以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
本実施形態の照明器具は、図1〜図3に示すように、光源1、固定治具2、導光板3から構成される。
光源1は、LEDユニット11、集光レンズ12で構成される。
LEDユニット11は、複数のLED素子11bを、長尺状の基板11aの表面上に実装して構成される。LED素子11bは、基板11aの長手方向に沿って等間隔で1列に配列される。
基板11aは、固定治具2に保持される。固定治具2は、金属材料により三方を囲む形状(断面コ字状)に形成された長尺状に形成され、中央片21と、中央片21の幅方向の各側縁から同方向にそれぞれ立設した側片22,23とで構成される。基板11aは、側片22,23の間で中央片21上に配置される。中央片21は、側片22,23を設けた側とは反対側の面に放熱フィン24を形成しており、LED素子11bが発生する熱を放熱する機能を有する。そして、LEDユニット11は、電源線4を介して図示しない点灯回路から点灯電力を供給され、LED素子11bが光を発する。
集光レンズ12は、透明樹脂やガラス等により、LEDユニット11に対向する棒体に形成されている。集光レンズ12の幅方向の断面形状は、図4に示すように、一端から他端にかけて拡径した略椀型に形成される。集光レンズ12の一端側は、略矩形の凹部12aが長手方向に形成されて、当該凹部12aの底面12bは凸レンズ状に形成される。凹部12aは、基板11a上に集光レンズ12が配置されたときにLED素子11bが収容される空間を成す。すなわち、LED素子11bが発する光は、凹部12aの底面12bおよび側面12cから集光レンズ12内に入っており、底面12bおよび側面12cが集光レンズ12の入光面を形成している。集光レンズ12の他端側は、平面状の出光面12dを形成しており、入光面から入射した光は、集光レンズ12内において反射、屈折した後に出光面12dから出射する。そして、集光レンズ12の長手方向の側面は、外側に膨らんだ曲面状の反射面12eが形成されており、反射面12eは、凹部12aの周縁から出光面12dの外縁に連続している。この反射面12eは、凹部12aの側面12cから入射した光を全反射する。この集光レンズ12は、TIR(Total InternalReflection)レンズと称されており、LEDユニット11が発する光を配光制御する機能を有するものであって、一般に光効率に優れたものである。
導光板3は、ガラスあるいはアクリル等の透光性部材を用いて矩形板状に形成される。導光板3の1つの端面31(第1の端面)には、集光レンズ12の出光面12dが対向して配置されており、集光レンズ12の反射面12eは、凹部12aの周縁から導光板3の端面31の外縁にまで至っている。そして、導光板3の端面31と集光レンズ12の出光面12dとは、互いに対向した状態で接しており、端面31には、集光レンズ12によって配光制御されたLED素子11bの光(光源1が発する光)が入射する。端面31に入射した光は、導光板3内を導光され、端面31に略直交する出射面32(第2面)および出射面33(第1面)から漏光して出射する。また、導光板3は、光源1が取り付けられた端面31に対向して端面35(第2の端面)が形成されている。
導光板3の出射面33は、端面31から入射した光を出射面32側に反射するために、複数のプリズム34が外面に形成されている。プリズム34は、インクジェット装置によって出射面33上に吐出された透光性樹脂の液滴が硬化して出射面33上に形成されており、凸曲面の突部形状となる(図5(a)(b)参照)。端面31から入射して出射面33に向かって進む光の一部は、プリズム34によって反射して出射面32から出射する。すなわち、プリズム34は、導光板3に入射した光を出射面32側に反射するために形成されている。
インクジェット装置を用いることによって、導光板3の製作に金型が不要となり、サイズ、種類等が異なる導光板毎に金型を作製する初期投資が不要となって、コスト削減を図ることができる。また、インクジェット装置を動作させるプログラムを変更することによって、プリズム34の印刷パターンを自在に設定できるので、デザイン性の高い印刷パターンを比較的容易に作製できる。
