以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
(構成の説明)
図1に、本発明の第1実施形態による電源装置100の構成例を示す。
電源装置100は、発電モジュール10、電圧変換部20、制御部30、トリガー電源供給部40を備えている。発電モジュール10は、発電電圧VGを発生させるものであり、直列接続された複数の発電素子11から構成されている。本実施形態では、発電素子11は、熱電変換素子の一種であるゼーベック素子であるものとし、25個のゼーベック素子を直列接続することにより発電モジュール10が構成されている。一般に、ゼーベック素子は、1℃の温度差で約100μVの電圧を発生させる。従って、人間の体温を36℃とし、室温を28℃とした場合、その温度差(8℃)から、発電モジュール10は約20mVの発電電圧VGを発生させる。
なお、本実施形態では、25個の発電素子11を直列接続して発電モジュール10を構成しているが、発電素子11の種類や発電特性、あるいは電源装置100の仕様などに応じて、その個数は任意に設定することができる。また、直列接続に限らず、必要に応じて複数の発電素子11を並列接続することにより、発電モジュール10の電流容量を増やしてもよい。さらに、発電素子11は、熱電変換素子に限らず、圧電変換素子や光電変換素子等、他の任意の発電素子であってもよい。
電圧変換部20は、発電モジュール10から出力される発電電圧VGを電圧変換して出力電圧Voutを発生させるものであり、入力コンデンサ21、トランス22、nチャネル型電界効果トランジスタ23、ダイオード24,25、出力コンデンサ26を備えている。入力コンデンサ21の一端は、発電モジュール10の正電極に接続され、入力コンデンサの他端は発電モジュール10の負電極と共にグランドに接続されている。トランス22の1次コイル221の一端は、入力コンデンサ21の一端と共に発電モジュール10の正電極に接続され、1次コイル221の他端には、nチャネル型電界効果トランジスタ23のドレインが接続されている。nチャネル型電界効果トランジスタ23のソースはグランドに接続されている。
トランス22の2次コイル222の一端は、ダイオード24およびダイオード25の各アノードに接続され、ダイオード24のカソードは高電圧出力端子THに接続されている。また、トランス22の2次コイル222の他端は低電圧出力端子TLに接続されている。本実施形態では、低電圧出力端子TLはグランドに接続されている。高電圧出力端子THと低電圧出力端子TLとの間には出力コンデンサ26が接続されている。本実施形態では、トランス22の1次コイル221と2次コイル222の巻数比は、出力電圧Voutが所望の時間で目標電圧である規定値Vtarget(例えば2V)に到達するように適切に設定されており、出力電圧Voutが上記規定値Vtargetに到達するまでの時間は上述のトランス22の巻数比によって設定されている。
制御部30は、電圧変換部20により電圧変換された電圧を動作電源として動作し、電圧変換部20による電圧変換を制御するものであり、計時部31と発振部32を備えている。制御部30の電源ノードN30には、電圧変換部20のダイオード25のカソードが接続されている。これにより、電圧変換部20に備えられたトランス22の2次コイル222に誘起される電圧がダイオード25を介して制御部30の電源ノードN30に供給されるものとなっている。本実施形態では、制御部30は、例えば制御用IC(Integrated Circuit)から構成される。
計時部31は、電圧変換部20の出力電圧Voutが規定値Vtargetに到達するまでの時間を計時するためのものであり、コンデンサ311、抵抗312、コンデンサ313、電圧時間検出回路314を備えている。ここで、コンデンサ311は、電圧変換部20の出力コンデンサ26を模擬するものであり、コンデンサ311の一端は制御部30の電源ノードN30に接続され、その他端はグランドに接続されている。出力電圧Voutが上昇すれば、電圧変換部20からダイオード25を通じて制御部30の電源ノードN30に供給される電圧、即ち、コンデンサ311の端子間電圧V311は、電圧変換部20のダイオード24を通じて高電圧出力端子THに供給される出力電圧Voutと等価になる。出力電圧Voutが低い状態では、ダイオード25が逆バイアスされるため、制御部30の電源ノードN30の電圧は、例えば、トリガー電源供給部40から供給されるトリガー電源に応じた電圧になる。
抵抗312の一端は電源ノードN30に接続され、その他端はコンデンサ313の一端に接続され、コンデンサ313の他端はグランドに接続されている。これら抵抗312とコンデンサ313は、一定の時定数τを有する遅延回路を構成している。
尚、時定数τは、変動しやすい電源ノードN30の電圧に合わせて後述の周波数制御の期間(時刻t01〜t1の起算)を調整するためのものであり、時定数τを得るための時定数回路を抵抗312及びコンデンサ313から構成し、いわゆるCR構成の時定数回路が用いられている。
