JP6163971B2 - 加飾成形品及び加飾成形品の製造方法 - Google Patents

加飾成形品及び加飾成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、加飾成形品及び加飾成形品の製造方法に関する。具体的に、本発明は、繊維強化プラスチック成形体と、繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを積層した加飾成形品であって、繊維強化プラスチック成形体は、繊維強化プラスチック成形体用シートから形成された加飾成形品に関するものである。
携帯電話や携帯情報端末(PDA)、ノートパソコンの各種電子機器では、表面強度の向上などに加え、商品の差別化を行うため、筐体表面を二次的に装飾加工することがなされている。従来、このような筐体表面の装飾加工は、塗装により塗膜を形成することにより行われていた。中でも、スプレー塗布法などは、塗着効率にも優れていることから、幅広い分野で応用展開されている塗装法の一つとなっている。
しかし、スプレー塗布等の塗装法を用いた場合、塗装場所を確保しにくく、塗装時の経済性が悪いという問題がある。また、スプレー塗装によって成形品を加飾する場合、複数の塗膜を形成することとなるため、工程管理等が複雑化する。
また、近年は、筐体表面に、様々な風合いを付与することが求められている。例えば、皮革、布、木材などの表面が有する、柔らかく、弾力性を有するものや、暖かさなどといった特有の風合いの表面感触が求められている。このため、近年は、意匠性のあるフィルム(加飾フィルム)を用いて成形品を加飾する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。ここでは、成形品に加飾フィルムを接着することで、意匠層を一度に形成することができるため、工程を簡素化することができる。また、加飾フィルムの材質には、多種多様なものを選択することができるため、表面感触等に特色を持たせることが可能となる。
特開2004−299220号公報 特開2004−299223号公報
上述したような各種電子機器は頻繁に持ち運ばれ、あらゆる場面で使用されるものであるため、軽量であることに加えて、落下衝撃耐性や難燃性を有することが求められている。軽量化のためには、筐体(プラスチック成形体)の厚みを薄くすることが考えられるが、薄型化は衝撃耐性等の強度面の低下の原因となる。また、強化繊維を混合したプラスチック成形体を用いることも考えられるが、従来の繊維強化プラスチック成形体はその強度や難燃性が十分ではなく、改良が求められていた。
また、独特な風合いを持った加飾フィルムの貼合工程では、プレス加工ではなく、真空成形法が用いられる必要がある。真空成形時には、プラスチック成形体に高い圧力がかかる場合があり。このような圧力により変形や反り等が発生しないよう強度を有することが求められている。このような点からも、変形や反り等が発生しない高強度なプラスチック成形体を有する加飾成形品が求められていた。
さらに、加飾フィルムを貼合して得られる加飾成形品は、加飾後の意匠性を高めるために、プラスチック成形体が平滑であり、加飾適性に優れていることが求められている。従来の加飾成形品では、その意匠性が十分ではない場合もあり、さらなる改善が求められていた。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、軽量化と高強度が両立された加飾成形品であって、難燃性が高く、意匠性に優れた加飾成形品を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、繊維強化プラスチック成形体と、繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを積層した加飾成形品において、繊維強化プラスチック成形体の構成を特定のものとすることにより、軽量化と高強度が両立された加飾成形品を得ることができることを見出した。さらに、本発明者らは、このような加飾成形品は、難燃性が高く、意匠性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]繊維強化プラスチック成形体と、前記繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを積層した加飾成形品であって、前記繊維強化プラスチック成形体は、強化繊維成分と、熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含むマトリックス樹脂成分と、バインダー成分とを含む繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形したプラスチック成形体であり、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維の限界酸素指数は24以上であることを特徴とする加飾成形品。
[2]前記強化繊維成分は、無機繊維を含み、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は40μm以下であり、かつ前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は前記無機繊維の繊維径の5倍以下であることを特徴とする[1]に記載の加飾成形品。
[3]前記繊維強化プラスチック成形体の厚みは0.05〜2mmであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の加飾成形品。
[4]前記繊維強化プラスチック成形体用シートのJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2に規定される透気度が250秒以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[5]前記バインダー成分は前記繊維強化プラスチック成形体の全質量に対して0.1〜10質量%となるように含有されていることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[6]前記バインダー成分は前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維と加熱溶融状態で相溶することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[7]前記バインダー成分は、メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位及びエチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも一方を含む共重合体を含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[8]前記バインダー成分は、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度よりも低い融点を有するバインダー繊維を含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[9]前記バインダー繊維は、ポリエチレンテレフタレート又は変性ポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする[8]に記載の加飾成形品。
[10]前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維及び前記バインダー繊維は、チョップドストランドであることを特徴とする[8]又は[9]に記載の加飾成形品。
