JP6148939B2 - 乗員保護装置 - Google Patents
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Description
シートベルトモジュールは、車両のシートに着座する乗員を、シートに拘束するために用いられる。
エアバックモジュールは、エアバックを、車両のたとえばハンドル、インストルメントパネル、サイドパネルといった構造物と乗員との間で展開し、乗員の頭部などの上体が構造物に強く打ちつけられないようするために用いられる。
これらの乗員保護装置により、堅いダミー人形により検証される衝突実験では、衝突の際の人員の損傷を抑制する高い効果が得られるとされている。
たとえば、衝突の際に下肢用エアバックモジュールを展開したとしても、下肢用エアバックモジュールの下側の足下にはエアバックモジュールが展開されない空間が残る。その足下の空間を通じて、乗員の下肢が前へ移動する可能性がある。また、乗員の下肢が衝突前の着座位置から前へ移動することにより、乗員の上体の位置が、衝突前の着座位置から下がる可能性がある。
これにより、衝突の際に下肢部を拘束し、乗員の下肢部を移動し難くし、乗員がシートの着座位置から前へ移動し難くできる。
しかしながら、乗員の下肢部の位置は、シートに着座しているとしても、乗員の体格、着座姿勢に応じて異なる。
このため、固定的に展開されるエアバックでは、現実に、乗員の下肢部を拘束できない可能性がある。
そこで、更に、エアバックの展開範囲を調整することが考えられる。
しかしながら、エアバックの展開範囲を調整可能に構成した場合、エアバックを可動部分に取り付ける必要がある。
このため、可動部分についての保持力が不足すると、エアバックを所望の範囲に適切に展開できない、可能性が生じ得る。
たとえばシートに着座した乗員の膝下部とシートの間に、下からエアバックを展開する場合、エアバックを所望の膝裏位置まで展開できない可能性がある。
この他にもたとえば、複数のエアバックでたとえば膝下部を挟んで拘束する場合、一方のエアバックが展開しようとする力が、乗員の膝下部を通じて他方のエアバックに作用し、他方のエアバックの展開を妨げる、可能性がある。
本発明に係る他の乗員保護装置は、車両のシートに着座する乗員の周囲で展開するエアバックモジュールと、エアバックモジュールを制御する制御部と、を有する乗員保護装置であって、前記エアバックモジュールとして、前記制御部により前記シートの下側で位置が制御されることにより、乗員の着座位置に対して進退可能に設けられる第1可動板、前記第1可動板に取り付けられ、前記第1可動板から上方へ展開することにより前記シートに着座する乗員の膝下部と前記シートとの間で展開して前記膝下部と接触する第1エアバック、および、前記第1エアバックが上方へ展開する際に前記第1可動板を前記シートに支持する第1反力支持機構、を有する第1拘束用エアバックモジュールと、乗員の着座位置に対して進退可能に設けられる第2可動板、および、前記第2可動板に取り付けられる第2エアバック、を有する第2拘束用エアバックモジュールと、を備え、前記制御部は、展開した前記第1エアバックが前記シートに着座する乗員の膝下部の後側と接触するように前記第1可動板の位置を制御し、展開した前記第2エアバックが前記シートに着座する乗員の膝下部の前側と接触するように前記第2可動板の位置を制御し、前記第1反力支持機構は、前記第1エアバックを展開する際に、前記第1可動板を、制御された前記位置に保持し、展開した前記第1エアバックおよび展開した前記第2エアバックにより、乗員の膝下部を前後から挟んで拘束する。
しかも、たとえば第1エアバックを展開する際に第1可動板に作用する力は、第1反力支持機構により受ける。抗力壁を構成できる。第1可動板を可動させるたとえばアクチュエータには、該力のすべてが作用しない。アクチュエータの保持力構造を簡易とし、小型化できる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る乗員保護装置10を備える乗用自動車1を示す説明図である。乗用自動車1は、運転手および同乗者が乗車可能な複数人乗りの自動車である。自動車は、車両の一例である。以下、図1の車両を基準として、前後左右上下を使用する。