本実施形態の照明器具は、照明対象となる領域が存在する方向に対して出射面32を向けて設置されるため、出射面33よりも出射面32の出射光が多くなるように、集光レンズ12による配光制御、導光板3のプリズム34による光の反射制御を行う。
まず、図6の実線Y1,Y2に示すように、端面31から導光板3に入射した光の入射角度が浅い場合、プリズム34に向かう光はプリズム34の周縁付近に達する可能性が高く、プリズム34の周縁付近で反射した光の大部分は、出射面32側から出射する。また、図6の破線Y3に示すように、端面31から導光板3に入射した光の入射角度が深い場合、プリズム34に向かう光の大部分は、プリズム34の表面形状によって屈折して透過し、出射面33側から出射する。
そこで本実施形態では、光源1の配光分布を最適化し、さらにプリズム34の形状も最適化することによって、出射面32からの出射光を支配的にする。
まず、光源1の最適な配光分布、プリズム34の最適な形状を、シミュレーションによって求めた。図7は、シミュレーションに用いた照明器具のモデルである。
10個のLED素子11bを基板11a上に10mm間隔で配設し、アクリル製の導光板3の長さX11=100mm、幅X12=200mm、厚さX13=4mmとする。また、導光板3は、光源1が発する光が入射される端面31以外の3つの端面(端面35を含む)を、拡散反射率90%とする。また、出射面33におけるプリズム34の被覆率50%、プリズム34の半径R=30μmとする。
モデル化の変数として、「導光板3の厚み方向における光源1の1/2指向角θa」、「プリズム34の扁平率H/R」を用いる。
導光板3の厚み方向における光源1の1/2指向角とは、導光板3の厚み方向において、光源1から出力される光の強度がピーク値の半分になる箇所間の角度のことである。図8(a)に示すように、集光レンズ12は、LEDユニット11のLED素子11bが発する光の指向角を狭めて出力している。集光レンズ12が出射する光は、集光レンズ12の指向角の略中央Z1の光強度がピーク値となる。そして、光強度が中央Z1における光強度の半分になる箇所Z2,Z3間の角度θaが、光源1の1/2指向角となる。本シミュレーションでは、導光板3の厚み方向における光源1の1/2指向角θaを変数としている。
なお、光源1がLEDユニット11のみで構成される(集光レンズ12を設けない)場合、図8(b)に示すように、LED素子11bの指向角の略中央Z11において、光強度がピークとなる。そして、光強度がZ11における光強度の半分になる箇所Z12,Z13間の角度θbが1/2指向角となる。一般的なランバート配光のLED素子11bを用いた場合、1/2指向角θb=120°程度になり、1/2指向角θbが広いために出射面33からの出射光が多くなる傾向になる。そこで、本実施形態では、集光レンズ12を設けることによって、LED素子11bが発する光の指向角を狭めて、1/2指向角θaを所望の値に設定している。したがって、LED素子11bに一般的なランバート配光の素子を使用した場合でも、光源1の1/2指向角θaを所望の値に設定できるので、安価、且つ高出力であるランバート配光の素子をLED素子11bに用いることができる。
また、プリズム34の扁平率H/Rとは、プリズム34の高さHと、プリズム34が出射面33と接する箇所の半径Rとの比である(図5(b)参照)。プリズム34が高さ方向につぶれた形状であるほど、この扁平率H/Rの値は小さくなる。
導光板3を用いた照明器具は、プリズム34を設けていない出射面32を照射エリア(照明対象)に向けて配置される。この場合、照明器具の配光分布は、プリズム34を設けていない出射面32から照射される前面光の光量を多くし、プリズム34を設けた出射面33から照射される背面光の光量を少なくするほうが望ましい。
そこで、光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rを変数としたシミュレーションによって、導光板3の配光分布、導光板3の前面光I1と背面光I2との比である出射比I1/I2を導出した。なお、導光板3の前面光I1は、出射面32から導光板3外へ出射する光であり、導光板3の背面光I2は、出射面33から導光板3外へ出射する光である。すなわち、前面光I1は、図9に示すように、導光板3の前面方向(出射面32が面する方向)に対して指向角180°の範囲内に出射される光である。また、背面光I2は、図9に示すように、導光板3の背面方向(出射面33が面する方向)に対して指向角180°の範囲内に出射される光である。そして、出射比I1/I2が大きいほど、出射面32からの出射光が支配的になり、照明器具としての配光分布が好ましいものになる。
