JP6176491B2 - 塩化ニッケル水溶液の脱銅方法 - Google Patents

塩化ニッケル水溶液の脱銅方法 Download PDF

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Description

本発明は、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、抽出剤の3級アミンを、芳香族炭化水素を希釈剤に用いて希釈して形成した有機溶媒を用いた溶媒抽出によって、コバルトを分離回収するニッケルおよびコバルトの湿式製錬法に関するものである。
より詳しくは、コバルトが抽出された有機相からコバルトを脱離した逆抽出後の有機相中に蓄積された銅を除去し、有機相中の銅濃度を低下させることにより、コバルトを含有する銅濃度の高い塩化ニッケル水溶液から、逆抽出後の水相として銅濃度の低い塩化コバルト水溶液を得る塩化ニッケル水溶液の脱銅方法に関するものである。
ニッケルおよびコバルトの製錬においては、例えば、ニッケル硫化鉱石を溶鉱炉で溶解して得られるニッケル硫化物や、ニッケル酸化鉱石に硫黄を添加して電気炉で溶解して得られるニッケル硫化物等、いわゆる乾式製錬法で得られたNi等のニッケル硫化物を主成分とするニッケルマットが生産されている。
一方で、低ニッケル品位のニッケル酸化鉱石を加圧酸浸出(High Pressure Acid Leaching、通称HPAL)し、その加圧酸浸出液から鉄をはじめとする不純物を除去した後、湿式硫化反応によって、例えば硫化水素ガスをニッケルイオン及びコバルトイオンを含んだ浸出液中に吹込むことによって、得られたNiS等の硫化物を主成分とするニッケルおよびコバルトを含む混合硫化物(以降、混合硫化物と称する。)も生産されている。
上記ニッケルマットや混合硫化物を原料として、ニッケルおよびコバルトを精製する方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、ニッケルマットや混合硫化物を塩素ガスで浸出し、浸出されたニッケルイオンおよびコバルトイオンを電解採取によって電気ニッケル及び電気コバルトとして製品化する方法が実用化されている。
上記方法は、混合硫化物を、塩化物水溶液にレパルプした後、そのスラリーに塩素ガスを吹込むことによりニッケル及びコバルトを塩化物水溶液中に塩素浸出する。
そこで得られた、酸化剤としての2価の銅クロロ錯イオンを含んだ塩素浸出液に、粉砕したニッケルマットを接触させて、銅とニッケルの置換反応を行うことによりニッケルマット中のニッケルを液に置換浸出する。
その後、得られた置換浸出終液から鉄、鉛、銅、亜鉛等の不純物を除去すると共に、置換浸出終液中のコバルトを溶媒抽出等の方法を用いて分離し、次いでニッケルを電解採取して電気ニッケルを製造する方法である。
ここで分離されたコバルトについては、ニッケルとは別の処理ルートにより、さらなる不純物の除去が行われ、電解採取により電気コバルトとして製品化される。
この方法はシンプルで、電解採取で発生した塩素ガスを浸出に再利用する等、効率的かつ経済的な生産を実現している。
さらに、特許文献1の技術では、ニッケルマットや混合硫化物等の原料中に微量に含まれる銅は、ニッケルおよびコバルトを精製する上での不純物ではあるが、上記塩素浸出工程や置換浸出工程では酸化剤として利用され、塩素浸出工程と置換浸出工程の間を循環している。
置換浸出工程では、2価の銅クロロ錯イオンとニッケルマット中のNiおよびNi(金属ニッケル)との置換反応を行うことによりニッケルマット中のニッケルは液に置換浸出され、その一方で銅クロロ錯イオンはCuSまたはCu(金属銅)の形態となって固体となる。
つまり置換浸出工程では塩素浸出液の脱銅も同時に行われ、置換浸出終液中の銅濃度は0.02g/L以下となる。原料から持ち込まれた銅は、塩素浸出工程と置換浸出工程の間を循環しながら、次第に塩素浸出工程と置換浸出工程に蓄積して行くため、塩素浸出液中の銅濃度を10〜60g/Lの範囲内の適正値に維持するために、例えば塩素浸出液を脱銅電解することによって、銅粉として銅を系外に抜き出して銅バランスを取っている。
ところで、ニッケルの湿式製錬法において、酸性水溶液中に含まれるニッケルとコバルトの分離は、最も重要な技術要素である。
例えば、コバルトを含んだニッケル水溶液中に、酸化剤として塩素ガスを、中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加して、コバルトを3価の水酸化物として分離する方法も行われてきたが、水溶液中のコバルトを固体として完全に除去するためには、重量比でコバルトの3倍程度のニッケルも3価の水酸化物を生成してしまい、ニッケルとコバルトの分離性が悪いため効率的かつ経済的な方法とは言えなかった。
そこで、現在では、酸性水溶液中に含まれるニッケルとコバルトの分離は、各種の有機抽出剤による溶媒抽出法が主流となっている。
ニッケルとコバルトを分離するための溶媒抽出法では、有機抽出剤としてD2EHPA(Di−(2−ethylhexyl)phosphoric acid)等の燐酸エステル系酸性抽出剤や、TNOA(Tri−n−octylamine)等のアミン系抽出剤が用いられる。
