JP6172526B2 - ニッケル塩素浸出工程における塩素浸出液の銅濃度の調整方法 - Google Patents
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Description
そこで得られた、酸化剤としての2価の銅クロロ錯イオンを含んだ塩素浸出液に、混合硫化物を接触させることにより、混合硫化物中のニッケルおよびコバルトが置換浸出されると共に、2価の銅クロロ錯イオンの一部が1価の銅クロロ錯イオンに還元される。
その置換浸出終液とセメンテーション残渣からなるスラリーは、固液分離後、置換浸出終液は次の浄液工程へ、セメンテーション残渣は塩素浸出工程へ送られる。
次いでニッケルを電解採取して電気ニッケルを製造する方法である。
この方法はシンプルで、電解採取で発生した塩素ガスを浸出に再利用する等、効率的かつ経済的な生産を実現している。
前記塩素浸出工程では、2価の銅のクロロ錯イオンが混合硫化物やセメンテーション残渣中の金属を溶解するための直接的な浸出剤として作用し、塩素ガスは銅の1価イオンを2価イオンに酸化することにより間接的に浸出反応に関与する。
すなわち、ニッケルマットや混合硫化物等の原料中に微量に含まれる銅は、ニッケルおよびコバルトを精製する上での不純物ではあるが、前記塩素浸出工程や置換浸出工程では酸化剤として利用され、塩素浸出工程と置換浸出工程の間を、塩素浸出液とセメンテーション残渣として循環している。
この還元時に使用する還元剤としては金属ニッケルが用いられており、塩素浸出液を金属ニッケルが充填されたカラム槽に通液することによって、ニッケルの溶解と2価の銅クロロ錯イオンの一部の1価の銅クロロ錯イオンへの還元が同時に行われることになる。
この特許文献2の方法により、脱銅電解の電流効率が向上し、ランニングコストの大幅な低減を図ることができた。
前述の通り、塩素浸出法を用いたニッケルおよびコバルト製錬プロセスは、原料に含まれる不純物としての銅を上手く利用することで成立している。
よって、塩素浸出法を用いたニッケルおよびコバルト製錬プロセスでは、原料中に銅が不純物として含まれていることが前提条件となる。
一方で、混合硫化物もニッケル酸化鉱石を原料としているため、銅をほとんど含有していないという特徴を有する。
したがって、このニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットの処理量によって、銅のインプット量が大きく変動することになる。
置換浸出工程でのセメンテーション残渣量の増加は、固液分離等、そのハンドリングに手間を要すことになり、効率的では無い。
また、塩素浸出工程では、増加したセメンテーション残渣の塩素浸出のために、ニッケルおよびコバルトを浸出するための必要量以上の塩素を消費することになり、経済的では無い。
そこで、原料構成比が変わっても、言い換えれば全原料平均の銅含有率が大幅に変動しても、塩素浸出液の銅濃度を適正範囲に維持するための手段や管理方法を確立する必要があった。
(2)塩素浸出液を、前記金属ニッケルを充填したカラム槽内で金属ニッケルを接触させることによって、還元して価数が2価の銅イオン濃度を低下させた後に、該還元後の塩素浸出液を銅電解採取することによって、塩素浸出液中の銅濃度を低下させる脱銅手段。
(3)上記(1)も(2)も実施しない中立手段。
当然のことながら、塩素ガスのロスが増加したり、ニッケルおよびコバルトの実収率が低下したり、環境問題を発生させることも無い。
また、生産効率の悪化や塩素消費量の増加によるコストアップ、さらには電気ニッケルや電気コバルトへの銅の混入も発生しない。
また、カラム槽への充填物を金属ニッケルから金属銅に入れ替え、銅電解採取槽の通電を停止するだけで、従来の脱銅電解工程を銅補充工程に切替えることができる。
