JP6174470B2 - ゴムクローラおよびスチールコード端部のゴムクローラ表面への飛び出し防止方法 - Google Patents
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抗張体は、従来、クローラ本体の周長よりも若干長く帯状に形成されたものを一周させ、その両端が厚さ方向に重ね合わされてクローラ本体に埋め込まれることが多かった。
特許文献2が指摘する加硫時にスチールコードの乱れを解決するための、特許文献2に提案された(スチールコード複数本で形成された帯状コード単位を使用する)技術は、剛性の局部的低下を避ける目的で、ゴムクローラ周方向において帯状コード単位の端同士の位置を異ならせる(段落0020)。そのため、特許文献2に提案された技術では、ゴムクローラ周方向において帯状コード単位の両端近傍を一定範囲重なり合わせた、または両端に一定の距離を有する構造としている。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、スパイラル状のスチールコードの端部の接地側表面への飛び出しを防止する方法およびスチールコード端部の飛び出しが防止されたゴムクローラを提供することを目的とする。
ゴムクローラは、幅方向から見たときに、巻き回されたスチールコードの両端が重ならないで間隔を有する。スチールコードの両端の近傍は、この両端がスチールコードの他の部分よりも内周側に位置するようにいずれも折り曲げられている。
スチールコードの両端の近傍における折り曲げ位置は、いずれもスチールコードの端近傍が周方向において最初に重なる芯金の翼部よりも当該端側である。
ここで、「スチールコードの端近傍が周方向において最初に重なる芯金の翼部」とは、当該端から他端に向けて巻き回されたスチールコードが最初に重なる(芯金の)翼部を言う。
複数本が不連続にスパイラル状に巻き回されたスチールコードを有する場合、好ましくは、その長さがいずれもスチールコードの位置におけるゴムクローラを一周する長さに芯金のピッチの2倍を加えた長さ以上である。
好ましくは、ゴムクローラは、スチールコードの断面が略円形であり、幅方向から見たときに、スチールコードにおける折り曲げられた両端とスチールコードの他の部分との距離がスチールコードの径以上である。
好ましくは、ゴムクローラには、厚さ方向から見たときに、その一部がスチールコードの他の部分よりも内周側に位置する両端近傍の外周側に配され、かつ前記一部を除く部分の一部または全部が芯金の翼部とスチールコードとの間に配された、織物、編み物またはシートが埋め込まれる。
ゴムクローラ1は、クローラ本体2、ラグ3、芯金4および一対の抗張体5等からなる。
クローラ本体2は、肉厚な帯状のゴムにより形成された大きな輪である。ラグ3は、輪であるクローラ本体2の外周面から外方に突出した状態で、クローラ本体2の内方からクローラ本体2の幅方向端に向けて延びたゴムの塊である。ラグ3は、クローラ本体2の周方向に一定の間隔で複数設けられる。以下単に「幅方向」というときはクローラ本体2における幅方向をいい、「周方向」というときはクローラ本体2における周方向をいうものとする。「外周」および「内周」の語は、「輪」であるクローラ本体2(ゴムクローラ1)におけるそれぞれ「外周」および「内周」をいう。
芯金4は、金属等の硬質材料によって形成される。芯金4は、全体として細長い形状である。芯金4の中央には、芯金4の長手方向に間隔を有して一方の表面から同方向に突出する一対の突起部11が設けられている。芯金4における突起部11から長手方向外方端までの部分を翼部12という。
芯金4は、突起部11の突出する側がゴムクローラ1の内周側となるように、複数が周
方向に等間隔に配されて、クローラ本体2に埋め込まれている。
ゴムクローラ1の加硫成形工程では、らせん状に巻き回される1本のスチールコード13またはコード並列体は、あらかじめゴム14により被覆されたものが使用される。ゴム14で被覆されたスチールコード13、およびゴム14で被覆されたコード並列体は、例えば特開2001−253374号公報、特開2013−40428号公報等に記載されており、公知である。
抗張体5を備えたゴムクローラ1は、例えば以下のようにして製造される。
