JP6155998B2 - 赤外線温度センサ - Google Patents

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Description

本発明は、熱源の温度を非接触測定する赤外線温度センサに関する。さらに詳細には、メンブレン構造を持つ感熱膜を用いた赤外線温度センサに関するものである。
従来から、赤外線の輻射エネルギを測定することで非接触での温度検知が可能な素子が知られている。そのようなデバイスでは検知用素子で赤外線量を計り、補償用素子で検知用素子を含む素子全体の温度を計り測定対象物の温度を計算する。例えば温接点と冷接点の温度差による熱起電力により検知を行うサーモパイル、強誘電体の焦電効果による起電力を利用した焦電素子や負の抵抗温度変化を用いたサーミスタ材料、ボロメータ材料を用いて赤外線の輻射エネルギを抵抗変化により検知するサーミスタ素子などが提案されている。
特許文献1では、サーミスタを用いた赤外線検出器として赤外線検知用サーミスタ素子と温度補償用サーミスタ素子を組み合わせた構成が提案されている。赤外線検知用サーミスタ素子は赤外線に対して開口した位置に配置し温度補償用サーミスタ素子は遮蔽する構造が採られている。
特許文献2では、赤外線検知用素子の熱容量を小さくすることで素子の感度・応答特性を改善出来るので、検知部を薄膜で形成して支持基板から浮かすダイヤフラム構造すなわちメンブレン構造を用いた構成が開示されている。また、メンブレン構造の薄膜サーミスタについて提案されており赤外線検知用素子に赤外線吸収膜、赤外線反射膜を用いた構成について開示されている。
また特許文献3においては、フィルム上に赤外線吸収膜および赤外線反射膜を形成したサーミスタ素子を用いた赤外線温度センサについての構造が開示されている。
特開平7−260579号公報 特開平7−140008号公報 特開2012−32233号公報
しかしながら、上記従来の技術には以下の課題が残されている。特許文献1では、温度補償用サーミスタ素子を遮蔽するためには素子をセッティングする筐体すなわちパッケージに遮蔽用の構造を持たせるために複雑な構造となるので小型化が困難である上、コストアップ要因となる。またフィルムからの熱伝導を用いるために高速応答に対応できない。
特許文献2の構成によれば赤外線吸収膜と赤外線反射膜の熱容量が異なり、すなわち、赤外線検知用素子と温度補償用素子との熱容量が異なるために周囲温度が急激に変化した場合、赤外線検知用素子への周囲温度変化の影響と温度補償用素子への周囲温度変化の影響が異なるために各々の検知素子の検知速度がずれることが問題となる。
特許文献3の構成では赤外線吸収膜および赤外線反射膜を同一のフィルム上に隣接して形成しており検知素子、参照素子の熱分離が不十分であること、赤外線吸収膜の熱伝導性についての記載はあるものの赤外線反射膜については記載がなく、また赤外線の吸収効果を高めることを目的としており、赤外線検知用素子の周囲温度変化と温度補償用素子に対する影響に関して課題は解決されていない。そこで、本発明は、赤外線検知用素子への周囲温度変化の影響と温度補償用素子への周囲温度変化の影響をおおむね等しくすることにより、初期応答時のオーバーシュート量が低減された赤外線温度センサを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係わる赤外線温度センサは、基板と、非接触で赤外線からの熱に応じた温度変化に対応して抵抗値が変化する第1感熱素子及び赤外線の影響が低減され周囲温度からの熱に応じた温度変化に対応して抵抗値が変化する第2感熱素子を有し、基板内部に形成された第1および第2のキャビティおよび基板上に第1感熱素子及び第2感熱素子がそれぞれ配置され、第1感熱素子が備える一対の第1の電極と第1の検知膜とで構成された第1検知領域上に、第1の赤外線反射膜と第1の赤外線吸収膜とがこの順に積層され、第2感熱素子が備える一対の第2の電極と第2の検知膜とで構成された第2検知領域上に、第2の赤外線吸収膜と第2の赤外線反射膜とがこの順に積層され、第1の赤外線吸収膜および第1の赤外線反射膜の端部と、第2の赤外線吸収膜の端部とはそれぞれ第1および第2のキャビティ上に形成され、第2の赤外線反射膜は、第2の赤外線吸収膜と第2の赤外線反射膜との積層方向と直交する方向において、第2のキャビティを超えた基板上まで形成され、第1および第2の赤外線吸収膜は同じ材料で形成され、第1および第2の赤外線吸収膜はおおむね同じ面積と膜厚で形成され、第1および第2の赤外線反射膜は同じ材料で形成され、第1のキャビティ上の第1の赤外線反射膜の面積と膜厚の積と、第2のキャビティ上の第2の赤外線反射膜の面積と膜厚の積とがおおむね等しいことを特徴とする赤外線温度センサである。
本構成によれば、第1感熱素子である赤外線検知用素子と第2感熱素子である温度補償素子の熱容量をおおむね同等にすることで、赤外線検知用素子への周囲温度変化の影響と温度補償用素子への周囲温度変化の影響をおおむね等しくし、さらに、第2の赤外線反射膜が、第2の赤外線吸収膜と第2の赤外線反射膜との積層方向と直交する方向において、第2のキャビティを超えた基板上まで形成されることにより、赤外線が第2の赤外線反射膜にて一部吸収されることにより発生する熱を基板側に伝導させ、初期応答時のオーバーシュート量が低減された赤外線温度センサが得られる。また、測定開始時刻は不定のため、初期応答時のオーバーシュート量が低減されることで、結果として測定誤差を低減することも可能となる。
本発明は、第1赤外線吸収膜を第1の赤外線反射膜と第1の赤外線吸収膜との積層方向に射影した領域は第1検知領域を全て含み、第2赤外線吸収膜を第2の赤外線吸収膜と第2の赤外線反射膜との積層方向に射影した領域は第2検知領域を全て含む赤外線温度センサとしてもよい。
本発明は、第2の赤外線反射膜は、第2の赤外線吸収膜を被覆するとともに、第2の赤外線吸収膜の外側に開口部を有する赤外線温度センサとしてもよい。
本発明によれば、初期応答時のオーバーシュート量が低減された赤外線温度センサが得られる。
