近年、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に対する省エネルギー化・高速化についての市場要求が強くなってきている。画像形成装置では、電子写真記録・静電記録・磁気記録等の画像形成プロセスにより画像が形成され、画像転写方式又は直接方式により未定着トナー画像が記録材シート・印刷紙・感光紙・静電記録紙等の記録材に形成される。そして、未定着トナー画像を定着させるための定着装置としては、熱ローラ方式、フィルム加熱方式、電磁誘導加熱方式等の接触加熱方式の定着装置が広く採用されている。
また、低熱容量である薄肉の定着回転体を定着装置の定着部材として採用することによって、電源投入時等、常温状態から印刷可能な所定のリロード温度までに要する時間の短縮や消費電力の低減等の効果が得られることが知られている。
このような定着装置の一例として、ベルト方式の定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このようなベルト方式の定着装置では、近年、更なるウォームアップ時間やファーストプリント時間の短縮が望まれている。なお、ウォームアップ時間とは、電源投入時等、常温状態から印刷可能な所定の温度(リロード温度)までに要する時間を言う。また、ファーストプリント時間とは、印刷要求を受けた後、印刷準備を経て印字動作を行い、排紙が完了するまでの時間を言う。
また、画像形成装置の高速化に伴い、単位時間あたりの通紙枚数が増え、必要熱量が増大する。そのため、特に連続印刷のはじめに熱量が不足する所謂温度落ち込みが問題となっている。
上述のような問題を解決するために、無端ベルトを用いる構成において、そのベルト全体を温めることを可能にした定着装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載の定着装置は、無端ベルトと、無端ベルトの内部に配設されたパイプ状の金属熱伝導体と、金属熱伝導体内に配設された熱源と、無端ベルトを介して金属熱伝導体に当接してニップ部を形成する加圧ローラを備える。そして、金属熱伝導体内の熱源により金属熱伝導体を介して無端ベルトが加熱される。このような構成により、定着装置を構成する無端ベルト全体を温められる。そのため、加熱待機時からのファーストプリントタイムを短縮し、かつ高速回転時の熱量不足を解消できる。
しかしながら、特許文献2に記載の定着装置は、連続通紙中に、定着回転体の回転軸方向で両端部にある非通紙部(記録媒体が通過しない範囲)の温度が上昇する所謂端部温度上昇の問題が生じる。具体的には、端部温度上昇は、次のようなプロセスで生じる。まず、通紙部(記録媒体が通過する範囲)は、定着回転体から用紙に熱が奪われる。そして、この温度低下を補うために、加熱源から定着回転体に熱が供給される。この時、定着回転体の通紙部だけでなく非通紙部にも熱が供給される。非通紙部は、定着回転体から他の部材に熱が奪われる速度が低いため、連続通紙中に温度が上昇してしまい、端部温度上昇となる。
また、このような端部温度上昇が過剰に発生すると、定着回転体の温度が高温となり、劣化が進行するという問題が生ずる。
以上のような課題を解決する手法として、定着回転体の回転軸方向の温度分布を均等にする(均熱化する)均熱部材によって、非通紙部の熱を通紙部に移動させ端部温度上昇を抑制する手法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、特許文献3に記載のように、均熱部材による均熱化を実施する定着装置は、立ち上げ時に通紙部を温める際に、通紙部から非通紙部へ熱が移動してしまい、通紙部の昇温速度が低下してしまう。そのため、立ち上げ時間が延びてしまうという課題があった。
このような課題に対して、均熱部材を定着回転体に対して可動式にすることで、立ち上げの際に、通紙部から非通紙部への熱の移動を均熱部材によって防止する定着装置が提案されている(例えば、特許文献4,5参照)。
しかしながら、特許文献4,5に記載された定着装置は、均熱部材を可動式にするため、複雑な構成が必要となり、装置が大型化してしまう問題がある。
