本発明のレジストパターン形成方法は、それぞれ所定の、レジスト膜形成工程、露光工程、及び現像工程を含む。以下各工程について順に説明する。
≪レジスト膜形成工程≫
レジスト膜形成工程では、(A)質量平均分子量が10000以下であって、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(以下「(A)成分」ともいう)と、(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下「(B)成分」ともいう)と、(C)活性光線又は放射線の照射により塩基性が弱まる塩基性化合物とを含有するレジスト組成物(以下「(C)成分」ともいう)を、線幅30〜200nm、アスペクト比1.5〜5.0の段差を有する基板上に塗布してレジスト膜を形成する。
以下、レジスト膜形成工程において用いる、レジスト組成物と、レジスト膜形成方法とについて、順に説明する。
<レジスト組成物>
以下、レジスト組成物に必須に含まれる(A)成分、(B)成分、及び(C)成分と、任意成分とについて順に説明する。
[(A)成分]
(A)成分について、「樹脂」とは、膜形成能を有する樹脂を意味する。(A)成分としては質量平均分子量が10000以下である樹脂を用いる。樹脂の質量平均分子量は、10000以下であって、当該樹脂を含むレジスト組成物によりレジスト膜を形成可能である限り特に限定されない。樹脂の質量平均分子量は、5000〜10000が好ましく、6000〜8000がより好ましく、7000〜8000が特に好ましい。このような分子量の樹脂を用いることにより、充分な膜形成能を備えると共に、基板上の段差部分に良好に充填されるレジスト組成物を得やすい。また、露光余裕度及び焦点深度幅が良好となる。樹脂の「分子量」はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。
(A)成分は、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂であれば特に限定されない。(A)成分として、好適なものとしては、親水基(水酸基、カルボキシ基等)を有する樹脂の親水性基を、酸解離性の保護基により保護された「酸分解性基」とした樹脂(A1)を含む材料が使用される。
親水基を有する樹脂としては、例えばノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン(PHS)やヒドロキシスチレン−スチレン共重合体等の、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位を有する樹脂(PHS系樹脂)、アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有するアクリル系樹脂等が挙げられる。
ここで本明細書及び特許請求の範囲において、「酸分解性基」は、酸(露光により(B)成分から発生する酸)の作用により、酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子(アクリル酸のカルボニル基が結合する炭素原子)に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子又は基)が結合しているものも含む。α位の炭素原子に結合する置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1〜5が好ましく、1が最も好ましい。
アクリル酸エステルのα位に結合する基としては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
以上説明した(A1)成分の樹脂としてはアクリル酸エステルから誘導される構成単位を含むアクリル酸エステル樹脂が好ましい。以下、(A1)成分について、アクリル酸エステル誘導樹脂(樹脂(a))について説明する。
(樹脂(a)、アクリル酸エステル誘導樹脂)
樹脂(a)は酸分解性基を有する。樹脂(a)は、酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有するのが好ましい。また、樹脂(a)は、構成単位ラクトン含有環式基を含みアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有するのが好ましい。さらに、樹脂(a)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)、及び/又は脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)を有するのが好ましい。なお、樹脂(a)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、構成単位(a1)〜(a4)の他に、従来使用されているレジスト組成物用のアクリル酸エステル誘導樹脂に含まれる、種々の構成単位を含んでいてもよい。以下、構成単位(a1)〜(a4)について説明する。
〔構成単位(a1)〕
構成単位(a1)は、酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。構成単位(a1)における酸分解性基は、露光により(B)成分から発生した酸の作用により分解して、(A)成分である樹脂のアルカリに対する溶解性を増大させるものである。構成単位(a1)は、下記式(a1−0−1)又は(a1−0−2)で表される酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位であるのが好ましい。
[式(a1−0−1)〜(a1−0−2)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a1は酸解離性基であり、Y
a1は2価の連結基であり、X
a2は酸解離性基である。]
構成単位(a1)において酸分解性基を形成する酸解離性基としては、
(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、
(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、
の双方をいう。
(i)として第3級アルキルエステル型酸解離性基又はアセタール型酸解離性基が挙げられる。(ii)として、第3級アルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
第3級アルキルエステル型酸解離性基としては例えば、下記式(1−1)〜(1−9)で表される基、下記式(2−1)〜(2−6)で表される基等が挙げられる。
[式(1−1)〜(1−9)中、R
a4はアルキル基であり、gは0〜8の整数である。]
[式(2−1)〜(2−6)中、R
a5及びR
a6は、それぞれ独立してアルキル基である。]
上記Ra4のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。直鎖状のアルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1又は2が特に好ましい。直鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、及びn−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基又はn−ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、3〜10が好ましく、3〜5がより好ましい。分岐鎖状のアルキル基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、及びネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基がより好ましい。
gは0〜3の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
Ra5〜Ra6のアルキル基としては、Ra4のアルキル基と同様のものが挙げられる。
上記式(1−1)〜(1−9)、及び(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されていてもよい。また、上記式(1−1)〜(1−9)、及び(2−1)〜(2−6)中、環を構成する炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素化アルキル基が挙げられる。
アセタール型酸解離性基としては、例えば、下記式(p1)で表される基が挙げられる。
[式(p1)中、R
a7,R
a8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0〜3の整数を表し、Yは炭素数1〜5のアルキル基又は脂肪族環式基を表す。]
上記式(p1)中、nは、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1がより好ましく、0が最も好ましい。Ra7,Ra8のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
Yのアルキル基としては、上記アクリル酸エステルについての説明で、α位の置換基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられる。なお、Ra7と結合してもよく、この場合、Ra7と、Yと、Yが結合した酸素原子と、酸素原子及びRa7が結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
Yの脂肪族環式基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されているか、されていないモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、及びテトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基や、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。また、これらのモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基又はポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基の環を構成する炭素原子の一部がエーテル性酸素原子(−O−)で置換されたものであってもよい。
第3級アルキルオキシカルボニル基としては、例えば、下記式(a1−r−3)で表される基が挙げられる。
[式(a1−r−3)中、Ra’
7〜Ra’
9はアルキル基である。]
式(a1−r−3)中、Ra’7〜Ra’9は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、1〜3がより好ましい。
前述の通り、構成単位(a1)として、下記式(a1−0−1)で表される構成単位、下記式(a1−0−2)で表される構成単位等が挙げられる。
[式(a1−0−1)〜(a1−0−2)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a1は酸解離性基であり、Y
a1は2価の連結基であり、X
a2は酸解離性基である。]
式(a1−0−1)において、Rのアルキル基、ハロゲン化アルキル基は、それぞれ、上記アクリル酸エステルについての説明で、α位の置換基として挙げたアルキル基、ハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
Xa1は、酸解離性基であれば特に限定されることはなく、例えば上述した第3級アルキルエステル型酸解離性基、アセタール型酸解離性基等を挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性基が好ましい。
式(a1−0−2)において、Rは上記と同様である。Xa2は、アセタール型酸解離性基、上記式(a1−r−3)で表される基が挙げられる。Ya1の2価の連結基としては、特に限定されず、例えばアルキレン基、2価の脂肪族環式基、2価の芳香族環式基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
Ya1がアルキレン基である場合、その炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましく、1〜3が最も好ましい。
Ya1が2価の脂肪族環式基である場合、脂肪族環式基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、イソボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン又はテトラシクロドデカンから水素原子が2個以上除かれた基が特に好ましい。
Ya1が2価の芳香族環式基である場合、芳香族環式基としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。芳香族炭化水素環の炭素数は、6〜15が好ましい。芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、及びアントラセン環等が挙げられる。これらの中でもベンゼン環又はナフタレン環が特に好ましい。