[11]前記繊維強化プラスチック成形体用シートは表層領域と前記表層領域に挟まれた中間領域を有し、前記表層領域に含有されているバインダー成分は、前記中間領域に含有されているバインダー成分より多いことを特徴とする[1]〜[10]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[12]前記バインダー成分に含まれる共重合体は、前記強化繊維成分と前記マトリックス樹脂成分を構成する繊維同士の交点に水掻き膜状に局在していることを特徴とする[7]〜[11]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[13]前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維はポリエーテルイミド繊維又はポリカーボネート繊維から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする[1]〜[12]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[14]前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維はポリエーテルイミド繊維であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[15]前記加飾フィルムは、貼合手段を介して前記繊維強化プラスチック成形体に積層されていることを特徴とする[1]〜[14]のいずれか1項に記載の加飾成形品。
[16]繊維強化プラスチック成形体と、前記繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを積層した加飾成形品の製造方法であって、強化繊維成分と、熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含むマトリックス樹脂成分と、バインダー成分とを含む繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形し繊維強化プラスチック成形体を形成する工程と、前記繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを貼合する工程を含み、前記加飾フィルムを貼合する工程では、真空成形法、真空圧空成形法及び熱転写法から選択される方法により加飾フィルムが貼合され、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維の限界酸素指数は24以上であることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
[17]前記繊維強化プラスチック成形体を形成する工程の前に、さらに繊維強化プラスチック成形体用シートを形成する工程を含み、前記繊維強化プラスチック成形体用シートを形成する工程は、乾式不織布法又は湿式不織布法のいずれかの方法で不織布シートを形成する工程と、前記バインダー成分を含む溶液又は前記バインダー成分を含むエマルジョンを前記不織布シートに内添、塗布又は含浸させ、加熱乾燥させる工程を含むことを特徴とする[16]に記載の加飾成形品の製造方法。
[18]前記繊維強化プラスチック成形体を形成する工程では、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度以上の温度で加熱加圧成形されることを特徴とする[16]又は[17]に記載の加飾成形品の製造方法。
[19]前記繊維強化プラスチック成形体を形成する工程では、前記繊維強化プラスチック成形体用シートを150〜600℃で加熱加圧することを特徴とする[16]〜[18]のいずれか1項に記載の加飾成形品の製造方法。
本発明によれば、軽量であり、かつ高強度の加飾成形品を得ることができる。さらに、本発明によれば、難燃性が高く、意匠性に優れた加飾成形品を得ることができる。
このように、本発明の加飾成形品は、難燃性が高く、軽量で高強度であるため、電子機器の筐体の他に、スポーツ用品やレジャー用品、航空機用材料、内装材等の様々な分野で好ましく用いられる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(加飾成形品)
本発明は、繊維強化プラスチック成形体と、繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを積層した加飾成形品に関する。ここで、繊維強化プラスチック成形体は、強化繊維成分と、熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含むマトリックス樹脂成分の混合物を含み、さらにバインダー成分を含む繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形したプラスチック成形体である。さらに、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の限界酸素指数は24以上である。本発明では、加飾成形品の繊維強化プラスチック成形体を上記のような構成とすることにより、軽量であり、かつ高強度の加飾成形品を得ることに成功した。さらに、本発明の加飾成形品は、難燃性が高く、意匠性に優れているという利点を有している。
本発明では、加飾フィルムは、繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に設けられていることが好ましいが、両方の面に設けられていてもよい。このように、両面が加飾フィルムで覆われた加飾成形品も様々な用途に用いることができる。
また、本発明では、加飾フィルムは、繊維強化プラスチック成形体の端部を覆うように積層されていてもよい。ここで、繊維強化プラスチック成形体の端部とは、繊維強化プラスチック成形体の上面及び下面の端縁と、繊維強化プラスチック成形体の厚み方向の側面を含む領域をいう。このように、繊維強化プラスチック成形体の端部を加飾フィルムで覆うことにより、加飾フィルムと繊維強化プラスチック成形体の密着性を高めることができ、かつ、意匠性をより高めることができる。
加飾フィルムは、貼合手段を介して繊維強化プラスチック成形体に積層されることが好ましい。貼合手段としては、公知の貼合手段を適宜採用することができる。
プラスチック加飾技術は、非常に広範囲にわたり、多くの技術があるが、フィルム貼合・転写加飾技術は現在最も活発な動きのある加飾技術である。従来、家電、OA機器、携帯電話等に使用されているプラスチックの筐体の表面加飾には、二次加飾の印刷、塗装、蒸着、メッキ等が用いられてきた。しかし、近年は、製品形状が複雑化し、機能性付与が求められ、さらに環境負荷の問題、コスト面等から、フィルムを繊維強化プラスチック成形体等の成形品表面に貼合させる技術が用いられるようになっている。具体的には、印刷、塗装、真空蒸着、着色等で加飾したフィルムまたはシート(加飾フィルム)を用いて、フィルムを繊維強化プラスチック成形体等の成形品表面に貼合ことが行われている。また、印刷、塗装、真空蒸着等の加飾面を転写させる加飾技術であるフィルム貼合・転写加飾技術も多く用いられるようになっている。
フィルム貼合・転写加飾技術に用いられる成形方法は、射出成形によるインモールド成形と二次加飾に分類される。インモールド成形はさらにフィルムを成形品に残すラミネート加飾法と意匠面のみを成形品に転写する転写加飾(熱転写加飾)に分類される。ここで、ラミネート加飾法とは、基材フィルム及びその上に設けられた装飾層を有する加飾シートの全層が成形品の表面に積層一体化されるものをいう。また、転写加飾とは、成形品の表面に積層一体化された加飾シートのうち、基材フィルムが剥離除去され、装飾層等の転写層のみが成形品に残留して積層されるものをいう。
成形品に後から貼合、転写させる二次加飾としては、オーバーレイ成形、ホットスタンプ、高圧法、水圧転写法がある。従来はインモールド成形が主であったが、新規真空・圧着法(オーバーレイ成形)として布施真空社がTOM(Three dimension Overlay Method)工法を開発して形状適応性がさらに広がっている。
これらの中でもTOM成形は、複雑な形状への加飾加工が可能なこと、エッジ部へのフィルム巻き込みが可能なため、成形した繊維強化プラスチックのエッジ部処理が不要となるため、好ましく使用される。