第1から第3実施形態における感熱素子の平面図である。 第1から第3実施形態における感熱素子のA−A断面図である。 第1実施形態における赤外線温度センサの平面図である。 第1実施形態における赤外線温度センサのB−B断面図である。 第2実施形態における赤外線温度センサの平面図である。 第2実施形態における赤外線温度センサのC−C断面図である。 第3実施形態における赤外線温度センサの平面図である。 第3実施形態における赤外線温度センサのD−D断面図である。 比較例1における赤外線温度センサの平面図である。 比較例1における赤外線温度センサのE−E断面図である。 比較例2における赤外線温度センサの平面図である。 比較例2における赤外線温度センサのF−F断面図である。 赤外線検知用素子と温度補償用素子の応答特性を示すグラフである。 比較例2および実施例1との応答特性を示すグラフである。 実施形態における赤外線温度センサの出力特性を示す表である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
(第1実施形態)
第1実施形態の赤外線温度センサ100の構成を分かり易く説明するために、いわゆる赤外線温度センサ100の基本となる一般的な感熱素子構成部位の説明と、第1実施形態の構成の要部の説明とに分けて説明する。同一のデバイスについては同一の符号を付すものとし、重複する説明を省略する。なお、図面は、模式的なものであり、説明の便宜上、厚みと平面寸法との関係、及びデバイス相互間の厚みの比率は、本実施形態の効果が得られる範囲内で現実のセンサ構造とは異なっていてもよい。
図3に示す赤外線温度センサ100は、メンブレン構造を持つ第1感熱素子である赤外線検知用素子21(以降、赤外線検知用素子21と称する)と、メンブレン構造を持つ第2感熱素子である温度補償用素子22(以降、温度補償用素子22と称する)を有する。ここでメンブレン構造について説明をする。赤外線温度センサ100において、基板1が除去された部分をキャビティ7と定義し、キャビティ7上に形成される薄膜部分を有する構造体の総称をメンブレン構造と定義する。ここで述べたメンブレン構造およびキャビティ7の定義は、赤外線温度センサ100だけでなく赤外線温度センサ(200、300)および感熱素子10においても適用される。
また、図1の感熱素子10とは、赤外線検知用素子21または温度補償用素子22のことである。感熱素子10は、基板1、絶縁膜2、一対の取出し電極3、検知膜である感熱膜4(以降、感熱膜4と称す)から構成され、感熱膜4を保護する保護膜6を有している。また、感熱素子10が備える一対の取出し電極3と接続する一対のパッド電極5を有している。なお、通常、一対のパッド電極5は基板1上に形成される。
(感熱素子の説明)
図1、図2に示される感熱素子10と、図1、図2に示される感熱素子10を2つ以上配置する図3、図4に示される第1実施形態における赤外線温度センサ100を説明する。図1は感熱素子10の平面図、図2は図1におけるA−A断面である。図3は赤外線温度センサ100の平面図、図4は図3におけるB−B断面図である。感熱素子10は、所定のギャップ間隔をおいて形成される一対の取出し電極3と、これらの一対の取出し電極3間および一対の取出し電極3上に積層されて形成される感熱膜4とを備える。感熱素子10は一対の取出し電極3間および一対の取出し電極3上に積層されて形成された感熱膜4の電気特性の変化を検出する。ここで、一対の取出し電極3間の感熱膜4および一対の取出し電極3との積層部分を含む感熱膜4が存在する領域が検知領域となる。つまり、感熱膜4が存在する領域が検知領域である。ここで、図3における赤外線検知用素子21に対応する検知領域を第1検知領域とし、温度補償用素子22に対応する検知領域を第2検知領域とする。
感熱膜4の材質としては例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、複合金属酸化物等の負の温度係数を有するサーミスタ薄膜が好適である。一対の取出し電極3の材質としては、感熱膜4の形成工程や熱処理工程等に耐え得る耐熱性を有し、且つ適度な伝導性を有する比較的高融点の材質が好ましく、例えば、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、又はこれらの金属を2種類以上含む合金等が好適である。また電気信号を取り出すために一対のパッド電極5が各々の一対の取出し電極3に接続されるように形成される。一対のパッド電極5の材質としては、ワイヤーボンドやフリップチップボンディング等の電気的接続が容易な材質、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)等が好適である。
感熱素子10に用いる感熱膜4はサーミスタ薄膜であり、B定数を有する。ここで、B定数とは、抵抗−温度特性の任意の2点の温度から求めた抵抗変化の大きさを表す定数であり、Bとは半導体の抵抗がR、半導体の絶対温度Tが無限大のときの抵抗値に相当する値がR0のときR=R0*e^(B/T)で表される。
感熱素子10を構成する基板1は、第1の主面1A及びその裏面である第2の主面1Bを有しており、少なくとも第1の主面1Aには絶縁膜2が形成されている。基板1の材質としては、適度な機械的強度を有し、且つエッチング等の微細加工に適した材質であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミックス基板、石英基板、ガラス基板等が好適である。絶縁膜2としては、適度な機械的強度を有し、且つ公知の薄膜プロセスで容易に形成できるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等が好適である。基板1の第1の主面1Aには、上述の感熱膜4が絶縁膜2を介して形成されている。また感熱膜4を被覆して外気から遮蔽するための保護膜6が形成されている。
ここで保護膜6は少なくとも感熱素子10が覆われていればよい。保護膜6の材質としては、適度な耐久性を有する絶縁膜であればよく、特に限定されるものではないが、絶縁膜2の材質と同一であることが好ましい。このようにすることで感熱素子10の周囲を構成する絶縁膜2と保護膜6が全て同一材質になるため、より均一な温度分布となり好ましい。なお、感熱膜4が十分な耐腐食性を有する場合、保護膜6は必ずしも必要ではない。
キャビティ7は、第2の主面1B側から第1の主面1A側に向けて基板1内部に凹部を有している。あるいは、基板1が開口している。言い換えれば、感熱素子10は基板1のキャビティ7上に形成されたメンブレン構造を有している。つまり、キャビティ7上には、少なくとも絶縁膜2、一対の取出し電極3、感熱膜4が形成され、メンブレン構造を有しており、一対の取出し電極3、感熱膜4を水分から保護する必要がある場合は保護膜6が形成される。また、一対のパッド電極5は、電気的接続に要する強度が必要なため基板1上に形成される。