次に、本発明に係る第1の実施形態を図面に従って以下に説明する。なお、本実施形態を説明するための各図面において、同一の機能若しくは形状を有する部材又は構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1は、本発明の定着装置が設けられる画像形成装置10としてのカラープリンタの一例を示す概略断面図である。ここに示される画像形成装置10は、後述する定着装置50と電子写真方式の画像形成部とを備えており、その画像形成部には複数の(図示した例では4つの)画像形成手段1a、1b、1c及び1dが設けられている。この第1〜第4の画像形成手段1a、1b、1c及び1dは、それぞれ同一の構成ではあるが、対応するトナー色だけが異なっている。そのため、これら画像形成手段において、例えばブラックトナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びイエロートナー像がそれぞれ形成される。なお、これら画像形成手段は現像剤(トナー)色の違い以外は、それぞれ同一の構成であるため、以下の説明では、参照符号におけるa、b、c及びdの添え字を適宜省略して説明する。
画像形成手段1には、静電潜像担持体であるドラム状の感光体2が配置されており、この感光体2のまわりに、帯電部材3、現像装置4及びクリーニング手段5が設けられている。この感光体2は、時計回りに回転駆動することが可能であり、この感光体2の表面には帯電部材3が圧接されている。そして、この帯電部材3は、感光体2の回転駆動に伴い従動回転させられる。また、この帯電部材3には、図示しない高圧電源により所定のバイアス電圧が印加され、回転駆動する感光体2の表面を一様に帯電できるようになっている。なお、ここに図示した帯電部材3は、感光体2に接触するローラ状部材を採用しているが、コロナ放電等を利用する非接触式のものを採用することも可能である。
また、図1に示される画像形成装置10では、4つの画像形成手段に並行して、斜め下方に露光装置6が設けられている。この露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどの適宜適切な構成部材を有している。そして、各色トナーの画像データに応じて形成された画像情報に基づいて、帯電部材3により帯電させられた各感光体2を露光する。そして、それぞれの感光体2上に静電潜像を作り出すために設けられる。この露光装置6を用いて感光体2上に形成された静電潜像は、感光体2の回転により、現像装置4を通るときに各色トナーが付与されることで現像され、顕像化される。なお、この画像形成装置10の内部における上方には、ブラック、マゼンタ、シアン及びイエローの各色トナーが充填されたトナーボトル20a、20b、20c及び20dが配置されている。そして、このトナーボトル20a、20b、20c及び20dから図示しない搬送経路を介して、所定補給量のトナーがそれぞれ各色現像装置4a、4b、4c及び4dに補給されるようになっている。
更に、この各画像形成手段の感光体2に対向して中間転写体として構成される、無端ベルト状の中間転写ベルト7が配置され、この中間転写ベルト7の表面には各感光体2が当接している。図1に示した中間転写ベルト7は、複数の支持ローラ(例えば、支持ローラ15a、15bなど)に巻きかけられて構成されている。そして、図示した例では、支持ローラ15aが、図示しない駆動源としての駆動モータと連結されている。そして、この駆動モータを駆動させることで、中間転写ベルト7は、図中反時計回りに回転移動すると共に、従動回転可能な支持ローラ15bが回転させられる。また、中間転写ベルト7の裏面には、そのベルトを挟んで感光体2に対向して位置する一次転写ローラ8が配置されている。この一次転写ローラ8に図示しない高圧電源から一次転写バイアスが印加され、現像装置4により顕像化されたトナー像が中間転写ベルト7に一次転写されるようになっている。なお、一次転写されずに感光体2上に残された一次転写残トナーは、感光体2による次の画像形成動作に備えるためにクリーニング手段5により除去され、感光体2上におけるトナーが完全に除去される。
更に、図示した画像形成装置10では、一次転写ローラ8の、中間転写ベルト7の駆動方向下流側に、二次転写装置としての二次転写ローラ18が設けられている。この二次転写ローラ18は、中間転写ベルト7を挟んで支持ローラ15bと対向している。そして、この二次転写ローラ18と支持ローラ15bとで中間転写ベルト7を介して二次転写ニップ部を形成している。また、この画像形成装置10は、記録媒体積載部としての給紙カセット30、給送コロ31に加え、レジストローラ対(位置合わせローラ対)35等を備える。そして、二次転写ローラ18から見て、記録媒体の搬送方向下流側には、定着装置50及び排紙ローラ対36が設けられている。