ここで、TOM成形とは、加熱されて軟らかくなったフィルムを大気圧力・圧縮空気圧力の力で型に押し付けて密着させて接着させる方法である。水圧転写とは、水溶性フィルムを水槽に浮かべ、基材をフィルムの上から水槽に沈め、水圧で転写して取り出す方法である。なおこの場合は、取り出し後転写部の保護・光沢仕上げのためコーティング加工することが好ましい。
(繊維強化プラスチック成形体)
本発明の繊維強化プラスチック成形体は、強化繊維成分と、熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含むマトリックス樹脂成分の混合物を含み、さらにバインダー成分を含む繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形して形成したプラスチック成形体である。繊維強化プラスチック成形体用シートは単層で加熱加圧成形されてもよいし、所望の厚さとなるように積層して加熱加圧成形されてもよい。
加熱加圧工程は、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の、好ましくは、ガラス転移温度以上の温度で加熱しつつ加圧を行う工程である。加熱加圧工程では、熱プレス処理を施すことが好ましい。
加熱加圧工程では繊維強化プラスチック成形体用シートの表面温度がTg〜Tg+100℃となるように加熱することが好ましい。ここで、Tgは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す。なお、加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維が流動する温度であって強化繊維は溶融しない温度帯であることが好ましい。
繊維強化プラスチック成形体の膜厚は、0.05〜2mmであることが好ましく、0.1〜1.5mmであることがより好ましく、0.15〜1mmであることがさらに好ましい。本発明で用いる繊維強化プラスチック成形体は上記のように薄膜でありながらも、強度が強く、かつ難燃性であることに特徴がある。また、繊維強化プラスチック成形体は上記のように薄膜でありながらも、真空成形等により加飾フィルムを貼合することができる。
(繊維強化プラスチック成形体用シート)
繊維強化プラスチック成形体用シートは、強化繊維成分と、熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含むマトリックス樹脂成分と、バインダー成分とを含む。
本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートにおいて、強化繊維成分と熱可塑性スーパーエンプラ繊維の質量比は1:0.2〜1:10であることが好ましく、1:0.5〜1:5であることがより好ましく、1:0.7〜1:3であることがさらに好ましい。強化繊維成分と熱可塑性スーパーエンプラ繊維の質量比を上記範囲内とすることにより、軽量であり、かつ高強度の加飾成形品を得ることができる。さらに、加飾成形品の意匠性を高めることができる。
加熱加圧成形後に十分な強度を得るためには、強化繊維成分とマトリックス樹脂成分は均一に混合されていることが好ましい。このためには、強化繊維とマトリックス樹脂繊維の繊維径が近いほうが好ましい。この観点からは、スーパーエンプラ繊維の繊維径は強化繊維の繊維径の5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、最も好ましくはスーパーエンプラ繊維の繊維径と強化繊維の繊維径がほぼ同等であることである。
一般に、マトリックス樹脂は、溶融粘度が高いため、射出成形等の方法では強化繊維を多量に配合すると、強化繊維を均一に分散させることが難しいため、強化繊維の配合比に限界がある。しかし、本発明の繊維強化プラスチック成形体用シートでは、必要とされる強度に応じて比較的自由に強化繊維とマトリックス樹脂繊維との比率を設定することができる。
繊維強化プラスチック成形体用シートのJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2に規定される透気度は、250秒以下であることが好ましく、230秒以下であることがより好ましく、200秒以下であることがさらに好ましい。この数値は、数字が小さいほど空気が通りやすい(通気性が良い)ことを表す。本発明では、繊維強化プラスチック成形体用シートの透気度を上記範囲内とすることにより、加熱加圧工程における成形速度を高めることができ、生産効率を高めることができる。
但し、上記通気性を満たすための材料として、処理前のシートを嵩高に調整した場合、繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧工程での熱プレス機等に挿入する際に不都合が生じる場合がある。また、繊維強化プラスチック成形体用シートを製造後、加熱加圧工程に供するまでの間、保管コストがかかるという問題もある。このような問題は、加熱加圧成形前に熱プレス、若しくは熱カレンダーによって軽くプレスし、適宜密度を高めることで解決できる。この方法の場合、空気は多少通りにくくなるので、JAPAN TAPPI紙パルプ試験法に準拠した方法で測定される透気度が250秒以下という状態を維持できる範囲で高密度化することが好ましい。
<強化繊維成分>
強化繊維成分は、無機繊維を含む。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維や炭素繊維等を挙げることができる。なお、これらの無機繊維は、1種を使用してもよく、複数種を使用してもよい。さらに、本発明では、強化繊維成分は、このような無機繊維の他に、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維等の耐熱性に優れた有機繊維を含有していてもよい。
強化繊維成分として、例えば、炭素繊維等の無機繊維を使用した場合、不織布シートに含まれる熱可塑性スーパーエンプラ繊維の溶融温度で加熱加圧処理することにより曲げ強度・引張強度・弾性率が高い繊維強化プラスチック成形体を得ることができる。
強化繊維成分として、アラミド繊維等の高耐熱性・高強度の有機繊維を使用した場合は、高度な平滑性の要求される精密な研磨用の機器に適する繊維強化プラスチック成形体を得ることができる。アラミド等の有機繊維を強化繊維として含有する繊維強化プラスチック成形体用シートから形成される繊維強化プラスチック成形体は、一般的に強化繊維として無機繊維を使用した繊維強化プラスチック成形体用シートから形成される繊維強化プラスチック体よりも耐摩耗性に優れる。また擦過等によって繊維強化プラスチック体の一部が削り取られたとしても、その削り粕が無機繊維よりも柔らかいので、被研磨物を傷つける恐れが少ない。
強化繊維の繊維長は、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。また、強化繊維の繊維長は、40mm以下であることが好ましく、35mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることがさらに好ましい。
<マトリックス樹脂成分>
マトリックス樹脂成分は、熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含む。なお、熱可塑性スーパーエンプラ繊維は熱成形により溶融してマトリックス樹脂となる。
熱可塑性スーパーエンプラ繊維は、スーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)と称される熱可塑性樹脂の繊維であり、耐熱性で難燃性の熱可塑性樹脂を繊維化したものである。熱可塑性スーパーエンプラ繊維としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等を例示することができる。ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂は耐薬品性が高く、耐熱性が高いため、耐薬品性と高温時の強度に優れる繊維強化プラスチックを得ることができる。ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂を用いた場合は、他のスーパーエンプラよりも耐薬品性と高温時の強度に特に優れる繊維強化プラスチックを得ることができる。また、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂は炭素繊維やガラス繊維との密着性が優れ、また限界酸素指数が樹脂ブロックの状態で47と非常に高いため、強度と難燃性に優れる繊維強化プラスチックを得ることができる。
