以下に、本発明を図示の実施の形態を基に詳細に説明する。図1は実施の形態を示すX線撮像システムの構成図を示し、1はX線室、2はX線制御室、3は診断・操作室である。
X線室1には、X線を発生するX線発生器11が置かれ、このX線発生器11はX線を発生するX線管球12、X線管球12を駆動する高圧発生電源13、X線管球12により発生されたX線ビームを所望の撮像領域に絞り込むX線絞り14から成っている。撮影用寝台15の下には、被検体S及び撮影用寝台15を透過したX線ビームを検出するX線検出器16が配置されている。
X線検出器16は、グリッド17、シンチレータ18、光検出器アレー19、X線露光量モニタ20の積層体と、光検出器アレー19を駆動する駆動器21とから構成されている。グリッド17は被検体Sを透過することによって生ずるX線散乱の影響を低減するために設けられており、X線低吸収部材と高吸収部材とから成り、例えばA1とPbのストライプ構造から成っている。光検出器アレー19とグリッド17との格子比の関係によりモアレ縞が生じないように、X線照射時にはX線検出器16は後述するX線制御室2の撮像制御器からの設定に基づいて、駆動器21の制御信号に従ってグリッド17を振動させる。
シンチレータ18では、エネルギの大きいX線によって蛍光体の母体物質か励起(吸収)され、その再結合エネルギにより可視領域の蛍光が発生し、X線を可視光に変換する。その蛍光はCaWo4やCdWo4等の母体自身によるものや、CsI:TlやZnS:Ag等の母体内に付加された発光中心物質によるものがある。光検出器アレー19はシンチレータ18による可視光を電気信号に変換する。本実施の形態では、シンチレータ18と光検出器アレー19とを別々の構成としているが、X線を電子に直接変換する検出器で構成するものにも適用される。例えば、アモルファスSeやPbI2等の受光部とアモルファスシリコンTFT等から成る放射線(X線)検出器である。
X線露光量モニタ20はX線透過量を監視する目的で配置されている。X線露光量モニタ20としては、結晶シリコンの受光素子等を用いてX線を直接検出してもよいし、シンチレータ18による蛍光を検出してもよい。本実施の形態では、X線露光量モニタ20は光検出器アレー19の基板裏面に成膜されたアモルファス・シリコン受光素子から成り、光検出器アレー19を透過したX線量に比例した過視光を検知して、その光量情報を撮像制御器に伝達する。
また、四肢等の撮影のために別に薄型X線検出器22が配置され、この薄型X線検出器22は中継器23を介してX線制御室2に接続されている。図1では、薄型X線検出器22は複数種のセンサの代表として1つを図示してあるが、空間分解能が異なったり、薄型X線検出器22の大きさ、つまり撮像領域の大きさが異なるもの等を交換して使用することが可能である。X線検出器16と薄型X線検出器22との相違点は、第1には薄型X線検出器22の厚さが、フィルムスクリーン系カセッテに匹敵する程度の約20mm以下である点が最も大きく異なっている。薄型X線検出器22には、グリッド17が内蔵されていない点、簡易電源、10画像〜20画像の大容量メモリを内蔵している点、中継器23とケーブルレスで画像信号及び制御のやり取りが可能である点に特長がある。
薄型X線検出器22と中継器23を接続するケーブル24はあってもなくても動作可能であり、ケーブル24を使用した場合には画像転送が高速に行えるため、X線撮像後の画像取得、処理、確認の動作がより短い時間で達成され、更に充電の必要がないため長時間撮影を続けることが可能である。なお、ケーブル24を使用する場合には着脱容易かつ高信頼性のコネクタを使用する必要がある。中継器23は薄型X線検出器22との通信を中継する他に、自動ID割付や充電器更には未使用時ホルダとしての機能を有する。
X線制御室2には、本X線撮像システムの全体的な動作を制御するシステム制御器31、操作者インタフェース32、ディスプレイモニタ33が配置されている。システム制御器31には、前述の撮像制御器34、例えばRAID等のハードディスクアレーから成る画像処理器35、処理された基本画像データを記憶する大容量高速の記憶装置36、モニタ33を制御して種々の文字及び画像を表示させる表示制御器37、例えば光磁気ディスク等の大容量の外部記憶装置38、X線制御室2の装置と診断・操作室3の装置を接続し、X線室1での撮影画像等を診断・操作室3の装置に転送するLANボード39が内蔵されている。
インタフェース32は、X線曝射要求スイッチ、タッチパネル、マウス、キーボード、ジョイスティック及びフットスイッチ等から成り、操作者Oが種々の指令をシステム制御器31に入力するために使用される。操作者Oの指示内容は、例えば静止画/動画、X線管電圧、管電流及びX線照射時間等の撮影条件、撮影タイミング、画像処理条件、被検者ID及び取込画像の処理方法等がある。撮像制御器34はX線室1に置かれたX線発生器11、撮影用寝台15、駆動器21、中継器23に接続され、画像処理器35はX線室1の駆動器21、中継器23と接続され、X線撮像系による画像を画像処理する。画像処理器35における画像処理は、例えば画像データの補正、空間フィルタリング、リカーシブ処理、階調処理、散乱線補正及びダイナミックレンジ(DR)圧縮処理等が挙げられる。
診断・操作室3には、被検体Sの情報及び撮影方法等を、X線制御室2のLANボード39を経由して指示するためのHIS/LIS等に接続されていたり、LANボード39からの画像を画像処理、診断支援する画像処理端末41、LANボード39からの画像(動画像/静止画)を映像表示するモニタ42、イメージプリンタ43、画像データを格納するファイルサーバ44が設けられている。