次に、画像形成動作について説明する。
この画像形成動作においても、各感光体2にトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト7に転写する構成は、そのトナー像の色が異なるだけで、実質的に全て同一であるため、a,b,c及びdの添え字は必要に応じて省略する。
まず、上記した感光体2が図示しない駆動源により時計回り方向に回転駆動され、このとき感光体表面に図示しない除電装置からの光が照射されて表面電位が初期化される。この表面電位を初期化された感光体2の表面が、今度は帯電部材3によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された感光体表面には、露光装置6からのレーザ光が照射され、これによって感光体表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光される画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各トナー色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体上に形成された静電潜像は、現像装置4を通る際に、現像装置4からの各色トナー(現像剤)が付与され、顕像化されたトナー像として可視化される。
また、中間転写ベルト7は、図中反時計回りに走行駆動させられる。そして、上記した一次転写ローラ8には、感光体上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の一次転写電圧が印加される。これにより、感光体2と中間転写ベルト7との間に転写電界が形成される。そして、感光体2上のトナー像が、その感光体2と同期して回転駆動される中間転写ベルト7上に静電的に一次転写される。このように、一次転写される各色トナー像は、中間転写ベルト7の搬送方向上流側から逐次タイミングを併せて中間転写ベルト7上に重ね合わされ、所望のフルカラー画像が形成される。
その一方で、画像を形成されるべき記録媒体は、給紙カセット30に積載された記録媒体束から給送コロ31等の適宜適切な搬送部材の作用によりレジストローラ対35まで一枚ごとに分離されて給送される。そして、その際には、未だ回転駆動を開始していないレジストローラ対35のニップ部に、搬送された記録媒体の先端が突き当たり、所謂ループを形成することで、記録媒体のレジストレーションが行われる。その後、中間転写ベルト7上に担持されたフルカラートナー像とのタイミングを図って、レジストローラ対35の回転駆動が開始される。そして、支持ローラ15bと、これに中間転写ベルト7を介して対向する二次転写ローラ18とで構成される二次転写ニップ部に向けて記録媒体が送出される。本実施形態では、二次転写ローラ18に中間転写ベルト表面におけるトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加される。そして、これによって中間転写ベルト7表面に形成されたフルカラートナー像が記録媒体上に一括して転写される。トナー像を転写された記録媒体は、定着装置50まで更に搬送される。そして、この定着装置50を通過するときに、熱と圧力とを加えられ、永久画像としてトナー像が記録媒体に定着させられる。画像を定着させられた画像形成後の記録媒体は、排紙ローラ対36を介して排出トレイ等の記録媒体排出部に排出されることで画像形成動作が完了する。なお、二次転写ローラ18が配置される二次転写ニップ部で転写されずに中間転写ベルト7上に残留した残留トナーは、中間転写ベルトクリーニング手段19により取り除かれ回収される。
次に、定着装置50の構成について以下に説明する。
定着装置50は、図2に示すように、その内部に定着回転体111と加圧回転体121が対向して配置される。また、定着パッド131が定着回転体111を加圧回転体121に加圧することで定着回転体111と加圧回転体121の間に定着ニップ141を形成する。そして、定着パッド131が定着回転体111を加圧する際の反力によって変形することを防ぐため、加圧補助部材151が設置される。