本発明では、ポリエーテルイミド(PEI)繊維又はポリカーボネート(PC)繊維から選ばれる少なくとも1種以上を用いることが好ましい。中でも、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂を繊維化したポリエーテルイミド(PEI)繊維を用いることが特に好ましい。ポリエーテルイミド(PEI)樹脂は、溶融し成形加工された状態での限界酸素指数が40以上、またASTM E−662に記載の方法で測定した20分燃焼時の発煙量が30ds前後と、非常に発煙量が少ないため好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性スーパーエンプラ繊維は、2種類以上用いることもできる。また、本発明の効果を損ねない範囲で、また、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エポキシ樹脂等の熱可塑性スーパーエンプラ繊維以外も添加することができる。
熱可塑性スーパーエンプラ繊維は、繊維状態において限界酸素指数が24以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。熱可塑性スーパーエンプラ繊維の限界酸素指数を上記範囲とすることにより、難燃性に優れた不織布シートを得ることができる。なお、本発明において、「限界酸素指数」とは、燃焼を続けるのに必要な酸素濃度を表し、JIS K7201に記載された方法で測定した数値をいう。すなわち、限界酸素指数が20以下は、通常の空気中で燃焼することを示す数値である。
熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度は、140℃以上であるものが好ましい。熱可塑性スーパーエンプラ繊維には、強化繊維プラスチック成形体を形成する際に300℃から400℃というような温度条件下で十分に流動性であることが求められる。なお、PPS樹脂繊維のようにガラス転移温度が140℃未満のスーパーエンプラ繊維であっても、樹脂の荷重たわみ温度が190℃以上となるスーパーエンプラを繊維化したものであれば使用可能である。このような熱可塑性スーパーエンプラ繊維は、加熱・加圧により溶融して限界酸素指数が30以上という非常に高い難燃性を有する樹脂ブロックを形成する。
熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は40μm以下であることが好ましい。さらに、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は上述した無機繊維の繊維径の5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることが特に好ましい。熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体の強度をより高めることができる。
熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、32μm以下であることがさらに好ましい。中でも、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は、1〜30μmであることが好ましい。
本発明で用いられる繊維強化プラスチック成形体用シートでは、熱可塑性スーパーエンプラ繊維が繊維形態をしていることによりシート中に空隙が存在している。
本発明では、熱可塑性スーパーエンプラ繊維が加熱加圧成形前には、繊維形態を維持しているため、繊維強化プラスチック成形体を形成する前は、シート自体がしなやかでドレープ性がある。このため、繊維強化プラスチック成形体用シートを巻き取りの形態で保管・輸送することが可能であり、ハンドリング性に優れるという特徴を有する。
また、本発明で用いられる繊維強化プラスチック成形体用シートは、繊維強化プラスチック成形体に加工する際の加熱加圧成形時間が短時間ですみ、生産性に優れている。繊維強化プラスチック成形体用シートを短時間で加熱加圧成形するためには、使用される熱可塑性スーパーエンプラ繊維が高温下で速やかに溶融することが必要であり、そのためには、スーパーエンプラ繊維の繊維径が細いほうが好ましい。繊維径が細いほど繊維同士の接触点数が増加するため、繊維同士の接触面積が増加し、熱伝導が良好となること、及び繊維の熱容量が小さくなるため、溶融させるために必要な熱量が少なくなるためである。
熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維長は特に限定されないが、湿式、若しくは乾式不織布法で製造するため、好ましくは3mm〜30mm程度であることが好ましい。熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維の分散性を良好にすることができ、また、繊維強化プラスチック成形体用シート等の破断等を防ぐことができる。なお、繊維径及び繊維長は単一であってもよく、また異なる繊維径、繊維長のものをブレンドして使用してもよい。
<バインダー成分>
本発明において、繊維強化プラスチック成形体用シートに含有されるバインダーとしては、一般的に不織布製造に使用されるアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、PVA樹脂等が使用できる。
バインダー成分は、加熱加圧成形後にマトリックスとなる熱可塑性スーパーエンプラ繊維が加熱加圧成形で溶融する際に、その樹脂と相溶する樹脂成分であることが特に好ましい。このような樹脂成分をバインダーとした場合、加熱加圧成形後、マトリックス樹脂とバインダー樹脂の間に界面が存在せず一体化するため高強度となる。さらにバインダー成分に起因するマトリックス樹脂のガラス転移温度の低下が少ないという特徴を持つ。
本発明では、バインダー成分は、繊維強化プラスチック成形体の全質量に対して0.1〜10質量%となるように含有されることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.4〜9質量%であることがさらに好ましく、0.5〜8質量%であることが特に好ましい。バインダー成分の含有率を上記範囲内とすることにより、製造工程中の強度を高めることができ、ハンドリング性を向上させることができる。また、バインダー成分の含有率を上記範囲とすることにより、難燃性・低発煙性を損なうこともない。なお、バインダー成分の量は多くなると表面強度・層間強度共に強くなるが、逆に加熱成形時の臭気の問題が発生しやすくなる。しかし、上記の範囲においては臭気の問題はほとんど発生せず、また繰り返しの断裁工程を経ても層間剥離などを発生しない繊維強化プラスチック成形体用シートを得ることができる。
バインダー成分は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート及びエチルアクリレートの少なくとも1種のモノマーを含有するモノマー混合物を重合させることによって得られる共重合体を含むことが好ましい。すなわち、バインダー成分は、メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位、エチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体を含有する。中でも、バインダー成分は、メチルメタクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位及びエチルメタクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体を含有することが好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を含むことを意味し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