検出信号STは、スイッチ42がオンしてから時定数τに応じた一定時間が経過し、かつ電源ノードN30電圧が規定電圧値Vtargetに到達したことを示す信号である。本実施形態では、時刻t01から時刻t1までの時間は、スイッチ42がオンしてから検出信号STが出力されるまでの時間を表している。
ここで、前述したように、トランス22の巻数比は、出力電圧Voutが所望の時間で規定値Vtargetに到達するように設定され、出力電圧Voutが規定値Vtargetに到達するまでの時間はトランス22の巻数比によって設定されている。このように設定されたトランス22の巻数比を前提とし、抵抗312とコンデンサ313による時定数τは、電源ノードN30電圧に合せて出力電圧Voutが規定値Vtargetに到達するまでの時間と対応している。
以上のように、電圧変換部20のトランス22の1次コイル221と2次コイル222との巻数比が設定され、且つ、抵抗312およびコンデンサ313による時定数τを用いて、出力電圧Voutに対応するコンデンサ311の端子間電圧V311の変動に合わせて、デューティ調整または周波数制御の期間(時刻t1までの期間)を自動的に調整している。
発振部32は、電圧変換部20のnチャネル型電界効果トランジスタ23を駆動するためのスイッチング駆動信号SDを生成するものであり、発振回路321、抵抗322,323,324,325、pnp型トランジスタ326、npn型トランジスタ327を備えている。ここで、発振回路321の入力部には、電圧時間検出回路314から検出信号STが供給される。発振回路321は、検出信号STに基づいて、電圧変換部20の出力電圧Voutが規定値Vtargetに到達するまでの期間、電源ノードN30の電圧が所定の起動最低電圧Vsを下回らないようように、電圧変換部20による電圧変換を制御するためのスイッチング駆動信号SCを発生させる。ここで、起動最低電圧Vsは、制御用ICから構成される制御部30を起動させるために必要な電源ノードN30の電源電圧の下限を指す。本実施形態では、制御部30が起動すれば、電源装置100の動作が正常に実施される。従って、起動最低電圧Vsは、電源装置100を起動するために必要な最低限の電源電圧である。
抵抗322の一端は電源ノードN30に接続され、抵抗322の他端は抵抗323の一端に接続され、抵抗323の他端は抵抗324の一端に接続され、抵抗324の他端は抵抗325の一端に接続され、抵抗325の他端はグランドに接続されている。pnp型トランジスタ326のエミッタは電源ノードN30に接続され、そのベースは、抵抗322と抵抗323との間の接続点に接続されている。pnp型トランジスタ326のコレクタは、npn型トランジスタ327のコレクタに接続され、npn型トランジスタ327のベースは、抵抗324と抵抗325との間の接続点に接続されている。npn型トランジスタ327のエミッタはグランドに接続されている。
上述の抵抗322〜325、pnp型トランジスタ326、npn型トランジスタ327は、発振回路321から出力されるスイッチング駆動信号SCに応答して、pnp型トランジスタ326とnpn型トランジスタ327との間の接続点からスイッチング駆動信号SDを出力するためのドライバとして機能する。スイッチング駆動信号SDは、抵抗Rを介して、電圧変換部20のnチャネル型電界効果トランジスタ23のゲートに供給される。なお、本実施形態では、スイッチング駆動信号SDは、スイッチング駆動信号SCの反転信号となるが、周波数およびデューティはスイッチング駆動信号SCと対応している。従って、nチャネル型電界効果トランジスタ23のスイッチング動作の制御に関し、スイッチング駆動信号SDはスイッチング駆動信号SCと等価な信号である。
トリガー電源供給部40は、起動時に制御部30に対し動作電源としてトリガー電源を供給し、このトリガー電源を供給した後、制御部30へトリガー電源を供給することを停止するものである。即ち、トリガー電源供給部40は、制御部30の初期の動作電源となるトリガー電源を生成し、起動時に制御部30に対しトリガー電源を供給した後、制御部30からトリガー電源を切り離すことにより、制御部30へトリガー電源を供給することを停止する。本実施形態では、トリガー電源供給部40は、ラジオやテレビの放送周波数電波等、環境に存在する任意の電波(以下、「環境電波」と称す。)を検波してトリガー電源を生成し、制御部30の電源ノードN30にトリガー電源を供給する。
なお、本実施形態では、トリガー電源の切り離しは、トリガー電源供給部40から制御部30へのトリガー電源の供給を停止することを意味している。
なお、本実施形態において、「トリガー電源」なる用語は、電源装置100の起動時に制御部30に供給される一時的な電源を指す。