なお、システム制御器31からの各機器に対する制御信号は、X線制御室2内の操作者インタフェース32、或いは診断・操作室3内にある画像処理端末41からの指示により発生可能である。システム制御器31はX線撮像系のシーケンスを制御する撮像制御器34に、操作者Oの指示に基づいた撮影条件を指令し、撮像制御器34はその指令に基づいて、X線発生器11、撮影用寝台15及びX線検出器16を駆動してX線像を撮影させる。撮影用寝台15上に患者である被検体Sが横たわると、撮影用寝台15は撮像制御器34からの制御信号に従って駆動され、X線発生器11からのX線ビームに対する被検体Sの向きを変更できる。X線検出器16から出力されるX線画像信号は画像処理器35に供給され、操作者Oが指定する画像処理を施されてモニタ33に画像表示され、同時に基本画像データとして記憶装置36に格納される。システム制御器31は更に操作者Oの指示に基づいて、再画像処理とその結果の画像表示、ネットワーク上の装置への画像データの転送、保存、映像表示及びフィルム印刷等を実行する。
X線発生器11の高圧発生電源13は、撮像制御器34からの制御信号に従ってX線管球12にX線発生のための高電圧を印加すると、X線管球12はX線ビームを発生する。発生されたX線ビームはX線絞り14を介して被検体Sに照射される。X線絞り14はX線ビームを照射すべき位置に応じて、撮像制御器34により制御される。即ち、X線絞り14は撮像領域の変更に伴い、不要な照射を行わないようにX線ビームを整形する。
X線発生器11が出力するX線ビームは、X線透過性の撮影用寝台15上に横になった被検体S、撮影用寝台15を透過してX線検出器16に入射する。なお、撮影用寝台15は被検体Sの異なる部位又は方向でX線ビームが透過するように、撮像制御器34により制御される。また、薄型X線検出器22を使用する場合は、X線発生器11から出力されたX線ビームが被検体Sを透過して薄型X線検出器22に入射するように、操作者Oが薄型X線検出器22及び被検体Sを調節する。
X線検出器16のグリッド17は、前述したように被検体Sを透過することによって生ずるX線散乱の影響を低減する。撮像制御器34は光検出器アレー19とグリッド17との格子比の関係によりモアレ縞が生じないように、X線照射時にグリッド17を振動させる。シンチレータ18ではエネルギの大きいX線によって蛍光体の母体物質がX線を吸収して励起され、その際に発生する再結合エネルギにより可視領域の蛍光を発生する。シンチレータ18に積層して配置された光検出器アレー19は、シンチレータ18で発生する蛍光を電気信号に変換する。即ち、シンチレータ18がX線像を過視光像に変換し、光検出器アレー19が過視光像を電気信号に変換する。
X線露光量モニタ20は光検出器アレー19を透過したX線量に比例した過視光を検出し、その検出量情報を撮像制御器34に供給する。撮像制御器34はこのX線露光量情報に基づいて高圧発生電源13を制御して、X線を遮断又は調節する。駆動器21は撮像制御器34の制御の下で光検出器アレー19を駆動し、光検出器アレー19の各素子から画素信号を読み出す。
X線検出器16、薄型X線検出器22から出力される画素信号は、X線制御室2内の画像処理器35に出力される。X線室1内はX線発生に伴うノイズが大きいので、X線検出器16から画像処理器35への信号伝送路は耐雑音性の高いものである必要があり、具体的には高度の誤り訂正機能を具備するディジタル伝送系としたり、差動ドライバによるシールド付き撚り電線対又は光ファイバを用いることが望ましいことは云うまでもない。
画像処理器35については詳細は後述するが、システム制御器31からの指令に基づき画像信号の表示形式を切換え、その他には画像信号の補正、空間フィルタリング及びリカーシブ処理等をリアルタイムで行い、階調処理、散乱線補正及びDR圧縮処理等を実行できる。画像処理器35により処理された画像は、モニタ33の画面に表示される。リアルタイム画像処理と同時に、画像補正のみを行われた基本画像情報は、記憶装置36に保存される。また、操作者Oの指示に基づいて、記憶装置36に格納される画像情報は、例えばImage Save & Carry(IS&C)の所定の規格を満たすように再構成された後に、外部記憶装置38及びファイルサーバ44内のハードディスク等に格納される。
X線制御室2の装置は、LANボード39を介してLAN(又はWAN)に接続する。LANには複数のX線撮像システムを接続できることは勿論である。LANボード39は例えばDigital Imaging and Communication in Medicine(DICOM)所定のプロトコルに従って画像データを出力する。LAN(又はWAN)に接続されたモニタ42の画面に、X線画像を高解像静止画及び動画を表示することにより、X線撮影とほぼ同時に医師によるリアルタイムの遠隔診断が可能になる。
図2は光検出器アレー19の構成単位の等価回路の一例を示す。1素子は光検出部51と電荷の蓄積及び読み取りを制御するスイッチングTFT(薄膜トランジスタ)52から成り、一般にはガラス基板上にアモルファスシリコン(a−Si)により形成されている。光検出部51は更に光ダイオード51aとコンデンサ51bの並列回路から成り、光電効果による電荷をセンサ内電流源53として記述している。コンデンサ51bは光ダイオード51aの寄生容量でも、光ダイオード51aのダイナミックレンジを改善する追加的なコンデンサでもよい。光ダイオード51aのカソードは、共通電極(D電極)であるバイアス配線Lbを介してバイアス電源54に接続されている。光ダイオード51aのアノードは、ゲート電極GからスイッチングTFT52を介してコンデンサ55及び電荷読出用プリアンプ56に接続されている。プリアンプ56の入力はリセット用スイッチ57及び信号線バイアス電源58を介してアースに接続されている。
先ず、スイッチングTFT52とリセット用スイッチ57を一時的にオンにして、コンデンサ51bをリセットし、スイッチングTFT52とリセット用スイッチ57をオフにする。その後に、X線を発生させて被検体Sに曝射する。被検体Sを透過したX線像をシンチレータ18が可視光像に変換し、光ダイオード51aはその可視光像により導通状態になり、コンデンサ51bの電荷を放電させる。スイッチングTFT52をオンにして、コンデンサ51bとコンデンサ55を接続する。これにより、コンデンサ51bの放電量の情報がコンデンサ55にも伝達され、更にプリアンプ56によりコンデンサ55の蓄積電荷による電圧の増幅又は点線で示したコンデンサ59により電荷−電圧変換され外部に出力される。
