JP6175555B2 - ポリカーボネートおよびそれを含む光学部材 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、ビナフトール骨格を有し、屈折率の高いポリエステルが提案されている。しかしポリエステルは耐湿熱性が低いという欠点がある。
また特許文献2には、ビナフトール骨格を有し、溶液安定性および耐摩耗性に優れたコポリカーボネートが提案されている。しかしこのコポリカーボネートは、ビナフトール構造がカーボネート結合に直接結合しているため、ポリマー構造が剛直で流動性が低く、成形性に劣るという欠点がある。
一方、特許文献3には、高い屈折率を有するポリカーボネートとして、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロン由来の単位およびフルオレン化合物由来の単位を含有するコポリカーボネートが提案されている。しかしこのコポリカーボネートも、流動性が低く、成形性に劣るという欠点がある。
また本願の基礎出願である特願2014−038772号の出願の後に国際公開された特許文献4には2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフチル由来の単位を有するコポリカーボネートが提案されている。
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた。その結果、ビナフトール骨格を有するジオール成分と、アントロン骨格を有するジオール成分とを用いることにより、高透明、高屈折、低複屈折であって成形性および耐湿熱性特性をバランス良く満足し、光学部材に適したポリカーボネートが得られることを見出し本発明に到達した。
1. 98〜40モル%の下記式(I)で表される単位および2〜60モル%の下記式(II)で表される単位を含有し、0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.40であるポリカーボネート。
3. 前項1または2に記載のポリカーボネートを含む光学部材。
4. 前項3に記載の光学部材を含む光学レンズ。
5. 中心部の厚みが0.05〜3.0mm、レンズ部の直径が1.0〜20.0mmの前項4に記載の光学レンズ。
6. 下記式(III)で表されるジオール、下記式(IV)で表されるジオールおよび炭酸エステル形成化合物を反応させることを特徴とする前項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
〈式(I)で表される単位〉
本発明のポリカーボネートは、下記式(I)で表される単位を含有する。
式(I)の単位の含有量は、上限値が98モル%であり、好ましくは90モル%であり、より好ましくは75モル%である。また下限値は40モル%であり、好ましくは45モル%である。
本発明のポリカーボネートは、下記式(II)で表される単位を含有する。
式(II)の単位の含有量は、下限値が2モル%であり、好ましくは10モル%であり、さらに好ましくは25モル%である。また上限値は、60モル%であり、好ましくは55モル%である。
本発明のポリカーボネートの比粘度は、0.12〜0.40であり、好ましくは0.15〜0.30であり、さらに好ましくは0.18〜0.35の範囲である。比粘度は、0.7gのポリカーボネートを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定する。比粘度が0.12未満では成形体が脆くなり、0.40より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、流動性が低下し、充填不足等の射出成形不良になり成形性が低下する。
〈溶融粘度〉
本発明のポリカーボネートの260℃、せん断速度1000/secにおける溶融粘度は、好ましくは30〜300Pa・s、より好ましくは30〜250Pa・s、さらに好ましくは50〜200Pa・sである。300Pa・sより溶融粘度が高い場合、成形性に劣り、成形品の光学歪が出易くなって好ましくない。
〈屈折率〉
本発明のポリカーボネートの屈折率は、好ましくは1.635〜1.700、より好ましくは1.640〜1.700、さらに好ましくは1.650〜1.700の範囲である。屈折率は25℃、波長589nmにおいて測定する。屈折率1.635以上の場合、レンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くすることが出来る為好ましい。
本発明のポリカーボネートのアッベ数(ν)は、好ましくは19〜25、より好ましくは19〜24、さらに好ましくは19〜23の範囲である。アッベ数は25℃、波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出する。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nF:波長656nmでの屈折率
nC:波長486nmでの屈折率
〈透過率〉
本発明のポリカーボネートの分光透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは81%以上、さらに好ましくは82%以上である。透過率は、厚さ0.1mmの成形板を波長395nmにおいて測定する。分光透過率が、80%以上出なければ、光学部材として好ましくない。
〈ガラス転移温度〉
本発明のポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは120〜170℃、より好ましくは125〜160℃、さらに好ましくは130〜145℃である。ガラス転移温度(Tg)は昇温速度20℃/minにて測定する。Tgが120℃未満では、該ポリカーボネートを用いて形成した光学部品の使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが170℃より高い場合では溶融粘度が高くなり、成形体を形成する上での取扱いが困難となる。
〈耐湿熱性〉
本発明のポリカーボネートにおける耐湿熱性の指標となる85℃、85%RH(相対湿度)の条件下で2000時間放置した後の比粘度保持率は、好ましくは、80%以上であり、より好ましくは、85%以上、さらに好ましくは、90%以上である。比粘度保持率が、80%以上であると、湿熱環境下で使用した際も色相悪化や成形品の強度低下がなく、ポリカーボネートの使用環境に制限が無く好ましい。80%未満であると、比粘度低下に伴った強度が低下し、割れや変形が生じ好ましく、色相が悪化し好ましくない。
本発明のポリカーボネートは、ジオール成分とカーボネート前駆体である炭酸エステル形成化合物を反応させることにより製造することができる。
(式(III)で表されるジオール)
本発明のポリカーボネートにおけるジオール成分の一つが下記式(III)で表されるジオールである。
ジオール成分中の式(III)で表されるジオールの含有量は、上限値が98モル%であり、好ましくは90モル%であり、より好ましくは75モル%である。また下限値は40モル%であり、好ましくは45モル%である。
ジオール成分の他の一つが下記式(IV)で表されるジオールである。
