以下、図面を用いて実施形態を説明する。なお、図面中、同一または類似の箇所には、同一または類似の符号を付している。
なお、実施形態において、ある回路(A回路)とある回路(B回路)が接続されているとは、特定の機能を備えるA回路から別の機能を備えるB回路へ信号が伝達されることを意味する。必ずしも、A回路とB回路が、物理的に接続されることを意味するものではない。
(第1の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、アンテナと、上記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合回路と、上記アンテナから放射される電力を受信するプローブと、上記プローブに接続される電力検出器と、上記電力検出器に接続され、上記電力検出器により測定される電力値に基づき上記インピーダンス可変整合回路を制御する制御回路と、上記電力検出器に接続され、上記電力検出器により測定される電力値の変化量を算出する第1の演算回路と、上記変化量と所定の値を比較する比較回路と、上記比較回路の比較結果に基づき、上記制御回路を起動させる起動回路と、を備える。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の、上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。
図1は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。無線機300は、例えば、送受信機である。このようにアンテナ装置100と、アンテナ装置100に接続される電力増幅器200、および、無線機300が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
アンテナ装置100は、アンテナ10と、インピーダンス可変整合回路12、プローブ14、電力検出器16、第1の演算回路18、制御回路20、比較回路22、起動回路24を備える。
アンテナ10は導体である。アンテナ10は、無線機300から伝達される信号を送信する。アンテナ10は、例えば、給電点と反対側の端部が開放端となる逆Lアンテナである。なお、逆Lアンテナを用いることは、アンテナ装置100を備える無線通信装置の小型化や設計の容易化を図る観点から望ましいが、アンテナ10の形状は、逆Lアンテナに限られるものではない。
インピーダンス可変整合回路12は、アンテナ10の給電点に接続される。インピーダンス可変整合回路12は、インピーダンスを調整することにより、アンテナ10の入力インピーダンスと無線機300の出力インピーダンスを整合させる。
インピーダンス可変整合回路12は、例えば、2つの可変容量12a、12bで構成される。可変容量の使用数量や回路の接続トポロジーに、特に制限は無い。また、可変容量の他に、可変インダクタやスイッチをインピーダンス可変素子として用いることも可能である。そして、これらの可変素子は、半導体、MEMS(Micro Electro Mechanical System)等、その機能の実現手段を選ばない。さらに、インピーダンスの可変範囲を設計する都合上、素子値が固定されたインダクタやキャパシタを用いてもよい。
プローブ14は、例えば、対称な2本の導体で構成されたダイポール形状の差動型プローブである。プローブ14は、アンテナ10の端部近傍に配置され、アンテナ10から放射される電力を受信する。アンテナ装置100が接続される無線通信装置の電子部品等から発せられるノイズ耐性を高くする観点から差動型プローブであることが望ましい。しかし、モノポール形状やループ形状等のプローブを適用することが可能である。
電力検出器16は、プローブ14に接続される。電力検出器16は、プローブ14により受信される電力値を測定する。電力検出器16は、プローブ14で受信された電力信号の強度に対応した直流電圧、または、直流電流、またはバイナリデータを出力する機能を備える。
第1の演算回路18は、電力検出器16に接続される。第1の演算回路18は、電力検出器16により検出される電力値の変化量を算出する。例えば、所定の時間間隔で得られる電力値の差分を計算する。第1の演算回路18は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより構成される。また、例えば、アナログ回路やデジタル回路等のハードウェアによって構成されるものであってもかまわない。
制御回路20は、第1の演算回路18とインピーダンス可変整合回路12との間に接続される。制御回路20は、電力検出器16により検出される電力値に基づき、アンテナの入力インピーダンスと無線機の出力インピーダンスが整合するよう、インピーダンス可変整合回路12を制御する。制御回路20は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。また、例えば、アナログ回路やデジタル回路等のハードウェアによって構成されるものであってもかまわない。