Ya1がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)2−、−S(=O)2−O−、式−A−O−B−で表される基、式−[A−C(=O)−O]m’−B−、−A−O−C(=O)−B−で表される基等が挙げられる。ここで、式−A−O−B−、[A−C(=O)−O]m’−B−、又は−A−O−C(=O)−B−中、A及びBは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、−O−は酸素原子であり、m’は0〜3の整数である。
Ya1が−A−O−B−、[A−C(=O)−O]m’−B−、又は−A−O−C(=O)−B−である場合、A及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。炭化水素基が「置換基を有する」とは、炭化水素基における水素原子の一部又は全部が、水素原子以外の基又は原子で置換されていることを意味する。
Aにおける炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。Aにおける脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
Aにおける脂肪族炭化水素基として、具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、脂肪族環式基等が挙げられる。直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、2〜5がさらに好ましく、2が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基[−(CH2)2−]、トリメチレン基[−(CH2)3−]、テトラメチレン基[−(CH2)4−]、ペンタメチレン基[−(CH2)5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。具体的には、−CH(CH3)−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CH3)(CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH2CH3)−、−C(CH2CH3)2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−C(CH3)2CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH3)CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2CH2−等のアルキルテトラメチレン基等のアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
これら直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
Aとしては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基又はエチレン基が特に好ましい。
Bとしては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
また、式−[A−C(=O)−O]m’−B−で表される基において、m’は0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1がより好ましく、1が最も好ましい。
以下に、上記式(a1−0−1)で表される構成単位の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
以下に、上記式(a1−0−2)で表される構成単位の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
樹脂(a)中、構成単位(a1)の割合は、樹脂(a)を構成する全構成単位に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、25〜50モル%がさらに好ましい。構成単位(a1)の割合をかかる範囲とすることにより、パターンの形成が容易であるレジスト組成物を調製しやすい。
〔構成単位(a2)〕
構成単位(a2)は、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、下記式(a2−1)又は(a2−2)で表される酸分解性基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。ここで、ラクトン含有環式基とは、−O−C(=O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつの目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a2)のラクトン環式基は、樹脂(a)をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高められる点で有効である。
[式(a2−1)〜(a2−2)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a5はラクトン含有環式基であり、Y
a4は2価の連結基であり、X
a6はラクトン含有環式基である。]
式(a2−1)〜(a2−2)において、Ya4の具体例としては、前述のYa1と同様のものが挙げられる。
式(a2−1)〜(a2−2)において、Xa5、又はXa6のラクトン環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、ラクトン含有単環式基としては、4〜6員環ラクトンから水素原子を1つ除いた基、例えばβ−プロピオノラクトンから水素原子を1つ除いた基、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基、δ−バレロラクトンから水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
構成単位(a2)の具体例を以下に示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
樹脂(a)において、構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂(a)中、構成単位(a2)の割合は、樹脂(a)を構成する全構成単位の合計に対し、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。
〔構成単位(a3)〕
構成単位(a3)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)である。樹脂(a)が構成単位(a3)を有することにより、樹脂(a)の親水性が高まり、感度、解像性、リソグラフィー特性等が向上する。なお、構成単位(a3)は、前記構成単位(a1)、及び(a2)には該当しない構成単位である。すなわち、「極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位」あっても、前記構成単位(a1)、及び(a2)の何れかに該当する構成単位は、構成単位(a3)には該当しない。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基)等が挙げられる。これらの中でも、水酸基、カルボキシ基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
構成単位(a3)において、脂肪族炭化水素基に結合する極性基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましく、1個が最も好ましい。
構成単位(a3)としては、下記式(a3−1)で表される構成単位が好ましい。
[式(a3−1)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a7は2価の脂肪族炭化水素基である。]
Xa7としての2価の脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、飽和であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基として、具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
「直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基」は、炭素数が1〜12であることが好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が、極性基以外の置換基で置換されていてもよい。極性基以外の置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。また、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子間にヘテロ原子を含む2価の基が介在してもよい。「ヘテロ原子を含む2価の基」としては、前記構成単位(a1)の説明で、式(a1−0−2)中のYa1の2価の連結基として挙げた「ヘテロ原子を含む2価の連結基」と同様のものが挙げられる。
「構造中に環を含む脂肪族炭化水素基」としては、環状の脂肪族炭化水素基、環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか又は鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。環状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、3〜30が好ましい。また、環状の脂肪族炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよく、多環式が好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基として、具体的には、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。例えば単環式の脂肪族炭化水素基としては、炭素数3〜20のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式の脂肪族炭化水素基としては、炭素数7〜30のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が、前述の極性基以外の置換基で置換されていてもよい。極性基以外の置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
樹脂(a)が含有する構成単位(a3)は1種であってもよく2種以上であってもよい。樹脂(a)が構成単位(a3)を有する場合、樹脂(a)中の構成単位(a6)の割合は、樹脂(a)を構成する全構成単位の合計に対して1〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。
〔構成単位(a4)〕
構成単位(a4)は、脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)である。構成単位(a4)に含まれる脂肪族炭化水素基は、構成単位(a3)において説明した極性基を含まない。樹脂(a)が構成単位(a4)を有することにより、樹脂のガラス転移温度(Tg)を変化させることができ、形成されるレジスト膜の特性を向上させることができる。
構成単位(a4)としては、下記式(a4−1)で表される構成単位が好ましい。
[式(a4−1)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、X
a8は脂肪族炭化水素基である。]
Xa8としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、飽和であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基として、具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
「直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基」は、炭素数が1〜12であることが好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が、極性基以外の置換基で置換されていてもよい。極性基以外の置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。また、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子間にヘテロ原子を含む2価の基が介在してもよい。「ヘテロ原子を含む2価の基」としては、前記構成単位(a1)の説明で、式(a1−0−2)中のYa1の2価の連結基として挙げた「ヘテロ原子を含む2価の連結基」と同様のものが挙げられる。