トリガー電源供給部40の構成を詳細に説明する。トリガー電源供給部40は、トリガー電源生成部41とスイッチ42とから構成される。このうち、トリガー電源生成部41は、トリガー電源を生成するものであり、アンテナ411、トランス412、整流回路413、コンデンサ414を備えている。ここで、アンテナ411は、環境電波を受信するためのものであり、トランス412の1次コイル4121の一端に接続されている。トランス412は、環境電波によりアンテナ411に誘導された高周波電流を検出して電圧に変換するためのものである。トランス412の1次コイル4121の他端はグランドに接続されている。トランス412の2次コイル4122の一端および他端は、それぞれ、整流回路413の後述の第1入力ノードおよび第2入力ノードに接続される。
整流回路413は、トランス412により変換された電圧を整流するためのものであり、ダイオード4131,4132,4133,4134からなるフルブリッジ回路として構成されている。ここで、ダイオード4131のカソードは、整流回路413の第1出力ノードに接続され、そのアノードはダイオード4132のカソードに接続され、ダイオード4132のアノードは、整流回路413の第2出力ノードに接続されている。本実施形態では、整流回路413の第2出力ノードはグランドに接続されている。ダイオード4131のアノードとダイオード4132のカソードとの間の接続点は整流回路413の第1入力ノードを形成している。
また、ダイオード4133のカソードは、整流回路413の第1出力ノードに接続され、そのアノードはダイオード4134のカソードに接続され、ダイオード4134のアノードは、整流回路413の第2出力ノード(グランド)に接続されている。ダイオード4133のアノードとダイオード4134のカソードとの間の接続点は整流回路413の第2入力ノードを形成している。
上述のトランス412および整流回路413は、アンテナ411により受信された環境電波を検波して直流電力に変換する一種の検波回路として機能する。
コンデンサ414は、上述のトランス412および整流回路413により検波して得られる直流電力を蓄積するためのものであり、整流回路413の第1出力ノード(ダイオード4131,4133のカソード)と第2出力ノード(グランド)との間に接続されている。コンデンサ414に蓄積された電力がトリガー電源として用いられる。
スイッチ42は、起動時にトリガー電源供給部40を制御部30に接続するためのものであり、整流回路413の第1出力ノード(ダイオード4131,4133のカソード)と上述の制御部30の電源ノードN30との間に接続されている。スイッチ42は、例えばa接点(常開接点)から構成されるが、手動スイッチ等、任意のスイッチを用いることができる。
(動作の説明)
次に、図2に示す波形図を参照して、第1実施形態による電源装置100の動作について説明する。
図2は、第1実施形態による電源装置100の動作例を説明するための波形図である。ここで、図2(A)は、トリガー電源生成部41のコンデンサ414の端子間電圧V414の波形の一例を示し、図2(B)は、計時部31のコンデンサ313の端子間電圧V313の波形の一例を示し、図2(C)は、発振部32から出力されるスイッチング駆動信号SDの波形の一例を示し、図2(D)は、電圧変換部20の出力電圧Voutの波形の一例を示す。
時刻t0以前の起動前の状態では、トリガー電源供給部40のスイッチ42はオフ状態(開状態)とされている。この場合、トリガー電源生成部41は、アンテナ411で受信された環境電波をトランス412の1次コイル4121によって形成されるアンテナコイルで受電して整流回路413で検波し、この検波により得られる電圧でコンデンサ414を充電する。この充電によりコンデンサ414に蓄積された電力は、電源装置100の起動時に制御部30を動作させるためのトリガー電源として使用される。
詳細には、時刻t0以前の起動前の状態では、アンテナ411が環境電波を定常的に受信している。この場合、環境電波はアンテナ411に高周波電流を誘導し、トランス412の1次コイル4121に高周波電圧を発生させる。トランス412は、1次コイル4121に発生された高周波電圧を巻数比に応じて昇圧して2次コイル4122の端子間に交流電圧を発生させる。整流回路413は、トランス412の2次コイル4122の端子間に発生された交流電圧を整流してコンデンサ414に供給する。これによりコンデンサ414が充電され、その充電が進むにつれてコンデンサ414の端子間電圧V414(即ち、トリガー電源の電圧)が次第に上昇する。
ここで、本実施形態では、コンデンサ414の端子間電圧V414として、起動時に制御部30が電圧変換部20のスイッチング用のnチャネル型電界効果トランジスタ23を安定的に駆動するために必要な所定の起動最低電圧Vs(例えば1V)以上の電圧を確保する。このため、本実施形態では、トランス412により、アンテナ411により受信して得られる高周波電圧を起動最低電圧Vs以上の電圧にまで昇圧している。ここで、コンデンサ414の容量値が大きいと、コンデンサ414の端子間電圧V414が起動最低電圧Vs以上にまで上昇するのに時間を要するため、コンデンサ414の容量値を過大な値に設定することはできない。そこで、トリガー電源として必要な電力を確保するため、図2(A)に例示するように、コンデンサ414の端子間電圧V414として例えば4V程度の電圧が得られるように、トランス412の巻数比が設定されている。
