図1は本発明の第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成を示す図である。インクジェットプリンタ1は、連続紙等である連続シート状の基材9に向けてインクの微小液滴を吐出することにより、基材9上に画像を形成する装置である。図1では、互いに垂直な2つの水平方向をX方向およびY方向として示し、X方向およびY方向に垂直な上下方向をZ方向として示している。図1中のX方向およびY方向は必ずしも水平方向である必要はなく、同様に、Z方向も必ずしも上下方向である必要はない。すなわち、図1中の上側および下側は、必ずしも、重力方向の上側および下側に一致する必要はない。
インクジェットプリンタ1は、搬送機構2と、ヘッドユニット4と、制御部8とを備える。搬送機構2は、シート状の基材9を移動する。ヘッドユニット4は、搬送機構2による移動途上の基材9に向けて紫外線硬化性インクの微小液滴を吐出する。制御部8は、搬送機構2およびヘッドユニット4を制御する。
図2は、制御部8の機能を示すブロック図である。図2では、インクジェットプリンタ1の他の構成も併せて描いている。制御部8は、記憶部81と、吐出管理部82と、記録制御部83とを備える。記憶部81は、様々な情報を記憶する。吐出管理部82は、基材9に対する画像の記録を行うよりも前に、ヘッドユニット4の後述する複数の吐出口426(図7参照)の使用または不使用を決定する。記録制御部83は、基材9に対して画像を記録する際に、搬送機構2とヘッドユニット4とを制御する。
図1に示す搬送機構2は、それぞれが図1中のX方向に長い複数のローラ21を有する。最も(−Y)側に配置されたローラ21の近傍には、ロール状の基材9(供給ロール)を保持する供給部31が設けられる。最も(+Y)側に配置されたローラ21の近傍には、ロール状の基材9(巻取ロール)を保持する巻取部32が設けられる。インクジェットプリンタ1では、搬送機構2の複数のローラ21の一部が、X方向に平行な軸を中心として一定の回転速度にて回転することにより、供給部31から巻取部32に至る所定の移動経路に沿って基材9が一定速度にて移動する。
基材9の移動経路においてヘッドユニット4と上下方向に対向する位置には、基材案内部34が設けられる。基材案内部34は、曲面341(以下、「案内面341」という。)を上面として有する。案内面341は、X方向に平行な仮想軸を中心とする円筒面の一部である。当該仮想軸は、ヘッドユニット4の真下((−Z)側)に配置される。ヘッドユニット4の下方において、滑らかな案内面341に沿って基材9が移動する。このように、ヘッドユニット4に対向する位置において、基材9の移動経路がヘッドユニット4に向かって凸となるように湾曲し、基材9が案内面341に沿って伸ばされる。ヘッドユニット4に対向する位置では、基材9は、案内面341に沿っておよそ(+Y)方向に向かう所定の移動方向に、ヘッドユニット4に対して相対的に移動する。
基材9の移動経路において供給部31と基材案内部34との間には、基材9の蛇行を補正する蛇行補正部33が設けられ、基材案内部34と巻取部32との間には、インク硬化用の光(本実施の形態では、紫外線)を出射する硬化部35が設けられる。なお、インクジェットプリンタ1では、基材9に所定の前処理を行う前処理部等が設けられてもよい。
図3はヘッドユニット4を示す平面図であり、図4はヘッドユニット4を示す正面図である。ヘッドユニット4は、それぞれがX方向に長い複数のヘッドアッセンブリ42と、複数のヘッドアッセンブリ42を支持するベース41とを備える。複数のヘッドアッセンブリ42は、およそY方向に沿って(正確には、上述の移動方向に沿って)配列される。各ヘッドアッセンブリ42から、基材9に向けてインクの微小液滴が吐出される。
本実施の形態では、4個のヘッドアッセンブリ42が、ベース41に取り付けられる。ヘッドユニット4では、(−Y)側から順に、それぞれK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のインクを吐出するヘッドアッセンブリ42が配列される。ベース41には、白色や所定の特色のインクを吐出するヘッドアッセンブリ42が取り付けられてもよい。また、ヘッドアッセンブリ42から、クリアインク等の他の種類のインクが吐出されてもよい。
ベース41には、ヘッドアッセンブリ42に加えて、基材9に向けて光を出射する出射部アッセンブリが取り付けられてもよい。出射部アッセンブリから基材9上に光(紫外線)が照射されることにより、基材9上に吐出されたインクが仮硬化(プリキュア)する。ベース41には、ヘッドアッセンブリ42と出射部アッセンブリとを合わせて、最大8個のアッセンブリが取付可能である。ベース41に取り付けられるアッセンブリの数、種類および取付位置は、適宜変更されてよい。また、ベース41に取付可能なアッセンブリの最大数は、8個には限定されない。
図5はヘッドアッセンブリ42を示す底面図であり、図6はヘッドアッセンブリ42を示す正面図である。以下、一の色のインクを吐出するヘッドアッセンブリ42に着目するが、他のヘッドアッセンブリ42も同様の構成を有する。ヘッドアッセンブリ42は、その長手方向(X方向)に平行な軸を中心として僅かな回転角だけ傾斜した姿勢にてベース41に固定されるため、厳密には図5の横方向は図3の横方向とは一致せず、図6の縦方向および横方向も図4の縦方向および横方向とは一致しない。図5および図6の横方向は、ヘッドアッセンブリ42の下方を移動する基材9の移動方向におよそ対応する。
ヘッドアッセンブリ42は、X方向に長い略直方体であるヘッド固定ブロック422と、それぞれがX方向に長い複数の吐出ヘッド421とを有する。本実施の形態では、4個の吐出ヘッド421が、ヘッド固定ブロック422に取り付けられる。ヘッド固定ブロック422は、複数の吐出ヘッド421を保持するヘッド保持部である。複数の吐出ヘッド421は、ヘッド固定ブロック422に取り付けられることにより、互いに対する相対位置が固定される。また、複数の吐出ヘッド421のヘッド固定ブロック422に対する相対的な位置も固定される。
ヘッド固定ブロック422は、例えば、ステンレス鋼等の金属にて形成される。ヘッド固定ブロック422には、複数の貫通孔424が長手方向に沿って千鳥状に配列形成される。複数の吐出ヘッド421は、その下端部(すなわち、(−Z)側の端部)を複数の貫通孔424にそれぞれ挿入した状態で、ヘッド固定ブロック422に固定される。これにより、複数の吐出ヘッド421が、ヘッド固定ブロック422上にて千鳥状に配列される。各吐出ヘッド421の長手方向(X方向)の両端部は、ヘッド固定ブロック422の上面にねじ等により固定される。
各吐出ヘッド421の下端面であるヘッド下面には、その長手方向であるX方向に沿って複数の吐出口が配列形成される。ヘッドアッセンブリ42では、その長手方向であるX方向に関して、ヘッド固定ブロック422の一端近傍から他端近傍に至る範囲の全体に亘って多数の吐出口がおよそ一定のピッチにて配列される。以下の説明では、X方向を「配列方向」という。配列方向は、上述の移動方向におよそ垂直である。なお、配列方向は、移動方向と交差するのであれば、移動方向に垂直である必要はない。
ヘッドユニット4では、各ヘッドアッセンブリ42における複数の吐出ヘッド421のヘッド下面が、案内面341上の基材9の主面に略平行となる。換言すれば、各吐出ヘッド421が、基材9に対して直立する。そして、各吐出ヘッド421の吐出口から基材9の主面に向かって、およそ垂直にインクの微小液滴が吐出される。基材9に対する画像の記録が行われる際には、図示省略のヘッド昇降機構により、ヘッドユニット4が案内面341に向かって下降し、各吐出ヘッド421のヘッド下面が基材9の主面に近接する。
図7は、一の吐出ヘッド421を示す底面図である。吐出ヘッド421は、それぞれが略等脚台形状の複数のヘッド要素425を備える。本実施の形態では、4つのヘッド要素425が、吐出ヘッド421の長手方向であるX方向に配列される。X方向にて隣接する2つのヘッド要素425では、所定の間隙を挟んで隣接する2つの斜辺(脚)425cが互いに平行である。また、隣接する2つのヘッド要素425は、X方向に垂直な方向(すなわち、吐出ヘッド421の幅方向であり、基材9の移動方向に対応する方向)に少しずれた状態で配置される。
各ヘッド要素425では、複数の吐出口426が、ヘッド要素425のおよそ全面に亘って2次元的に配置される。図7では、図示の都合上、吐出口426の一部のみを描いている。また、図7では、吐出口426を実際よりも大きく描いている。各ヘッド要素425では、複数の吐出口426は、配列方向に僅かずつずれて配置される。