図3は図2に示す光電変換素子を二次元に拡張して構成した二次元配列の光電変換素子を具備する光検出器アレー19の等価回路である。二次元読出動作は先の2種類の等価回路において同様であるので、図3は図2に示した等価回路を用いて現している。光検出器アレー19は2000×2000〜4000×4000程度の画素から構成され、アレー面積は200mm×200mm〜500mm×500mm程度である。図3では光検出器アレー19は4096×4096の画素から構成され、アレー面積は430mm×430mmであり、1画素のサイズは約105×105μmであり、横方向に配置した4096個の画素を1ブロックとし、4096個のブロックを縦方向に配置して二次元構成とされている。
図3では4096×4096画素から成る光検出器アレー19を1枚の基板で構成しているが、2048×2048画素を持つ4枚の光検出器アレーを組み合わせてもよいことは勿論である。この場合に、4つの光検出器アレーを組み付ける手間が発生するが、各光検出器アレーの歩留まりが向上するので、全体としても歩留まりが向上するという利点がある。
図2で説明したように、1画素は1つの光検出部51とスイッチングTFT52とから成る。光電変換素子PD(1,1)〜(4096,4096)は光検出部51に対応し、転送用スイッチSW(1,1)〜(4096,4096)はスイッチングTFT52に対応している。光電変換素子PD(m,n)のゲート電極Gは、対応するスイッチSW(m,n)を介してその列に対する共通の列信号線Lcmに接続されている。例えば、第1列の光電変換素子PD(1,1)〜(4096,1)は、第1の列信号線Lc1に接続され、各光電変換素子PD(m,n)の共通電極Dは、全てバイアス配線Lbを介してバイアス電源54に接続されている。
同じ行のスイッチSW(m,n)の制御端子は、共通の行選択線Lrnに接続する。例えば、第1行のスイッチSW(1,1)〜(1,4096)は行選択線Lr1に接続され、行選択線Lr1〜4096はラインセレクタ61を介して撮像制御器34に接続されている。ラインセレクタ61は撮像制御器34からの制御信号を解読し、どのラインの光電変換素子PDの信号電荷を読み出すべきかを決定するアドレスデコーダ62と、このアドレスデコーダ62の出力に従って開閉される4096個のスイッチ素子63から構成されている。この構成により、任意のラインLrnに接続するスイッチSW(m,n)に接続する光電変換素子PD(m,n)の信号電荷を読み出すことができる。ラインセレクタ61の最も簡単なものとしては、単に液晶ディスプレイ等に用いられているシフトレジスタによって構成してもよい。
列信号線Lc1〜4096は、撮像制御器34により制御される信号読出回路71に接続されている。信号読出回路71には、それぞれ列信号線Lc1〜4096をリセット基準電位電源72にリセットするリセット用スイッチ73−1〜4096、それぞれ列信号線Lc1〜4096からの信号電位を増幅するプリアンプ74−1〜4096、それぞれのプリアンプ74−1〜4096の出力をサンプルホールドするS/H(サンプルホールド)回路75−1〜4096、S/H回路75−1〜4096の出力を時間軸上で多重化するアナログ・マルチプレクサ76、マルチプレクサ76のアナログ出力をディジタル化し画像処理器35に供給するA/D変換器77が設けられている。
図3に示す光検出器アレーでは、4096×4096個の画素を列信号線Lc1〜4096により4096個の列に分け、1行当りの4096画素の信号電荷を同時に読み出し、各列信号線Lc1〜4096、プリアンプ74−1〜4096及びS/H回路75−1〜4096を介してアナログ・マルチプレクサ76に転送し、ここで時間軸多重化して、順次にA/D変換器77によりディジタル信号に変換する。
図3においては、信号読出回路71が1つのA/D変換器77のみを具備するように図示しているが、実際には4〜32系統で同時にA/D変換を実行する。これはアナログ信号帯域とA/D変換レートを不必要に大きくすることなく、画像信号の読取時間を短くすることが要求されるためである。信号電荷の蓄積時間とA/D変換時間とは密接な関係にあり、高速にA/D変換を行うとアナログ回路の帯域が広くなり、所望の高S/Nを達成することが難しくなるので、通常はA/D変換速度を不必要に速くすることなく、画像信号の読取時間を短くすることが要求される。多くのA/D変換器77でマルチプレクサ76の出力をA/D変換すればよいが、A/D変換器77の数を増せばそれだけコストが高くなる。従って、上述の点を考慮して適当な数のA/D変換器77を用いる。
X線の照射時間は約10〜500m秒であるので、全画面の取込時間或いは電荷蓄積時間を100m秒のオーダ或いは稍々短めにすることが適当である。例えば、全画素を順次に駆動して100m秒で画像を取り込むためには、アナログ信号帯域を50MHz程度にし、例えば10MHzのサンプリングレートでA/D変換を行うと、最低でも4系統のA/D変換器77が必要になる。本実施の形態では、16系統で同時にA/D変換を行い、16系統のA/D変換器77の出力はそれぞれに対応する16系統の図示しないメモリ(FIFO等)に入力される。そのメモリを選択して切換えることにより、連続した1ラインの走査線に相当する画像データが画像処理器35に転送される。
図4はセンサ読み出しの概要タイミングチャート図であり、図3と併せて1回のX線照射により静止画撮像を行う場合の二次元駆動について述べる。図4において、(a)はX線への曝射要求制御信号、(b)はX線の曝射状態、(c)はセンサ内電流源53の電流、(d)は行選択線Lrnの制御状態、(e)はA/D変換器77へのアナログ入力をそれぞれ模式的に表している。
バイアス配線を光電変換時のバイアス値Vsのまま、全ての列信号配線Lcをリセット基準電位電源72に接続し、列信号線をリセットする。その後に、行選択配線Lr1に正電圧Vghを印加し、スイッチSW(1,1)〜(1,4096)をオンし、第1列の光電変換素子のゲート電極GをVbtにリセットする。次に、行選択配線Lr1を正電圧Vglにして、スイッチSW(1,1)〜(1,4096)をオフする。行の選択を順次に繰り返し、全ての画素のリセットを行うと撮影準備が完了する。