バインダー成分は、熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度よりも低い融点を有するバインダー繊維を含有することが好ましい。バインダー繊維は、PEI繊維等と混合して水中に分散し、湿式抄紙法で抄造した場合、粒状バインダーのように抄紙ワイヤーの目から抜けて歩留が低下したり、ワイヤー側に偏在したりすることがないため好ましく用いられる。また、このようなバインダー繊維を使用することにより、層間強度を向上させることができる。
バインダー繊維としては、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂を変性することで融点を低下させたものであれば特に限定されないが、変性ポリエチレンテレフタレートが好ましい。変性ポリエチレンテレフタレートとしては、共重合ポリエチレンテレフタレート(CoPET)が好ましく、例えば、ウレタン変性共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエステル樹脂はポリエーテルイミド繊維と加熱溶融時に相溶するため、冷却後もポリエーテルイミド樹脂の難燃性・低発煙性といった優れた点を損ないにくいため、好ましく用いられる。
共重合ポリエチレンテレフタレートは、融点が140℃以下のものが好ましく、120℃以下ものがより好ましい。また、特公平1−30926号公報に記載のような変性ポリエステル樹脂を使用してもよい。変性ポリエステル樹脂の具体例として、特に、ユニチカ社製商品名「メルティ4000」(繊維全てが共重合ポリエチレンテレフタレートである繊維)が好ましく挙げられる。また、上記芯鞘構造のバインダー繊維としては、ユニチカ社製商品名「メルティ4080」や、クラレ社製商品名「N−720」等が好適に使用できる。
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート及びエチルアクリレートの少なくとも1種のモノマーを含有するモノマー混合物を重合させることによって得られる共重合体は繊維強化プラスチック成形体の全質量に対して0.1〜4質量%となるように含有され、バインダー繊維は繊維強化プラスチック成形体の全質量に対して1.5〜6質量%となるように含有されることが好ましい。共重合体とバインダー繊維の含有率を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体の表面強度及び層間強度を高めることができる。なお、上記の範囲においては、共重合体を成分とするバインダー(液状バインダー)の配合量は、ポリエステル樹脂又は変性ポリエステル樹脂よりも少ないほうが、臭気の関係から好ましい結果が得られる。ポリエステル系バインダーはマトリックス樹脂と相溶するため、比較的添加量が多くとも臭気を発生しにくく、また、液状バインダーは繊維交点に集中して偏在しやすいため、かかる結果が得られているものと推定している。
バインダー成分として好ましい組合せとしては、アクリル系のエマルジョンと低融点熱可塑性樹脂繊維としてのチョップ状のPET繊維の組合せである。具体的には、繊維強化プラスチック成形体の全質量に対してアクリル系バインダー0.3〜4質量%、PET繊維1.5〜6質量%である。好ましくはアクリル系バインダー1〜3質量%、PET繊維2〜6質量%、更に好ましくは1.5〜2.5質量%、PET繊維3〜5質量%である。
繊維強化プラスチック成形体用シートは表層領域と表層領域に挟まれた中間領域を有することとした場合、表層領域に含有されているバインダー成分は、中間領域に含有されているバインダー成分より多いことが好ましい。特にバインダー成分のうち、メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位、エチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体が表層領域に多く含有されていることが好ましい。
ここで、繊維強化プラスチック成形体用シートの表層領域は、不織布シートを厚さ方向(Z軸方向)に略3分割した際に、外側に位置する2つの領域である。なお、中間領域はこれらの2つの領域に挟まれた間の領域をいう。表層領域に含有されているバインダー成分は、中間領域に含有されているバインダー成分より多いことが好ましく、表層領域に含有されているバインダー成分は、中間領域に含有されているバインダー成分の1.1〜1.5倍であることがより好ましい。
このように、バインダー成分を表層領域に集中させることで、高温の金型やプレス成形体により加熱加圧成形される際に、バインダー成分が効果的に加熱されるため、バインダー成分が速やかに熱分解・揮発する。これにより熱成形品に残留するバインダー成分がごく僅かな量に抑えられることとなる。このため、本発明の繊維強化プラスチック成形体は、高い難燃性を有しており、発煙性が抑えられている。
メチルメタクリレート、エチルエタクリレート、エチルアクリレート及びメチルアクリレートの少なくとも1種のモノマーを含有するモノマー混合物を重合させることによって得られる共重合体を成分とする液状バインダーは繊維強化プラスチック成形体用シートの表層領域に集中して存在することが好ましい。また、これらの液状バインダーは、両表層領域の繊維成分同士の交点に水掻き膜状に局在することが好ましい。すなわち、共重合体は、強化繊維成分とマトリックス樹脂成分を構成する繊維同士の交点に水掻き膜状に局在することが好ましい。このように局在することにより、バインダー成分が少量であっても使用工程においても両表層領域の繊維の脱落を少なくすることができる。また、変色が少なく好適であり、繊維強化プラスチック成形体用シートの抄造直後に平成形体にカットして積層し、プレスするような工程に好適に使用できる。
なお、バインダー成分のうち、共重合体を含む成分は、表層領域に集中させることが好ましいが、バインダー繊維は、繊維強化プラスチック成形体用シートの中間領域に含有させることもできる。これにより、繊維強化プラスチック成形体用シートの層間強度が高まり、加熱成形加工時のハンドリング性が更に改善される。
バインダー繊維は、強化繊維やPEI繊維等と共に空気中に分散させてネットに捕捉してウエブを形成する方法(乾式不織布法)で繊維強化プラスチック成形体用シートに含有させることができる。また、バインダー繊維は、溶媒中に分散させ、その後溶媒を除去してウエブを形成する方法(湿式不織布法)等の方法で繊維強化プラスチック成形体用シートに含有させることもできる。
繊維強化プラスチック成形体用シートの表層にバインダーを相対的に多く存在させる方法としては、下記方法が挙げられる。例えば、バインダー成分を溶媒に溶解した液状物、若しくはバインダー成分の乳化物(エマルジョン)をウエブに内添、塗布又は含浸させ、加熱乾燥するという製造方法が挙げられる。中でも、湿式不織布法又は乾式不織布法によってウエブを形成した後、バインダー成分を溶媒に溶解した液状物、若しくはバインダー成分の乳化物(エマルジョン)を、ディッピング、若しくはスプレー法等で付与し、加熱乾燥するという製造方法が挙げられる。この方法によれば、加熱乾燥する際に、ウエブ内部の溶媒が両面の表層に移動し、蒸発するため、この溶媒の移動に伴ってバインダーも表層に相対的に多く集中する。
上記のように、繊維強化プラスチック成形体用シートの表層にバインダー成分を偏在させるためには、バインダー成分の溶液、若しくはエマルジョン等、液状のバインダー成分を使用し、加熱乾燥させる製造方法を採用することができる。この場合、溶媒の移動が多いほうがバインダー成分の偏在が強まるため好ましい。
