JP6176491B2 - 塩化ニッケル水溶液の脱銅方法 - Google Patents
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Description
そこで得られた、酸化剤としての2価の銅クロロ錯イオンを含んだ塩素浸出液に、粉砕したニッケルマットを接触させて、銅とニッケルの置換反応を行うことによりニッケルマット中のニッケルを液に置換浸出する。
ここで分離されたコバルトについては、ニッケルとは別の処理ルートにより、さらなる不純物の除去が行われ、電解採取により電気コバルトとして製品化される。
さらに、特許文献1の技術では、ニッケルマットや混合硫化物等の原料中に微量に含まれる銅は、ニッケルおよびコバルトを精製する上での不純物ではあるが、上記塩素浸出工程や置換浸出工程では酸化剤として利用され、塩素浸出工程と置換浸出工程の間を循環している。
例えば、コバルトを含んだニッケル水溶液中に、酸化剤として塩素ガスを、中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加して、コバルトを3価の水酸化物として分離する方法も行われてきたが、水溶液中のコバルトを固体として完全に除去するためには、重量比でコバルトの3倍程度のニッケルも3価の水酸化物を生成してしまい、ニッケルとコバルトの分離性が悪いため効率的かつ経済的な方法とは言えなかった。
ニッケルとコバルトを分離するための溶媒抽出法では、有機抽出剤としてD2EHPA(Di−(2−ethylhexyl)phosphoric acid)等の燐酸エステル系酸性抽出剤や、TNOA(Tri−n−octylamine)等のアミン系抽出剤が用いられる。
上記クラッドとは金属の水酸化物等の固体で、油水分離装置内で有機相と水相の中間に滞留・蓄積されるため、溶媒抽出の重要な技術要素である油水分離を大きく阻害する。
その理由は、3級アミンの方が、より極性に富み反応性が高く、また、水に対する溶解度が低いためである。
この3級アミンは、塩酸を付加されて活性化することにより、金属クロロ錯イオンの抽出能力を保有し、しかも優れたニッケルとコバルトの分離特性を有する。
したがって、塩化ニッケル水溶液中に、コバルトよりもクロロ錯イオンを形成し易い、すなわちクロロ錯イオンの安定度が高い金属、例えば銅、亜鉛、鉄のクロロ錯イオンが含まれている場合には、これらの金属も抽出される。
ここで、コバルトが逆抽出された有機相は、すなわち再生された抽出剤は、再び抽出段に戻されて循環使用され、抽出、洗浄、逆抽出が繰返されることになる。
このような金属の蓄積が進むと、抽出反応に寄与すべきアミノ基が、蓄積した金属に占有されてしまうため、抽出剤の抽出能力の大巾な低下を招くことになる。また、抽出剤の粘性が上がるため、油水分離性の低下も招くことになる。
例えば、特許文献2には、逆抽出後の有機相の一部を抜き取って、不純物として含有される亜鉛を中和処理によって除去した後、抽出剤を活性化し、活性化後の有機相を塩化コバルト水溶液である逆抽出後の水相と接触させる方法が記載されている。
さらに、沈殿物に有機相が付着するため、高価な抽出剤のロスにつながり、抽出剤コストの増加を招いていた。
また、この抜き出した油と重金属の混合物を処分するに当たっては、環境上の問題を発生させないようにするために、多大な技術とコストが必要となっていた。
この方法は、逆抽出後の有機相をアルカリ中和し、アルカリ中和後の有機相と水相と沈殿物を含む混合物から、沈殿物を含まない有機相を沈降分離によって抜き出し、水相と沈殿物と有機相の残部を含んだ混合物を酸溶解する。
この方法により、有機相および水相と混合された沈殿物の取扱いは皆無になった。
これは、逆抽出後の有機相を、塩化物イオン濃度が0〜5g/Lの水または水溶液で、(有機相/水相)比が1〜10となるように洗浄するというもので、特許文献2および特許文献3の方法と比較して、設備が簡便で、かつコスト上有利な方法である。
そのため、塩素浸出液中の銅濃度を10〜60g/Lの範囲内の適正値に維持する必要がある。
この置換浸出液の銅濃度を塩素浸出液中の銅濃度より低下させるためには、混合硫化物中に含まれるNiSよりも還元力の強いNi0やNi3S2を含有したニッケルマットが必要となる。