加圧回転体121は、金属材料で形成される中空の芯金部121aを、シリコーンゴム、発泡シリコーンゴム等の弾性材料で形成される弾性層121bが被覆して構成される。また、弾性層121bの外周部にPFA、PTFE等のフッ素系樹脂で形成される厚さ10〜70μmの離型層(図示せず)を設ける。そのため、トナー及び記録媒体の剥離性を高めることができる。本実施形態では直径を25mmとし、離型層を厚さ50μmのPFAとする。なお、加圧回転体121は、加圧ローラ70にハロゲンヒータ等の熱源を有していても良い。また、加圧回転体121は、中実のローラであっても良い。
また、加圧回転体121は、R2方向に回転することで、定着ニップ141において定着回転体111に摩擦力が与えられる。そして、定着回転体111がR1方向に従動回転する。そして、トナー画像Tを有するシート状の記録媒体Pは、定着ニップ141において定着回転体111及び加圧回転体121に狭持され、それぞれの回転に伴って搬送される。また、搬送と同時に定着ニップ141において、定着回転体111及び加圧回転体121から熱及び圧力を記録媒体上のトナー画像Tに加えることで、トナー画像Tを記録媒体Pに定着させる。
定着回転体111としての無端ベルトは、熱容量及びベルト内部に部材を収容する空間等を考慮して直径15〜120mmが望ましい。また、定着回転体111の厚さは、1mm以内の薄肉であり可撓性を有することが望ましい。そして、その構成は、内周側から順に基材層(図示せず)、弾性層(図示せず)、離型層(図示せず)が積層される。なお、定着回転体111の加熱手段としてIHコイルを用いる場合は、基材層と弾性層の間に加熱層(図示せず)を形成しても良い。また、画像品質に関する要求性能が高くない場合には、弾性層を除き、基材層と離型層の2層構成としても良い。本実施形態では、ベルト径を25mmとし、基材層、弾性層、離型層により定着回転体111を構成する。
基材層は、可撓性及び剛性の両立性から、厚さが20〜100μmでポリイミド等の樹脂材料又はニッケル、ステンレス等の金属材料が望ましい。また、定着パッド131との摺動性及び加熱源161からの輻射熱の吸収率を向上させることを目的として、基材層の内周面にコーティングを施しても良い。摺動性の向上には、例えばフッ素系樹脂のコーティングが望ましい。また、輻射熱の吸収率の向上には、黒色塗料のコーティングが望ましい。
加熱層は、厚さが10μm程度で金属材料、特に銅が望ましい。そして、加熱層は、IHコイルからの相互誘導加熱により発熱する。
弾性層は、厚さが50〜300μmでシリコーンゴム等の弾性材料を用いるのが望ましい。そして、記録媒体及び定着回転体表面に凹凸があることで定着ニップ141において加圧力及び熱伝導性が不均一となることを、弾性層の変形により改善することができ、トナー定着品質が向上する。
離型層は、3〜50μmの厚さであり、トナー及び記録媒体の剥離性が高い材料が用いられる。離型層の材料は、例えばPFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等が望ましい。特にPFA、PTFE等のフッ素系樹脂材料は、摩擦係数が低く、トナー剥離性が良好であり望ましい。本実施例では、離型層を厚さ20μmのPFAによって構成する。
定着パッド131は、後述するように固設部材であり、定着回転体111が定着パッド上を摺動する。また、定着パッド131の材質は、LCP(液晶ポリマー)、ポリイミド、PAI(ポリアミドイミド)等の高耐熱性の樹脂材料が望ましい。なお、定着パッド131の材質は、アルミ、ステンレス等の金属材料でも良い。また、定着パッド131の周囲に、摩擦係数の低い材質をシート状にして巻いたり、塗布コーティングしたり等しても良い。このような構成にすることで、定着回転体111の定着パッド131に対する摺動摩擦抵抗を低下できる。
加圧補助部材151は、ステンレスや鉄等の剛性の高い金属材料を使用する。そして、定着回転体111を加圧している定着パッド131が最適な形状を維持するのに充分な剛性を備える。なお、加圧補助部材151は、金属材料に限定されず、高い剛性を有する材料であれば良い。
加熱源161としてのハロゲンヒータは、定着回転体111のうち、定着ニップ141を形成している定着ニップ形成範囲外において定着回転体111に熱を供給する。具体的には、ハロゲンヒータ161は、輻射熱が加圧補助部材151等の遮蔽物によって遮られずに、定着回転体111まで到達する加熱範囲111aにおいて、定着回転体111に熱を供給する。そして、ハロゲンヒータ161は、定着回転体111を介して定着ニップ141でトナー画像Tに熱を加える。なお、加熱源は、ハロゲンヒータ以外でも良く、例えばIHコイル、抵抗発熱体等でも良い。
