以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、以下の実施の形態において、作業エリアとは、タスク照明装置により照射される領域、周辺部とは、作業エリアの周辺でありタスク照明装置及びアンビエント照明装置により照射される領域(空間)である。また、以下の実施の形態では、「配光」について照射範囲により検討しているが、照射範囲に限らず角度(いわゆる「配光角」)により検討してもよい。
(実施の形態1)
はじめに、実施の形態1について説明する。
図1は、実施の形態1に係る照明システム100の構成を示す概略図であり、(a)は照明システムの側面図、(b)はタスク照明装置の上方からみた平面図である。
図1の(a)に示すように、照明システム100は、天井に設置されたアンビエント照明装置101と、作業机105の上に設置されたタスク照明装置102とを備えている。また、照明システム100は、図1の(a)及び(b)に示すように、タスク照明装置102の上方に照明状態検出センサ103を備えている。
タスク照明装置102の発光部は、信号線117(図2参照)を内包する可動可能なアーム106の一端に取り付けられており、アーム106の他端は支持体107に接続されている。支持体107は、制御部104を内包しており、光出力調整用つまみ108により出射光量の調節をすることが可能である。支持体107は、作業机105の上に配置されており、タスク照明装置102による照明は、作業机105の上面の一部を照らしている。なお、制御部104は、タスク照明装置102との出射光量を自動で制御する構成であってもよい。また、制御部104は、支持体107の外部に設けられていてもよい。この構成によれば、アンビエント照明装置101とタスク照明装置102との光色が大きく異なることによるエッジでの大きな色差を低減し、使用者の違和感による不快感を低減することができる。したがって、使用者の集中度を高め知的生産性を向上することができる。なお、エッジとは、タスク照明の照射範囲が認識できる領域の端であり、一般的に照射範囲は中心輝度に対して、1/10輝度となる領域としている。
図2は、タスク照明装置102の構成を示す概略図であり、(a)は下面図、(b)は(a)のAA’線における断面図を示している。
図2の(a)に示すように、タスク照明装置102の発光部は、下側筐体118と上側筐体119に分離できる構成である。上側筐体119には、固体発光素子111と、回路基板112と、拡散パネル113と、光学部材(筒)114と、スペーサー115と、ねじ部116a及び116bと、信号線117とを備えている。また、図2の(b)に示すように、下側筐体118は、ねじ部116bを貫通するためのねじ穴116を有している。
固体発光素子111は、回路基板112に実装されている。また、スペーサー115と対向する面の上方には拡散パネル113が配置されている。拡散パネル113の光の出射側には、配光を制御するための筒状の光学部材(筒)114が配置されている。
光学部材(筒)114は、アルミニウムを基材として内外面が白色塗装され、内面において光が拡散反射するように構成されている。光学部材(筒)114は、下側筐体118に溶接されており、下側筐体118は上側筐体119とねじ部116a及び116bを使って勘合されている。光学部材(筒)114にはテーパーが設けられ、図2に示したように、発光面側の径(w1)が照射面側の径(w2)よりも大きく(例えば、本実施の形態では、w1は67mm、w2は72mm)することにより、発光面への戻り光を低減している。これにより、タスク照明装置202からの出射効率を向上することができる。
また、信号線117は、アーム106内に配置され、制御部104へとつながっている。
ここで、本実施の形態に係る照明システムを実現するため、光色、照度比、光色比、配光の集中力や空間評価への影響を把握するために行った主観評価実験の結果について説明する。
実験を行った実験の概要は以下のとおりである。
被験者は、30名であった。
被験者は、1分間タスク(伝票分類)をした後、その印象を主観的に評価した。評価項目としては、(1)読みやすさ、(2)作業面、(3)空間全体、を評価対象とした。
読みやすさは、机上の紙面文字、または、PC画面文字の読みやすさを評価した。
作業面では、集中度、仕事のはかどり、目の疲労感、明るさ、快適、光環境に対する好き嫌いを評価対象とした。
空間全体については、雰囲気の自然さ、話しやすさ、快適、集中、明るさ、快適、好き嫌いを評価対象とした。