「構造中に環を含む脂肪族炭化水素基」としては、環状の脂肪族炭化水素基、環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか又は鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。環状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、3〜30が好ましい。また、環状の脂肪族炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよく、多環式が好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基として、具体的には、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。例えば単環式の脂肪族炭化水素基としては、炭素数3〜20のモノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式の脂肪族炭化水素基としては、炭素数7〜30のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、水素原子の一部又は全部が、前述の極性基以外の置換基で置換されていてもよい。極性基以外の置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
樹脂(a)が含有する構成単位(a4)は1種であってもよく2種以上であってもよい。樹脂(a)が構成単位(a4)を有する場合、樹脂(a)中の構成単位(a6)の割合は、樹脂(a)を構成する全構成単位の合計に対して5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。
以上説明した(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。レジスト組成物中、(A)成分の含有量は、特に限定されず、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて適宜調整される。
[(B)成分]
(B)成分は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であり、レジスト膜形成用の材料において酸発生剤として使用される化合物から適宜選択して、使用することができる。(B)成分として用いる化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸発生剤の例としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類等のジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤等多種のものが知られている。
オニウム塩系酸発生剤として、例えば下記式(b1)又は(b2)で表される化合物を用いることができる。
[式(b1)、及び(b2)において、R
b1〜R
b3,R
b5〜R
b6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又はアルキル基を表す。式(b1)におけるR
b1〜R
b3のうち、何れか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R
b4は、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はアルケニル基を表す。R
b1〜R
b3のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R
b5〜R
b6のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
式(b1)中、Rb1〜Rb3はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又はアルキル基を表す。なお、式(b1)におけるRb1〜Rb3のうち、何れか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。また、Rb1〜Rb3のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。Rb1〜Rb3のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、Rb1〜Rb3の全てがアリール基であることが最も好ましい
Rb1〜Rb3のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
アリール基は、置換基を有していてもよい。「置換基を有する」とは、アリール基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていることを意味する。アリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシアルキルオキシ基、−O−Rb7−C(=O)−(O)n”−Rb8[式中、Rb7はアルキレン基又は単結合であり、Rb8は酸解離性基又は酸非解離性基であり、n”は0又は1である。]等が挙げられる。
アリール基の置換基がアルキル基である場合、アルキル基は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることがより好ましい。
アリール基の置換基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
アリール基の置換基がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
アリール基の置換基がアルコキシアルキルオキシ基である場合、アルコキシアルキル基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
−O−C(Rb9)(Rb10)−O−Rb11
[式中、Rb9及びRb10はそれぞれ独立して水素原子又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であり、Rb11はアルキル基であり、Rb10及びRb11は相互に結合して1つの環構造を形成していてもよい。ただし、Rb9及びRb10のうち少なくとも1つは水素原子である。]
Rb9、Rb10について、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜5であり、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。そして、Rb9及びRb10は、一方が水素原子であり、他方が水素原子又はメチル基であることが好ましく、Rb9及びRb10が何れも水素原子であることが特に好ましい。
Rb11のアルキル基としては、好ましくは炭素数が1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れであってもよい。Rb11における直鎖状、分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
Rb11における環状のアルキル基としては、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10であることが最も好ましい。具体的には炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。モノシクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等が挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
Rb10及びRb11は、相互に結合して1つの環構造を形成していてもよい。この場合、Rb10とRb11と、Rb11が結合した酸素原子と、酸素原子及びRb10が結合した炭素原子とにより環式基が形成される。この場合の環式基は、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。
上記のアリール基の置換基が、−O−Rb7−C(=O)−(O)n”−Rb8である場合、Rb7におけるアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、その炭素数は1〜5が好ましい。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、及び1,1−ジメチルエチレン基等が挙げられる。
Rb8における酸解離性基としては、酸(露光時に(B)成分から発生する酸)の作用により解離しうる有機基であれば特に限定されず、例えば前記(A)成分の説明で挙げた酸解離性基と同様のものが挙げられる。中でも、第3級アルキルエステル型のものが好ましい。
Rb8における酸非解離性基の好適な例としては、デシル基、トリシクロデシル基、アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)メチル基、テトラシクロドデシル基、イソボルニル基、及びノルボルニル基等が挙げられる。
Rb1〜Rb3がアルキル基である場合、特に限定されない。アルキル基の好適な例としては、炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れるレジスト組成物を調製しやすい点から、アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、及びデシル基等が挙げられる。これらのアルキル基の中ではメチル基がより好ましい。
アルキル基は、置換基を有していてもよい。「置換基を有する」とは、アルキル基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていることを意味する。アルキル基が有してもよい置換基としては、前述のアリール基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
式(b1)中、Rb1〜Rb3のうち、何れか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。形成された環は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。また、形成された環は、単環であってもよく、多環であってもよい。例えば環を形成する2つのうちの一方又は両方が環式基(環状のアルキル基又はアリール基)である場合、それらが結合すると、多環式の環(縮合環)が形成される。
Rb1〜Rb3のうちの2つが結合して環を形成する場合、式(b1)中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3〜10員環であるのが好ましく、5〜7員環であるのがより好ましい。
Rb1〜Rb3のうちの2つが結合して形成される環の具体例としては、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、9H−チオキサンテン、チオキサントン、チアントレン、フェノキサチイン、テトラヒドロチオフェニウム、テトラヒドロチオピラニウム等が挙げられる。Rb1〜Rb3のうち、何れか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、残りの1つはアリール基であることが好ましい。
式(b1)で表される化合物のカチオン部の好ましい例としては、下記式(b1−1)〜(b1−16)で表されるカチオン部が挙げられる。
また、これらのカチオン部におけるフェニル基の一部又は全部が、置換基を有していてもよいナフチル基で置換されたものも好ましいものとして挙げられる。3つのフェニル基のうち、ナフチル基で置換されるのは、1又は2が好ましい。
式(b1)〜(b2)中、Rb4は、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又はアルケニル基を表す。Rb4におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れであってもよい。直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
環状のアルキル基の炭素数は、4〜15が好ましく、4〜10がより好ましく、6〜10が特に好ましい。
Rb4におけるハロゲン化アルキル基としては、前記直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ハロゲン化アルキル基においては、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子及び水素原子の合計数に対するハロゲン原子の数の割合(ハロゲン化率(%))が、10〜100%であることが好ましく、50〜100%であることが好ましく、100%が最も好ましい。ハロゲン化率が高いほど、発生する酸の強度が強くなるので好ましい。
Rb4におけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基が好ましい。Rb4におけるアルケニル基は、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましい。