制御回路20は、例えば、電力検出器16で検出される電力値が最大となるようインピーダンス可変整合回路12を制御する。アンテナ10の放射する電力が最大となれば、インピーダンスが最も整合しているとみなすことができる。制御回路20は、具体的には、例えば、可変容量素子12a、12bのリアクタンス値を変更する。
比較回路22は、第1の演算回路18と制御回路20との間に接続される。比較回路22は、第1の演算回路18で算出されるアンテナ10の電力値の変化量と所定の数値範囲を比較する。比較回路22は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。また、例えば、アナログ回路やデジタル回路等のハードウェアによって構成されるものであってもかまわない。
ここで、所定の数値範囲とは、アンテナ10の電力の変化量が、電力増幅器200の利得変化(利得変化)に起因するか、あるいは、インピーダンス可変整合回路の状態変化(状態変化)または無線通信装置の周囲の環境変化(環境変化)に起因するかを判定するために用いられる値である。例えば、電力増幅器200による電力増減の単位となる電力値に基づく範囲である。また、所定の数値範囲は、単一の数値範囲に限られることはなく、複数の数値範囲であってもかまわない。
起動回路24は、比較回路22と制御回路20との間に接続される。起動回路24は、比較回路22の比較結果に基づき、制御回路20を起動させる。起動回路24は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。また、例えば、アナログ回路やデジタル回路等のハードウェアによって構成されるものであってもかまわない。
例えば、比較回路22において、電力値の変化量が、利得変化によると判断できる所定の数値範囲に一致しない場合は、制御回路20を起動させ、インピーダンス整合の動作を開始する。一方、例えば、比較回路22において、電力値の変化量が、利得変化によると判断できる所定の数値範囲に一致する場合は、制御回路20を起動させず、インピーダンス整合の動作を行わない。
無線機300は、インピーダンス可変整合回路12の、アンテナ10に対して反対側に接続される。また、電力増幅器200は、インピーダンス可変整合回路12と無線機300との間に接続される。
無線機300は、例えば、送信機である。また、電力増幅器200は、例えば、利得可変増幅器である。
電力増幅器200が、利得可変増幅器の場合、無線機300から出力される電力を段階的に増減させることが可能である。電力増幅器200の最小利得可変幅をΔG(dB)と表す。最小利得可変幅ΔGは、電力増幅器200による電力増減の単位となる電力値である。例えば、電力増幅器200により、アンテナ10に伝達される電力がΔG増減すると、アンテナ10が放射する電力もΔG増減することになる。
以下、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の作用・効果について説明する。
まず、制御回路20によるインピーダンス可変整合回路12の制御について説明する。
プローブ14は、開放端となっている逆Lアンテナ10の端部の電荷量の変化を、容量結合により電力として検出する。そして、電力検出器16により、プローブ14で測定された電力信号の強度に対応した直流電圧、または、直流電流、またはバイナリデータが、制御回路20および第1の演算回路18に出力される。
制御回路20では、電力検出器16により測定される電力値に基づき、電力検出器16からもたらされる検出電力を最大化するように、インピーダンス可変整合回路12への制御信号伝達を行う。
アンテナの入力インピーダンスと無線機の出力インピーダンスの整合状態が良いほど、アンテナに給電される電力が大きくなる。そして、アンテナ10の給電点から給電される電力が大きくなると、アンテナ10の電流が大きくなる。このため、アンテナ10の給電点の反対側の開放端では電荷量が大きくなる。結果として、開放端となる端部近傍に配置したプローブ14との容量結合により、プローブ14で受信する電力(電力信号)も大きくなる。したがって、電力検出器16での検出電力が大きくするよう制御すれば、アンテナ10の整合状態が良くなることになる。すなわち、インピーダンス整合が実現されることになる。
本実施形態においては、制御回路20が、プローブ14で受信する電力に基づきインピーダンス可変整合回路12を制御することで、インピーダンスの自動整合を実現する。制御回路20は、電力検出器16からもたらされる検出電力を最大化するように、インピーダンス可変整合回路12を制御する。
