JP5978419B2 - 複合糸条 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献7には、マトリックス繊維と強化繊維が単繊維レベルの混合状態にあり、マトリックス繊維が強化繊維間隙に均一に分散していることが肝要であり、かかる混合状態を達成する好ましい混繊方法として、所謂タスラン法、電気開繊法、インターレース法等が例示されている。しかしながら、かかる混合状態を達成するために強化繊維及びマトリックス繊維に要求される特性としては、わずかに、繊度と単糸繊度が記載されているのみで、その他の特性および該特性の適正な範囲については一切記載されておらず、前記混繊方法を用いても、必ずしも、均一に分散した混合状態が達成できるとは保障され得ないという問題があった。
即ち、本発明は、以下の通りである。
〔2〕撚り強度維持率(%)が下記式(1)を満足する前記〔1〕に記載の複合糸条。
撚り強度維持率(%)≧100×exp(−2.5×K/105) (1)
ただし、Kは下記式(2)で表される複合糸条の撚り係数である。
K=Y×Dt0.5 (2)
ここで、Yは撚糸1mあたりの撚り数(回/m)であり、Dtは連続強化繊維の繊度(dtex)である。
〔3〕連続強化繊維をエアスプライサーによってつないだ繋ぎ糸条の引張り破断強度が連続強化繊維原糸の引張り破断強度の50〜100%である、前記〔1〕または〔2〕に記載の複合糸条。
〔4〕連続強化繊維が実質的に無撚りであり、かつ実質的に無交絡である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の複合糸条。
〔5〕連続強化繊維がガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミック繊維から選ばれた少なくとも1種である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の複合糸条。
〔6〕連続強化繊維の積RDと連続有機繊維の積RDの比(連続強化繊維/連続有機繊維)が0.3〜5である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の複合糸条。
〔7〕連続強化繊維の単糸径と連続有機繊維の単糸径の比(連続強化繊維/連続有機繊維)が0.3〜2である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の複合糸条。
〔8〕連続強化繊維および連続有機繊維の総繊度が100〜20、000dtexである、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の複合糸条。
〔9〕連続有機繊維が実質的に無撚りであり、かつ実質的に無交絡である、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の複合糸条。
〔10〕連続有機繊維が連続セルロース系繊維および/または連続熱可塑性樹脂繊維である、前記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の複合糸条。
〔11〕連続熱可塑性樹脂繊維がポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた連続繊維である、前記〔10〕に記載の複合糸条。
〔12〕混繊方法が流体交絡法である、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の複合糸条。
〔13〕連続強化繊維と連続有機繊維を引き揃え、かつ、流体交絡ノズルの導入穴面に実質的に垂直に供給する、前記〔12〕に記載の複合糸条。
本発明は、以下の実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
R=20×(T/π・F・D)0.5 (3)
撚り強度維持率(%)≧100×exp(−2.5×K/105) (1)
ただし、Kは下記式(2)で表される複合糸条の撚り係数である。
K=Y×Dt0.5 (2)
ここで、Yは撚糸1mあたりの撚り数(回/m)であり、Dtは連続強化繊維の繊度(dtex)である。
撚り強度維持率が上記範囲以下である場合、ゴム製品の補強効果が不十分となり、必要とする強度等の特性を得るために、複合糸条の使用量を増やす必要が生じ、軽量性・経済性に優れる複合糸条が得られなくなる。撚り強度維持率は100%に近ければ近いほどよく、好ましくは下記式(4)の範囲にあることが望ましい。
撚り強度維持率(%)≧100×exp(−2.0×K/105) (4)
<種類>
本実施形態における連続強化繊維は、通常ゴム製品補強に使用されるものを用いることができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミック繊維から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。機械的物性、熱的物性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維が特に好ましく、価格の観点からガラス繊維が特に好ましい。
