JP6171762B2 - Ni基耐熱合金の鍛造加工方法 - Google Patents
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この4面鍛造加工では、図7に示すように被処理材100の外周周りに90°ごと4面に配置した工具102を、被処理材100に対して軸直角方向の4方向から同時に押し込んで打撃を加え、その動きを、被処理材100を少しずつ回転させながら、更には軸方向に少しずつ送りながら繰返し行って被処理材100に圧下を加え、断面円形に加工する。
加工の速度が遅ければ加工の途中で被処理材が冷えてしまい、その場合被処理材が難加工材であると加工不能に陥ってしまうが、4面鍛造加工では加工を高速で行うことができるため、即ち被処理材が冷えて硬く、変形抵抗が大きくなる前に加工を終了することが可能であるため、難加工材であっても加工が可能である。
一般にこの4面鍛造加工では、直径が200mm近くなると被処理材の横断面の中心部に対し歪みを十分に付与することが難しくなり、加工可能な形状が直径200mm未満の小径のものに限定されてしまう問題がある。
横断面の中心部に十分な歪みが加わらないために、中心部の結晶粒を再結晶によって十分に微細化することが難しいからである。
Ni基耐熱合金はオーステナイト単相材料であるため、相変態を利用した結晶粒微細化ができず、再結晶温度以上の温度での熱間加工(熱間鍛造)により結晶を再結晶させることで結晶粒を微細化するが、4面鍛造加工では直径が200mmを超す太径の円柱状の部材になると、横断面中心部に対し、再結晶による結晶微細化の効果を十分に及ぼすことが難しいことから、直径が200mm未満の小径のものにその適用が限定されてしまうのである。
従って圧延加工の場合においても、中心部に十分な歪みを与えて結晶粒を再結晶により微細化するといったことは難しい。
しかしながらこの特許文献1に開示のものにおいて、粗鍛造加工に相当する鍛伸加工は、据込と鍛伸とを繰り返すものではなく、単に鍛伸加工を行うにすぎないものである点で本発明と異なる。
しかしながらこの特許文献2においても、鍛伸を行う点が開示されているものの、据込と鍛伸とを組合せて粗鍛造を行う点の開示はなく、また直径200mm超の太径の柱状材を鍛造加工にて得る点の開示もなく、本発明とは異なる。
但しこの特許文献3に開示のものにあっても、鍛伸を行う点が開示されているのみで、据込と鍛伸とを組み合せて粗鍛造を行う点、高速4面鍛造に先立って鍛伸と据込とを組み合せた粗鍛造を行う点等について開示するところはなく、本発明とは異なる。
詳しくは、本発明では鍛造加工を前加工としての粗鍛造加工と、仕上げ鍛造加工とに分けて実行し、最終の求める鍛造品、即ち直径が200mmを超す太径の円柱状に成形加工する。
本発明では仕上げ鍛造において4面鍛造加工を行う。
この4面鍛造加工は、前述したように高速且つ短時間で加工を終了することが可能であり、従って難加工材であっても加工を良好に完了することができる。
また4面鍛造加工では、被処理材に対して周方向に均等に加工を加えて、表層及びこれに近い領域に歪みを均等に付与することができ、従ってそれらの組織を周方向に均等化することができる。
そこで本発明では最終の鍛造品、即ち仕上げ鍛造加工後の円柱状の部材に求められる中心部までの組織の作り込みを、最初の粗鍛造加工で行う。即ち中心部に到るまでの組織の微細化を粗鍛造加工に役割分担させる。
ここでソーキング温度を1180℃以上とするのは、これよりも低い温度であるとMC型晶出物を十分に固溶させることができないからである。
一方1280℃を超えるとNi基耐熱合金が局部溶融を起してしまう。
即ち中心部に到るまで最終の鍛造品に求められる設定結晶粒度以上の細粒組織とする。
そして最終の仕上げ鍛造加工では、1080℃以下の温度の下で上記の設定結晶粒度を確保しながら、4面鍛造加工により被処理材を上記目標形状の鍛造品に成形加工する。
同様に圧下率20%以上の鍛伸を行うのは、その様な圧下率で加工を行うことで被処理材の中心部に十分な歪み(歪み量0.22以上)を付与できることによる。
換言すれば、本発明では粗鍛造加工において中心部に十分な歪み量0.22以上を付与できるように据込と鍛伸とを圧下率20%以上で行う。
尚ここで言うところの圧下率20%以上の加工とは、リヒートとリヒートとの間に行われる加工の合計の圧下率を意味している。
一方1150℃超の温度では、温度が高過ぎて据込及び鍛伸の加工直後における結晶粒の粒成長速度が速くなり過ぎ、結晶粒の粗大化を招いてしまうことによる。
そこで本発明では、最終の据込と鍛伸とを含む終盤工程を結晶粒の粒度調整工程として設定し、その粒度調整工程においては、据込及び鍛伸の加工を1080℃以下の低温度で行う。