さらに、図9に示すように、前面光I1を、出射面32に対して深い出射角度で正面方向に出射する正面光I11、出射面32に対して浅い出射角度で斜め方向に出射する側光I12に分ける。正面光I11は、前面光I1のうち、出射面32の前面方向に対して指向角120°の範囲内に出射される光である。側光I12は、前面光I1のうち、出射面32の前面方向に対して指向角120°の範囲外に出射される光である。そして、前面光I1に含まれる正面光I11の割合が大きいほど、照明器具としての配光分布が好ましいものになる。
図10(a)(b)は、1/2指向角θa=60°、扁平率H/R=0.36の条件下における導光板3の長さ方向(X11の両端方向)から見た配光分布のシミュレーション結果である。具体的に、図10(a)は配光分布のシミュレーション結果である配光曲線図であり、図10(b)は配光分布のシミュレーション結果の概念図である。なお、図10(a)において、各同心円の数値(0.2〜1.0)は光度の相対値であり、以降、他の配光曲線図についても同様である。この場合、前面光I1と背面光I2との比である出射比I1/I2が大きく、前面光I1(出射面32からの出射光)が支配的になる。また、前面光I1のうち、正面光I11は側光I12に比べて大きくなる。したがって、照明器具として好ましい配光分布となっている。
次に、図11(a)(b)は、1/2指向角θa=120°、扁平率H/R=0.24の条件下における導光板3の長さ方向(X11の両端方向)から見た配光分布のシミュレーション結果である。具体的に、図11(a)は配光分布のシミュレーション結果である配光曲線図であり、図11(b)は配光分布のシミュレーション結果の概念図である。この場合、前面光I1と背面光I2との比である出射比I1/I2が小さく、背面光I2(出射面33からの出射光)が支配的になる。また、前面光I1のうち、側光I12が正面光I11に比べて大きくなる。したがって、照明器具として不適当な配光分布となっている。
図12、図13は、シミュレーション結果を示すグラフである。
まず、図12は、横軸にプリズム34の扁平率H/Rをとり、縦軸に導光板3の前面光I1と背面光I2との比である出射比I1/I2をとる。なお、図12中において、◆:1/2指向角θa≧70°、■:1/2指向角θa=60°、▲:1/2指向角θa=40°、×:1/2指向角θa=20°の各データを示す。図12において、1/2指向角θaが70°以上である場合、プリズム34の扁平率H/Rの全範囲に亘って、出射比I1/I2が小さい(前面光I1が少ない)。一方、1/2指向角θaが60°以下である場合、プリズム34の扁平率H/Rが、0.25以上、0.50以下の範囲内にあれば、出射比I1/I2が向上して、出射面32からの出射光が支配的になる。
また、図13は、横軸に導光板3の厚み方向における1/2指向角θaをとり、縦軸に出射比I1/I2をとる。なお、図13中において、◆:プリズム34の扁平率H/Rが0.25未満、■:プリズム34の扁平率H/Rが0.25以上、0.35未満、▲:プリズム34の扁平率H/Rが0.35以上、0.45未満、×:プリズム34の扁平率H/Rが0.45以上、0.50以下 の各データを示す。図13において、プリズム34の扁平率H/Rが0.25未満である場合、1/2指向角θaの全範囲に亘って、出射比I1/I2は小さくなる(前面光I1が少ない)。また、プリズム34の扁平率H/Rが0.25以上、0.50未満である場合、1/2指向角θaが70°以上の範囲で、出射比I1/I2は比較的小さい値を維持している。しかしながら、プリズム34の扁平率H/Rが0.25以上、0.50以下である場合、1/2指向角θaが60°以下になると、出射比I1/I2は、1/2指向角θaが小さくなるにつれて増加し、出射面32からの出射光が支配的になる。