ジオール成分中の式(IV)で表されるジオールの含有量は、下限値が2モル%であり、好ましくは10モル%であり、より好ましくは25モル%である。また上限値は60モル%であり、好ましくは55モル%である。
本発明のポリカーボネートは、他のジオールを共重合してもよく、他のジオール成分として、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオールが挙げられる。
またトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール等の脂環式ジオールが挙げられる。
またビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、α,ω−ビス[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ヒドロキシフェニル]−1−フェニルエタン等の芳香族ジオール等が挙げられる。
また、式(III)で表されるジオール成分と式(IV)で表されるジオール成分とのモル比は、98:2〜2:98の範囲であるとポリカーボネートを含む光学レンズの複屈折が特に小さくなり好ましい。さらに好ましくは、98:2〜5:95、より好ましくは、98:2〜50:50である。
炭酸エステル形成化合物として、ホスゲンや、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンのビスクロロホーメートや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等の炭酸ジエステルが挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
ジオールとホスゲンとの反応では、非水系で酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、第三級アミン等が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間が好ましい。
エステル交換反応では、不活性ガス存在下にジオールとビスアリールカーボネートを混合し、アルカリ金属化合物触媒もしくはアルカリ土類金属化合物もしくはその双方を含む混合触媒の存在下にて、減圧下通常120〜350℃、好ましくは150〜300℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
触媒として使用するアルカリ金属化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
助触媒として使用する含窒素塩基性化合物としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
これらの触媒は単独で用いても、二種以上併用してもよく、これらの重合触媒の使用量はジオール成分の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられる。また、色相改善のために酸化防止剤や熱安定剤等を加えてもよい。
触媒失活後、ポリカーボネート中の低沸点化合物を133〜13.3Paの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
本発明のポリカーボネートには、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を含有してもよい。添加剤として、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。リン系安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤は、併用することもできる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系を含む群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル−RLS等が挙げられる。ブルーイング剤は、樹脂の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与したポリカーボネートの場合は、一定量の紫外線吸収剤が配合されているため紫外線吸収剤の作用や色によって成形体が黄色味を帯びやすい現実があり、特にシートやレンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は非常に有効である。
本発明のポリカーボネートに、各種添加剤を添加するには、周知の方法を用いることができる。たとえば、溶液状態で各成分を混合し、溶剤を蒸発させるか、溶剤中に沈殿させる方法が挙げられる。工業的見地からみると溶融状態で各成分を混練する方法が好ましい。溶融混練には一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。特に二軸の高混練機が好ましい。溶融混練に際しては、混練装置のシリンダー設定温度は200〜340℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは250〜320℃である。340℃より高いとポリカーボネートが分解し、着色や、分解物による成形不良が増加し好ましくない。さらに200℃未満では、ポリカーボネートの粘度が高く、各種添加剤を均一分散することが出来ない。また溶融混練に際して、真空状態で行ってもよい。真空状態で溶融混練することで、ポリカーボネートの残存フェノール等低分子量体が減り、成形不良が低減でき好ましい。真空度は、13.3kPa以下の圧力が好ましく、さらには、1.3kPa以下が好ましい。
混練に際しては、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
本発明のポリカーボネートを含む光学部材とは、自動車用ヘッドランプレンズ、CD、CD−ROMピックアップレンズ、フレネルレンズ、レーザープリンター用fθレンズ、カメラレンズ、リアプロジェクションテレビ用投影レンズ等の光学レンズ、光学ディスク、画像表示媒体の光学系素子、光学膜、フィルム、基盤、各種光学フィルター、プリズム等の光学成形品である。
本発明の光学レンズは、本発明のポリカーボネートを例えば、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、キャスティングして成形することができる。
また本発明の光学レンズは、光学歪みが小さいことを特徴とする。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネートを含む光学レンズは光学歪みが大きい。成形条件によりその値を低減することも不可能ではないが、その条件幅は非常に小さく成形が非常に困難となる。本発明のポリカーボネートは、ポリカーボネートの配向により生じる光学歪みが極めて小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学素子を得ることができる。