使用される燐酸エステル系酸性抽出剤とアミン系抽出剤は、両者ともに優れたニッケルとコバルトの分離性能を有するが、一般的には、アニオンが硫酸イオンの場合は燐酸エステル系酸性抽出剤が、アニオンが塩化物イオンの場合にはアミン系抽出剤が使用されている。
水溶液中の塩化物イオン濃度が十分に高い、塩化物イオン濃度が200g/L以上の塩化物水溶液の場合、コバルトはクロロ錯イオンを形成するがニッケルはクロロ錯イオンを形成しないため、アミン系抽出剤の方が、燐酸エステル系酸性抽出剤に比べてより高いコバルトとニッケルの分離係数を持つ。
また、燐酸エステル系酸性抽出剤では、金属イオンの抽出によって抽出剤からプロトンが放出されるため中和剤コストを要する他、pHの変動によってクラッドが発生することが多い。
上記クラッドとは金属の水酸化物等の固体で、油水分離装置内で有機相と水相の中間に滞留・蓄積されるため、溶媒抽出の重要な技術要素である油水分離を大きく阻害する。
コバルトとその他の不純物元素を含有する塩化ニッケル水溶液からアミン系抽出剤によってコバルトを分離する方法は、抽出段、洗浄段および逆抽出段から構成される溶媒抽出工程において、以下に記載するような技術に基づいたものである。
抽出剤としては、1級アミン(RNH)や2級アミン(RNH)よりも、3級アミン(RN)を用いる方がより好ましい(Rは任意の飽和または不飽和炭化水素基を表す)。
その理由は、3級アミンの方が、より極性に富み反応性が高く、また、水に対する溶解度が低いためである。
この3級アミンは、塩酸を付加されて活性化することにより、金属クロロ錯イオンの抽出能力を保有し、しかも優れたニッケルとコバルトの分離特性を有する。
上記抽出段では、Co、Cu、Zn、Fe等のクロロ錯イオンを形成する金属種が有機相中に抽出され、金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミンが生成される。なお、ニッケルはクロロ錯イオンを形成しないので、抽出残液に残留して分離される。
したがって、塩化ニッケル水溶液中に、コバルトよりもクロロ錯イオンを形成し易い、すなわちクロロ錯イオンの安定度が高い金属、例えば銅、亜鉛、鉄のクロロ錯イオンが含まれている場合には、これらの金属も抽出される。
洗浄段は、必要により設置されるが、洗浄段では、抽出後の有機相中のエントレインメント、すなわち有機相中に懸濁する微細な水滴中に含まれる不純物が多く存在した場合などには、その不純物を洗浄水による希釈除去処理により取り除くものである。
次に逆抽出段では、洗浄後の有機相を、すなわちコバルトのクロロ錯イオンを担持したアミンを、弱酸性水溶液と接触させることで、コバルトを水相中に脱離することができる。
ここで、コバルトが逆抽出された有機相は、すなわち再生された抽出剤は、再び抽出段に戻されて循環使用され、抽出、洗浄、逆抽出が繰返されることになる。
ところが、銅、亜鉛、鉄等のコバルトよりも、クロロ錯イオンとしてアミンに担持され易い金属は、コバルトを脱離するための比較的弱い逆抽出条件では脱離されにくく、したがって、溶媒抽出工程でアミン系抽出剤を循環使用する場合、銅、亜鉛、鉄等が次第に抽出剤中に蓄積するようになる。
このような金属の蓄積が進むと、抽出反応に寄与すべきアミノ基が、蓄積した金属に占有されてしまうため、抽出剤の抽出能力の大巾な低下を招くことになる。また、抽出剤の粘性が上がるため、油水分離性の低下も招くことになる。
この問題に対して、例えば、銅、亜鉛、鉄等のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤から、これらの金属を分離除去するために、スクラビング段を設けて抽出剤を再生することが行われてきた。
例えば、特許文献2には、逆抽出後の有機相の一部を抜き取って、不純物として含有される亜鉛を中和処理によって除去した後、抽出剤を活性化し、活性化後の有機相を塩化コバルト水溶液である逆抽出後の水相と接触させる方法が記載されている。
この逆抽出後のアミン系抽出剤中に含有された銅、亜鉛、鉄等を中和処理によって除去する方法は、沈殿物形成を伴う反応に基づくため、有機相と水相と沈殿物を含む混合物をフィルタープレス等のろ過設備によって固液分離する必要があり、ろ過性、ハンドリング性、作業性が悪いだけでなく、危険物を機械設備でろ過処理するという保安上の問題もあり、好ましい方法とは言い難かった。
さらに、沈殿物に有機相が付着するため、高価な抽出剤のロスにつながり、抽出剤コストの増加を招いていた。
また、この抜き出した油と重金属の混合物を処分するに当たっては、環境上の問題を発生させないようにするために、多大な技術とコストが必要となっていた。
そこで、これらの問題を解決する手段として、特許文献3で示した改良された方法が提案、実施されている。
この方法は、逆抽出後の有機相をアルカリ中和し、アルカリ中和後の有機相と水相と沈殿物を含む混合物から、沈殿物を含まない有機相を沈降分離によって抜き出し、水相と沈殿物と有機相の残部を含んだ混合物を酸溶解する。
酸溶解後の銅、亜鉛、鉄等を含んだ水相は、例えば排水処理工程等の次の処理工程に送られ、銅、亜鉛、鉄等を含んだ有機相は、スクラビング段に繰返される。
この方法により、有機相および水相と混合された沈殿物の取扱いは皆無になった。