具体的には置換浸出終液中の銅濃度、すなわち溶媒抽出工程における抽出始液中の銅濃度が0.02g/Lから0.2g/Lに上昇しても対応が可能な、銅の除去技術を確立する必要があった。
(2)前記「(1)の工程」で得られた前記コバルト、銅、亜鉛、鉄を含み、前記銅を銅濃度を0.4g/L以下に調整した有機相に弱酸性水溶液を接触させることによって、前記有機相中のコバルトを前記有機相から脱離させ、銅濃度が0.3g/L以下の塩化コバルト水溶液の水相と、逆抽出後の銅、亜鉛、鉄を含む有機相を得る逆抽出工程。
(3)前記逆抽出後の有機相に、水又はpH1以上の希塩酸を混合、接触させ、前記有機相中の銅を水相に逆抽出して銅を回収し、銅を除去した後の亜鉛、鉄を含む有機相は前記(1)の工程の有機溶媒として用いる銅回収工程。
本発明の塩化ニッケル水溶液の脱銅方法は、コバルト、銅、亜鉛、鉄を含有する塩化ニッケル水溶液から、抽出剤として3級アミンを、その抽出剤を希釈する希釈剤に芳香族炭化水素を用いて形成した有機溶媒を使用する溶媒抽出によって、コバルトを分離回収すると共に銅、亜鉛、鉄を除去するもので、次の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とするものである。
水相に用いたコバルト、銅、亜鉛、鉄を含有する塩化ニッケル水溶液からコバルト、銅、亜鉛、鉄を抽出した有機相を形成し、コバルト、銅、亜鉛、鉄が除去された塩化ニッケル水溶液(水相)を得る抽出工程。
(2)逆抽出工程
コバルト、銅、亜鉛、鉄を抽出した有機相から、水相に用いた弱酸性水溶液によってコバルトを脱離して、塩化コバルト水溶液を得る逆抽出工程。
(3)銅回収工程
コバルトが脱離された逆抽出後の有機相に、水またはpH1以上の希塩酸を水相に用いて混合・接触させ、有機相中の銅を水相に逆抽出し、銅を除去した後の有機相を上記(1)の抽出工程に戻す、銅回収工程。
本発明を含むニッケルおよびコバルト製錬プロセスの概略フローシートを図1に示す。
本発明は、ニッケルおよびコバルト製錬プロセスの全体工程の中の、溶媒抽出工程(図1中のAに示す工程)における逆抽出後の有機相のスクラビングに係る技術ではあるが、原料処理比率、塩素浸出、置換浸出(セメンテーション)、溶媒抽出までの浄液、溶媒抽出等、ニッケルおよびコバルト製錬プロセスの主要な要素に関して、全体最適化を達成するための技術であるため、図1を参照して主要要素毎に詳細に説明する。
主要な原料は、ニッケルマットと混合硫化物の2種類となる。
ニッケルマットとは、ニッケル硫化鉱石を溶鉱炉で溶解して得られるニッケル硫化物や、ニッケル酸化鉱石に硫黄を添加して電気炉で溶解して得られるニッケル硫化物等、いわゆる乾式製錬法で得られたニッケル硫化物を指している。
したがって、このニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットの処理量によって、銅のインプット量が大きく変動することになる。
混合硫化物および後述するセメンテーション残渣を、塩化物水溶液にレパルプした後、そのスラリーに塩素ガスを吹込むことによって混合硫化物中のニッケルおよびコバルトと、セメンテーション残渣中のニッケルおよび銅を、塩化物水溶液中に塩素浸出する。
そのため、塩素浸出反応には、一定量の銅が必要不可欠であり、塩素浸出液中の銅濃度を10〜60g/Lの範囲内の適正値に維持することが重要となっている。
主要な塩素浸出反応式を下記式(1)〜(4)に示した。
置換浸出工程は、第1の置換浸出工程(図1の「置換浸出1」)と第2の置換浸出工程(図1の「置換浸出2」)の、2つのステージで構成される。
塩素浸出液に含まれる2価の銅のクロロ錯イオンの酸化力を使って、第1の置換浸出工程で混合硫化物中のニッケルおよびコバルトを浸出する。
第1の置換浸出工程で得られた置換浸出液は、2価の銅クロロ錯イオンが1価の銅のクロロ錯イオンに還元されている。
このセメンテーション反応は、固体のニッケルが溶出してニッケルイオンとなり、その溶出したニッケルと電気化学的に当量の液中の銅イオンが固体となるため、置換浸出工程は塩素浸出液中に含まれる銅を固体として除去する脱銅工程であるとも言える。
主要な置換浸出反応式を下記式(5)〜(7)に示した。
塩素浸出液量は塩素浸出工程と第1の置換浸出工程で処理する混合硫化物量で決まってくる。