具体的には、例えば、制御回路20は、電力検出器16からもたらされる電力値に基づく指示を制御信号として、インピーダンス可変整合回路12に出力する。この信号により、インピーダンス可変整合回路12内のインピーダンス可変素子のインピーダンス値を制御する。例えば、インピーダンス可変素子が、可変容量の場合には、可変容量のリアクタンス値を変化させる。
例えば、可変素子のインピーダンス値をランダムに変化させて、電力検出器20の検出電力値が最大となった時の制御信号を記憶しておいても良いし、可変素子に与えられる全ての状態の組み合わせを設定してみて、検出電力値が最大となる制御信号を記憶しておいても良い。制御回路20での制御方法は、電力検出器16の検出電力値を最大化できさえすれば、上述の簡便な方法、公知の方法など、あらゆる制御方法を取り得る。
図2は、本実施形態のインピーダンス整合動作の一実施例を示すフローチャートである。また、図3は、本実施例のインピーダンス整合動作の説明図である。
この例では、電力検出器16により測定される電力の増減方向が同一方向の間は、制御回路20が同一方向にインピーダンス可変整合回路12のインピーダンスを変化させる。そして、電力検出器16により測定される電力の増減方向が逆方向に変化した場合は、制御回路20が逆方向にインピーダンス可変整合回路12のインピーダンスを変化させる。インピーダンスの変化方向の変化を所定の回数繰り返した場合、検出電力が最大になったと判断し、制御回路20の動作を停止する。
具体的には、まず制御回路20を起動し、インピーダンス可変整合回路12によるインピーダンスの自動整合動作を開始する。そして、電力検出器16により電力の現在値(Pnow)を測定し、その測定結果が制御回路20に入力される。そして、電力の現在値(Pnow)を電力の前回値(Pprev)に代入する。そして、再度、電力検出器16により電力の現在値(Pnow)を測定し、測定結果が制御回路20に入力される。
次に、現在値(Pnow)と前回値(Pprev)の大小関係を比較する。これにより、アンテナ10の放射する電力の増減を判断する。
仮に、現在値(Pnow)が前回値(Pprev)よりも大きい場合(図3のケース1)、XにX+UDを代入する。仮に、現在値(Pnow)が前回値(Pprev)よりも小さい場合(図3のケース2)、UDに逆符号の−UDを代入した後、XにX+UDを代入する。
ここで、Xはインピーダンス可変整合回路12内のインピーダンス可変素子のインピーダンス値を指示するための指示パラメータであり、UDは、指示パラメータの最小単位である。Xを、UDを単位として変化させることにより、インピーダンス可変整合回路のインピーダンスが変化し、アンテナ10の放出する電力もインピーダンスの整合状態に応じて変化する。指示パラメータは、例えば、可変容量12a、12bのリアクタンス値である。
現在値(Pnow)が前回値(Pprev)よりも大きい場合(図3のケース1)は、Xの変化方向を同一方向に維持させるため、上述のようにXにX+UDを代入する。これにより、アンテナ10の放出する電力が増加することになる。一方、仮に、現在値(Pnow)が前回値(Pprev)よりも小さい場合(図3のケース2)、Xの変化方向を逆方向にするために、UDに逆符号の−UDを代入した後、XにX+UDを代入する。これにより、Xの値が逆方向に変化し、アンテナ10の放出する電力が増加することになる。このようにして、アンテナ10の放出する電力が最大となるようにインピーダンス可変整合回路12を制御する。
そして、同じXの値をN(Nは所定の自然数)回繰り返した場合は、アンテナ10の放出する電力が最大となったと判断する。すなわち、インピーダンスの整合がとれたと判断し、制御回路20の動作を停止する。この場合、インピーダンスの変化方向の変化の回数を、同じXの値を繰り返す回数を数えることによって計測している。
次に、制御回路20の起動に関する動作について説明する。図4は、本実施形態の制御回路の起動動作の一実施例を示すフローチャートである。また、図5は、本実施例の制御回路の起動動作の説明図である。
定常状態では、制御回路20は動作を停止している。制御回路20が動作を停止している状態でも電力検出器16による電力の測定は行われる。まず、電力検出器16により電力の現在値(Pnow)を測定し、測定結果が第1の演算回路18に入力される。そして、電力の現在値(Pnow)を電力の前回値(Pprev)に代入する。そして、再度、電力検出器16により電力の現在値(Pnow)を測定し、測定結果が第1の演算回路18に入力される。
次に、電力値の変化量、すなわち、電力の現在値(Pnow)と電力の前回値(Pprev)の差分(Pnow−Pprev)が算出される。電力値の変化量(Pnow−Pprev)の算出は、第1の演算回路18で行われる。電力値の変化量(Pnow−Pprev)は、例えば、その絶対値で表される。