図12、図13のシミュレーション結果より、導光板3の厚み方向における1/2指向角θaが60°以下であり、プリズム34の扁平率H/Rが0.25以上、0.50以下を満たせば、出射面32からの出射光が支配的になることがわかる。したがって、導光板3の厚み方向における1/2指向角θaが60°以下、プリズム34の扁平率H/Rが0.25以上、0.50以下であれば、照明器具としての配光分布が好ましいものになる。
次に、図14は、横軸にプリズム34の扁平率H/Rをとり、縦軸に前面光I1における正面光I11の割合をとる。なお、図14中において、◆:導光板3の厚み方向における1/2指向角θa≧70°、■:1/2指向角θa=60°、▲:1/2指向角θa=40°、○:1/2指向角θa=20° の各データを示す。そして、導光板3の厚み方向における1/2指向角θaが60°以下、プリズム34の扁平率H/Rが0.26以上、0.44以下を満たせば、前面光I1における正面光I11の割合が50%以上となって、正面光I11の光量を増大させることができる。
また、現実的には、集光レンズ12の生産性、集光レンズ12の精度ばらつき、導光板3の配光分布(正面光I11の比率)を考慮すると、30°≦1/2指向角θa≦60°、0.30≦扁平率H/R≦0.40に設定することが好ましい。
そして、図15〜図18は、導光板3の厚み方向における光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rを変数としたシミュレーション結果に基づいて、導光板3の配光分布の良否を判断した結果を表している。
まず、図15は、導光板3の厚み方向における光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rが「θa≦60°、0.25≦H/R≦0.50」となる領域S1を示す。この領域S1における光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rを満たすことによって、出射面32からの出射光が支配的になって、照明器具としての配光分布が好ましいものになる。すなわち、1/2指向角θa、扁平率H/Rを領域S1内に設定することによって、導光板3の出射面33にプリズム34を設けた場合に、導光板3の出射面32から出射される光の比率(光量)を高めることができる。
次に、図16は、導光板3の厚み方向における光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rが「θa≦60°、0.26≦H/R≦0.44」となる領域S2を示す。この領域S2は、前面光I1における正面光I11の割合を50%以上に維持することができ、照明器具としての配光分布がより好ましいものになる。
次に、図17は、導光板3の厚み方向における光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rが「30°≦θa≦60°、0.30≦H/R≦0.40」となる領域S3を示す。この領域S3における光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rは、集光レンズ12の生産性、集光レンズ12の精度ばらつき、導光板3の配光分布(正面光I11の比率)を考慮して、領域S2内で現実的に実現可能と思われる範囲である。すなわち、1/2指向角θa、扁平率H/Rを領域S3内に設定することによって、照明器具としての配光分布をより好ましく制御することができる集光レンズ12およびプリズム34を容易に実現することができる。
次に、図18は、導光板3の厚み方向における光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rが「θa≦60°、H/R≦0.24」および「60°<θa」となる領域S4を示す。この領域S4における光源1の1/2指向角θa、プリズム34の扁平率H/Rは、出射面32からの出射光が支配的になるように配光制御することに対して効果が小さい領域である。
図19、図20は、図1〜図3に示す照明器具を用いた実際の配光分布を示す。具体的に、図19(a)は、図1〜図3に示す照明器具から導光板3を取り外した状態の断面図であり、図19(b)は、図19(a)の状態における配光曲線図である。また、図20(a)は、図1〜図3に示す照明器具の断面図であり、図20(b)は、図20(a)の状態における配光曲線図である。
