JP6175222B2 - 複合糸条布帛 - Google Patents
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Description
即ち、本発明は、以下の通りである。
[2]布帛が経糸と緯糸から構成される織物であり、少なくとも経糸を構成する繊維の50重量%以上が前記複合糸条であり、経糸と緯糸との繊維−繊維間静止摩擦係数が0.2〜3.0である、前記[1]に記載の複合糸条布帛。
[3]前記織物が平織物または斜文織物であり、緯糸を構成する繊維も50重量%以上が前記複合糸条である、前記[2]に記載の複合糸条布帛。
[4]前記織物がすだれ織物であり、少なくとも経糸を構成する繊維の70重量%以上が前記複合糸条であり、経糸密度/緯糸密度の比が2〜10である、前記[2]に記載の複合糸条布帛。
[5]株式会社マシンテックス製ジョイントエアー110型エアスプライサーを用い、供給空気圧力:0.7MPa、空気噴射時間:調整ノブPT150の目盛4、糸はし長さ:レギュレーターPT40の目盛4の条件下、前記連続ガラス繊維をつないだ繋ぎ糸条の引張り破断強力が該連続ガラス繊維原糸の引張り破断強力の50〜100%である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の複合糸条布帛。
[6]前記連続ガラス繊維の単糸に前記連続ポリアミド系樹脂繊維を構成する樹脂を付着させて測定したマイクロドロップレット試験による界面接着強度が9MPa以上である、前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の複合糸条布帛。
[7]前記連続ガラス繊維が実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の複合糸条布帛。
[8]前記連続ガラス繊維の積RDと前記連続ポリアミド系樹脂繊維の積RDの比(連続ガラス繊維/連続ポリアミド系樹脂繊維)が0.3〜5である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の複合糸条布帛。
[9]前記連続ガラス繊維の単糸径と前記連続ポリアミド系樹脂繊維の単糸径の比(連続ガラス繊維/連続ポリアミド系樹脂繊維)が0.3〜2である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の複合糸条布帛。
[10]前記連続ガラス繊維および前記連続ポリアミド系樹脂繊維の総繊度が100〜20,000dtexである、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の複合糸条布帛。
[11]前記連続ポリアミド系樹脂繊維が実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡である、前記[1]〜[10]のいずれかに記載の複合糸条布帛。
[12]連続ガラス繊維と連続ポリアミド系樹脂繊維を流体交絡法により混繊し、得られた複合糸条を用いて前記[1]〜[11]のいずれかに記載の複合糸条布を製造する方法。
[13]連続ガラス繊維と連続ポリアミド系樹脂繊維を引き揃え、かつ、流体交絡ノズルの導入穴面に実質的に垂直に供給して混繊する、前記[12]に記載の方法。
本発明は、以下の実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
R=20×(T/π・F・D)0.5 (1)
本実施形態の複合糸条布帛は、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維が混繊されてなる複合糸条を構成する繊維の50重量%以上用いることが肝要である。好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上用いられる。上記複合糸条を用いることにより、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維が連続して均一に混じり合うことが可能であり、布帛化する編織等の工程における取扱い性に優れ、得られた複合糸条布帛は短時間成形でも、十分な機械的特性を発揮する複合材料成型品となすことが可能である。布帛の形態としては、公知のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、複合糸条を単独または他の繊維とともに編織した編物や織物が例示され、また、連続したままの複合糸条および/または切断した複合糸条を単独または他の繊維とともにランダムに積層し、ウェッブ作成後、エンボスロールを用いた熱融着やニードルパンチを用いた交絡によって一体化された不織布等が例示される。布帛中の複合糸条の直線性を高くでき、布帛の見掛け密度を高くできることによって、優れた機械的特性の複合材料成型体が短時間成形で得られ易いため、経糸と緯糸から構成される織物が好ましい。
織物は経糸と緯糸から構成され、かつ、少なくとも経糸を構成する繊維の50重量%以上に前記複合糸条を用いることが好ましい。複合糸条は好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%用いられる。強度、剛性等の機械的特性を高い水準で満足させる観点から、経糸を構成する繊維の50重量%以上が複合糸条であることが好ましい。