各ヘッド要素425において、略等脚台形の短辺425aと、長辺425bのうち短辺425aと対向する部位とに挟まれる長方形状の中央領域425d(二点鎖線にて囲む。)では、配列方向に関して隣接する各2つの吐出口426の間の距離は等しい。換言すれば、各ヘッド要素425において、複数の吐出口426は、配列方向に関して所定の配列ピッチにて配列される。また、ヘッド要素425の中央領域425dの両側に位置する直角三角形状の2つの端部領域425e(すなわち、斜辺425cと長辺425bの一部とに挟まれる領域であり、二点鎖線にて囲む。)では、複数の吐出口426は、配列方向に関して中央領域425dよりも低い密度にて配列される。なお、図7では、中央領域425dおよび端部領域425eを、1つのヘッド要素425についてのみ二点鎖線にて示す。
吐出ヘッド421では、X方向の両端部を除き、隣接する各2つのヘッド要素425の端部領域425eは、配列方向に垂直な上述の移動方向に重なっている。2つの端部領域425eが移動方向に重なる領域では、2つの端部領域425eの複数の吐出口426が、配列方向に関して互いの吐出口426が存在しない位置を補間するように配置される。これにより、2つの端部領域425eが重なる領域においても、複数の吐出口426が、配列方向に関して所定の配列ピッチにて配列される。
最も(+X)側に配置されたヘッド要素425の(+X)側の端部領域425e、および、最も(−X)側に配置されたヘッド要素425の(−X)側の端部領域425eでは、複数の吐出口426は、配列方向に関して粗に配列される。具体的には、当該2つの端部領域425eでは、他の領域に比べて、配列方向の所定の長さ当たりの吐出口426の数が少ない。以下、吐出ヘッド421の吐出口426が配列されている部位のうち、当該2つの端部領域425eをそれぞれ「粗配列部」と呼び、粗配列部の間の部位、すなわち、複数の吐出口426が配列方向に関して上述の配列ピッチにて配列されている部位を「密配列部」という。
図8は、図7に示す吐出ヘッド421の複数の吐出口426の配列方向における配置を模式的に示す底面図である。図8では、実際には2次元的に配列される複数の吐出口426を、各吐出口426の配列方向の位置に基づいて、配列方向に直線状に配列して示す。2つの粗配列部427は、密配列部428の配列方向の一方側および他方側に隣接して配置される。各粗配列部427では、複数の吐出口426が、配列方向に密配列部428よりも粗に配列される。図8では、粗配列部427および密配列部428をそれぞれ二点鎖線にて囲む。
図5に示すように、図中の右側の2つの吐出ヘッド421と、図中の左側の2つの吐出ヘッド421とは、図中の横方向(すなわち、基材9の移動方向)において、互いに異なる位置に配置される。また、右側の2つの吐出ヘッド421と、図中の左側の2つの吐出ヘッド421とは、配列方向であるX方向に沿って交互に配列される。各吐出ヘッド421の配列方向の一方側の端部は、隣接する吐出ヘッド421の配列方向の他方側の端部と、基材9の移動方向に重なる。換言すれば、図中の右側の2つの吐出ヘッド421は、図中の左側の2つの吐出ヘッド421から配列方向においてずれた位置に配置される。
図9は、図5中において配列方向に隣接する2つの吐出ヘッド421の端部近傍を示す底面図である。他の隣接する2つの吐出ヘッド421の端部近傍の配置についても図9と同様である。図9では、図8と同様に、各ヘッドの複数の吐出口426を配列方向に直線状に配列して模式的に示す(図10等の同様の図面においても同様)。以下の説明では、図9中の上側に位置するヘッドを「第1吐出ヘッド421a」といい、下側に位置するヘッドを「第2吐出ヘッド421b」という。第1吐出ヘッド421aと第2吐出ヘッド421bとをまとめて、吐出ヘッド421ともいう。
また、第1吐出ヘッド421aの粗配列部および密配列部を、「第1粗配列部427a」および「第1密配列部428a」といい、第2吐出ヘッド421bの粗配列部および密配列部を、「第2粗配列部427b」および「第2密配列部428b」という。図9では、第1粗配列部427a、第1密配列部428a、第2粗配列部427bおよび第2密配列部428bを二点鎖線にて囲む(図10等の同様の図面においても同様)。
図9に示すように、第1粗配列部427aの全体は、第2密配列部428bの一部と移動方向に重なる。第1粗配列部427aの複数の吐出口426はそれぞれ、第2密配列部428bの複数の吐出口426と移動方向に重なる(すなわち、配列方向に関して同じ位置に位置する。)。
本実施の形態では、第1粗配列部427aは、21個の吐出口426を含む。第1粗配列部427aでは、21個の吐出口426が、(−X)側から(+X)側に向かって配列方向に並ぶ6つの吐出口群431〜436に分けられる。吐出口群431〜436に含まれる吐出口426の数はそれぞれ、6個、5個、4個、3個、2個、1個である。複数の吐出口426が含まれる吐出口群431〜435ではそれぞれ、複数の吐出口426は、上述の配列ピッチにて配列方向に配列される。
第1密配列部428aと最も(−X)側の吐出口群431との間の配列方向の距離D1は、配列ピッチの2倍である。(−X)側から(+X)側に向かって、隣接する2つの吐出口群の間の配列方向の距離D2,D3,D4,D5,D6はそれぞれ、配列ピッチの3倍、4倍、5倍、6倍、7倍である。距離D1は、第1密配列部428aの最も(+X)側に位置する吐出口426の中心と、吐出口群431の最も(−X)側の吐出口426の中心との間の配列方向の距離である。距離D2は、吐出口群431の最も(+X)側に位置する吐出口426の中心と、(−X)側から2番目の吐出口群432の最も(−X)側の吐出口426の中心との間の配列方向の距離である。距離D3〜D6においても同様である。
第1粗配列部427aでは、配列方向における単位長さ当たりの吐出口数が、第1密配列部428aから配列方向に離れるに従って減少する。単位長さは、配列ピッチに、第1粗配列部427aにおいて最も多く吐出口426を含む吐出口群431に含まれる吐出口426の数(6)に1を加えた数(7)を乗算した長さ、すなわち、配列ピッチの7倍に等しい。当該単位長さは、上述の長さ(配列ピッチの7倍)よりも長くてもよい。
第1密配列部428aの第1粗配列部427a近傍の部位は、第2密配列部428bの第2粗配列部427b近傍の部位と移動方向に重なる。以下、第1密配列部428aの一部と第2密配列部428bの一部とが移動方向に重なる配列方向の範囲を「密重複範囲429」という。図9では、密重複範囲429を二点鎖線にて囲む(図10等の同様の図面においても同様)。密重複範囲429では、第1密配列部428aの複数の吐出口426がそれぞれ、第2密配列部428bの複数の吐出口426と移動方向に重なる(すなわち、配列方向に関して同じ位置に位置する。)。本実施の形態では、密重複範囲429には、第1密配列部428の4個の吐出口426と、第2密配列部428bの4個の吐出口426が含まれる。なお、密重複範囲429に含まれる第1密配列部428aおよび第2密配列部428bの吐出口426の数は、それぞれ1個であってもよく、2個以上であってもよい。
第2粗配列部427bの全体は、第1密配列部428aの一部と移動方向に重なる。第2粗配列部427bの複数の吐出口426はそれぞれ、第1密配列部428aの複数の吐出口426と移動方向に重なる。第2粗配列部427bにおける複数の吐出口426の配列は、上述の第1粗配列部427aにおける複数の吐出口426の配列と同様である。第2粗配列部427bでは、配列方向における上記単位長さ当たりの吐出口数が、第2密配列部428bから配列方向に離れるに従って減少する。
以下の説明では、2つの吐出ヘッド421の端部同士が移動方向に重なる範囲を「接続範囲420」といい、移動方向に重なる各つの吐出口426を「重複吐出口対」という。図9では、接続範囲420を二点鎖線にて囲む(図10等の同様の図面においても同様)。ヘッドアッセンブリ42では、各接続範囲420において、複数の重複吐出口対が配列方向に配列される。本実施の形態では、第1粗配列部427aの21個の吐出口426をそれぞれ含む21個の重複吐出口対、密重複範囲429の4個の重複吐出口対、および、第2粗配列部427bの21個の吐出口426をそれぞれ含む21個の重複吐出口対が、接続範囲420に存在する。
なお、移動方向に重なる2つの吐出口426は、必ずしも、移動方向に垂直な方向(本実施の形態では、配列方向)における位置が厳密に一致している必要はなく、配列方向の位置が多少異なっていてもよい。この場合、第1吐出ヘッド421aの一の吐出口426と、当該吐出口426と配列方向の位置が最も近い第2吐出ヘッド421bの一の吐出口426とが、移動方向に実質的に重なるものとする。