図1の乗用自動車1は、車体2を有する。図1の車体2は、前部、中部、後部から構成される。車体2の前部および後部には、タイヤ3が配置される。
車体2の中部には、乗員Mが乗車するための乗車空間4が形成される。乗車空間4には、運転手または同乗者が着座するシート5が前後二列で配置される。乗車空間4は、たとえば複数のフレーム部材を箱枠型に組み合わせた骨格構造を有する。この骨格構造により、乗車空間4は潰れ難い。
車体2の前部には、乗車空間4の骨格構造から前へ延在する図示外のフレーム部材が配置される。フレーム部材は、衝突の際の入力に応じて座屈して衝撃を吸収する中空構造とするとよい。フレーム部材は、車体2の前部に配置されるたとえば燃焼機関、モータ、バッテリ、タイヤ3を支える。乗用自動車1は、燃焼機関を主動力源としても、モータを主動力源とする電気自動車でも、これらの双方を動力源とするハイブリット式自動車でもよい。
車体2の後部には荷物室が形成される。車体2の後部には、乗車空間4の骨格構造から後へ延在する図示外のフレーム部材が配置される。フレーム部材は、衝突の際に好適に座屈して衝撃を吸収し易い中空構造とするとよい。フレーム部材は、車体2の後部に配置されるたとえばスペアタイヤ、電気自動車用のバッテリ、タイヤ3を支える。
図2には、乗用自動車1の乗車空間4に配置されるシート5と、シート5に着座する乗員Mとが併せて図示されている。なお、図2では、見易さのために、同じ乗員Mが着座する同一のシート5が、左右二個所に描画されている。
シート5は、略四角形の座面を有するクッション部6、クッション部6の一辺から立設するバック部7、クッション部6から下へ突出する脚部8、を有する。乗員Mは、クッション部6に腰を下ろし、バック部7に背中で寄り掛かる。乗員Mは、シート5に着座する。
シート5の脚部8は、シートレール9にスライド可能に取り付けられる。シートレール9は、乗車空間4の床面に前後方向に延在する。シートレール9は、車体2の骨格構造に固定される。シート5は、前後方向に移動可能であり、移動した位置に固定可能である。また、シート5は、たとえば、床面からのクッション部6の高さ、バック部7の傾斜角度、を調整可能でよい。これにより、たとえば運転は、ハンドルやブレーキなどに対して操作がしやすい、それぞれの体型や好みに応じた最適な着座位置でシート5に着座できる。
シートベルト22は、細長い長尺のベルトである。シートベルト22の一端は、たとえばクッション部6の左右方向外側の側面に固定される。シートベルト22の他端は、リトラクタ25に固定される。
リトラクタ25は、シートベルト22を解放し、保持し、巻き取る。リトラクタ25は、乗車空間4を画成する骨格部材に固定される。骨格部材としては、たとえば所謂Bピラーがある。
タングプレート23は、シートベルト22に通される。
バックル24は、タングプレート23と取り外し可能に係合する。バックル24は、たとえばクッション部6の左右方向内側の側面に固定される。
リトラクタ25がシートベルト22を解放している通常の状態で、乗員Mは、シート5に着座し、タングプレート23を引き寄せ、シートベルト22が上体の前で架け渡されるようにタングプレート23をバックル24に係合させる。これにより、シートベルト22の一部が、着座した乗員Mの腰前周りに架け渡される。シートベルト22の他の一部が、着座した乗員Mの腰から肩にかけて斜めに架け渡される。この状態で、リトラクタ25は、制御部100からの起動信号により、シートベルト22を巻き取って保持する。シート5に着座した乗員Mは、シート5に拘束される。
なお、シートベルトモジュール21には、上述した三点式のもの以外に、四点式のものも利用されている。
エアバックは、高圧ガスの注入により展開可能な袋体である。インフレータは、高圧ガスを貯蔵する。インフレータの高圧ガスをエアバックに注入することにより、エアバックが展開する。展開したエアバックの形状は、各々のエアバックモジュール31,41,51の設置個所、展開方向、展開範囲に応じて適宜設計される。