このような方法を採用する場合、湿式不織布法でウエットウエブを形成後、バインダーの水溶液、若しくはエマルジョンをウエブにディッピング若しくはスプレー等の方法で付与し、乾燥する方法が好ましい。この場合、ウエブ水分はバインダーの水溶液、若しくはエマルジョンのバインダー液濃度や、湿式不織布製造工程におけるウエットサクション、ドライサクションによる水分の吸引力の調整で行うことが可能である。
バインダー成分を偏在させるために好ましいウエブ内の水分量は50%以上であるが、ある程度以上に水分が多いと乾燥負荷が大きくなり、製造コストがかさむため、両者を勘案して適宜ウエブ内水分量を調整することが好ましい。
上記の対策で不十分な場合、バインダー成分の添加量を減少させる方法として、繊維強化プラスチック成形体用シートを湿式抄紙し、強度縦横比を大きくすることも好ましい。具体的には、ジェットワイヤー比の調整によってマシンの抄造方向(MD方向)とその直角方向(CD方向)の強度比(強度縦横比)を大きくすることができる。一般に、強度縦横比を大きくすると、繊維が一方向に並ぶ傾向となり、不織布の密度が高くなる傾向にある。その結果、繊維間の交点が増加するため、少量のバインダーでも十分な表面強度が得られる。このような効果が明確に得られるのは、通常、強度縦横比が1.5以上、より明確に得られるのは3.0以上、更に明確に得られるのは5.0以上である。
一方、あまりに強度縦横比が強いと横強度が弱くなり、ハンドリング性に劣る。この点を考慮すると、好ましい強度縦横比は15以下、より好ましくは10以下である。
バインダー成分は、加熱溶融した際にPEI繊維と相溶するバインダー成分であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、このような成分を選定した場合、加熱加圧成形後にPEI樹脂の難燃性・低発煙性がほとんど損なわれないことが判明している。
(繊維形状)
本発明では、熱可塑性スーパーエンプラ繊維とバインダー繊維は、一定の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。また、本発明では、繊維強化プラスチック成形体用シートに含まれる、熱可塑性スーパーエンプラ繊維及び強化繊維も、一定の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。このような形態とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用シート中で、各種繊維を均一に混合することができる。
上記のような場合、繊維強化プラスチック成形体用シートは、熱可塑性スーパーエンプラ繊維、強化繊維、バインダー繊維のチョップドストランドを、空気中に分散させてネットに捕捉してウエブを形成する方法(乾式不織布法)で製造される。また、熱可塑性スーパーエンプラ繊維、強化繊維、バインダー繊維のチョップドストランドを溶媒中に分散させ、その後溶媒を除去してウエブを形成する方法(湿式不織布法)等の方法で製造されてもよい。
(加飾フィルム)
加飾フィルムは上述した繊維強化プラスチック成形体に貼り合わされるフィルムである。加飾フィルムの材質としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリプロピレン、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等が挙げられる。
中でも、ポリ塩化ビニル樹脂は、難燃性材料として好ましく用いられる。
加飾フィルムは、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。加飾フィルムは、表層には熱可塑性フィルム、2層目にインキ等の加飾層、3層目(裏面側)には接着層のものが、通常TOM法用の加飾フィルムとして好ましく使用される。
(加飾成形品の製造方法)
本発明の加飾成形品の製造工程は、強化繊維シートと不織布シートを少なくとも1枚ずつ貼合した繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形し繊維強化プラスチック成形体を形成する工程を含む。さらに、繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを貼合する工程を含み、加飾フィルムを貼合する工程では、真空成形法、真空圧空成形法及び熱転写法から選択される方法により加飾フィルムが貼合されることが好ましい。なお、不織布シートは、熱可塑性スーパーエンプラ繊維とバインダー成分を含み、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の限界酸素指数は24以上である。
繊維強化プラスチック成形体を形成する工程では繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧する工程を含む。加熱加圧工程は、熱可塑性スーパーエンプラ繊維の、好ましくは、ガラス転移温度以上の温度で加熱しつつ加圧を行う工程である。具体的には、繊維強化プラスチック成形体用シートを150〜600℃で加熱し、加圧することが好ましい。なお、加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維が流動する温度であって強化繊維は溶融しない温度帯であることが好ましい。
繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを貼合する工程では、公知の貼合方法を採用することができる。中でも、プレス加工法、熱転写法、真空成形法又は真空圧空成形法を用いることが好ましく、熱転写法、真空成形法又は真空圧空成形法を用いることがより好ましく、真空成形法又は真空圧空成形法を用いることがさらに好ましい。
ここで、プレス加工法とは、型を用いて機械的な圧力と接着剤で貼付させる方法である。プレス加工法では、加飾フィルムの素材が押しつぶされるため、外観的にも、感触的にも柔らかい素材の風合いを失い易く、また、金型自体も高価である。
一方、真空成形法は、加飾フィルムで仕切られた2つの密閉された空間が形成された装置において、一方の密閉空間側に、繊維強化プラスチック成形体を配し、両方の密閉空間を減圧真空化してから、加飾フィルムをヒーターなどで輻射加熱し、貼合する方法である。一方の密閉空間側から他方の密閉空間側に向かって加飾フィルム接着面に繊維強化プラスチック成形体面を押し当て、この押し当てた状態のままで、繊維強化プラスチック成形体を配置していない側の他方の密閉空間のみを常圧に戻す。これによって、加飾フィルムに均一に外圧がかかり、加飾フィルムを繊維強化プラスチック成形体表面に貼付させることができる。本発明で得られる繊維強化プラスチック成形体は、軽量でありながら、高強度であるため、このような減圧条件化においても、その形状を維持することができ、変形や反りが生じることがない。
上記工程では、一方の密閉空間側から他方の密閉空間側に向かって加飾フィルム接着面に成形体を押し当てた状態といった工程を用いず、単に、一方の密閉空間側を真空にして置くこともできる。繊維強化プラスチック成形体を配置していない側の他方の密閉空間のみを常圧に戻すことで、加飾フィルムを繊維強化プラスチック成形体表面に貼付させる方法も、貼付条件によっては可能である。上記の方法を真空成形法という。
また、上記において、一方の密閉空間側を真空化しておいて、他方の密閉空間のみを常圧に戻して繊維強化プラスチック成形体に加飾フィルムを貼合することもできる。その後、常圧から更に圧縮空気を導入などして圧空を加えて、貼付を確実なものにする方法も可能である。これを真空圧空成形法と称する。
これらの方法は、三次元形状(繊維強化プラスチック成形体のコーナー部分等)をもつ繊維強化プラスチック成形体への加飾フィルムを貼合することも可能とする。生産性の点も含め、柔らかなシートを貼合したときの風合いの良好さを維持可能である点から、真空成形(真空圧空成形)は、最も好適な方法である。
熱転写法とは、繊維強化プラスチック成形体の表面に積層一体化された加飾シートのうち、基材フィルムが剥離除去され、装飾層等の転写層のみを熱をかけることによって繊維強化プラスチック成形体の表面に残留させる方法である。加飾シートは、100〜350℃の温度において、0.1〜25MPaの圧力条件下で繊維強化プラスチック成形体の表面に転写することが好ましい。