以上の動作は信号電荷の読み出し操作と同じであり、信号電荷を取り込むか否かの差しかないので、このリセット操作を以後「空読み」と呼ぶ。この空読み動作中で、行選択配線Lrを全て同時にVghにすることは可能であるが、この場合では読出準備完了時に、信号配線電位がリセット電圧Vbtから大きくずれることなり、高S/Nの信号を得ることが難しい。また前述の例では、行選択配線Lrを1から列信号配線4096にリセットしたが、撮像制御器34の設定に基づいた駆動器21の制御により、任意の順番でリセットを行うことが可能である。空読み動作を繰り返してX線の曝射要求を待ち、曝射要求が発生すると、画像取得準備のために空読み動作を再度行いX線曝射に備える。画像取得準備が整ったときに、撮像制御器34の指示に従ってX線が曝射される。
X線の曝射後に、光検出部51の信号電荷を読み出す。先ず、光電変換素子PDの或る行(例えばLr1)に対する行選択配線LrにVghを印加し、蓄積電荷信号を信号配線Lc1〜4096に出力する。列信号配線Lc1〜4096から1列ずつ4096画素分の信号を同時に読み出す。次に、異なる行選択配線Lr、例えばLr2にVghを印加し、蓄積電荷信号を信号配線Lc1〜4096に出力する。列信号配線Lc1〜4096から1列ずつ4096画素分の信号を同時に読み出す。この動作を列信号配線4096に順次繰り返すことにより、全ての画像情報を読み出す。
上記の動作中に、各センサの電荷蓄積時間はリセット動作が完了したとき、即ち空読み時のスイッチングTFT52をオフしてから、次に電荷読み出しが行われるためにTFT52がオンするまでの間であるために、各行選線毎に蓄積時間、時刻が異なる。
X線画像を読み出した後に補正用画像を取得する。これはX線画像の補正に使用するためであり、高画質の画像を取得するために必要な補正データである。基本的な画像取得方法はX線を曝射しない点以外は同じである。電荷蓄積時間はX線画像を読み出す際と、補正画像を読み出す際とで同じにする。また、高分解能の画像情報が必要でない場合や、画像データ取り込速度を速くしたい場合には、全ての画像情報を常に取り込む必要はなく、操作者Oの撮影方法の選択により、撮像制御器34は間引き、画素平均、領域抽出の駆動指示を駆動器21に設定する。
間引きを行うには、先ず行選択配線Lr1を選択し、列信号配線Lcから信号を出力する際に、例えばLc2n−1(n:自然数)のnを0から1つずつ増加させるように1列の読み出しを行い、その後の行を選択する際に行選択配線Lr2m−1(m:自然数)のmを1から1つずつ増加させて、1行の信号を読み出すことにより行われる。この例では、画素数を1/4に間引いたことになるが、撮像制御器34の設定指示に従って、駆動器21は1/9、1/16等に画素数を間引く。
また画素平均について、上述の動作中に行選択配線Lr2mとLr2m+1とに同時にVghを印加することにより、TFT2m,2nとTFT2m+1、2nとが同時にターンオンし、列方向の2画素のアナログ加算を行うことが可能である。これは2画素の加算に限っただけではなく、列信号配線方向の複数画素のアナログ加算を容易に行うことができることを表している。更に、行方向の加算については、A/D変換出力後に隣り合う画素同士(Lc2nとLc2n+1)をディジタル加算することにより、上述のアナログ加算と合わせて、2×2の正方形画素の加算値を得ることができる。
これにより、照射されたX線を無駄にすることなく、高速にデータを読み出すことが可能である。その他に、総画素数を減少して高速化を目指す方法として、画像の取込領域を制限する方法がある。これは、操作者Oが必要な領域を操作者インタフェース32から入力し、それに基づいて撮像制御器34は駆動器21に指示を出力し、駆動器21はデータ取込範囲を変更して光検出器アレー19を駆動する。
本実施の形態では、高速取込モードでは1024×1024の画素を30F/Sで取り込む。即ち、光検出器アレー19の全領域では4×4画素の加算処理を行って1/16に間引き、最も小さい範囲では1024×1024の領域で間引きなしで撮像する。このように、撮像することでディジタルズーム画像が得られる。
図5はX線検出器16の撮像動作を含むタイミングチャート図である。操作者インタフェース32に対する撮像要求信号(f)、レディ信号(g)、実X線曝射状態(h)、操作者Oの指示に基づいた撮像制御器34から駆動器21への撮影要求信号(i)、X線検出器16の撮影レディ信号(j)、グリッド17の駆動信号(k)、X線検出器16内のパワー制御信号(l)、X線検出器16の駆動状態、特に光検出器アレー19からの電荷読出動作(m)、画像データの転送状態や、画像処理や表示の状態(n)を表している。
操作者Oからの検出器準備要求又は撮影要求があるまで、駆動器21は(l)に示すようにパワー制御をオフ状態で待機する。具体的には、図3において行選択線Lr、列信号線Lc、バイアス配線Lbの電位を図示しないスイッチにより同電位特に接地電位に保ち、光検出器アレー19にバイアスを印加しない。更には、信号読出回路71、ラインセレクタ61、バイアス電源54を含む電源を遮断することにより、行選択線Lr、列信号線Lc、バイアス配線Lbの電位を接地電位に保つようにしてもよい。
操作者Oの操作者インタフェース32に対する撮影準備のための通常の管球のロータアップ等が開始する第1スイッチによる撮像要求信号(f)により、撮像制御器34はX線発生器11を(g)の撮影レディ状態に遷移させると共に、X線検出器16に対して撮影準備状態へ移行させる指示を出力する。指示を受けた駆動器21は光検出器アレー19にバイアスを印加すると共に、空読みFiを繰り返す。要求指示は例えばX線発生装置への曝射要求スイッチの第1スイッチや、X線検出器16が撮影準備のために数秒以上の所定時間を要する場合等には、X線検出器16の準備を開始するための指示である。