均熱部材171は、一体で形成されて、図2における第1加熱範囲A1及び図3における第2加熱範囲A2において、定着回転体111に常に当接する。そして、それぞれの位置で定着回転体111の温度を均熱化させる。なお、この態様に限定されず、別体で形成されて、第1加熱範囲A1及び第2加熱範囲A2にそれぞれ当接するようにしても良い。また、均熱部材171は、定着回転体111に常に当接する態様に限定されず、接離可能としても良い。また、均熱部材171は、ヒートパイプで構成されても良い。
また、均熱部材171は、定着回転体111の内周面に当接する。そのため、トナーTに接触する定着回転体111の外周表面が均熱部材171によって荒らされることもない。その結果、均熱部材171による画像品質の低下を招かない。
定着パッド131は、図5に示すように、側板191,192に固定支持される。また、加圧補助部材151及び均熱部材171も、図5には示されていないが、定着パッド131と同様に側板191,192に固定支持される。そのため、本実施形態における定着装置50は、均熱部材171を可動式にするような複雑な構成を必要とせず、小型化を図れる。
端部フランジ101,102は、それぞれ側板191,192に固定される。そして、端部フランジ101,102は、定着回転体111の回転軸方向端部に内接する。そして、定着回転体111が端部フランジ101,102の周囲を摺動することで、定着回転体111の形状が維持される。また、端部フランジ101,102は、定着回転体111の回転軸方向への寄りを防止する効果を奏する。
加圧回転体121は、支持部材195,196に備わった軸受等により支持された芯金部121aを介して回転自在に支持される。支持部材195,196が側板191,192に対して移動することで、加圧回転体121が定着回転体111に対して接離動作を行う。
駆動ギヤ181は、芯金部121aに設けられる。そして、駆動ギヤ181を駆動することで、芯金部121aを介して加圧回転体121が回転する。そして、駆動トルクが定着ニップ141を介して定着回転体111に伝達されることで、定着回転体111が従動回転する。
次に、本発明の特徴的な構成である均熱部材による均熱範囲の第1態様を説明する。
本実施形態の第1態様の均熱範囲について、第1均熱範囲A1は、図5に示すように、定着回転体111の回転軸方向で、定着装置50に通紙可能な最大幅の用紙が定着ニップ141を通過する範囲(最大通紙幅)Wの内側(定着回転体111の回転軸方向で中央部領域)に位置する。また、第1均熱範囲A1は、図4に示すように、定着回転体111の回転方向において、定着ニップ141を形成する定着回転体111の定着ニップ形成範囲141aの下流端から加熱範囲111aの上流端までの第1範囲111bの中に位置する。
一方、第2均熱範囲A2の全部は、図5に示すように、定着回転体111の回転軸方向で、最大通紙幅Wの外側(定着回転体111の回転軸方向で端部側領域)に位置する。また、第2均熱範囲A2は、図4に示すように、定着回転体111の回転方向において、加熱範囲111aの下流端から定着ニップ形成範囲141aの上流端までの第2範囲111cの中に位置する。
そして、均熱部材171が定着回転体111のうち第1均熱範囲A1と第2均熱範囲A2において当接することで、定着回転体111の温度を均熱化する。
このように、第2均熱範囲A2の全部を最大通紙幅Wよりも端部側に設置させることで、第2均熱範囲A2の中で定着回転体111が均熱化される。そのため、立ち上げ時に通紙部から非通紙部への熱移動を抑制できる。また、立ち上がり時間が延びてしまうことを防止できる。また、連続通紙時に非通紙部から通紙部への熱移動を促進できる。そのため、過剰な端部温度上昇を防止できる。
次に、本発明の特徴的な構成である均熱部材による均熱範囲の第2態様を以下に説明する。
本実施形態の第2態様の均熱範囲について、第1均熱範囲A1は、定着回転体111の回転軸方向で、最大通紙幅Wの内側に位置する。また、第1均熱範囲A1は、図4に示すように、定着回転体111の回転方向において、定着ニップ141を形成する定着回転体111の定着ニップ形成範囲141aの下流端から加熱範囲111aの上流端までの第1範囲111bの中に位置する。