先ずゴムクローラ1の内周側の形状を形成する内側モールド(内側金型)に未加硫ゴムが充填され、芯金4が、突起部11を内側(奥側、内周側)にして所定の位置に並べられる。続いて、芯金4の翼部の外側に、突起部11側から翼部12の端側に向けて並列被覆体15が巻き回される。並列被覆体15は、巻き始めの端が隣り合う芯金4,4間にかつ芯金4に近い位置に配されて、巻き始めの端16(以下「始端16」という)近傍が内側に折り曲げられる。並列被覆体15における折り曲げられた位置を屈曲点CPという。並列被覆体15の折り曲げでは、点として屈曲点CPを認識できない場合が多い、その場合、後述する曲がり角度θを形成する点を屈曲点CPとする。
並列被覆体15の巻き回しが所定の周回数繰り返され、巻き回しは、隣り合う芯金4,4間に巻き終わりの端17(以下「終端17」という)を位置させて終了される。終端17は、始端16と同様に、芯金4に重ねずかつ芯金4に近い位置に配されて、終端17近傍が内側に折り曲げられる。終端17近傍の折り曲げにおいても、折り曲げられた位置を屈曲点CPという。
キャビティ内の未加硫ゴムは、所定の温度および所定時間で加硫処理され、芯金4,4および抗張体5が埋め込まれたゴムクローラ1が形成される。
ード13の中心線の各微小部分の接線の傾き平均を、曲がり角度θとする。「接線の傾き」とは、湾曲しない部分のスチールコード13の中心線となす角度である。
始端16および終端17は、同じ芯金4,4間に配される(巻き回し回数が整数)のが好ましい。この場合、ゴムクローラ1の幅方向から見たときに、始端16と終端17とは重ならず間隔bを有し、この間隔bは、始端16および終端17が配される芯金4,4の距離cの10%以上が好ましい。なお、芯金4の翼部12の幅が長手方向の端に向かって変化する場合には、始端16および終端17それぞれに対応する(芯金4長手方向の翼部12の)位置における芯金4,4の距離の平均を距離cとする。
図2に示される抗張体5を有するゴムクローラ1は、スチールコード13の端16,17近傍をクローラ本体2の外周面から遠ざけて端16,17近傍の外相側を肉厚に形成することで、ゴムクローラ1の屈曲時にスチールコード13の端16,17近傍のはね上がりを防止することができる。また、ゴムクローラ1は、駆動輪等の通過および転輪が突起物に乗り上げ等の屈曲時において、内周側に曲げられたスチールコード13の端16,17近傍により、端16,17の周方向への移動が妨げられ、端16,17近傍につながって隣り合う芯金4間に跨がるスチールコード13の波打ち(沈み込み)が改善される。
上述した並列被覆体15を翼部12の外側に巻き回す場合の好ましい形態およびその効果は、(コード並列体ではなく)1本のスチールコード13がゴムに被覆された「単一被覆体」を翼部12の外側に巻き回す場合にも当てはまる。
ゴムクローラ1Bを構成するクローラ本体2、ラグ3および芯金4は、ゴムクローラ1におけるものと同じである。
ゴムクローラ1Bは、抗張体5が、連続する1本の並列被覆体15で形成されるのではなく、2本の並列被覆体15a,15bが不連続に直列に並べられて形成される。並列被覆体15a,15bは、それぞれの長さが並列被覆体15より短い点を除き、2本のスチールコード13,13がゴム14に被覆された並列被覆体15と同じである。
ゴムクローラ1Bの製造における芯金4の翼部12への並列被覆体15aの巻き回しの開始は、ゴムクローラ1と同様に、突起部11側から行われる。並列被覆体15aの巻き始めの端16a(始端16a)は、芯金4,4間にかつ芯金4に近くに位置するように配され、始端16aの近傍が内側に折り曲げられることも、ゴムクローラ1の場合と同じである。
間に位置するように、並列被覆体15aの余分な長さ分が切断される。終端17aは、始端16aと同様に、芯金4に重ねずかつ芯金4近くに配され、終端17a近傍が内側に折り曲げられる。
次に、別の並列被覆体15bが、巻き終えた並列被覆体15aが最後に(周方向に)重なる芯金4の隣の芯金4に重ねられて、巻き回しが再開される。2本目の並列被覆体15bの始端16bは、隣り合う芯金4,4間で、すでに巻き回された並列被覆体15aの終端17aに対向する。始端16bが内側に折り曲げられること、および始端16bと芯金4との位置関係は、並列被覆体15aと芯金4との位置関係と同じである。
