。
過剰なフリーPEGの除去が、カラム(Tricorn Empty High−Performance Column、GE Healthcare)に、POROS 50 HQ担体(Applied Biosystems)を詰め、その後で、カラムを平衡化緩衝液(25mM Tris−HCl緩衝液、pH8.2)により平衡化することによって行われる場合がある。PEG化プロドメインが、平衡化されたカラムに負荷され、その後、カラムが5CVの平衡化緩衝液により洗浄される。これらの条件のもとで、プロドメインがカラムに結合する。PEG化プロドメインが溶出緩衝液(0.3M NaCl、25mM Tris−HCl緩衝液、pH8.2)によって次工程において溶出される。この段階のピーク部がプールされ、短期間については2℃〜8℃で貯蔵される場合があり、または、長期間の貯蔵のために−20℃で凍結される場合がある。
本明細書中上記で述べられたように、本発明のポリヌクレオチドはまた、ポリヌクレオチドが標的細胞において翻訳される対象に直接に投与される場合がある(すなわち、遺伝子治療)。
用語「遺伝子治療」は、本願で使用する場合、対象の遺伝物質(例えばDNA又はRNA)を宿主中に移送して、遺伝的又は後天的な病気又は症状又は表現型を治療又は予防することを意味する。その対象の遺伝物質は、生体内で産生されることが要望されている産物(例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、機能性RNA、アンチセンスRNA)をコードしている。例えば、対象の遺伝物質は、治療のために価値のあるホルモン、受容体、酵素、ポリペプチド又はペプチドをコードできる。総説については、一般にテキストの「Gene Therapy」(Advanced in Pharmacology 40,Academic Press,1997)を参照されたい。
遺伝子治療は、二つの基本的な方法:(1)エクスビボ及び(2)生体内の遺伝子治療が発達してきた。エクスビボ遺伝子治療では、細胞を患者から取り出し、培養しながら生体外で処置する。一般に、機能性置換遺伝子が、遺伝子を送達する適切なベクター/方法(トランスフェクション、形質導入、相同組換えなど)及び必要な発現系によって細胞中に導入され、次いでその修飾された細胞を培養で増殖させて宿主/患者に戻す。これらの遺伝的に再移植された細胞は、そのトランスフェクトされた遺伝物質をその場で発現することが分かったのである。細胞は、対象に対して自己または非自己である場合がある。非自己細胞は、身体に投与されたときには免疫反応を誘導する可能性があるので、いくつかの取り組みが、非自己細胞を拒絶する可能性を軽減するために開発されている。これらには、レシピエントの免疫系を抑制すること、または、非自己細胞を移植前に、免疫隔離する半透過性膜でカプセル化することのどちらかが含まれる。
生体内の遺伝子治療では、標的細胞は被験者から取り出すことなく、移送すべき遺伝物質が患者内にある患者の器官の細胞に、その場で導入される。別の実施態様では、宿主の遺伝子に欠陥がある場合、その遺伝子は、その場で修復される(Culver,1998.(Abstract)Antisense DNA & RNA based therapeutics,February 1998,Coronado,CA)。
これらの遺伝学的に変化させた細胞は、トランスフェクトされた遺伝物質をその場で発現することが分かった。
特異性を与えるために、好ましくは、本発明のペプチドおよび/またはポリペプチドを発現させるために使用される核酸構築物は細胞特異的なプロモーター配列エレメントを含み、例えば、ガン特異的プロモーター(例えば、サバイビンプロモーター−Chen他、Cancer Gene Therapy、2004、第11巻(11月11日)、740頁〜747頁)などを含む。
遺伝子治療のために、核酸は典型的には、ウイルス性作用因による感染によって細胞に導入される。これは、より大きい効率をそれらの感染性に起因して得ることができるからである。そのうえ、ウイルスは非常に特殊化されており、典型的には、特定の細胞タイプにおいて感染し、伝播する。したがって、それらの天然の特異性を、ベクターをインビボあるいは組織内または細胞の混合培養において特定の細胞タイプに対して標的化するために使用することができる。ウイルスベクターはまた、受容体媒介事象を介して標的特異性を変化させるために、特異的な受容体またはリガンドにより改変することができる。
加えて、組換えウイルスベクターが、所望される核酸のインビボ発現のために有用である。これは、組換えウイルスベクターにより、側方感染および標的化特異性などの利点がもたらされるからである。側方感染は、例えば、レトロウイルスの生活環において固有的であり、1個の感染細胞が、出芽し、周りの細胞に感染する多くの子孫ビリオンを生じさせるプロセスである。その結果が、ほとんどが元のウイルス粒子によって最初に感染しなかった大きな面積が迅速に感染することである。これは、感染性病原体が娘子孫を介してのみ広がる垂直型の感染とは対照的である。側方に広がることができないウイルスベクターもまた作製することができる。所望される目的が、指定の遺伝子を局在化した数の標的化された細胞だけに導入することであるならば、この特徴は有用であり得る。
実施例1において例示されるように、本発明者らは、本発明のTACEプロドメインが、過敏性腸疾患を処置するために使用され得ることを示している。
過敏性腸疾患(IBD)は、頻度が増大し、患者を無能力化することがある腸の炎症および組織リモデリングによって特徴づけられる重篤な胃腸障害である。IBDの主要の形態、すなわち、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病は、腹部の痛み、下痢、直腸出血および発熱によって臨床的に特徴づけられる慢性の再発する状態である。
本発明者らは、TACEプロドメインが、他の炎症性障害を処置するために使用されることがあることを意図する。
したがって、本発明の別の局面によれば、炎症性疾患を処置する方法であって、TNF−α変換酵素(TACE)のプロドメインを含むポリペプチドで、前記TACEの触媒ドメインを欠き、かつ、該ポリペプチドをフリン分解に対して抵抗性にする、R58における改変を含み、かつ、TACEの活性をダウンレギュレーションすることができるポリペプチドの治療効果的な量を対象に投与し、それにより、前記炎症性疾患を処置することを含む方法が提供される。
本発明による好ましい個々の対象が、動物、例えば、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、霊長類)などであり、好ましくはヒトである。
下記は、本発明者らが、本明細書中に記載されるプロドメインにより処置することを意図する炎症性疾患の列挙である。
炎症性疾患−この疾患としては、慢性の炎症性疾患および急性の炎症性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
過敏症に関連する炎症性疾患
過敏症の例としては、I型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時過敏症、抗体媒介過敏症、免疫複合体媒介過敏症、Tリンパ球媒介過敏症およびDTHが挙げられるが、これらに限定されない。
I型過敏症または即時過敏症、例えば、喘息など。
II型過敏症としては、リウマチ様疾患、リウマチ様自己免疫疾患、慢性関節リウマチ(Krenn V.ら、Histol Histopathol 2000 Jul;15(3):791)、脊椎炎、強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら、Arthritis Res 2001;3(3):189)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(Erikson J.ら、Immunol Res 1998;17(1−2):49)、硬化症、全身性硬化症(Renaudineau Y.ら、Clin Diagn Lab Immunol.1999 Mar;6(2):156);Chan OT.ら、Immunol Rev 1999 Jun;169:107)、腺疾患、腺の自己免疫疾患、膵臓の自己免疫疾患、糖尿病、I型糖尿病(Zimmet P.Diabetes Res Clin Pract 1996 Oct;34 Suppl:S125)、甲状腺疾患、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス病(Orgiazzi J.Endocrinol Metab Clin North Am 2000 Jun;29(2):339)、甲状腺炎、自発性自己免疫性甲状腺炎(Braley−Mullen H.