塩素浸出液中銅濃度は、最適な塩素浸出操業を継続するために10〜60g/Lの範囲内の適正値に維持されるため、一定の値となる。
置換浸出終液(セメンテーション終液)は、浄液工程に送られる。浄液工程は、脱鉄工程、溶媒抽出工程、脱鉛工程、脱亜鉛工程で構成される。
この脱鉄工程における水溶液のpHは、2.0〜2.5程度であるので、この工程で銅の水酸化物が生成されることは無い。
さらに、この脱鉄工程では銅の除去がされないため、置換浸出終液中の銅濃度が上昇すると、次工程の浄液工程(溶媒抽出)に供される抽出始液の銅濃度が上昇することになる。
脱鉛工程での抽出残液のpHは4〜5なので、ニッケルの一部も3価の水酸化物として沈殿物を形成する。
次に、本発明に係る脱銅方法を構成すると共に、上記(4)の浄液工程の一部を構成する溶媒抽出工程について、詳細に説明する。
本発明に係る溶媒抽出工程の概略フローシートを、図2に示した。このフローシートは、本発明に係る脱銅方法のフローも表している。
溶媒抽出は向流多段方式で採用し、抽出段、洗浄段、逆抽出段、銅回収段から構成される。
ミキサーセトラー方式の抽出装置を使用し、本発明の説明に用いた実施例においては、抽出段は3段、洗浄段も3段、逆抽出段も3段、銅回収段は1段から構成されている。
なお、逆抽出段における逆抽出後の有機相中の亜鉛や鉄を除去するために、脱亜鉛段を銅回収段に対して並列または直列に設けた方が好ましい。
抽出始液の鉄濃度については脱鉄工程で除去されるので、常に一定である。
それに対して、抽出始液の銅濃度については、混合硫化物に対するニッケルマットの処理比率によって決まる。
抽出剤は3級アミンを用い、好ましくはトリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)またはトリ−イソ−オクチルアミン(TIOA)を使用する。
抽出剤の希釈剤としては、芳香族炭化水素を用いる。
有機相の粘度を調整するため、有機相(抽出剤と希釈剤)中の抽出剤濃度は、20〜40体積%とする。
なお、式(8)、式(9)、式(9’)中の「:」は、窒素原子の非共有電子対を表す。
したがって、塩化ニッケル水溶液中に、コバルトよりもクロロ錯イオンを形成し易い、すなわちクロロ錯イオンの安定度が高い金属、例えば銅、亜鉛、鉄のクロロ錯イオンが含まれている場合には、これらの金属も抽出される。
溶媒抽出の主な機能は、第一に抽出始液(塩化ニッケルと塩化コバルトの混合溶液)からコバルトを抽出・分離することにあるが、さらなる機能として逆抽出後の有機相から銅を選択的に脱離することができれば、抽出始液中の銅を除去する工程としての役割も担わせることができる。
抽出段では抽出始液中の銅濃度が0.2g/Lという高濃度であっても、ほぼ全量の銅イオンを有機相中に抽出することができる。
これは、抽出始液中の塩化物イオン濃度が200〜250g/Lと高濃度であり、銅が安定したクロロ錯イオンを形成しているためである。
そのために、その70〜100g/Lの塩化物イオン濃度では、有機相中の銅クロロ錯イオンが不安定となり、銅の一部は水相中に逆抽出される。
その水相中の銅濃度は、有機相中の銅濃度と比例関係にあることから、有機相中の銅濃度が上昇した場合、塩化コバルト水溶液中の銅濃度が上昇することになる。
この塩化コバルト水溶液中の銅濃度が上昇すると、その後の塩化コバルト水溶液の浄液(脱銅)負荷が上昇するが、さらには製品である電気コバルトの銅含有率を増加させる可能性もある。
図3のデータは、抽出段3段、洗浄段3段、逆抽出段3段の向流多段方式の溶媒抽出工程において、抽出剤としてトリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)を20体積%または30体積%、希釈剤として芳香族炭化水素を80体積%または70体積%含有する有機溶媒を用いた時の操業データである。
この銅濃度の低い塩化コバルト水溶液を製造することが、本発明の第二の特徴である。
有機相中の銅、亜鉛、鉄の安定性は、すなわち金属のクロロ錯イオンの安定性であり、水相中の塩化物イオン濃度と正の相関がある。
ここで、銅、亜鉛、鉄の中では、有機相中の安定性は銅が最も低く、水相中に分配し易い。
したがって、逆抽出後の有機相に、塩化物イオン濃度の低い水相を混合・接触させれば、有機相中の銅を選択的に水相に脱離することができる。