ゴムクローラ1Bの成形過程は、2本の並列被覆体15a,15bが互いに不連続に巻き回される点を除き、ゴムクローラ1の製造過程と同じであるので、その説明を周略する。
の端部の接地側表面への飛び出しが防止される。
1つのゴムクローラを、複数本の不連続な単一被覆体を巻き回して製造する場合の好ましい巻き回しの形態およびその効果は、上述した複数本の不連続な並列被覆体を巻き回す形態およびその効果に共通する。
図5は他のゴムクローラ1Cの製造過程における並列被覆体15C回りの様子を示す図、図6は図5におけるC−C矢視図である。
ゴムクローラ1Cは、埋め込まれる抗張体5が、5本のスチールコード13,…,13を略等間隔で平行に並べて1単位としたコード並列体がゴムで被覆された並列被覆体15Cで形成される。
並列被覆体15Cの巻き回しが終了すると、始端16C近傍および終端17C近傍が内側に折り曲げられて生ずる、並列被覆体15Cの他の部分との段差部分に、未加硫のゴムの塊21C(以下「補積材21C」という)が配される。
補積材21Cには、加硫後の硬度がJIS−K−6253、タイプAにおいて60〜80度のゴムが用いられる。補積材21Cに使用されるゴムは、常にクローラ本体2の他の部分のゴムに比べて高くなるようにこの硬度範囲の中から選択される。このように補積材21Cのゴム高度を高めるのは、始端16C近傍および終端17C近傍の外周側へのはね上がりを一層制限するためである。
ゴムクローラ1Dを構成するクローラ本体2、ラグ3および芯金4は、ゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じである。
また、ゴムクローラ1Dに埋め込まれた抗張体5は、ゴムクローラ1Cにおけるものと同じである。ゴムクローラ1Dにおいてゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じ構成の部分は、図7,8においてゴムクローラ1,1B,1Cにおけるものと同じ符合を付し、その説明を省略する。
ゴムクローラ1Dの加硫成形では、芯金4の翼部12の外側への巻き始めに、補積材21Dの矩形における1つの辺S1の近傍によって、並列被覆体15Cにおける始端16Cおよび屈曲点CPを含みその巻き方向に在る翼部12に重なる部分を覆う。補積材21Dにおけるこの辺S1に平行な辺S2は、並列被覆体15Cの巻き方向の反対側に隣り合う芯金4の翼部12に架け渡される。並列被覆体15Cは、2周目から、芯金4との間に補積材21Dが挟まれるように、翼部12の外側(ゴムクローラ1Dにおける外周側)に巻き回される。
織物による補積材21Dがゴムクローラ1Dにおいて上述のように埋め込まれることにより、走行時に沈み込みによるスチールコード13の端(始端16C、終端17C)近傍の外周側への移動が制限される。ゴムクローラ1Dは、クローラ本体2の亀裂およびこれに起因する始端16C近傍および終端17C近傍の接地側表面への飛び出しが防止されて、耐久性が向上する。
「単一被覆体18E」とは、1本のスチールコード13がゴムに被覆されたものをいう。
ゴムクローラ1Eの製造は、1本の単一被覆体18Eを芯金4の翼部12の外側に巻き回し、その始端16Eおよび終端17Eに別々の織物による補積材21Eが配される点で、ゴムクローラ1Dの製造と異なる。細長い矩形のそれぞれの補積材21E,21Eは、その長手方向が単一被覆体18Eの巻き回し方向に揃えられ、長手方向を隣り合う芯金4,4に架け渡らせて、巻き回された単一被覆体18Eの始端16Eおよび終端17Eから、それぞれの芯金4に重なる部分までを覆う
補積材21E,21Eは、矩形形状の多くの部分が、巻き回された単一被覆体18Eと芯金4との間に挟まれる。
ゴムクローラ1,1B〜1Dの製造に使用される並列被覆体15,15a,15b,15Cは、2〜5本のスチールコード13がゴム14に被覆されたものが好ましい。ゴムクローラ1,1B,1C,1D,1Eの製造過程における、図1〜9に示される並列被覆体15,15a,15b,15C、単一被覆体18Eおよびこれらの周囲の形態は、相互に適用しても、それぞれの効果を同様に奏する。例えば、ゴムクローラ1Bの始端16a,16b、終端17a,17b近傍にゴムクローラ1Cにおける補積材(ゴム塊)21Cを使用することができる。