実験パラメータとしては、作業面中心照度を750lx一定として、タスク照明の光色、タスク照明の照度、ベース照明の光色、ベース照明の照度、タスク照明の配光についてそれぞれ異なる条件を用意し、それらの組み合わせにより、全19の条件の下で評価実験を行った。
タスク照明の光色の条件としては、読光色である5000K及び6000Kの2種類の条件とした。
ベース照明の光色としては、3000K、5000K、6700Kの3種類の条件とした。なお、一部については4200Kの条件も加えた。
ベース照明の照度については、300lx、750lxの2種類の条件とした。このとき、作業面(作業エリア)は750lxに一定となるようにした。すなわち、ベース照度が300lxとは、アンビエント照明による照度が300lxでタスク照明による照度が450lxの場合である。ベース照度が750lxとは、アンビエント照明による照度が750lxでありタスク照明による照度が0lxの場合である。ベース照度が無(0lx)とは、アンビエント照明による照度が無(0lx)でタスク照明による照度が750lxの場合である。
タスク照明の配光は、狭角すなわちA3の用紙程度の範囲を照射する配光とした。また、タスク照明の広角は、机一面を照射する角度とした。
以上の条件により行った実験結果は、光環境、特に、タスク照明とアンビエント照明との色温度の相違による(1)集中しやすさ、(2)快適さ、(3)自然さによりまとめた。図3A〜図3Cにその結果を示す。
図3Aは、ベース照度に対する集中しやすさを示す図である。
図3Aは、タスク照明が狭配光で、机上面中心の照度を750lxの一定としている。色温度については、ベース照明(すなわち、アンビエント照明)の色温度を3000、4200、5000、6700K、ベース照明無しの5種類、タスク色温度については、5000、6000、タスク照明無しの3種類についてそれぞれ評価項目『集中しやすい』について評価している。評価結果は7段階評価とし、縦軸に被験者30名の平均値を示している。横軸には、(i)タスク照明の色温度5000Kでの、アンビエント照明300lx及びタスク照明450lxでの結果、タスク照明750lxでの結果、(ii)タスク照明の色温度6000Kでの、アンビエント照明300lx及びタスク照明450lxでの結果、タスク照明750lxでの結果、(iii)タスク照明が無く、アンビエント照明750lxでの結果、評価結果を示している。
上記結果から、タスク照明がある場合のほうが、タスク照明がない場合に比較して、被験者の『集中しやすい』という評価結果が高いことが分かる。また、タスク照明の色温度としては、6000Kのほうが5000Kよりも評価結果が高いことが分かる。さらに、タスク照明の光色とアンビエント照明の光色とが近いほうが好ましく、タスク照明の色温度6000Kと5000Kのいずれについても、アンビエント照明の色温度が3000Kの場合には他の光色よりも『集中しやすい』という評価結果が低くなっている。特に、タスク照明の色温度とアンビエント照明の色温度とに2000Kより大きな色温度差がある場合は、評価が低くなっていることが分かる。
すなわち、被験者が『集中しやすい』光環境とは、タスク照明とアンビエント照明を併用し、タスク照明の色温度のほうがアンビエント照明の色温度よりも高く、タスク照明の色温度とアンビエント照明の色温度との色温度差が2000K以内であることが好ましいことが分かる。
図3Bは、ベース照度に対する光環境の快適さを示す図である。図3Cは、ベース照度に対する光環境の自然さを示す図である。
図3Bは、上記した集中しやすさの評価実験の実験条件において評価項目『快適な』の7段階評価結果、図3Cは、同上の実験において評価項目『自然な』の7段階評価結果を示す。また、図3B及び図3Cのいずれにおいても、タスク照明は狭配光であり、かつ、机上面の照度が750lxに一定となるようにアンビエント照明とタスク照明との照度が設定されている。
図3B及び図3Cに示すように、アンビエント照明のみの場合(すなわち、タスク色温度「無」の場合)に、光環境の快適さ及び自然さのいずれについても高い評価が得られている。つまり、光環境が快適である又は自然であるという評価が得られている。
また、タスク照明のみの場合(すなわち、タスク色温度5000K及び6000Kのそれぞれにおけるベース照度750lxの場合)に、光環境の快適さ及び自然さのいずれについても低い評価が得られている。つまり、光環境が快適でない又は自然でないという評価が得られている。