およびYu S、J Immunol 2000 Dec 15;165(12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら、Nippon Rinsho 1999 Aug;57(8):1810)、粘液水腫、特発性粘液水腫(Mitsuma T.Nippon Rinsho.1999 Aug;57(8):1759)、自己免疫性生殖疾患、卵巣疾患、卵巣の自己免疫性(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、自己免疫性抗***不妊症(Diekman AB.ら、Am J Reprod Immunol.2000 Mar;43(3):134)、反復した胎児消失(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107−9)、神経変性疾患、神経学的疾患、神経学的自己免疫疾患、多発性硬化症(Cross AH.ら、J Neuroimmunol 2001 Jan 1;112(1−2):1)、アルツハイマー病(Oron L.ら、J Neural Transm Suppl.1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ.およびKraig E、Int Rev Immunol 1999;18(1−2):83)、運動神経障害(Kornberg AJ.J Clin Neurosci.2000 May;7(3):191)、ギラン・バレー症候群、神経障害および自己免疫性神経障害(Kusunoki S.、Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):234)、筋無力症疾患、ランバード・イートン筋無力症症候群(Takamori M.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):204)、腫瘍随伴性神経学的疾患、小脳萎縮症、腫瘍随伴性小脳萎縮症、腫瘍非随伴性スティッフマン症候群、小脳萎縮症、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シドナム舞踏病、ジル・ド・ラ・ツレット症候群、多発性内分泌腺症、自己免疫性多発性内分泌腺症(Antoine JC.およびHonnorat J.Rev Neurol(Paris)2000 Jan;156(1):23)、神経障害、異常免疫性神経障害(Nobile−Orazio E.ら、Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419);ニューロミオトニー、後天性ニューロミオトニー、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら、Ann N Y Acad Sci.1998 May 13;841:482)、心臓血管疾患、心臓血管の自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化(Matsuura E.ら、Lupus.1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O.Lupus.1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107−9)、肉芽腫症、ヴェーゲナー肉芽腫症、動脈炎、高安動脈炎および川崎症候群(Praprotnik S.ら、Wien Klin Wochenschr 2000 Aug 25;112(15−16):660);抗第VIII因子の自己免疫疾患(Lacroix−Desmazes S.ら、Semin Thromb Hemost.2000;26(2):157);血管炎、壊死性小血管血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、糸球体腎炎、少免疫性巣状壊死性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎(Noel LH.Ann Med Interne(Paris).2000 May;151(3):178);抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら、J Clin Apheresis、1999;14(4):171);心不全、心不全におけるアゴニスト様β−アドレナリン作動性受容体抗体(Wallukat G.ら、Am J Cardiol、1999 Jun 17;83(12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F.Ann Ital Med Int.1999 Apr−Jun;14(2):114);溶血性貧血、自己免疫性溶血性貧血(Efremov DG.ら、Leuk Lymphoma 1998 Jan;28(3−4):285)、胃腸疾患、胃腸管の自己免疫疾患、腸疾患、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら、Gastroenterol Hepatol.2000 Jan;23(1):16)、セリアック病(Landau YE.およびShoenfeld Y.Harefuah 2000 Jan 16;138(2):122)、筋組織の自己免疫疾患、筋炎、自己免疫性筋炎、シェーグレン症候群(Feist E.ら、Int Arch Allergy Immunol 2000 Sep;123(1):92);平滑筋の自己免疫疾患(Zauli D.ら、Biomed Pharmacother 1999 Jun;53(5−6):234)、肝疾患、肝臓の自己免疫疾患、自己免疫性肝炎(Manns MP.J Hepatol 2000 Aug;33(2):326)および原発性胆汁性肝硬変(Strassburg CP.ら、Eur J Gastroenterol Hepatol、1999 Jun;11(6):595)が挙げられるが、これらに限定されない。
IV型過敏症またはT細胞媒介過敏症としては、リウマチ様疾患、慢性関節リウマチ(Tisch R、McDevitt HO.Proc Natl Acad Sci USA 1994 Jan 18;91(2):437)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(Datta SK.、Lupus 1998;7(9):591)、腺疾患、腺の自己免疫疾患、膵臓疾患、膵臓の自己免疫疾患、I型糖尿病(Castano L.およびEisenbarth GS.Ann.Rev.Immunol.8:647)、甲状腺疾患、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス病(Sakata S.ら、Mol Cell Endocrinol 1993 Mar;92(1):77)、卵巣疾患(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、前立腺炎、自己免疫性前立腺炎(Alexander RB.ら、Urology、1997 Dec;50(6):893)、多腺性症候群、自己免疫性多腺性症候群、I型自己免疫性多腺性症候群(Hara T.ら、Blood、1991 Mar 1;77(5):1127)、神経学的疾患、自己免疫性神経学的疾患、多発性硬化症、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら、J Neurol Neurosurg Psychiatry、1994 May;57(5):544)、重症筋無力症(Oshima M.ら、Eur J Immunol 1990 Dec;20(12):2563)、スティッフマン症候群(Hiemstra HS.ら、Proc Natl Acad Sci USA 2001 Mar 27;98(7):3988)、心臓血管疾患、シャガス病における心臓の自己免疫性(Cunha−Neto E.ら、J Clin Invest 1996 Oct 15;98(8):1709)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(Semple JW.ら、Blood 1996 May 15;87(10):4245)、抗ヘルパーTリンパ球自己免疫性(Caporossi AP.ら、Viral Immunol 1998;11(1):9)、溶血性貧血(Sallah S.ら、Ann Hematol、1997 Mar;74(3):139)、肝疾患、肝臓の自己免疫疾患、肝炎、慢性活動性肝炎(Franco A.ら、Clin Immunol Immunopathol 1990 Mar;54(3):382)、胆汁性肝硬変、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE.、Clin Sci(Colch)1996 Nov;91(5):551)、腎疾患、腎臓の自己免疫疾患、腎炎、間質性腎炎(Kelly CJ.J Am Soc Nephrol 1990 Aug;1(2):140)、結合組織疾患、耳疾患、自己免疫性結合組織疾患、自己免疫性耳疾患(Yoo TJ.ら、Cell Immunol 1994 Aug;157(1):249)、内耳の疾患(Gloddek B.ら、Ann N Y Acad Sci 1997 Dec 29;830:266)、皮膚疾患、皮膚病、真皮の疾患、水疱性皮膚疾患、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡および落葉状天疱瘡が挙げられるが、これらに限定されない。