ゴムクローラ1Bへの補積材21D,21Eの埋め込みは、例えば図3の網掛けで示される範囲AR1〜3に行われる。
ゴムクローラ1,1B,1C,1D,1Eの製造過程における、並列被覆体15,15a,15b,15C、単一被覆体18Eおよびこれらの周囲の形態は、ゴムクローラ1,1B,1C,1D,1E内に埋め込まれたスチールコード13の形態にそのまま反映される。
補積材21D,21Eを、ゴムの塊による補積材21Cとともにゴムクローラ内に埋め込んでもよい。その場合、補積材21Cは、例えば始端16C近傍において始端16C近傍と補積材21Dとに挟まれる。
4 芯金
12 翼部
13 スチールコード
16,16a,16b,16C,16E (巻き始めの)端、始端
17,17a,17b,17C,17E (巻き終わりの)端、終端
21C ゴム塊、補積材(ゴムの塊)
21D,21E 補積材(織物、編み物またはシート)
θ 曲がり角度
CP 屈曲点(折り曲げ位置)
Claims (8)
- 芯金の翼部の外周側にスパイラル状に巻き回されたスチールコードを備えたゴムクローラであって、
幅方向から見たときに、
巻き回された前記スチールコードの両端が重ならないで間隔を有し、
前記両端は、いずれも隣り合う前記芯金間に位置し、
前記両端の近傍は、前記両端が前記スチールコードの他の部分よりも内周側に位置するようにいずれも折り曲げられており、
前記両端の近傍における折り曲げ位置は、いずれも前記スチールコードの端近傍が周方向において最初に重なる前記翼部よりも当該端側である
ことを特徴とするゴムクローラ。 - 幅方向から見たときに、
前記スチールコードの両端の間隔が、周方向に隣り合う前記芯金の翼部の間隔の10%以上である
請求項1に記載のゴムクローラ。 - 複数本が不連続にスパイラル状に巻き回された前記スチールコードを有し、その長さがいずれも前記スチールコードの位置におけるゴムクローラを一周する長さに前記芯金のピッチの2倍を加えた長さ以上である
請求項1または請求項2に記載のゴムクローラ。 - 幅方向から見たときに、
前記スチールコードにおける折り曲げられた両端近傍と、前記スチールコードの他の部分と、の曲がり角度が5度以上である
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のゴムクローラ。 - 前記スチールコードの断面が円形であり、
幅方向から見たときに、
前記スチールコードにおける折り曲げられた両端と前記スチールコードの他の部分との距離が前記スチールコードの径以上である
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のゴムクローラ。 - 前記スチールコードの他の部分よりも内周側に位置する両端近傍の外周側に、他の部分に比べて硬度の高いゴムの塊が埋め込まれた
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のゴムクローラ。 - 厚さ方向から見たときに、
その一部が前記スチールコードの他の部分よりも内周側に位置する両端近傍の外周側に配され、かつ前記一部を除く部分の一部または全部が前記芯金の翼部と前記スチールコードとの間に配された、織物、編み物またはシートが埋め込まれた
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のゴムクローラ。 - 芯金の翼部の外周側にスパイラル状に巻き回されたスチールコード端部のゴムクローラ表面への飛び出し防止方法であって、
ゴムクローラをその幅方向から見たときに、
巻き回された前記スチールコードの両端が重ならないように間隔を設け、
前記両端を、いずれも隣り合う前記芯金間に位置させ、
前記スチールコードのそれぞれの端近傍を、周方向において当該端近傍が最初に重なる前記翼部よりもそれぞれの端側で内周側に折り曲げて、前記両端をいずれも前記スチールコードの他の部分よりも内周側に配置する
ことを特徴とするスチールコード端部のゴムクローラ表面への飛び出し防止方法。
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