本実施形態に用いられる連続強化繊維は実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡であることが、後述するエアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強度向上と混繊工程における開繊性向上の観点から好ましい。実質的に無撚りとは、解舒等に伴う意図しない撚り以外の撚りが入っていない状態を意味し、撚り数が10回/m以下のことである。実質的に無交絡とは、流体交絡等通常の交絡手段による意図的な交絡が入っていない状態を意味し、交絡数が5回/m以下のことである。
連続強化繊維の単糸数は、混繊工程における開繊性、及び取扱い性の観点から30〜15,000本であることが好ましい。
本実施形態において、連続強化繊維をエアスプライサーによってつないだ繋ぎ糸条の引張り破断強度が連続強化繊維原糸の引張り破断強度の50〜100%であることが好ましい。さらに好ましくは60〜100%、特に好ましくは65〜100%である。エアスプライサーは空気噴射によって、糸端を開繊するとともに、糸端の単糸同士を絡ませることによって、糸端同士を繋ぐ装置である。従って、エアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強度が前記範囲であれば、連続強化繊維の空気による開繊、混合が良好であり、損傷が少ないと判断でき、好ましい。
供給空気圧力 0.7MPa
空気噴射時間 調整ノブPT150の目盛4
糸はし長さ レギュレーターPT40の目盛4
得られた繋ぎ糸条及び連続強化繊維原糸の引張り破断強度をJIS L1013に記載の方法で測定する。
集束剤の種類は公知の集束剤から、連続強化繊維及び連続有機繊維の種類に応じて適宜選択すれば良い。
連続強化繊維として、例えば、ガラス繊維を選択した場合、集束剤はシランカップリング剤、潤滑剤および結束剤からなることが好ましい。
シランカップリング剤は、通常、ガラス繊維の表面処理剤として用いられ、ゴムとの接着強度向上に寄与する。シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、中でも、アミノシラン類が特に好ましい。
潤滑剤は、ガラス繊維集束剤の調整及び開繊性向上に寄与する。潤滑剤としては、目的に適した通常の液体または固体の任意の潤滑材料が使用可能である。以下に制限されないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系もしくは鉱物系のワックス、並びに、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸エーテル、又は芳香族系エステルもしくは芳香族系エーテル等の界面活性剤が使用可能である。
結束剤は、ガラス繊維の集束性向上及びゴムとの接着強度向上に寄与する。結束剤としては、目的に適したポリマー、熱可塑性樹脂が使用可能である。ポリマーとしては、以下に制限されないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、各種フェノール類とホルマリンを反応させて得られるフェノール樹脂、尿素とホルマリンを反応させて得られるユリア樹脂、メラミンとホルマリンを反応させて得られるメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、例えば、m−キシリレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)およびイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートとポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから得られるポリウレタン樹脂も好適に使用される。
前記アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸塩、5−スルホイソフタル酸塩、5−スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
ガラス繊維集束剤において、それぞれ固形分として、シランカップリング剤を0.1〜2重量%、潤滑剤を0.01〜2重量%、結束剤を1〜25重量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全重量を100重量%に調整する。
潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点、及びエアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強度向上と混繊工程における開繊性向上の観点から、0.01重量%以上、特に0.02重量%以上とすることが好ましく、接着強度向上とゴム製品の機械的強度向上の観点から2重量%以下、特に1重量%以下とすることが好ましい。
結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御及び接着強度向上とゴム製品の機械的強度向上との観点から、1〜25重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜15重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。