遅発型過敏症の例としては、接触性皮膚炎および薬疹が挙げられるが、これらに限定されない。
Tリンパ球媒介過敏症型の例としては、ヘルパーTリンパ球および細胞障害性Tリンパ球が挙げられるが、これらに限定されない。
ヘルパーTリンパ球媒介過敏症の例としては、Th1リンパ球媒介過敏症およびTh2リンパ球媒介過敏症が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫疾患
自己免疫疾患としては、心臓血管疾患、リウマチ様疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経学的疾患、筋疾患、腎疾患、生殖関連疾患、結合組織疾患および全身性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫性による心臓血管疾患の例としては、アテローム性動脈硬化(Matsuura E.ら、Lupus.1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O.Lupus.1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107〜9)、ヴェーゲナー肉芽腫症、高安動脈炎および川崎症候群(Praprotnik S.ら、Wien Klin Wochenschr 2000 Aug 25;112(15−16):660)、抗第VIII因子による自己免疫疾患(Lacroix−Desmazes S.ら、Semin Thromb Hemost.2000;26(2):157)、壊死性小血管血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、少免疫性巣状壊死性糸球体腎炎および半月体形成性糸球体腎炎(Noel LH.Ann Med Interne(Paris).2000 May;151(3):178)、抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら、J Clin Apheresis 1999;14(4):171)、抗体誘導の心不全(Wallukat G.ら、Am J Cardiol.1999 Jun 17;83(12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F.Ann Ital Med Int.1999 Apr−Jun;14(2):114;Semple JW.ら、Blood 1996 May 15;87(10):4245)、自己免疫性溶血性貧血(Efremov DG.ら、Leuk Lymphoma 1998 Jan;28(3−4):285;Sallah S.ら、Ann Hematol 1997 Mar;74(3):139)、シャガス病における心臓の自己免疫性(Cunha−Neto E.ら、J Clin Invest 1996 Oct 15;98(8):1709)、および、抗ヘルパーTリンパ球による自己免疫性(Caporossi AP.ら、Viral Immunol、1998;11(1):9)が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫によるリウマチ様疾患の例としては、慢性関節リウマチ(Krenn V.ら、Histol Histopathol 2000 Jul;15(3):791;Tisch R、McDevitt HO.Proc Natl Acad Sci units S A 1994 Jan 18;91(2):437)および強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら、Arthritis Res 2001;3(3):189)が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫による腺疾患の例としては、膵臓疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーヴス病、甲状腺炎、突発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣の自己免疫性、自己免疫性抗***不妊症、自己免疫性前立腺炎およびI型自己免疫性多腺性症候群が挙げられるが、これらに限定されない。自己免疫疾患としては、膵臓の自己免疫疾患、I型糖尿病(Castano L.およびEisenbarth GS.Ann.Rev.Immunol.8:647;Zimmet P.Diabetes Res Clin Pract 1996 Oct;34 Suppl:S125)、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス病(Orgiazzi J.Endocrinol Metab Clin North Am 2000 Jun;29(2):339;Sakata S.ら、Mol Cell Endocrinol 1993 Mar;92(1):77)、突発性自己免疫性甲状腺炎(Braley−Mullen H.およびYu S、J Immunol 2000 Dec 15;165(12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら、Nippon Rinsho 1999 Aug;57(8):1810)、特発性粘液水腫(Mitsuma T.Nippon Rinsho.1999 Aug;57(8):1759)、卵巣の自己免疫性(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、自己免疫性抗***不妊症(Diekman AB.ら、Am J Reprod Immunol.2000 Mar;43(3):134)、自己免疫性前立腺炎(Alexander RB.ら、Urology 1997 Dec;50(6):893)およびI型自己免疫性多腺性症候群(Hara T.ら、Blood.1991 Mar 1;77(5):1127)が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫による胃腸疾患の例には、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら、Gastroenterol Hepatol.2000 Jan;23(1):16)、セリアック病(Landau YE.およびShoenfeld Y.Harefuah 2000 Jan 16;138(2):122)、大腸炎、回腸炎およびクローン病が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫による皮膚疾患の例としては、自己免疫による水疱性の皮膚疾患(例えば、尋常性天疱瘡、水疱性天疱瘡および落葉状天疱瘡など、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫による肝疾患の例としては、肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎(Franco A.ら、Clin Immunol Immunopathol 1990 Mar;54(3):382)、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE.Clin Sci(Colch) 1996 Nov;91(5):551;Strassburg CP.ら、Eur J Gastroenterol Hepatol.1999 Jun;11(6):595)および自己免疫性肝炎(Manns MP.J Hepatol 2000 Aug;33(2):326)が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫による神経学的疾患の例としては、多発性硬化症(Cross AH.ら、J Neuroimmunol 2001 Jan 1;112(1−2):1)、アルツハイマー病(Oron L.ら、J Neural Transm Suppl.1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ.およびKraig E、Int Rev Immunol 1999;18(1−2):83;Oshima M.ら、Eur J Immunol 1990 Dec;20(12):2563)、神経障害、運動神経障害(Kornberg AJ.J Clin Neurosci.2000 May;7(3):191);ギラン・バレー症候群および自己免疫性神経障害(Kusunoki S.