JP6180478B2 - フリータイプ双方向クラッチ - Google Patents
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Description
図11(a)に示すとおり、円筒形のハウジングHGの内部には、間隙をおいて円筒形の出力部材OMを回転可能に配置し、これを出力軸に固着する。入力軸には、断面円形の上下部分を切除して長軸部と短軸部とを形成した入力部材IMが固着してあり、出力部材OMと入力部材IMとの間に2分割された中間部材MMが配置されている。2個の中間部材MMは、互いに接近するようその間に引張りばねTSが設けてあり、また、中間部材MMの周縁部には、楔形凹所に挿入されたローラROが、出力部材OMの内面と対向するように設けられている。
一方、出力軸側から駆動されて出力部材OMが回転したとしても、図11(c)に示すように、2個の中間部材MMは、引張りばねTSにより接近した位置のままであって、ローラROと出力部材OMの内面との間には間隙が存在する。そのため、出力部材OMの回転は入力部材IMに伝達されず、出力軸は単に空転することとなる。
まず、図11の双方向クラッチでは、入力軸から出力軸への動力伝達は、ローラROの噛み込みにより行われ、ローラROと出力部材OMの内面との間の摩擦によって入力トルクが出力側に伝達される。ローラROの接触面の摩擦力が失われるとトルク伝達が不可能となるため、双方向クラッチの伝達トルクは、摩擦力による制限を受ける。
「回転不能のハウジング、前記ハウジング内で共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されるとともに、前記出力軸からの前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸が空転して遮断されるフリータイプ双方向クラッチであって、
前記ハウジングの内部には、前記回転軸を中心として回転可能な円筒部材と、前記ハウジングと前記円筒部材との間において前記円筒部材の回転に拘束力を付与するばねと、前記円筒部材内において前記回転軸の周りを公転する作動子とが設置され、
前記円筒部材の内周面には複数の内歯が形成され、前記入力軸には複数の外歯が形成された平板部が固着され、前記出力軸には断面円形の偏心部が固着されており、さらに、
前記作動子の外周面には、前記円筒部材の内歯の谷部にそれぞれ入り込む同一歯数の外歯が形成され、かつ、前記作動子の軸方向の一方側には、前記入力軸の平板部の外歯が入り込む同一歯数の内歯が形成された第1穴部が設けられるとともに、他方側には、前記出力軸の偏心部が嵌り込む断面円形の第2穴部が設けられており、
前記入力軸の平板部の外歯が前記作動子の第1穴部の内歯に接触して、前記作動子が前記回転軸の周りを公転可能である」ことを特徴とするフリータイプ双方向クラッチとなっている。
これに対し、出力軸が回転すると、出力軸の偏心部に嵌め込まれた作動子は、その中心が共通の回転軸の周りを移動(円運動)するが、作動子には複数の外歯が形成され、同一歯数の内歯が形成された円筒部材と組み合わされている。そして、円筒部材は、ハウジングとの間に設置されたばねにより拘束力が付与されて固定されるため、作動子は、円筒部材内で自転を起こすことなく共通の回転軸の周りを公転することとなる。公転する作動子の第1穴部に形成された内歯は、入力軸に設けられた平板部の外歯に入り込んで一部はその壁面と接触しているけれども、作動子と円筒部材との関係と同様に、これらは公転運動を許容するよう係合されているので、作動子の公転が入力軸に回転トルクを作用させることはない。つまり、出力軸が回転しても、作動子が円筒部材内で公転するだけであって、出力軸は空転し、その回転は入力軸に伝達されない。
また、本発明のフリータイプ双方向クラッチでは、出力軸を空転させるために作動子を固定するばねは、作動子の外周とハウジングとの間に置かれる。作動子の外周は入力軸等と比べて径が大きいので、ばね力が小さくとも作動子に対して確実に制動トルクを付与できる。