この場合に、操作者OがX線検出器16に対して意識的に撮影準備の要求指示を出さなくてもよい。即ち、操作者インタフェース32に対して被検体情報、撮影情報等が入力されたことにより、撮像制御器34は検出器準備の要求指示と解釈して、X線検出器16を検出器準備状態に移行させてもよい。
検出器準備状態では、光電変換モードにおいて空読みの後に、光検出部51に暗電流が徐々に蓄積されて、コンデンサ51bが飽和状態で保持されることを避けるため、空読みFiを所定間隔で繰り返す。操作者Oからのこの撮影準備要求がありながら、実際のX線曝射要求が発生していない期間に行う駆動、即ち検出器準備状態に行う空読みFiを所定の時間間隔T1で繰り返す駆動を以後「アイドリング駆動」と呼び、アイドリング駆動を行っている検出器準備状態の期間を「アイドリング駆動期間」と呼ぶ。このアイドリング駆動期間はどの程度続くかが実使用上では未定義のため、光検出器アレー19、特にスイッチングTFT52に負荷の掛かる読出動作を極力少なくするために、時間間隔T1は通常の撮影動作時よりも長く設定し、通常の読出駆動FrよりもTFT52のオン時間の短
いアイドリング専用空読み駆動Fiを行う。
X線検出器16のX線画像取得時の駆動は大きく2つの画像取得から成る。(m)に示した通り、1つはX線画像取得駆動であり、残りは補正用暗画像取得駆動である。それぞれの駆動は概ね同じであり、X線曝射が行われる動作があるか否かが主な違いである。更に、それぞれの駆動は共に撮像準備シーケンス、電荷蓄積(曝射ウィンドウ)、画像読み出しの3つの部分から構成される。
以下に、順を追ってX線画像取得について述べると、操作者Oから操作者インタフェース32に対する第2スイッチによる撮影要求信号(f)により、撮像制御器34はX線発生器11とX線検出器16との同期を取りながら撮影動作を制御する。撮影要求信号(f)に従って(i)のX線曝射要求信号に示すタイミングで、X線検出器16に対し撮像要求信号(f)をアサートする。駆動器21は撮像要求信号(f)に呼応して(m)の撮像駆動状態に示すように所定の撮像準備シーケンス駆動を行う。具体的には、リフレッシュが必要な場合はリフレッシュを行い、そして、撮像シーケンスのための専用空読みFpを所定回数及び電荷蓄積状態専用空読みFpfを行って、電荷蓄積状態(撮像ウィンドウ:T4)に遷移する。
その際に、撮像シーケンスのための空読みFpの回数及び時間間隔T2は、撮像制御器34から撮像要求に先んじて予め設定された値に基づいて行う。これは操作者Oの要求により操作性重視なのか或いは画質重視なのか、又は撮像部位により自動的に最適な駆動を選択して切換える。曝射要求から撮影準備完了までの期間T3は所用時間が短いことが実使用上要求されるので、そのために撮像準備シーケンス専用空読みFpを行う。更に、アイドリング駆動の如何なる状態からも曝射要求が発生した場合は、即時に撮像準備シーケンス駆動に入ることにより、曝射要求から撮影準備完了までの期間T3を短くすることによって操作性の向上を図る。
さて、駆動器21は検出器アレー19の撮像準備を行うことと同期して、グリッド17を移動させ始める。これは(h)の実X線曝射に同期してグリッドを最適な移動状態で撮像を行うためである。この場合も、駆動器21は撮像制御器34により設定された最適グリッド移動開始タイミング、最適グリッド移動速度で動作する。
X線検出器16の撮像準備が整った時点で、駆動器21は撮像制御器34に対し、X線検出器レディ信号(j)を返し、撮像制御器34はこの信号の遷移を元にして、X線の発生要求信号としてX線発生器11にアサートする。X線発生器11は(h)によるX線発生要求信号が与えられている間、X線を発生する。所定量のX線を発生すると撮像制御器34は(h)のX線発生要求信号をネゲートすると共に、(i)のX線撮像要求信号をネゲートすることにより、X線検出器16に画像取得タイミングを通知する。
このタイミングを基にして駆動器21は直ちにグリッド17を静止し、それまで待機状態であった信号読出回路71の動作を開始させる。グリッド静止時間及び信号読出回路71の安定のための所定待機時間後に、駆動器21に基づいてX線検出器アレー19から画像データを読み出して、画像処理器35に生画像を取得する。転送が完了すると、駆動器21は読出回路71を再び待機状態に遷移させる。
引き続き、X線検出器16は補正画像を取得する。即ち、先の撮像のための撮像シーケンスを繰り返し、X線照射のない暗画像を取得し、画像処理器35に補正用暗画像を転送する。このとき、撮像シーケンスは撮影の度にX線曝射時間等が若干異なる可能性があるが、それも含めて全く同じ撮影シーケンスを再現して暗画像を取得することによって、より高画質な画像が得られる。ただし、グリッド17の動作はこの限りでなく、暗画像取得時には振動の影響を抑えるために静止させておく。暗画像の取得後に、画質に影響しない所定のタイミングでグリッド17の初期化動作を行う。
図6は画像処理器35のブロック回路構成図であり、駆動器21からの信号はマルチプレクサ81で二岐され、それぞれX線画像用フレームメモリ82、暗画像用フレームメモリ83に接続され、これらのメモリ82、83の出力はオフセット補正回路84に接続されている。オフセット補正回路84の出力はゲイン補正回路85、欠陥補正回路86、画像処理回路87を経て、外部の表示制御器37に接続されている。なお、ゲイン補正回路85にはゲイン補正用フレームメモリ88が接続されている。
図6において、X線画像取得フレームFrxoフレームで取得されたX線画像が、マルチプレクサ81を経由してX線画像用フレームメモリ82に記憶され、続いて補正画像取得フレームFrnoフレームで取得された補正画像が、同様にマルチプレクサ81を経由して暗画像用フレームメモリ83に記憶される。暗画像の記憶完了から、オフセット補正回路84により例えばFrxo−Frnoのオフセット補正が行われる。引き続き、予め取得されゲイン補正用フレームメモリ88に記憶してあるゲイン補正用データFgを用いて、ゲイン補正回路85が例えば(Frxo−Frno)/Fgのゲイン補正を行う。欠陥補正回路86に転送されたデータは、不感画素や複数パネルで構成されたX線検出器16の継ぎ目部等に違和感を生じないように画像を連続的に補間して、X線検出器16に由来するセンサ依存の補正処理を完了する。