このことにより、従来の脱銅電解工程が銅濃度調整工程に高度化され、塩素浸出工程へのフレキシブルな銅の出し入れが可能になる。
本発明によるニッケル塩素浸出工程における塩素浸出液の銅濃度の調整方法は、ニッケルを含む金属硫化物からニッケルを塩化物水溶液中に塩素浸出して塩素浸出液を形成する際に、その塩素浸出液の銅濃度の管理基準値を15〜55g/Lの間で任意に設定し、その管理基準値に対する塩素浸出液の銅濃度挙動によって以降の採りうる手段を予め定め、その定められた手段に沿って実施することにより塩素浸出液中の銅濃度を10g/L以上60g/L以下になるように維持することを特徴とするものである。
下記に、管理基準値に対する銅濃度挙動[A]から[D]と、それに対応して予め定められた採りうる手段を表1に示す。
[B]塩素浸出液の銅濃度が、管理基準値から3g/L以上上昇した時には下記(2)の手段を講じる。
[C]塩素浸出液の銅濃度が、管理基準値から3g/L未満低下した時には下記(1)、(2)、(3)のいずれかの手段を講じる。
[D]塩素浸出液の銅濃度が、管理基準値から3g/L未満上昇した時には下記(1)、(2)、(3)のいずれかの手段を講じる。
図1に本発明を含むニッケルおよびコバルト製錬プロセスの概略フローシートを示す。
本発明は、ニッケルおよびコバルト製錬プロセスの全体工程の中の、ニッケルを含む金属硫化物からニッケルを水溶液中に塩素浸出して塩素浸出液を得る方法にあって、塩素浸出液中の銅濃度を調整する技術ではあるが、原料処理も含めたニッケルおよびコバルト製錬プロセスにおける全体最適化を達成するための技術であるため、本発明に特に関係する、原料処理比率、塩素浸出、置換浸出(セメンテーション)について詳細に説明する。
主要な原料は、ニッケルマットと混合硫化物の2種類となる。
ニッケルマットとは、ニッケル硫化鉱石を溶鉱炉で溶解して得られるニッケル硫化物や、ニッケル酸化鉱石に硫黄を添加して電気炉で溶解して得られるニッケル硫化物等、いわゆる乾式製錬法で得られたニッケル硫化物を指している。
ニッケル酸化鉱石を原料としたニッケルマットと比較して、ニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットは不純物の含有量が高いという特徴があり、ニッケルおよびコバルト製錬プロセスへの主な銅のインプット源は、ニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットである。
したがって、このニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットの処理量によって、銅のインプット量が大きく変動することになる。
混合硫化物および後述するセメンテーション残渣を、塩化物水溶液にレパルプした後、そのスラリーに塩素ガスを吹込むことによって混合硫化物中のニッケルおよびコバルトと、セメンテーション残渣中のニッケルおよび銅を、塩化物水溶液中に塩素浸出して塩素浸出液を得る。
その主要な塩素浸出反応式を下記(式1〜4)に示した。
この浸出反応が効率的に進行するためには、塩素浸出液中の銅濃度が10g/L以上であることが条件であり、最大60g/Lの範囲内で、その銅濃度が高いほど塩素吸収効率が高くなるため、金属成分の浸出率が向上する。
このことは、塩素ガスのロスが増加してコストが増加するだけに止まらず、浸出残渣に残留するニッケルおよびコバルトが増加し、ニッケルおよびコバルトの浸出率が低下して、ニッケルおよびコバルトの実収率が低下することに繋がる。加えて、上記の問題により、塩素ガスの吹込み量を減らして原料処理量を減らす操作を行わざるを得ないため、ニッケルの生産量が減少する。
また、環境問題につながる可能性もある。
さらに、巨大な塩素ガス吸収装置と多量の吸収液を必要とするため、現実的には工業的な操業が不可能となる。