ガラス繊維集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整しても良いが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液が好ましい。
一方、例えば、連続強化繊維として、炭素繊維を選択した場合、集束剤は潤滑剤、結束剤からなることが好ましい。
潤滑剤は、炭素繊維集束剤の調整及び損傷防止性向上、開繊性向上に寄与する。潤滑剤としては、目的に適した通常の液体または固体の任意の潤滑材料が使用可能である。以下に制限されないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系もしくは鉱物系のワックス、並びに、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸エーテル、又は芳香族系エステルもしくは芳香族系エーテル等の界面活性剤が使用可能である。
結束剤は、炭素繊維の集束性向上及び接着強度向上に寄与する。結束剤としては、目的に適したポリマー、熱可塑性樹脂が使用可能である。ポリマーとしては、以下に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、各種フェノール類とホルマリンを反応させて得られるフェノール樹脂、尿素とホルマリンを反応させて得られるユリア樹脂、メラミンとホルマリンを反応させて得られるメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、例えば、m−キシリレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)およびイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートとポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから得られるポリウレタン樹脂も好適に使用される。
上記ポリカルボン酸またはその無水物としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸塩、5−スルホイソフタル酸塩、5−スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸または脂環式ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
炭素繊維集束剤において、それぞれ固形分として、潤滑剤を0.01〜2重量%、結束剤を1〜25重量%含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全重量を100重量%に調整する。
結束剤の配合量は、炭素繊維の集束性制御、接着強度向上およびゴム製品の機械的強度向上の観点から、1〜25重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜15重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。
炭素繊維集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整しても良いが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液が好ましい。
また、連続強化繊維として、ガラス繊維、炭素繊維以外の繊維を用いる場合は、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
本実施形態に用いられる連続有機繊維は連続セルロース系繊維および/または連続熱可塑性樹脂繊維であり、下記に例示される繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維を用いることが好ましい。
連続セルロース系繊維としては公知のものが使用することができ、例えば、ビスコース法で製造されるレーヨン、平均重合度が450以上の結晶化度が高いレーヨンであるポリノジック、高強度及び湿潤時高弾性率のレーヨンであるモダル、有機溶剤紡糸法によって得られるリヨセル、銅アンモニア法によって得られるキュプラ、酢酸セルロースであるアセテート、トリアセテート等が例示され、強度およびゴムとの接着性の観点から、レーヨン、ポリノジック、モダル、リヨセルが好ましい。
本実施形態に用いられる連続熱可塑性樹脂繊維は公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた連続繊維であることが好ましい。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からさらに好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂が特に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性及びゴムとの耐久接着性の観点からポリアミド系樹脂が殊に好ましく、ポリアミド66が最も好ましい。