なお、導光板3の長さX1=600mm、幅X2=200mmである。また、光源1は、120個のLED素子11bを基板11a上に5mm間隔で配設している。また、LED素子11bのサイズは、3mm×1.4mm×0.6mmとする。また、プリズム34の半径R=30μm、プリズム34の扁平率H/Rは、0.25以上、0.50以下の値、出射面33におけるプリズム34の被覆率45%とする。また、集光レンズ12が出射する光の1/2指向角θaは約35°とする。また、導光板3の端面31を除く他の3つの端面(端面35を含む)には、反射係数が高い白色テープ5を貼るものとする。また、光源1の入力電力は、約30Wとする。
図19は、導光板3を取り外して、光源1のみによる配光分布を示す。この場合の配光分布は、指向角が約35°となって、前面側および背面側の両方に略均等に光I3が照射される。
図20は、光源1に導光板3を取り付けた場合の配光分布を示す。集光レンズ12は、導光板3の厚み方向における1/2指向角θaが60°以下となるようにLED素子11bが発した光を配光制御する。また、プリズム34の扁平率H/Rは、0.25≦H/R≦0.50の範囲内に設定されている。この場合の配光分布は、前面光I1が背面光I2に比べて多く、前面光I1(出射面32からの出射光)が支配的になるように配光制御される。なお、導光板3の端面31に対向する端面35には反射係数が高い白色テープ5を貼っており、光源1の後方領域U1は、白色テープ5による反射光によって光が照射されている。
上述のように、照明器具は、板状の透光性部材で形成されて、光を出射する出射面として互いに対向する出射面33(第1面)および出射面32(第2面)を有する導光板3を備える。さらに、照明器具は、導光板3の出射面33に配設された透光性樹脂からなる凸曲面の突部をプリズム34として備える。さらに、照明器具は、導光板3の厚み方向に沿った端面31に対して光を入射する光源1を備える。そして、光源1から出力される光の強度がピーク値の半分になる箇所間の角度である1/2指向角θaが、導光板3の厚み方向において60°以下である。さらに、プリズム34の高さHとプリズム34が導光板3の出射面33と接する箇所の半径Rとの比H/Rが、0.25以上、0.50以下を満たす。
また、図21に示すように、アクリル製の集光レンズ12を、アクリル製の導光板3の端面31に一体形成してもよい。この場合、集光レンズ12と導光板3の端面31との間に空気層が介在していないので、集光レンズ12と導光板3の端面31との界面におけるエネルギーロス(光の損失)が抑制される。なお、集光レンズ12は、導光板3の端面31に、透光性の接着剤等によって取り付けられる構成であってもよい。すなわち、集光レンズ12は、導光板3の端面31に設けられることが好ましい。
(実施形態2)
本実施形態の照明器具の構成を、図22、図23に示す。
本照明器具は、矩形函状の筐体6内に2つの光源1(光源1A,1Bと称す)を収納しており(図23参照)、光源1A,1Bは、筐体6の互いに対向する面から、互いに逆方向に光を出力する。そして、光源1Aと導光板3Aとが対をなし、光源1Bと導光板3Bとが対をなして、筐体6の互いに対向する面には導光板3(導光板3A,3Bと称す)がそれぞれ設けられている。この照明器具は、筐体6に取り付けたワイヤ7によって天井から吊り下げられるペンダント型の照明器具である。なお、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
そして、シミュレーションによって求めた照明器具の配光分布(導光板3の長さ方向(X21の両端方向)から見た配光曲線図)を図24に示す。なお、このシミュレーションに用いた照明器具のモデルとして、導光板3A,3Bの長さX21=600mm、照明器具の幅X22=400mm、導光板3A,3Bの厚さX23=4mmとした。また、光源1A,1Bは、120個のLED素子11bを基板11a上に5mm間隔で配設している。また、LED素子11bのサイズは、3mm×1.4mm×0.6mmとする。また、プリズム34の半径R=30μm、プリズム34の扁平率H/Rは、0.25以上、0.50以下の値、導光板3A,3Bの各出射面33におけるプリズム34の被覆率45%とする。また、集光レンズ12が出射する光の1/2指向角θaは約35°とする。また、導光板3A,3Bにおいて、光源1A,1Bが取り付けられる端面31を除く他の3つの端面(端面35を含む)には、反射係数が高い白色テープを貼るものとする。また、光源1A,1Bの各入力電力の和は、約60Wとする。