しかしながら、乗員保護装置10においては更なる改善が求められている。
たとえば、衝突の際に前エアバックモジュール41を展開したとしても、足下には前エアバックモジュール41が展開されていない空間が残る。その足下の空間を通じて、乗員Mの下肢が前へ移動する可能性がある。仮に乗員Mの下肢がインストルメントパネルの前側のトーボードに当たると、トーボードから入力される荷重により、乗員Mの下肢部にモーメント障害が発生する可能性が生じる。
この他にもたとえば、衝突の際に乗員Mの下肢が前へ移動することにより、乗員Mの上体の位置が下がる可能性がある。シートベルト22は、乗員Mがシート5に着座した状態で、乗員Mの腰または所定の胸位置を拘束することにより、障害から乗員Mを守る。しかしながら、乗員Mの上体の位置が下がることにより、この機能を発揮できなくなる可能性が生じる。
これにより、衝突の際に下肢部を拘束し、乗員Mの下肢全体を移動し難くし、乗員Mがシートの着座位置から前へ移動し難くできる。乗員Mがシートの着座位置から前へ移動することに起因する、上体および下肢の障害を減らすことを期待できる。
また、本実施形態では、シート5の乗り心地を損なうことがないように後エアバックモジュール51をシートの下側に配置し、そのシートの下側からシートに着座する乗員Mの膝裏へ向けて後エアバックモジュール51を展開する。エアバックを展開する力に抗し、エアバックを所望の形状および範囲に展開可能とする、反力支持構造を提供する。
また、本実施形態において前エアバックモジュール41および後エアバックモジュール51は、通常の隔壁を構成するエアバックと異なり、乗員Mの膝下部を拘束する。エアバックを展開する際に、これらのエアバックには相互に展開を妨げる力が作用する。その力に抗することが可能な反力支持構造を提供する。
以下、詳しく説明する。
前下エアバック42は、通常の下肢用エアバックモジュールのエアバックと同様の略立方体形状でもよいが、好ましくは、膝下部を前側および左右側から包み込む上下に長い断面略U字形状とするとよい。
前可動板44は、たとえば左右方向に長い矩形板形状を有し、インストルメントパネルの下部からシート5の前面に向かう方向へ可動可能に設けられる。前下エアバック42および前下インフレータ43は、前可動板44により可動可能に車体2に固定される。前下エアバック42は、所望の位置に設けられ、さらにその所望の位置から所望の方向および範囲へ展開できる。前可動板44の前後位置を調整することにより、前下エアバック42の展開範囲を前後に調整できる。
前アクチュエータ45は、前可動板44の位置を制御する。前アクチュエータ45は、たとえばモータでよい。前可動板44の位置を前後方向に制御して位置決めする。前可動板44の前後位置を制御することにより、展開した前下エアバック42についての、乗車空間4内での前後位置および範囲を調整できる。
後エアバックモジュール51は、後エアバック52、後インフレータ53に加えて、後可動板54、後アクチュエータ55、後反力支持機構56、を有する。後エアバック52および後インフレータ53は、後可動板54に固定される。
後エアバック52は、たとえば、膝下部を後側および左右側から包み込む上下に長い断面略U字形状とするとよい。
後エアバックモジュール51の後可動板54は、シート5のクッション部6と乗車空間4の床面との間に配置される。後可動板54は、たとえば左右方向に長い矩形板形状を有し、クッション部6の前縁から後方に向けて可動可能に設けられる。後可動板54は、前後方向に移動可能である。または、たとえばオットマンのようにクッション部6の下で回転可能でもよい。
後エアバックモジュール51の後アクチュエータ55は、後可動板54の位置を前後方向に制御して位置決めする。これにより、シート5に着座した乗員Mの膝下部の後で展開する後エアバック52の展開位置および範囲を、前後方向で調整できる。クッション部6の後に展開する後エアバック52の位置および範囲を、調整できる。