本実施の形態では、画像処理器35をシステム制御器31内に構成したが、上述の光検出器アレー19に大きく依存した画像処理機能は、X線検出器16及び薄型X線検出器22に内蔵するように構成してもよい。そして、その他の画像処理回路87により、一般的な画像処理、例えば階調処理、周波数処理、強調処理等の処理を施した後に、表示制御器37に処理済データを転送して、モニタ33に撮影画像を表示する。
図7は薄型X線検出器22と中継器23のブロック回路構成図を示し、薄型X線検出器22内にはMPU91、データ駆動制御部92、画像メモリ93、無線通信モジュール94、外部接続コネクタ95、電源96が設けられている。MPU91は薄型X線検出器22内の様々な動作、状態を制御し、MPU91の内部には後述する個別通信キーを唯一つ記憶する個別通信キーレジスタ97やその個別IDキーの有効期間を監視する有効期間カウンタ98がソフトウェアにより構成されている。
データ駆動制御部92の機能は、物理層レベルの通信制御等のロジックレベル制御を行うほか、MPU91の指示に基づいて光検出器アレー19を駆動し、それに基づく光検出器アレー19からのアナログ出力を図示しないAD変換部によりディジタル変換された画像を取り込み、取り込まれたディジタル画像を画像メモリ93に書き込む。更に、縮小画像データを無線通信モジュール94を介して中継器23に出力し、機械的に接続されている場合には、全画像データをコネクタ95を介して中継器23に出力する。なお、撮影間隔等に余裕がある場合には無線通信を用いて全画像データを転送してもよいが、撮影動作のための通信のほうが画像転送動作よりも優先されるため、画像転送は屡々中断される。このため、画像分割送信、画像再送機能等を有する必要がある。
画像メモリ93は2〜3枚程度の画像の揮発性メモリ、例えばSRAM、DRAM(特にSDRAM)と20枚程度の不揮発性メモリ、例えばフラッシュROM、メモリバックアップされたRAM等で構成されている。また、この不揮発メモリは場合によってはリムーバブルメディアで構成されてもよく、その場合には不揮発性メモリは着脱可能な機械構造を有する。
電源96は図示しない配線により薄型X線検出器22内の全ての部分に電源を供給するための充電可能な容量電源であり、充電時間が短く撮影時の短時間大消費電力に対応可能な電気二重層コンデンサで形成されている。容量は約20枚程度以下の連続撮影が可能な程度に設定されている。このとき、例えば400F程度の容量に設定する。また、電源96は場合によっては二次電池等で構成してもよいが、電池交換が必要であり、充電時間を要する等の使用上の制限事項が電気二重層コンデンサに比べて多くなる。
中継器23内には、MPU101、画像データフロー制御器102、画像メモリ103、充電器104が設けられている。MPU101は中継器23内の制御を行うと共に、複数の薄型X線検出器22の制御を行う。MPU101の内部には、後述する個別通信キーを接続可能な薄型X線検出器22の台数分を記憶する個別通信キーレジスタ105や、その個別IDキーの有効期間を監視する有効期間カウンタ106、更には固有通信キー割付のための通信キー用カウンタ107がソフトウェアにより構成されている。
画像データフロー制御器102はMPU101の指示に基づいて、薄型X線検出器22から送られてくるX線画像の転送を制御する。画像メモリ103は揮発性メモリでDRAMで構成されるフレームバッファ用途のメモリである。特に、無線通信時等は誤り訂正の発生や画像再送の必要性が生ずる可能性があり、画像転送が完了前にシステム制御器31にデータを流し初めてしまうと、システム制御器31内での制御が煩雑になるので、薄型X線検出器22と中継器23との画像転送が完了した後に、システム制御器31へ画像を転送するために画像メモリ103が必要となる。充電器104は薄型X線検出器22の電源96を急速に充電するに足る十分な容量、例えば30秒程度で500mWh程度の容量を充電できる能力を確保しなければならない。
図7において、薄型X線検出器22と中継器23との間の波状矢印は無線通信を表し、点線は有線接続又はコネクタによる直接接続を表している。有線接続又はコネクタ接続がされている場合には無線モジュールは停止する。コネクタ95は着脱容易かつ高信頼性のコネクタが使用されなければならない。更に云えば、充電器104による充電動作を含めて、データのやり取りをトランス等による電磁結合により行い、必ずしも明確なコネクタ95を設ける必要はない。ただし、この場合には、充電時間や転送時間が延びる他に、薄型X線検出器22と中継器23とが近接したことを検知する機構等が必要となる。
図8は操作者インタフェース32の表示画面の例を示し、表示画面111内には、取得画像の縮小簡易画像表示領域112、各X線検出器16又は薄型X線検出器22に応じた撮影対象部位113、有効X線検出器表示エリア114が存在する。薄型X線検出器22を使用した場合に、先の無線通信により転送する画像を基に再処理を行って画像表示を行う。有効X線検出器表示エリア114には、システム制御器31が制御可能状態にあるX線検出器16又は薄型X線検出器22を表すアイコンが表示される。
図9は有効X線検出器表示エリア114の例を示し、各アイコン121中で最上段はX線検出器の種類、中段は撮影エリア、下段は画素サイズをそれぞれ表している。(a)の場合は、臥位タイプのX線検出器22がシステム制御器31により識別されており、更にグレーになっていることは臥位タイプのX線検出器16が現在の制御対象であることを表している。また、(a)で点線によるアイコン121が3つあることは、現在のシステム設定で3台までの薄型X線検出器22を登録可能な設定であることを表している。この場合に、中継器23中のMPU101中の個別通信キーレジスタ105、及び有効期間カウンタ106も3個ずつ用意されるように設定されている。