(赤外線温度センサの説明)
図3、図4に示される赤外線検知用素子21と温度補償用素子22は、それぞれ1つの感熱素子10に対応しており、組み合わせて赤外線温度センサ100として動作し、赤外線検知用素子21は検知した赤外線量に応じた温度変化に対応して赤外線検知用素子21の第1の感熱膜4Aの抵抗が変化する。従って、抵抗の変化量に対応した電圧を得ることが可能となる。ここで、赤外線検知用素子21と温度補償用素子22に対応するそれぞれの一対の取出し電極(3A、3B)すなわち、一対の第1の電極3Aおよび一対の第2の電極3Bと第1および第2の感熱膜(4A、4B)とを同じ膜厚と大きさにすることにより、各素子(21、22)の熱容量は等しく構成される。また、赤外線検知用素子21と温度補償用素子22に対応する第1および第2の感熱膜(4A、4B)は同一の抵抗値および抵抗温度特性であるB定数を有する。
赤外線検知用素子21上には、第1の赤外線反射膜30Aと第1の赤外線吸収膜40Aとがこの順に第1のキャビティ7A上に積層されて形成され、温度補償用素子22上には、第2の赤外線吸収膜40Bと第2の赤外線反射膜30Bとがこの順に第2のキャビティ7B上に積層されて形成され、赤外線検知用素子21上と温度補償用素子22上とにそれぞれ形成される第1および第2の赤外線吸収膜(40A,40B)と第1および第2の赤外線反射膜(30A,30B)とは、それぞれ同一材料で形成されていることを特徴とする。ここで、メンブレン構造とは、基板1に支持され、第1および第2のキャビティ(7A、7B)に対応して第1および第2のキャビティ(7A、7B)上に形成された薄膜部分の構造体であり、第1の赤外線反射膜30Aと第1の赤外線吸収膜40Aとの積層方向および第2の赤外線吸収膜40Bと第2の赤外線反射膜30Bとの積層方向を含む断面方向から見た場合、中空構造となっている。これにより赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の熱容量を小さくすることが可能になる。
そのため、赤外線検知用素子21は、第1の赤外線反射膜30Aと第1の赤外線吸収膜40Aとがこの順に第1のキャビティ7A上に積層されて形成されることにより吸収した赤外線の変化量に対応した第1の感熱膜4Aの温度の変化量を上げることが可能となっている。つまり、赤外線に対する感度が高い構造となり、赤外線による温度変化に応じて第1の感熱膜4Aの抵抗が変化する。一方、温度補償用素子22は、第2の赤外線吸収膜40Bと第2の赤外線反射膜30Bとがこの順に第2のキャビティ7B上に積層されて形成されることにより赤外線量に対して影響されにくい構造となっている。つまり、赤外線の変化量による第2の感熱膜4Bの温度変化がない、あるいは、小さくすることが可能となる。従って、赤外線による第2の感熱膜4Bの抵抗変化がない、あるいは、小さくすることが可能となる。このため、赤外線温度センサ100は、温度補償用素子22を用いることにより赤外線の影響が低減された状態で温度を検知することができる。その結果、赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の熱容量を小さくしているので、赤外線量が変化した場合に得られる赤外線検知用素子21と温度補償用素子22との応答の差を大きくすることが可能となる。すなわち、電圧の差から赤外線温度センサ100が受けた赤外線量を迅速に算出することが可能になる。
ここで、第1の赤外線反射膜30Aと第2の赤外線反射膜30Bとは同一の材料となっており、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の第1の赤外線吸収膜40Aと第2の赤外線吸収膜40Bとは同一の材料、面積および膜厚となっている。温度補償用素子22の検知領域(第2検知領域)では、第2の赤外線反射膜30Bにより主に赤外線を反射させることで赤外線の影響を除くあるいは、低減する効果を得ることが可能となっている。さらに第2の赤外線反射膜30Bの端部をメンブレン構造の外側、つまり、第2のキャビティ7Bの外側の基板1部分にまで延在させることで、赤外線が一部吸収されることにより発生する熱を基板1側に伝導させ、基板1から逃がす熱伝導層としての機能も持たせることで赤外線による温度変化の影響をより低減することが可能となっている。また、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の第1および第2の赤外線吸収膜(40A,40B)と第1および第2の赤外線反射膜(30A,30B)のそれぞれの面積と膜厚の積を等しくすることで第1および第2検知領域の熱容量をおおむね等しくすることが出来る。熱容量がおおむね等しくなることで赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の外部からの熱伝導による影響がおおむね等しくなるため、初期応答時に周囲温度の変化の影響を受けにくくなり、小型かつ感度特性に優れた赤外線温度センサ100が得られる。また、第2の赤外線反射膜30Bの端部をメンブレン構造の外側、つまり、第2のキャビティ7Bの外側の基板1部分にまで延在させ基板1側に放熱する構造を採用することで、赤外線が一部吸収されることにより発生する熱を基板1側に伝導させることが可能となり赤外線検知用素子21との出力の差分を大きくすることが可能である。なお、おおむね等しくとは成膜、パターン加工などに素子作製上のばらつきの影響により発生する熱容量の差の範囲内である。実際には、膜厚のばらつき、パターン加工による大きさのばらつきはそれぞれ5%程度であり、この範囲にあれば熱容量は概ね等しいといえる。