また、環境電波を検波して得られる整流回路413の出力電圧は環境電波の強度やアンテナ411の向きに応じて変動するため、整流回路413からコンデンサ414に供給される電流が小さくなる。このため、仮に起動前にスイッチ42がオン状態にあるとすれば、コンデンサ414に蓄積された電力が、例えば制御部30の発振部32を構成する抵抗322〜325を通じて放電され、コンデンサ414の端子間電圧V414として、起動最低電圧Vs以上のトリガー電源を確保することができなくなる。
そこで、本実施形態では、電源装置100の起動前の初期状態において、スイッチ42をオフ状態に制御し、コンデンサ414を無負荷状態(コンデンサ44の放電経路を遮断した状態)とすることにより、コンデンサ414の放電を抑制している。コンデンサ414の放電が抑制されれば、整流回路413からコンデンサ414に供給される電流が微弱であっても、時間をかければ、コンデンサ414の端子間電圧V414を起動最低電圧Vs以上にまで上昇させることができ、制御部30の動作に必要な電圧のトリガー電源を確保することができる。
次に、時刻t0において、スイッチ42がオン状態(閉状態)になり、電源装置100が起動されると、トリガー電源供給部40は、スイッチ42を通じて、コンデンサ414の端子間電圧V414をトリガー電源として制御部30の電源ノードN30に供給する。これにより、コンデンサ414に蓄積された端子間電圧V414により制御部30のコンデンサ311が充電される。このとき、コンデンサ414とコンデンサ311の容量値が同じであり、スイッチ42がオンする前のコンデンサ311の端子間電圧V311が0Vであれば、スイッチ42がオン状態になった後の制御部30のコンデンサ311の端子間電圧V311の初期値は、スイッチ42がオン状態になる前のコンデンサ414の端子間電圧V414(4V)を21/2で除算した実効値により表される(図2(B))。その後、時刻t01(図2(A))でスイッチ42がオフ状態になる。図2(B),(C),(D)では、横軸(時間軸)の基点を時刻t01としている。
スイッチ42がオン状態になった後の端子間電圧V311の初期値が端子間電圧V414を21/2で除算した実効値により表されることについて補足する。
スイッチ42がオン状態になる前にコンデンサ414に蓄積されたエネルギーPは、スイッチ42がオン状態になると、コンデンサ311とコンデンサ414とに振り分けられる。このことから、スイッチ42がオン状態となった後のコンデンサ311の端子間電圧V311(=V414)の初期値をVxとすれば、次の関係式が成り立つ。
P=C414×V414×V414÷2=(C414+C311)×Vx×Vx÷2
ここで、コンデンサ414の容量C414とコンデンサ311の容量C311は同じであると仮定しているから、Vx=V414÷21/2となる。従って、コンデンサ311の端子間電圧V311の初期値Vxは、コンデンサ414の端子間電圧V414(4V)を21/2で除算した値により表される。
なお、本実施形態では、時刻t01でスイッチ42がオフ状態になると、トリガー電源供給部40が制御部30から切り離され、トリガー電源の供給が停止される。この場合、コンデンサ414は整流回路413の出力電圧で再充電され、その端子間電圧V414が上昇を開始する(図2(A))。これにより、トリガー電源供給部40は、次回の起動に備えて、トリガー電源を確保する。
上述の時刻t01において、制御部30の発振部32は、トリガー電源供給部40からコンデンサ311に供給されたトリガー電源(端子間電圧V311)を動作電源として発振動作を開始してスイッチング駆動信号SDを生成し(図2(C))、このスイッチング駆動信号SDによりnチャネル型電界効果トランジスタ23を駆動する。そして、nチャネル型電界効果トランジスタ23のゲート電圧V23がスイッチング駆動信号SDの信号レベルに応じて変化すると、nチャネル型電界効果トランジスタ23がスイッチングし、電圧変換部20が発電モジュール10の発電電圧VGの電圧変換を開始する。これにより、トランス22を介して出力コンデンサ26に電圧が印加され、時刻t01から出力電圧Voutが上昇を開始する(図2(D))。
ここで、トランス22の2次コイル222に誘起される正電圧は、ダイオード24を通じて高電圧出力端子THに供給されると共に、ダイオード25を通じて制御部30の電源オードN30にも供給される。前述したように、電圧変換部20の出力電圧Voutが上昇すると、電圧変換部20からダイオード25を通じて制御部30の電源ノードN30に供給される電圧(=電源ノードN30の電圧=端子間電圧V311)は、電圧変換部20のダイオード24を通じて高電圧出力端子THに供給される出力電圧Voutと等価になる。
