JP6165307B2 - フッ素系樹脂の非水系分散体 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーは、粒子同士の凝集力が強く、特に、油性溶剤などの非水系溶剤中に微粒子径で低粘度、保存安定性に優れた形で分散することは難しいという課題があった。
この特許文献4に記載の技術は、PTFE粒子と、少なくとも1つのモノ又はポリオレフィン系不飽和油又は油混合物とからなり、該オレフィン系不飽和油の分子はPTFE(一次)粒子表面上で、ラジカル反応により共有結合/化学結合されており、かつその際にPTFE粒子表面と結合された油分子との間の永久的な電荷分離、及び油又は油混合物中でのPTFE粒子の微細分散が存在する長期安定な油−PTFE分散液であり、その製法は、持続性のペルフルオロ(ペルオキシ)ラジカルを有する変性されたPTFE(エマルション)ポリマーが、少なくとも1つのオレフィン系不飽和油と一緒に、混合され、かつ次に変性されたPTFE(エマルション)ポリマーが機械的応力にかけられる方法等により得られるものであり、製法が複雑であり、また、汎用のPTFE粒子を用いるものでなく、本発明のフッ素系樹脂の非水系分散体とは、技術思想(構成及びその作用効果)が全く相違するものである。
本第1発明に用いることができるフッ素系樹脂のマイクロパウダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン共重合体(CTFE)、テトラフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)からなる群から選ばれる少なくとも1種のフッ素系樹脂のマイクロパウダーが挙げられる。
上記フッ素系樹脂のマイクロパウダーの中でも、特に、低比誘電率、低誘電正接の材料として、樹脂材料の中で最も優れた特性を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE、比誘電率2.1)の使用が望ましい。
このようなポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーは、乳化重合法により得られるものであり、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(里川孝臣編、日刊工業新聞社)に記載されている方法など、一般的に用いられる方法により得ることができる。そして、前記乳化重合により得られたフッ素系樹脂のマイクロパウダーは、凝集・乾燥して、一次粒子径が凝集した二次粒子として微粉末として回収されるものであるが、一般的に用いられている各種微粉末の製造方法を用いることができる。
このフッ素系樹脂のマイクロパウダーの一次粒子径が1μmを超えるものであると、油性溶剤中で沈降しやすくなり、安定して分散することが難しくなる。
また、上記平均粒子径の下限値は、低ければ低い程良好であるが、製造性、コスト面等から、0.05μm以上であることが好ましい。
なお、本発明におけるフッ素系樹脂のマイクロパウダーの一次粒子径は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーの乳化重合段階において測定される値(レーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって得られた値)を指し示すものであるが、乾燥して粉体状態にしたポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーなどの場合には、一次粒子同士の凝集力が強く、容易に一次粒子径をレーザー回折・散乱法や動的光散乱法などによって測定することが難しいため、画像イメージング法によって得られた値を指し示すものであってもよい。測定装置としては、例えばFPAR−1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法や、マックビュー(株式会社マウンテック社製)による画像イメージング法などを挙げることができる。
このPTFEなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーの比表面積が15m2/g超過のものであると、非水系溶剤中で凝集し、沈降しやすくなり、安定して分散することが難しくなる。
また、上記フッ素系樹脂のマイクロパウダーの比表面積の値は、低ければ低い程良好であるが、製造性、コスト面等から、2m2/g以上が好ましい。
この含有量が5質量%未満の場合には、非水系溶剤の量が多く、極端に粘度が低下するためにポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーの微粒子が沈降しやすくなったり、樹脂などの材料と混合した際に非水系溶剤の量が多いことによる不具合、例えば、溶剤の除去に時間を要することになるなど好ましくない状況を生じることがある。一方、60質量%を超えて大きい場合には、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダー同士が凝集しやすくなり、微粒子の状態を安定的に、流動性を有する状態で維持することが極端に難しくなるため、好ましくない。
本発明に用いる上記(I)で表される化合物は、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーを非水系溶剤中に、微粒子で均一、且つ安定的に分散させることができるものである。その分子構造はビニルブチラール/酢酸ビニル/ビニルアルコールから構成される三元重合体であり、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造であり、これらの3種の構造の比率(l,m,nの各比率)を変化させることにより、油性溶剤への溶解性、さらには各種樹脂材料中にポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体を添加した際の化学反応性をコントロールすることが可能となる。
具体的には、積水化学工業(株)製の商品名;エスレックBM−1(水酸基量:34モル%、ブチラール化度65±3モル%、分子量:4万)、同BH−3(水酸基量:34mol%、ブチラール化度65±3モル%、分子量:11万)、同BH−6(水酸基量:30mol%、ブチラール化度69±3モル%、分子量:9.2万)、同BX−1(水酸基量:33±3mol%、アセタール化度66モル%、分子量:10万)、同BX−5(水酸基量:33±3mol%、アセタール化度66モル%、分子量:13万)、同BM−2(水酸基量:31mol%、ブチラール化度68±3モル%、分子量:5.2万)、同BM−5(水酸基量:34mol%、ブチラール化度65±3モル%、分子量:5.3万)、同BL−1(水酸基量:36mol%、ブチラール化度63±3モル%、分子量:1.9万)、同BL−1H(水酸基量:30mol%、ブチラール化度69±3モル%、分子量:2万)、同BL−2(水酸基量:36mol%、ブチラール化度63±3モル%、分子量:2.7)、同BL−2H(水酸基量:29mol%、ブチラール化度70±3モル%、分子量:2.8万)、同BL−10(水酸基量:28mol%、ブチラール化度71±3モル%、分子量:1.5万)、同KS−10(水酸基量:25mol%、アセタール化度65±3モル%、分子量:1.7万)などや、クラレ(株)製の商品名;モビタール