図3には、シート5のクッション部6の構成が図示されている。クッション部6は、シートフレーム6A、クッション部材6B、カバー6Cを有する。
シートフレーム6Aは、シートの座面サイズに対応する矩形枠形状を有する。シートフレーム6Aは、たとえばアルミニウムなどの高剛性材料からなる。シートフレーム6Aの内側には、たとえば複数のコイルスプリングがマトリックス状に取り付けられる。シートフレーム6Aは、脚部8が取り付けられる。脚部8は、シートフレーム6Aから下方へ延在する。シートフレーム6Aの上側に、クッション部材6Bが配置される。カバー6Cは、袋状に形成され、クッション部材6Bおよびシートフレーム6Aの外側を覆う。
このような構造のシート5のクッション部6に対して、後エアバックモジュール51が取り付けられる。
図3の後エアバックモジュール51において、後可動板54は、シートフレーム6Aの前下側に取り付けられる。後可動板54は、その上端を回転中心として、シートフレーム6Aの下側で、前後方向へ回転可動可能である。
後エアバック52は、後可動板54から上方へ展開し、クッション部6に着座する乗員Mの膝下部とクッション部6との間で展開する。後可動板54の位置が変わると、後エアバック52の展開範囲も変わる。
後反力支持機構56は、一対の後トラスフレーム57と、一対の後波板レール58と、を有する。
後波板レール58は、略長方形の板材であり、その長辺が波型の凹凸に形成される。一対の後波板レール58は、シートフレーム6Aの左右両側に前後方向に延在して取り付けられる。後波板レール58は、波型の凹凸が下向きとなるように、シートフレーム6Aの下側に固定される。
後トラスフレーム57は、アーム部材である。後トラスフレーム57は、アルミニウムなどの高剛性の金属材料でよい。後トラスフレーム57の一端は、後可動板54の下端部に取り付けられる。一対の後トラスフレーム57の他端は、一対の後波板レール58の凹部と係合する。これにより、後エアバックモジュール51において、三角形によるトラス構造が形成される。後可動板54が後向きへ回転する場合、後トラスフレーム57の他端が後波板レール58の凹部と係合し、支えられる。
後アクチュエータ55は、後可動板54の後方に配置される。後アクチュエータ55は、後可動板54のたとえば下端と連結される。後アクチュエータ55は、後可動板54の下端を、前後方向へ駆動する。
このような取り付け構造により、後可動板54の位置は、後アクチュエータ55により駆動される。
また、後トラスフレーム57が後波板レール58の凹部と係合することにより、後可動板54に対して後ろ向きの力が作用した場合、後反力支持機構56によるトラス構造により、後可動板54の位置が変わらないように支持できる。
制御部100は、通常の走行中にまたは衝突を予測した時に、図4の処理を繰り返し実行する。
制御部100は、たとえば乗員Mの下肢部を検出するセンサモジュールから検出信号を取得すると(ステップST1)、それら検出信号からシート5に着座した乗員Mの膝から足首までの膝下部の位置を特定し(ステップST2)、衝突の際の乗員Mの挙動を予測する(ステップST3)。
たとえば、制御部100は、着座した乗員Mの膝下部の位置を特定する。また、制御部100は、左右の荷重分布を演算する。
たとえば、制御部100は、前エアバックモジュール41については、展開した前下エアバック42の後部が、特定した膝下部(たとえば膝および脛)の前面の位置となるように、前後位置を演算する。
制御部100は、後エアバックモジュール51については、展開した後エアバック52の前部が、特定した膝下部(たとえば膝および脛)の後面の位置となるように、前後位置を演算する。
たとえば、前エアバックモジュール41では、制御部100の制御信号に基づく前アクチュエータ45の制御により、展開した前下エアバック42の後面が特定した膝下部の前面と重なるように、前可動板44の前後位置が調整されて位置決めされる。
後エアバックモジュール51では、制御部100の制御信号に基づく後アクチュエータ55の制御により、展開した後エアバック52の前面が特定した膝下部の後面と重なるように、後可動板54の前後位置が調整されて位置決めされる。