本発明のフリータイプ双方向クラッチにおいては、出力軸の回転により作動子が公転しても入力軸は回転しないようにするため、入力軸に固着された平板部に形成された外歯は、基本的には、公転する作動子の内歯が創成する包絡線となっている。そして、作動子の内歯と入力軸の外歯とは、一部で接触(点接触)することとなるので、出力軸に大きな負荷が作用している状態で入力軸から回転駆動すると、入力軸の外歯と作動子の内歯との間で滑りが生じる恐れがある。請求項5の発明のように構成した場合には、入力軸の外歯の側面及び作動子の内歯の側面に形成した面同士が面接触する。したがって、出力軸に負荷がかかった状態で入力軸を回転させたときに、入力軸の外歯と作動子の内歯との噛み合いが確実なものとなり、入力軸の外歯が作動子の内歯に対して滑ることが防止される。
ハウジング1は、円周壁部と端板部からなるカップ状部材であって、その中心軸は入力軸2及び出力軸3の回転軸oと同一である。ハウジング1の開口端部には、内部を閉鎖する円板状のシールド体11が圧入されている。シールド体11が圧入された側のハウジング1の内周面には、後述するばね5が配設される環状溝部12が形成されている。
入力軸2は、円柱型軸部とその先端部に固着された平板部21を備え(単体図である図3(a)も参照)、平板部21の外周面には複数の外歯21eが形成されている。外歯21eの夫々の歯型は、図1の右方のA−A断面に示すとおり、回転軸oから半径方向外方に先細り的に延出した後に、その延出端縁が回転軸oを中心とした円弧形状をなすようにして形成されており、全体として略等脚台形形状である。入力軸2はハウジング1の端板部の中心を貫通してハウジング1に軸受される。
出力軸3は、円柱型軸部とその先端部に固着された断面円形の偏心部31を備える(単体図である図3(b)も参照)。偏心部31の中心は、出力軸3の回転軸oとeだけ離れている。出力軸3はシールド体11の中心を貫通してシールド体11に軸受される。
さらに、出力軸3の中央部には、入力軸2に向けて延びる中央軸32が設けてあり、この中央軸32は入力軸2の中央部に形成された中央穴22に嵌まり込む。これにより、入力軸2と出力軸3とは相互に軸受された状態となり、回転時における軸の傾きあるいは不安定な作動が防止される。
図2の上図の断面A−A等における各矢印に示すように、入力軸2が、例えば、駆動源のモーターにより時計方向(軸方向の右方から見て)に回転すると、入力軸2に設けられた平板部21の外歯21eと作動子6の内歯6iとの接触点において、平板部21の外歯21eが作動子6の内歯6iを内側から押しつける形で、作動子6に回転軸o周りの回転トルクを付与する。円筒部材4は、ハウジング1内で回転軸oの周りを回転可能に支持されているので、入力軸2、作動子6及び円筒部材4が一体となりロックされた状態で、ばね5による制動トルクに打ち勝って回転軸oの周りを回転する。作動子6の回転は、偏心部31で結合された出力軸3を回転させることとなり、結局、出力軸3に連なる機械装置、例えば、カーテンの巻き上げ機構に駆動力が伝達される。作動子6等の入出力軸間の部材が全体的にロックされるこの駆動力の伝達は、入力軸2の回転方向が逆であっても同じである。
図示の実施形態においては、ばね5は、径の大きいハウジング1と円筒部材4との間に設けられているため、ばね5の摩擦力による制動トルクが大きくなり、円筒部材4の回転に対する拘束力を確実に得ることができる。
そして、これらと噛み合う作動子6Bの外歯6eBの歯形には、外歯6eBの周方向両側には周方向外側に夫々突出する、一対の凸部γが形成され、第1穴部の内歯6iBの歯形には、一対の凹部ωが形成されている。このように、互いに係合する部分に凹部と凸部が形成されることで、作動子6Bが回転(自転)又は公転する際に、作動子6Bが径方向へ過剰に移動してしまうのを回避することができる。
即ち、図6(a)においては、入力軸2の外歯21eの断面形状における周方向両側が略三角形形状に削られて、平坦な平面部7が設けられている(鎖線は削る前の状態を示す)。一方、作動子6の内歯6iの断面形状における周方向両側は、もともと平面部として形成されている。そして、入力軸2が駆動源のモーターにより回転したときに、入力軸2の外歯21eの側面と作動子6の内歯6iの側面とが相互に面接触することとなる。換言すると、入力軸2の外歯21eと作動子6の内歯6iとの所謂当たりが良好なものとなる。それ故に、入力軸2に形成された外歯21eと作動子6に形成された内歯6iとの噛み合いは確実なものとなり、出力軸3に幾分の負荷がかかった状態で入力軸2が回転したときであっても、入力軸2の外歯21eが作動子6の内歯6iに対して滑ることが防止される。