この照明器具の配光分布は、図24に示すように、導光板3Aの前面光I1A、導光板3Bの前面光I1Bが広い範囲に亘って下方に照射されるブロードな配光となっている。また、導光板3Aの背面光I2A、導光板3Bの背面光I2Bが広い範囲に亘って上方に照射されており、天井を広く照らす配光になっている。
通常、導光板を用いた照明器具の場合、導光板に光拡散シート、反射板などを用いて配光制御等を行う。しかしながら、本照明器具は、集光レンズ12の特性およびプリズム34の形状を実施形態1と同様に設定することによって、光拡散シートおよび反射板が不要となるので、導光板3A,3Bの高い透光性によって、装飾性に優れたもの(特に未点灯時)となる。
(実施形態3)
本実施形態の照明器具は、実施形態2と同様に図22,図23に示す構成を備える。但し、本照明器具は、照明器具の幅X22=200mmとする。他の構成は実施形態2と同様であり、同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
そして、本照明器具は、扁平率H/Rが互いに異なる複数のプリズム34を混合して用いることによって、照明器具の種類に適した配光設計を行うものであり、以下にシミュレーション結果を示す。
プリズム34は、その扁平率H/R=「0.40」,「0.38」,「0.36」,「0.34」,「0.32」,「0.30」毎に、プリズム34a,34b,34c,34d,34e,34fの符号を付す。プリズム34a,34b,34c,34d,34e,34fをそれぞれ用いた場合の照明器具の各配光分布(導光板3の長さ方向(X21の両端方向)から見た配光曲線図)を、図25(a)〜(f)に示す。扁平率H/Rが高いほど、導光板3Aの前面光I1Aによる配光範囲と、導光板3Bの前面光I1Bによる配光範囲とが互いに近付く。また、扁平率H/Rが低いほど、導光板3Aの前面光I1Aによる配光範囲と、導光板3Bの前面光I1Bによる配光範囲とが互いに離れる。
そして、扁平率H/R=0.40のプリズム34aと、扁平率H/R=0.38のプリズム34bとを混合して用いることによって、図26に示す狭角配光を実現できる。図26は、プリズム34aとプリズム34bとを混合して用いた場合の照明器具の配光分布(導光板3の長さ方向(X21の両端方向)から見た配光曲線図)を示す。なお、扁平率H/R=0.40のプリズム34aの混合比率80%、扁平率H/R=0.38のプリズム34bの混合比率20%としている。図26に示す配光分布は、導光板3Aの前面光I1Aおよび導光板3Bの前面光I1Bによる各配光範囲が、照明器具下方の比較的狭い範囲に収まり、狭角配光を実現している。さらに、導光板3Aの背面光I2Aおよび導光板3Bの背面光I2Bによる各配光範囲も、照明器具上方の比較的狭い範囲に収まり、狭角配光を実現している。
また、扁平率H/R=0.40のプリズム34aと、扁平率H/R=0.38のプリズム34bと、扁平率H/R=0.30のプリズム34fとを混合して用いることによって、図27に示す広角配光を実現できる。図27は、プリズム34aとプリズム34bとプリズム34fとを混合して用いた場合の照明器具の配光分布(導光板3の長さ方向(X21の両端方向)から見た配光曲線図)を示す。なお、扁平率H/R=0.40のプリズム34aの混合比率70%、扁平率H/R=0.38のプリズム34bの混合比率10%、扁平率H/R=0.30のプリズム34fの混合比率20%としている。図27に示す配光分布は、導光板3Aの前面光I1Aおよび導光板3Bの前面光I1Bによる各配光範囲が、照明器具下方の比較的広い範囲に拡がり、広角配光を実現している。さらに、導光板3Aの背面光I2Aおよび導光板3Bの背面光I2Bによる各配光範囲も、照明器具上方の比較的広い範囲に拡がり、広角配光を実現している。
(実施形態4)
本実施形態の照明器具の構成を、図29、図30に示す。基本構成は、実施形態2と同様であるが、導光板3A,3Bを傾斜させている点が実施形態2とは異なり、同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