制御部100は、たとえば図示外の加速度センサによる衝突検出信号などに基づいて、図5の処理を実行する。また、制御部100は、車両に搭載された周辺監視装置からの衝突予測信号などに基づいて、実行してよい。
制御部100は、検出信号などに基づいて衝突を検出すると(ステップST11)、作動信号をリトラクタ25および複数のインフレータ33,43,53へ出力する(ステップST12)。
作動信号の入力により、シートベルトモジュール21のリトラクタ25は、シートベルト22を巻取って保持する。これにより、乗員Mは、シートベルト22によりシート5に拘束される。
作動信号の入力により、エアバックモジュールのインフレータ33,43,53は、高圧ガスをエアバック32,42,52へ放出する。エアバック32,42,52が展開する。これにより、乗員Mと車両の構造物との間に、展開したエアバック32,42,52が介在する。
また、前エアバックモジュール41の前下エアバック42と、後エアバックモジュール51の後エアバック52とは、調整された位置から展開する。これらのエアバック42,52により、着座した乗員Mの膝下部は、特定した衝突前の膝下部の位置に、前後から拘束される。
また、エアバック42,52の展開状態を、展開したサイズまたは形状が異なる複数のエアバックから選択することにより調整する場合、制御部100は、エアバックの選択情報を保持し、衝突検出の際に、選択したエアバックに対応するインフレータのみへ、作動信号を出力すればよい。
また、制御部100は、複数のエアバックモジュール31,41,51に対して同一の起動信号ではなく、別々の起動信号を出力してよい。特に、前エアバックモジュール41へ前下インフレータ43の起動信号と、後エアバックモジュール51へ後インフレータ53の起動信号とは、微妙に時間をずらしてもよい。起動信号のタイミングがずれていたとしても、乗員Mの下肢を前後から拘束できることには変わりがない。
よって、所謂サブマリン効果により、乗員Mの下肢がトーボードに当たるまで移動することはない。トーボードから下肢に入力される荷重により乗員Mの下肢部にモーメント障害が発生する可能性も減らせる。
また、乗員Mの下肢が前へ移動せずに乗車位置に好適に拘束され得るため、乗員Mの上体の位置がシート5上で下がり難い。乗員Mの上体の位置が下がることによる、上体の障害値の増加を効果的に抑制できる。上体をも適切に保護することができる。
その結果、本実施形態の乗員保護装置10では、たとえば乗員Mを衝突前の着座位置を基準として拘束するシートベルトモジュール21と相まって、乗員Mの下肢だけでなく上体をも適切に保護することができる。従来ではなし得ることができなかった、高度で的確な乗員Mの保護効果を得ることができる。
特に、左右一対の前エアバックモジュール41および左右一対の後エアバックモジュール51により乗員Mの両膝下部を別々に拘束するので、乗員Mの着座姿勢が悪い場合でも、大腿部から入力される慣性力に抗して乗員Mの両膝下部を個別に安定的に拘束できる。左右双方の膝下部の保持が干渉しない。また、膝下部が足首を中心にして回転しようとする場合でも、その回転を抑止でき、乗員Mの両膝下部を安定的に拘束できる。衝突の際の乗員Mの下肢の挙動を抑止できる。
また、後エアバックモジュール51をシート5のクッション部6の下側に配置しているので、後エアバックモジュール51をシート5のクッション部6に配置する場合のようにシート5の乗り心地を低下させることもない。
よって、シート5に着座する乗員Mの体型、体格、着座姿勢が異なる場合であっても、それぞれの体型、体格、着座姿勢に応じた下肢部の位置を特定し、その下肢部の位置に支えることができる。乗員Mの体型、体格、着座姿勢によらない、高い乗員M保護を期待できる。
このように、乗員Mの下肢部を、特定した下肢部の位置に支えることにより、従来の乗員保護装置10では得られない、より的確な乗員M保護を期待できる。