次に、電力値の変化量(Pnow−Pprev)の絶対値と所定の数値範囲が比較される。この比較は、比較回路22で行われる。電力値の変化量(Pnow−Pprev)の絶対値が、例えば、所定の閾値(ε)より小さいか否かの判定が行われる。また、例えば、ΔG−εより大きくΔG+εより小さいか否かが判定される。なお、ΔGは、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)である。
本実施形態の電力通信機は、電力増幅器200を備えることで、通信状態の変化に合わせて送信電力を制御するTPC(Transmission Power Control)を行う。このため、電力検出器16で検出される電力値の変化が、状態変化または環境変化によるインピーダンス不整合によるものか、電力増幅器200(利得変化)によるものかを区別することが望ましい。
本実施形態では、図5に示すように、例えば、電力値の変化量が−εからεの間、すなわち、電力値の変化量の絶対値が閾値(ε)より小さい場合(図5中a1)は、変化量が誤差の範囲であり、利得変化による電力値の変化が生じていないと判定する。また、電力値の変化量がΔG−εからΔG+εの間(図5中a2)である場合、および、電力値の変化量が−ΔG−εからΔG+εの間(図5中a3)である場合、すなわち、電力値の変化量の絶対値がΔG−εより大きくΔG+εより小さい場合は、電力値の変化が、電力増幅器200による利得変化によるものと判定する。なお、図5では、説明を簡潔にするため、電力の前回値(Pprev)を0としている。また、図5で、斜線で示す範囲が、所定の数値範囲に対応する。
本実施形態において、電力値の変化量と、比較される所定の数値範囲は、利得変化による変化と、状態変化または環境変化による変化を判定するために適宜、適当な値を選択することが可能である。例えば、電力値が電力増幅器200の最小利得可変幅のn倍(nは2以上の自然数)変化する場合も利得変化によると判定させるために、電力値の変化量の絶対値がn×ΔG−εより大きくn×ΔG+εより小さいという数値範囲を適用してもよい。
変化量が所定の数値範囲と一致し、状態変化または環境変化による電力の変化が生じていないと判定された場合には、制御回路20は停止状態のままで、電力の現在値(Pnow)を電力の前回値(Pprev)に代入し、比較回路22での判定が継続される。一方、変化量が所定の数値範囲と一致せず、状態変化または環境変化による電力の変化が生じたと判定された場合には、制御回路20が起動される。
制御回路20の起動は、比較回路22での判定に基づき起動回路24から出される制御回路20への起動信号によって実行される。制御回路20はインピーダンス可変整合回路12を制御し、例えば、図2で示した実施例によりインピーダンス整合動作を行う。
本実施形態によれば、検出部となるプローブ14を開放端であるアンテナ先端近傍に配置することにより、アンテナのインピーダンス整合状態を、プローブ14による検出電力の大小で評価することが可能である。したがって、アンテナ装置の使用周波数によらず広い無線周波数帯域で精度の高いインピーダンスの自動整合を簡易かつ小型の構成で実現できる。
また、本実施形態のアンテナ装置100におけるインピーダンス整合のための損失はプローブ14の検出電力のみである。したがって、極めて低損失なアンテナ装置が実現できる。さらに、制御回路20によるインピーダンス可変整合回路12の制御で、自動的にインピーダンス整合を実行することが可能となる。
また、本実施形態によれば、第1の演算回路18、比較回路22、起動回路24を設けることにより、TPCのため電力増幅器200の利得変化によって生ずる電力変化と、状態変化または環境変化によりインピーダンスが不整合になったことで生ずる電力変化を区別することが可能となる。さらに、電力変化がインピーダンスの不整合によるものではないと判断した場合に、インピーダンス可変整合回路12を起動させないことで、不要な回路動作を抑制できる。よって、例えば、消費電力の低減が実現される。
なお、インピーダンス可変整合回路の状態変化による電力変化と、無線通信装置の周囲の環境変化による電力変化は、いずれも、インピーダンスの不整合が生じている場合であり、かつ、電力増幅器の利得変化による電力変化に比べて十分変化スピードが遅いため、特段の区別を行わずともインピーダンスの自動整合に大きな問題は生じない。