なお、第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)の材質としては、4μm〜15μmの波長の赤外線を効率よく吸収する材質であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、表面に微小な凹凸を形成することで赤外線の吸収効率を良くした、Au黒、Pt黒、銅(Cu)黒などの黒体材料、ポリイミド等の赤外線吸収効率の高い樹脂が好適である。また、例えば、Au黒、Pt黒とはそれぞれの金属が微粒子状で黒い膜の状態になったものであり、またCu黒とは、Cuを酸化処理して黒い状態にしたもの、すなわち黒化処理したものである。第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)の材質としては、適度な赤外線反射率を有する薄膜であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム(Al)や金(Au)、白金(Pt)等の金属材質が好適であり、特に、公知の薄膜プロセスで容易に成膜可能で熱伝導性に優れたものが更に好ましい。
以上のような構成により、温度補償用素子22は第2の赤外線反射膜30Bの端部をメンブレン構造の外側、つまり、第2のキャビティ7Bの外側の基板1部分にまで延在させ基板1側に放熱する構造を採用することで、赤外線が一部吸収されることにより発生する熱を基板1側に伝導させることが可能となり赤外線検知用素子21と温度補償用素子22には、赤外線による抵抗差が生じ、この抵抗差から赤外線量を算出することが可能となる。また、このような第1および第2のキャビティ(7A,7B)上の第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)および第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)の熱容量をおおむね等しくした構成を用いることにより従来技術で問題となっていた測定時の急激な温度変化に対して赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の温度バランスの悪化による影響を受けにくく、すなわち、初期応答時のオーバーシュート量が低減され、かつ赤外線検知の感度特性に優れた赤外線温度センサ100を提供することが可能となる。つまり、熱容量をおおむね等しくすることにより初期応答時間をおおむね揃えることが可能となるので、オーバーシュート量が低減されることになっている。また、測定開始時刻は不定のため、初期応答時のオーバーシュート量が低減されることで、結果として測定誤差を低減することも可能となる。
(第2実施形態)
図5、図6に示される第2実施形態の構造について説明する。図5は赤外線温度センサ200の平面図、図6は赤外線温度センサ200の、図5におけるC−C断面図である。第2実施形態は、第1実施形態と赤外線検知用素子21および温度補償素子22の検知領域上の第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)と第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)の位置関係が異なるものであり、他は第1実施形態と同様である。赤外線検知用素子21および温度補償素子22上の第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)と第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)は第1および第2検知領域より大きく形成されている。つまり、第1赤外線吸収膜40Aを第1の赤外線反射膜30Aと第1の赤外線吸収膜40Aとの積層方向に射影した領域は第1検知領域を全て含み、第2赤外線吸収膜40Bを第2の赤外線吸収膜40Bと第2の赤外線反射膜30Bとの積層方向に射影した領域は第2検知領域を全て含むものである。赤外線吸収による第1および第2検知領域の温度変化は検知領域全体の積算で考えられるので検知領域内の温度分布が良くなることでより安定した測定が可能になる。また赤外線吸収量が多くなることにより赤外線検知用素子21の出力が大きくなる。
(第3実施形態)
図7、8に示される第3実施形態の構造について説明する。図7は赤外線温度センサ300の平面図、図8は赤外線温度センサ300の、図7におけるD−D断面図である。第3実施形態は第2実施形態と異なり、温度補償用素子22の第2の赤外線反射膜30Bの構成が異なり、他は第1実施形態と同様である。第2の赤外線反射膜30Bは加工されることで除去されていない部分の第2のキャビティ7B上の第2の赤外線反射膜30Bの面積と膜厚の積が赤外線検知用素子21の第1の赤外線反射膜30Aの面積と厚みの積とおおむね等しくなっている。
第1の赤外線反射膜30Aの面積と膜厚の積と第2の赤外線反射膜30Bの面積と膜厚の積をおおむね等しくするには、まず第1の赤外線吸収膜40Aの面積と第1の赤外線反射膜30Aの面積と膜厚を決定し、それに応じて第2の赤外線反射膜30Bの膜厚が決まるが、第2の赤外線反射膜30Bはメンブレン構造の外側まで延在しているため面積が必然的に大きくなり、これは膜厚が薄くなることを意味する。膜厚が薄くなることによりプロセスばらつきに起因した膜厚不均一の影響を受けやすくなり、膜の反射率が低下するなどの問題が生じることがある。第1のキャビティ7Aおよび第2のキャビティ7B上の第1の赤外線反射膜30Aおよび第2の赤外線反射膜30Bの膜厚×面積を同じにするために、第2の赤外線吸収膜40Bの外側に存在する第2の赤外線反射膜30Bの一部を除去することで、開口部を形成すれば、第2の赤外線反射膜30Bの膜厚を厚くすることが可能となり、この問題を解決することが可能になる。また、開口部を形成することで第2の赤外線反射膜30Bは連続した形状となるので、赤外線が一部吸収されることにより発生する熱を基板1側に伝導させ、基板1から逃がす熱伝導層としての機能も持たせることも可能となっている。
(比較形態1)
図9、10に示される比較形態1の構造について説明する。図9は赤外線温度センサ400の平面図、図10は赤外線温度センサ400の、図9におけるE−E断面図である。比較形態1は第1実施形態と異なり、温度補償用素子22の第2の赤外線反射膜30Bの大きさが第1実施形態の赤外線検知用素子21の第1の赤外線反射膜30Aの大きさと同じであることの他は第1実施形態と同様である。つまり、第2の赤外線反射膜30Bは第2のキャビティ7B内に配置されており第2の赤外線反射膜30Bの面積と膜の第1の赤外線反射膜30Aの面積と厚みの積とおおむね等しくなっている。
(第1実施例)