Rb4について、「置換基を有していてもよい」とは、前記直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、又はアルケニル基における水素原子の一部又は全部が置換基(水素原子以外の他の原子又は基)で置換されていてもよいことを意味する。Rb4における置換基の数は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヘテロ原子、アルキル基、式:Rb20−Qb1−[式中、Qb1は酸素原子を含む2価の連結基であり、Rb20は置換基を有していてもよい炭素数3〜30の炭化水素基である。]で表される基等が挙げられる。
ハロゲン原子、アルキル基としては、Rb4において、ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子、アルキル基として挙げたもの同様のものが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等が挙げられる。
Rb20−Qb1−で表される基において、Qb1は酸素原子を含む2価の連結基である。Qb1は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、酸素原子(エーテル結合;−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基、及び非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。
非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせとしては、例えば、−Rb21−O−、−Rb22−O−C(=O)−、−C(=O)−O−Rb23−、−C(=O)−O−Rb24−O−C(=O)−(式中、Rb21〜Rb24はそれぞれ独立にアルキレン基である。)等が挙げられる。Rb21〜Rb24におけるアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基[−CH2−];−CH(CH3)−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CH3)(CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH2CH3)−、−C(CH2CH3)2−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CH2CH2−];−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−C(CH3)2CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CH2CH2CH2−];−CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CH2CH2CH2CH2−];−CH(CH3)CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2CH2−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CH2CH2CH2CH2CH2−]等が挙げられる。
Qb1としては、エステル結合又はエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、なかでも、−Rb21−O−、−Rb22−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−O−Rb23−又は−C(=O)−O−Rb24−O−C(=O)−が好ましい。
Rb20−Qb1−で表される基において、Rb20が炭化水素基である場合、Rb20は芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。芳香族炭化水素基の炭素数は3〜30が好ましく、5〜30がより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。ただし、芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いたアリール基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。アリールアルキル基中のアルキル鎖の炭素数は、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましく、1が特に好ましい。
芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基がより好ましい。
芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、アルキル基の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
また、芳香族炭化水素基が有する芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい。芳香族炭化水素基の芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換される場合の例としては、アリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基、アリールアルキル基中の芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部が前記ヘテロ原子で置換されたヘテロアリールアルキル基等が挙げられる。
Rb20における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れでもよい。
Rb20において、脂肪族炭化水素基は、脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。
Rb20における「ヘテロ原子」としては、炭素原子及び水素原子以外の原子であれば特に限定されず、例えばハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、及び臭素原子等が挙げられる。
「ヘテロ原子を含む置換基」(以下、ヘテロ原子含有置換基ということがある。)は、ヘテロ原子のみからなるものであってもよく、ヘテロ原子以外の基又は原子を含む基であってもよい。
脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部を置換してもよいヘテロ原子含有置換基としては、例えばO−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)2−、−S(=O)2−O−等が挙げられる。−NH−である場合、そのHを置換してもよい置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜5であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素基が環状である場合、これらの置換基を環構造中に含んでいてもよい。
脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部を置換してもよいヘテロ原子含有置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、−C(=O)−Rb25[Rb25はアルキル基である。]、−COORb26[Rb26は水素原子又はアルキル基である。]、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、酸素原子(=O)、硫黄原子、スルホニル基(SO2)等が挙げられる。
ヘテロ原子含有置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ヘテロ原子含有置換基としてのアルコキシ基におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。アルコキシ基におけるアルキル基の炭素数は1〜30が好ましい。アルキル基が直鎖状又は分岐鎖状である場合、その炭素数は1〜20が好ましく、1〜17がより好ましく、1〜15がさらに好ましく、1〜10が特に好ましい。具体的には、この後例示する直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和炭化水素基の具体例と同様のものが挙げられる。アルキル基が環状である場合(シクロアルキル基である場合)、その炭素数は、3〜30が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜15がさらに好ましく、4〜12が特に好ましく、5〜10が最も好ましい。アルキル基が環状である場合、単環式であってもよく、多環式であってもよい。具体的には、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等を例示できる。モノシクロアルカンの具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。また、ポリシクロアルカンの具体例としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。これらのシクロアルキル基は、その環に結合した水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、フッ素化アルキル基等の置換基で置換されていてもよいし、されていなくてもよい。
ヘテロ原子含有置換基としての−C(=O)−Rb25、−COORb26において、Rb25、及びRb26におけるアルキル基としては、前述のアルコキシ基におけるアルキル基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられる。
ヘテロ原子含有置換基としてのハロゲン化アルキル基におけるアルキル基としては、アルコキシ基におけるアルキル基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が特に好ましい。
ヘテロ原子含有置換基としてのハロゲン化アルコキシ基としては、アルコキシ基の水素原子の一部又は全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。ハロゲン化アルコキシ基としては、フッ素化アルコキシ基が好ましい。
ヘテロ原子含有置換基としてのヒドロキシアルキル基としては、アルコキシ基におけるアルキル基として挙げたアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基が有する水酸基の数は、1〜3が好ましく、1がより好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状若しくは分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基、又は環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)が好ましい。
直鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が最も好ましい。直鎖状の飽和炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、及びドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)の炭素数は、3〜20が好ましく、3〜15がより好ましく、3〜10が最も好ましい。分岐鎖状の飽和炭化水素基の具体例としては、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、及び4−メチルペンチル基等が挙げられる。
不飽和炭化水素基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜5がより好ましく、2〜4が特に好ましく、3が最も好ましい。直鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、及びブチニル基等が挙げられる。分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、及び2−メチルプロペニル基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としてはプロペニル基が特に好ましい。
脂肪族環式基としては、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。脂肪族環式基の炭素数は3〜30が好ましく、5〜30がより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。
脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含まない場合は、脂肪族環式基としては、多環式基が好ましく、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が最も好ましい。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含むものである場合、ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)2−、−S(=O)2−O−が好ましい。かかる脂肪族環式基の具体例としては、例えば以下の式(L1)〜(L5)、(S1)〜(S4)で表される基等が挙げられる。