さらに、アンビエント照明とタスク照明とが併用される場合(すなわち、タスク色温度5000K及び6000Kのそれぞれにおけるベース照度300lxの場合)には、色温度により評価に差が現れている。この場合、タスク照明装置による照明とアンビエント照明装置による照明の光色が近い方が高い評価が得られている。つまり、ベース照度が300lx(このとき、タスク色温度は450lx)の場合に、光環境の快適さ及び自然さのいずれについても高い評価が得られている。
以上より、タスク照明が狭配光で机上面照度を750lx一定とした場合、違和感を与えること無く快適で、集中度を向上させる光環境としては、タスク照明とアンビエント照明を併用することが好ましいことが分かる。また、タスク照明とアンビエント照明との色温度差が近い方がよく、例えば、色温度差を2000K未満とすることが好ましいことが分かる。
次に、照明システム100の光色(色温度)の調整動作について説明する。
図4は、照明システム100の光色の調整の動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、はじめに、タスク照明装置102の上に配置された照明状態検出センサ103により、アンビエント照明装置101から照射される光の光色、すなわち、アンビエント色温度Aを検出する(ステップS10)。また、タスク照明装置102から照射される光の光色、すなわち、タスク色温度Tも検出される。
このとき、タスク色温度Tとアンビエント色温度Aとの差が2000Kより小さいときは(ステップS12においてNo)、照明状態検出センサ103は、アンビエント照明装置101から照射される光の光色を再度検出する(ステップS10)。また、タスク色温度Tとアンビエント色温度Aとの差が2000K以上であるときには(ステップS12においてYes)、制御部104は、タスク照明装置102によるタスク色温度Tの温度を1000K下げる制御を行う(ステップS14)。これにより、照明システム100において、アンビエント照明装置101とタスク照明装置102との光色が大きく異なることによるエッジでの大きな色差低減し、使用者の違和感による不快感を低減することができる。したがって、使用者の集中度を高め知的生産性を向上することができる。
ここで、タスク色温度Tの温度の変更を行うための、タスク照明装置102の固体発光素子111の構成について説明する。
図5Aは、タスク照明装置102の固体発光素子111の構成の一例を示す概略図である。図5Aに示すように、固体発光素子111では、基板上に複数のLED素子が配置され、LED素子の出力比率を調整することにより、タスク照明の光色を調整する。
複数のLED素子には、例えば、色温度4600Kの白色の第1のLED素子111aと、白色の色温度6700Kの第2のLED素子111bとの2種類の白色のLED素子で構成されている。
この構成によれば、タスク色温度Tを下げるときには、第1のLED素子111aのみを用い、タスク色温度Tを上げるときには、第2のLED素子111b、または、第1のLED素子111aと第2のLED素子111bとを組み合わせて、タスク照明装置102から照射される光の光色を調整することができる。
なお、アンビエント色温度Aが3000K以上の場合、LED素子は、5000Kと6700Kの白色LEDの組み合わせでもよい。また、LED素子は上記した白色に限らず、例えば、色温度4600Kである白色の第1のLED素子111aと、青緑色の単色の第2のLED素子111bとしてもよい。この構成によれば、2種類の白色のLED素子を用いる場合より、色みの強いLEDを用いることでLED素子の数を低減することができる。
図5Bは、タスク照明装置102の固体発光素子111の構成の他の例を示す概略図である。図5Bに示すように、固体発光素子111は、色温度4600Kの白色の複数の第1のLED素子111aと、フィルター111cとを組み合わせた構成であってもよい。この構成によれば、複数の第1のLED素子111aの一部または全部をフィルター111cで覆うことにより、固体発光素子111から照射される光の光色を調整することができる。
なお、フィルター111cの色素濃度を、固体発光素子111の中心からの放射線の角度ごとに微増させると、タスク照明の色温度の変化量を微量ずつに調整することができる。したがって、使用者に急激な光色変化による不快感を与えることなく、光色の調整を行うことができる。
以上、本実施の形態に係る照明システム100によると、アンビエント照明装置101とタスク照明装置102との光色(色温度)を調整して、アンビエント照明装置101とタスク照明装置102との光色が大きく異なることによるエッジでの色差を低減し、使用者の違和感による不快感を低減することができる。したがって、使用者の集中度を高め知的生産性を向上することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