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):234)、筋無力症、ランバード・イートン筋無力症症候群(Takamori M.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):204);腫瘍随伴性神経学的疾患、小脳萎縮症、腫瘍随伴性の小脳萎縮症およびスティッフマン症候群(Hiemstra HS.ら、Proc Natl Acad Sci units S A 2001 Mar 27;98(7):3988);腫瘍非随伴性スティッフマン症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シドナム舞踏病、ジル・ド・ラ・ツレット症候群および自己免疫性多発性内分泌腺症(Antoine JC.およびHonnorat J.Rev Neurol(Paris)2000 Jan;156(1):23);異常免疫による神経障害(Nobile−Orazio E.ら、Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419);後天性ニューロミオトニー、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら、Ann N Y Acad Sci.1998 May 13;841:482)、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら、J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994 May;57(5):544)および神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫による筋疾患の例としては、筋炎、自己免疫性筋炎および原発性シェーグレン症候群(Feist E.ら、Int Arch Allergy Immunol 2000 Sep;123(1):92)、および、平滑筋の自己免疫疾患(Zauli D.ら、Biomed Pharmacother 1999 Jun;53(5−6):234)が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫による腎疾患の例としては、腎炎、および、自己免疫性間質性腎炎(Kelly CJ.J Am Soc Nephrol 1990 Aug;1(2):140)が挙げられるが、これらに限定されない。
生殖に関連する自己免疫疾患の例としては、反復した胎児消失(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107〜9)が挙げられるが、これに限定されない。
自己免疫による結合組織疾患の例としては、耳の疾患、自己免疫による耳の疾患(Yoo TJ.ら、Cell Immunol 1994 Aug;157(1):249)、および、内耳の自己免疫疾患(Gloddek B.ら、Ann N Y Acad Sci 1997 Dec 29;830:266)が挙げられるが、これらに限定されない。
自己免疫全身性疾患の例としては、全身性エリテマトーデス(Erikson J.ら、Immunol Res 1998;17(1−2):49)および全身性硬化症(Renaudineau Y.ら、Clin Diagn Lab Immunol.1999 Mar;6(2):156;Chan OT.ら、Immunol Rev 1999 Jun;169:107)が挙げられるが、これらに限定されない。
感染性疾患
感染性疾患の例としては、慢性の感染性疾患、亜急性の感染性疾患、急性の感染性疾患、ウイルス疾患、細菌疾患、原虫疾患、寄生虫疾患、真菌疾患、マイコプラズマ疾患およびプリオン疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
移植片拒絶疾患
移植片の移植に関連する疾患の例としては、移植片拒絶、慢性の移植片拒絶、亜急性の移植片拒絶、超急性の移植片拒絶、急性の移植片拒絶および移植片対宿主病が挙げられるが、これらに限定されない。
アレルギー性疾患
アレルギー性疾患の例としては、喘息、皮疹、じんま疹、花粉アレルギー、ほこり・ダニアレルギー、毒液アレルギー、化粧品アレルギー、ラテックスアレルギー、化学物質アレルギー、薬物アレルギー、昆虫咬傷アレルギー、動物鱗屑アレルギー、刺毛植物アレルギー、ツタウルシアレルギーおよび食物アレルギーが挙げられるが、これらに限定されない。
癌性疾患
癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。癌性疾患の具体的な例としては、骨髄性白血病、例えば、慢性骨髄性白血病、成熟に伴う急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、増大した好塩基球を伴う急性非リンパ球性白血病、急性単球性白血球、好酸球増加症を伴う急性骨髄単球性白血病など;悪性リンパ腫、例えば、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫など;リンパ性白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病など;骨髄増殖性疾患、例えば、固形腫瘍、良性髄膜腫、唾液腺の混合腫瘍、慢性腺腫など;腺癌、例えば、小細胞肺癌、腎臓癌、子宮癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、結腸癌、肉腫、脂肪肉腫、粘液様肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫(肺胞)、骨外性粘液様軟骨肉腫、ユーイング肉腫などが挙げられ、他の癌には、精巣および卵巣の未分化胚細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、悪性メラノーマ、中皮腫、乳癌、前立腺癌および卵巣癌が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中に記載されるプロドメインにより処置されることがあるさらなる意図される疾患には、下記の疾患が含まれる:急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(APS)、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性肝炎、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性じんま疹、軸索性&ニューロン性のニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、クローン病、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト病、本態性混合型クリオグロブリン血症、脱髄性ニューロパチー、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、実験的アレルギー性脳脊髄炎、エバンス症候群、線維筋痛症、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)(以前はヴェーゲナー肉芽腫症と呼ばれた)、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫調節性リポタンパク質、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎症候群、ランバート・イートン症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA病(LAD)、狼瘡(SLE)、ライム病、慢性メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック)、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、PANDAS(溶連菌に関連した小児自己免疫性精神神経障害)、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、扁平部炎(周辺部ブドウ膜炎)、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型、II型&III型の自己免疫性多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、レイノー現象、反応性関節炎、反射***感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、***&精巣の自己免疫、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患(UCTD)、ブドウ膜炎、血管炎、小胞水疱性皮膚症、白斑、ヴェーゲナー肉芽腫症(現在では多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と呼ばれる)。