本実施の形態では、基材9に対する画像の記録が行われる際には、重複吐出口対の2つの吐出口426のうち、一方の吐出口426のみが画像の記録に使用され、他方の吐出口426は使用されない。以下、基材9に対する画像の記録に使用される吐出口426を「使用吐出口」といい、基材9に対する画像の記録に使用されない吐出口426を「不使用吐出口」という。接続範囲420において、一方の吐出ヘッド421の吐出口のうち、他方の吐出ヘッド421の吐出口と移動方向に重ならない吐出口は、使用吐出口である。また、第1密配列部428aおよび第2密配列部428bの吐出口のうち、接続範囲420に含まれない吐出口426は全て、基材9に対する画像の記録に使用される。
図10は、図9に示す接続範囲420およびその近傍において、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bにおける使用吐出口および不使用吐出口の配置を示す図である。図10中では、使用吐出口に符号426aを付し、不使用吐出口に符号426bおよび×印を付す。図10に示すように、接続範囲420において、第1粗配列部427aの複数の吐出口の全ては、使用吐出口426aである。また、第2密配列部428bの複数の吐出口426のうち、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重なる吐出口は不使用吐出口426bであり、第1粗配列部427aの吐出口と移動方向に重ならない吐出口は、使用吐出口426aである。
密重複範囲429の各重複吐出口対では、上述のように、一方の吐出口が使用吐出口426aであり、他方の吐出口が不使用吐出口426bである。本実施の形態では、第1密配列部428aの複数の吐出口の全てが使用吐出口426aであり、第2密配列部428bの複数の吐出口の全てが不使用吐出口426bである。なお、密重複範囲429では、各重複吐出口対において、第1密配列部428aの吐出口、および、第2密配列部428bの吐出口のいずれが使用吐出口426aであってもよい。第2粗配列部427bでは、複数の吐出口の全てが、不使用吐出口426bである。
なお、第1粗配列部427aの複数の吐出口の全てが使用吐出口426aである必要はなく、第1粗配列部427aの複数の吐出口が使用吐出口426aを含んでいればよい。例えば、第1粗配列部427aの複数の吐出口のうち、一部の吐出口が使用吐出口426aであり、他の吐出口が不使用吐出口426bであってもよい。この場合、第2密配列部428bの複数の吐出口のうち、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重なる吐出口が不使用吐出口426bであり、第1粗配列部427aの不使用吐出口426bと移動方向に重なる吐出口、および、第1粗配列部427aの吐出口と移動方向に重ならない吐出口が使用吐出口426aである。
図1に示すインクジェットプリンタ1における画像形成処理では、供給部31から基材9の連続する部位が順次引き出され、各部位(以下、「対象部位」という。)は、蛇行補正部33を経由して基材案内部34へと到達する。基材案内部34において、対象部位は、案内面341に接触しつつ移動方向に沿って移動し、基材案内部34に対向するヘッドユニット4により、対象部位に対して画像が記録される。具体的には、K、C、M、Yのインクを吐出する4個のヘッドアッセンブリ42により、対象部位にK、C、M、Yのカラー画像が記録される。その後、対象部位は硬化部35へと移動し、インクの硬化が行われる。そして、巻取部32にて対象部位が巻き取られ、対象部位に対する画像形成が完了する。
各ヘッドアッセンブリ42では、移動方向に垂直な方向における基材9の画像記録領域の幅の全体に亘って吐出口426(図7参照)が配列される。インクジェットプリンタ1では、記録制御部83(図2参照)により搬送機構2とヘッドユニット4とが制御されることにより、基材9がヘッドユニット4の下方を1回通過するのみで、基材9に対する画像記録が完了する。換言すれば、基材9が、ヘッドユニット4に対して1回だけ移動方向に相対的に移動することにより、基材9に画像が記録される。このように、インクジェットプリンタ1では、いわゆるシングルパス印刷が実現されるため、短時間にて画像形成を行うことができる。
ところで、図5に示すヘッドアッセンブリ42を組み立てる際には、上述のように、ヘッド固定ブロック422に複数の吐出ヘッド421が取り付けられる。複数の吐出ヘッド421は、配列方向において隣接する各2つの吐出ヘッド421の吐出口426が、接続範囲420において所定の配列ピッチにて配列されるように、各吐出ヘッド421が位置精度良く取り付けられる必要がある。しかしながら、高解像度が求められるインクジェットプリンタでは、配列ピッチが非常に小さいため、吐出ヘッド421の位置合わせの高精度化に限界がある。このため、吐出ヘッド421の取付位置が、設計取付位置から配列方向にずれてしまうことがある。
ここで、比較例のインクジェットプリンタとして、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bと同様の構造を有する第1吐出ヘッド621aおよび第2吐出ヘッド621bが、図11に示すように、第1粗配列部627aと第2粗配列部627bとが移動方向に重なるように配置されたインクジェットプリンタを想定する。図11では、接続範囲620において、第1粗配列部627aの吐出口626と、第2粗配列部627bの吐出口626とが、配列方向において互いに補間するように配列ピッチにて配列されており、接続範囲620内の吐出口626は全て、画像の記録に使用される。また、接続範囲620に、第1密配列部628aおよび第2密配列部628bの吐出口626は含まれない。
比較例のインクジェットプリンタにおいて、例えば、第1吐出ヘッド621aの取付位置が、配列ピッチに等しい距離だけ(+X)側にずれると、図12に示すように、移動方向に第1吐出ヘッド621aの吐出口626も第2吐出ヘッド621bの吐出口626も存在しない吐出口非存在範囲630が、接続範囲620に複数出現する。この状態の比較例のインクジェットプリンタにて画像記録を行うと、複数の吐出口非存在範囲630に対応する基材上の領域に画像の記録が行われず、基材の移動方向に延びる筋状の複数の白抜けが生じる。第1吐出ヘッド621aの取付位置が、(+X)側に配列ピッチよりも大きい距離だけずれると、白抜けの幅は大きくなる。第1吐出ヘッド621aの取付位置が、(−X)側にずれた場合も同様である。このように、比較例のインクジェットプリンタでは、吐出ヘッドの取付位置のずれにより、接続範囲620に筋ムラが生じてしまう。
これに対し、本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1では、図9および図10に示すように、第1粗配列部427aの全体が第2密配列部428bと移動方向に重なり、第2粗配列部427bの全体が第1密配列部428aと移動方向に重なる。したがって、第1吐出ヘッド421aの取付位置が、例えば、配列ピッチに等しい距離だけ(+X)側にずれた場合であっても、図13に示すように、接続範囲420において第2密配列部428bの複数の吐出口の使用および不使用を切り替えることにより、比較例のインクジェットプリンタのような白抜けの発生を防止することができる。図13に示す第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bではそれぞれ、密重複範囲429に5個の吐出口426が含まれる。
具体的には、第1粗配列部427aの複数の吐出口が使用吐出口426aを含み、第2密配列部428bの複数の吐出口のうち、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重なる吐出口が不使用吐出口426bとされる。また、第2密配列部428bの複数の吐出口のうち、第1粗配列部427aの吐出口と移動方向に重ならない吐出口が使用吐出口426aとされる。第1粗配列部427aに不使用吐出口426bが含まれる場合は、第2密配列部428bの複数の吐出口のうち、第1粗配列部427aの不使用吐出口426bと移動方向に重なる吐出口も使用吐出口426aとされる。これにより、基材9に記録される画像の白抜けが防止または抑制される。
ところで、配列方向に配列された複数の吐出ヘッドにより画像を記録するインクジェットプリンタでは、各吐出ヘッドで同一の濃度の画像を記録する場合であっても、吐出ヘッド間の機械的特性の差等により、記録された画像の濃度が吐出ヘッド毎に僅かに異なることがある。したがって、配列方向に隣接する2つの吐出ヘッドの接続範囲において、画像の記録に使用される吐出口が、配列方向の1つの切替位置にて完全に切り替えられると、すなわち、切替位置よりも一方側にて一方の吐出ヘッドの吐出口のみが使用され、切替位置よりも他方側にて他方の吐出ヘッドの吐出口のみが使用されると、切替位置における画像の濃度変化による筋ムラが認識されやすくなる。