経糸は(イ)、(ロ)から選ばれた少なくとも一種、または(イ)、(ロ)から選ばれた一種と(ハ)から選ばれた少なくとも一種から構成されていてもよい。いずれの場合も、複合糸条は、織物における全経糸中に50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%用いられる。複合糸条以外の繊維としては、全経糸中の割合が50重量%未満であれば特に制限はなく、用途及び目的に応じ、公知の繊維を用いることができ、例えば、後述する連続熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。特に複合糸条に用いられる連続熱可塑性樹脂繊維と同種の繊維が成形時に熱可塑性樹脂の劣化を抑制でき、好ましい。
緯糸の種類、繊度については、特に制限はなく、用途および目的に応じて選定することができるが、μsが0.2〜3.0となるよう選定することが好ましい。さらに複合材料成型品に未溶融物や熱可塑性樹脂の分解物等の不純物が混ざることを抑制する観点から、経糸と同種の繊維を用いることが好ましい。
<種類>
本実施形態における連続強化繊維は、通常繊維強化複合材料に使用されるものを用いることができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミック繊維から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。機械的物性、熱的物性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維が特に好ましく、価格の観点からガラス繊維が特に好ましい。
本実施形態に用いられる連続強化繊維は実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡であることが、後述するエアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強力向上と混繊工程における開繊性向上の観点から好ましい。実質的に無撚りとは、解舒等に伴う意図しない撚り以外の撚りが入っていない状態を意味し、撚り数が10回/m以下のことである。実質的に無交絡とは、流体交絡等通常の交絡手段による意図的な交絡が入っていない状態を意味し、交絡数が5回/m以下のことである。
連続強化繊維の単糸数は、混繊工程における開繊性、及び取扱い性の観点から30〜15,000本であることが好ましい。
本実施形態において、連続強化繊維をエアスプライサーによってつないだ繋ぎ糸条の引張り破断強力が連続強化繊維原糸の引張り破断強力の50〜100%であることが好ましい。さらに好ましくは60〜100%、特に好ましくは65〜100%である。エアスプライサーは空気噴射によって、糸端を開繊するとともに、糸端の単糸同士を絡ませることによって、糸端同士を繋ぐ装置である。従って、エアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強力が前記範囲であれば、連続強化繊維の空気による開繊、混合が良好であり、損傷が少ないと判断でき、好ましい。
供給空気圧力 0.7MPa
空気噴射時間 調整ノブPT150の目盛4
糸はし長さ レギュレーターPT40の目盛4
得られた繋ぎ糸条及び連続強化繊維原糸の引張り破断強度をJIS L1013に記載の方法で測定する。
また、集束剤は連続強化繊維とマトリックスの接着性を向上させる機能を果すため、連続強化繊維の単糸に連続熱可塑性樹脂繊維を構成する樹脂を付着させて測定したマイクロドロップレット試験による界面接着強度が好ましくは9MPa以上、さらに好ましくは13MPa以上、特に好ましくは15MPa以上となるよう、集束剤の種類、付着量を適宜選択することが好ましい。界面接着強度は大きいほど好ましいが、界面接着強度が大きくなりすぎると連続強化繊維の単糸が測定中に切断する等の問題が発生するので、30MPaを上限とすることが好ましい。
界面接着強度τ=f/π・R・l (2)
(f:最大引抜荷重(N) R:連続強化繊維単糸径(m) l:ドロップの引抜方向の粒子径(m))
集束剤の種類は公知の集束剤から、連続強化繊維及び連続熱可塑性樹脂繊維の種類に応じて適宜選択すれば良い。
連続強化繊維として、例えば、ガラス繊維を選択した場合、集束剤はシランカップリング剤、潤滑剤および結束剤からなることが好ましい。
シランカップリング剤は、通常、ガラス繊維の表面処理剤として用いられ、界面接着強度向上に寄与する。シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、中でも、アミノシラン類が特に好ましい。
潤滑剤は、ガラス繊維集束剤の調整及び開繊性向上に寄与する。潤滑剤としては、目的に適した通常の液体または固体の任意の潤滑材料が使用可能である。以下に制限されないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系もしくは鉱物系のワックス、並びに、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸エーテル、又は芳香族系エステルもしくは芳香族系エーテル等の界面活性剤が使用可能である。
結束剤は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上に寄与する。結束剤としては、目的に適したポリマー、熱可塑性樹脂が使用可能である。ポリマーとしては、以下に制限されないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、m−キシリレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)およびイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるポリウレタン樹脂も好適に使用される。