本実施形態の照明器具は、天井101から吊り下げるペンダント型の照明器具である。そして、導光板3A,3Bの出射面32から下方に出射される光は床面100を照射し、出射面33から上方に出射される光は天井101を照射する(図30参照)。すなわち、出射面32は、床面100を照射面とし、出射面33は、天井101を照射面とする。
図31(a)に示すように導光板3A,3Bの各板面が同一平面を成すように導光板3A,3Bを傾斜させずに配置した場合(後述の傾斜角θ1=0°)、照明器具の配光分布(導光板3の長さ方向(X21の両端方向)から見た配光曲線図)は、図31(b)のようになる。図31(a)(b)において、導光板3A,3Bの前面光I1A,I1B(正面光I11A,I11B、側光I12A,I12B)は、光源1の発光方向に傾斜している。したがって、ペンダント型の照明器具として用いた場合、床面100に垂直に照射される鉛直方向の光(直下光)の成分は比較的少なくなる。ペンダント型の照明器具における下方の配光分布は、この直下光の成分を多くすることが望ましい。
また、図31(a)(b)において、導光板3Aの背面光I2A、導光板3Bの背面光I2Bは、床面100に平行な基準面110に対する出射角度θcが約15°〜20°となる。ペンダント型の照明器具における上方の配光分布は、背面光I2A,I2Bの出射角度θcを0°に近づけて、できるだけ小さい出射角度θcで上方に配光することが望ましい。
そこで、本実施形態では、前面光I1A,I1Bに含まれる直下光の成分を増やし、且つ背面光I2A,I2Bの出射角度θcを0°に近づけるため、導光板3A,3Bの端面35が互いに近付くように傾斜させている(図30、図32(a)参照)。具体的に、導光板3A,3Bは、端面31(第1の端面)に光源1が取り付けられており、この端面31に対向して端面35が形成されている(図1参照)。そして、導光板3A,3Bは、端面31より端面35のほうが床面100に対して近付くように傾斜して設置される。すなわち、導光板3A,3Bの各端面35が互いに近付くように下方に傾斜している。なお、基準面110に対する導光板3A,3Bの傾斜角をθ1と称す。
なお、図32(a)に示すように導光板3A,3Bの各端面35が互いに近付くように導光板3A,3Bを傾斜させて配置した場合(一例として傾斜角θ1=10°の場合)、その配光分布は図32(b)のように示される。図32(b)に示す配光分布は、導光板3の長さ方向(X21の両端方向)から見た配光曲線図である。
以下、基準面110に対する導光板3A,3Bの傾斜角θ1、およびプリズム34の扁平率H/Rの設定について説明する。
まず、導光板3A,3Bの傾斜角θ1は、
(条件1)背面光I2A,I2Bの出射角度θcを0°に近づける。
(条件2)前面光I1による直下光の成分を増大させる。
という2つの条件から、設定される。
(条件1)
導光板3A,3Bの傾斜角θ1=0°である場合、背面光I2A,I2Bの出射角度θcは約15°〜20°となる(図25(a)〜(f)参照)。そこで、背面光I2A,I2Bの出射角度θcを0°に近づけるためには、導光板3A,3Bの傾斜角θ1を5°〜25°に設定すればよい。すなわち、(条件1)を満たす傾斜角θ1は、
5°≦θ1≦25° ……… (式1)
となる。
(条件2)
図33に示すように、導光板3A,3Bの傾斜角θ1を0°から徐々に増加させて、光源1から出力される光の強度がピーク値の半分(0.5倍)になる最初の箇所Zaが直下を向く傾斜角θ1を、下限傾斜角θ11とする。さらに傾斜角θ1を徐々に増加させて、光源1から出力される光の強度がピーク値の0.9倍になる2番目の箇所Zbが直下を向く傾斜角θ1を、上限傾斜角θ12とする。そして、図25(a)〜(f)の各配光分布毎に導出した下限傾斜角θ11、上限傾斜角θ12の値を図34に示す。図25(a)〜(f)の各配光分布は、プリズム34の扁平率H/R=「0.40」,「0.38」,「0.36」,「0.34」,「0.32」,「0.30」のそれぞれに対応している。
そして、図35は、扁平率H/Rを変数として下限傾斜角θ11、上限傾斜角θ12をグラフに表している。
下限傾斜角θ11は、θ11=−250・(H/R)+100と表され、上限傾斜角θ12は、θ12=−335.7・(H/R)+149.2と表される。そして、(条件2)を満たす傾斜角θ1は、