これに対し、インクジェットプリンタ1では、接続範囲420において、第1吐出ヘッド421aの吐出口、および、第2吐出ヘッド421bの吐出口の双方が、基材9に対する画像の記録に使用される。これにより、基材9上の接続範囲420に対応する領域において、第1吐出ヘッド421aからのインクによる画像と、第2吐出ヘッド421bからのインクによる画像とが混在する。その結果、吐出ヘッド間の機械的特性の差等に起因する画像の濃度変化が、画像を見る人に認識されることを抑制することができる。
このように、インクジェットプリンタ1では、配列方向に隣接する2つの吐出ヘッド421の接続範囲420における白抜けや濃度変化等の印刷品質の低下(すなわち、画像記録の品質低下)を防止または抑制することができる。なお、吐出口の使用および不使用の切り替えは、第1粗配列部427a等に対しても行われてよい。インクジェットプリンタ1では、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置が、(+X)側に配列ピッチよりも大きい距離だけずれた場合、および、(−X)側にずれた場合も、上記と同様に、配列方向に隣接する2つの吐出ヘッド421の接続範囲420における印刷品質の低下を防止または抑制することができる。
なお、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれが、配列ピッチの整数倍ではない場合(例えば、配列ピッチの0.5倍である場合)、接続範囲420において、僅かな白抜けや、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bの使用吐出口426aの一部が移動方向に重なることによる周囲よりも濃い僅かな筋が生じる可能性がある。しかしながら、基材9上の接続範囲420に対応する領域では、上述のように、画像の濃度変化が認識されにくいため、このような僅かな白抜けや濃い筋が認識されることを抑制することができる。
上述のように、図10に示す第1粗配列部427aでは、配列方向における単位長さ当たりの吐出口数が、第1密配列部428aから配列方向に離れるに従って減少する。これにより、接続範囲420では、第1密配列部428aから離れるに従って、単位長さ当たりに含まれる第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aの数が減少し、第2吐出ヘッド421bの使用吐出口426aの数が増加する。その結果、接続範囲420における上述の濃度変化が徐々に生じるため、画像を見る人に濃度変化が認識されることをさらに抑制することができる。
また、第1粗配列部427aの吐出口の全てが使用吐出口426aであることにより、第1粗配列部427a、および、第2密配列部428bの第1粗配列部427aに重なる部位において、吐出口の使用または不使用を容易に決定することができる。さらに、第2粗配列部427bの吐出口の全てが不使用吐出口426bであることにより、第2粗配列部427b、および、第1密配列部428aの第2粗配列部427bに重なる部位において、吐出口の使用または不使用を容易に決定することができる。
インクジェットプリンタ1では、密重複範囲429において、第1密配列部428aの一部と第2密配列部428bの一部とが移動方向に重なり、密重複範囲429の重複吐出口対において、一方の吐出口が使用吐出口426aであり、他方の吐出口が不使用吐出口426bである。これにより、第1密配列部428aと第2密配列部428bとが移動方向に重ならない場合に比べて、第1密配列部428aと第1粗配列部427aとの境界近傍における白抜けの発生をさらに抑制することができる。
上述のように、インクジェットプリンタ1では、配列方向に隣接する2つの吐出ヘッド421の接続範囲420における印刷品質の低下を防止または抑制することができる。このため、インクジェットプリンタ1の構造は、接続範囲420における筋ムラが比較的目立ちやすいシングルパス方式のインクジェットプリンタに特に適している。
インクジェットプリンタ1の製造(あるいは、メンテナンス)では、ヘッドアッセンブリ42の組み立てが終了すると、試験用の基材に対する試験的な画像記録が行われる。試験用の基材に対する記録結果は、制御部8に入力される。制御部8では、試験用の基材に対する記録結果と、図2に示す記憶部81に予め記憶されている情報に基づいて、接続範囲420における吐出口426の使用または不使用が、吐出管理部82により決定される。試験用の基材としては、上述の連続シート状の基材9の一部が利用されてもよく、基材9とは別の基材が利用されてもよい。
上述の記憶部81内の情報は、接続範囲420における第1吐出ヘッド421aの吐出口426と第2吐出ヘッド421bの吐出口426との移動方向における複数の重なり状態と、各重なり状態に対応する吐出口の使用状態との関係を示す関係情報である。当該関係情報は、上述の試験的な画像記録が行われるよりも前に、以下のように予め設定されて記憶部81に記憶される。
上記関係情報は、複数の重なり状態と、各重なり状態に対応する第1粗配列部427aの吐出口の使用状態との関係を含む。複数の重なり状態には、例えば、図9および図10に示す所望の重なり状態、すなわち、設計時の重なり状態が含まれる。また、設計時の重なり状態から吐出ヘッド421が図13に示すように配列方向にずれた重なり状態も、上記複数の重なり状態に含まれる。さらに、設計時の重なり状態から様々にずれた重なり状態も、複数の重なり状態に含まれる。
吐出口の使用状態とは、第1吐出ヘッド421aと第2吐出ヘッド421bとが一の重なり状態となった際に、第1粗配列部427aの複数の吐出口のうち、いずれの吐出口が使用吐出口426aとされるかを示す情報である。吐出口の使用状態は、各重なり状態に対応させて作業者により決定される。例えば、図10に示す設計時の重なり状態には、第1粗配列部427aの全ての吐出口426が使用される状態が対応付けられる。また、図13に示す重なり状態にも、第1粗配列部427aの全ての吐出口426が使用される状態が対応付けられる。上記関係情報は、例えば、テーブル形式にて記憶部81に記憶される。
また、関係情報は、上述の複数の重なり状態と、各重なり状態に対応する密重複範囲429における第1密配列部428aの吐出口の使用状態との関係も含む。例えば、図10に示す設計時の重なり状態には、密重複範囲429における第1密配列部428aの4個の吐出口426が全て使用される状態が対応付けられる。図13に示す重なり状態には、密重複範囲429における第1密配列部428aの5個の吐出口426が全て使用される状態が対応付けられる。
上記関係情報は、さらに、上述の複数の重なり状態と、各重なり状態に対応する第2粗配列部427bの吐出口の使用状態との関係も含む。例えば、図10に示す設計時の重なり状態には、第2粗配列部427bの全ての吐出口426が不使用とされる状態が対応付けられる。図13に示す重なり状態にも、第2粗配列部427bの全ての吐出口426が不使用とされる状態が対応付けられる。
吐出口426の使用または不使用が決定される際には、既述のように、試験用の基材に対する試験的な画像記録結果に基づいて、第1吐出ヘッド421aの複数の吐出口426と、第2吐出ヘッド421bの複数の吐出口426との重なり状態が求められる。そして、求められた重なり状態、および、上述の関係情報に基づいて、吐出管理部82により、第1粗配列部427a、密重複範囲429における第1密配列部428a、および、第2粗配列部427bの各吐出口426の使用または不使用が決定される。
続いて、第2密配列部428bの複数の吐出口426のうち、第1粗配列部427aと移動方向に重なる各吐出口426の使用または不使用が決定される。具体的には、第2密配列部428bにおいて、第1粗配列部427aの吐出口426と移動方向に重なる吐出口426については、第1粗配列部427aの吐出口426が使用される場合は不使用とされ、第1粗配列部427aの吐出口426が不使用である場合は使用される。一方、第1粗配列部427aの吐出口426と移動方向に重ならない吐出口426については、全ての吐出口426が使用される。
また、第2密配列部428bの複数の吐出口426のうち、密重複範囲429において第1密配列部428aと移動方向に重なる各吐出口426の使用または不使用が決定される。具体的には、密重複範囲429において、第1密配列部428aの吐出口426が使用される場合、当該吐出口426と移動方向に重なる第2密配列部428bの吐出口426は不使用とされ、第1密配列部428aの吐出口426が不使用である場合、当該吐出口426と移動方向に重なる第2密配列部428bの吐出口426は使用される。