B145(水酸基量:21〜26.5モル%、アセタール化度67.5〜75.2モル%)、同B16H(水酸基量:26.2〜30.2モル%、アセタール化度66.9〜73.1モル%、分子量:1〜2万)などが挙げられる。
これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
さらに、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂前駆体材料などの各種熱硬化樹脂材料やゴム、接着剤、潤滑剤やグリース、印刷インクや塗料などに、ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体を添加した際の特性を考慮すれば、0.1〜10質量%が望ましく、さらに0.1〜5質量%が望ましく、特に0.1〜3質量%が最も好ましい。
例えば、フッ素系や非フッ素系に関わらず、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの界面活性剤や分散剤、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの高分子界面活性剤や高分子分散剤などを挙げることができるが、これらに限定されることなく使用することができる。
本発明に用いられる非水系溶剤としては、例えば、例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ブチルモノグリシジルエーテル、フェニルモノグリシジルエーテル、メチルジグリシジルエーテル、エチルジグリシジルエーテル、ブチルジグリシジルエーテル、フェニルジグリシジルエーテル、メチルフェノールモノグリシジルエーテル、エチルフェノールモノグリシジルエーテル、ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ミネラルスピリット、2−ヒドロキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ビニルピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキソラン、各種シリコーンオイル、からなる群から選ばれる1種類の非水系溶剤、またはこれらの非水系溶剤を2種以上含んでいるものが挙げられる。
これらの非水系溶剤の中で、好ましくは、各用途(接着性樹脂種などの樹脂種、回路基板の用途)等により変動するものであるが、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキソランが挙げられる。
本第1発明(後述する実施例等を含む)においては、カールフィッシャー法による水分量の測定は、JIS K 0068:2001に準拠するものであり、MCU−610(京都電子工業社製)により行った。
用いる非水系溶剤の極性によっては水との相溶性が高いものが考えられるが、8000ppm以上の水分量を有するとポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系溶剤中への分散性を著しく阻害したり、上記(I)で表される化合物の非水系溶剤中への溶解性を阻害するなどし、粘度上昇や粒子同士の凝集を引き起こす要因になる。
本発明においては、非水系溶剤中の水分量を8000ppm以下にすることで、微粒子径で低粘度、保存安定性に優れたポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体とすることができるものである。更に好ましくは、非水系溶剤の水分量を5000ppm以下、より好ましくは、3000ppm以下、特に好ましくは、2500ppm以下とすることが望ましい。
非水系溶剤に含まれる水分量のほかに、フッ素系樹脂のマイクロパウダーや上記(I)で表される化合物などの材料自体に含まれる水分や、フッ素系樹脂のマイクロパウダーを非水系溶剤中に分散する製造工程における外部からの水分の混入(空気中の水分、装置壁面の結露水など)が考えられるが、最終的にフッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体の水分量を8000ppm以下にすることで、より保存安定性に優れたフッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体を得ることができる。更に好ましくは、非水系分散体の水分量を5000ppm以下、より好ましくは、3000ppm以下、特に好ましくは、2500ppm以下とすることが望ましい。
さらに、フッ素系樹脂のマイクロパウダーの非水系分散体を作製した後に、モレキュラーシーブスや膜分離法などを用いて水分除去することも可能であるが、上記した方法以外であっても、非水系分散体の水分量を下げることができるものであれば、特に限定されることなく用いることができる。
用いる非水系溶剤の含有量は、上記フッ素系樹脂のマイクロパウダー、上記(I)で表される化合物などの残部となるものである。
一次粒子径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーなどのフッ素系樹脂のマイクロパウダーを用いた場合であっても、通常、一次粒子が凝集し、二次粒子として粒子径が1μm以上のマイクロパウダーとなっている。このポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーの二次粒子を1μm以下の粒子径となるように分散することにより、例えば、超音波分散機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどの分散機を用いて分散することにより、低粘度で長期保存した場合でも安定な分散体を得ることができるものである。
より安定に分散させる上では、望ましくは、0.5μm以下、さらに望ましくは、0.3μm以下とすることにより、さらに均一な分散体となる。
下記表1に示す配合処方により、各比表面積のPTFEの8種(A〜H)、上記式(I)で表される化合物としてエスレックBL−10〔ブチラール(PVB)樹脂、積水化学工業社製、水酸基28モル%、ブチラール化度71±3モル%、分子量1.5万〕、非水系溶剤としてメチルエチルケトンを用いてフッ素系樹脂の非水系分散体を調製した。なお、PTFEパウダーのGとHは同じものであるが、Gは、PTFEパウダーを270℃の温度で加温することにより表面状態を変化させ、比表面積を調整したPTFEパウダーを用いた。
上記のようにして得られたポリテトラフルオロエチレンの混合液を、横型のビーズミルを用いて、0.3mm径のジルコニアビーズにて分散を行い、実施例1〜7及び比較例1の各ポリテトラフルオロエチレンの非水系分散体を得た。なお、実施例1〜7及び比較例1の各非水系分散体のカールフィッシャー法による水分量を測定したところ、8000ppm以下であることを確認した
得られた実施例1〜7及び比較例1の各非水系分散体の評価としては、平均粒子径と粘度の測定、具体的には、各分散体におけるPTFEの平均粒子径(nm)をFPAR−1000(大塚電子社製)で測定し、また、各粘度(mPa・s、25℃)をE型粘度計により測定した。これらの結果を下記表2に示す。
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