しかも、後エアバック52を通じて後可動板54に力が作用した場合、後可動板54は回転する。たとえばエアバックを展開する際に後可動板54が可動しようとする向きを、シート5に近づく方向とすることができる。後可動板54とシート5との間に設けられる後トラスフレーム57により、後可動板54を支持できる。シート5に、後反力支持機構56を設けることができる。また、この反力の向きは、前後方向ではなく、回転方向であることから、後アクチュエータ55に対して、反力が作用し難い。
このように、シート5の基本構造および基本機能を損なうことなく、乗員MMの膝下部とシート5の間で好適に後エアバック52を展開できる。シート5自体は乗り心地を優先して設計でき、乗り心地を損なわないようにできる。
上述した第1実施形態では、後エアバックモジュール51について後反力支持機構56を設けている。また、後反力支持機構56は、シート5のクッション部6に取り付けられている。後反力支持機構56は、その他の車両の構造物に取り付けてよい。
次に、本発明の第2実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。
第2実施形態の乗員保護装置10の基本的な構成は、第1実施形態の構成と同様であり、同一の符号を使用して図示および説明を省略する。
図6において、後エアバックモジュール51の一対の後波板レール58は、一対のシートレール9に取り付けられる。一対の後トラスフレーム57の他端は、一対の後波板レール58の凹部と係合する。これ以外の取り付け構造は、第1実施形態と同様である。
また、後トラスフレーム57が後波板レール58の凹部と係合することにより、後可動板54に対して後ろ向きの力が作用した場合、後反力支持機構56により、後可動板54の位置が変わらないように支持できる。
それゆえ、第2実施形態の乗員保護装置10は、第1実施形態のものと同様の効果を奏する。
ただし、後可動板54はシートフレーム6Aに取り付けられているが、後波板レール58は、第1実施形態と異なり、シートフレーム6Aとは別体のシートレール9に取り付けられる。このため、第1実施形態と同様の反力支持機能を得るためには、シートフレーム6A、脚部8、シートレール9の間の取り付け構造を、第1実施形態より強固にする必要がある。
次に、本発明の第3実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。
第2実施形態の乗員保護装置10の基本的な構成は、第2実施形態の構成と同様であり、同一の符号を使用して図示および説明を省略する。
図7において、後エアバックモジュール51の一対の後可動板54は、一対のシートレールの間に取り付けられる。後可動板54は、その下端を回転中心として、シートフレーム6Aの下側で、前後方向へ回転可動可能である。これ以外の取り付け構造は、第2実施形態と同様である。
また、後トラスフレーム57が後波板レール58の凹部と係合することにより、後可動板54に対して後ろ向きの力が作用した場合、後反力支持機構56により、後可動板54の位置が変わらないように支持できる。
それゆえ、第3実施形態の乗員保護装置10は、第2実施形態のものと同様の効果を奏する。
しかも、後可動板54は、後波板レール58とともに、第2実施形態と異なり、シートレール9に取り付けられる。これにより、トラス構造を実現する。よって、第1実施形態と同様に、後反力支持機構56のトラス構造により、後可動板54の位置が変わらないように支持できる。
次に、本発明の第4実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。
第4実施形態の乗員保護装置10の基本的な構成は、第1実施形態の構成と同様であり、同一の符号を使用して図示および説明を省略する。
図8において、後エアバックモジュール51の後可動板54は、その上部において、一対の脚部8の間に取り付けられる。後可動板54は、その上端を回転中心として、シートフレーム6Aの下側で、前後方向へ回転可動可能である。これ以外の取り付け構造は、第1実施形態と同様である。図8の後可動板54は、左右一対の後エアバックモジュール51に共通の可動板である。
また、後トラスフレーム57が後波板レール58の凹部と係合することにより、後可動板54に対して後ろ向きの力が作用した場合、後反力支持機構56により、後可動板54の位置が変わらないように支持できる。