前記ポリアミド系樹脂とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリアミドとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
一方、ω−アミノカルボン酸としては、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。尚、前記ラクタム又は前記ω−アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
上記単量体としてのジアミン及びジカルボン酸はそれぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
本実施形態に用いられる連続有機繊維は実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡であることが、混繊工程における開繊性向上の観点から好ましい。実質的に無撚りとは、解舒等に伴う意図しない撚り以外の撚りが入っていない状態を意味し、撚り数が10回/m以下のことである。実質的に無交絡とは、流体交絡等通常の交絡手段による意図的な交絡が取扱い性を維持する最低限の回数である状態を意味し、交絡数が5回/m以下のことである。
連続有機繊維の単糸数は、混繊工程における開繊性、及び取扱い性の観点から30〜20,000本であることが好ましい。
本実施形態において、連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RD(強化繊維)と連続有機繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RD(有機繊維)の比、RD(強化繊維)/RD(有機繊維)は0.3〜5であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜4、特に好ましくは0.6〜2である。混繊工程において、連続強化繊維と連続有機繊維はお互いに開繊・混合することが好ましく、そのためには、混繊時に作用する外力により、各繊維に発生する加速度が略同等であることが好ましいと推量される。両繊維の積RDの比が前記範囲であれば、各繊維に発生する加速度が略同等になると推量され、連続強化繊維と連続有機繊維がお互いに混合し易くなり、好ましい。
<混繊>
本実施形態の複合糸条を製造する第1工程は、連続強化繊維と連続有機繊維の混繊糸条の製造である。混繊糸条を製造する方法は公知の方法を利用できる。例えば、静電気力や流体噴霧による圧力、ローラー等に押し付ける圧力等による外力によって開繊した後、連続強化繊維と連続有機繊維を開繊したままの状態で合糸・引き揃える開繊合糸法、空気、窒素ガスおよび水蒸気等の流体による渦流乱流帯域を糸軸とほぼ平行に2個またはそれ以上作り、該帯域に繊維を導いてループや捲縮を生じない程度の張力下で非嵩高性の糸条とする所謂流体交絡(インターレース)法、連続強化繊維のみ開繊した後、または連続強化繊維と連続有機繊維共に開繊した後に流体交絡させる開繊後流体交絡法、等が挙げられる。連続強化繊維の損傷が抑制でき、開繊性に優れ、均一に混合可能な流体交絡法、開繊後流体交絡法等の流体交絡法が好ましい。
図1において、11は連続強化繊維12aの回巻体、21は連続有機繊維22aの回巻体、13は連続強化繊維12a及び連続有機繊維22aを合糸・引き揃えながら、引き出すための駆動ロール、14は圧縮空気を使用した流体交絡ノズル、16は得られた混繊糸条15bを巻き取るための巻き取り機である。
本実施形態の複合糸条を製造する第2工程は、上記混繊糸条を撚り合わせる工程である。撚糸方法はリング撚糸機、ダブルツイスター撚糸機、アロマ撚糸機等の公知の撚糸機を用いて、混繊糸条を一旦下撚りした後、巻き取り、得られた下撚り糸を2本以上合せて上撚りする方法であっても、2本以上の混繊糸条を別々に撚糸し、得られた下撚り糸を巻き取ることなく、その後互いに上撚りする方法であってもよい。
撚糸の種類、方法、合撚本数については特に制限はなく、複合糸条の種類としては例えば、片撚り糸、もろ撚り糸、ピッコもろ撚り糸、強撚糸等が挙げられる。合撚する本数も特に制限はなく1本撚り、2本撚り、3本撚り、4本撚り、5本撚りのいずれでもよく6本以上の合撚であってもよい。
また、撚り数についても用途、使用環境に応じて任意の撚り数を選定すればよく、一般的には、前述の撚り係数Kが1000〜30000の範囲で撚糸される。強度、寸法安定性に優れる複合糸条を得るためには、撚糸張力を適正な範囲にすることが好ましく、下撚り張力/上撚り張力共に0.01〜0.2cN/dtexとすることが好ましい。上記範囲であれば、撚糸の際にたるみや無理な歪を生じる恐れが低く、均一な複合糸条が得られ、好ましい。
以下、実施例及び比較例で行った評価方法について説明する。
(連続強化繊維および連続有機繊維の単糸径)
連続強化繊維および連続有機繊維の単糸径R(μm)は、カタログ値の密度D(g/cm3)、繊度T(dtex)、単糸数F(本)を用い、下記式(1)により算出した。
R=20×(T/π・F・D)0.5 (1)
株式会社マシンテックス製ジョイントエアー110型を用い、連続強化繊維の繊度に応じたエアスプライサーのチェンバー、チェンバーカバーを選択して取り付け、下記条件でエアスプライサー所定の手順で連続強化繊維の繋ぎ糸条を得た。