上記特許文献2および特許文献3のスクラビング方法では、中和用のアルカリと活性化用の塩酸が必要となる。そこで、これらの薬剤を使用しない方法も、例えば特許文献4で提案されている。
これは、逆抽出後の有機相を、塩化物イオン濃度が0〜5g/Lの水または水溶液で、(有機相/水相)比が1〜10となるように洗浄するというもので、特許文献2および特許文献3の方法と比較して、設備が簡便で、かつコスト上有利な方法である。
しかし、この方法は、抽出始液の鉄が25mg/L以下、亜鉛が0.1mg/L以下という、限られた狭い範囲の条件下のみで成立つ技術であり、さらに対象とする不純物金属は鉄または亜鉛である。
ところで、特許文献1に記載されている、ニッケルマットや混合硫化物を、塩素ガスで浸出し、浸出されたニッケルイオンおよびコバルトイオンを電解採取により電気ニッケルおよび電気コバルトとして製品化するプロセスでは、ニッケルマットや混合硫化物等の原料中に微量に含まれる銅は、前記塩素浸出工程や置換浸出工程では酸化剤として利用され、塩素浸出工程と置換浸出工程を循環している。
そのため、塩素浸出液中の銅濃度を10〜60g/Lの範囲内の適正値に維持する必要がある。
一方で、銅はニッケルおよびコバルトを精製する上では不純物であるため、置換浸出液中の銅濃度は0.02g/L以下とする必要がある。
この置換浸出液の銅濃度を塩素浸出液中の銅濃度より低下させるためには、混合硫化物中に含まれるNiSよりも還元力の強いNiやNiを含有したニッケルマットが必要となる。
しかしながら、ニッケルおよびコバルトを増産するために混合硫化物を増処理すると、相対的にニッケルマットが不足する事態も発生するため、可能な限り原料構成比の変化に柔軟に対応できる技術が必要となっていた。
具体的には置換浸出終液中の銅濃度、すなわち溶媒抽出工程における抽出始液中の銅濃度が0.02g/Lから0.2g/Lに上昇しても対応が可能な、銅の除去技術を確立する必要があった。
上記問題への対応として、前記のスクラビング段でアルカリ中和する方法によって抽出剤中に蓄積した銅を除去することもできるが、中和用のアルカリと活性化用の塩酸が必要となりコストアップとなるだけでは無く、逆抽出後の有機相のスクラビング比率が上昇する。
また、強アルカリによって有機溶媒が劣化分解し、アミンの抽出能力が低下すると共に、スクラビング後の水相中の分解された有機物濃度が上昇して排水へのCOD負荷が上昇する等、様々な問題が引き起こされる。
さらに、上記アルカリ中和法は主に亜鉛を除去対象とした方法であるため、その方法とは独立させて、アミン系抽出剤に蓄積した銅を選択的に除去する技術を確立する必要があった。
特開2012−026027号公報 特開昭60−121236号公報 特開2010−196162号公報 特開2010−196122号公報
本発明は、塩化ニッケル水溶液から、抽出剤として3級アミンを使用し、その希釈剤として芳香族炭化水素を用いて形成した有機溶媒による溶媒抽出によって、コバルトを分離回収すると共に銅、亜鉛、鉄を除去する方法において、抽出剤に蓄積した銅を選択的に除去することで、有機溶媒の抽出能力や油水分離性の低下を防止することができ、さらには、従来技術と比較して、薬剤コストをアップさせること無く、抽出剤を劣化分解させ、排水のCOD負荷を上昇させることも無く、銅濃度の高い塩化ニッケル水溶液を処理することができる、塩化ニッケル水溶液の脱銅方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは、水相中の塩化物イオン濃度が低い場合、逆抽出後の抽出剤中に蓄積した銅が亜鉛や鉄に比べて水相中に移行し易いことに着目して、逆抽出後の有機相に混合・接触させる水相の塩化物イオン濃度、すなわち希塩酸のpHや、O/A比等の抽出条件について研究を重ねた結果、逆抽出後の有機相にO/A比が1.5以下となるように水またはpH1以上の希塩酸を混合・接触させることによって、逆抽出後の抽出剤中に蓄積した銅を選択的に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の塩化ニッケル水溶液の脱銅方法における第一の発明は、抽出剤として3級アミン、希釈剤として芳香族炭化水素を含有した有機溶媒を有機相に用いた溶媒抽出法を用いて、コバルト、銅、亜鉛、鉄を含有する塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離回収すると共に銅、亜鉛、鉄を除去する方法において、下記(1)〜(3)の工程を順に含むことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の脱銅方法である。
(1)前記コバルト、銅、亜鉛、鉄を含有し、ニッケル濃度が170〜210g/L、コバルト濃度が2〜10g/L、及び銅濃度が0.01〜0.2g/Lである塩化ニッケル水溶液から、前記有機相にコバルト、銅、亜鉛、鉄を抽出した後、前記有機相中の銅を、銅濃度が0.4g/L以下に調整したコバルト、銅、亜鉛、鉄を含む有機相を形成し、コバルト、銅、亜鉛、鉄が除去された塩化ニッケル水溶液を得る抽出工程。