本実施の形態に係る照明システムが実施の形態1に係る照明システムと異なる点は、照明システムが配光を調整する点である。アンビエント照明装置101とタスク照明装置102との光色が大きく異なることによるエッジでの色差を低減し、使用者の違和感による不快感を低減することができる。したがって、使用者の集中度を高め知的生産性を向上することができる。
以下、図面を用いて本実施の形態に係る照明システム200について説明する。なお、実施の形態1に係る照明システム100と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
図6は、本実施の形態に係る照明システム200の構成を示す概略図であり、(a)は照明システムの側面図、(b)は照明システムをタスク照明装置の上方から見た平面図である。
図6の(a)に示すように、照明システム200は、アンビエント照明装置101と、作業机105の上に設置されたタスク照明装置202とを備えている。また、照明システム200は、図6の(a)及び(b)に示すように、タスク照明装置202の上方に照明状態検出センサ203を備えている。なお、タスク照明装置202の発光部の構成は、図2に示したタスク照明装置102の構成については、後に詳述する。
タスク照明装置202による照明範囲、すなわち、作業エリアは、図6の(b)に示すように、作業机105の上面の一部である。タスク照明装置202の照明範囲は、変更することが可能である。例えば、狭範囲の照射(狭角配光)の場合には、照射中心位置から長軸方向の長さが500mm未満の範囲が照射領域となる。また、広範囲の照射(広角配光)の場合には、照射中心位置から長軸方向の長さが500mm以上1000mm以下の範囲が照射領域となる。ここで、「長軸方向の長さ」とは、真円の場合は直径、楕円の場合は最も長い径をいう。タスク照明装置202の照射範囲は、発光部の下(発光面)に光学部材(筒)214を設けることにより、狭くすることができる。
図7は、タスク照明装置202の照射範囲でのAA’面での光学部材(筒)14の有無による輝度分布を示している。図7において、横軸は中心からの距離、縦軸は輝度を示している。図7に示すように、光学部材(筒)214がある状態(筒有り)では、測定可能範囲(−300mm〜300mm)内で輝度が大きく変化する部分が見られる。したがって、照射輝度の違いにより、観察者には照射範囲のエッジ感が認められる。
ここで、上記のように構成されたタスク照明装置202において、本発明者らは集中度を向上させる照明手法として、作業机105の面の上での照射範囲のエッジに着目した。
先ず、本発明者らはタスク照明装置202の光学部材(筒)214の有無により、作業机105の面の上に照射範囲のエッジが認識できる照明状態と、ほぼ均一に照明され照射パターンのエッジが作業机105の面の上では認識できない状態で主観評価実験を実施し、エッジが認識できる照明環境ほど集中度、快適性及び自然性が高いことを見出した。図8A〜図8Cに実験結果を示す。主観評価実験は、タスク&アンビエント照明手法を用い、照射面中心照度が750lx一定で、タスク照明による照射パターン2水準、アンビエント、タスク照度レベル3水準、アンビエント光色4水準、タスク光色2水準を含む19条件で、文字の読みやすさ、机上面での評価および照明環境の評価を『集中しやすい』、『快適な』、『自然な』を評価項目として、それぞれ7段階評価を実施した。
なお、実験は、全水準の組み合わせを網羅したものではなく、着眼ポイントを包括する範囲とした。今回の一つの着眼ポイントである照射範囲のエッジに関する条件としては、アンビエント照明:タスク照明の照射面中心照度を300lx:450lxとし、アンビエント照明とタスク照明の光色は同一の5000Kとした。図7では、光出力を調整していない状態での輝度分布を示しているが、実験時は中心輝度いわゆる照度が同等レベルとなるように調整して実施した。実験を行った照射パターン2水準は、照射範囲のエッジを認識でき、A3サイズの用紙(サイズが297×420mm)が内包される、直径500mmの照射パターン(i)と、600×1200mmの机上面上では照射範囲が明確に認識できない照射パターン(ii)とを条件とした。なお、被験者は20〜30代、40代、50〜60代をそれぞれ10名ずつ含む計30名とした。