制御部30の発振部32が発振動作を開始すると、この動作により消費電力が発生するため、時刻t01からコンデンサ311の端子間電圧V311が降下し始める(図2(B))。端子間電圧V311の降下に伴って、この端子間電圧V311を電源電圧として動作する発振部32から出力されるスイッチン駆動信号SDの振幅も低下する(図2(C))。しかし、スイッチング駆動信号SDに基づきnチャネル型電界効果トランジスタ23がスイッチングを継続することにより、電圧変換部20が発電モジュール10の発電電圧VGをトランス22により昇圧して電圧変換し、この電圧変換により得られる電圧がダイオード25を通じて制御部30の電源ノードN30に供給される。このため、コンデンサ311の端子間電圧V311は、一旦降下した後に、出力電圧Voutの上昇に合わせて再び上昇する(図2(B))。
制御部30は、時刻t01から電圧変換部20の出力電圧Voutが目標電圧である規定値Vtarget(例えば2V)に到達する時刻t1までの期間、電源ノードN30の電圧、即ち、コンデンサ311の端子間電圧V311が起動最低電圧Vsを下回らないように、nチャネル型電界効果トランジスタ23のスイッチング動作の周波数を高くし、または、そのオンデューティの割合を小さく制御することにより制御部30での消費電力を抑え、コンデンサ311に蓄積された電力の消費を抑える。このようなnチャネル型電界効果トランジスタ23のスイッチング動作に関する制御は、制御部30において、スイッチング駆動信号SDの周波数またはデューティを調整することにより行われる。
また、制御部30は、スイッチ42がオン状態になった時刻t0から出力電圧Voutが規定値Vtargetに到達する時刻t1までの時間を計時する。時刻t0から時刻t1までの時間は、抵抗312およびコンデンサ313による時定数τに応じた一定時間が経過し、かつ電源ノードN30の電圧が規定値Vtargetに到達するまでの時間である。ここで、時定数τは、起動時のコンデンサ311の端子間電圧V311が出力電圧Voutの基準値Vtargetより高い場合に重要になる。この場合、時定数τにより周波数制御の期間(時刻t01〜t1)が調整される。このように時定数τを用いれば、電源ノードN30の電圧に応じて自動的に周波数制御の期間を調整することができる。従って、本実施形態では、スイッチング周波数の切り替えが行われる時刻t1は、時定数τと電源ノードN30の電圧とに応じて設定される。また、発電モジュール10の発電電圧VGが低い場合には、その発電電圧VGに応じて、デューティ調整または周波数制御の期間が延長される。
このように、本実施形態では、スイッチ42が時刻t0でオン状態になってから時刻t1で出力電圧Voutに対応するコンデンサ311の端子間電圧V311が目標電圧である規定値Vtargetに到達するように、発電モジュール10の発電電圧VGを考慮して、電圧変換部20のトランス22の1次コイル221と2次コイル222との巻数比が設定され、且つ、抵抗312およびコンデンサ313による時定数τを用いて、出力電圧Voutに対応するコンデンサ311の端子間電圧V311の変動に合わせて、デューティ調整または周波数制御の期間(時刻t1までの期間)を自動的に調整している。
そして、時刻t1において、電圧変換部20の出力電圧Voutおよびコンデンサ311の端子間電圧V311が規定値Vtargetに到達し、スイッチング動作が安定すると、制御部30は、それまでの周波数またはデューティに代えて、規定の周波数またはデューティを有するスイッチング駆動信号SDでnチャネル型電界効果トランジスタ23を駆動する。これにより、電圧変換部20のスイッチング動作が規定の通常動作に切り替えられ、電圧変換部20の出力電圧Voutは規定値Vtargetに維持される。また、制御部30は、トリガー電源供給部40からトリガー電源の供給が停止された後も、電圧変換部20から供給される電圧を動作電源電圧とし、電圧変換部20の電圧変換の制御を継続する。これにより、電源装置100は、トリガー電源に依存することなく安定的に動作を継続するようになる。
このように、第1実施形態によれば、起動時にトリガー電源供給部40から制御部30に対し起動最低電圧Vs以上のトリガー電源が供給されるので、発電モジュール10の発電電圧VGが微弱であっても、制御部30を起動させることができ、制御部30が電圧変換部20のスイッチング動作を制御することができる。従って、電源装置100において、微弱な発電電圧VGから所望の出力電圧Voutを発生させることが可能になる。