図6(b)においては、もともと平面部として形成された側面を備える入力軸2の外歯21eに対して、内歯6iの断面形状の周方向両側が略三角形形状に削られて平面部7となった作動子6が組み合わされている。このものでも、図6(a)の変形例と同様な作用効果が発揮される。
さらに、作動子6´の内周面の断面形状は正方形、即ち第1穴部61´は断面正方形であって、夫々の頂部が内歯6i´を構成しており、入力軸2´に設けられた平板部21´の外周面の断面形状も正方形であって、夫々の頂部が外歯21e´を構成している。
第3実施例においても、図10に図示するように、作動子6´´の内歯6i´´の側面及び入力軸の外歯21e´´の側面に、入力軸が回転したとき互いに当接する平面部7´´を形成することができる。図10(a)においては、入力軸の外歯21e´´の断面形状における周方向両側が略三角形形状に削られて、当接する平面部7´´が設けられ、一方、図10(b)においては、作動子6´´の内歯6i´´の断面形状における周方向両側が略三角形形状に削られて、平坦な平面部7´´が設けられている。
11:シールド体
2、2´:入力軸
21、21B、21´:平板部
21e、21eB、21e´、21e´´:外歯
3、3´:出力軸
31:偏心部
4、4B、4´、4´´:円筒部材
4i、4iB、4i´、4i´´:内歯
5:ばね
6、6B、6´、6´´:作動子
6e、6eB、6e´、6e´´:外歯
61、61´:第1穴部
6i、6iB、6i´、6i´´:内歯
62:第2穴部
7、7´、7´´:平面部
Claims (5)
- 回転不能のハウジング、前記ハウジング内で共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されるとともに、前記出力軸からの前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸が空転して遮断されるフリータイプ双方向クラッチであって、
前記ハウジングの内部には、前記回転軸を中心として回転可能な円筒部材と、前記ハウジングと前記円筒部材との間において前記円筒部材の回転に拘束力を付与するばねと、前記円筒部材内において前記回転軸の周りを公転する作動子とが設置され、
前記円筒部材の内周面には複数の内歯が形成され、前記入力軸には複数の外歯が形成された平板部が固着され、前記出力軸には断面円形の偏心部が固着されており、さらに、
前記作動子の外周面には、前記円筒部材の内歯の谷部にそれぞれ入り込む同一歯数の外歯が形成され、かつ、前記作動子の軸方向の一方側には、前記入力軸の平板部の外歯が入り込む同一歯数の内歯が形成された第1穴部が設けられるとともに、他方側には、前記出力軸の偏心部が嵌り込む断面円形の第2穴部が設けられており、
前記入力軸の平板部の外歯が前記作動子の第1穴部の内歯に接触して、前記作動子が前記回転軸の周りを公転可能であることを特徴とするフリータイプ双方向クラッチ。 - 前記円筒部材の内周面の断面形状が正多角形であって、それぞれの頂部が内歯を構成し、かつ、前記作動子の外周面の断面形状が正多角形であって、それぞれの頂部が前記円筒部材の内歯の谷部に入り込む外歯を構成している請求項1に記載のフリータイプ双方向クラッチ。
- 前記作動子の第1穴部と第2穴部とは軸方向に連通しており、前記入力軸に固着された平板部の端面と前記出力軸に固着された偏心部の端面とが相互に当接する、請求項1又は請求項2に記載のフリータイプ双方向クラッチ。
- 前記入力軸及び前記出力軸の対向する面には、その一方の中心部に中央軸が形成されるとともに、他方の中心部に前記中央軸が嵌まり込む中心穴が形成される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフリータイプ双方向クラッチ。
- 前記入力軸に固着した平板部に形成された外歯の側面及び前記作動子の第1穴部の内歯の側面には、前記入力軸が回転したとき互いに当接する平面部が形成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載のフリータイプ双方向クラッチ。
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