また実験手順として、先ず5分間アンビエント照明のみの基本順応後、照明条件を変えて1分間順応後、被験者に1分間の視作業をさせ、主観評価を行ってもらった。2回目以降の主観評価の場合、照明条件を変えて1分間順応後、被験者に1分間の視作業をさせ、主観評価を繰り返してもらった。
図8A〜図8Cは、主観評価実験の実験結果を示している。図8A〜図8Cにおいて、「作業領域」は上記した筒有りの場合の照射パターン(i)、「机上面全体」は上記した筒無しの場合の照射パターン(ii)を示す。また、照射パターン(i)および(ii)での『集中しやすい』、『快適な』、『自然な』を評価項目とした7段階評価の評価結果の平均値を示しており、付随する線は標準誤差を示している。
上記実験結果より、照射面のエッジが認識できる照射パターンの方が集中しやすく、快適かつ自然であることが分かる。一般的に、オフィスなどで使用される机の横幅は1100mmである。また、JISC8112蛍光灯卓上スタンド(勉強・読書)の規格書には、遮光性確認位置として、照射面中心から600mm、机上面からの目線の高さ400mmが基準として記載されている。そこで、視点を前記基準とした場合、普段、人が集中しているときの視野角は約46度、物を識別できる最小視野角は約60度といわれている。
今回の照射パターン(i)の作業エリアの長軸方向の長さ(直径)500mmの視野角は約38度であり、人が集中しているときの視野角内となる。また、視野角60度の場合、照射小パターンの直径は840mmとなり、ほぼ新聞紙サイズとなることから、A3サイズから新聞紙サイズ、いわゆる直径パターン420から840mmまでが集光範囲としては好ましい。また、机上面全体を照らしたいという要望もあることから、1000mmの集光範囲が上限としては好ましい。
以上の点から、上記した長軸方向の長さ500mm未満を狭角配光、500mm以上1000mm以下を広角配光として、照明システム200の配光を狭角配光または広角配光に調整する制御を行うのがよい。この構成によれば、ユーザーが集中しやすく、快適かつ自然な照明環境を実現することができる。
ここで、照明システム200の配光の調整動作について説明する。
図9は、照明システム200の配光の調整の動作を示すフローチャートである。使用者が違和感を認識する色温度差は2000K以上であるので、色温度差が2000Kに近くなったとき、例えば、色温度差が2000K以上、好ましくは、1700K以上となった場合に作業エリアの配光を変化させるように設定するのがよい。以下、色温度差が1700Kとなったときに配光の調整を行う動作について説明する。
図9に示すように、はじめに、タスク照明装置202の上に配置された照明状態検出センサ203により、アンビエント照明装置101から照射される光の光色、すなわち、アンビエント色温度Aを検出する(ステップS20)。また、タスク照明装置202から照射される光の光色、すなわち、タスク色温度Tも検出される。
このとき、タスク色温度Tとアンビエント色温度Aとの差が1700Kより小さいときは(ステップS22においてNo)、照明状態検出センサ203は、アンビエント照明装置101から照射される光の光色を再度検出する(ステップS20)。また、タスク色温度Tとアンビエント色温度Aとの差が1700K以上であるときには(ステップS22においてYes)、制御部204は、タスク照明装置202の配光を広げる制御を行う(ステップS24)。これにより、照明システム200において、アンビエント照明装置101とタスク照明装置202との光色が大きく異なることによるエッジでの大きな色差を低減し、使用者の違和感による不快感を低減することができる。したがって、使用者の集中度を高め知的生産性を向上することができる。
なお、上記配光の調整動作に併せて、実施の形態1に示したような、作業エリアの色温度を調整する動作を行ってもよい。これにより、アンビエント照明装置101とタスク照明装置202との光色が大きく異なることによるエッジでの大きな色差をより低減し、使用者の違和感による不快感を低減することができる。
次に、タスク照明装置202において配光を広げる手法を説明する。タスク照明装置202の配光を広げる手法は、(1)固体発光素子(LED素子)の点灯を制御する手法、(2)光学部材(筒)214による手法、(3)固体発光素子の移動および鏡面反射材による手法、の3つの手法がある。以下それぞれの手法について説明する。
はじめに、(1)の固体発光素子211の点灯を制御する手法について説明する。図10は、本手法に係るタスク照明装置202aの発光部の構成の一例を示す図であり、(a)は下面図、(b)は(a)のBB’線における断面図である。