本発明の光学レンズを射出成形で製造する場合、シリンダー温度260〜320℃、金型温度100〜140℃の条件にて成形することが好ましい。
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
また、本発明のポリカーボネートは、成形性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.0mmである。また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは3.0〜10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
また、本発明の光学レンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッジングなど任意の方法により成形されてもよい。さらには、金型成形がより好ましい。
1.評価用サンプルは以下の方法で調製した。
(a)キャストフィルム:
得られたポリカーボネート5gを塩化メチレン50mlに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャストする。室温にて十分に乾燥させた後、該ポリカーボネートのTgから20℃以下の温度にて8時間乾燥してキャストフィルムを作成した。
(b)球面レンズ:
得られたポリカーボネートを120℃で8時間真空乾燥した後、成形温度をTg+110℃、金型温度をTg−10℃にて、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.2mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、Φ5mmのレンズを射出成形した。
(c)成形片
上記(b)と同様に、幅2.5cm、長さ5cm、厚みがそれぞれ1、2、3mmの成形片を射出成形した。
(1)比粘度:
重合終了後に得られたポリカーボネートを十分に乾燥し、該ポリカーボネート0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。
(2)共重合比:
重合終了後に得られたポリカーボネートを日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。例えば実施例2〜5の場合は、8.3〜8.2ppmの10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロンの芳香族に起因するピークと7.9〜7.7ppmの1,1−ビ(2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン)の芳香環に起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):
該ポリカーボネートをデュポン社製910型DSCにより、昇温速度20℃/minで測定した。
(4)溶融粘度:
重合終了後に得られたポリカーボネートを120℃で4時間乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフ1Dにより、260℃、せん断速度1,000/secにおける溶融粘度を測定した。
射出成形により得られた厚さ0.1mmの円板を、日立(株)製分光光度計U−3310を用いて測定した。評価は以下のようにした。
395nmにおける透過率が80%以上:○
395nmにおける透過率が80%より低い:×
(6)屈折率(nd)、アッベ数(ν):
(c)の手法により射出成形し得られた厚さ0.3mmの円板をATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)およびアッベ数を測定した。
(7)光学歪み:
(b)の手法により成形した非球面レンズを二枚の偏光板の間に挟み直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより光学歪み評価した。評価は以下の基準で行った。
◎:殆ど光漏れがない。
○:僅かに光漏れが認められる。
×:光漏れが顕著である。
(b)の手法により成形した非球面レンズの充填不良、各成形不良、レンズの脆さ、金型付着物の有無等を目視にて確認した。評価は、500枚成形した際に欠陥品となる確率が、1%未満(◎)、1〜5%未満(○)5〜10%未満(△)、10%以上(×)で分類した。
(9)耐湿熱性:
1mm厚の成形片を85℃、85%RHの条件下で2000時間放置した後、該成形片0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、湿熱試験後の比粘度保持率(分子量保持率)を求めた。該比粘度保持率(分子量保持率)を耐湿熱性の指標とした。
Δηsp=(ηsp1/ηsp0)×100
Δηsp:比粘度保持率、ηsp0:試験前の比粘度、ηsp1:試験後の比粘度
1,1’−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン(以下“BL−2EO”と省略することがある)374.44重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)222.79重量部、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.82×10−2重量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気常圧下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20〜30kPaに調整し、60℃/hrの速度で260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、260℃に保持したまま、120分かけて0.13kPa以下まで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で1時間攪拌下重合反応を行った。
BL−2EO355.72重量部、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロン(以後“BP−ANT”と省略することがある)18.92重量部、DPC222.79g、260℃、0.13kPa以下の条件下での反応時間を0.5時間とするとする以外は、参考例1と同様に重合した。
該ポリカーボネートはBL−2EOとBP−ANTとのモル比が95:5であり、比粘度は0.260、Tgは123℃であった。
作成したポリカーボネートを123℃で4時間真空乾燥した後、得られるポリカーボネート組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、95%であった。
BL−2EO337.00重量部、BP−ANT37.84重量部、DPC222.79g、260℃、0.13kPa以下の条件下での反応時間を0.5時間とするとする以外は、参考例1と同様に重合した。
該ポリカーボネートはBL−2EOとBP−ANTとのモル比が90:10であり、比粘度は0.250、Tgは125℃であった。