本発明のTACEプロドメインまたは該TACEプロドメインをコードする発現構築物は、処置されている対象(すなわち、哺乳動物)にそれ自体で(例えば、精製されて、または、発現系の一部として直接に)与えることができ、または、本発明のTACEプロドメインを含む医薬組成物において与えることができる。本明細書中で使用される場合、「医薬組成物」は、1つまたは複数の本明細書中に記載される有効成分と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適な担体および賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、化合物の生物への投与を容易にすることである。
本明細書中において、用語「有効成分(活性成分)」は、生物学的効果を説明することができる本発明の組換えTACEプロドメイン(またはそれをコードするポリヌクレオチド)を示す。
本明細書中以降、表現「生理学的に許容され得る担体」および表現「医薬的に許容され得る担体」は、交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げない担体または希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に包含される。
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
好適な投与抹消経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達、または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれることができる。
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
従って、本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得る担体を使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合しうる緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩緩衝液など)において配合されることができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのような担体は、医薬組成物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。色素または顔料は、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられることができる。
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁物は、適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製されることができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療有効量」は、処置されている対象の障害(例えば、虚血)の症状を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(核酸構築物)の量を意味する。
治療有効量の決定は、特に本明細書中に与えられた詳細な開示に鑑みて、十分に当業者の能力の範囲内である。
本発明の方法において使用されるいかなる調製物についても、投与量または治療有効量は、生体外および細胞培養アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、所望の濃度または力価を達成するために動物モデルにおいて決定されることができ、そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、生体外、細胞培養物、または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
投薬量および投薬間隔を、生物学的な効果を誘導または抑制するために十分である活性な成分の血漿または脳中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。検出アッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行われることができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するだろう。
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、米国食品医薬品局(FDA)承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパック)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局(FDA)によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用担体に配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上でさらに詳述されたように、示された症状を処置するために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique」、Freshney,Wiley−Liss,N.Y.(1994)、第3版;「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
炎症性腸疾患モデルにおけるTACEプロドメインの治療効果
材料および方法
TACEプロドメイン構築物
pET28 TACEプロドメインの構築を、触媒ドメインをpET28 pro−cat TACE構築物から除くことによって行った。pET28 pro−catは、E.coliにおけるコドン使用頻度のために作製される合成遺伝子である。これを、下記のプライマーを用いてpET28−TevHのKpnI−BamHIにクローン化した:
sTACEKpnIF−TCACGGTACCGACCCGGGCTTTGGCCCG(配列番号1)
sTACEBamHIR−GCTCGGATCCTCAAACTTTGTTGCTACGTTCCTGAA(配列番号2)
触媒ドメインの除去を、下記の2つのプライマーを使用してインバースPCRによって行った:
DelCatF−TGAGGATCCGAATTCGAGCTCCG(5’がリン酸化される;配列番号3)
DelCatR−ACGTTTCACACGATGCACCAGTTC(配列番号4)。
反応およびDpnI処理の後、線状のPCR生成物を形質転換に先立って連結した。プロTACEの配列は配列番号5に示される通りである。
TACEプロドメインの発現および精製
E.coli BL21(DE3)のエレクトロコンピテント細胞を、対応するTACEプロドメインプラスミドにより形質転換し、30μg/mlのカナマイシンを含有するLB平板に置床した。37℃での一晩のインキュベーションの後、細胞を30μg/mlのカナマイシンとともに1リットルのLBに再懸濁した。細胞を37℃で成長させ、0.6の光学密度で200μMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドにより誘導し、15℃での一晩の誘導の後で集めた。細胞ペレットを、50mM Tris(pH8)、300mM NaCl、20mMイミダゾール、0.1mg/mlのリゾチーム、1μg/mlのDNAseおよび1錠の阻害剤プロテアーゼカクテルとともに再懸濁し、その後、細胞ペレットを超音波処理し、4℃で45分間、15000rpmで遠心分離した。上清を5mlのNi+2カラムに加えた。カラムを、50mM Tris(pH8)、300mM NaClおよび20mMイミダゾールにより洗浄した。タンパク質を、50mM Tris(pH8)、300mM NaClおよび250mMイミダゾールにより溶出した。溶出されたタンパク質を、4℃で一晩、50mM Tris(pH8)に対して透析し、HiTrap Q HPカラムに加えた。カラムを、50mM Tris(pH8)により洗浄し、溶出を、1MのNaClを含有する同じ緩衝液に対するグラジエントを用いて行った。分画物を集め、12%SDS PAGEにおいて分析した。TACEプロドメインを含有する画分を、10000のMWカットオフを有するVivaspinによって濃縮して、所望される濃度にした。この構築物におけるプロドメインの発現は、以前の報告[Gonzales,P.E.他、J Biol Chem、2004、279(30):p.31638〜45;Li他、Int J Mol Sci、2009(12月)、10(12):5442〜5454](この場合、発現が封入体において行われ、続いて、リフォールディング工程が行われた)とは対照的に、生来的な可溶性形態である。リフォールディングされたTACEプロドメインの以前の変化体は、リフォールディング後、0.09〜0.14mg/mlよりも高い濃度で存在することができず、これに対して、この可溶性プロドメインは動物研究目的のためのより高い濃度に濃縮することができた。