(2)前記「(1)の工程」で得られた前記コバルト、銅、亜鉛、鉄を含み、前記銅を銅濃度を0.4g/L以下に調整した有機相に弱酸性水溶液を接触させることによって、前記有機相中のコバルトを前記有機相から脱離させ、銅濃度が0.3g/L以下の塩化コバルト水溶液の水相と、逆抽出後の銅、亜鉛、鉄を含む有機相を得る逆抽出工程。
(3)前記逆抽出後の有機相に、水又はpH1以上の希塩酸を混合、接触させ、前記有機相中の銅を水相に逆抽出して銅を回収し、銅を除去した後の亜鉛、鉄を含む有機相は前記(1)の工程の有機溶媒として用いる銅回収工程。
本発明の第2の発明は、第1の発明の(3)の銅回収工程における有機相対水相の体積比率が、1.5以下であることを特徴とする塩化ニッケル水溶液の脱銅方法である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における3級アミンが、トリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)又はトリ−イソ−オクチルアミン(TIOA)であることを特徴とする塩化ニッケル水溶液の脱銅方法である。
本発明によれば、抽出剤に蓄積した銅を選択的に除去することで、有機溶媒の抽出能力や油水分離性の低下を防止することができ、塩化ニッケル水溶液である抽出始液中の銅濃度が0.02g/Lから0.2g/Lに上昇しても、有機相中の銅を、銅濃度が0.4g/L以下となるまで除去することによって、逆抽出工程で得られる塩化コバルト水溶液中の銅濃度を0.3g/L以下とすることができる。
さらには、従来技術と比較して、中和用のアルカリと活性化用の塩酸を必要としないため、薬剤コストをアップさせることが無く、抽出剤を劣化分解させ、排水のCOD負荷を上昇させることも無い。
本発明は、逆抽出後の有機相に、水またはpH1以上の希塩酸を混合・接触させる簡便な方法であるため、簡単な設備改造で対応することができ、低コスト、低環境負荷で効率的な操業を実現することができる。
上記の効果に加えて、ニッケルマットに対する混合硫化物の原料処理比率を増加させ、混合硫化物の増処理によって電気ニッケルや電気コバルトを増産することができる。
本発明を含むニッケルおよびコバルト製錬プロセスの概略フローシートである。 本発明の脱銅方法における溶媒抽出工程の概略フローシートである。 有機相中銅濃度と水相中銅濃度の関係を示した図である。 銅、亜鉛、鉄に関する水相中の塩化物イオン濃度と有機相中への分配比の関係を示したものである。
以下、本発明の塩化ニッケル水溶液の脱銅方法に関して、詳細に説明する。
本発明の塩化ニッケル水溶液の脱銅方法は、コバルト、銅、亜鉛、鉄を含有する塩化ニッケル水溶液から、抽出剤として3級アミンを、その抽出剤を希釈する希釈剤に芳香族炭化水素を用いて形成した有機溶媒を使用する溶媒抽出によって、コバルトを分離回収すると共に銅、亜鉛、鉄を除去するもので、次の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするものである。
(1)抽出工程
水相に用いたコバルト、銅、亜鉛、鉄を含有する塩化ニッケル水溶液からコバルト、銅、亜鉛、鉄を抽出した有機相を形成し、コバルト、銅、亜鉛、鉄が除去された塩化ニッケル水溶液(水相)を得る抽出工程。
(2)逆抽出工程
コバルト、銅、亜鉛、鉄を抽出した有機相から、水相に用いた弱酸性水溶液によってコバルトを脱離して、塩化コバルト水溶液を得る逆抽出工程。
(3)銅回収工程
コバルトが脱離された逆抽出後の有機相に、水またはpH1以上の希塩酸を水相に用いて混合・接触させ、有機相中の銅を水相に逆抽出し、銅を除去した後の有機相を上記(1)の抽出工程に戻す、銅回収工程。
1.ニッケルおよびコバルト製錬プロセス
本発明を含むニッケルおよびコバルト製錬プロセスの概略フローシートを図1に示す。
本発明は、ニッケルおよびコバルト製錬プロセスの全体工程の中の、溶媒抽出工程(図1中のAに示す工程)における逆抽出後の有機相のスクラビングに係る技術ではあるが、原料処理比率、塩素浸出、置換浸出(セメンテーション)、溶媒抽出までの浄液、溶媒抽出等、ニッケルおよびコバルト製錬プロセスの主要な要素に関して、全体最適化を達成するための技術であるため、図1を参照して主要要素毎に詳細に説明する。
(1)原料
主要な原料は、ニッケルマットと混合硫化物の2種類となる。
ニッケルマットとは、ニッケル硫化鉱石を溶鉱炉で溶解して得られるニッケル硫化物や、ニッケル酸化鉱石に硫黄を添加して電気炉で溶解して得られるニッケル硫化物等、いわゆる乾式製錬法で得られたニッケル硫化物を指している。
このニッケルマットの主成分は、NiとNi(金属ニッケル)であり、そのおおよその化学組成は、Niが65〜80重量%、Coが約1重量%、Cuが0.1〜4重量%、Feが0.1〜5重量%、Sが20〜25重量%である。
ニッケル酸化鉱石を原料としたニッケルマットと比較して、ニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットは不純物の含有量が高いという特徴があり、ニッケルおよびコバルト製錬プロセスへの主な銅のインプット源は、ニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットである。