本発明では、繊維強化プラスチック成形体を形成する工程の前に、さらに不織布シートを形成する工程を含むことが好ましい。不織布シートを形成する工程は、乾式不織布法又は湿式不織布法のいずれかの方法で不織布シートを形成する工程と、バインダー成分を含む溶液又はバインダー成分を含むエマルジョンを不織布シートに内添、塗布又は含浸させる工程を含む。さらに、内添、塗布又は含浸後には、加熱乾燥させる工程を含む。このような工程を設けることにより、不織布シートの表面繊維の飛散、毛羽立ちや脱落を抑制することができ、ハンドリング性に優れた成形加工シートを得ることができる。
加飾加工された成形品は、必要に応じて不要な部分をトリミング加工することが好ましい。なお、TOM成形(真空圧空成形法)は、エッジ部への加飾保護が可能なため、成形プラスチックのエッジ部の処理が不要となるため、貼合手段として好ましく用いられる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
繊維径7μm、繊維長13mmのPAN系炭素繊維と、PEI繊維(Fiber Innovation Technology社製、繊維長13mm、繊維径15μm、限界酸素指数47)を、質量比が炭素繊維40に対しPEI繊維60となるように計量し、水中に投入した。投入した水の量は、炭素繊維とPEI繊維の合計質量に対し200倍となるようにした(繊維スラリー濃度として0.5%)。
このスラリーに、分散剤として商品名「エマノーン3199」(花王社製)をPEI繊維100質量部に対し1質量部となるよう添加して攪拌し、繊維を水中に均一に分散させた繊維スラリーを調製した。
次に、粒状ポリビニルアルコール(PVA)(ユニチカ社製、商品名「OV−N」)を、濃度が10%となるように水に添加し、攪拌してバインダースラリーを調製した。
この粒状PVAのスラリーを上記繊維スラリーに投入して湿式抄紙法でウエットウエブを形成し、180℃で加熱乾燥することにより表1に示すバインダー量で目付けが120g/m2である不織布を作製した。更に、上記不織布を、220℃の熱プレスにて加熱処理することで、目付け220g/m2の繊維強化プラスチック成形体用シートを得た。
次に、繊維強化プラスチック成形体用シートを、8枚積層し、310℃に予熱したホットプレスに挿入して60秒加熱加圧した後、230℃に冷却して繊維強化プラスチック成形体(板)を得た。
更に、得られた繊維強化プラスチック成形体にTOM加飾を施した(真空圧空成形法)。フィルムは塩化ビニル系(シーアイ化成社製、200μm厚)を使用し、また、試験機として、布施真空社製(NGF0609)を用いて行った。加飾条件としては、フィルム加熱温度90℃30秒保持後、圧縮空気200kPaで加工した。尚、繊維強化プラスチック成形体(板)の厚みは1.0mmであった。
(実施例2)
実施例1の炭素繊維の代わりに、繊維径9μm、繊維長18mmのガラス繊維を用いた以外は実施例1と同様にして、加飾成形を施した。尚、繊維強化プラスチック成形体の厚みは1.0mmであった。
(実施例3)
実施例1のTOM加飾の代わりに転写加飾を施した以外は実施例1と同様にして、加飾成形体を得た。転写フィルムは180℃で0.5MPaで転写加飾を行った(熱転写)。尚、繊維強化プラスチック成形体の厚みは1.0mmであった。
(実施例4)
実施例3の炭素繊維の代わりに、繊維径9μm、繊維長18mmのガラス繊維を用いたを用いた。なお、得られた繊維強化プラスチック成形体用シートを、4枚積層し、310℃に予熱したホットプレスに挿入して60秒加熱加圧した後、230℃に冷却して繊維強化プラスチック成形体を得た。それ以外は実施例3と同様にして、加飾成形を施した。尚、繊維強化プラスチック成形体の厚みは0.5mmであった。
(実施例5)
実施例1において繊維強化プラスチック成形体用シート8枚の代わりに4枚とした以外は実施例1と同様にして、加飾成形体を得た。尚、繊維強化プラスチック成形体の厚みは0.5mmであった。
(実施例6)
実施例1において繊維強化プラスチック成形体用シート8枚の代わりに2枚とした以外は実施例1と同様にして、加飾成形体を得た。尚、繊維強化プラスチック成形体の厚みは0.25mmであった。
(実施例7)
PEI繊維のかわりにポリカーボネート繊維(繊維径15μm、繊維長25μm、限界酸素指数25)を用いた以外は実施例1と同様にして、加飾成形体を得た。尚、繊維強化プラスチック成形体の厚みは1.0mmであった。
(比較例1)
ポリカーボネート/ABSの混合樹脂(ダイセル社製:商品名「ノバロイS1100」)を二軸混練押出機により溶融混練を行い、コンパウンドを作製し、日精樹脂工業社製 FNX140にて射出成形を行い1.0mm厚の成形体を得た。更に得られた成形体を用いて、実施例1と同様の方法(TOM加飾)で加飾成形品を得た。
(比較例2)
ガラス繊維強化タイプのポリカーボネート/ABSの混合樹脂(ダイセル社製:商品名「ノバロイS1230」:ガラス繊維含有率30%)を二軸混練押出機により溶融混練を行い、日精樹脂工業社製 FNX140にて射出成形を行い、1.0mm厚の成形体を得た。尚、得られた射出成形品の表面性は悪く、ガラス繊維の突出が見られた。得られた成形体を用いて、実施例3と同様の方法(転写加飾)で加飾成形品を得た。
(比較例3)
比較例2と同様の方法で厚みを0.5mmになるように調整した以外は、比較例2と同様にして加飾成形品を得ようとしたが、TOM成形方法では圧空で加飾フィルムを圧着させる際、端部に割れが生じ、加飾成形品を得ることが出来なかった。
(評価)
(成形形状)
成形後の形状について、以下のとおり、官能評価により評価した。
A:非常に良好。
B:良好。
C:表面の平滑性が劣り、実用上問題が生じる。
D:成形できない。
(美匠性)
装飾加工後の美匠性について、以下のとおり官能評価により評価した。
A:非常に良好。
B:良好。
C:表面の平滑性が劣り、実用上問題が生じる。
D:破損が生じ、加工できない。
(加飾成形品の曲げ強度)
加飾成形品の曲げ強度は、JIS K7074に準拠した方法で測定した。
(難燃性評価)
加飾成形品の難燃性の評価は限界酸素指数テスト(ASTM D2863)に基づいて実施した。
Figure 0006163971
実施例1〜7では、成形品の形状、加飾成形品の美匠性、更に曲げ強度及び難燃性(限界酸素指数)が優れていることがわかる。また、本発明の熱プレス成形法では、薄膜でありながらも強度に優れた加飾成形品を得ることができる。一方、比較例1のポリカーボネート/ABS樹脂(限界酸素指数22)を用いて、射出成形を行った場合、真空成形において美匠性が悪化するとともに、強度、難燃性も低下する。
また、比較例2で、強度向上のためガラス繊維を混錬すると、表面性が悪くなり求める美匠性が得られず、また強度、難燃性も依然不十分である。また、比較例3で明らかなように、射出成形法では0.5mm厚以下のものを作製することができない。
本発明によれば、軽量であり、かつ高強度の加飾成形品を得ることができる。さらに、本発明によれば、難燃性が高く、意匠性に優れた加飾成形品を得ることができる。このため、本発明の加飾成形品は、難燃性が高く、軽量で高強度であるため、電子機器の筐体の他に、スポーツ用品やレジャー用品、航空機用材料、内装材等の様々な分野で好ましく用いることができ、産業上の利用可能性が高い。

Claims (18)

  1. 繊維強化プラスチック成形体と、前記繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを積層した加飾成形品であって、
    前記繊維強化プラスチック成形体は、強化繊維成分と、限界酸素指数が24以上である熱可塑性スーパーエンプラ繊維及びポリカーボネート繊維から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂の繊維と、バインダー成分とを含む繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形したプラスチック成形体であり、