図10の(a)に示すように、タスク照明装置202aの発光部は、固体発光素子211として、中央付近に配置されたLED素子211aと、LED素子211aを囲むように配置されたLED素子211bとを備えている。
ここで、タスク照明装置202aの配光を広げる場合には、制御部204は、LED素子211aとLED素子211bの両方を点灯する制御を行う。この場合、制御部204は、タスク照明のエッジ部分を強調するために、発光部の中央付近に配置されたLED素子211bを減光する制御を行ってもよい。
また、タスク照明装置202aの配光を狭くする場合には、制御部204は、LED素子211bを消灯し、LED素子211aを点灯する制御を行う。
これにより、タスク照明装置202aにおいて配光を制御することができる。
次に、(2)の光学部材(筒)214による方法について説明する。
本実施の形態に係るタスク照明装置202bは、固体発光面(発光部)に光学部材(筒)214を備える。この光学部材(筒)214は、アルミニウムを基材として内外面が白色塗装され、内面において光が拡散反射するように構成されている。従来、光源である電球および蛍光ランプは180度以上の配光角を有するため、光学部材(筒)214との配置関係において、光源への戻り光を低減させる必要があり、放物曲線の焦点に光源を配置し、かつ内面を鏡面反射材とする場合が主流であった。一方、固体発光素子211を用いた平面光源は、ランバーシャン配光を有し、180度以下の配光角となる。そのため、光学部材(筒)214との配置関係において、発光面に光学部材(筒)214の端面を取り付けることが可能である。したがって、照射光のうち発光面への戻り光が少なく、かつ内面を拡散反射材とすることにより多重反射により均斉度の高い照射パターンとなる。さらに、内面が拡散反射材であるため鏡面反射材よりも光学部材内面による眩しさ(グレア)を制限できる。効率を重視すると、光学部材(筒)214は、鏡面反射材が好ましいが、鏡面反射材とすることにより、光源の輝度ムラが照射面に反映され、照射面上で輝度ムラが認識でき、さらに光学部材(筒)214の内面による眩しさにより、視作業に大きな支障を与える。
さらに、上記光学部材(筒)214において、光学部材(筒)214にテーパーを設け、図2に示したように、発光面側の径(w1)が照射面側の径(w2)よりも大きく(例えば、本実施の形態では、w1は67mm、w2は72mm)することにより、発光面への戻り光を低減している。これにより、タスク照明装置202からの出射効率を向上することができる。
図11A〜図11Cは、本手法に係るタスク照明装置の構成の例を示す図である。
図11Aに示すタスク照明装置202bでは、光学部材(筒)214は、外面にねじ構造214aを有しており、発光部の下側筐体118の内面に設けられたねじ構造214bとねじ止めされる構成をしている。したがって、ユーザーが光学部材(筒)214を回すことにより、光学部材(筒)214を発光部の下側筐体118から出し入れすることができる。これにより、タスク照明装置202bの配光を調整することができる。
具体的には、光学部材(筒)214を発光部の下側筐体118から出すことにより、光源である固体発光素子211と光学部材(筒)214の下端との距離が大きくなるため、発光部の中央付近から外側へ拡散しようとする光が光学部材(筒)214により遮られ、タスク照明装置202bの配光を狭くすることができる。
また、光学部材(筒)214を発光部の下側筐体118に入れることで、根源である固体発光素子211と光学部材(筒)214の下側との距離が小さくなるため、発光部の中央付近から外側へ拡散しようとする光が光学部材(筒)214により遮られることなく、タスク照明装置202bの配光を広くすることができる。
これにより、タスク照明のエッジ、すなわち、アンビエント照明とタスク照明との境界を強調したい場合には、光学部材(筒)214を下側筐体118から出し、タスク照明のエッジを緩やかにしたい場合には、光学部材(筒)214を下側筐体118に入れることで、所望の照明環境を実現することができる。
なお、光学部材(筒)214を発光部の下側筐体118から出し入れすることは、ユーザーが手動で行ってもよいし、モーターにより自動で行ってもよい。図11B及び図11Cは、光学部材(筒)214をモーターにより発光部の下側筐体118から出す場合及び下側筐体118に入れる場合のタスク照明装置202cの構成を示している。