さらに、第1密配列部428aの複数の吐出口426のうち、第2粗配列部427bと移動方向に重なる各吐出口426の使用または不使用が決定される。具体的には、第1密配列部428aにおいて、第2粗配列部427bの吐出口426と移動方向に重なる吐出口426については、第2粗配列部427bの吐出口426が使用される場合は不使用とされ、第2粗配列部427bの吐出口426が不使用である場合は使用される。一方、第2粗配列部427bの吐出口426と移動方向に重ならない吐出口426については、全ての吐出口426が使用される。
基材9に対する画像記録では、吐出管理部82による使用または不使用の決定に基づいて、使用することが決定された吐出口426から、基材9にインクの微小液滴が吐出される。このように、インクジェットプリンタ1では、設計時の重なり状態とは異なる可能性がある実際の重なり状態に合わせて、吐出口426の使用または不使用を、吐出管理部82により自動的に決定することができる。また、第1粗配列部427aの吐出口の全てが使用吐出口426aとされることにより、吐出管理部82による吐出口426の使用または不使用の決定を容易に行うことができる。さらに、第2粗配列部427bの吐出口の全てが不使用吐出口426bとされることにより、吐出管理部82による吐出口426の使用または不使用の決定を、より容易に行うことができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタは、図1に示すインクジェットプリンタ1と同様の構造を有し、以下の説明では、対応する構成に同符号を付す。第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、各吐出ヘッド421(すなわち、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421b)の各吐出口426から吐出されるインクの微小液滴のサイズが、「大サイズ」、「中サイズ」、「小サイズ」の3種類の間で切り換え可能である。
当該インクジェットプリンタでは、インクの微小液滴のサイズが切り替えられることにより、インクの微小液滴により基材9上に記録されるドットのサイズが変更される。大サイズのインクの微小液滴により記録されるドットは、インクジェットプリンタにおいて表現可能な最大サイズのドットである。小サイズのインクの微小液滴により記録されるドットは、インクジェットプリンタにおいて表現可能な最小サイズのドットである。中サイズのインクの微小液滴により記録されるドットは、最大サイズのドットよりも小さく、最小サイズのドットよりも大きい。以下の説明では、大サイズ、中サイズおよび小サイズのインクの微小液滴により基材9に記録されるドットをそれぞれ、「大ドット」、「中ドット」および「小ドット」という。
図14は、図9と同様に、配列方向に隣接する2つの吐出ヘッド421(すなわち、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421b)の端部近傍を示す底面図である。図14に示す接続範囲420には、図9に示す接続範囲420と同様に、第1粗配列部427aの21個の吐出口426をそれぞれ含む21個の重複吐出口対、密重複範囲429の4個の重複吐出口対、および、第2粗配列部427bの21個の吐出口426をそれぞれ含む21個の重複吐出口対が存在する。
基材9に対する画像の記録が行われる際には、第2粗配列部427bの21個の吐出口426をそれぞれ含む21個の重複吐出口対、すなわち、第2粗配列部427bに対応する複数の重複吐出口対のそれぞれにおいて、一方の吐出口426のみが画像の記録に使用され、他方の吐出口426は使用されない。また、第1粗配列部427aの21個の吐出口426をそれぞれ含む21個の重複吐出口対、すなわち、第1粗配列部427aに対応する複数の重複吐出口対のそれぞれにおいて、一方の吐出口426が画像の記録に主に使用され、他方の吐出口426は補助的に使用される。密重複範囲429の4個の重複吐出口対においても同様に、一方の吐出口426が画像の記録に主に使用され、他方の吐出口426は補助的に使用される。
以下、第2粗配列部427bに対応する複数の重複吐出口対において画像の記録に使用される吐出口、並びに、第1粗配列部427aに対応する複数の重複吐出口対および密重複範囲429の複数の重複吐出口対において画像の記録に主に使用される吐出口を「使用吐出口」という。また、第2粗配列部427bに対応する複数の重複吐出口対において画像の記録に使用されない吐出口を「不使用吐出口」という。さらに、第1粗配列部427aに対応する複数の重複吐出口対および密重複範囲429の複数の重複吐出口対において、画像の記録に補助的に使用される吐出口を「補助吐出口」という。接続範囲420において、一方の吐出ヘッド421の吐出口のうち、他方の吐出ヘッド421の吐出口と移動方向に重ならない吐出口は、基材9に対する画像の記録に使用される使用吐出口である。また、第1密配列部428aおよび第2密配列部428bの吐出口のうち、接続範囲420に含まれない吐出口426は全て、基材9に対する画像の記録に使用される使用吐出口である。
図15は、図14に示す接続範囲420およびその近傍において、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bにおける使用吐出口、不使用吐出口および補助吐出口の配置を示す図である。図15中では、使用吐出口に符号426aを付し、不使用吐出口に符号426bおよび×印を付す。また、補助吐出口を符号426cを付した三角にて示す。図17ないし図24においても同様である。図15に示すように、接続範囲420において、第1粗配列部427aの複数の吐出口の全ては、使用吐出口426aである。また、第2密配列部428bの複数の吐出口426のうち、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重なる吐出口は補助吐出口426cであり、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重ならない吐出口は、使用吐出口426aである。
密重複範囲429の各重複吐出口対では、上述のように、一方の吐出口が使用吐出口426aであり、他方の吐出口が補助吐出口426cである。本実施の形態では、第1密配列部428aの複数の吐出口の全てが使用吐出口426aであり、第2密配列部428bの複数の吐出口の全てが補助吐出口426cである。なお、密重複範囲429では、各重複吐出口対において、第1密配列部428aの吐出口、および、第2密配列部428bの吐出口のいずれが使用吐出口426aであってもよい。第2粗配列部427bでは、複数の吐出口の全てが、不使用吐出口426bである。第1密配列部428aの複数の吐出口のうち、密重複範囲429よりも(−X)側の吐出口は全て使用吐出口426aである。
なお、第1粗配列部427aの複数の吐出口の全てが使用吐出口426aである必要はなく、第1粗配列部427aの複数の吐出口が使用吐出口426aを含んでいればよい。例えば、第1粗配列部427aの複数の吐出口のうち、一部の吐出口が使用吐出口426aであり、他の吐出口が補助吐出口426cであってもよい。この場合、第2密配列部428bの複数の吐出口のうち、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重なる吐出口が補助吐出口426cであり、第1粗配列部427aの補助吐出口426cと移動方向に重なる吐出口、および、第1粗配列部427aの吐出口と移動方向に重ならない吐出口が使用吐出口426aである。
ところで、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1では、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれが配列ピッチの整数倍でない場合、上述のように、各吐出口426の使用および不使用の決定による当該取付位置のずれの補正が行われた後であっても、配列ピッチ未満の位置ずれが残り、当該位置ずれの影響により、接続範囲420において、僅かな白抜けが生じる可能性がある。以下の説明では、上述の各吐出口426の使用および不使用の決定による当該取付位置のずれの補正が行われた後に残存する位置ずれを、「補正後位置ずれ」という。
図16は、インクジェットプリンタ1の接続範囲420の一部の吐出口426により基材9上に形成されたドット96を示す図である。図16では、基材9上に記録された複数のドット96を中実丸にて示し、各ドット96の記録に利用される第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bの吐出口426を、ドット96の下方に模式的に描く。また、図16では、第1粗配列部427aおよび第1密配列部428aの使用吐出口426a、並びに、第2密配列部428bの使用吐出口426aおよび不使用吐出口426bを示す。図16中において、上述の補正後位置ずれによりドット96間に形成された隙間が、基材9の移動方向(図16中の上下方向)に連続することにより、白抜け97が生じる。このような僅かな白抜け97は、上述のように、基材9上では認識されにくいが、認識される可能性もある。