供給空気圧力 0.7MPa
空気噴射時間 調整ノブPT150の目盛4
糸はし長さ レギュレーターPT40の目盛4
得られた繋ぎ糸条及び連続強化繊維原糸の引張り破断強力をJIS L1013に準拠してオリエンテック社製テンシロンにより、つかみ間隔20cm、引張り速度20cm/分で測定し、両測定値の比を算出した。
混繊糸条の長手方向の20mごとに長さ20cmを3点サンプリングし、採取した各試料ごとに横断面(糸条軸に対して垂直面)を鋭利な刃物で切断し、該切断面の全域を写真撮影する。該写真から連続有機繊維の単糸と接触若しくは連続有機繊維の単糸をその単糸径の10%だけ位置をずらせば接触するであろう連続強化繊維の単糸数を計測して、これをA(本)とする。該写真に撮影された複合糸条の横断面全域に存在する連続強化繊維の単糸数を計測し、これをB(本)とする。計測したAおよびBから下記式(5)により、連続強化繊維の分散率%の平均値(n=3)を算出した。
分散率=(A/B)×100% (5)
混繊糸条及び連続強化繊維原糸の引張り破断強力をJIS L1013に準拠してオリエンテック社製テンシロンにより、つかみ間隔20cm、引張り速度20cm/分、n=10の測定を行い、測定値から算術平均値を求め、両算術平均値の比を算出し、維持率とした。
複合糸条及び混繊糸条の引張り破断強力をJIS L1013に準拠してオリエンテック社製テンシロンにより、つかみ間隔20cm、引張り速度20cm/分、n=10の測定を行い、測定値から算術平均値を求め、両算術平均値の比を算出し、維持率とした。
下記集束剤Aを1.0重量%付着させた繊度660dtexで単糸数400本のガラス繊維を連続強化繊維として用いた。
集束剤Aの組成(固形分換算):
・シランカップリング剤:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6重量%〔商品名:KBE−903(信越化学工業(株)製)〕
・潤滑剤:ワックス0.1重量%〔商品名:カルナウバワックス(株式会社加藤洋行製)〕
・結束剤:アクリル酸/マレイン酸共重合体塩5重量%〔商品名:アクアリックTL(日本触媒(株)製)〕
本ガラス繊維の繋ぎ糸条の引張り破断強度を測定した結果を表1に示す。
連続有機繊維として、交絡処理を施していないポリアミド66繊維〔商品名:レオナ(登録商標)470/144BAU(旭化成せんい(株)製)、繊度470dtex、単糸数144本〕を用いた。
両繊維を合糸・引き揃えた後、図2−aに示すように流体交絡ノズルに実質的に垂直に供給し、下記条件で流体交絡させて、混繊糸条を得た。
・流体交絡ノズル:京セラ KC−AJI−L(1.5mm径、推進型)
・空気圧:2kg/cm2(実施例1)、4kg/cm2(実施例2)
・加工速度:30m/分
得られた混繊糸条の分散率および引張り破断強度を測定した結果を表1に示した。
さらに、該混繊糸条を用い、カジ鉄工社製リング撚糸機を用いてZ方向に下撚り後これを2本双糸しS方向に上撚りして複合糸条を得た。下撚り張力、上撚り張力共に0.05cN/dtex、下撚り数、上撚り数共に380回/mとした。得られた複合糸条の引張り破断強力を測定し、撚り強度維持率を算出した結果も表1に示した。
ガラス繊維単独(比較例1)で特段の混繊を施さない、及びガラス繊維とポリアミド66繊維を合糸・引き揃えたのみ(比較例2)で特段の混繊を施さないこと以外は実施例1と同様にして複合糸条を得た。比較例1では、下撚りを施した時点でガラス繊維が破断し、撚糸を得ることができなかった。
評価結果等を表1に示した。
ガラス繊維の単糸数を100本にした以外は実施例1と同様にして、複合糸条を得た。
評価結果等を表1に示した。
ガラス繊維の単糸数を60本にした以外は実施例1と同様にして、複合糸条を得た。
評価結果等を表1に示した。
上記集束剤Aを1.0重量%付着させたステンレス繊維〔商品名:ナスロン(登録商標)(日本精線(株)製)、繊度470dtex、単糸数72本〕を連続強化繊維として用いた以外は実施例1と同様にして複合糸条を得た。
評価結果等を表1に示した。
ステンレス繊維の単糸数を36本にした以外は実施例5と同様にして複合糸条を得た。
評価結果等を表1に示した。
また、実施例3〜5と比較例3とを対比すると、連続強化繊維の単糸径(R)と密度(D)の積RDが特定範囲となる場合、連続強化繊維の繋ぎ糸破断強度が高く、開繊性・混繊性に優れており、混繊糸条の分散率が高く、均一に混合されており、従って、複合糸条とした場合の撚り強度維持率に優れることを確認した。
集束剤Aの付着量を2.0重量%にした以外は実施例1と同様にして、複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
集束剤Aの付着量を4.0重量%にした以外は実施例1と同様にして、複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
結束剤を固形分換算で0.5重量%とした以外は実施例1と同様にして、複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
集束剤の付着量を4.0重量%とした以外は実施例8と同様にして、複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