この置換浸出工程でのセメンテーション残渣量の増加は、固液分離等、そのハンドリングに手間を要すことになり、効率的では無い。また、塩素浸出工程では、増加したセメンテーション残渣の塩素浸出のために、ニッケルおよびコバルトを浸出するための必要量以上の塩素を消費することになり、経済的では無い。
そのため、この塩素浸出液中の銅濃度の調整が、本発明の銅濃度調整工程において行われる。
塩素浸出液中の銅濃度の増減は、銅濃度を増加させる場合は、塩素浸出液と金属銅を接触させる方法によって行い、一方で銅濃度を低下させる場合には、銅電解採取によって銅粉を抜出す方法によって実施される。
置換浸出工程は、第1の置換浸出工程(図1では置換浸出1と記載)と第2の置換浸出工程(図1では置換浸出2と記載)の、2つのステージで構成される。
この第1の置換浸出工程で得られた置換浸出液は2価の銅クロロ錯イオンの一部が1価の銅のクロロ錯イオンに還元されている。
主要な置換浸出反応式を下記(式5〜7)に示した。
この置換浸出終液の銅濃度を低下させるためには、混合硫化物中に含まれるNiSよりも還元力の強いNi0(金属ニッケル)やNi3S2を含有したニッケルマットが必要となる。
このセメンテーション反応は、固体のニッケルが溶出してニッケルイオンとなり、その溶出したニッケルと電気化学的に当量の液中の銅イオンが固体となるため、置換浸出工程は塩素浸出液中に含まれる銅を固体として除去する脱銅工程であるとも言える。
しかし、ニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットが大幅に不足した場合、またはニッケル硫化鉱石を原料としたニッケルマットが不足した状態で混合硫化物を増処理する必要が生じた場合、この置換浸出終液として浄液工程へ持ち出される銅量の方が、原料から持ち込まれる銅量よりも多い状況が発生することがある。
そこで、本発明では、従来技術である脱銅電解工程において、塩素浸出液を還元するために設けられた、金属ニッケルが充填されたカラム槽の充填物を金属銅に置き換えることによって、従来の脱銅電解設備をそのまま利用して、塩素浸出液の銅濃度を上昇させる。
本発明は、ニッケルを含む金属硫化物からニッケルを水溶液中に塩素浸出して塩素浸出液を得る方法において重要な役割を果たす銅を、金属銅を溶解することで補充するに当たり、酸化還元電位が560mVの酸化力を持つ塩素浸出液と金属銅を接触させることで、銅の不均化反応を進行させて金属銅を溶解することを特徴としている。
この塩素浸出工程では、2価の銅のクロロ錯イオンが混合硫化物やセメンテーション残渣中の金属を溶解するための直接的な浸出剤として作用し、塩素ガスは銅の1価イオンを2価イオンに酸化することにより間接的に浸出反応に関与する。
塩素浸出反応では酸化雰囲気となるため、2価の銅クロロ錯イオンが存在する領域まで酸化還元電位は上昇する(400mV以上)。
本発明では、下記(式8)に示した通り、この2価の銅クロロ錯イオンの酸化力を利用して金属銅を酸化させて溶解する。
図2に示した概略フローシートのうち、(a)は塩素浸出液の銅濃度を低下させる場合のフローシートであり、特許文献2に示された従来法である。(b)は塩素浸出液の銅濃度を上昇させる場合のフローシートである。
塩素浸出液の組成は、Ni濃度が200〜250g/L、Cu濃度が10〜60g/Lである。
この還元工程で、酸化還元電位400〜500mV、2価銅比((Cu2+濃度/全Cu濃度)×100%)60〜80%の塩素浸出液が、酸化還元電位380〜480mV、2価銅比10〜30%に還元される。
脱銅電解給液の銅濃度は、15〜25g/Lに調整する。
その後、脱銅電解給液を電解槽に供給し、不溶性アノードを用いた電解採取法によって、銅粉として銅を電解採取する。
脱銅電解廃液および銅粉スラリーの脱水ろ液は、置換浸出工程に供給される。
本発明は、図2(a)の従来法と、図2(b)の本発明法を組み合わせることにより、塩素浸出液の銅濃度の低下と上昇を自在に切替える方法である。