(第2の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、アンテナと、上記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合回路と、上記アンテナから放射される電力を受信するプローブと、上記プローブに接続される電力検出器と、上記電力検出器に接続され、上記電力検出器により測定される電力値に基づき上記インピーダンス可変整合回路を制御する制御回路と、上記電力検出器に接続され、上記電力検出器により測定される電力値の変化量を算出する第1の演算回路と、上記変化量と所定の値を比較する比較回路と、上記比較回路の比較結果に基づき、上記制御回路を起動させる起動回路と、上記比較回路の比較結果に基づき、上記変化量に対し所定のバイアス値を加算または減算する第2の演算回路を、備える。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。
本実施形態のアンテナ装置は、第2の演算回路を備える以外は、基本的に第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
図6は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。無線機300は、例えば、送信機である。このようにアンテナ装置100と、アンテナ装置100に接続される電力増幅器200、および、無線機300が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
アンテナ装置100は、アンテナ10、インピーダンス可変整合回路12、プローブ14、電力検出器16、第1の演算回路18、制御回路20、比較回路22、起動回路24、第2の演算回路26を備える。
第2の演算回路26は、比較回路22と制御回路20との間に接続される。第2の演算回路26は、比較回路22の比較結果に基づき、電力検出器16で検出された電力値の変化量に対し所定のバイアス値を加算または減算する。第2の演算回路26は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。
例えば、電力値の変化量が、利得変化による変化を含むと判断できる所定の数値範囲に一致する場合は、利得変化による変化を打ち消すために、電力値に対し所定のバイアス値を加算または減算する。このバイアス値は、例えば、電力増幅器200の最小利得可変幅である。制御回路20は、所定のバイアス値が加算または減算された電力値に基づき、インピーダンス可変整合回路12を制御する。
以下、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の作用・効果について説明する。
図7は、本実施形態のインピーダンス整合の一実施例を示すフローチャートである。また、図8は、本実施例のインピーダンス整合動作の説明図である。
最初に制御回路20を起動し、インピーダンス可変整合回路12によるインピーダンスの自動整合動作を開始する。そして、電力検出器16により電力の現在値(Pnow)を測定し、測定結果が第1の演算回路18に入力される。そして、電力の現在値(Pnow)を電力の前回値(Pprev)に代入する。そして、再度、電力検出器16により電力の現在値(Pnow)を測定し、測定結果が第1の演算回路18に入力される。
次に、現在値(Pnow)と前回値(Pprev)の差分(Pnow−Pprev)、すなわち、電力値の変化量と、所定の閾値(Pth)とを比較する。また、前回値(Pprev)と現在値(Pnow)の差分(Pprev−Pnow)、すなわち、電力の変化量と、所定の閾値(Pth)とを比較する。この比較は、比較回路22で行われる。
差分(Pnow−Pprev)が所定の閾値(Pth)より大きい場合、すなわち、電力値の変化量が、利得変化による変化を含むと判断できる所定の数値範囲に一致すると判定される。これは、例えば、図8のケース1のようにインピーダンス整合動作中に、電力増幅器200により電力が増加されるような場合である。この場合、例えば、状態変化または環境変化による電力値の増加(図8中の黒矢印)と、利得変化による電力値の増加(図8中の白矢印)が電力値の変化量に含まれている。したがって、効率的に、または誤動作を避けるようにインピーダンス整合を行うには、利得変化による電力値の増加分をバイアス値として補償してやることが望ましい。
そこで、電力の前回値(Pprev)に、前回値(Pprev)に、利得変化による電力値の増加分として、例えば、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)を加算した値(Pprev+ΔG)を代入する。所定の閾値(Pth)は、例えば、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)から一定値を引いた値である。