[式(L2)、(S3)、及び(S4)中、Q
b2は、酸素原子若しくは硫黄原子を含んでいてもよいアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子であり、式(L4)中、mは0又は1の整数である。]
式中、Qb2におけるアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、その炭素数は1〜5が好ましい。具体的には、メチレン基[−CH2−];−CH(CH3)−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CH3)(CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH2CH3)−、−C(CH2CH3)2−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CH2CH2−];−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−C(CH3)2CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CH2CH2CH2−];−CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CH2CH2CH2CH2−];−CH(CH3)CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2CH2−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CH2CH2CH2CH2CH2−]等が挙げられる。これらの中でも、メチレン基又はアルキルメチレン基が好ましく、メチレン基、−CH(CH3)−又はC(CH3)2−が特に好ましい。
Qb2がアルキレン基である場合、アルキレン基は、酸素原子(−O−)若しくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい。その具体例としては、アルキレン基の末端又は炭素原子間に−O−又はS−が介在する基が挙げられ、例えばO−Rb27−、−S−Rb28−、−Rb29−ORb30−、−Rb31−S−Rb32−等が挙げられる。ここで、Rb27〜Rb32はそれぞれ独立にアルキレン基である。アルキレン基としては、前記Qb2におけるアルキレン基として挙げたアルキレン基と同様のものが挙げられる。中でも、−O−CH2−、−CH2−O−CH2−、−S−CH2−、及び−CH2−S−CH2−等が好ましい。
これらの脂肪族環式基は、水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよい。脂肪族環式基が有してもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、−C(=O)−Rb25[Rb25はアルキル基である。]、−COORb26[Rb26は水素原子又はアルキル基である。]、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、酸素原子(=O)、硫黄原子、スルホニル基(SO2)等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、前述のヘテロ原子含有置換基としてのアルコキシ基におけるアルキル基として挙げたものと同様のものが挙げられる。かかるアルキル基の炭素数は、特に、1〜6が好ましい。また、アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であるのが好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中では、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
置換基としてのハロゲン原子、アルコキシ基、−C(=O)−Rb25、−COORb26、ハロゲン化アルキル基、又はハロゲン化アルコキシ基としては、それぞれ、脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部を置換してもよいヘテロ原子含有置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
脂肪族環式基の水素原子を置換する置換基としては、上記の中でも、アルキル基、酸素原子(=O)、水酸基が好ましい。脂肪族環式基が有する置換基の数は、1つであってもよく、2以上であってもよい。置換基を複数有する場合、複数の置換基はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
Rb20としては、置換基を有していてもよい環式基が好ましい。Rb20が環式基である場合、環式基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であってもよい。これら中では、置換基を有していてもよい脂肪族環式基がより好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
置換基を有していてもよい脂肪族環式基としては、置換基を有していてもよい多環式の脂肪族環式基が好ましい。多環式の脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基や、(L2)〜(L5)、(S3)〜(S4)で表される基等が好ましい。
本発明において、Rb4は、置換基としてRb20−Qb1−を有することが好ましい。この場合、R4bとしては、Rb20−Qb1−Yb1−[式中、Qb1及びRb20は前述と同様であり、Yb1は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基である。]で表される基が好ましい。
Rb20−Qb1−Yb1−で表される基において、Yb1のアルキレン基としては、Qb1で挙げたアルキレン基のうち炭素数1〜4のものと同様のものが挙げられる。
フッ素化アルキレン基としては、アルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
Yb1の具体例としては、−CF2−、−CF2CF2−、−CF2CF2CF2−、−CF(CF3)CF2−、−CF(CF2CF3)−、−C(CF3)2−、−CF2CF2CF2CF2−、−CF(CF3)CF2CF2−、−CF2CF(CF3)CF2−、−CF(CF3)CF(CF3)−、−C(CF3)2CF2−、−CF(CF2CF3)CF2−、−CF(CF2CF2CF3)−、−C(CF3)(CF2CF3)−;−CHF−、−CH2CF2−、−CH2CH2CF2−、−CH2CF2CF2−、−CH(CF3)CH2−、−CH(CF2CF3)−、−C(CH3)(CF3)−、−CH2CH2CH2CF2−、−CH2CH2CF2CF2−、−CH(CF3)CH2CH2−、−CH2CH(CF3)CH2−、−CH(CF3)CH(CF3)−、−C(CF3)2CH2−;−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、−CH(CH2CH3)−、−C(CH3)2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−、−C(CH3)2CH2−、−CH(CH2CH3)CH2−、−CH(CH2CH2CH3)−、−C(CH3)(CH2CH3)−等が挙げられる。
Yb1としては、フッ素化アルキレン基が好ましく、隣接する硫黄原子に結合する炭素原子がフッ素化されているフッ素化アルキレン基が特に好ましい。このようなフッ素化アルキレン基としては、−CF2−、−CF2CF2−、−CF2CF2CF2−、−CF(CF3)CF2−、−CF2CF2CF2CF2−、−CF(CF3)CF2CF2−、−CF2CF(CF3)CF2−、−CF(CF3)CF(CF3)−、−C(CF3)2CF2−、−CF(CF2CF3)CF2−;−CH2CF2−、−CH2CH2CF2−、−CH2CF2CF2−;−CH2CH2CH2CF2−、−CH2CH2CF2CF2−、−CH2CF2CF2CF2−等を挙げることができる。これらの中では、−CF2−、−CF2CF2−、−CF2CF2CF2−、又はCH2CF2CF2−が好ましく、−CF2−、−CF2CF2−又は−CF2CF2CF2−がより好ましく、−CF2−がより好ましい。
上記のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基又はフッ素化アルキレン基が「置換基を有する」とは、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基における水素原子又はフッ素原子の一部又は全部が、水素原子及びフッ素原子以外の原子又は基で置換されていることを意味する。アルキレン基又はフッ素化アルキレン基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
式(b2)中、Rb5〜Rb6はそれぞれ独立にアリール基又はアルキル基を表す。また、Rb5〜Rb6のうち、少なくとも1つはアリール基を表し、Rb5〜Rb6の全てがアリール基であるのが好ましい。Rb5〜Rb6のアリール基としては、Rb1〜Rb3のアリール基と同様のものが挙げられる。Rb5〜Rb6のアルキル基としては、Rb1〜Rb3のアルキル基と同様のものが挙げられる。これらの中で、Rb5〜Rb6は、全てフェニル基であることが最も好ましい。式(b2)中のRb4としては、上記式(b1)のRb4と同様のものが挙げられる。
式(b1)、又は(b2)で表されるオニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート;ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート;トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;ジ(1−ナフチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。
また、これらのオニウム塩のアニオン部を下記式(bI)〜(bVIII)の何れかで表されるアニオン部に置き換えたオニウム塩も用いることができる。
[式(bI)〜(bIII)中、v0は0〜3の整数であり、q1〜q2はそれぞれ独立に1〜5の整数であり、q3は1〜12の整数であり、r1〜r2はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、iは1〜20の整数であり、t3は1〜3の整数であり、R
b33は置換基であり、R
b34は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。]
[式(bIV)〜(bVIII)中、t3、R
b33、Q
b2はそれぞれ前記と同じであり、m1〜m5はそれぞれ独立に0又は1であり、v1〜v5はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、w1〜w5はそれぞれ独立に0〜3の整数である。]
Rb33の置換基としては、アルキル基、ヘテロ原子含有置換基等が挙げられる。アルキル基としては、Rb20の説明で、芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられる。また、ヘテロ原子含有置換基としては、Rb20の説明で、脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部を置換してもよいヘテロ原子含有置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
Rb33に付された符号(r1〜r2、w1〜w5)が2以上の整数である場合、同一の化合物中の複数のRb33はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
Rb34におけるアルキル基、ハロゲン化アルキル基としては、それぞれ、上記Rb4におけるアルキル基、ハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
r1〜r2、w1〜w5は、それぞれ、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。v0〜v5は0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。t3は、1又は2が好ましく、1がより好ましい。q3は、1〜5の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1が特に好ましい。
また、オニウム塩系酸発生剤としては、上記の式(b1)又は(b2)において、アニオン部を下記式(b3)又は(b4)で表されるアニオンに置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は式(b1)又は(b2)と同様)。
[式(b3)、及び(b4)中、X