このような温度で据込及び鍛伸を行うことで、良好にそれらの加工を行うことができる。
但しこのような高い温度の下では、再結晶にて生成した結晶粒が速やかに粒成長して粗大化してしまい易いが、本発明では粗鍛造工程の終盤の粒度調整工程において1080℃以下の低温度で据込及び鍛伸の加工を行うため、加工後の結晶粒の粒成長を抑制して、被処理材の組織を中心部に到るまで微細組織に留め置くことができる。
一方仕上げ鍛造加工における上記の4面鍛造加工では、最終形状は断面円形状となる。この4面鍛造加工では、基本的に当初形状が円形に近い断面形状のものを断面円形状化し且つこれを繰り返すことで段階的に細径化して行く。
この場合、粗鍛造加工後の断面4角形状の被処理材に対して直接4面鍛造加工を加えることは難しい。
即ち仕上げ鍛造加工は、被処理材を最終の目標とする断面形状に成形加工すれば良い。本発明では仕上げ鍛造加工が形状出しのための役割を担っている。
Cr:17.0〜21.0%
Crは17.0%未満で耐熱性不足となり、一方21.0%を超えて過剰に含有させると、M23C6等の炭化物が多量に発生し延性低下となるため含有量を17.0〜21.0%とする。
Coは11.0%未満で耐熱性不足となり、13.0%を超えて過剰に含有すると、析出を意図しないAl,Tiとの化合物を形成し熱間強度不足となるため含有量を11.0〜13.0%とする。
Moは8.0%未満で耐熱性不足となり、12.0%を超えて過剰に含有すると、M2C等の炭化物過多となって延性低下となるため含有量を8.0〜12.0%とする。
Alは1.0%未満でNi3(Al,Ti)不足による強度不足を生じ、2.0%を超えて過剰に含有させると、過度のNi3Al析出により延性が低下するため含有量を1.0〜2.0%とする。
Tiは2.5%未満でNi3(Al,Ti)不足による強度不足を生じ、逆に4.0%を超えて過剰に含有させると、Ni3(Al,Ti)過剰となってTiC過多となり、延性が低下するため含有量を2.5〜4.0%とする。
Feは各種化合物生成による本来意図しない成分変化を防止する為、6.0%以下に規制する。
Bは0.001%未満で粒界強度が不足し、目標とするクリープ特性を達成できず、0.020%を超えて過剰に含有させると、BN晶出による粒界強度が低下するため含有量を0.001〜0.020%とする。
Cは0.15%を超えて過剰に含有させると、TiC,CrC,MoC過多となって延性が低下するため含有量を0.15%以下とする。
表1に示す化学組成のNi基耐熱合金を真空誘導炉で溶解し、更にエレクトロスラグ再溶解(ESR)を行って2.5トンのNi基耐熱合金のインゴットを得た。
そしてそのインゴットから得た加工素材(被処理材)に対して以下に詳述する粗鍛造加工を施し、その後に鍛伸による整形加工及び4面鍛造加工を仕上げ鍛造加工として施し、最終の鍛造品である直径φ200mm超の、ここでは直径374mmの円柱状の鍛造品を得た。
以下にそのプロセスの内容を詳しく説明する。
これら表2及び図1に示しているように粗鍛造加工では、先ず最初に加工素材(被処理材)10(φ530mm×1245mm)に対して1200℃×30hrの条件でソーキング処理(均熱処理)を行った。このソーキング処理により加工素材10を中心部に到るまで均等に1200℃まで均熱し、またMC型晶出物を母相に固溶させた。
尚表2の鍛造温度の欄の数値は、表2中左端の欄の加工(但し鍛伸(4)を除く)開始時の温度(材料の表面温度)を示している。
その後に、加工品12-1に対して1150℃×3hrの条件でリヒート(1)を行った上で鍛伸(1)を行い、横断面が500×550mmで、長さが1000mmの断面4角形状の加工品12-2を得た。
このときの鍛伸(2)での加工率は小さいもので、圧下率は20%未満である。
その後に更にリヒート(3)を、1150℃×3hrの条件で行い、続いて1150℃の下で加工品12-3に対し据込(2)を行って横断面が797×797mm,長さ550mmの断面4角形状の加工品12-4を得た。
引続いて1080℃×3hrの条件でリヒート(4)を行った上で据込(3)を行い、横断面が797×797mmで長さが550mmの断面4角形状の加工品12-6を得た。
尚表2において鍛伸(4)は、リヒート(4)の後に据込(3)を行った後、これに続いて途中加熱することなく行っており、材料の表面温度は時間の経過した分1080℃よりも低下している。そのために表2中では鍛伸(4)に対応する温度を括弧付きで示している。
これらの図に示しているようにこの粗鍛造加工では、鍛伸(2)を除く何れの加工でも、加工素材10及び各加工品に対して各部の歪み量が、再結晶による結晶粒微細化に必要な0.22を、特にここでは0.25を超えている。