さて、(a)の状態で新たに薄型X線検出器22が中継器23に接続されると、(b)に示すようにシステム制御器31が制御可能状態であるX線検出器22が、新しいアイコン121として追加され、(b)で「カセッテ」と書かれたアイコン121がそれを表している。薄型X線検出器22をシステム制御器31が認識した時点で、システム制御器31は薄型X線検出器22を現在の制御対象として自動的に変更している。ユーザが(b)の状態から臥位タイプで撮影を行いたい場合には、臥位タイプのアイコンをタッチパネルやマウス操作により選択することにより、制御対象を臥位タイプに変更することが可能である。また、このとき撮影対象部位113の表示も制御対象のX線検出器22に応じた撮影対象部位113に自動的に変更される。
図9、図10、図11を用いて、複数種の薄型X線検出器22と中継器23とのデータ及び制御の取り交わし方法について説明する。図10の手順1のように複数の薄型X線検出器22A(カセッテ/大四つ/□100μm)、22B(カセッテ/半切/□160μm)等が存在する場合に、ケーブルレスでX線撮影を行おうとすると、どの薄型X線検出器22を使用してX線撮影を行うか否かが薄型X線検出器22側で分からなくなる。予め、固有のX線検出器情報を中継器23を含むシステム制御器31に薄型X線検出器22のIDを全て記憶させ、そのIDを用いてシステム制御器31側から一方的に使用する薄型X線検出器22のIDを出力するようにしてもよいが、その場合には例えば複数のX線室1を有する病院で、多くの薄型カセッテを共通で使用する場合等は、操作者Oが使用する薄型X線検出器22の番号等を調べて入力する必要が生ずる。
本実施の形態では、使用すべき薄型X線検出器22Aを、撮影前に図10の手順1のように中継器23にセットする。有効X線検出器表示エリア114の状態は、手順1の時点では、図9(b)の状態つまり1台の臥位タイプX線検出器16と1台のカセッテタイプの薄型X線検出器22Bとが制御可能状態である。図10の手順2の時点で、先ず中継器23は薄型X線検出器22Aの固有情報を取得し、図9(c)に示すようにシステム制御器31に伝達して、操作者インタフェース32にその存在を表示する。
次に、中継器23中のMPU101は、薄型X線検出器22Aに予め定められたルールに基づいて互いの通信キーを割り振る。即ち、MPU101は先ず通信キーを作成し、2つのMPU101及びMPU91中の通信キーレジスタ105、個別キーレジスタ97に作成した通信キーを記憶させ、同時に通信キーに対応する有効期間カウンタ106を初期化する。通信キーは例えばX線発生器11又は単に中継器23のID番号と薄型X線検出器22を識別するためのシリアルIDを通信キーとして割り振ってもよい。時として、X線室1には複数のX線発生器11が設置されているが、この場合でも何れか1つのX線発生器11からしか同時にはX線は発生されないため、X線発生器11のシリアルIDよりもそれら複数又は複数のX線発生器11を制御するシステム制御器31又は中継器23のID番号を基に通信キーを作成することが望ましい。
図12はシリアルIDの例であり、図12(h)中の通信キー用カウンタ107は通信キーが割り振られるごとに、+1インクリメントされるMPU101中のカウンタである。また、このID割付時に念のため重複がないかどうかをケーブルレス通信を試みて、応答がないことをチェックしておく。勿論、このチェックの際には、まだ割り付られる薄型X線検出器22Aはチェック用問いかけには応じない。仮に重複があるようであれば、次のIDを割り付けて上述の割付作業を問題がなくなるまで繰り返す。通信キーは薄型X線検出器22と中継器23との間のみで使用するように構成することが可能であり、その割付タイミングは薄型X線検出器22を中継器23にセットしたときをトリガとして開始する。
また、図10の手順2ではID割付の他に、薄型X線検出器22の充電も行う。前述のように、複数の薄型X線検出器22を使用する場合等は、撮影中以外も中継器23に接続されるとは限らないため、放電状態で放置されている可能性も高い。そのため、急速な充電が要求されることも十分に考えられ、二次電池よりも電気二重層コンデンサのような急速充電可能な電源が望ましい。
実際にX線撮影を行う際には、図10の手順3のように、操作者Oは薄型X線検出器22を中継器23から取り外して撮影すべき状態に、X線発生器11、被検体S、薄型X線検出器22のそれぞれの位置を調整する。操作者Oは操作者インタフェース32に表示された薄型X線検出器22Aを選択することにより、中継器23は無線で薄型X線検出器22Aにその情報を伝達する。この際に、先に割り当てた通信キーを使用することにより、薄型X線検出器22Bや隣室の薄型X線検出器22等を作動状態にすることなく、薄型X線検出器22Aのみを作動状態にすることができる。通信キーのようなIDを用いた通信技術そのものはごく一般的であり、例えば単に通信相手を通信キーを用いて指定した後に、所定ビット長又は所定デリミタまでのパケット通信を行う。
さて、作動状態になる際には、薄型X線検出器22は選択表示LED等が点灯すると同時にブザー音を発する。また、操作者Oの所望のタイミングでアイコン121を選択することで、薄型X線検出器22はブザー音等を発し、操作者Oが使用している薄型X線検出器22が間違っていないことを確認することもできる。更には、薄型X線検出器22には図示しない選択用スイッチが用意されており、その選択スイッチを押すことにより、そのスイッチが押された薄型X線検出器22を強制的に作動状態にすることも可能である。
その際に、薄型X線検出器22の選択状態はアイコン121がグレーに変わるように操作者インタフェース32に表されるため、操作者Oが手にしている薄型X線検出器22が操作者インタフェース32上のどのボタンに対応しているのか、又はそこにリストアップされていないのかが確認可能である。また、電波等を利用して、X線発生器11の正面に対象となる薄型X線検出器22が存在しているか否かをチェックするような構成してもよい。