前記アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸塩、5−スルホイソフタル酸塩、5−スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
ガラス繊維集束剤において、それぞれ固形分として、シランカップリング剤を0.1〜2重量%、潤滑剤を0.01〜1重量%、結束剤を1〜25重量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全重量を100重量%に調整する。
潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点、及びエアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強力向上と混繊工程における開繊性向上の観点から、0.01重量%以上、特に0.02重量%以上とすることが好ましく、界面接着強度向上と複合材料成型品の機械的強度向上の観点から1重量%以下、特に0.5重量%以下とすることが好ましい。
結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御及び界面接着強度向上と複合材料成型品の機械的強度向上との観点から、1〜25重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜15重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。
ガラス繊維集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整しても良いが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液が好ましい。
一方、例えば、連続強化繊維として、炭素繊維を選択した場合、集束剤は潤滑剤、結束剤からなることが好ましい。
潤滑剤は、炭素繊維集束剤の調整及び損傷防止性向上、開繊性向上に寄与する。潤滑剤としては、目的に適した通常の液体または固体の任意の潤滑材料が使用可能である。以下に制限されないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系もしくは鉱物系のワックス、並びに、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸エーテル、又は芳香族系エステルもしくは芳香族系エーテル等の界面活性剤が使用可能である。
結束剤は、炭素繊維の集束性向上及び界面接着強度向上に寄与する。結束剤としては、目的に適したポリマー、熱可塑性樹脂が使用可能である。ポリマーとしては、以下に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、各種フェノール類とホルマリンを反応させて得られるフェノール樹脂、尿素とホルマリンを反応させて得られるユリア樹脂、メラミンとホルマリンを反応させて得られるメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、例えば、m−キシリレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)およびイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートとポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから得られるポリウレタン樹脂も好適に使用される。
上記ポリカルボン酸またはその無水物としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸塩、5−スルホイソフタル酸塩、5−スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
炭素繊維集束剤において、それぞれ固形分として、潤滑剤を0.01〜1重量%、結束剤を1〜25重量%含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全重量を100重量%に調整する。
結束剤の配合量は、炭素繊維の集束性制御、界面接着強度向上および複合材料成型品の機械的強度向上の観点から、1〜25重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜15重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。
炭素繊維集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整しても良いが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液が好ましい。
また、連続強化繊維として、ガラス繊維、炭素繊維以外の繊維を用いる場合は、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
<種類>
本実施形態に用いられる連続熱可塑性樹脂繊維は通常、複合材料成型品用混繊糸に用いるものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた連続繊維であることが好ましい。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からさらに好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂が特に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド系樹脂が殊に好ましく、ポリアミド66が最も好ましい。