b1は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y
b2、Z
b2は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
Xb1は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、アルキレン基の炭素数は2〜6であり、3〜5が好ましく、3がより好ましい。
Yb2、及びZb2は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、アルキル基の炭素数は1〜10であり、1〜7が好ましく、1〜3がより好ましい。
Xb1のアルキレン基の炭素数、又はYb2、及びZb2のアルキル基の炭素数は、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、上記炭素数の範囲内で小さいほど好ましい。
また、Xb1のアルキレン基又はYb2、及びZb2のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また波長200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。
アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、70〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、100%が特に好ましい。つまり、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
また、上記式(b1)又は(b2)において、アニオン部(Rb4SO3 −)を、Rsb7−COO−[式中、Rb7はアルキル基又はフッ素化アルキル基である。]に置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は(b1)又は(b2)と同様)。Rb7としては、前記Rb4と同様のものが挙げられる。Rb7−COO−で表わされるアニオンの具体的としては、トリフルオロ酢酸イオン、酢酸イオン、1−アダマンタンカルボン酸イオン等が挙げられる。
本明細書において、オキシムスルホネート系酸発生剤とは、下記式(B1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、従来からレジスト組成物用において使用されるものから、任意に選択して用いることができる。
[式(B1)中、R
b35、R
b36はそれぞれ独立に有機基を表す。]
Rb35、Rb36の有機基は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(例えば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
Rb35の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基又はアリール基が好ましい。これらのアルキル基、又はアリール基は置換基を有していてもよい。置換基は、特に限定されず、例えばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基等が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基又はアリール基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、炭1〜10がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、1〜6が特に好ましく、1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基の炭素数は4〜20が好ましく、4〜10がより好ましく、6〜10が特に好ましい。アリール基としては、特に、部分的又は完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
Rb35としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
Rb36の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、又はシアノ基が好ましい。Rb36のアルキル基、アリール基としては、前記Rb35で挙げたアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
Rb36としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
オキシムスルホネート系酸発生剤としてさらに好ましいものとしては、下記式(B2)又は(B3)で表される化合物が挙げられる。
[式(B2)中、R
b37は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。R
b38はアリール基である。R
b39は置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。]
[式(B3)中、R
b40はシアノ基、置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。R
b41は2又は3価の芳香族炭化水素基である。R
b42は置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。p”は2又は3である。]
式(B2)において、Rb37の置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が最も好ましい。Rb37としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。Rb37におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されているのが好ましく、70%以上フッ素化されているのがより好ましく、90%以上フッ素化されているのが特に好ましい。
Rb38のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基、及びフェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、及びこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等が挙げられる。これらのなかでも、フルオレニル基が好ましい。
Rb38のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。置換基におけるアルキル基又はハロゲン化アルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましい。又はロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
Rb39の置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が特に好ましい。Rb39としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
Rb39におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されているのが好ましく、70%以上フッ素化されているのがより好ましく、90%以上フッ素化されているのが、発生する酸の強度が高まるため特に好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
式(B3)において、Rb40の置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基としては、上記Rb37の置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。Rb41の2又は3価の芳香族炭化水素基としては、上記Rb38のアリール基からさらに1又は2個の水素原子を除いた基が挙げられる。Rb42の置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基としては、上記Rb39の置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。p”は、2が好ましい。
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロ−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−クロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−チエン−2−イルアセトニトリル、α−(4−ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−[(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−(トシルオキシイミノ)−4−チエニルシアニド、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘプテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロオクテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−エチルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−プロピルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロペンチルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリル等が挙げられる。
また、好適なものとして以下のものを例示することができる。
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン等が挙げられる。
(B)成分としては、これらの酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。レジスト組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜50質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましい。(B)成分の含有量を上記範囲とする場合、レジスト組成物を用いて良好にパターンを形成しやすい。
[(C)成分]
(C)成分は、活性光線又は放射線の照射により塩基性が弱まる塩基性化合物である。(C)成分として用いる化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
後述する露光工程では、レジスト膜に対して、所定のマスクを介して活性光線又は放射線が照射され、レジスト膜内に露光部と未露光部とが生じる。(C)成分は、露光部では、活性光線又は放射線の照射により塩基性が弱まるため、(B)成分より生じた酸を過剰に捕捉することがない。このため、露光部のアルカリに対する可溶化が良好に進行し、裾引き等のない良好な形状のレジストパターンを形成することができる。
また、本発明の方法では、(A)成分として分子量の低い樹脂を使用している。この場合、(A)成分の樹脂の分子鎖が、絡み合いが好くなく、自由度に運動しやすいことから、露光部で生じた酸が未露光部に拡散しやすい。しかし、(C)成分は、未露光部では塩基性が維持されているため、未露光部に拡散した酸を良好に捕捉することができる。本発明の方法では、未露光部に含まれる(A)成分が、露光部より拡散してきた酸によって、アルカリに対して可溶化されにくく、パターン表面でのスカムの生成を抑制することができる。
さらに、レジスト組成物に(C)成分を配合することにより、適度な露光余裕度を保ちつつ、焦点深度を深くすることができる。
活性光線又は放射線の照射により塩基性が弱まる塩基性化合物は、種々知られており、従来公知の化合物の中から適宜選択して使用することができる。活性光線又は放射線の照射により塩基性が弱まる塩基性化合物としては、リソグラフィー特性が良好である点から、スルホン酸オニウム塩化合物であるのが好ましい。
(C)成分として好適な化合物としては、例えば、(B)成分として使用される、前述の(b1)又は(b2)で表される化合物に含まれるアニオンを、塩基性基を含むスルホン酸アニオン、塩基性基を含む有機カルボン酸アニオン、−SO2−N−−SO2−で表される2価の基と少なくとも1つの塩基性基とを含むアニオン、又は−SO2−N−−CO−で表される2価の基と少なくとも1つの塩基性基とを含むアニオンに変えた化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、特開2012−047896号公報等に記載されている。
塩基性基を含むスルホン酸アニオン、塩基性基を含む有機カルボン酸アニオン、−SO2−N−−SO2−で表される2価の基と少なくとも1つの塩基性基とを含むアニオン、又は−SO2−N−−CO−で表される2価の基と少なくとも1つの塩基性基とを含むアニオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