それゆえ、第3実施形態の乗員保護装置10は、第1実施形態のものと同様の効果を奏する。
ただし、後可動板54は、第1実施形態と異なり、一対の脚部8に取り付けられ、後波板レール58は、シートフレーム6Aに取り付けられる。このため、第1実施形態と同様の反力支持機能を得るためには、シートフレーム6A、脚部8の間の取り付け構造を、第1実施形態より強固にする必要がある。
以上の実施形態では、可動可能な後エアバックモジュール51に、後反力支持機構56を設ける例である。反力支持機構は、前エアバックモジュール51に設けてもよい。
次に、本発明の第5実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。
第5実施形態に係る乗員保護装置10の基本的な構成は、第1実施形態の構成と同様であり、同一の符号を使用して図示および説明を省略する。
第5実施形態の乗員保護装置10では、可動可能な前エアバックモジュール41が、前下エアバック42、前下インフレータ43に加えて、前可動板44、前アクチュエータ45、前反力支持機構61、を有する。
図9には、インストルメントパネルの断面が図示されている。
図9において、前エアバックモジュール41の前可動板44は、その下部において、インストルメントパネルに取り付けられる。前可動板44は、その下端を回転中心として、前後方向へ回転可能である。
前下エアバック52は、後可動板54から後方へ展開し、インストルメントパネルとクッション部6に着座する乗員Mの膝下部との間で展開する。前可動板44の位置が変わると、前下エアバック42の展開範囲も変わる。
前反力支持機構61は、一対の前トラスフレーム62と、一対の前波板レール63と、を有する。
前波板レール63は、略長方形の板材であり、その長辺が波型の凹凸に形成される。一対の前波板レール63は、前可動板44の左右両側に前後方向に延在して取り付けられる。前波板レール63は、波型の凹凸が下向きとなるように、インストルメントパネル内に固定される。
前トラスフレーム62は、アーム部材である。前トラスフレーム62は、アルミニウムなどの高剛性の金属材料でよい。前トラスフレーム62の一端は、前可動板44の上端部に取り付けられる。一対の前トラスフレーム62の他端は、一対の前波板レール63の凹部と係合する。
前アクチュエータ45は、前可動板44の上端と連結され、前可動板44の上端の前方に配置される。前アクチュエータ45は、前可動板44の上端を、前後方向へ駆動する。
このような取り付け構造により、前可動板54の位置は、前アクチュエータ45により駆動される。
また、前トラスフレーム62が前波板レール63の凹部と係合することにより、前可動板44に対して前向きの力が作用した場合、前反力支持機構61により、後可動板54の位置が変わらないように支持できる。
また、前トラスフレーム62が前波板レール63の凹部と係合することにより、前可動板44に対して前向きの力が作用した場合、前反力支持機構61により、前可動板44の位置が変わらないように支持できる。
それゆえ、第5実施形態の乗員保護装置10では、前エアバックモジュール41について、第1実施形態の後エアバックモジュール51と同様の効果を奏する。
特に、第5実施形態では、前エアバックモジュール41および後エアバックモジュール51において共に、反力支持機構を採用するため、シート5に着座した乗員Mの膝下部を、前後から安定的に挟むことができる。乗員Mの下肢部を、着座位置からずれ難くできる。しかも、後エアバックモジュール51の後アクチュエータ55だけでなく、前エアバックモジュール41の前アクチュエータ45についても、すべての反力を支持する剛性とする必要がない。
この他にもたとえば、エアバックの展開時に後可動板54に作用する力の方向と、アクチュエータの駆動方向とを、たとえば前後方向で一致させてもよい。
この他にもたとえば、複数のエアバックモジュールは、乗員Mの膝下部を左右方向から挟んでもよい。また、乗員Mの膝下部以外の下肢部、上体、腕部を挟んでもよい。