前記ポリアミド系樹脂とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリアミドとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
一方、ω−アミノカルボン酸としては、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。尚、前記ラクタム又は前記ω−アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
上記単量体としてのジアミン及びジカルボン酸はそれぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
本実施形態に用いられる連続熱可塑性繊維は実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡であることが、混繊工程における開繊性向上の観点から好ましい。実質的に無撚りとは、解舒等に伴う意図しない撚り以外の撚りが入っていない状態を意味し、撚り数が10回/m以下のことである。実質的に無交絡とは、流体交絡等通常の交絡手段による意図的な交絡が取扱い性を維持する最低限の回数である状態を意味し、交絡数が5回/m以下のことである。
連続熱可塑性樹脂繊維の単糸数は、混繊工程における開繊性、及び取扱い性の観点から30〜20,000本であることが好ましい。
本実施形態において、連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RD(強化繊維)と連続熱可塑性樹脂繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RD(熱可塑性樹脂繊維)の比、RD(強化繊維)/RD(熱可塑性樹脂繊維)は0.3〜5であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜4、特に好ましくは0.6〜2である。混繊工程において、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維はお互いに開繊・混合することが好ましく、そのためには、混繊時に作用する外力により、各繊維に発生する加速度が略同等であることが好ましいと推量される。両繊維の積RDの比が前記範囲であれば、各繊維に発生する加速度が略同等になると推量され、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維がお互いに混合し易くなり、好ましい。
<混繊>
本実施形態の複合糸条を製造するために、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維を混繊する方法は公知の方法を利用できる。例えば、静電気力や流体噴霧による圧力、ローラー等に押し付ける圧力等による外力によって開繊した後、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維を開繊したままの状態で合糸・引き揃える開繊合糸法、空気、窒素ガスおよび水蒸気等の流体による渦流乱流帯域を糸軸とほぼ平行に2個またはそれ以上作り、該帯域に繊維を導いてループや捲縮を生じない程度の張力下で非嵩高性の糸条とする所謂流体交絡(インターレース)法、連続強化繊維のみ開繊した後、または連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維共に開繊した後に流体交絡させる開繊後流体交絡法、等が挙げられる。連続強化繊維の損傷が抑制でき、開繊性に優れ、均一に混合可能な流体交絡法、開繊後流体交絡法等の流体交絡法が好ましい。
図1において、11は連続強化繊維12aの回巻体、21は連続熱可塑性樹脂繊維22aの回巻体、13は連続強化繊維12a及び連続熱可塑性樹脂繊維22aを合糸・引き揃えながら、引き出すための駆動ロール、14は圧縮空気を使用した流体交絡ノズル、16は得られた複合糸条15bを巻き取るための巻き取り機である。
布帛を得る方法は特に限定されず、用途、目的に応じて選定した適切な布帛を作製する公知の方法を用いることができる。例えば、織物は、シャトル織機、レピア織機、エアジェット織機、ウォータージェット織機等の製織機を用い、少なくとも一部に複合糸条を含む繊維を配列させた経糸に、緯糸を打ち込むことによって、得られる。編物は、丸編み機、横編み機、トリコット編み機、ラッシェル編み機等の編み機を用い、少なくとも一部に複合糸条を含む繊維を編成することによって得られる。不織布は、少なくとも一部に複合糸条を含む繊維をウェブと呼ばれるシート状の繊維集合体とした後、ニードルパンチ機、ステッチボンド機、柱状流機等の物理作用やエンボスロール等による熱作用や接着剤によって繊維同士を結合させることによって、得られる。
以下、実施例及び比較例で行った評価方法について説明する。
(連続強化繊維および連続熱可塑性樹脂繊維の単糸径)
連続強化繊維および連続熱可塑性樹脂繊維の単糸径R(μm)は、カタログ値の密度D(g/cm3)、繊度T(dtex)、単糸数F(本)を用い、下記式(1)により算出した。
R=20×(T/π・F・D)0.5 (1)
株式会社マシンテックス製ジョイントエアー110型を用い、連続強化繊維の繊度に応じたエアスプライサーのチェンバー、チェンバーカバーを選択して取り付け、下記条件でエアスプライサー所定の手順で連続強化繊維の繋ぎ糸条を得た。