    前記強化繊維成分と、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維及び前記ポリカーボネート繊維から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂の繊維の質量比は、1:0.7〜1:3であることを特徴とする加飾成形品。
  2. 前記強化繊維成分は、無機繊維を含み、
    前記繊維強化プラスチック成形体用シートは、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含み、
    前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は40μm以下であり、かつ前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維の繊維径は前記無機繊維の繊維径の5倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の加飾成形品。
  3. 前記繊維強化プラスチック成形体の厚みは0.05〜2mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾成形品。
  4. 前記繊維強化プラスチック成形体用シートのJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2に規定される透気度が250秒以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  5. 前記バインダー成分は前記繊維強化プラスチック成形体の全質量に対して0.1〜10質量%となるように含有されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  6. 前記繊維強化プラスチック成形体用シートは、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含み、
    前記バインダー成分は前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維と加熱溶融状態で相溶することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  7. 前記バインダー成分は、メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位及びエチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも一方を含む共重合体を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  8. 前記繊維強化プラスチック成形体用シートは、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含み、
    前記バインダー成分は、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度よりも低い融点を有するバインダー繊維を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  9. 前記バインダー繊維は、ポリエチレンテレフタレート又は変性ポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする請求項8に記載の加飾成形品。
  10. 前記繊維強化プラスチック成形体用シートは、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含み、
    前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維及び前記バインダー繊維は、チョップドストランドであることを特徴とする請求項8又は9に記載の加飾成形品。
  11. 前記繊維強化プラスチック成形体用シートは表層領域と前記表層領域に挟まれた中間領域を有し、
    前記表層領域に含有されているバインダー成分は、前記中間領域に含有されているバインダー成分より多いことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  12. 前記バインダー成分に含まれる共重合体は、前記強化繊維成分と前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維及び前記ポリカーボネート繊維から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂の繊維同士の交点に水掻き膜状に局在していることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  13. 前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維はポリエーテルイミド繊維であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  14. 前記加飾フィルムは、貼合手段を介して前記繊維強化プラスチック成形体に積層されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の加飾成形品。
  15. 繊維強化プラスチック成形体と、前記繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを積層した加飾成形品の製造方法であって、
    強化繊維成分と、限界酸素指数が24以上である熱可塑性スーパーエンプラ繊維及びポリカーボネート繊維から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂の繊維と、バインダー成分とを含む繊維強化プラスチック成形体用シートを加熱加圧成形し繊維強化プラスチック成形体を形成する工程と、
    前記繊維強化プラスチック成形体の少なくとも一方の面に加飾フィルムを貼合する工程を含み、前記加飾フィルムを貼合する工程では、真空成形法、真空圧空成形法及び熱転写法から選択される方法により加飾フィルムが貼合され、
    前記強化繊維成分と、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維及び前記ポリカーボネート繊維から選択された少なくとも1種の熱可塑性樹脂の繊維の質量比は、1:0.7〜1:3であることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
  16. 前記繊維強化プラスチック成形体を形成する工程の前に、さらに繊維強化プラスチック成形体用シートを形成する工程を含み、
    前記繊維強化プラスチック成形体用シートを形成する工程は、乾式不織布法又は湿式不織布法のいずれかの方法で不織布シートを形成する工程と、
    前記バインダー成分を含む溶液又は前記バインダー成分を含むエマルジョンを前記不織布シートに内添、塗布又は含浸させ、加熱乾燥させる工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の加飾成形品の製造方法。
  17. 前記繊維強化プラスチック成形体用シートは、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維を含み、
    前記繊維強化プラスチック成形体を形成する工程では、前記熱可塑性スーパーエンプラ繊維のガラス転移温度以上の温度で加熱加圧成形されることを特徴とする請求項15又は16に記載の加飾成形品の製造方法。
  18. 前記繊維強化プラスチック成形体を形成する工程では、前記繊維強化プラスチック成形体用シートを150〜600℃で加熱加圧することを特徴とする請求項1517のいずれか1項に記載の加飾成形品の製造方法。
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