一方、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタにおいて基材9に画像が記録される際には、第1の実施の形態と同様の方法により吐出口の使用および不使用が予め決定された各ヘッドアッセンブリ42において、画像データに合わせて(すなわち、基材9上の描画位置に対応する画像データの画素の階調値に合わせて)、図15に示す使用吐出口426aからのインクの微小液滴の吐出および不吐出が切り替えられ、吐出が行われる場合には、インクの微小液滴のサイズが切り替えられる。また、接続範囲420の第1粗配列部427aに対応する各重複吐出口対では、第1粗配列部427aの使用吐出口426aから各描画位置に向けて吐出されるインクの微小液滴のサイズが所定のサイズ以上である場合、第2密配列部428bの補助吐出口426cから、当該各描画位置に向けて画像データとは無関係に小サイズのインクの微小液滴が吐出される。
密重複範囲429の各重複吐出口対でも同様に、第1密配列部428aの使用吐出口426aから各描画位置に向けて吐出されるインクの微小液滴のサイズが所定のサイズ以上である場合、第2密配列部428bの補助吐出口426cから、各描画位置に向けて画像データとは無関係に小サイズのインクの微小液滴が吐出される。なお、第1粗配列部427aに対応する各重複吐出口対、および、密重複範囲429の各重複吐出口対では、第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aからインクの吐出が行われない場合、補助吐出口426cからのインクの吐出も行われない。上記所定のサイズは、大サイズ、中サイズおよび小サイズのいずれかである。また、補助吐出口426cから画像データとは無関係に吐出されるインクの微小液滴のサイズは、中サイズであってもよい。
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、上記所定のサイズ、および、補助吐出口426cから吐出されるインクの微小液滴のサイズの組み合わせが予め決定され、制御部8の記憶部81(図2参照)に記憶される。そして、記憶部81に記憶された当該組み合わせ情報に基づき、記録制御部83が搬送機構2およびヘッドユニット4を制御することにより、基材9に対する画像の記録が行われる。
図17は、図15に示す接続範囲420の一部の吐出口426により基材9上に形成されたドット96を示す図である。図17では、上述の組み合わせが、上記所定のサイズが小サイズであり、補助吐出口426cから吐出されるインクの微小液滴のサイズが小サイズである場合を示す。すなわち、第1粗配列部427aに対応する各重複吐出口対、および、密重複範囲429の各重複吐出口対において、第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aから大サイズ、中サイズおよび小サイズのうちいずれかのサイズのインクの微小液滴が吐出される場合、第2吐出ヘッド421bの補助吐出口426cから小サイズのインクの微小液滴が吐出される。また、第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aからインクが吐出されない場合、第2吐出ヘッド421bの補助吐出口426cからもインクは吐出されない。
図17では、図16と同様に、基材9上に記録された複数のドット96を中実丸にて示し、各ドット96の記録に利用される第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bの吐出口426を、ドット96の下方に模式的に描く。また、図17では、第1粗配列部427aおよび第1密配列部428aの使用吐出口426a、並びに、第2密配列部428bの使用吐出口426aおよび補助吐出口426cを示す。また、図18は、補助吐出口426cからのインクの吐出が行われなかったと仮定した場合の基材9上のドット96を示す図である。図18の描画形式は、図16および図17と同様である(図19、図20、図22および図24においても同様)。
図17に示すように、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、第1粗配列部427aに対応する各重複吐出口対において、使用吐出口426aから吐出されるインクの微小液滴のサイズが小サイズ以上である場合に、補助吐出口426cから小サイズのインクが吐出される。これにより、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれが配列ピッチの整数倍ではない場合であっても、補助吐出口426cからのインクの吐出が行われない場合(図18参照)に比べて、上述の補正後位置ずれによる白抜け等の筋ムラを抑制することができる。また、密重複範囲429の各重複吐出口対においても、使用吐出口426aから吐出されるインクの微小液滴のサイズが小サイズ以上である場合に、補助吐出口426cから小サイズのインクが吐出される。これにより、筋ムラをさらに抑制することができる。
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、仮に濃度補正を行わないとすると、基材9上において第1粗配列部427aおよび密重複範囲429に対応する領域(以下、「補助吐出領域」という。)に、補助吐出口426cから吐出される小サイズのインクの微小液滴の分だけ、他の領域よりも多くインクが付与される。その結果、補助吐出領域の濃度が所望の濃度よりも高くなる。そこで、各ヘッドアッセンブリ42において、補助吐出領域に向けて吐出されるインクの総量を、補助吐出口426cから吐出されるインク量に相当するインク量だけ減少させるように、補助吐出領域に向けてインクを吐出する吐出口426について、インクの吐出量または吐出頻度を低減する濃度補正が行われる。これにより、補助吐出領域についても適正な濃度にて画像が記録される。
図19および図20はそれぞれ、上述の組み合わせ情報として他の情報が記憶部81に記憶された場合に、接続範囲420の一部の吐出口426により基材9上に形成されたドット96を示す図である。図19に示す例では、第1粗配列部427aに対応する各重複吐出口対、および、密重複範囲429の各重複吐出口対において、第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aから大サイズ、中サイズおよび小サイズのうちいずれかのサイズのインクの微小液滴が吐出される場合、第2吐出ヘッド421bの補助吐出口426cから中サイズのインクの微小液滴が吐出される。また、上記各重複吐出口対において、第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aからインクの吐出が行われない場合、補助吐出口426cからのインクの吐出も行われない。これにより、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれが配列ピッチの整数倍ではない場合に、図17に示す例よりもさらに、白抜け等の筋ムラを抑制することができる。一方、補助吐出口426cから補助吐出領域に吐出されるインクの総量は多くなるため、補助吐出領域に向けてインクを吐出する吐出口426に対する濃度補正の際の補正量は増大する。
図20に示す例では、第1粗配列部427aに対応する各重複吐出口対、および、密重複範囲429の各重複吐出口対において、第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aから大サイズのインクの微小液滴が吐出される場合、第2吐出ヘッド421bの補助吐出口426cから小サイズのインクの微小液滴が吐出される。また、上記各重複吐出口対において、第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aから中サイズまたは小サイズのインクの微小液滴が吐出される場合、あるいは、インクの吐出が行われない場合、補助吐出口426cからのインクの吐出も行われない。これにより、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれが配列ピッチの整数倍ではない場合に、図17に示す例よりも抑制の程度は小さくなるが、白抜け等の筋ムラを抑制することができる。一方、補助吐出口426cから補助吐出領域に吐出されるインクの総量は少なくなるため、補助吐出領域に向けてインクを吐出する吐出口426に対する濃度補正の際の補正量を低減することができる。