仮に、差分(Pnow−Pprev)が所定の閾値(Pth)より小さく、かつ、前回値(Pprev)と現在値(Pnow)の差分(Pprev−Pnow)が所定の閾値(Pth)より大きい場合も、電力値の変化量が、利得変化による変化を含むと判断できる所定の数値範囲に一致すると判定される。これは、例えば、図8のケース2のようにインピーダンス整合動作中に、電力増幅器200により電力が減少されるような場合である。この場合、例えば、状態変化または環境変化による電力値の減少(図8中の黒矢印)と、利得変化による電力値の減少(図8中の白矢印)が電力値の変化量に含まれている。したがって、効率的または誤動作を避けるようインピーダンス整合を行うには、利得変化による電力値の減少分をバイアス値として補償してやることが望ましい。
そこで、電力の前回値(Pprev)に、前回値(Pprev)に、利得変化による電力値の減少分として、例えば、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)を減算した値(Ppre−ΔG)を代入する。所定の閾値(Pth)は、例えば、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)から一定値を引いた値である。
そして、仮に、差分(Pnow−Pprev)が所定の閾値(Pth)以下、かつ、前回値(Pprev)と現在値(Pnow)の差分(Pprev−Pnow)も所定の閾値(Pth)以下の場合は、電力値の変化量が、利得変化による変化を含まないと判断される。したがって、バイアス値の加算または減算は実行されない。
なお、バイアス値の加算または減算は、第2の演算回路26により実行される。
次に、現在値(Pnow)と前回値(Pprev)の大小関係を比較する。これにより、アンテナ10の放射する電力の増減を判断する。
仮に、現在値(Pnow)が前回値(Pprev)よりも大きい場合(図3のケース1)、XにX+UDを代入する。仮に、現在値(Pnow)が前回値(Pprev)よりも小さい場合(図3のケース2)、UDに逆符号の−UDを代入した後、XにX+UDを代入する。
ここで、Xはインピーダンス可変整合回路12内のインピーダンス可変素子のインピーダンス値を指示するための指示パラメータである。そして、UDは、指示パラメータの最小単位である。Xを、UDを最小単位として変化させることにより、インピーダンス可変整合回路12のインピーダンスが変化し、アンテナ10の放出する電力もインピーダンスの整合状態に応じて変化する。指示パラメータは、例えば、可変容量12a、12bのリアクタンス値である。
現在値(Pnow)が前回値(Pprev)よりも大きい場合(図8のケース1)は、Xの変化方向を同一方向に維持させるため、上述のようにXにX+UDを代入する。これにより、アンテナ10の放出する電力が増加することになる。一方、仮に、現在値(Pnow)が前回値(Pprev)よりも小さい場合(図8のケース2)、Xの変化方向を逆方向にするために、UDに逆符号の−UDを代入した後、XにX+UDを代入する。これにより、Xの値が逆方向に変化し、アンテナ10の放出する電力が増大することになる。このようにして、アンテナ10の放出する電力が最大となるようにインピーダンス可変整合回路12を制御する。
そして、同じXの値をN(Nは所定の自然数)回繰り返した場合は、アンテナ10の放出する電力が最大となり、インピーダンスの整合がとれたと判断し、制御回路20の動作を停止する。インピーダンスの変化方向の変化の回数を、同じXの値を繰り返す回数を数えることによって計測している。
本実施形態において、制御回路20によりインピーダンス可変整合回路12を制御する際の電力値の最小変化幅が、電力増幅器200の最小利得可変幅よりも小さいことが望ましい。すなわち、指示パラメータXを、その最小単位であるUDだけ変化させた際の電力値の変化幅が、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)より小さいことが望ましい。これにより、電力値の変化量が、利得変化による変化を含むか否かの判定が容易になるからである。
制御回路20の起動に関する動作については、第1の実施形態と同様である。
本実施形態によれば、インピーダンス自動整合の動作中にTPCが行われ、電力増幅器200による電力の増減が生じたとしても、比較回路22がこの利得変化による電力変化の有無を判断する。さらに、利得変化による電力値の変化を、適切なバイアス値を検出された電力値に加減することにより補償する。したがって、状態変化または環境変化による電力値の変化に基づき、インピーダンス整合動作を実行することが可能となる。よって、不必要な動作を排除して効率的なインピーダンスの自動整合が可能となる。また、インピーダンスの自動整合における誤動作を抑制することが可能となる。