作成したポリカーボネートを120℃で4時間真空乾燥した後、得られるポリカーボネート組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、93%であった。
BL−2EO262.11重量部、BP−ANT113.53重量部とする以外は、参考例1と同様に重合した。
該ポリカーボネートはBL−2EOとBP−ANTとのモル比が70:30であり、比粘度は0.230、Tgは140℃であった。
作成したポリカーボネートを120℃で4時間真空乾燥した後、得られるポリカーボネート組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、93%であった。
BL−2EO187.22重量部、BP−ANT189.22重量部とする以外は、参考例1と同様に重合した。
該ポリカーボネートはBL−2EOとBP−ANTとのモル比が50:50であり、比粘度は0.240、Tgは150℃であった。
作成したポリカーボネートを120℃で4時間真空乾燥した後、得られるポリカーボネート組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、95%であった。
BL−2EO149.78重量部、BP−ANT227.06重量部、DPC222.79g重量部、260℃、0.13kPa以下の条件下での反応時間を0.5時間とするとする以外は、参考例1と同様に重合した。
該ポリカーボネートはBL−2EOとBP−ANTとのモル比が40:60であり、比粘度は0.230、Tgは166℃であった。
作成したポリカーボネートを120℃で4時間真空乾燥した後、得られるポリカーボネート組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、98%であった。
BP−ANT378.43重量部とする以外は、参考例1と同様に重合した。
該ポリカーボネートはBL−2EOとBP−ANTとのモル比が0:100であり、比粘度は0.220、Tgは200℃であった。
作成したポリカーボネートを120℃で4時間真空乾燥した後、得られるポリカーボネート組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。耐湿熱性は、良好で湿熱試験後の比粘度保持率は、93%であった。
BP−ANT189.22重量部、1,1’−ビ−2−ナフトール(以下“BN”と省略することがある)143.17重量部以外は、参考例1と同様に重合した。
該ポリカーボネートはBP−ANTとBNとのモル比が50:50であり、比粘度は0.210、Tgは220℃であった。
作成したポリカーボネートを120℃で4時間真空乾燥した後、得られるポリカーボネート組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
ビスフェノールフルオレン(以下“BPFL”と省略することがある)70.08重量部、BL−2EOと74.89重量部とする以外は、実施例4と同様に重合した。
該ポリカーボネートはBPFLとBL−2EOとのモル比が50:50であり、比粘度は0.230、Tgは159℃であった。
作成したポリマーを120℃で4時間真空乾燥した後、得られるポリカーボネート組成物の重量を基準としてビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水19.206重量部、48%水酸化ナトリウム水溶液29.33重量部を入れ、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”または“BCF”と略称することがある)8.40重量部、BP−ANT26.97重量部およびハイドロサルファイト0.07重量部を溶解した後、クロロホルム138.71重量部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン12.06重量部を60分要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール0.4668重量部を塩化メチレン5重量部に溶解した溶液および48%水酸化ナトリウム水溶液3.67重量部を加え、乳化後、トリエチルアミン0.02重量部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリカーボネート濃度が20%の溶液を得た。この溶液から溶媒を除去して得たポリカーボネートはBP−ANTとBCFとの構成単位の比がモル比で75:25であった。またこのポリマーの比粘度は0.290、Tgは260℃であった。
本発明は、基礎出願である特願2014−038772号に記載の以下の発明に基づく。
1. 100〜2モル%の下記式(I)で表される構成単位を含有し、比粘度0.12〜0.40であるポリカーボネート。
2. ポリカーボネートは、一般式(I)を含む構成単位及び下記一般式(II)
で表される繰り返し単位よりなり、一般式(I)と一般式(II)の割合がモル比で(I):(II)=100:0〜2:98の範囲であり、0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.40となるポリカーボネートである請求項1に記載のポリカーボネート。
3. 90〜40モル%の上記式(I)で表される構造単位を含有し、比粘度0.14〜0.40である請求項1または、2に記載のポリカーボネート。
4. 式(I)に記載の構成単位が、1,1−ビ(2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン)である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート。
5. 式(II)に記載の構成単位が、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロンである請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート。
6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネートを含む光学部材。
7. 請求項6に記載のポリカーボネートを含む光学レンズ。
8. 中心部の厚みが0.05〜3.0mm、レンズ部の直径が1.0〜20.0mmの請求項7に記載の光学レンズ。
9. 式(III)、(IV)で表されるジオールと炭酸エステル形成化合物とを反応させて得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
Claims (6)
- 90〜40モル%の式(I)で表される単位および10〜60モル%の式(II)で表される単位を含有し、比粘度0.14〜0.40である請求項1に記載のポリカーボネート。
- 請求項1または2に記載のポリカーボネートを含む光学部材。
- 請求項3に記載の光学部材を含む光学レンズ。
- 中心部の厚みが0.05〜3.0mm、レンズ部の直径が1.0〜20.0mmの請求項4に記載の光学レンズ。
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