図14に示すように、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、第1吐出ヘッド421aの第1粗配列部427aの複数の吐出口426が、上記配列ピッチにて配列方向に並ぶ使用吐出口426a(図15参照)の集合である使用吐出口列441〜445を含む。使用吐出口列441〜445に含まれる使用吐出口426aの数はそれぞれ、6個、5個、4個、3個、2個である。以下、各使用吐出口列441〜445において、配列方向の両端部に位置する2つの使用吐出口をそれぞれ「端部使用吐出口」と呼ぶ。また、第1粗配列部427aにおいて、孤立した1つの使用吐出口426a、すなわち、X方向の両側において配列ピッチにて隣接する他の使用吐出口426aが存在しない使用吐出口426aも「端部使用吐出口」と呼ぶ。密重複範囲429では、第1密配列部428aの使用吐出口426aのうち、第1粗配列部427aに最も近い1つの使用吐出口を「端部使用吐出口」と呼ぶ。
図21は、図14に示す接続範囲420およびその近傍において、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bにおける使用吐出口、不使用吐出口および補助吐出口の配置を示す図である。図21に示す配置は、図15に示す配置とは異なる。図21に示す例では、第2吐出ヘッド421bの第2密配列部428bにおいて上記使用吐出口列441〜445と上述の移動方向に重なる吐出口426のうち、各使用吐出口列441〜445の2つの端部使用吐出口426dと移動方向に重なる吐出口426がそれぞれ補助吐出口426cである。また、第2密配列部428bにおいて使用吐出口列441〜445と上述の移動方向に重なる吐出口426のうち、上記補助吐出口426cを除く他の全ての吐出口426(すなわち、端部使用吐出口426dと移動方向に重ならない全ての吐出口426)は、基材9に対する画像の記録に使用されない不使用吐出口426bである。密重複範囲429では、第2密配列部428bの吐出口426のうち、第1密配列部428aの端部使用吐出口426dと移動方向に重なる吐出口426が補助吐出口426cであり、他の全ての吐出口426は不使用吐出口426bである。
図21に示す例では、第1粗配列部427aに対応する複数の重複吐出口対、および、密重複範囲429の重複吐出口対のうち、端部使用吐出口426dおよび補助吐出口426cを含む重複吐出口対において、図15に示す例と同様に、端部使用吐出口426dから各描画位置に向けて吐出されるインクの微小液滴のサイズが所定のサイズ以上である場合、補助吐出口426cから、各描画位置に向けて画像データとは無関係に小サイズまたは中サイズのインクの微小液滴が吐出される。当該所定のサイズは、図15に示す例と同様に、大サイズ、中サイズおよび小サイズのいずれかである。
図22は、図21に示す接続範囲420の一部の吐出口426により基材9上に形成されたドット96を示す図である。図22に示す例では、図17に示す例と同様に、上記所定のサイズ、および、補助吐出口426cから吐出されるインクの微小液滴のサイズが、共に小サイズである。換言すれば、端部使用吐出口426dから各描画位置に向けて吐出されるインクの微小液滴のサイズが大サイズ、中サイズおよび小サイズのいずれかである場合、補助吐出口426cから、各描画位置に向けて小サイズのインクの微小液滴が吐出される。また、端部使用吐出口426dからインクの吐出が行われない場合、補助吐出口426cからもインクの吐出は行われない。
図22に示す例では、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれが配列ピッチの整数倍ではない場合であっても、図17に示す例と同程度に、白抜け等の筋ムラを抑制することができる。一方、基材9の補助吐出領域に補助吐出口426cから吐出されるインクの総量は、図17に示す例よりも少なくなる。このため、補助吐出領域に向けてインクを吐出する吐出口426に対する濃度補正の際の補正量を低減することができる。
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、使用吐出口、不使用吐出口および補助吐出口について、図21に示す配置とは異なる配置とされてもよい。図23は、図14に示す接続範囲420およびその近傍において、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bにおける使用吐出口、不使用吐出口および補助吐出口の配置を示す図である。図23に示す例では、第2吐出ヘッド421bの第2密配列部428bにおいて使用吐出口列441〜445と上述の移動方向に重なる吐出口426のうち、各使用吐出口列441〜445の一方の端部使用吐出口426dと移動方向に重なる吐出口426がそれぞれ補助吐出口426cである。また、第1粗配列部427aにおいて孤立した使用吐出口である端部使用吐出口426dと移動方向に重なる第2密配列部428bの吐出口426も補助吐出口426cである。第2密配列部428bにおいて使用吐出口列441〜445と上述の移動方向に重なる吐出口426のうち、上記補助吐出口426cを除く他の全ての吐出口426は、基材9に対する画像の記録に使用されない不使用吐出口426bである。また、密重複範囲429において、第1密配列部428aの使用吐出口426aと移動方向に重なる第2密配列部428bの吐出口426は、不使用吐出口426bである。
図23に示す例では、第2密配列部428bにおいて各使用吐出口列441〜445と上述の移動方向に重なる吐出口426のうち、(−X)側の端部使用吐出口426dと移動方向に重なる吐出口426のみが補助吐出口426cである。逆に、第2密配列部428bにおいて各使用吐出口列441〜445と上述の移動方向に重なる吐出口426のうち、(+X)側の端部使用吐出口426dと移動方向に重なる吐出口426のみが補助吐出口426cとされてもよい。この場合、密重複範囲429では、第1密配列部428aの最も(+X)側の使用吐出口426aと移動方向に重なる第2密配列部428bの吐出口426は補助吐出口426cである。密重複範囲429における第2密配列部428bの他の吐出口426は、不使用吐出口426bである。
第2密配列部428bにおいて、補助吐出口426cが使用吐出口列441〜445の(−X)側の端部使用吐出口426dと重なる位置に配置されるか、(+X)側の端部使用吐出口426dと重なる位置に配置されるかは、第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタの製造時に決定される。
具体的には、まず、ヘッドアッセンブリ42の組み立て終了後、第1の実施の形態と同様に、試験用の基材に対する試験的な画像記録が行われ、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれに基づいて、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bの各吐出口426の使用および不使用が決定される。これにより、上記取付位置のずれが配列ピッチの整数倍分だけ補正され、上記取付位置のずれによる筋ムラの発生等の影響が、取付位置のずれが配列ピッチ未満の場合と同程度まで低減される。
続いて、試験用の基材に対する試験的な画像記録が再度行われ、第1吐出ヘッド421aの各吐出口426と、第2吐出ヘッド421bの各吐出口426との配列方向における位置ずれ(すなわち、上述の補正後位置ずれ)が求められる。補正後位置ずれは、配列ピッチ未満である。そして、図23に示すように、第1粗配列部427aの吐出口426が設けられていない領域(以下、「吐出口非存在領域」という。)と移動方向に重なる第2密配列部428bの吐出口426が、吐出口非存在領域に対して(−X)側にずれている場合、第2密配列部428bにおいて各使用吐出口列441〜445の(−X)側の端部使用吐出口426dと移動方向に重なる吐出口426がそれぞれ補助吐出口426cと決定される。逆に、第1粗配列部427aの吐出口非存在領域と移動方向に重なる第2密配列部428bの吐出口426が、吐出口非存在領域に対して(+X)側にずれている場合、第2密配列部428bにおいて各使用吐出口列441〜445の(+X)側の端部使用吐出口426dと移動方向に重なる吐出口426がそれぞれ補助吐出口426cと決定される。
図23に示す例では、第1粗配列部427aに対応する複数の重複吐出口対のうち、各使用吐出口列441〜445の(−X)側の端部使用吐出口426dおよび補助吐出口426cを含む重複吐出口対、並びに、孤立する端部使用吐出口426dおよび補助吐出口426cを含む重複吐出口対において、図15および図21に示す例と同様に、端部使用吐出口426dから各描画位置に向けて吐出されるインクの微小液滴のサイズが所定のサイズ以上である場合、補助吐出口426cから、各描画位置に向けて画像データとは無関係に小サイズまたは中サイズのインクの微小液滴が吐出される。当該所定のサイズは、図15および図21に示す例と同様に、大サイズ、中サイズおよび小サイズのいずれかである。