一方、第2均熱範囲A2の一部は、定着回転体111の回転軸方向で、最大通紙幅Wの外側に位置する。また、第2均熱範囲A2は、図4に示すように、定着回転体111の回転方向において、加熱範囲111aの下流端から定着ニップ形成範囲141aの上流端までの第2範囲111cに位置する。
そして、均熱部材171が定着回転体111のうち第1均熱範囲A1と第2均熱範囲A2において当接することで、定着回転体111の温度を均熱化する。
このように、第2均熱範囲A2の一部を最大通紙幅Wよりも端部側に設置させることで、第2均熱範囲A2の中で定着回転体111が均熱化される。そのため、立ち上げ時に通紙部から非通紙部への熱移動を抑制できる。また、立ち上がり時間が延びてしまうことを防止できる。また、連続通紙時に非通紙部から通紙部への熱移動を促進できる。そのため、過剰な端部温度上昇を防止できる。
次に、定着装置を立ち上げる際の定着回転体の温度変化について説明する。なお、図6は、本実施形態に係る画像形成装置の立ち上げ中の定着回転体111の温度分布を回転方向の位置で示す説明図である。そして、定着回転体111の回転軸方向で中央部領域の温度分布を実線で、端部領域の温度分布を破線で示す。また、図7は、本実施形態に係る画像形成装置の立ち上げ中の定着回転体111の温度分布を回転軸方向の位置で示す説明図である。そして、定着回転体111の回転軸方向で第1均熱範囲A1を含む位置(1)の温度分布を破線で、第2均熱範囲A2を含む位置(2)の温度分布を実線で示す。
定着回転体111は、図6に示すように、中央部領域及び端部領域ともに、定着回転体111の回転方向で、加熱範囲111aの上流端から下流端にかけて温度が上昇する。そして、定着回転体111の回転方向で、定着ニップ形成範囲141aの上流端から下流端にかけて温度が低下する。即ち、定着回転体111が加熱範囲111aにおいて加熱源161から熱が供給されることで定着回転体111の温度が上昇し、定着ニップ141において加圧回転体121に熱が奪われることで定着回転体111の温度が低下する。また、定着回転体111の中央部領域の温度は、定着回転体111の端部領域の温度よりも全体的に高い。これは、端部温度上昇を抑制するために、端部領域に供給する熱量を可能な限り低減しているためである。このような温度分布によって、定着回転体111の第1均熱範囲A1と第2均熱範囲A2の温度差は、定着回転体111の他の位置間の温度差に比較して小さくなっている。
その結果、図7に示すように、定着回転体111のうち均熱部材171が当接することによって温度が均熱化される第1均熱範囲A1と第2均熱範囲A2の間で熱の移動量が少なくなる。即ち、立ち上げ中に最大通紙幅Wの内側から外側への熱の移動を抑制できる。そして、立ち上げ中に最大通紙幅Wの内側における定着回転体111の昇温効率の向上を図れる。
次に、定着装置で連続通紙する際の定着回転体の温度変化について説明する。なお、図8は、本実施形態に係る画像形成装置の連続通紙中の定着回転体111の温度分布を回転方向の位置で示す説明図である。そして、定着回転体111の回転軸方向で中央部領域の温度分布を実線で、端部領域の温度分布を破線で示す。また、図9は、本実施形態に係る画像形成装置の連続通紙中の定着回転体111の温度分布を回転軸方向の位置で示す説明図である。そして、定着回転体111の回転軸方向で、第1均熱範囲A1を含む位置(1)の温度分布を破線で、第2均熱範囲A2を含む位置(2)の温度分布を実線で示す。
定着回転体111は、図8に示すように、定着回転体111の回転方向で、中央部領域及び端部領域とも加熱範囲111aの上流端から下流端にかけて温度が上昇する。そして、定着回転体111の回転方向で、定着ニップ形成範囲141aの上流端から下流端にかけて温度が低下する。即ち、定着回転体111が加圧範囲111aにおいて加熱源161から熱が供給されることで定着回転体111の温度が上昇し、定着ニップ141において記録媒体P又は加圧回転体121に熱を奪われることで定着回転体111の温度が低下する。また、定着回転体111の端部領域の温度は、定着回転体111の中央部領域の温度よりも全体的に高い。これは、記録媒体Pに奪われた熱を加熱源161から定着回転体111の中央部領域へ供給するのに伴い、その端部領域にも加熱源161から熱が供給されてしまうからである。具体的には、定着回転体111の端部領域は、記録媒体Pが通過しないため、定着回転体111から熱が奪われ難く(逃げ難く)、端部温度上昇が発生するからである。このような温度分布によって、定着回転体111の第1均熱範囲A1と第2均熱範囲A2の温度差は、定着回転体111の他の位置間の温度差と比較して大きくなっている。