したがって、このニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットの処理量によって、銅のインプット量が大きく変動することになる。
一方で、混合硫化物とは、低ニッケル品位のニッケル酸化鉱石を加圧酸浸出し、その加圧酸浸出液から鉄をはじめとする不純物を除去した後、湿式硫化反応によって、例えば硫化水素ガスをニッケルイオン及びコバルトイオンを含んだ浸出液中に吹込むことによって、得られたニッケルおよびコバルトを含む混合硫化物を指している。
この混合硫化物の主成分は、NiSとCoSであり、そのおおよその化学組成は、Niが55〜60重量%、Coが3〜6重量%、Cuが0.1重量%未満、Feが0.1〜1重量%、Sが30〜35重量%である。
(2)塩素浸出
混合硫化物および後述するセメンテーション残渣を、塩化物水溶液にレパルプした後、そのスラリーに塩素ガスを吹込むことによって混合硫化物中のニッケルおよびコバルトと、セメンテーション残渣中のニッケルおよび銅を、塩化物水溶液中に塩素浸出する。
この工程では、2価の銅のクロロ錯イオンが混合硫化物やセメンテーション残渣中の金属を溶解するための直接的な浸出剤として作用し、塩素ガスは銅の1価イオンを2価イオンに酸化することにより間接的に浸出反応に関与する。
そのため、塩素浸出反応には、一定量の銅が必要不可欠であり、塩素浸出液中の銅濃度を10〜60g/Lの範囲内の適正値に維持することが重要となっている。
主要な塩素浸出反応式を下記式(1)〜(4)に示した。
Figure 0006176491
塩素浸出反応条件は、反応時の塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位が480〜550mV(Ag/AgCl電極基準)、温度が105〜115℃である。
(3)置換浸出(セメンテーション)
置換浸出工程は、第1の置換浸出工程(図1の「置換浸出1」)と第2の置換浸出工程(図1の「置換浸出2」)の、2つのステージで構成される。
塩素浸出液に含まれる2価の銅のクロロ錯イオンの酸化力を使って、第1の置換浸出工程で混合硫化物中のニッケルおよびコバルトを浸出する。
第1の置換浸出工程で得られた置換浸出液は、2価の銅クロロ錯イオンが1価の銅のクロロ錯イオンに還元されている。
次に、第2の置換浸出工程では、第1の置換浸出工程で得られた置換浸出液とニッケルマットを接触させることにより、その置換浸出液中の銅イオンとニッケルマット中のニッケルのセメンテーション反応が行われる。
このセメンテーション反応は、固体のニッケルが溶出してニッケルイオンとなり、その溶出したニッケルと電気化学的に当量の液中の銅イオンが固体となるため、置換浸出工程は塩素浸出液中に含まれる銅を固体として除去する脱銅工程であるとも言える。
置換浸出液中の銅イオンは、CuSまたはCuメタルの形態となって固体となるため、第2の置換浸出工程で得られる置換浸出終液中の銅濃度は0.02g/L以下となる。
この置換浸出終液の銅濃度を低下させるためには、混合硫化物中に含まれるNiSよりも還元力の強いNi(金属ニッケル)やNiを含有したニッケルマットが必要となる。
混合硫化物とニッケルマットの不溶解残渣とセメンテーション反応によって得られた銅を含んだ固体を含む、セメンテーション残渣は、第2の置換浸出工程で得られた置換浸出終液と固液分離された後、塩素浸出工程に送られる。
主要な置換浸出反応式を下記式(5)〜(7)に示した。
Figure 0006176491
置換浸出反応条件は、反応時の塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位が50〜300mV(Ag/AgCl電極基準)、温度が70〜100℃である。
この第2の置換浸出工程において、液中から除去すべき銅量は塩素浸出液量と塩素浸出液中銅濃度の積で決まってくる。
塩素浸出液量は塩素浸出工程と第1の置換浸出工程で処理する混合硫化物量で決まってくる。
塩素浸出液中銅濃度は、最適な塩素浸出操業を継続するために10〜60g/Lの範囲内の適正値に維持されるため、一定の値となる。
したがって、混合硫化物に対するニッケルマットの処理比率が下がると、除去すべき銅量に対してニッケルマットが不足する事態が懸念され、その場合、第2の置換浸出工程で得られた置換浸出終液中の銅濃度が上昇することになる。
(4)浄液
置換浸出終液(セメンテーション終液)は、浄液工程に送られる。浄液工程は、脱鉄工程、溶媒抽出工程、脱鉛工程、脱亜鉛工程で構成される。
脱鉄工程では、置換浸出終液に、酸化剤として塩素ガスを、中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加して、水酸化第二鉄を主成分とする沈殿物を生成させることにより、置換浸出終液中の鉄濃度を1〜2g/Lから15mg/L以下まで低下させる処理が行われる。
この脱鉄工程における水溶液のpHは、2.0〜2.5程度であるので、この工程で銅の水酸化物が生成されることは無い。
さらに、この脱鉄工程では銅の除去がされないため、置換浸出終液中の銅濃度が上昇すると、次工程の浄液工程(溶媒抽出)に供される抽出始液の銅濃度が上昇することになる。