−250・(H/R)+100≦θ1≦−335.7・(H/R)+149.2 …………… (式2)
となる。
そして、上記(式1)(式2)を満足する傾斜角θ1が、上記(条件1)(条件2)の両方を満たすことになる。すなわち、傾斜角θ1は、
−250・(H/R)+100≦θ1≦−335.7・(H/R)+149.2 但し、0.30≦(H/R)≦0.43 ……………… (式3)
を満たせばよい。図35において(式3)を満たす領域120を示す。
而して、導光板3A,3Bの傾斜角θ1、およびプリズム34の扁平率H/Rが(式3)を満たす照明器具の配光分布は、図32(a)(b)に示すように、背面光I2A,I2Bの出射角度θcを0°に近づけることができる。さらに、導光板3A,3Bの前面光I1A,I1B(正面光I11A,I11B、側光I12A,I12B)は、光源1の発光方向への傾斜度合が減少して、直下光の成分を増大させることができる。特に、正面光I11A,I11Bは、鉛直方向(略鉛直方向を含む)に出射している。
すなわち、照明器具は、導光板3A,3Bの傾斜角θ1、プリズム34の扁平率H/Rが、上記(式3)を満たすことによって、背面光I2A,I2Bの出射角度θcを0°に近づけて、上方をできるだけ浅い角度で配光することができる。さらに、照明器具は、導光板3A,3Bの傾斜角θ1、プリズム34の扁平率H/Rが、上記(式3)を満たすことによって、直下光の成分を増大させることができる。
次に、図36に示すように、導光板3A,3Bの各出射面33から出射した背面光I2A,I2Bを反射する反射部材8を、出射面33に対向して設けてもよい。この場合、反射部材8の反射光は、出射面32から前面光I1A,I1Bとして出射する。したがって、図36の照明器具では、出射面32から出射する前面光I1A,I1Bの配光分布のみに基づいて、傾斜角θ1を設定する。
まず、導光板3A,3Bの傾斜角θ1は、
(条件3)前面光I1による直下光の成分を増大させる。
という条件から、設定される。
(条件3)
図25(a)〜(f)の各配光分布毎に導出した下限傾斜角θ11、上限傾斜角θ12は、図34に示される。
次に、図37は、扁平率H/Rを変数として下限傾斜角θ11、上限傾斜角θ12をグラフに表している。
下限傾斜角θ11は、θ11=−250・(H/R)+100と表され、上限傾斜角θ12は、θ12=−335.7・(H/R)+149.2と表される。そして、(条件3)を満たす傾斜角θ1は、
−250・(H/R)+100≦θ1≦−335.7・(H/R)+149.2 …………… (式4)
となる。
そして、本照明器具は、出射面32からの出射光を支配的にするためにプリズム34の扁平率H/Rを0.25以上、0.50以下としており、この扁平率H/Rの範囲内で、傾斜角θ1は、上記(式4)を満たせばよい。
すなわち、傾斜角θ1は、
−250・(H/R)+100≦θ1≦−335.7・(H/R)+149.2 但し、0.25≦(H/R)≦0.50 ……………… (式5)
を満たせばよい。図37において(式5)を満たす領域130を示す。
照明器具は、導光板3A,3Bの傾斜角θ1、プリズム34の扁平率H/Rが、上記(式5)を満たすことによって、直下光の成分を増大させることができる。
また、図38に示すように、1つの導光板3のみを用いた照明器具においても、導光板3の傾斜角θ1、プリズム34の扁平率H/Rを上記同様に設定することによって、上記同様の効果を得ることができる。
また、上述の各実施形態において、TIRレンズで構成される集光レンズ12の代わりに、図28(a)に示すようにLED素子11bの表面に配置した樹脂からなる集光レンズ13を用いてもよい。あるいは、図28(b)に示すように、基板11a上でLED素子11bの周囲を封止した封止樹脂からなる集光レンズ14を用いてもよい。集光レンズ13,14は、例えば半球のドーム状に形成される。
また、上述の各実施形態では、導光板3の出射面33のみにプリズム34を設けているが、出射面32にもプリズム34を設けて、導光板3の両面にプリズム34を配設する構成でもよい。そして、出射面32に設けたプリズムおよび出射面32に設けたプリズムの各形状、被覆率、配設パターン等を個別に設定することによって、出射面32側と出射面33側とで個別に所望の配光分布を得ることができる。