ところで、上述した第1実施形態では、電源装置100の起動時に環境電波から生成したトリガー電源を用いることにより、発電モジュール10の発電電圧VGに依存することなく起動することを可能としているが、他の起動手法として、発電モジュール10を構成する発電素子11の個数を増やして発電電圧VGを高くし、この発電電圧VGを用いて電源装置100を起動することも考えられる。しかしながら、この起動手法によれば、次のような問題があり、実際には電源装置100の起動は困難である。
発電素子11として一般的なゼーベック素子を用いた場合、1素子あたり100μV/K程度の発電電圧しか得ることができない。このため、電源装置100の起動に必要な例えば1Vの発電電圧VGを確保するためには、温度差を8℃とした場合、1250個のゼーベック素子を直列に接続する必要がある。この場合、1250個のゼーベック素子の内部インピーダンスの総和が数キロオームに達し、非常に高くなる。このため、発電モジュール10の出力電流が小さくなり、僅かな負荷でも発電電圧VGが低下するおそれがある。
また、発電素子11の個数を増やさずに所望の発電電圧VGを得るためには、発電モジュール10に与える温度差を拡大すればよいが、この場合、発熱量の大きな発熱源を確保する必要がある。このため、例えば人間の体温を発熱源として発電する用途では、得られる温度差に限界があり、限られた個数の発電素子で所望の発電電圧VGを得ることは困難である。
これに対し、本実施形態によれば、起動時にトリガー電源供給部40からトリガー電源を制御部30に供給するため、発電モジュール10の発電電圧VGによらず、制御部30を動作させることができ、発電電圧VGを高くする必要がない。このため、発電モジュール10を構成する発電素子11の個数を増やすことなく、また、発電モジュール10に与える温度差を拡大することなく、電源装置100を起動することができ、発電モジュール10により発電された微弱な電圧から所望の出力電圧Voutを安定的かつ継続的に発生させることができる。
また、本実施形態によれば、充分な温度差を得ることができない状況であっても、発電素子11の個数を増やすことなく、電源装置100を起動させることができ、しかも発電モジュール10の内部インピーダンスを低インピーダンス化することができる。このため、小さな温度差でも、所望の電圧を発生させることができる。従って、例えば、人間の体温を利用して所望の電圧を発生させ、人間の身体に取り付けられた装置の電源を半永久的に供給することも可能になる。
また、本実施形態によれば、制御部30の起動時の初期動作に必要なトリガー電源を環境電波から生成するので、見かけ上、バッテリレスの電源装置を実現することができる。
なお、上述した第1実施形態では、電源装置100は、一旦起動されると、発電モジュール10が発電を停止するまで、電力変換動作を継続する。このため、電源装置100の動作を停止させる必要のある用途では、例えば、発電モジュール10と電圧変換部20との間の電流経路にスイッチ(例えばb接点)を設けておき、このスイッチをオフ状態に操作することにより、電圧変換部20に対する発電電圧VGの供給を遮断すればよい。その他、制御部30の動作電源電圧を失わせることができることを限度に、任意の手法で電源装置100を停止させることができる。
また、第1実施形態では、電圧変換部20のトランス22の2次コイル222に誘起される電圧を制御部30の電源ノードN30に供給するものとしたが、例えば、電圧変換部20のトランス22の2次コイル222に誘起される電圧をトリガー電源生成部41の第1出力ノードとスイッチ42との間の接続点に供給するようにしてもよい。この場合、電源装置100の稼働中、制御部30の動作電源を確保する必要上、スイッチ42をオン状態に維持する必要がある。再起動する場合には、事前にスイッチ42をオフ状態とし、上述したように、環境電波からトリガー電源を生成しておけばよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態による電源装置は、図1に示す第1実施形態による電源装置100の構成において、トリガー電源生成部41に代えて、図3に示すトリガー電源生成部51を備える。その他の構成は第1実施形態と同様である。
図3は、本発明の第2実施形態による電源装置が備えるトリガー電源生成部51の構成例を示す図である。
トリガー電源生成部51は、アンテナ5111,5112、トランス5121,5122、ダイオード5131,5132,5133,5134、コンデンサ5141,5142を備えており、これらは、それぞれ、図1に示すトリガー電源生成部41のアンテナ411、トランス412、ダイオード4131〜4134(整流回路413)、コンデンサ414に対応している。