赤外線温度センサ100の第1実施形態の製造方法について説明する。図3、4に示すように、基板1として、面方位が(100)である(100)シリコン基板(以下単にシリコン基板と記載する)を用意し、基板1の第1の主面1A及び第2の主面1Bに絶縁膜2としてシリコン酸化膜を形成する。シリコン酸化膜を形成するには、例えば、熱酸化法等を適用すればよい。絶縁膜2の膜厚は、基板1との絶縁性が確保される程度に調整すればよく、例えば、0.1μm〜0.5μm程度が好適である。
次に、第1の主面1A上の絶縁膜2上に第1および第2の一対の取出し電極(3A、3B)を形成する。第1および第2の一対の取出し電極(3A,3B)を形成するには、例えば、RFマグネトロンスパッタ法等を用いて絶縁膜2上に150nm〜600nm程度のPt等の金属薄膜を堆積し、フォトリソグラフィによってエッチングマスクを形成し、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングでこの金属薄膜を所定の電極形状に加工すればよい。金属薄膜と絶縁膜2との間の密着性を高めるには、チタン(Ti)等の密着層を介在させるのが好ましい。
次に、第1および第2の感熱膜(4A、4B)としてのMn−Co−Ni系酸化物等の複合金属酸化膜をスパッタ法により第1および第2の一対の取出し電極(3A、3B)上に堆積し、ウェットエッチングにより複合金属酸化膜を所定形状にパターニングする。以上の工程により、絶縁膜2上に赤外線検知用素子21及び温度補償用素子22が形成される。続いて、保護膜6としての酸化Si膜をテトラエトキシシランという有機金属材料を用いたTEOS−CVD法により0.3μm〜2μm程度の膜厚で第1の主面1A上に形成し、フォトリソグラフィによりエッチングマスクを形成した後、酸化Si膜をウェットエッチングにより選択的に除去し、第1および第2の一対のパッド電極(5A、5B)が形成されるべき第1および第2の一対の取り出し電極(3A、3B)箇所を露出させる。そして、第1および第2の一対の取り出し電極(3A、3B)露出部上に第1および第2の一対のパッド電極(5A、5B)としてAl電極をEB蒸着法により0.3〜2.0μm程度で形成し、リフトオフ法によりAl電極の不要部分を除去することで、第1および第2の一対のパッド電極(5A、5B)を形成する。
次に、赤外線検知用素子21用の第1の赤外線反射膜30Aとして白金(Pt)を0.1〜0.5μm程度でスパッタ法により第2の主面1A上に形成する。さらに第1のキャビティ7Aの開口領域の外縁の所定距離(例えば、20〜100μm程度)内側に第1の赤外線反射膜30Aの外縁が位置するようにフォトリソ工程を用いて保護膜6上にレジストパターンを形成する。その後、第1の赤外線反射膜30Aとして用いる部分以外の不要部分を除去する。続いて赤外線検知用素子21上の第1の赤外線吸収膜40Aおよび温度補償用素子22上に用いる第2の赤外線吸収膜40Bとして用いる銅(Cu)を0.5μm〜5.0μm程度でスパッタ法により保護膜6上に形成する。第1のキャビティ7Aの上の第1の赤外線反射膜30A上に同じか若干大きくなるように第1の赤外線吸収膜40Aの外縁が位置するように、第1のキャビティ7Aの開口領域よりも小さいパターンをフォトリソ工程を用いて保護膜6上に形成する。同時に第2のキャビティ7B上にも第1の赤外線吸収膜40Aと同じサイズの第2の赤外線吸収膜40Bが位置するように、フォトリソ工程を用いて形成する。その後、第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)として用いる部分以外の不要部分を除去する。次に、Cuを酸化処理させることでCu黒膜とすることにより、第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)としての機能をもたせる。すなわち、Cu黒膜は表面には凹凸を持つことで膜表面の赤外線が厚み方向に進行する際に乱反射しながら膜に熱として取り込まれることにより機能する。
さらに温度補償用素子22用の第2の赤外線反射膜30Bを形成するために白金(Pt)を0.01〜0.3μm程度でスパッタ法により第1の主面1A上に形成し、第1の赤外線反射膜30Aと同様の工程にて温度補償用素子22上の保護膜6上の第2の赤外線吸収膜40B上に、メンブレン構造を跨いで第1の赤外線反射膜30Aと同様の工程にてフォトリソ工程を用いてレジストパターンを形成する。温度補償用素子22上の保護膜6上の第2の赤外線吸収膜40B上に、メンブレン構造を跨いで形成することで、第2の赤外線反射膜30Bを、第2のキャビティ7Bの開口領域より大きな面積で温度補償用素子22を覆うように、基板1上まで形成することにより、第2の赤外線反射膜30Bは所望の熱容量を持ち、熱伝導性の良い基板1と熱的に繋がることになる。このため第2の赤外線反射膜30B上で受けた赤外線からの熱は基板1を介して流れることになり、赤外線の影響を温度補償用素子22が受けにくくなる。
次に、基板1の第2の主面1B側にフォトリソグラフィによってエッチングマスクを形成した後、フッ化物系ガスを用いたD−RIE法等の反応性イオンエッチングによって、基板1を第2の主面1Bに対して垂直に深堀し、第1および第2のキャビティ(7A、7B)を開口する。D−RIE法とは、C4F8ガスを用いて反応抑止膜(フルオロカーボン系ポリマー)を第1および第2のキャビティ(7A、7B)の側壁に堆積させることにより、主としてFラジカルによる化学的なサイドエッチングを抑制するためのプラズマデポジション工程と、SF6ガスを用いてFラジカルによる基板1の化学的エッチングとFイオンによる反応抑止膜の物理的エッチングとにより、基板1を略垂直に異方性エッチングするためのプラズマエッチング工程とを交互に繰り返して基板1を深堀する方法である。
実際に、第1実施形態における赤外線温度センサ100を以下の手順で作製した。まず、基板1として、シリコン基板を用意し、その基板表面、すなわち、第1の主面1A上に絶縁膜2としての熱酸化絶縁膜を0.5μm形成した。次に、Pt/Tiをスパッタ法で絶縁膜2上に100nm/5nmで形成し、ドライエッチングで所定の電極形状に加工することで、第1および第2の一対の取出し電極(3A,3B)を形成した。次に、基板温度600℃、成膜圧力0.5Pa、O2/Ar流量比1%、RFパワー400Wのスパッタ条件でMnNiCo系酸化物を第1および第2の一対の取り出し電極(3A,3B)上に0.4μm堆積した。その後、焼成炉を用いてMnNiCo系酸化物膜に大気雰囲気で650℃1時間の熱処理を施し、塩化第二鉄水溶液を用いたウェットエッチングで所定形状(420um×480um)に加工することで、目標抵抗値140kΩ(室温)の第1および第2の感熱膜(4A,4B)を形成した。この時、第1および第2の一対の取出し電極(3A,3B)と第1および第2の感熱膜(4A、4B)が検知領域として機能する部分をメンブレン構造の端から第1および第2の一対の取出し電極(3A,3B)と平行部分、垂直部分とも50μmとした。つまり、最終的に形成される第1および第2のキャビティ(7A、7B)はそれぞれ520um×580umとした。