このうち、水を使用した場合が有機相中から銅を脱離し易いが、pH1の塩酸を使用すれば有機相からの塩酸の脱離を防止することができ、その後の塩酸による抽出剤の活性化処理が不要となるため好都合である。
言い換えれば、従来技術(アルカリ中和による脱亜鉛段)の10倍の銅負荷に対応することが可能となる。
すなわち、従来のアルカリを使用した強い脱離に対してpH1から中性領域の水を使用した弱い脱離を行う、もしくは併用することで、従来技術(アルカリ中和による脱亜鉛段)の様々な問題を解決することができる。
なお、銅回収始液にpH1程度の希塩酸を使用することで有機相からの塩酸の脱離を抑えることもできる。
各流量は、有機流量が1000〜1300L/分、抽出始液流量が1300〜1600L/分、逆抽出始液流量が140〜170L/分である。
有機相流量は48〜54L/分、水相流量は48〜54L/分、O/A比は0.9〜1.1とした。
なお、銅回収後の水相中のCODは20mg/Lであった。
表1、2における「逆抽出有機」は図2中の逆抽出後の有機相「a」を表し、「銅回収有機」は図2中の銅回収後の有機相「b」を示すものである。
その後、逆抽出後の有機相の一部を銅回収段に送り、水相としてpH1の希塩酸を用いた以外は実施例1と同様の方法で、O/A比0.9〜1.1にて有機相と水相を混合した。
実施例1と同様の条件で溶媒抽出を行い、その後、逆抽出後の有機相の一部を3m3のFRP槽3基から成る脱亜鉛段(1段)に送り、第1槽目の中和槽で希釈苛性ソーダと混合した。なお、使用した希釈苛性ソーダの苛性ソーダ濃度は118g/Lである。
その後、アルカリ中和後の有機相と水相と沈殿物を含む混合物から、沈殿物を含まない有機相をオーバーフローで抜き出し、水相と沈殿物と有機相の残部を含んだ混合物を第2槽目の酸溶解槽に送り、35%塩酸にて酸溶解した。
なお、有機相中の銅濃度がさらに上昇した場合には、それに対応して水相中の銅濃度が上昇するため有機溶媒中からの除去量が増えることになる。
b 銅回収後の有機相
Claims (3)
- 抽出剤として3級アミン、希釈剤として芳香族炭化水素を含有した有機溶媒を有機相に用いた溶媒抽出法を用いて、コバルト、銅、亜鉛、鉄を含有する塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離回収すると共に銅、亜鉛、鉄を除去する方法において、下記(1)〜(3)の工程を順に含むことを特徴とする塩化ニッケル水溶液の脱銅方法。
(記)
(1)前記コバルト、銅、亜鉛、鉄を含有し、ニッケル濃度が170〜210g/L、コバルト濃度が2〜10g/L、及び銅濃度が0.01〜0.2g/Lである塩化ニッケル水溶液から、前記有機相にコバルト、銅、亜鉛、鉄を抽出した後、前記有機相中の銅を、銅濃度が0.4g/L以下に調整したコバルト、銅、亜鉛、鉄を含む有機相を形成し、コバルト、銅、亜鉛、鉄が除去された塩化ニッケル水溶液を得る抽出工程。
(2)前記(1)の工程で得られた前記コバルト、銅、亜鉛、鉄を含み、前記銅を銅濃度が0.4g/L以下に調整した有機相に弱酸性水溶液を接触させることによって、前記有機相中のコバルトを前記有機相から脱離させ、銅濃度が0.3g/L以下の塩化コバルト水溶液の水相と、逆抽出後の銅、亜鉛、鉄を含む有機相を得る逆抽出工程。
(3)前記逆抽出後の有機相に、水又はpH1以上の希塩酸を混合、接触させ、前記有機相中の銅を水相に逆抽出して銅を回収し、銅を除去した後の亜鉛、鉄を含む有機相は前記(1)の工程の有機溶媒として用いる銅回収工程。 - 前記(3)の銅回収工程における有機相対水相の体積比率が、1.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の脱銅方法。
- 前記3級アミンが、トリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)又はトリ−イソ−オクチルアミン(TIOA)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塩化ニッケル水溶液の脱銅方法。
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