詳細は後述するが、溶媒抽出工程では、ニッケル濃度が170〜210g/L、コバルト濃度が2〜10g/L、銅濃度が0.02g/L以下、亜鉛濃度が0.01〜0.03g/L、鉄濃度が15mg/L以下の脱鉄終液に、アミン系抽出剤であるTNOAを混合、接触させることによって、コバルト、銅、亜鉛、鉄を水相から有機相に移行させる処理を行う。
脱鉛工程では、脱鉄工程と同様に、酸化剤として塩素ガスを、中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加して、溶媒抽出後の塩化ニッケル溶液中の鉛を酸化鉛として除去する。
脱鉛工程での抽出残液のpHは4〜5なので、ニッケルの一部も3価の水酸化物として沈殿物を形成する。
脱亜鉛工程では、脱鉛後の脱鉛終液中に微量に残存した0.1mg/L程度の亜鉛のクロロ錯イオンを、弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させて除去する。
2.溶媒抽出工程
次に、本発明に係る脱銅方法を構成すると共に、上記(4)の浄液工程の一部を構成する溶媒抽出工程について、詳細に説明する。
(1)溶媒抽出工程の構成
本発明に係る溶媒抽出工程の概略フローシートを、図2に示した。このフローシートは、本発明に係る脱銅方法のフローも表している。
溶媒抽出は向流多段方式で採用し、抽出段、洗浄段、逆抽出段、銅回収段から構成される。
ミキサーセトラー方式の抽出装置を使用し、本発明の説明に用いた実施例においては、抽出段は3段、洗浄段も3段、逆抽出段も3段、銅回収段は1段から構成されている。
なお、逆抽出段における逆抽出後の有機相中の亜鉛や鉄を除去するために、脱亜鉛段を銅回収段に対して並列または直列に設けた方が好ましい。
すなわち、抽出始液の銅濃度に応じて逆抽出後の有機相の所定量を抜き取って、水またはpH1以上の希塩酸を混合、接触させ、その有機相中の銅を水相に逆抽出する銅回収段と、逆抽出後の有機相への亜鉛または鉄の濃縮度合いに応じて逆抽出後の有機相の所定量を抜き取って、アルカリ中和し、その有機相中の亜鉛および鉄を除去する脱亜鉛段を、それぞれ独立して運転させれば、効率的に有機相中の銅、亜鉛、鉄を除去することができる。
亜鉛と鉄は混合硫化物からインプットされるため、抽出始液の亜鉛濃度については混合硫化物中の亜鉛含有率や混合硫化物の処理量に左右される。
抽出始液の鉄濃度については脱鉄工程で除去されるので、常に一定である。
それに対して、抽出始液の銅濃度については、混合硫化物に対するニッケルマットの処理比率によって決まる。
すなわち、抽出始液の亜鉛濃度と銅濃度は、それぞれ独立して変動し、特に銅濃度の変動巾が大きいため、有機相中の亜鉛と銅の除去は、それぞれ独立して運転させた方が効率的である。
また、直列配置、すなわち逆抽出後の有機相aに、水相として水またはpH1以上の希塩酸を混合・接触させ、その有機相a中の銅を水相に逆抽出した後、銅回収後の有機相bをアルカリ中和し、有機相中の亜鉛や鉄を除去する方法としても、銅量見合いの脱亜鉛段でのアルカリ使用量を減少させることができるためコストダウンとなる。
(2)抽出剤と反応
抽出剤は3級アミンを用い、好ましくはトリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)またはトリ−イソ−オクチルアミン(TIOA)を使用する。
抽出剤の希釈剤としては、芳香族炭化水素を用いる。
有機相の粘度を調整するため、有機相(抽出剤と希釈剤)中の抽出剤濃度は、20〜40体積%とする。
3級アミンは、下記式(8)に従って、塩酸を付加されて活性化することにより、式(9)および式(9’)に示すような金属クロロ錯イオンの抽出能力を保有し、しかも優れたニッケルとコバルトの分離特性を有する。
Figure 0006176491
上記式(9)中のMは、Co、Cu、Zn等のクロロ錯イオンを形成する金属種を表すが、金属イオンの価数によってクロロ錯イオンの形態が異なるため、例えばFe(3価)の場合は、下記式(9’)に従う。
なお、式(8)、式(9)、式(9’)中の「:」は、窒素原子の非共有電子対を表す。
Figure 0006176491
抽出段では、式(9)または式(9’)で示された反応により、Co、Cu、Zn、Fe等のクロロ錯イオンを形成する金属種が有機相中に抽出され、金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミンが生成される。なお、ニッケルはクロロ錯イオンを形成しないので、抽出残液に残留して分離される。
したがって、塩化ニッケル水溶液中に、コバルトよりもクロロ錯イオンを形成し易い、すなわちクロロ錯イオンの安定度が高い金属、例えば銅、亜鉛、鉄のクロロ錯イオンが含まれている場合には、これらの金属も抽出される。
一方、逆抽出段では、洗浄後の有機相を、すなわちコバルトのクロロ錯イオンを担持したアミンを、弱酸性水溶液と接触させることにより、式(9)の逆反応である下記式(10)に従って、コバルトを水相中に脱離することができる。
Figure 0006176491
3.溶媒抽出による脱銅
溶媒抽出の主な機能は、第一に抽出始液(塩化ニッケルと塩化コバルトの混合溶液)からコバルトを抽出・分離することにあるが、さらなる機能として逆抽出後の有機相から銅を選択的に脱離することができれば、抽出始液中の銅を除去する工程としての役割も担わせることができる。