ここで、アンテナ5111は、トランス5121の1次コイルの一端に接続され、トランス5121の1次コイルの他端はグランドに接続されている。アンテナ5112は、トランス5122の1次コイルの一端に接続され、トランス5122の1次コイルの他端はグランドに接続されている。トランス5121の2次コイルの一端は、ダイオード5131のアノードに接続され、トランス5121の2次コイルの他端はトランス5122の2次コイルの一端に接続され、トランス5122の2次コイルの他端はダイオード5134のカソードに接続されている。本実施形態では、トランス5121の1次側の極性と2次側の極性は同じに設定され、トランス5122の1次側の極性と2次側の極性も同じに設定される。従って、トランス5121の2次コイルにはトランス5121の1次コイルと同極性の電圧が誘起され、トランス5122の2次コイルにはトランス5122の1次コイルと同極性の電圧が誘起される。また、トランス5121の2次コイルとトランス5122の2次コイルは、これらのコイルにそれぞれ誘起される同極性の電圧を加算した電圧が後述のフルブリッジ整流回路513を構成するダイオード5131のアノード(ダイオード5132のカソード)とダイオード5134のカソード(ダイオード5133のアノード)との間に印加されるように、直列に接続されている。ただし、トランス5121の2次側とトランス5122の2次側にそれぞれ誘起される電圧の極性が同じになることを限度として、トランス5121,5122のそれぞれにおいて1次側と2次側は逆極性であってもよい。
ダイオード5131,5132,5133,5134は、フルブリッジ整流回路513を構成している。ここで、ダイオード5131のカソードは、ダイオード5133のカソードに接続され、ダイオード5133のアノードはダイオード5134のカソードに接続されている。ダイオード5132のアノードはダイオード5134のアノードに接続され、ダイオード5132のカソードはダイオード5131のアノードに接続されている。ダイオード5131,5133の各カソードは、フルブリッジ整流回路513の第1出力ノードを形成し、ダイオード5132,5134の各アノードは、フルブリッジ整流回路513の第2出力ノードを形成している。フルブリッジ整流回路513の第2出力ノードはグランドに接続されている。
コンデンサ5141の一端はフルブリッジ整流回路513の第1出力ノードに接続され、コンデンサ5141の他端はコンデンサ5142の一端に接続され、コンデンサ5142の他端はフルブリッジ整流回路513の第2出力ノードに接続されている。また、コンデンサ5141とコンデンサ5142との間の接続点は、トランス5121の2次コイルとトランス5122の2次コイルとの間の接続点に接続されている。また、フルブリッジ整流回路513の第1出力ノードにはスイッチ42の一端が接続され、このスイッチ42は、フルブリッジ整流回路513の第1出力ノードと図1に示す制御部30の電源ノードN30との間に接続されている。
第2実施形態では、トリガー電源生成部51は、2個のアンテナ511,512で2個のコンデンサ5141,5142のそれぞれに対し180度逆位相で倍電圧充電を行う。具体的には、トランス5121の2次コイルに誘起される正電圧により、ダイオード5131を通じてコンデンサ5141の充電が行われ、トランス5122の2次コイルに誘起される正電圧により、ダイオード5134を通じてコンデンサ5142の充電が行われる。また、トランス5121の2次コイルに誘起される負電圧により、ダイオード5132を通じてコンデンサ5142の充電が行われ、トランス5122の2次コイルに誘起される負電圧により、ダイオード5133を通じてコンデンサ5141の充電が行われる。これにより、直列接続されたコンデンサ5141とコンデンサ5142が倍電圧で充電される。
第2実施形態によれば、上述の図1に示す第1実施形態のトリガー電源生成部41と同等のトリガー電源(コンデンサ414の端子間電圧V414)を生成するものとした場合、図1のトランス412の巻数比に比較して、トランス5121,5122の各巻数比を少なくすることができる。このことは、トランス5121,5122の各2次コイルのインピーダンスを低減させ、各トランスの出力電流を増やすことができることを意味する。このため、第2実施形態によれば、コンデンサ5141,5142の充電時間を短縮することができ、短時間でトリガー電源を生成することが可能になる。また、第2実施形態のトリガー電源生成部51は、電波の弱い地域において、コンデンサ5141,5142の加算電圧を、図1示す第1実施形態のトリガー電源生成部41よりも高くすることができる有効な手段である。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図4は、本発明の第3実施形態による電源装置300の構成例を示す図である。
本実施形態による電源装置300は、前述の図1に示す第1実施形態による電源装置100の構成において、トリガー電源供給部40に代えて、トリガー電源供給部60を備える。その他の構成は第1実施形態と同様である。
トリガー電源供給部60は、バッテリ61からトリガー電源を生成して、起動時に制御部30に動作電源としてトリガー電源を供給した後、制御部30へトリガー電源を供給することを停止するものであり、バッテリ61、スイッチ62、pnp型トランジスタ63、抵抗65を備えている。バッテリ61は、例えば乾電池であり、そのバッテリ電圧Vbは、前述の起動最低電圧Vsにpnp型トランジスタ63のベース・エミッタ間電圧VBEを加算した電圧以上の電圧であり、かつ出力電圧Voutの規定値Vtarget未満の電圧であることが必要である。