その結果、図9に示すように、定着回転体111のうち均熱部材171が当接することによって温度が均熱化される第1均熱範囲A1と第2均熱範囲A2の間で熱の移動量が多くなる。即ち、連続通紙中に最大通紙幅Wの外側から内側への熱の移動量が多くなる。そして、連続通紙中に端部温度上昇を抑制できる。
次に、本実施形態に係る画像形成装置の作用について説明する。
均熱部材171が第1均熱範囲A1と第2均熱範囲A2を有することで、定着回転体111の端部温度上昇の際には、定着回転体111の端部領域の非通紙部から中央部領域の通紙部へ熱移動を促進できる。そのため、過剰な端部温度上昇による定着回転体111の劣化を回避できる。また、立ち上げの際には、均熱部材171によって定着回転体111の中央部領域の通紙部から端部領域の非通紙部への熱の移動量を抑制できる。そのため、定着回転体111の昇温が遅くなってしまうのを防止する。その結果、立ち上げ時間の短縮と端部温度上昇防止を両立できる。また、均熱部材171は、定着回転体111に常に当接しており、可動式にすることもないため、複雑な構成が必要となったり、装置が大型化してしまったりすることもない。
また、第2均熱範囲A2の一部を最大通紙幅Wよりも端部側に設置させることで、第2均熱範囲A2の中で定着回転体111が均熱化される。そのため、立ち上げ時に通紙部から非通紙部への熱移動を抑制できる。また、立ち上がり時間が延びてしまうことを防止できる。また、連続通紙時に非通紙部から通紙部への熱移動を促進できる。そのため、過剰な端部温度上昇を防止できる。
また、第2均熱範囲A2の全部を最大通紙幅Wよりも端部側に設置させることで、第2均熱範囲A2の中で定着回転体111が均熱化される。そのため、立ち上げ時に通紙部から非通紙部への熱移動を抑制できる。また、立ち上がり時間が延びてしまうことを防止できる。また、連続通紙時に非通紙部から通紙部への熱移動を促進できる。そのため、過剰な端部温度上昇を防止できる。
また、定着回転体111の内周面に均熱部材171を当接させることで、記録媒体上のトナーに接触する定着回転体111の外周面が均熱部材171によって表面が荒らされてトナー定着品質が低下することを防止できる。
次に、本発明に係る第2の実施形態に係る画像形成装置を図面に従って以下に説明する。なお、上述した第1の実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
第2の実施形態の第1の実施形態と異なる特有な構成は、定着装置51に備わる均熱部材271が定着回転体111と当接する位置である。第2の実施形態の均熱部材271は、図10に示すように、定着回転体111の第1均熱範囲A1とその外周面で常に当接し、図11に示すように定着回転体111の第2均熱範囲A2とその外周面で常に当接する。
ここで、画像品質の向上のために、定着回転体111の弾性層を厚くした場合、定着回転体111の外周面と内周面の間の熱伝導性が低下する。そのため、この場合に定着回転体111の内周面に均熱部材を当接して定着回転体111の均熱を行っても、定着回転体111の外周面の端部温度上昇を抑制する効果が十分に発揮されない。
一方、本実施形態のように、均熱部材271を定着回転体111の外周面に当接させることで、定着回転体111の弾性層を厚くしても、均熱化による端部温度上昇の抑制効果を十分に発揮できる。また、均熱部材271を回転体として形成する。このような構成にすることで、定着回転体111の外周面が均熱部材271によって荒らされることのないようにできる。なお、均熱部材は回転体にする態様に限定されず、均熱部材の表面を傷つけないような弾性体であったり、表面にコーティングを施したりしても良い。また、均熱部材271は、定着回転体111に常に当接する態様に限定されず、接離可能としても良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、上述の実施形態で紹介した各構成の材質、寸法はあくまで一例であり、本発明の作用を発揮し得る範囲内で様々な材質や寸法を選択可能であることは言うまでもない。