そこで、ニッケルおよびコバルト製錬プロセスにおける塩素浸出液からの脱銅は、基本的には置換浸出(セメンテーション)工程で実施されるが、ニッケルマットの不足等によって置換浸出終液中の銅濃度が大きく変動したり、上昇した場合、溶媒抽出による脱銅が効果を発揮する。
この、溶媒抽出を脱銅工程として利用することが、本発明の第一の特徴である。
抽出段では抽出始液中の銅濃度が0.2g/Lという高濃度であっても、ほぼ全量の銅イオンを有機相中に抽出することができる。
これは、抽出始液中の塩化物イオン濃度が200〜250g/Lと高濃度であり、銅が安定したクロロ錯イオンを形成しているためである。
一方、コバルトを塩化コバルト水溶液として回収する逆抽出段では、抽出段に比べて塩化物イオン濃度が低く、70〜100g/Lである。
そのために、その70〜100g/Lの塩化物イオン濃度では、有機相中の銅クロロ錯イオンが不安定となり、銅の一部は水相中に逆抽出される。
その水相中の銅濃度は、有機相中の銅濃度と比例関係にあることから、有機相中の銅濃度が上昇した場合、塩化コバルト水溶液中の銅濃度が上昇することになる。
この塩化コバルト水溶液中の銅濃度が上昇すると、その後の塩化コバルト水溶液の浄液(脱銅)負荷が上昇するが、さらには製品である電気コバルトの銅含有率を増加させる可能性もある。
図3は、逆抽出段における有機相中銅濃度と水相中銅濃度の関係を示したものである。
図3のデータは、抽出段3段、洗浄段3段、逆抽出段3段の向流多段方式の溶媒抽出工程において、抽出剤としてトリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)を20体積%または30体積%、希釈剤として芳香族炭化水素を80体積%または70体積%含有する有機溶媒を用いた時の操業データである。
なお、抽出始液(塩化ニッケルと塩化コバルトの混合水溶液)の組成は、ニッケル濃度が170〜210g/L、コバルト濃度が2〜10g/L、銅濃度が0.02〜0.2g/Lであり、逆抽出残液(塩化コバルト水溶液)のコバルト濃度が50〜70g/Lである。
図3より、抽出剤の濃度によって回帰直線の傾き、すなわち分配比は変わるが、有機相中の銅を、銅濃度が0.4g/L以下となるまで低下させることで、塩化コバルト水溶液中の銅濃度を0.3g/L以下とすることができることが分かる。
この銅濃度の低い塩化コバルト水溶液を製造することが、本発明の第二の特徴である。
本発明の銅回収段は、有機相中に濃縮した銅、亜鉛、鉄から銅を選択的に水相に分離除去する工程である。
有機相中の銅、亜鉛、鉄の安定性は、すなわち金属のクロロ錯イオンの安定性であり、水相中の塩化物イオン濃度と正の相関がある。
図4は、銅、亜鉛、鉄に関する水相中の塩化物イオン濃度と有機相中への分配比の関係を示したものである。
ここで、銅、亜鉛、鉄の中では、有機相中の安定性は銅が最も低く、水相中に分配し易い。
したがって、逆抽出後の有機相に、塩化物イオン濃度の低い水相を混合・接触させれば、有機相中の銅を選択的に水相に脱離することができる。
本発明者らは、塩化物イオン濃度と銅の逆抽出挙動について研究を重ねた結果、逆抽出始液としては水またはpH1以上の希塩酸が好適であることを、見出すことができた。
このうち、水を使用した場合が有機相中から銅を脱離し易いが、pH1の塩酸を使用すれば有機相からの塩酸の脱離を防止することができ、その後の塩酸による抽出剤の活性化処理が不要となるため好都合である。
本発明によれば、図2に示したような溶媒抽出工程を構成して、有機相中の銅濃度を0.4g/L以下に調整することで、銅濃度0.2g/Lまでの抽出始液の処理が可能となり、逆抽出後の塩化コバルト水溶液中の銅濃度を0.3g/L以下とすることができる。
言い換えれば、従来技術(アルカリ中和による脱亜鉛段)の10倍の銅負荷に対応することが可能となる。
本発明では、アルカリを使用せずに銅回収を行うため、例えばアルカリ中和し、該有機中の亜鉛および鉄を除去する従来法の脱亜鉛段と比較して、コストダウンを図ることが可能である。
また、有機相が強アルカリと接することがないため、銅回収液中には有機が分解して生成したCOD成分が低濃度でしか存在せず、後工程へのCOD負荷を軽減することができる。
すなわち、従来のアルカリを使用した強い脱離に対してpH1から中性領域の水を使用した弱い脱離を行う、もしくは併用することで、従来技術(アルカリ中和による脱亜鉛段)の様々な問題を解決することができる。
なお、銅回収始液にpH1程度の希塩酸を使用することで有機相からの塩酸の脱離を抑えることもできる。
次に、本発明をさらに実施例を用いて説明する。
抽出段3段、洗浄段3段、逆抽出段3段で構成された向流多段方式のミキサーセトラーを用いた溶媒抽出装置で、抽出剤として3級アミンであるトリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)を20体積%、希釈剤として芳香族炭化水素を80体積%含有する有機溶媒を用い、溶媒抽出操業を行った。