供給空気圧力 0.7MPa
空気噴射時間 調整ノブPT150の目盛4
糸はし長さ レギュレーターPT40の目盛4
得られた繋ぎ糸条及び連続強化繊維原糸の引張り破断強力をJIS L1013に準拠してオリエンテック社製テンシロンにより、つかみ間隔20cm、引張り速度20cm/分で測定し、両測定値の比を算出した。
界面接着強度は複合材料界面特性評価装置HM410(東栄産業株式会社製)を使用し、マイクロドロップレット試験により測定した。連続強化繊維より単糸を取り出し、複合材料界面特性評価装置にセッティングした。装置上で連続熱可塑性樹脂繊維の原料となる熱可塑性樹脂を溶融させたドロップを連続強化繊維単糸上に形成させ、室温で十分に冷却し、測定用の試料を得た。再度測定試料を装置にセッティングし、ドロップを装置ブレードで挟み、連続強化繊維単糸を装置上で0.06mm/分の速度で走行させ、ドロップを引き抜く際の最大引抜荷重f(N)を測定し、下記式(2)により界面接着強度τを算出した。
界面接着強度τ=f/π・R・l (2)
(f:最大引抜荷重(N) R:連続強化繊維単糸径(m) l:ドロップの引抜方向の粒子径(m))
複合糸条の長手方向の20mごとに長さ20cmを3点サンプリングし、採取した各試料ごとに横断面(糸条軸に対して垂直面)を鋭利な刃物で切断し、該切断面の全域を写真撮影する。該写真から連続熱可塑性樹脂繊維の単糸と接触若しくは連続熱可塑性樹脂繊維の単糸をその単糸径の10%だけ位置をずらせば接触するであろう連続強化繊維の単糸数を計測して、これをA(本)とする。該写真に撮影された複合糸条の横断面全域に存在する連続強化繊維の単糸数を計測し、これをB(本)とする。計測したAおよびBから式(3)により、連続強化繊維の分散率%の平均値(n=3)を算出した。
分散率=(A/B)×100% (3)
複合糸条及び連続強化繊維原糸の引張り破断強力をJIS L1013に準拠してオリエンテック社製テンシロンにより、つかみ間隔20cm、引張り速度20cm/分、n=10の測定を行い、測定値から算術平均値を求め、両算術平均値の比を算出し、維持率とした。
図3に示す装置を用いて測定を行う。長さ約690mの緯糸100を円筒200の周りに、綾角15°で約0.2cN/dtexの張力を掛けて巻き付ける。更に、長さ30.5cmの経糸300をこの円筒に掛ける。この時、経糸300は円筒200の上にあり、円筒の巻き付け方向と平行にする。円筒200に掛けた経糸300の片方の端に、荷重が0.1cN/dtex(対経糸)の重り400を結び、他方の端にはストレインゲージ500を連結させる。次に、円筒200を1mm/分の周速で回転させ、張力をストレインゲージ500で測定する。こうして測定した張力からμsを下記の式より求める。
μs=(1/π)×Ln(T2/T1)
式中、T1は経糸に掛けた重り400の重さ、T2はストレインゲージにて測定した張力、Lnは自然対数、πは円周率を示す。
長さ30cm、幅5cmの金枠に複合糸条布帛を2.5cm幅となるように、ハンドにより、複合材料成型体に成形した際に厚さ1mmとなるように取り付けた後、真空乾燥機を用い、100℃24時間、真空乾燥した。乾燥後、熱可塑性樹脂繊維の融点+20℃にあらかじめ加熱した平板成形用の金型に、金枠とともに複合糸条布帛を移した。金型を熱可塑性樹脂繊維の融点+20℃に加熱した熱盤を備えた卓上型プレスに移し、0.5MPa、1分間、加圧した後、25℃に水冷した冷却盤を備えた卓上型プレスに移し、0.5MPaで加圧し、熱可塑性樹脂繊維のガラス転移点以下に金型温度が達するまで冷却した。冷却後、除圧し、金型から複合材料成型体を取り出した。得られた複合材料成型体中の強化繊維の軸方向を試験片の引張り方向としてJIS K7054に準拠して引張り特性(引張り破断強度、引張り初期弾性率)を測定した。
下記集束剤Aを1.0重量%付着させた繊度660dtexで単糸数400本のガラス繊維を連続強化繊維として用いた。
集束剤Aの組成(固形分換算):
・シランカップリング剤:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6重量%〔商品名:KBE−903(信越化学工業(株)製)〕
・潤滑剤:ワックス0.1重量%〔商品名:カルナウバワックス(株式会社加藤洋行製)〕
・結束剤:アクリル酸/マレイン酸共重合体塩5重量%〔商品名:アクアリックTL(日本触媒(株)製)〕
本ガラス繊維の繋ぎ糸条の引張り破断強度および界面接着強度を測定した結果を表1に示す。
連続熱可塑性樹脂繊維として、交絡処理を施していないポリアミド66繊維〔商品名:レオナ(登録商標)470/144BAU(旭化成せんい(株)製)、繊度470dtex、単糸数144本〕を用いた。
両繊維を合糸・引き揃えた後、図2−aに示すように流体交絡ノズルに実質的に垂直に供給し、下記条件で流体交絡させて、複合糸条を得た。
・流体交絡ノズル:京セラ KC−AJI−L(1.5mm径、推進型)
・空気圧:2kg/cm2(実施例1)、4kg/cm2(実施例2)
・加工速度:30m/分
得られた複合糸条の連続強化繊維の分散率および引張り破断強力維持率を測定した結果を表1に示した。さらに、該複合糸条を経糸、緯糸として用い、経糸密度が40本/5cm、緯糸密度が8本/5cm、幅200mmのすだれ織物を製織した。製織時に毛羽やフィブリル状物の発生はなく、織機にも糸くずや毛玉の付着は観察されず製織性は良好であった。また、このすだれ織物は25mm幅に切断しても経糸がずれることなく安定しており、取扱い性が良好であった。すだれ織物を用いて複合材料成型体を成形し、引張り特性を測定した結果も表1に示した。尚、成形に際し、加熱温度は280℃、冷却後取り出し時の金型温度は50℃とした。