連続強化繊維に50回/mの撚りを施した以外は実施例1と同様にして、複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
連続有機繊維として、単糸数が72本のポリアミド66繊維〔商品名:レオナ(登録商標)470/72BAU(旭化成せんい社製)繊度470dtex、単糸数72本〕を用いた以外は実施例1と同様にして複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
連続有機繊維として用いられたポリアミド66繊維には流体交絡法によって15回/mの交絡が施されていること以外は実施例1と同様にして複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
連続有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維〔Hyousung社製Type556、繊度470dtex、単糸数96本〕を用いた以外は実施例1と同様にして複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
連続強化繊維、連続熱可塑性樹脂繊維をそれぞれ静電気力によって開繊した後、合糸・引き揃え、その後、再度静電気力によって開繊を施す開繊合糸法で混繊した(流体交絡は施さない)以外は実施例1と同様にして複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
図2−bに示すように、流体交絡ノズルへ引き揃え糸条を実質的に45度で供給する以外は実施例1と同様にして複合糸条を得た。
評価結果等を表2に示した。
12a 連続強化繊維
21 連続有機繊維の回巻体
22a 連続有機繊維
13 駆動ロール
14 流体交絡ノズル
15a 引き揃え糸条
15b 混繊糸条
16 巻き取りロール
Claims (12)
- 連続強化繊維と連続有機繊維が混繊され、撚糸されてなり、かつ、連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RDが5〜100μm・g/cm3であり、かつ、撚り強度維持率(%)が下記式(1):
撚り強度維持率(%)≧100×exp(−2.5×K/10 5 ) (1)
{式中、Kは、下記式(2):
K=Y×Dt 0.5 (2)
(式中、Yは、撚糸1mあたりの撚り数(回/m)であり、そしてDtは、連続強化繊維の繊度(dtex)である。)で表される複合糸条の撚り係数である。}を満足することを特徴とする複合糸条。 - 前記連続強化繊維をエアスプライサーによってつないだ繋ぎ糸条の引張り破断強度が、連続強化繊維原糸の引張り破断強度の50〜100%である、請求項1に記載の複合糸条。
- 前記連続強化繊維が、実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡である、請求項1又は2に記載の複合糸条。
- 前記連続強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、及びセラミック繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合糸条。
- 前記連続強化繊維の積RDと前記連続有機繊維の積RDの比(連続強化繊維/連続有機繊維)が0.3〜5である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合糸条。
- 前記連続強化繊維の単糸径と前記連続有機繊維の単糸径の比(連続強化繊維/連続有機繊維)が0.3〜2である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合糸条。
- 前記連続強化繊維の総繊度及び前記連続有機繊維の総繊度が100〜20,000dtexである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合糸条。
- 前記連続有機繊維が、実質的に無撚りであり、かつ、実質的に無交絡である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合糸条。
- 前記連続有機繊維が、連続セルロース系繊維及び/又は連続熱可塑性樹脂繊維である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合糸条。
- 前記連続熱可塑性樹脂繊維が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、及び熱可塑性フッ素系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる連続繊維である、請求項9に記載の複合糸条。
- 連続強化繊維と連続有機繊維を引き揃え、流体交絡法により混繊する工程を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合糸条の製造方法。
- 前記混繊は、連続強化繊維と連続有機繊維を引き揃え、かつ、流体交絡ノズルの導入穴面に実質的に垂直に供給することにより行われる、請求項11に記載の方法。
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