抽出始液(塩化ニッケルと塩化コバルトの混合水溶液)の組成は、ニッケル濃度が170〜210g/L、コバルト濃度が2〜10g/L、銅濃度が0.01〜0.02g/L、亜鉛濃度が0.02〜0.03g/L、鉄濃度が10〜14mg/Lであり、逆抽出残液(塩化コバルト水溶液)のコバルト濃度が50〜70g/L、銅濃度が0.1〜0.2g/Lである。
各流量は、有機流量が1000〜1300L/分、抽出始液流量が1300〜1600L/分、逆抽出始液流量が140〜170L/分である。
その後、逆抽出後の有機相の一部を抽出段等と同様にミキサーセトラーを用いた銅回収段(1段)に送り、中性の水と混合した。
有機相流量は48〜54L/分、水相流量は48〜54L/分、O/A比は0.9〜1.1とした。
その結果を表1に示すが、表1より有機相中の銅は水相中に選択的に逆抽出されることが分かる。
なお、銅回収後の水相中のCODは20mg/Lであった。
表1、2における「逆抽出有機」は図2中の逆抽出後の有機相「a」を表し、「銅回収有機」は図2中の銅回収後の有機相「b」を示すものである。
Figure 0006176491
NOAを30体積%、芳香族炭化水素を70体積%含有する有機溶媒を用いた以外は実施例1と同様の条件で、溶媒抽出操業を行った。
その後、逆抽出後の有機相の一部を銅回収段に送り、水相としてpH1の希塩酸を用いた以外は実施例1と同様の方法で、O/A比0.9〜1.1にて有機相と水相を混合した。
その結果を表2に示したが、中性の水と同様にpH1の塩酸でも、有機相中の銅は水相中に選択的に逆抽出されることが分かった。
Figure 0006176491
(比較例1)
実施例1と同様の条件で溶媒抽出を行い、その後、逆抽出後の有機相の一部を3mのFRP槽3基から成る脱亜鉛段(1段)に送り、第1槽目の中和槽で希釈苛性ソーダと混合した。なお、使用した希釈苛性ソーダの苛性ソーダ濃度は118g/Lである。
その後、アルカリ中和後の有機相と水相と沈殿物を含む混合物から、沈殿物を含まない有機相をオーバーフローで抜き出し、水相と沈殿物と有機相の残部を含んだ混合物を第2槽目の酸溶解槽に送り、35%塩酸にて酸溶解した。
なお、有機の抜出し流量は48〜54L/分、希釈苛性ソーダ流量は48〜54L/分とした。使用した35%塩酸の使用量は15L/分とした。
得られたアルカリ中和による脱亜鉛後の水相中のCOD濃度は、230mg/Lであった。
このように逆抽出有機を銅回収段で処理することで有機中の銅を選択的に除去し、目標濃度まで低下させることが可能となり、有機溶媒の抜取り量、すなわち銅回収段での処理量を調整することにより、逆抽出後有機相中の銅濃度は0.4g/L以下に調整されるものである。
さらに、比較例(従来法)と比較して、中和用の苛性ソーダや酸溶解用の塩酸を必要とせず、処理後の水相のCOD濃度も10分の1程度に低減することを可能としている。
なお、有機相中の銅濃度がさらに上昇した場合には、それに対応して水相中の銅濃度が上昇するため有機溶媒中からの除去量が増えることになる。
a 逆抽出後の有機相
b 銅回収後の有機相

Claims (3)

  1. 抽出剤として3級アミン、希釈剤として芳香族炭化水素を含有した有機溶媒を有機相に用いた溶媒抽出法を用いて、コバルト、銅、亜鉛、鉄を含有する塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離回収すると共に銅、亜鉛、鉄を除去する方法において、下記(1)〜(3)の工程を順に含むことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の脱銅方法。
    (記)
    (1)前記コバルト、銅、亜鉛、鉄を含有し、ニッケル濃度が170〜210g/L、コバルト濃度が2〜10g/L、及び銅濃度が0.01〜0.2g/Lである塩化ニッケル水溶液から、前記有機相にコバルト、銅、亜鉛、鉄を抽出した後、前記有機相中の銅を、銅濃度が0.4g/L以下に調整したコバルト、銅、亜鉛、鉄を含む有機相を形成し、コバルト、銅、亜鉛、鉄が除去された塩化ニッケル水溶液を得る抽出工程。
    (2)前記(1)の工程で得られた前記コバルト、銅、亜鉛、鉄を含み、前記銅を銅濃度が0.4g/L以下に調整した有機相に弱酸性水溶液を接触させることによって、前記有機相中のコバルトを前記有機相から脱離させ、銅濃度が0.3g/L以下の塩化コバルト水溶液の水相と、逆抽出後の銅、亜鉛、鉄を含む有機相を得る逆抽出工程。
    (3)前記逆抽出後の有機相に、水又はpH1以上の希塩酸を混合、接触させ、前記有機相中の銅を水相に逆抽出して銅を回収し、銅を除去した後の亜鉛、鉄を含む有機相は前記(1)の工程の有機溶媒として用いる銅回収工程。
  2. 前記(3)の銅回収工程における有機相対水相の体積比率が、1.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の脱銅方法。
  3. 前記3級アミンが、トリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)又はトリ−イソ−オクチルアミン(TIOA)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塩化ニッケル水溶液の脱銅方法。
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