次に、TEOS−CVD法により0.5μmの保護膜6を形成した。
次に、赤外線検知用素子21用の第1の赤外線反射膜30Aとして白金(Pt)を0.1μmをスパッタ法により第1の主面1A上に形成する。さらに第1のキャビティ7Aの開口領域の外縁の90μm内側に第1の赤外線反射膜30Aの外縁が位置するようにフォトリソ工程を用いて保護膜6上にレジストパターンを形成した。つまり、第1の赤外線反射膜30Aが340μm×400μmとなるように形成する。その後、第1の赤外線反射膜30Aとして用いる部分以外の不要部分を除去した。続いて赤外線検知用素子21上の第1の赤外線吸収膜40Aおよび温度補償用素子22上に用いる第2の赤外線吸収膜40Bとして用いる銅(Cu)をスパッタ法により保護膜6上に3.0μm形成した。第1のキャビティ7Aの上の第1の赤外線反射膜30A上に第1の赤外線吸収膜40Aの外縁が位置するように、第1のキャビティ7Aの開口領域よりも小さいパターンをフォトリソ工程を用いて保護膜6上に形成した。第2のキャビティ7B上にも同じサイズの第2の赤外線吸収膜40Bが位置するように同時にパターンを形成した。その後、第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)として用いる部分以外の不要部分を除去した。Cuを酸化処理させることでCu黒膜とした。温度補償用素子22用の第2の赤外線反射膜30Bを形成するためにリフトオフを用いた。すなわち、メンブレン構造を露出する形でフォトリソ工程を用いてレジストパターンにより開口部を形成した。その後白金(Pt)を0.045μmをスパッタ法により第1の主面1A上に形成し、先に形成したレジストごと不要部のPtを除去した。第1および第2の一対のパッド電極(5A,5B)を配置する部位を除くSiO2膜上にマスクを作成し、第1および第2の一対のパッド電極(5A,5B)を配置する部位にウェットエッチング処理を施し、その後、非マスク領域のSiO2膜を除去することで、開口を形成した。第1および第2の一対のパッド電極(5A,5B)としてのアルミニウム電極をEB蒸着法により1μm形成した。最後に、D−RIE法により基板1を略垂直に深堀し、外部環境に関して熱伝導的に対称な第1および第2のキャビティ(7A、7B)を形成した。なお、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)の面積と膜厚の積は同等である。
(第2実施例)
第2実施形態の赤外線温度センサ200を以下の手順で製造した。温度補償用素子22用の第2の赤外線吸収膜40Bと第2の赤外線反射膜30Bの構成以外は第1の実施例と同様の手順で作製した。但し、実施例2は赤外線検知用素子21用の第1の赤外線反射膜30Aおよび第1の赤外線吸収膜40Aの膜厚とサイズが異なる。第1の赤外線反射膜30Aは膜厚0.07μmの白金(Pt)を第1のキャビティ7Aの開口領域の外縁の45μm内側に形成した。以降の工程は第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)および第1の赤外線反射膜30Aの位置関係が第1および第2のキャビティ(7A、7B)の開口領域の外縁の45μm内側に形成されること以外は第1実施例と同様である。つまり、第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)および第1の赤外線吸収膜40Aが430μm×490μmとなるように形成した。なお、第1実施形態1と同様に、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)の面積と膜厚の積は同等である。
(第3実施例)
第3実施形態の赤外線温度センサ300を以下の手順で製造した。温度補償用素子22用の第2の赤外線吸収膜40Bと第2の赤外線反射膜30Bの構成以外は第1および第2実施例と同様の手順で作製した。
赤外線検知用素子21用の第1の赤外線反射膜30Aとして白金(Pt)を0.1μmをスパッタ法により第1の主面1A上に形成する。さらに第1のキャビティ7Aの開口領域の外縁の所定距離100μm内側に第1の赤外線反射膜30Aの外縁が位置するようにフォトリソ工程を用いて保護膜6上にレジストパターンを形成した。その後、第1の赤外線反射膜30Aとして用いる部分以外の不要部分を除去した。続いて赤外線検知用素子21上の第1の赤外線吸収膜40Aおよび温度補償用素子22上に用いる第2の赤外線吸収膜40Bとして用いる銅(Cu)をスパッタ法により保護膜6上に3.0μm形成した。第1のキャビティ7Aの上の第1の赤外線反射膜30A上に第1の赤外線吸収膜40Aの外縁が位置するように、第1のキャビティ7Aの開口領域よりも小さいパターンをフォトリソ工程を用いて保護膜6上に形成した。第2のキャビティ7B上にも同じサイズの第2の赤外線吸収膜40Bが位置するように同時にパターンを形成した。その後、第2の赤外線吸収膜40B、第2の赤外線反射膜30Bとして用いる部分以外の不要部分を除去し、Cuを酸化処理させることでCu黒膜とした。
次に、温度補償用素子22用の第2の赤外線反射膜30Bを形成するためにリフトオフを用いた。すなわちメンブレン構造を露出する形でフォトリソ工程を用いてレジストパターンにより開口部を形成した。その後白金(Pt)を0.078μmをスパッタ法により第1の主面1A上に形成し、先に形成した、レジストごと不要部のPtを除去した。その際、メンブレン構造上の第2検知領域の外周にメンブレン構造の長辺側に0.05μm×0.41μm、短辺側に0.05μm×0.35μmの四角形状に除去した。すなわち、当該四角形状の開口には第2の赤外線反射膜30Bは存在していないものの、温度補償用素子22上の第2の赤外線反射膜30Bは第2のキャビティ7Bを超えた基板1上まで連続して形成した。なお、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)の面積と膜厚の積は同等である。