この方法は、従来技術に係る設備を利用し、金属ニッケルまたは金属銅を充填した複数のカラム槽と、切替え配管、切替えバルブによって、簡単に実施することができる。
その金属銅が装入された500mLビーカーに、表2に示した組成のニッケル電解廃液で希釈した塩素浸出液を3.4mL/分の流量で通液した。
その時のSV比(空間速度)は0.5である。
図3から、通液を開始してから1時間後にはCu濃度が約33g/Lに上昇し、1時間後以降、Cu濃度が安定すること、すなわち銅の溶解が安定して進行することが分かる。
銅の溶解が十分に安定した3時間後のCu濃度を用いて、銅濃度の増加量[g/L]×通液量[L/h]を、溶解速度[g/h]と定義した。なお、Cu濃度の測定は実施例1と同様にICP−AES法により行った。
図4から、金属銅の充填量と通液流量を適切に管理すれば、塩素浸出液のCu濃度を定量的に上昇させる、すなわちコントロールすることができることが分かる。
塩素浸出液の酸化還元電位(560mV)に対して、金属銅と接触させた後の塩素浸出液の酸化還元電位は大きく低下しており、還元反応が進行していることが分かる。
また酸化還元電位が約430mVにおける2価銅比は10%程度であるため、SV比が0.5でも、金属銅の溶解が十分に進行していることが分かる。
そのカラム槽に、塩素浸出液を38〜42L/分の流量で通液した操業を、約5日間、継続した。
また、塩素浸出液の酸化還元電位は480〜510mV、2価銅比は51〜72%、金属銅と接触させた後の塩素浸出液の酸化還元電位は430〜450mV、2価銅比は14〜27%であった。
そのカラム槽に、塩素浸出液を140〜180L/分の流量で通液した操業を、約7日間、継続した。
その際、金属ニッケルが充填されたカラム槽に通液した後の塩素浸出液を、Cu濃度が15〜25g/Lになるようにニッケル電解廃液で希釈して、銅電解給液を調製して用いた。
その銅電解給液量は18〜22L/分・槽で、その銅電解給液の組成は、Ni濃度が159〜200g/L、Cu濃度が18〜25g/Lであり、銅電解廃液のCu濃度は10〜14g/Lであった。
Claims (1)
- ニッケルを含む金属硫化物からニッケルを、銅を含む塩化物水溶液中に塩素浸出して塩素浸出液を得るニッケル塩素浸出工程における脱銅電解設備を用いた前記塩素浸出液の銅濃度調整方法において、
前記脱銅電解設備が、金属ニッケルを充填したカラム槽および金属銅を充填したカラム槽とを備え、
前記塩素浸出液の銅濃度が15〜55g/Lの間で任意に設定された管理基準値から3g/L以上低下した時には下記(1)の手段を講じ、
前記塩素浸出液の銅濃度が、前記管理基準値から3g/L以上上昇した時には下記(2)の手段を講じ、
前記塩素浸出液の銅濃度が、前記管理基準値から3g/L未満低下した時には下記(1)、(2)、(3)のいずれかの手段を講じ、
前記塩素浸出液の銅濃度が前記管理基準値から3g/L未満上昇した時には下記(1)、(2)、(3)のいずれかの手段を講じて塩素浸出液中の銅濃度を10g/L以上60g/L以下になるように維持する、
ことを特徴とするニッケル塩素浸出工程における塩素浸出液の銅濃度の調整方法。
(記)
(1)酸化還元電位が400mV(Ag/AgCl電極基準)以上の塩素浸出液と、前記金属銅を充填したカラム槽内で金属銅を接触させることによって、塩素浸出液中の銅濃度を上昇させる銅補充手段。
(2)塩素浸出液を、前記金属ニッケルを充填したカラム槽内で金属ニッケルを接触させることによって、還元して価数が2価の銅イオン濃度を低下させた後に、前記還元後の塩素浸出液を銅電解採取することによって、塩素浸出液中の銅濃度を低下させる脱銅手段。
(3)上記(1)も(2)も実施しない中立手段。
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