また、(C)成分としては、活性光線又は放射線を照射された場合に、(B)成分として使用される酸発生剤から発生する酸よりも、弱い酸を発生させるオニウム塩化合物を用いることもできる。このような化合物は、(B)成分である酸発生剤より生じた酸に含まれるプロトンを一旦受容した後に、弱酸を発生させ、いわゆる塩交換を生じさせる。このように、(B)成分として使用される酸発生剤から発生する酸よりも、弱い酸を発生させるオニウム塩化合物は、ブレーンステッド・ローリーの定義における塩基といえる。
このようなオニウム塩型の化合物は、露光部では、(B)成分と同様に、露光により分解されるため、(B)成分より生じた酸を過剰に捕捉することがない。他方、このようなオニウム塩化合物は、未露光部では塩の状態で残存しているため、露光部より拡散してきた酸を、塩交換により捕捉することができる。なお、塩交換により、発生した弱酸は、酸性が弱いため、レジスト膜中の(A)成分を、アルカリに対して可溶化しにくいか、可溶化できない。
このようなオニウム塩化合物の好適な例としては、(B)成分について、式(b1)又は(b2)として説明したオニウム塩型の酸発生剤に含まれるカチオンと、(B)成分より発生する酸よりも弱い酸を生成させるアニオンとを組み合わせたオニウム塩が好ましい。
(C)成分として、活性光線又は放射線を照射された場合に、(B)成分として使用される酸発生剤から発生する酸よりも、弱い酸を発生させるオニウム塩型化合物を用いる場合の(B)成分と(C)成分との好適な組み合せとしては、Rb4がフッ素置換されたアルキル基である前述の(b1)又は(b2)で表される化合物である(B)成分と、Rb4がフッ素置換されていないアルキル基である前述の(b1)又は(b2)で表される化合物である(C)成分との組み合せが挙げられる。また、(C)成分として、Rb4がフッ素置換されていないアルキル基である前述の(b1)又は(b2)で表される化合物における、スルホン酸イオンを、カルボン酸イオンに変えた化合物を用いる組み合せも好ましい。また、(C)成分としては、アルキルスルホニルイミドアニオンを含むものも好ましい。
(C)成分に含まれる好適なスルホン酸イオンとしては、メタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネート、1−アダマンタンスルホネート、2−ノルボルナンスルホネート等のアルキルスルホネート;d−カンファー−10−スルホネート、ベンゼンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート等のスルホネートが挙げられる。
(C)成分に含まれる好適なアルキルスルホニルイミドアニオンとしては、以下のものが挙げられる。
(C)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。レジスト組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。(C)成分の含有量を上記範囲とする場合、レジスト組成物を用いて良好な形状のパターンを形成しやすい。
[(D)溶剤]
レジスト組成物は、材料を溶剤(以下、(D)成分という。)に溶解させて製造される。(D)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであれば特に限定されず、公知のレジスト組成物用の溶剤から宜選択して用いることができる。
溶剤の具体例としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、多価アルコール類又はエステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
これらの溶剤の中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル(EL)、シクロヘキサノン(CH)が好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、PGMEA:極性溶剤として、1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましい。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましく、3:7〜7:3が特に好ましい。
また、(D)成分として、その他には、PGMEA、PGME、CH及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(D)成分の使用量は特に限定されず、レジスト組成物が基板等に塗布可能な固形分濃度となるように、適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%の範囲内となるように、(D)成分が用いられる。
[(E)有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸類]
レジスト組成物は、さらに、任意の成分として、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、(E)成分という。)を含有してもよい。
好適な有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、及びサリチル酸等が挙げられる。好適なリンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中ではホスホン酸がより好ましい。リンのオキソ酸の誘導体としては、例えば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられる。この場合の、炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、及び炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステル等が挙げられる。ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステル等が挙げられる。ホスフィン酸の誘導体としては、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸エステル等が挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(E)成分は、通常、(A)成分100質量部に対して、0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
[(D)成分及び(E)成分の他の任意成分]
レジスト組成物には、さらに所望により、混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、レジスト膜の疎水性を改良するための、フッ素置換された炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位等を含む樹脂等の含フッ素化合物、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等を適宜、添加含有させることができる。
<レジスト膜形成方法>
前述のレジスト組成物を、基板上に塗布してレジスト膜が形成される。本発明では、レジスト膜が塗布される基板として、線幅30〜200nm、アスペクト比1.5〜5.0の段差を有する基板上を用いる。前述のレジスト組成物を用いる場合、このような段差を有する基板の段差に、レジスト組成物が完全に充填された状態でレジスト膜を形成することができ、また、後述する、露光工程と現像工程とを経て、良好な形状のレジストパターンを形成することができる。基板上の段差の形状は、線幅について、100〜200nmが好ましく、150〜200nmがより好ましく、アスペクト比について、1.5〜3が好ましく、1.5〜2がより好ましい。
レジスト組成物を基板上に、塗布する方法は、レジスト組成物を、所望の膜厚で基板上に良好に塗布することができれば特に限定されない。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法等が挙げられ、スピンコート法がより好ましい。
レジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜を形成した後、必要に応じて基板上のレジスト膜を加熱(プリベーク)する。これにより、不要な溶剤の除去された膜を均一に形成することができる。プリベークの温度は特に限定されないが、50℃〜160℃が好ましく、60℃〜140℃がより好ましい。
本発明において膜を形成する基板の種類は特に限定されない。基板の例としては、シリコン、SiN、SiO2やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型の何れも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
≪露光工程≫
露光工程では、基板上に形成されたレジスト膜に対して、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により選択的に露光を行う。露光方法は特に限定されず、従来から、レジスト膜への露光方法として採用されている種々の方法から適宜選択できる。好適な方法としては、レジスト膜に、所定のマスクを通して紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
かかる露光により、レジスト膜中に、露光部と、未露光部とが形成される。レジスト膜形成工程では、(A)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂と、(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むレジスト組成物を用いている。このため、露光部は、(B)成分により発生した酸の作用によって、アルカリに対する溶解性が増大している。一方、未露光部は、活性エネルギー線が照射されていないため、アルカリに対する溶解性が低いままである。
活性エネルギー線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等が挙げられる。これらの中では、波長が250nm以下、好ましくは220nm以下、より好ましくは1〜200nmである、遠紫外光が好ましい。遠紫外光の具体例としては、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)等が挙げられる。
露光工程では、必要に応じ、光学レンズ部とレジスト膜との間を液浸媒体で満たして露光を行う液浸露光方を適用することもできる。液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、且つ、使用されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液体であれば特に限定されるものではない。このような液浸媒体としては、水(純水、脱イオン水)、水に各種添加剤を配合して高屈折率化した液体、フッ素系不活性液体、シリコン系不活性液体、炭化水素系液体等が挙げられるが、近い将来に開発が見込まれる高屈折率特性を有する液浸媒体も使用可能である。フッ素系不活性液体としては、C3HCl2F5、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C5H3F7等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。これらのうち、コスト、安全性、環境問題、及び汎用性の観点から、193nmの波長の露光光(ArFエキシマレーザー等)を用いる場合には水(純水、脱イオン水)が好ましく、157nmの波長の露光光(F2エキシマレーザー等)を用いる場合にはフッ素系不活性溶剤が好ましい。
露光が終了した後には、ベーク(PEB)を行うのが好ましい。PEBの温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。
≪現像工程≫
現像工程では、露光されたレジスト膜中の、アルカリに対する溶解性が増大した露光部を、例えば、所定のアルカリ性水溶液を現像液として用いて除去して所定のレジストパターンを得る。
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
現像液によりレジストパターンを現像する方法は、特に限定されず、公知の現像方法から適宜選択して実施できる。好適な現像方法としては、例えば、現像液中に露光後のレジスト膜を備える基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、露光後のレジスト膜の表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、露光後のレジスト膜の表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板10に対して、露光後のレジスト膜に向けて一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