図11B及び図11Cに示すように、タスク照明装置202cにおいて、発光部にはモーター215が配置されている。モーター215は、制御部204により制御される。タスク照明の配光を狭くしたい場合には、制御部204は、図11Bに示すように、光学部材(筒)214を発光部の下側筐体118から出すようにモーター215を制御する。タスク照明の配光を広くしたい場合には、制御部204は、図11Cに示すように、光学部材(筒)214を発光部の下側筐体118に入れるようにモーター215を制御する。
これにより、照明状態検出センサ203で検出されたアンビエント照明及びタスク照明の色温度に基づいて、タスク照明の配光を制御することができる。よって、アンビエント照明装置10とタスク照明装置20との光色が大きく異なることによる強いエッジ感を低減し、使用者の違和感による不快感を低減することができる。したがって、使用者の集中度を高め知的生産性を向上することができる。
次に、(3)の固体発光素子の移動および鏡面反射材による手法について説明する。
図12A及び図12Bは、固体発光素子の移動による配光の制御を行うためのタスク照明装置の構成を示す断面図である。
図12A及び図12Bに示すように、タスク照明装置202dの下側筐体118の内部には、固体発光素子211が配置された位置を囲むように、テーパーを有する筒状の反射材、好ましくは鏡面反射材216が配置されている。
また、上記したタスク照明装置202cと同様、図12A及び図12Bに示すように、タスク照明装置202dにおいて発光部にはモーター215が配置されている。モーター215は、制御部204により制御される。
タスク照明の配光を狭くしたい場合には、制御部204は、図12Aに示すように、固体発光素子211を発光部の下側筐体118の上側筐体119の奥に移動する制御を行う。これにより、光源である固体発光素子211と発光部の下側筐体118の下端との距離が大きくなるため、発光部の中央付近から外側へ拡散しようとする光が下側筐体118により遮られ、タスク照明装置202dの配光を狭くすることができる。
また、タスク照明の配光を広くしたい場合には、制御部204は、図12Bに示すように、固体発光素子211を発光部の下側筐体118の開口付近まで移動するように制御する。これにより、光源である固体発光素子211と発光部の下側筐体118の下端との距離が小さくなるため、発光部の中央付近から外側へ拡散しようとする光が下側筐体118により遮られることなく、タスク照明装置202dの配光を広くすることができる。
これにより、タスク照明のエッジ、すなわち、アンビエント照明とタスク照明との境界を強調したい場合には、固体発光素子211を下側筐体118の奥に移動させ、タスク照明のエッジを緩やかにしたい場合には、固体発光素子211を下側筐体118の下端付近に移動することで、所望の照明環境を実現することができる。
したがって、照明状態検出センサ203で検出されたアンビエント照明及びタスク照明の色温度に基づいて、タスク照明の配光を制御することができる。よって、アンビエント照明装置とタスク照明装置との光色が大きく異なることによるエッジでの大きな色差を低減し、使用者の違和感による不快感を低減することができる。したがって、使用者の集中度を高め知的生産性を向上することができる。
図13は、拡散反射材と鏡面反射材とを用いたタスク照明装置の構成を示す概略図である。図13に示すタスク照明装置202eは、拡散反射材240aと鏡面反射材240bとで構成される光学部材(筒)240を備えている。
すなわち、拡散反射材240a内での多重反射による効率低下の改善および照射範囲のエッジ感を高めるため、図13では、光学部材(筒)240は、内面に拡散反射材240aが設けられ、さらに内面の一部に鏡面反射材240bが設けられている。この構成によれば、固体発光素子211から照射され光学部材(筒)240の内部で拡散された光が鏡面反射材240bで反射され、照射面側に出力される。したがって、固体発光素子211から照射された光を効率よく出力することができる。
図14では、光学部材(筒)240の高さhを30mm、照射面側からの鏡面反射材取り付け位置pを15mmとした場合の鏡面反射材240bの幅tと照射面の中心輝度レベルとの関係を示す。
光学部材(筒)240が無い場合は配光が広いため、中心輝度は約25cd/m2である。内面が拡散反射材240aで仕上げられている光学部材(筒)214は、中心輝度は約33cd/m2である。内面が拡散反射材240aと一部鏡面反射材240bとで構成されている光学部材(筒)214において、鏡面反射材240bの幅tが3mmの場合では中心輝度は約33cd/m2、鏡面反射材240bの幅tが6mmの場合では中心輝度は約36cd/m2、鏡面反射材240bの幅tが10mmの場合では中心輝度は約35cd/m2となっているのが分かる。したがって、鏡面反射材240bの幅tが3mmから10mmで、かつ、鏡面反射材240bの幅tの光学部材(筒)240の高さhに対する比(t/h)が1/10以上1/3以下に設定すると、適当な中心輝度レベルを得ることができる。