ガラス繊維とポリアミド66繊維を合糸・引き揃えたのみで、特段の混繊を施さないこと以外は実施例1と同様にして複合糸条布帛及び複合材料成型体を得た。引き揃えたのみでは、製織時に毛羽が発生し、工程性に劣るものであった。
評価結果等を表1に示した。
ガラス繊維の単糸数を100本にした以外は実施例1と同様にして、複合糸条布帛及び複合材料成型体を得た。
評価結果等を表1に示した。
ガラス繊維の単糸数を60本にした以外は実施例1と同様にして、複合糸条布帛及び複合材料成型体を得た。
評価結果等を表1に示した。
上記集束剤Aを1.0重量%付着させたステンレス繊維〔商品名:ナスロン(登録商標)(日本精線(株)製)、繊度470dtex、単糸数72本〕を連続強化繊維として用いた以外は実施例1と同様にして複合糸条布帛及び複合材料成型体を得た。
評価結果等を表1に示した。
ステンレス繊維の単糸数を36本にした以外は実施例5と同様にして複合糸条布帛及び複合材料成型体を得た。
評価結果等を表1に示した。
また、実施例3〜4、参考例5と、比較例2とを対比すると、連続強化繊維の単糸径(R)と密度(D)の積RDが特定範囲となる場合、連続強化繊維の繋ぎ糸破断強度が高く、開繊性・混繊性に優れており、複合糸条における連続強化繊維の分散率が高く、均一に混合されており、従って、複合材料成型品とした場合の機械的物性に優れることを確認した。
12a 連続強化繊維
21 連続熱可塑性樹脂繊維の回巻体
22a 連続熱可塑性樹脂繊維
13 駆動ロール
14 流体交絡ノズル
15a 引き揃え糸条
15b 複合糸条
16 巻き取りロール
100 緯糸
200 測定用円筒
300 経糸
400 重り
500 ストレインゲージ
Claims (13)
- 布帛を構成する繊維の50重量%以上が、連続ガラス繊維と連続ポリアミド系樹脂繊維が混繊されてなり、該連続ガラス繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RDが20〜100μm・g/cm3である複合糸条からなり、かつ、該連続ポリアミド系樹脂が、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、及びこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群から選ばれる一種であることを特徴とする複合糸条布帛。
- 布帛が経糸と緯糸から構成される織物であり、少なくとも経糸を構成する繊維の50重量%以上が前記複合糸条であり、経糸と緯糸との繊維−繊維間静止摩擦係数が0.2〜3.0である、請求項1に記載の複合糸条布帛。
- 前記織物が平織物または斜文織物であり、緯糸を構成する繊維も50重量%以上が前記複合糸条である、請求項2に記載の複合糸条布帛。
- 前記織物がすだれ織物であり、少なくとも経糸を構成する繊維の70重量%以上が前記複合糸条であり、経糸密度/緯糸密度の比が2〜10である、請求項2に記載の複合糸条布帛。
- 株式会社マシンテックス製ジョイントエアー110型エアスプライサーを用い、供給空気圧力:0.7MPa、空気噴射時間:調整ノブPT150の目盛4、糸はし長さ:レギュレーターPT40の目盛4の条件下、前記連続ガラス繊維をつないだ繋ぎ糸条の引張り破断強力が該連続ガラス繊維原糸の引張り破断強力の50〜100%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合糸条布帛。
- 前記連続ガラス繊維の単糸に前記連続ポリアミド系樹脂繊維を構成する樹脂を付着させて測定したマイクロドロップレット試験による界面接着強度が9MPa以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合糸条布帛。
- 前記連続ガラス繊維が実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合糸条布帛。
- 前記連続ガラス繊維の積RDと前記連続ポリアミド系樹脂繊維の積RDの比(連続ガラス繊維/連続ポリアミド系樹脂繊維)が0.3〜5である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合糸条布帛。
- 前記連続ガラス繊維の単糸径と前記連続ポリアミド系樹脂繊維の単糸径の比(連続ガラス繊維/連続ポリアミド系樹脂繊維)が0.3〜2である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合糸条布帛。
- 前記連続ガラス繊維および前記連続ポリアミド系樹脂繊維の総繊度が100〜20,000dtexである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合糸条布帛。
- 前記連続ポリアミド系樹脂繊維が実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合糸条布帛。
- 連続ガラス繊維と連続ポリアミド系樹脂繊維を流体交絡法により混繊し、得られた複合糸条を用いて請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合糸条布を製造する方法。
- 連続ガラス繊維と連続ポリアミド系樹脂繊維を引き揃え、かつ、流体交絡ノズルの導入穴面に実質的に垂直に供給して混繊する、請求項12に記載の方法。
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