バッテリ61の正電極は、スイッチ62の入力端子に接続され、その負電極はグランドに接続されている。スイッチ62の出力端子にはpnp型トランジスタ63のエミッタが接続されている。pnp型トランジスタ63のベースには抵抗65の一端が接続され、抵抗65の他端は、電圧変換部20のダイオード24のカソード(高電圧出力端子TH)に接続されている。本実施形態では、pnp型トランジスタ63は、バッテリ電圧Vbと出力電圧Voutとを比較する一種のコンパレータとして機能する。
次に、トリガー電源供給部60に着目して電源装置300の動作を説明するが、その他の動作は第1実施形態と同様である。
起動前の状態では、スイッチ62はオフ状態にあり、電圧変換部20および制御部30は動作しておらず、出力電圧Voutはグランドレベルにある。この状態から、スイッチ62がオン状態になると、バッテリ61のバッテリ電圧Vbがスイッチ62を通じてpnp型トランジスタ63のエミッタに印加される。
このとき、電圧変換部20から抵抗65を介してpnp型トランジスタ63のベースに供給される出力電圧Voutはグランドレベルにあるから、pnp型トランジスタ63のベース電圧は、バッテリ電圧Vbからベース・エミッタ間電圧VBEを減じた電圧よりも低い状態にある。このため、pnp型トランジスタ63はオン状態となる。この場合、バッテリ電圧Vbは、スイッチ62とpnp型トランジスタ63を通じて、バッテリ電圧Vbによりコンデンサ311に充電され、トリガー電源として制御部30の電源ノードN30に供給される。この結果、第1実施形態と同様に、電圧変換部20および制御部30が動作を開始し、出力電圧Voutが上昇を開始する。
出力電圧Voutが上昇し、pnp型トランジスタ63のベース電圧が、バッテリ電圧Vbからベース・エミッタ電圧VBEを減じた電圧よりも高くなると、pnp型トランジスタ63がオフ状態になる。これにより、バッテリ電圧Vbによるコンデンサ311の充電が停止される。この後、制御部30の電源ノードN30には、電圧変換部20から、ダイオード25を通じて出力電圧Voutと同電圧が供給され、これにより制御部30は動作を継続する。また、スイッチ62の導通が短時間のみのワンショットの導通でも、バッテリ61のインピーダンスが低いため、コンデンサ311の容量に関係なく、充電が十分できる。
上述した第3実施形態によれば、バッテリ61のバッテリ電圧Vbからトリガー電源を生成して制御部30に供給するので、環境電波が得られない状況であっても、発電モジュール10の微弱な発電電圧VGから所望の出力電圧Voutを発生させることができる。
また、第3実施形態よれば、バッテリ電圧Vbが、起動最低電圧Vsにpnp型トランジスタ63のベース・エミッタ間電圧VBEを加算した電圧以上であって、出力電圧Voutの規定値Vtarget未満である場合(Vs+VBE≦Vb<Vtarget)には、出力電圧Voutと等価なコンデンサ311の端子間電圧V311が、起動最低電圧Vsにpnp型トランジスタ63のベース・エミッタ間電圧VBEを加算した電圧以上であって、出力電圧Voutの規定値Vtarget未満(Vs+VBE≦V311<Vtarget)になると、pnp型トランジスタ63がオフ状態になるので、スイッチ62をオン状態に維持したものとしても、バッテリ61の消耗を最小限に留めることができる。従って、制御部30の起動時の初期動作に必要なトリガー電源をバッテリ61から生成しても、その放電時間が極めて短時間であるため、バッテリ61の交換期間を大幅に伸ばすことができる。また、スイッチ62の導通が短時間のみのワンショットの導通であれば、さらにバッテリ61の消耗を抑えられる。
更に、本実施形態よれば、バッテリ61のバッテリ電圧Vbからトリガー電源を生成するので、環境電波からトリガー電源を生成する場合に比較して、短時間でトリガー電源を生成することができる。
なお、第3実施形態でも、第1実施形態と同様に、電源装置300の動作を停止させる必要がある場合、例えば、発電モジュール10と電圧変換部20との間の電流経路にスイッチを設ければよい。
以上、本発明の実施形態および変形例を説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形、置換、付加などが可能である。
例えば、上述の各実施形態では、電圧変換部20は、トランス22により電圧を昇圧するものとしたが、トランスを用いないチャージポンプ回路等を用いて昇圧することも可能である。
また、上述の各実施形態では、起動後にトリガー電源供給部を制御部から切り離すものとしたが、例えば、公知の非接触給電技術を用いて外部からトリガー電源を一時的に制御部に供給するように構成することも可能である。