(比較例1)
比較形態1の赤外線温度センサ400を以下の手順で製造した。温度補償用素子22用の第2の赤外線反射膜30Bの構成以外は第1の実施例と同様の手順で作製した。第2の赤外線反射膜30Bは膜厚0.1μmの白金(Pt)を第2のキャビティ7Bの開口領域の内側に第2の赤外線吸収膜40B上に第2の赤外線吸収膜40Bと同じ大きさおよび形状で形成した。それ以外は第1実施例と同様である。
(比較例2)
図11、12に示される比較例2の構造について説明する。図11は赤外線温度センサ500の平面図、図12は図11におけるD−D断面図である。比較例2は第1実施形態と比べると、赤外線検知用素子21の赤外線吸収膜40と温度補償用素子22の赤外線反射膜50が単層で構成され、赤外線吸収膜40はメンブレン構造上に形成されており、赤外線反射膜50はメンブレン構造を跨いで基板1上にまで形成されている。赤外線吸収膜40、赤外線反射膜50は実施例1と同じ材料、同じ膜厚とした。
比較例2として図11、12に関わる赤外線温度センサ500を以下の手順で作製した。まず、基板1として、シリコン基板を用意し、その基板表面、すなわち、第1の主面1A上に絶縁膜2として熱酸化(絶縁)膜を0.5μm形成した。次に、Pt/Tiをスパッタ法で絶縁膜2上に形成し、ドライエッチングで所定の電極形状に加工することで、第1および第2の一対の取出し電極(3A、3B)を形成した。
次に、基板温度600℃、成膜圧力0.5Pa、O2/Ar流量比1%、RFパワー400Wのスパッタ条件でMnNiCo系酸化物を第1および第2の一対の取出し電極(3A、3B)上に0.4μm程度で堆積した。その後、焼成炉を用いてMnNiCo系酸化物膜に大気雰囲気で650℃1時間の熱処理を施し、塩化第二鉄水溶液を用いたウェットエッチングで所定形状に加工することで、目標抵抗値140kΩ(室温)の第1および第2の感熱膜(4A、4B)を形成した。
次に、TEOS−CVD法により0.5μm程度の保護膜6を形成した。赤外線吸収膜40としてCu黒膜を第1実施形態と同様の方法により赤外線検知用素子21上にのみ形成した。続いて、赤外線反射膜50としてのPtをスパッタ法により0.045μm程度で形成し、温度補償用素子22の上部およびメンブレン構造を跨いで基板1上まで残すようにフォトリソ工程によりパターン形成を行った。
その後、第1および第2の一対のパッド電極(5A、5B)を配置する部位を除くSiO2膜上にマスクを作成し、第1および第2の一対のパッド電極(5A、5B)を配置する部位を開口してウェットエッチング処理を施し、その後、非マスク領域のSiO2膜を除去することで、開口を形成した。第1および第2の一対のパッド電極(5A、5B)としてのアルミニウム電極をEB蒸着法により1μm程度で形成した。最後に、D−RIE法により基板1を略垂直に深堀し、外部環境に関して熱伝導的に対称な第1および第2のキャビティ(7A、7B)を形成した。
(評価)
第1実施形態から第3実施形態及び比較例2の赤外線温度センサ(100、200、300、500)について、外部からの基板1を通した熱の影響を確認するためにシミュレーションを行った。各々の素子に、ある一定の赤外線が入射すると仮定し、さらに外部から基板1を通して熱が第1および第2検知領域に流入した場合の赤外線応答出力を確認した。
赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の赤外線吸収及び放熱あるいは反射の差により生じる2素子の温度差ひいては抵抗差を検知する。このような抵抗差を利用した検知には、ハーフブリッジ回路もしくはフルブリッジ回路を用いる事が多いが、本実施形態においては赤外線量に相当する電圧を得る部位に、フルブリッジ回路を用いる事が好ましい。
実際のシミュレーションでは赤外線検知用素子21と温度補償用素子22のおのおのの温度変化の差分の時間的変化をモニターすることにより赤外線入射および周囲温度に対する赤外線検知用素子21および温度補償用素子22の動きを確認した。
図14は実施例1と比較例2の比較を示すものである。縦軸は赤外線応答出力を温度換算したものであり横軸は測定時間を示す。赤外線入射量に相当する変化は初期にオーバーシュートした後にある値に収束する。このオーバーシュートは、特に温度補償用素子22において、第2検知領域へ外部から基板1を通して熱が流入することによる熱応答のずれに起因するものであり、特に瞬間的な応答を必要とするような検知を行う場合は問題となる。
図13は温度検知用素子21と温度補償用素子22のそれぞれの出力を、横軸を時間としてプロットしたものである。赤外線の入射および基板1に熱が流れ込むことで、瞬時に出力が上昇し、以降は緩やかに出力が上昇している。この差分をプロットしたものが、図14である。
シミュレーション条件として、初期の温度検知用素子21および温度補償用素子22の温度及び周囲温度を25℃と設定した。温度補償用素子22には、パッケージを介して基板1に熱が流れ込み、第2検知領域に到達すると仮定した。赤外線検知用素子21には、パッケージを介して基板1に熱が流れ込むと同時に一定量の赤外線が入射し、第1検知領域に到達すると仮定した。ここで、基板1に熱が流れ込むとは、一定量の赤外線の入射により基板1が吸収する赤外線により、基板1が加熱されることを仮定したことによる。比較例2のモデルにおいて、基板1からの熱の流れ込みによって、温度補償用素子22のメンブレン構造の温度が0.2℃程度上昇する値に設定し、赤外線の入射によって、赤外線検知用素子21のメンブレン構造の温度が0.4℃程度上昇する値に設定した。基板サイズは1.5mm×1.1mmで厚み0.25mm、基板1には赤外線検知用素子21と温度補償用素子22が配置される。ここで、実施例1〜3および比較例1、2の赤外線検知用素子21と温度補償用素子22とに対応するメンブレン構造のサイズは0.52mm×0.58mmで、第1および第2検知領域は0.35mm×0.41mmと設定した。第1および第2のキャビティ(7A、7B)および基板1上では、絶縁膜2を0.5μm、保護膜6を0.5μmとし、同一材料とみなして合わせて1.0μm、第1および第2の感熱膜(4A、4B)を0.3μmと設定した。また、比較例2の赤外線検知用素子21および温度補償用素子22では、赤外線吸収膜40の厚みは3.0μm、赤外線反射膜50の厚みは0.045μmと設定した。