また、図15A〜図15Eは、光学部材(筒)240の高さhを30mm、鏡面反射材240bの幅tを6mmとし、図13に示す光学部材(筒)240の照射面側の端面からの鏡面反射材240bの取り付け位置pを変えた場合の、図13に示す断面での輝度分布を示している。図15A〜図15Eにおいて、横軸は輝度中心からの測定距離、縦軸は輝度を示している。図15Aは取り付け位置pを0mmとした場合、図15Bは取り付け位置pを9mmとした場合、図15Cは取り付け位置pを12mmとした場合、図15Dは取り付け位置pを15mmとした場合、図15Eは取り付け位置pを18mmとした場合の実測結果を示す。
鏡面反射材240bを取り付けることにより、照射面エッジの周辺と輝度中心を含む照射面エッジ内との輝度レベルの差が大きくなっていることが分かる。図15A及び図15Bでは、照射面エッジ内の輝度中心付近に輝度が低下する部分(いわゆる、中落ち部分)が見られ、輝度ムラが認められる。これに対し、図15C、図15D及び図15Eでは、照射面エッジ内に大きな輝度差がなく、ほぼ均一な輝度レベルと認められる。そのため、鏡面反射材240bの取り付け位置pとして、12mm以上が良好で、さらに12〜18mmが好ましい領域となる。
なお、タスク照明装置202の配光を広げる手法は、上記した手法に限定されるものではなく、他の手法であってもよい。
例えば、図16の(a)〜(c)に示すタスク照明装置302のように、下側筐体318の一部に凹面321aを設けることにより、光学部材(筒)314の突起部321bを凹面321aに勘合させ、光学部材(筒)314の従来照明器具への着脱を可能とする。このことにより、従来のような広角配光と狭角配光との切り替えが可能となり、集中力を要する場合とそれ以外において配光切り替えが可能となる。
また、図17の(a)〜(d)に示すタスク照明装置402のように、下側筐体418にスライド口422aを設けることにより、発光部材(筒)414の収納を可能としてもよい。なお、図17の(d)は、図17の(c)に示す発光部材(筒)414を、上方から見て90度回転させた図である。
発光部材(筒)414を収納する場合は、図17の(c)に示すように、スライド口422aの一部に設けた突起422dと光学部材(筒)414に取付けた突起422cとを勘合させる。
また、光学部材(筒)214が突出する場合は、発光部材(筒)414を、上方から見て90度回転させ、図17の(d)に示すように、スライド口422aの一部に設けた突起422dと光学部材(筒)214に取付けた突起422bとを勘合させる。
勘合位置を切り替える場合は、一旦光学部材(筒)214を上方から見て90度回転させて勘合を開放させ、高さを調整してから再度上方から見て90度回転させてスライドする。なお、突起422b、422cの一端はストッパーとして回転不可能な機構としておく。以上のような構成により、光学部材(筒)414を下側筐体418に収納できる。
なお、上記した実施の形態は一例であり、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記した実施の形態では、アンビエント照明装置及びタスク照明装置の色温度の調整は、アンビエント照明装置及びタスク照明装置がそれぞれ自動で調整してもよいし、タスク照明装置に設けられた色温度調整ダイアルまたは色温度選択調整ボタン(図示せず)をユーザーが操作することにより、手動で調整することとしてもよい。
また、アンビエント照明装置又はタスク照明装置の色温度の調整は、あらかじめ設定されたプログラムにより制御されてもよい。
また、照明状態検出センサは、アンビエント照明装置又はタスク照明装置のそれぞれに設置されてもよいし、共通して設置されてもよい。
また、配光の調整制御と併せて色温度の調整制御を行ってもよい。
また、上記した実施の形態では、周辺部と作業エリアの色温度差が2000K、好ましくは1700K以上異なる際に、作業エリアの配光を変化させるとしたが、1700Kに限らずその他の色温度差であってもよい。
以上、本発明の照明システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて得られる形態も本発明の範囲内に含まれる。