活性アッセイ、TACEプロドメインによる阻害
触媒活性を、増大する蛍光強度を放射=340および励起=400においてモニターして、37℃で、TACEの触媒ドメインによる蛍光発生基質(Mca−PLAGAV−Dpa−RSSSR)の加水分解プロセシング、ならびに、MMP9、MMP7およびMT1−MMPの触媒ドメインによる蛍光発生基質(Mca−PLGL−Dpa−AR)の加水分解プロセシングによって試験した。反応を、50mM Tris(pH8)、150mM NaCl、5μM ZnCl2および0.05%Brij−35を含有する蛍光発生緩衝液において行い、酵素濃度は下記の通りであった:10nMのTACE、1nMのMMP9、10nMのMMP7および5nMのMT1−MMP。TACEプロドメインによる阻害アッセイを、37℃での30分間のプレインキュベーションの後、プロドメインの上昇する濃度で行った。
細胞型アッセイにおける阻害
初代マクロファージをBALB/cマウスにおけるチオグリコラート注射の4日後の腹膜から抽出し、96ウエルにおいてウエルあたり50000個の細胞を、血清を含まないDMEMにおいて播種した。細胞をDMEM培地において100ngのLPSおよび種々の濃度のTACEプロドメインまたは20mMのTAPIとともに3時間インキュベーションし、TNF−αをThermoマウスTNF−αELISAキットにより測定した。ヒトTNF−αにより安定的にトランスフェクションされた1000個のCHO細胞を96ウエルにおいて一晩播種し、述べられた濃度のTACEプロドメインおよびTAPIと2時間にわたってプレインキュベーションし、その後、培地を洗い流し、同じ物質を含有する新鮮な培地により取り換えた。培地を4時間後に集め、TNF−αをThermoヒトTNF−αELISAキットにより測定した。
TNBS大腸炎の誘導およびTACEプロドメインによる処置
TNBS大腸炎を、記載の通り[2]、メスのbalb/cマウス(8週齢〜10週齢)において誘導し、コントロールのマウスは50%エタノールだけを受けた。TACEプロドメインを、0日目から開始して、1mg/kgおよび4mg/kgで7日間にわたって毎日、静脈内注射した(TNBS投与)。陰性コントロールとして、マウスをビヒクルPBSにより処置し、陽性コントロールをDexaにより処置した。それぞれの処置群が10匹のマウスを含有した。TNBS投与後7日での全体的な結腸損傷の肉眼的スコアづけをReuter他[3]に従って盲検様式で採点した。顕微鏡的スコアづけ:結腸の近位部分、中間部分および遠位部分を10%リン酸塩緩衝化ホルマリンにおいて固定処理した。パラフィン包埋切片をヘマトキシリンおよびエオシンにより染色した。組織学的損傷および炎症の程度をElson他[4]に従って盲検様式で採点した。すべての動物研究がWeizmann動物管理使用委員会によって承認された。
新鮮な組織の光学的画像化
TACEプロドメインを、製造者の説明書に従って、AnaTag Hilyte Fluor 750(AnaSpec)にコンジュゲート化した。TNBS大腸炎が誘導されたマウスに、1.5nmolのTACEプロドメイン−HiLyte Fluor 750(マウスあたり4.5nmol相当のHiLyte Fluor 750)または4.5nmolのHiLyte Fluor 750のみを尾静脈経由で注射した。1匹のTNBS処置マウスには注射されず、これをブランクコントロールとして使用した。1つのマウス群を、蛍光性マーカータグ化TACEプロドメインおよび蛍光性マーカーのみの静脈内注射の2時間後に屠殺し、他のマウス群を10時間後に屠殺した。解剖された組織(心臓、肺、腎臓、肝臓、胃、脾臓、腸、結腸)を直ちに画像化した。それぞれの組織サンプルの平均蛍光強度を、ブランクマウスからの対応する組織の平均蛍光強度を差し引くことによって得た。心臓における蛍光強度を使用して、血液における蛍光強度を反映させた。蛍光の結腸対心臓比を計算した。蛍光画像化を、IVIS(IVIS(登録商標)100/XFO−12、Xenogen Corp.、Alameda、CA、米国)を用いて行った。近赤外蛍光(光子数/秒の単位で)を、710/50nmおよび800/75nmのフィルターセットを励起および放射のためにそれぞれ使用して、1秒の積算時間により検出した。
結果
TACEに対するTACEプロドメインの選択性を調べるために、MMPファミリーの種々のメンバーのインビトロ阻害活性を、蛍光発生基質の切断をモニターすることによって試験した。TACE、MMP7、MT1−MMPおよびMMP9の触媒ドメインは、類似するトポロジーを互いに有しており(図3)、しかしながら、TACEプロドメインを使用する阻害研究では、TACEに対する選択的阻害が示される。TACEに対するTACEプロドメイン阻害のIC50値が約119nMであり、これに対して、MMP9に対しては40倍より大きく、MMP7は80倍より大きく、MT1−MMPの場合には、決定することができなかった(図6)。この結果は、活性なZn(II)の金属キレート化のほかに、阻害はまた、TACE触媒ドメインに対して最も適合し得るTACEプロドメインにおいて示される特異的なタンパク質−タンパク質阻害を伴ったことを示している。
TNF−αが活性化マクロファージによって主に産生され、だが、他の細胞タイプも同様に、TNF−αを産生することができる。最初に、TACEプロドメインの阻害活性を、2つのタイプの細胞株を使用して、すなわち、ヒトTNF−αにより安定的にトランスフェクションされたCHO細胞、および、balb/cマウスから集められた初代マクロファージを使用して細胞型アッセイにおいて試験した。TACEプロドメインは阻害性影響をCHO細胞において用量依存的様式で示した。5μMの濃度は、非処理と比較した場合、TNF−αの分泌を5分の1に低下させた。さらに、有意な影響が0.3125μMもの低い濃度において何ら見出されなかった(図7A)。1μg/mlのLPSによる刺激が、初代マクロファージ細胞におけるTNF−α分泌のために要求される。この刺激により、休止細胞と比較して、TNF−αにおける50倍〜60倍の増大が引き起こされる。TACEプロドメインによる処置はTNF−α分泌を最大濃度(1μM)において6倍〜7倍妨げた。この影響が、プロドメインのレベルが低くなるにつれて低下した。0.25μMでは、TNF−α分泌における低下が何ら見出されなかった(図7B)。
TACEプロドメインの治療的可能性を自己免疫疾患において評価するために、TNBS/エタノールの投与によって誘導される炎症性腸疾患マウスモデルを使用した。TNBSは結腸の自己のタンパク質または微生物叢のタンパク質をハプテン化し、これにより、これらのタンパク質を宿主免疫系に対して免疫原性にしていると考えられる。このモデルは、Tヘルパー細胞依存的な粘膜免疫応答を研究するために有用である。TNBSの直腸内投与に供されるマウスは、予想された症状(例えば、血性下痢および16%までの重度の体重減少など)を伴う重症疾患を発症させ、40%の死亡率をもたらした(図8A、図8B)。TACEプロドメインの1mg/kgおよび4mg/kgの毎日の注射により処置されるマウスは20%および10%のより低い死亡率をそれぞれ示し、また、15%〜14%のより少ない体重減少を示した(図8A、図8B)。プロドメインの効力はまた、肉眼的スコアおよび組織学的スコアにおける改善により明らかであった(図8C、図8D)。TACEプロドメイン処置のマウスは、より長い結腸長さ、固形便、および、より少ない病変部を示した(図8E)。そのうえ、この処置はまた、PBSコントロールにおいて見られるような、マクロファージおよび免疫細胞の結腸内腔への広範囲にわたる浸潤を防止した(図8F)。全体として、これらの結果は、阻害性のTACEプロドメインがかなりの効力をTヘルパー細胞依存的なIBD疾患状態において有することを示している。このことはおそらく、炎症病巣部における分泌されたTNF−αの阻止が炎症プロセスの発達を停止させることによって引き起こされる。
TACEプロドメインが炎症結腸に達するかどうかを研究するために、新鮮な組織の蛍光画像化を、HiLyte Fluor 750により標識されたプロドメインを使用して行った。図9は、プロドメインが、結腸に沿って限局性斑点で突き止められてTNBS処置マウスの結腸において、静脈内投与後10時間から検出できたことを明らかにする(図9A、図9B)。蛍光性色素自体もまた結腸において検出することができ、このことは、近年では高分解能MRI研究によって示される、大腸炎に伴う炎症結腸の大きい血管系透過性によって説明することができる。蛍光性色素によるコントロール実験(この場合、色素が結腸中に拡散した)とは対照的に、蛍光標識されたプロドメインの著しい蓄積が限局性炎症様斑点において投与後10時間で認められた(図9B)。