この細粒組織は最終の鍛造品、即ちφ374mmの円柱状の部材に求められる設定結晶粒度番号を満たす微細組織である。
この整形加工では、図4に示しているように粗鍛造加工にて最終的に得られた断面形状が500×500の4角形状である加工品12-7に対して、先ず対角線方向に相対向する一対のコーナーに対する圧下(コーナー圧下)を行って断面形状を6角形状となし、続いて今一方の対角線方向に対向する一対のコーナーに対する圧下(コーナー圧下)を行って、横断面形状が8角形状の加工品14-2とした。加工品14-2の横断面の幅寸法は440mmである。
尚この鍛伸による整形加工では、コーナー圧下によって膨れを生じたコーナーとコーナーとの間の平面部に対する膨れを解消するための加工も併せて行っており、またその間にリヒートも行っている。
即ちここでの鍛伸による整形加工は、中心部に対してそのような歪み量を付与しない加工量の小さな加工である。これは仕上げ鍛造加工が主として被処理材の断面形状を目標とする断面形状に整形することを目的とした加工であることによる。
この4面鍛造加工では、図4に示す断面8角形状の最終の加工品14-2に対して、外周周りに90°ごと隔たった位置の4面に配置した工具を軸直角方向から同時に打ち込んで打撃を与え、図5に示すように先ず断面円形のφ420mmの加工品16-1となし、次いで漸次細径化を行って断面がφ400mmの加工品16-2,φ380mmの加工品16-3とし、そして最終的にφ374mmの鍛造品18とした。
因みにこの4面鍛造加工後の最終の鍛造品18における結晶粒度は、中心部がASTM結晶粒度No.4,D/4部がNo.5,表層がNo.5であった。
これは中心部に対して0.25の歪み量を加え得ない仕上げ鍛造加工の前に、粗鍛造加工によって最終の鍛造品18の中心部に求められるASTM結晶粒度以上の結晶粒度を有する加工品12-7を加工形成していることによる。
但しこの比較例では、鍛伸(3)が最終の加工であり、しかもその加工を1150℃の高い温度の下で行っている。その結果、粗鍛造加工における最終加工品の中心部の結晶粒度は、ASTM結晶粒度No.2.5で、ASTM結晶粒度No.4よりも粒度番号の小さな、即ち結晶粒が粗く粗大なものであった。
12-1,12-2,12-3,12-4,12-5,12-6,12-7,14-1,14-2,16-1,16-2,16-3 加工品(被処理材)
18 鍛造品
Claims (4)
- 質量%で
Cr:17.0〜21.0%
Co:11.0〜13.0%
Mo:8.0〜12.0%
Al:1.0〜2.0%
Ti:2.5〜4.0%
Fe:≦6.0%
B:0.001〜0.020%
C:≦0.15%
残部Ni及び不可避的不純物の組成を有するNi基耐熱合金から成る被処理材に対して、前加工としての粗鍛造加工と、被処理材を断面形状が直径200mm超の太径の円柱状の鍛造品に加工し成形する仕上げ鍛造加工とを行い
該粗鍛造加工では、予め1180〜1280℃でのソーキングを行った上で、該ソーキング後の前記被処理材に対して、圧下率20%以上の据込と、圧下率20%以上の鍛伸とを2回以上繰り返し行うとともに、該粗鍛造加工における最終の据込及び鍛伸を含む終盤工程を結晶粒の粒度調整工程として、該粒度調整工程以前の据込及び鍛伸を1030〜1150℃の温度で、また前記終盤の粒度調整工程では据込及び鍛伸を1030〜1080℃の低温度で行って、粗鍛造加工後の被処理材の中心部に到るまでの組織を前記鍛造品に求められる設定結晶粒度以上の細粒組織となし
前記仕上げ鍛造加工では1080℃以下且つ1030℃以上の温度で、前記設定結晶粒度を確保しながら前記被処理材を目標形状の前記鍛造品に成形加工することを特徴とするNi基耐熱合金の鍛造加工方法。 - 請求項1において、前記粗鍛造加工における前記粒度調整工程以前の据込及び鍛伸を1100〜1150℃の温度で行うことを特徴とするNi基耐熱合金の鍛造加工方法。
- 請求項1,2の何れかにおいて、前記仕上げ鍛造加工として、前記粗鍛造加工後の断面4角形状の被処理材に対しコーナー圧下を行って該被処理材の断面形状を4角よりも角数の多い多角形状に鍛伸により整形する整形加工を準備加工として行った上で、軸直角方向の4方向から被処理材に同時に打撃を加える4面鍛造加工を行うことを特徴とするNi基耐熱合金の鍛造加工方法。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、前記設定結晶粒度がASTM結晶粒度No.4以上であることを特徴とするNi基耐熱合金の鍛造加工方法。
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