実施例1〜3および比較例2の温度補償用素子22の赤外線反射膜(30B、50)のサイズはメンブレン構造サイズより各辺30μm大きくなるように形成した。つまり、赤外線反射膜(30B、50)はメンブレン構造を跨ぎ、基板1上にまで形成した。実施例1の赤外線検知用素子21では、第1の赤外線吸収膜40Aの厚みは3.0μm、第1の赤外線反射膜30Aの厚みは0.1μm、温度補償用素子22では、第2の赤外線吸収膜40Bの厚みは3.0μm、第2の赤外線反射膜30Bの厚みは0.045μmとして、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の第1および第2の赤外線反射膜(30A,30B)の面積と膜厚の積が等しくなるように設定した。同様に、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の第1および第2の赤外線吸収膜(40A,40B)の面積と膜厚の積が等しくなるように設定した。実施例2,3についても同様であり、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の第1および第2の赤外線反射膜(30A,30B)の面積と膜厚の積が等しくなるように設定した。同様に、第1および第2のキャビティ(7A、7B)上の赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の第1および第2の赤外線吸収膜(40A,40B)の面積と膜厚の積が等しくなるように設定した。
図15は、以上の条件で、赤外線検知用素子21と温度補償用素子22の温度差を確認した結果をまとめたもので、比較例2ではピーク温度が0.40℃、実施例1では0.27℃とピーク自体が小さくなった。時間経過によって安定した時点での温度は、比較例2と実施例1ともに0.23℃となり、オーバーシュートに相当する温度はそれぞれ0.17℃、0.04℃と実施例の効果を確認できた。応答速度に関してはピーク到達温度は45msec.で同等の結果であった。なお比較例1では赤外線出力として算出可能な温度差は微弱であった。これは、第1および第2の赤外線反射膜(30A、30B)および第1および第2の赤外線吸収膜(40A、40B)の熱容量が概ね等しいので赤外線検知用素子21と温度補償用素子22間で応答時間に差が生じなかったこと、さらに、温度補償用素子22上の第2の赤外線反射膜30Bが吸収した赤外線を基板1側に放出できなかったことによるものと考えられる。
図15は第1から第3の実施形態と比較例2の結果まとめたものである。いずれも従来例と比較してオーバーシュートが抑制されていることを確認した。また、実施例2では、安定温度が0.02度高く、感度が高いことが分かる。ここで、比較例2の最大誤差は、0.17/0.23であるから、74%、実施例1から3では、それぞれ、17%、20%、22%であり、オーバーシュートによる誤差分を1/3以下に低減できていることが分かる。
以上のことから、第1実施形態から第3実施形態は、比較例2の構成よりも温度バランスがよく初期応答時に周囲温度の変化の影響を受けにくい赤外線温度センサであることを示している。つまり、初期応答時の初期応答時のオーバーシュート量が低減された赤外線温度センサ(100、200、300)が得られる。また、測定開始時刻は不定のため、初期応答時のオーバーシュート量が低減されることで、結果として測定誤差を低減することも可能となることが分かった。
本発明に係わる赤外線温度センサは、熱源の温度を非接触測定する様々な用途に利用できる。
10 感熱素子
1 基板
1A 基板の第1の主面
1B 基板の第2の主面
2 絶縁膜
3、3A、3B 一対の取出し電極
4、4A、4B 感熱膜
5、5A、5B 一対のパッド電極
6 保護膜
7、7A、7B キャビティ
21 赤外線検知用素子(第1感熱素子)
22 温度補償用素子(第2感熱素子)
30A 赤外線反射膜
30B 赤外線反射膜
40 赤外線吸収膜
40A 赤外線吸収膜
40B 赤外線吸収膜
50 赤外線反射膜
100、200、300、400、500 赤外線温度センサ

Claims (3)

  1. 基板と、
    非接触で赤外線からの熱に応じた温度変化に対応して抵抗値が変化する第1感熱素子及び赤外線の影響が低減され周囲温度からの熱に応じた温度変化に対応して抵抗値が変化する第2感熱素子を有し、
    前記基板内部に形成された第1および第2のキャビティおよび前記基板上に前記第1感熱素子及び前記第2感熱素子がそれぞれ配置され、
    前記第1感熱素子が備える一対の第1の電極と第1の検知膜とで構成された第1検知領域上に、第1の赤外線反射膜と第1の赤外線吸収膜とがこの順に積層され、
    前記第2感熱素子が備える一対の第2の電極と第2の検知膜とで構成された第2検知領域上に、第2の赤外線吸収膜と第2の赤外線反射膜とがこの順に積層され、
    前記第1の赤外線吸収膜および前記第1の赤外線反射膜の端部と、第2の赤外線吸収膜の端部とはそれぞれ前記第1および第2のキャビティ上に形成され、
    前記第2の赤外線反射膜は、前記第2の赤外線吸収膜と前記第2の赤外線反射膜との積層方向と直交する方向において、前記第2のキャビティを超えた前記基板上まで形成され、
    前記第1および第2の赤外線吸収膜は同じ材料で形成され、
    前記第1および第2の赤外線反射膜は同じ材料で形成され、
    前記第1および第2の赤外線吸収膜はおおむね同じ面積と膜厚で形成され、
    前記第1のキャビティ上の前記第1の赤外線反射膜の面積と膜厚の積と、前記第2のキャビティ上の前記第2の赤外線反射膜の面積と膜厚の積とがおおむね等しいことを特徴とする赤外線温度センサ。
  2. 前記第1赤外線吸収膜を前記第1の赤外線反射膜と前記第1の赤外線吸収膜との積
    層方向に射影した領域は前記第1検知領域を全て含み、
    前記第2赤外線吸収膜を前記第2の赤外線吸収膜と前記第2の赤外線反射膜との積層方向に射影した領域は前記第2検知領域を全て含む請求項1に記載の赤外線温度センサ。
  3. 前記第2の赤外線反射膜は、前記第2の赤外線吸収膜を被覆するとともに、前記第2の赤外線吸収膜の外側に開口部を有する請求項1または2に記載の赤外線温度センサ。
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