図24は、接続範囲420の一部の吐出口426により基材9上に形成されたドット96を示す図である。図24に示す例では、図17および図22に示す例と同様に、上記所定のサイズ、および、補助吐出口426cから吐出されるインクの微小液滴のサイズが、共に小サイズである。換言すれば、補助吐出口426cと移動方向に重なる端部使用吐出口426dから各描画位置に向けて吐出されるインクの微小液滴のサイズが大サイズ、中サイズおよび小サイズのいずれかである場合、補助吐出口426cから、各描画位置に向けて小サイズのインクの微小液滴が吐出される。また、補助吐出口426cと移動方向に重なる端部使用吐出口426dからインクの吐出が行われない場合、補助吐出口426cからもインクの吐出は行われない。
図24に示す例では、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれが配列ピッチの整数倍ではない場合であっても、図17および図22に示す例と同程度に、白抜け等の筋ムラを抑制することができる。一方、基材9の補助吐出領域に補助吐出口426cから吐出されるインクの総量は、図17および図22に示す例よりも少なくなる。このため、補助吐出領域に向けてインクを吐出する吐出口426に対する濃度補正の際の補正量を低減することができる。
上記インクジェットプリンタは、様々な変更が可能である。
例えば、接続範囲420では、密重複範囲429は必ずしも設けられる必要はなく、第1粗配列部427aの全体が第2密配列部428bと移動方向に重なり、第2粗配列部427bの全体が第1密配列部428aと移動方向に重なっていればよい。ただし、密重複範囲429が設けられることにより、上述のように、第1密配列部428aと第1粗配列部427aとの境界近傍における白抜けの発生をさらに抑制することができる。
上記実施の形態では、図9中の上側および下側に位置する吐出ヘッドをそれぞれ、第1吐出ヘッド421aおよび第2吐出ヘッド421bとしたが、逆に、図9中の上側および下側に位置する吐出ヘッドをそれぞれ、第2吐出ヘッド421bおよび第1吐出ヘッド421aとしてもよい。この場合であっても、第1吐出ヘッド421aの第1粗配列部427aの複数の吐出口が使用吐出口426aを含み、第2吐出ヘッド421bの第2密配列部428bの複数の吐出口のうち、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重なる吐出口が不使用吐出口426bとされる。また、第2密配列部428bの複数の吐出口のうち、第1粗配列部427aの不使用吐出口426bと移動方向に重なる吐出口、および、第1粗配列部427aの吐出口と移動方向に重ならない吐出口が使用吐出口426aとされる。これにより、配列方向に隣接する2つのヘッドの接続範囲420における印刷品質の低下を防止または抑制することができる。
第1の実施の形態では、第1粗配列部427aの吐出口426、および、第2粗配列部427bの吐出口426の双方が画像の記録に使用されてもよい。例えば、図25に示す接続範囲420では、第1粗配列部427aの複数の吐出口が、使用吐出口426aおよび不使用吐出口426bの双方を含み、第2粗配列部427bの複数の吐出口も、使用吐出口426aおよび不使用吐出口426bの双方を含む。密重複範囲429では、第1密配列部428aおよび第2密配列部428bがそれぞれ、使用吐出口426aおよび不使用吐出口426bの双方を含む。この場合であっても、上記と同様に、配列方向に隣接する2つの吐出ヘッドの接続範囲420における印刷品質の低下を防止または抑制することができる。
また、図25に示す接続範囲420では、配列方向における単位長さ当たりの第2吐出ヘッド421bの使用吐出口426aの数が、(+X)側に向かうに従って減少し、配列方向における単位長さ当たりの第1吐出ヘッド421aの使用吐出口426aの数が、(+X)側に向かうに従って増加する。その結果、接続範囲420における上述の濃度変化が徐々に生じるため、画像を見る人に濃度変化が認識されることを抑制することができる。
各吐出ヘッド421には、図7に示す1つのヘッド要素425のみが設けられてもよく、2つ以上のヘッド要素425が設けられてもよい。各吐出ヘッド421における吐出口426の配置は、図7に示すものには限定されず、様々に変更されてよい。例えば、各吐出ヘッド421において、複数の吐出口426が、配列方向に延びる1つの直線上に配列され、粗配列部427における吐出口426のピッチが、密配列部428における吐出口426のピッチよりも大きくされることにより、粗配列部427において吐出口426の配列が粗となっていてもよい。
各ヘッドアッセンブリ42では、2つの吐出ヘッド421のみが設けられてもよい。当該2つの吐出ヘッド421のうち、一方の吐出ヘッド421と他方の吐出ヘッド421とは、移動方向において互いに異なる位置に配置される。また、一方の吐出ヘッド421は、移動方向において他方の吐出ヘッド421からずれた位置に配置される。
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、第1粗配列部427aの複数の吐出口の全てが使用吐出口426aである必要はなく、第1粗配列部427aの複数の吐出口が使用吐出口426aを含んでいればよい。また、図15に示す例では、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重なる吐出口426の全てが補助吐出口426cである必要はなく、第1粗配列部427aの使用吐出口426aと移動方向に重なる吐出口426が、補助吐出口426cを含んでいればよい。
第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタでは、各吐出ヘッド421の各吐出口426から吐出されるインクの微小液滴のサイズは、少なくとも2つのサイズの間で切り換え可能であればよい。換言すれば、インクの微小液滴のサイズは、少なくとも、第1のサイズと、第1のサイズよりも大きい第2のサイズとの間で切り換え可能であればよい。インクの微小液滴のサイズが上記第1サイズと第2サイズとの間で切り換え可能なインクジェットプリンタでは、第1粗配列部427aの使用吐出口426aから吐出されるインクの微小液滴のサイズが所定のサイズ以上である場合、補助吐出口426cから第1のサイズのインクの微小液滴が吐出される。これにより、第1吐出ヘッド421aの第2吐出ヘッド421bに対する相対的な取付位置のずれが配列ピッチの整数倍ではない場合であっても、白抜け等の筋ムラを抑制することができる。
第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1においても、各吐出ヘッド421の各吐出口426から吐出されるインクの微小液滴のサイズが、複数のサイズの間で切り換え可能であってもよい。
インクジェットプリンタ1の設計によっては、ヘッドユニット4を移動方向に移動する搬送機構が設けられてもよい。すなわち、基材9はヘッドユニット4に対して相対的に移動方向に移動すればよい。また、略円筒状のドラムの外周面に基材9が保持され、当該ドラムをヘッドユニット4と対向する位置にて回転させる回転機構が、搬送機構として設けられてもよい。
インクジェットプリンタ1では、紫外線以外の放射線(例えば、赤外線や電子線)の照射により硬化するインクが用いられてもよい。また、放射線の照射が不要なインクが使用される場合、硬化部35は省略されてもよい。基材案内部34の案内面341は、必ずしも曲面である必要はなく、平面であってもよい。この場合、複数のヘッドアッセンブリ42は、Z方向の同じ位置に配置される。
インクジェットプリンタ1は、枚葉の基材に画像を形成するものであってもよい。例えば、ステージ上に基材を保持するインクジェットプリンタでは、ヘッドユニットがインクを吐出しつつステージに平行な走査方向に相対移動(主走査)し、基材の端部へと到達した後に、ステージに平行かつ走査方向に垂直な移動方向に所定距離だけ相対移動(副走査)し、その後、ヘッドユニットがインクを吐出しつつ走査方向の直前の主走査とは逆向きに相対移動する。このように、上記インクジェットプリンタ(いわゆる、シャトル方式のプリンタ)では、ヘッドユニットが基材に対して主走査するとともに、主走査が完了する毎に、幅方向に間欠的に副走査することにより、基材に画像が形成される。
インクジェットプリンタ1における画像形成の対象物は、紙以外の基材9であってもよい。例えば、プラスチック等にて形成される板状またはシート状の基材9に、画像が形成されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。