このことから、プロドメインが、病変領域において、特異性を活性化免疫細胞に対して明らかにすることが示唆される。結腸/心臓比は、投与後の2時間および10時間における4倍および16倍のプロドメインの特異的な蓄積をそれぞれ示している。他方で、蛍光性色素のみが注射されたときには、変化がほとんど検出されなかった(図9C)。
実施例2
TACEプロドメインの改変
フリン(セリンプロテアーゼ)は、TACEプロドメインを細胞内で切断することを担う主要な転換酵素である。TACEプロドメインは、フリン様セリンプロテアーゼの認識のための2つの異なる配列を有する。第1のものが、プロドメインと触媒ドメインとの間にある古典的なフリン部位のR211VKR214/R215である。第2の切断部位が、本発明者らによって発見されたものであり、非標準的なR56KR58/D59であり、これは、昆虫細胞発現系でのTACE触媒ドメインの精製の期間中に生成物の1つとしてHoth他(2007)によって認められたものである。この第2の切断部位は、明確に定義された最小のフリンコンセンサス部位、すなわち、Arg−X−X−Arg/X[Molloy,S.S.他、J.Biol.Chem.、1992、267、16396]に似ていない。
Nakayama,K.[Biochem J、1997、327(Pt 3)、625]によれば、フリン認識のための他の要件として、下記が挙げられる:
(i)P1の位置において、Argが必須である;
(ii)P1のArgに加えて、P2、P4およびP6における3つの残基のうちの少なくとも2つが、効率的な切断のために塩基性であることが要求される;
(iii)P’1の位置において、疎水性側鎖を有するアミノ酸は適していない。
R56KR58/D59の部位は、ArgをP1位に有することを除いて、塩基性要件に適合していない。ArgがP2位に存在せず(Lys)、P4位に存在せず(Val)、かつ、P6位に存在せず(His)(HSVRKR/D)、このことがこの部位を非標準的なフリン部位にしている。
TACEプロドメインの終わりが、プロドメインを触媒ドメインから区別するC末端境界部位のR211VKR214/R215である。TACEプロドメインを安定化するために、本発明者らは、プロテアーゼによるプロセシングを妨げるようにR56KR58/D59部位を変異させている。変異が、アルギニン58をアラニンに変えることによって挿入された:すなわち、pro−R58A(配列番号6に示されるアミノ酸配列、配列番号12に示されるポリヌクレオチド配列)。
pr−R58Aが実際に、フリンによる切断に対して抵抗性であるかどうかを試験するために、精製されたpro−R58Aおよびpro−WTをフリンとインキュベーションした。pro−WTのみがフリンによってプロセシングされ、これにより、R56KR58/D59での切断の後におけるD58〜R214に対応する約17kDaのより小さいフラグメントが生じ、これに対して、pro−R58A変異体はフリンによって切断されなかった(図10A)。pro−R58A変異体は、WTと類似する効率でTACE触媒活性を阻害し、このことは、この変異体が適正に折り畳まれ、完全に機能的であることを示している(図10B)。
抗体のFc領域は、Fc受容体および他の免疫分子(例えば、補体タンパク質など)に結合することによって適正な免疫応答を助ける。Fc領域は、血液循環におけるタンパク質の半減期を延ばすことを含む種々の生理学的事象を媒介しており、したがって、FC部分は、タンパク質に融合されるとき、利点を所与の分子に与えることができる。
本発明者らは、TACEプロドメインを、TACE活性をインビボで阻害するための治療剤として利用することを検討したので、Fc融合分子を作出した。プロドメインを、上述されるような安定化のためのR58A変異を含有して、マウスのFc IgG2aにC末端において融合した。そのうえ、Fcタンパク質を作製することは、システイン残基を介する重鎖の二量体化が必要であり、したがって、本発明者らは、プロドメインの「システインスイッチ」配列に埋め込まれるシステインをセリンに変異させ、Fc融合分子全体の誤った折り畳みを防止した。融合タンパク質を、Igκ鎖のリーダー配列を適正な折り畳みおよび不可欠な翻訳後修飾のために含有するpSECプラスミドでHEK293哺乳動物細胞において発現させた。このプロドメインポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号9に示される通りであり、この配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列番号15に示される通りである。
pro−Fcを含有するpSECプラスミドをHEK293においてリン酸カルシウムとともに一過性にトランスフェクションし、細胞を発現培地においてその後72時間成長させた。培地を集め、プロテインAのアフィニティーカラムに供した(図11A)。精製タンパク質を触媒TACEの阻害について試験した。500nMのpro−Fcの存在下において、触媒TACEの活性が25%低下する(図11B)。
加えて、本発明者らは、別のpro−Fcを発現する安定なHEK293細胞株を作出した。この細胞は、C末端のヒトFc領域に対するpro−WT TACE融合を有する。構築物は、N末端においてマウスのシグナルペプチドが隣接した。このプロドメインポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号10に示される通りであり、この配列をコードするポリヌクレオチド配列は配列番号16に示される通りである。TACEプロドメインとフリンプロテアーゼとの何らかの起こり得る相互作用を除くために、TACEプロドメインをさらに変異させた。具体的には、アルギニン211をアラニンに変異させ、かつ、アルギニン214をグリシンンに変異させた。加えて、アラニン残基へのシステイン184における別の変異が含まれた。この変異は、WTと比較として、異なる阻害影響を何ら有していないとして、Gonzales(2004、J Biol Chem、2004、279(30))によって以前に記載された。
まとめると、下記の4つの点変異を有するTACEプロドメインが作出された:R58A、R211A、R214GおよびC184A(本明細書中では4mutとして示される)。
実施例3
LPS敗血症性ショックモデルにおけるTACEプロドメイン4mutの治療効果
TNF−αの分泌におけるTACEプロドメインおよびTACEプロドメイン4mutの阻害効果をインビボで評価するために、LPS敗血症性ショックモデルを適用した。敗血症性ショックは、重篤な感染および敗血症の結果である医学的状態であり、その後には全身的な炎症状態が続き、これにより、多臓器不全および死亡が引き起こされる場合がある。敗血症性ショックのほとんどの場合が、エンドトキシンを産生するグラム陰性桿菌のリポ多糖(LPS)によって引き起こされる。敗血症ショックおよびエンドトキシンショックの期間中は、恒常性が完全に失われ、炎症が抗炎症経路よりも優位になり、また、凝固が線維素溶解よりも優位になる。TNF−αが前炎症性媒介因子として主要な役割を果たしており、敗血症性ショックの期間中は、そのレベルが上昇し、このことにより、発端となる圧倒的な免疫応答が誘発される。エンドトキシン(LPS)の注射が、敗血症性応答を動物モデルにおいて模倣するために使用されている。
材料および方法
簡単に記載すると、C57/BLマウスに、TACEプロドメインまたはPBSコントロールを100mgのLPS注射の1時間前に注射した。血液をLPS注射の1.5時間後に採取し、血清中のTNF−αレベルを標準的なELISAキットによって検出した。
結果
全身のTNF−αが、TNF−αが検出不能であった無処置マウスと比較して、PBSコントロールにおいて上昇した(約3000pg/ml)。WT型TACEプロドメインの処置は、1mg/kgの濃度で投与されたとき、TNF−αレベルを約600pg/mlに低下させ、しかし、TNF−αの低下が、4mg/kgの濃度で投与されたときには認められなかった。驚くべきことに、4mut型TACEプロドメインによる処置は血清中TNF−αにおけるより大きい低下レベルを両方の濃度で示した:1mg/kgの4mut型TACEプロドメインについては約400pg/ml、および、4mg/kgの4mut型TACEプロドメインについては約350pg/ml(図12)。この実験は、TACEプロドメインがインビボにおけるTNF−α分泌の効果的な調節因子であること、および、4mut型TACEプロドメインが、WT型TACEプロドメインと比較した場合、TNF−αをLPS敗血症性ショック・インビボモデルにおいて低下させることにおける増大した治療効力を有することを証明する。
実施例4
コラーゲン誘導関節炎インビボマウスモデルにおけるTACEプロドメイン