現像後は、流水洗浄を行い、エアーガンや、オーブン等を用いて乾燥させる。このようにして、所定の線幅とアスペクト比の段差を有する基板上に、段差に状態でレジストパターンを製造できる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
質量平均分子量10000の下式で表される樹脂((A)成分)100質量部と、下式(I)の化合物((B)成分)3.50質量部と、下式(II)の化合物((B)成分)1.93質量部と、下式(III)で表されるオニウム塩化合物((C)成分)1.70質量部と、サリチル酸0.46質量部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/1−エチルシクロヘキシルメタクリレート共重合体0.10質量%と、固形分比率が8.83質量%となるように、エチレングリコールモノメチルエーテルに溶解させて、レジスト組成物を調製した。
<(A)成分>
下式において、構成単位中に記載の数値は、各構成単位のモル比率を表す。
得られたレジスト組成物を、表面に段差を備える基板に塗布して、段差へのレジスト組成物の充填状態を評価した。基板として、表面にTEOS(テトラエトキシシラン)により絶縁層が形成されており、絶縁層に表1に記載の幅及び深さである矩形の溝を段差として有するシリコン基板を用いた。レジスト組成物を、回転数1500rpmの条件でスピンナー(MS−A150、ミカサ株式会社製)により塗布した後、115℃で60秒間ベークして、膜厚333nmのレジスト膜を形成した。レジスト膜が形成された基板の断面を、走査型電子顕微鏡により観察し、レジスト組成物が段差に完全に充填されている場合を「○」と評価し、レジスト組成物が段差に完全に充填されていない場合を「×」と評価した。評価結果を表1に記す。
〔比較例1〕
樹脂を、質量平均分子量が14000である樹脂に変えることの他は、実施例1と同様にしてレジスト組成物を調製した。得られたレジスト組成物を、実施例1と同様に表面に段差を備える基板に塗布した後、段差へのレジスト組成物の充填状態を比較例1と同様に評価した。評価結果を表1に記す。
比較例1によれば、レジスト組成物に含まれる樹脂の質量平均分子量が14000である場合、段差の線幅が300nm以下であり、アスペクト比が1.50以上である場合には、レジスト組成物が段差に良好に充填されないことがわかる。他方、実施例1によれば、質量平均分子量10000の樹脂を用いることにより、段差の線幅が300nm以下であり、アスペクト比が1.50以上である場合であっても、レジスト組成物が段差に良好に充填されることが分かる。
〔実施例2及び3〕
樹脂を、表2に記載の質量平均分子量の樹脂に変えることの他は、実施例1と同様にしてレジスト組成物を調製した。得られたレジスト組成物を、実施例1と同様に、線幅160nm、深さ300nmの矩形の溝を段差として備える基板に塗布した後、段差へのレジスト組成物の充填状態を、比較例1と同様に評価した。評価結果を、表1に記す。実施例2及び3のレジスト組成物の段差への充填状態の評価結果を、実施例1、及び比較例1の充填状態の評価結果と共に、表2に記す。
表2によれば、樹脂の質量平均分子量を10000よりも低くする場合でも、質量平均10000の樹脂を含むレジスト組成物を用いる場合と同様に、レジスト組成物が、段差に良好に充填されることが分かる。
〔実施例4、比較例2、及び比較例3〕
実施例4では、実施例2で用いたレジスト組成物と同じレジスト組成物を用いた。比較例2では、塩基性化合物を、上記式(III)の化合物1.70質量部から、トリアミルアミン0.68質量に変えることの他は、実施例2と同様にして調製されたレジスト組成物を用いた。比較例3では、塩基性化合物を、上記式(III)の化合物1.70質量部から、トリアミルアミン0.68質量に変えることの他は、比較例1と同様にして調製されたレジスト組成物を用いた。
得られたレジスト組成物を、ヘキサメチルジシラザンにより90℃で36秒間表面処理されたシリコン基板上に、回転数1500rpmの条件でスピンナー(MS−A150、ミカサ株式会社製)により塗布した後、115℃で60秒間ベークして、膜厚333nmのレジスト膜を形成した。形成されたレジスト膜を、ArF露光装置(NSR−S308F、株式会社ニコン製)により、所定のマスクパターン(バイナリー)を介して露光した。次いで、露光された基板を、120℃で60秒ベークした。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度2.38質量%の水溶液(現像液NMD−3、東京応化工業株式会社製)を露光されたレジスト膜に滴下した後、23℃で30秒間現像を行った。現像後、基板を100℃で45秒ベークして、幅250nmのラインを有するレジストパターンを形成した。
形成されたレジストパターンを、走査型電子顕微鏡により観察し、レジストパターン(ラインアンドスペースパターン)のライン部分の底部でのすそ引きの有無を評価した。すそ引きがない場合を「○」と評価し、すそ引きがある場合を「×」と評価した。すそ引きに関する評価結果を、表3に記す。
実施例4によれば、露光により塩基性が低下する化合物を塩基性化合物として含むレジスト組成物を用いれば、すそ引きのない良好な形状のレジストパターンを形成できることが分かる。比較例2によれば、質量平均分子量が低い樹脂を含むレジスト組成物において、露光により塩基性が低下しない化合物を塩基性化合物として用いると、レジストパターンを形成する際に、すそ引きが発生しやすくなることが分かる。比較例3によれば、露光により塩基性が低下しない化合物を塩基性化合物として含むレジスト組成物であっても、質量平均分子量が10000を超える樹脂を用いている場合、レジストパターンを形成する際に、すそ引きが発生しないことが分かる。
なお、比較例3で用いたレジスト組成物は、すそ引きは生じないが、段差への埋め込み性について問題があるものである。
〔実施例5、及び比較例4〕
実施例5、及び比較例4では、それぞれ、実施例4、及び比較例2で用いたレジスト組成物と同じレジスト組成物を用いて、レジストパターンを形成した場合のパターン表面でのスカムの発生の有無を評価した。
基板として、シリカ層上に窒化ケイ素層を備え、窒化ケイ素層上に、TEOS(テトラエトキシシラン)により形成された絶縁層を有し、絶縁層に幅160nm及び深さ300nmの矩形の溝を段差として有する基板を用いた。レジスト組成物を、回転数1500rpmの条件でスピンナー(MS−A150、ミカサ株式会社製)により塗布した後、115℃で60秒間ベークして、膜厚550nmのレジスト膜を形成した。形成されたレジスト膜を、ArF露光装置(NSR−S308F、株式会社ニコン製)により、所定のマスクパターン(バイナリー)を介して露光した。次いで、露光された基板を、115℃で60秒ベークした。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度2.38質量%の水溶液(現像液NMD−3、東京応化工業株式会社製)を露光されたレジスト膜に滴下した後、23℃で30秒間現像を行った。現像後、基板を100℃で45秒ベークして、幅250nm、ピッチ500nmのラインを有するレジストパターンを形成した。
形成されたレジストパターンを、基板上面より走査型電子顕微鏡により観察し、レジストパターン表面でのスカムの発生を評価した。スカムが発生している場合には、レジストパターン表面に、スカムに由来する凹凸が観察される。スカムが発生していない場合を「○」と評価し、スカムが発生している場合を「×」と評価した。スカムの発生に関する評価結果を、表4に記す。
実施例5によれば、露光により塩基性が低下する化合物を塩基性化合物として含むレジスト組成物を用いれば、パターン表面にスカムを発生させることなくレジストパターンを形成できることが分かる。比較例4によれば、質量平均分子量が低い樹脂を含むレジスト組成物において、露光により塩基性が低下しない化合物を塩基性化合物として用いると、レジストパターンを形成する際に、パターン表面にスカムが発生しやすくなることが分かる。
〔実施例6、比較例5、及び比較例6〕
実施例6、比較例5、及び比較例6では、それぞれ、実施例4、比較例2、及び比較例3で用いたレジスト組成物について、露光余裕度が10%である場合の焦点深度を以下の方法に従って評価した。露光余裕度が10%である場合の焦点深度を、表5に記す。
<焦点深度評価>
上記でレジストパターンを形成した際の各レジストの最適露光量(Eop)にて、焦点を適宜上下にずらして、同様にしてレジストパターンを形成し、ターゲット寸法±10%(すなわち225〜275nm)の寸法変化率の範囲内で形成できる焦点深度幅(DOF、単位:μm)を求めた。
なお、「DOF」とは、同一の露光量において、焦点を上下にずらして露光した際に、ターゲット寸法に対するずれが所定の範囲内となる寸法でレジストパターンを形成できる焦点深度の範囲、すなわちマスクパターンに忠実なレジストパターンが得られる範囲のことであり、その値が大きいほど好ましい。
比較例5、及び6によれば、レジスト組成物において、(A)成分として質量平均分子量の低い樹脂を用いる場合、露光余裕度10%での焦点深度が浅くなることが分かる。これに対して、実施例6では、露光により塩基性が低下する化合物を塩基性化合物として用いているため、深い焦点深度が保たれていることが分かる。
〔実施例7〜15、及び比較例7〜8〕
表6に記載の繰り返し単位組成、及び質量平均分子量である樹脂100質量部と、上記式(I)の化合物((B)成分)3.50質量部と、上記式(II)の化合物((B)成分)1.93質量部と、表6に記載の量及び種類の塩基性化合物と、サリチル酸0.46質量部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/1−エチルシクロヘキシルメタクリレート共重合体0.10質量%とを、固形分比率が8.83質量%となるように、エチレングリコールモノメチルエーテルに溶解させて、各実施例、及び比較例で用いるレジスト組成物を調製した。得られたレジスト組成物を用いて、後述する方法により、露光余裕度評価、焦点深度幅評価、レジストパターンの形状の評価、レジスト組成物の段差への充填状態の評価を行った。
実施例7〜15、及び比較例7〜8で用いた樹脂の繰り返し単位組成を以下に記す。
また、実施例7〜15、及び比較例7〜8では、塩基性化合物として、トリアミルアミンと、前述の式(III)で表されるオニウム塩化合物と、下式(IV)で表されるオニウム塩化合物とを用いた。表6では式(III)で表されるオニウム塩化合物をC−1とし、式(IV)で表されるオニウム塩化合物をC−2とし、トリアミルアミンをC−3とする。
<露光余裕度評価>
実施例4、比較例2、及び比較例3と同様にして幅250nm、ピッチ500nmのラインを有するレジストパターンを形成し、ラインターゲット寸法の±10%(225nm〜275nm)の範囲内で形成される際の露光量を求め、次式により露光余裕度(単位:%)を求めた。
露光余裕度(%)=(|E1−E2|/Eop)×100
E1は、ライン幅225nmのラインパターンが形成された際の露光量(mJ/cm2)を示し、E2は、ライン幅275nmのLSパターンを形成された際の露光量(mJ/cm2)を示す。
<焦点深度幅評価>
実施例6、比較例5、及び比較例6と同様にして、露光余裕度10%での焦点深度幅の評価を行った。評価結果を表6に記す。
<形状評価>
実施例4、比較例2、及び比較例3と同様にして形成したラインパターンの断面を、走査型電子顕微鏡により観測し、以下の基準でラインパターンの断面形状を評価した。
◎・・・矩形形状を有している
○・・・頭付き形状であるが、基板界面は矩形性がある
△・・・すそ引き形状である
<充填状態評価>
各実施例、及び比較例で用いるレジスト組成物を、表面に線幅90nm、深さ400nmの段差を備える基板に塗布して、段差へのレジスト組成物の充填状態を評価した。基板として、表面にTEOS(テトラエトキシシラン)により絶縁層が形成されているシリコン基板を用いた。レジスト組成物を、回転数1500rpmの条件でスピンナー(MS−A150、ミカサ株式会社製)により塗布した後、115℃で60秒間ベークして、膜厚333nmのレジスト膜を形成した。レジスト膜が形成された基板の断面を、走査型電子顕微鏡により観察し、レジスト組成物が段差に完全に充填されている場合を「○」と評価し、レジスト組成物が段差に完全に充填されていない場合を「×」と評価した。評価結果を表6に記す。
実施例7〜15によれば、質量平均分子量が10000以下であって、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とに加え、活性光線又は放射線の照射により塩基性が弱まる塩基性化合物を含むレジスト組成物では、種々の樹脂や、塩基性化合物を用いる場合において、レジスト組成物を幅が細く、アスペクト比の大きな段差に良好に充填可能であって、適度な露光余裕度において深い焦点深度を確保できることが確認できた。さらに、実施例7〜13及び15については良好な形状のレジストパターンを形成できることが分かる。充填状態の評価と種々のリソグラフィー特性との全体評価について、表6に併記する。
比較例7によれば、レジスト組成物に含まれる樹脂の質量平均分子量が10000を超える場合、レジスト組成物を幅が細く、アスペクト比の大きな段差に充填しにくくなることが分かる。比較例8によれば、レジスト組成物に含まれる塩基性化合物が、活性光線又は放射線の照射により塩基性が弱まることのないトリアミルアミンである場合、露光余裕度や焦点深度幅が低下することが分かる。