以後に、同様に通信キーを使用して図5に示したようなX線同期を取りながらX線撮影を行うことができる。ここで、(i)のX線撮像要求信号及び(j)のX線検出器レディ信号そして(h)のX線曝射信号は、撮影ミスを最小限に抑えるために、それらの遷移タイミングのみに通信を行うのではなく、アサート期間中には常に発信し続けることが望ましい。場合によっては、それらの信号として変調等を施した音波等を使用してもよい。
更に、X線曝射時には薄型X線検出器22はX線発生器11から、その曝射そのものの情報例えばトータル曝射回数、撮影情報例えば撮影対象部位、更には被検体情報例えば被検体IDを、X線曝射時に取得するように構成しておくとよい。取得タイミングはX線曝射前が望ましく、取得完了しないうちは(j)のX線検出器レディ信号をアサートしないようにするとよい。この曝射情報、撮影情報、被検体情報とを画像ヘッダに付加し、これを基にデータ処理することにより、被検体情報入力に対する後の撮影画像のずれは発生しなくなる。
X線撮像が完了した時点で、ケーブルレス状態では転送速度の制限から、撮影した全画像をケーブル接続状態のような短時間の内に転送することは難しい。そのため、縮小画像を最初に転送して、明らかな撮像ミスがないか否かを確認できる画像を先の取得画像の縮小簡易画像表示領域112に表示する。撮像した全画像は薄型X線検出器22内の内蔵メモリに蓄えておく。薄型カセッテ内には、約20枚程度以下の不揮発性画像メモリとその撮影に耐え得る電源程度が搭載されていればよい。
それ以上の撮影の際には、薄型X線検出器22を交換する。これは、通常では1被検体当りの撮像枚数は20枚以下であることと、撮像された画像データ収集を迅速に行うためである。即ち、図10に示す手順3の状態はあまり長く続けさせず、被検体Sが代わる度に手順1から繰り返す。より作業を迅速に進めるためには、薄型X線検出器22Bを薄型X線検出器22Aと同じ仕様のものを用意して、交互に使用することにより時間の損失が殆どない状態で、次の被検体Sの撮像に移ることができる。図10では、中継器23には薄型X線検出器22を2個までセットしてあるが、この数を増やすように構成してもよいことは勿論である。
手順3から手順1へ戻った場合に、一旦、通信キーを割り付けられた薄型X線検出器22Aは、例えば1時間の所定有効期間内に中継器23にセットつまり接続されれば、従来の通信キーはそのまま有効として通信キーレジスタ105に残され、先の有効期間を計測するため対応する有効期間カウンタ106は初期化される。
ただし、有効期間内であっても、所定の手続きにより先の有効X線検出器表示エリア114からその薄型X線検出器22に対応するアイコン121が既に削除されている場合には、混乱を避けるために新たに通信キーを割振り、再度、アイコン121を有効X線検出器表示エリア114に表示させる。逆に、例えば1時間の所定時間内に中継器23に戻って来ない薄型X線検出器22の通信キーは無効となり、例えば図9(e)→(f)の上から3つめのアイコン121のように点線状アイコンに変更される。無効となった通信キー、対応する通信キーレジスタ105及び有効期間カウンタ106は、新たに中継器23に接続された薄型X線検出器22のために開放される。
勿論、無効になった直後に全く同じ通信キーをアサインすると、誤認識の原因になり得るために、1個の中継器23当り例えばIDカウンタ107による128個程度の通信キーがあれば、図12に示すようにそれを順次に使用するだけでシステム運用上問題のない時間間隔となる。また、薄型X線検出器22及び中継器23は有効期間カウンタ106による通信キーの有効期間がタイムアウトした時点で通信キーを忘れる、つまり通信キーレジスタ105をクリアする。通信キーをクリアした薄型X線検出器22は、再度手順1から始めれば何ら問題はない。更に、未収集の画像データがあっても、これは不揮発性メモリに蓄えられており、先の曝射時情報を不揮発性メモリ内にヘッダとして持っているため、例えば撮像時の中継器23とは異なる中継器23’から画像を収集しても、何ら画像及び被検体の整合性に問題はない。
さて、図10の手順2のような状態で、図示しない別の薄型X線検出器22Cを使用する場合には、薄型X線検出器22A又は22Bを単に中継器23から取り外して、その空いた接続部に薄型X線検出器22Cをセットすればよい。その状態では、図9(d)のように表示され、使用可能な薄型X線検出器22が3台となっている。更に、この図9(d)の状態中に、全ての薄型X線検出器22A、22B、22Cの有効状態で、新たな4台目の薄型X線検出器22Dが中継器23に接続された場合に、有効期間カウンタ106によって管理された最も長い間中継器23から外されている薄型X線検出器22が、システム制御器31の有効X線検出器表示エリア114から削除され、削除された部分に新たに登録された薄型X線検出器22Dが表示される。
その際に、通信キーは新たな薄型X線検出器22D用に更新される。有効X線検出器表示エリア114は、図9(d)→(e)のように表示が変更される。(d)→(e)の例では、(d)の上から2つめのアイコンに対応する薄型X線検出器22(カセッテ/半切/□160μm)が最も長時間、中継器23から外れていたことを表しており、(e)ではその部分に新規アイコンが登録されている。以上の例からも分かる通り、図10では中継器23の装着可能ホルダ部が2個所であるが、同時に2つを超える薄型X線検出器22を取り扱うことが可能である。
また、図9(e)の状態では、同じ種類の3台の薄型X線検出器22が制御可能状態にあるが、まさに本発明の技術を用いて各アイコン121に対応する薄型X線検出器22毎に個別通信キーが割り振られ、作動状態に選択されている薄型X線検出器22のみを制御することが可能である。
以上説明したように本発明に係るX線撮像装置及びこれらの通信方法は、複数の二次元放射線検出手段とワイヤレス通信可能な通信制御手段とを備え、検出手段と通信制御手段とは容易に物理的に接続することを可能とし、接続の際に通信制御手段は複数の検出手段にそれぞれ個別IDキーを付与し、個別IDキーに基づいてワイヤレス通信を行うことにより誤動作なくX線撮像を行うことができる。