上記実施形態では、前エアバックモジュール41または後エアバックモジュール51は、1つのエアバックを有する。この他にもたとえば、前エアバックモジュール41または後エアバックモジュール51は、複数のエアバックを有してよい。
Claims (6)
- 車両のシートに着座する乗員の周囲で展開するエアバックモジュールと、
エアバックモジュールを制御する制御部と、
を有する乗員保護装置であって、
前記エアバックモジュールとして、
前記制御部により前記シートの下側で位置が制御されることにより、乗員の着座位置に対して進退可能に設けられる第1可動板、
前記第1可動板に取り付けられ、前記第1可動板から上方へ展開することにより前記シートに着座する乗員の膝下部と前記シートとの間で展開して前記膝下部と接触する第1エアバック、および、
前記第1エアバックが上方へ展開する際に前記第1可動板を前記シートに支持する第1反力支持機構、
を有する第1拘束用エアバックモジュールを備え、
前記制御部は、展開した前記第1エアバックが前記シートに着座する乗員の膝下部と接触するように前記第1可動板の位置を制御し、
前記第1反力支持機構は、前記第1エアバックを展開する際に、前記第1可動板を、制御された前記位置に保持する、
乗員保護装置。 - 車両のシートに着座する乗員の周囲で展開するエアバックモジュールと、
エアバックモジュールを制御する制御部と、
を有する乗員保護装置であって、
前記エアバックモジュールとして、
前記制御部により前記シートの下側で位置が制御されることにより、乗員の着座位置に対して進退可能に設けられる第1可動板、
前記第1可動板に取り付けられ、前記第1可動板から上方へ展開することにより前記シートに着座する乗員の膝下部と前記シートとの間で展開して前記膝下部と接触する第1エアバック、および、
前記第1エアバックが上方へ展開する際に前記第1可動板を前記シートに支持する第1反力支持機構、
を有する第1拘束用エアバックモジュールと、
乗員の着座位置に対して進退可能に設けられる第2可動板、および、
前記第2可動板に取り付けられる第2エアバック、
を有する第2拘束用エアバックモジュールと、を備え、
前記制御部は、展開した前記第1エアバックが前記シートに着座する乗員の膝下部の後側と接触するように前記第1可動板の位置を制御し、展開した前記第2エアバックが前記シートに着座する乗員の膝下部の前側と接触するように前記第2可動板の位置を制御し、
前記第1反力支持機構は、前記第1エアバックを展開する際に、前記第1可動板を、制御された前記位置に保持し、
展開した前記第1エアバックおよび展開した前記第2エアバックにより、乗員の膝下部を前後から挟んで拘束する、
乗員保護装置。 - 前記第1可動板は、上部において前記シートに回動可能に取り付けられ、前記制御部により前記シートの下側で回動することにより位置が制御される、
請求項1または2記載の乗員保護装置。 - 前記第1反力支持機構は、前記第1可動板と前記シートとの間に設けられるトラスフレームを有し、前記トラスフレームにより前記第1エアバックが上方へ展開する際に前記第1可動板を前記シートに支持する、
請求項1から3のいずれか一項記載の乗員保護装置。 - 前記エアバックモジュールとして、更に、
乗員の着座位置に対して進退可能に設けられる第2可動板、および、
前記第2可動板に取り付けられる第2エアバック、
を有する第2拘束用エアバックモジュールを備え、
前記制御部は、展開した前記第2エアバックが前記シートに着座する乗員の膝下部の前側と接触するように前記第2可動板の位置を制御し、展開した前記第1エアバックおよび展開した前記第2エアバックにより、乗員の膝下部を前後から挟んで拘束する、
請求項1から4のいずれか一項記載の乗員保護装置。 - 前記第1拘束用エアバックモジュールは、
前記制御部の制御に基づいて、前記第1可動板を、前記車両の前後方向へ駆動するア
クチュエータを有する、
請求項1から5のいずれか一項記載の乗員保護装置。
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