関節炎を処置するためのTACEプロドメインの効力を半治療的なマウスのコラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおいて評価した。TACEプロドメインによる処置を、動物の40%が疾患の徴候を発症したときに開始した。
材料および方法
オスのDBA/1LacJマウスをCFAにおける100μgのウシII型コラーゲンにより0日目に免疫化し、これらのマウスを21日目に100μgのウシII型コラーゲンにより追加免疫した。TACEプロドメインまたはビヒクルコントロールのどちらかによる処置を3mg/kgの用量で23日目に開始した。
結果
図13において明らかにされるように、TACEプロドメインによる10日間の処置は、18日(処置終了後8日)までの全研究期間を通して、コントロール群における効果と著しく異なった長期の治療効果をもたらした。TACEプロドメインにより処置されるマウスの方が、有意に低い関節炎重篤度指数スコア(A)、組織学的スコア(B)、同様にまた、濃度依存的様式でのII型コラーゲンに対して特異的である低下した血清中抗体(C)を示した。
実施例5
4mut型TACEプロドメインによる、炎症性腸疾患、クローン病を有する被験者の処置
4mut型TACEプロドメインの安全性、耐容性および効力を評価するためのプラシボ対照研究を、クローン病の症状を有する患者の臨床試験において評価した。軽度〜中程度の活動性クローン病を有する患者が、クローン病のそれらの症状および生活の質を改善するであろう。主要評価項目測定基準:クローン病の寛解を10週の処置の後で有した参加者の数[時間枠:ベースラインから10週まで]。寛解が、≦150のクローン病活動指数(CDAI)スコアによって定義される。すなわち、参加者が150以下のCDAIスコアを8週の処置の後で有したならば、この参加者はクローン病の寛解を有した。別の評価項目測定基準:クローン病の寛解を2週の処置の後で有した参加者の数。クローン病の寛解(すなわち、≦150の同じCDAIスコア)を、2週の処置、4週の処置または6週の処置の後で有した参加者の数。統計学的分析がカプラン・マイヤー法によって行われる場合がある。ベースラインから8週までのCDAIスコアにおける変化[時間枠:ベースラインから8週まで]。
患者は、例えば、0mg(プラセボ群)、10mgおよび100mgの投薬量レベルにおける、8回の処置に対して8週間にわたるIVでの4mut型TACEプロドメインの用量を受ける。他の服用、間隔および頻度および投薬量レベルならびに配合物が、≦150のCDAIスコアを改善するために、進行速度を低下させるために、または、進行を止めるために、また、必要な場合には、進行の危険性を防止するために、または低下させるために有用である場合があることには留意される。
実施例6
4mut型TACEプロドメインによる、潰瘍性大腸炎(UC)を有する被験者の処置
被験者は、軽度〜中程度の潰瘍性大腸炎の記録された診断を有する。有害事象の頻度および重篤度によって効力を評価するための研究が、臨床的および内視鏡検査によって明らかにされるように、8週間にわたる4mut型TACEプロドメインによる処置の後で、潰瘍性大腸炎疾患の症状を有する患者の臨床試験において評価される。患者被験者は、潰瘍性大腸炎の記録された病歴、ならびに、ベースラインにおける4〜10の修正UCDAIスコア、1以上の直腸出血スコア(被験者の日誌に基づく)および1ポイント以上の粘膜外観スコア(内視鏡検査に基づく)を有するであろう。主要評価項目測定基準:8週の処置期間が終了したときの修正潰瘍性大腸炎疾患活動指数(修正UCDAI)スコアにおけるベースラインからの変化。
患者は、例えば、0mg(プラセボ群)、10mgおよび100mgの投薬量レベルにおける、8回の処置の8週間にわたるIVでの4mut型TACEプロドメインの用量を受ける。他の服用、間隔および頻度および投薬量レベルならびに配合物が、UCDAIスコアを改善するために、また、必要な場合には、進行の危険性を防止するために、または低下させるために有用である場合があることには留意される。
実施例7
4mut型TACEプロドメインによる、敗血症性ショックを有する被験者の処置
敗血症性ショックについての微小循環および臓器機能に対する4mut型TACEプロドメインの影響を評価するための研究。試験には、感染の疑われる部位または記録された部位を有し、かつ、3つの全身性炎症反応症候群(SIRS)判断基準のうちの2つを有する患者が登録されるであろう。患者はまた、標準治療を受けるであろう(プラセボ比較群)。敗血症性ショックについて支援されながら、輸液蘇生、適切かつ早期の抗生物質、感染源管理、および、適切であると見なされる場合にはドロトレコギンアルファについての評価(これらに限定されない)を含む早期目標指向療法。
すべての群において、ノルエピネフリンが、65mmHg〜75mmHgの間の平均動脈圧(MAP)を達成するために用量設定されるであろう。右心カテーテル法からのデータ、微小循環からのデータ(SDF画像化)および臓器機能からのデータ、同様にまた、ノルエピネフリン要求が、ベースラインにおいて、また、24時間後、48時間後、72時間後に得られるであろう。
患者は、例えば、0mg(プラセボ群)、10mgおよび100mgの投薬量レベルにおける、最初の24時間にわたるIVでの4mut型TACEプロドメインの単回用量を受ける。他の服用、間隔および頻度および投薬量レベルならびに配合物が、全身血行力学、微小循環および臓器機能を改善するために有用である場合があることには留意される。
実施例8
4mut型TACEプロドメインによる、関節リウマチを有する被験者の処置
関節リウマチにおける4mut型TACEプロドメインの効力を評価するための研究。対象となる患者は、関節リウマチ発症が16歳を超えること、疾患継続期間の合計が少なくとも6ヶ月であることにより定義されるであろう。患者は、例えば、0mg(プラセボ群)、10mgおよび100mgの投薬量レベルにおける、8回の処置の8週間にわたるIVでの4mut型TACEプロドメインの用量を受けるであろう。修正疾患活動スコア(DAS28)が主要評価項目測定基準となるであろう。他の服用、間隔および頻度および投薬量レベルならびに配合物が、改善のために有用である場合があることには留意される。
実施例9
4mut型TACEプロドメインによる、全身性エリテマトーデスを有する被験者の処置
4mut型TACEプロドメインを使用してTACEを阻害することによってループス腎炎を処置するための無作為化二重盲検プラセボ対照研究。試験には、米国リウマチ学会(ACR)の1982年改訂SLE分類基準の11個のうちの少なくとも4つを満たす患者が登録されるであろう。患者は、例えば、0mg(プラセボ群)、10mgおよび100mgの投薬量レベルにおける、8回の処置の8週間にわたるIVでの4mut型TACEプロドメインの用量を受けるであろう。評価項目測定基準:ベースラインにおける参加者の体系的紅斑性狼瘡疾患活動指数(SLEDAI)スコア。他の服用、間隔および頻度および投薬量レベルならびに配合物が、改善のために有用である場合があることには留意される。
実施例10
4mut型TACEプロドメインによる、II型糖尿病を有する被験者の処置
本研究は二重盲検無作為化プラセボ対照試験である。目的が、2型糖尿病の管理における4mut型TACEプロドメインの治療効果を8週間の期間において評価することである。試験には、HbA1cが10%未満であり、ヘマトクリットが34%を越え、血清クレアチニンが1.8mg/dl未満である患者が登録されるであろう。主要評価項目測定基準:HbA1cによって測定されるような血糖管理:コントロール群と処置群との間における平均低下における差が評価されるであろう。副次評価項目測定基準:デバイス/手順関連の有害事象;低血糖事象;HbA1cが7.0未満である被験者の割合;両群についての体重の減少;HbA1cによって測定されるような血糖管理の改善。患者は、例えば、0mg(プラセボ群)、10mgおよび100mgの投薬量レベルにおける、8回の処置の8週間にわたるIVでの4mut型TACEプロドメインの用量を受けるであろう。
実施例11
アラニンへのシステイン184の変異はTACEプロドメインの二量体化をE.coli発現系において妨げた
単離されたTACEプロドメイン(WT型およびC184A型)を、還元性サンプル緩衝液(ジスルフィド結合を還元するためにDTTを含有する)または非還元性サンプル緩衝液のどちらをも用いてSDS PAGEに供した。予想されるように、還元性緩衝液におけるTACEプロドメインは約25kDa付近の明瞭なバンドとして現れた。しかしながら、非還元性緩衝液では、別のバンドが約50kDaで現れ、このことは二量体の形成を示している。対照的に、TACEプロドメインのC184A変異体は、還元性サンプル緩衝液および非還元性サンプル緩衝液のどちらにおいても、単量体プロドメインに対応する約25kDaの単一バンドを示す。この結果から、TACEプロドメインのC184A変異体はタンパク質の二量体を妨げることが明らかにされる。
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。