(第3の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、アンテナと、上記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合回路と、上記アンテナから放射される電力を受信するプローブと、上記プローブに接続される電力検出器と、上記電力検出器に接続され、上記電力検出器により測定される電力値に基づき上記インピーダンス可変整合回路を制御する制御回路と、上記電力検出器に接続され、上記電力検出器により測定される電力値の変化量を算出する第1の演算回路と、上記変化量と所定の数値範囲を比較する比較回路と、上記比較回路の比較結果に基づき、上記電力値に対し所定のバイアス値を加算または減算する第2の演算回路を、備える。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。
本実施形態のアンテナ装置は、起動回路を備えないこと以外は、基本的に第2の実施形態と同様である。したがって、第2の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
図9は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。無線機300は、例えば、送信機である。このようにアンテナ装置100と、アンテナ装置100に接続される電力増幅器200、および、無線機300が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
アンテナ装置100は、アンテナ10と、インピーダンス可変整合回路12と、プローブ14、電力検出器16、第1の演算回路18、制御回路20、比較回路22、第2の演算回路26を備える。
本実施形態においては、例えば、制御回路20を常時起動状態としておいてもかまわない。
本実施形態によれば、第2の実施形態同様、状態変化または環境変化による電力値の変化に基づき、インピーダンス整合動作を実行することが可能となる。よって、不必要な動作を排除して効率的なインピーダンス整合が可能となる。また、インピーダンス整合における誤動作を抑制することが可能となる。
(第4の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、比較回路が電力の変化量と所定の数値範囲を比較し、第1の演算回路が、電力の変化量の算出を繰り返し、上記変化量が所定の数値範囲と一致しなかった後、初めて上記変化量が所定の数値範囲と一致した際に、起動回路が制御回路を起動させること以外は第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
本実施形態では、比較回路22において、電力値の変化量が、利得変化によると判断できる所定の数値範囲に一致しない場合、待機期間の経過後に、制御回路20を起動させ、インピーダンス整合の動作を開始する。この待機期間は、比較回路22において、電力値の変化量が、利得変化によると判断できる所定の数値範囲に一致するまでの期間である。
以下、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の作用・効果について説明する。図10は、本実施形態の制御回路の起動の一実施例を示すフローチャートである。
定常状態では、制御回路20は動作を停止している。制御回路20が動作を停止している状態でも電力検出器16による電力の測定は行われる。まず、電力検出器16により電力の現在値(Pnow)を測定し、測定結果が第1の演算回路18に入力される。そして、電力の現在値(Pnow)を電力の前回値(Pprev)に代入する。そして、再度、電力検出器16により電力の現在値(Pnow)を測定し、測定結果が第1の演算回路18に入力される。
次に、電力の変化量、すなわち、電力の現在値(Pnow)と電力の前回値(Pprev)の差分(Pnow−Pprev)が算出される。電力の変化量(Pnow−Pprev)の算出は、第1の演算回路18で行われる。電力の変化量(Pnow−Pprev)は、例えば、その絶対値で表される。
次に、電力値の変化量(Pnow−Pprev)の絶対値と所定の数値範囲が比較される。この比較は、比較回路22で行われる。電力値の変化量(Pnow−Pprev)の絶対値は、例えば、閾値(ε)以下である否かの判定が行われる。また、例えば、ΔG−εより大きくΔG+εより小さいか否かが判定される。なお、ΔGは、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)である。
変化量が所定の数値範囲と一致し、状態変化または環境変化による電力の変化が生じていないと判定された場合には、制御回路20は停止状態のままで、電力の現在値(Pnow)を電力の前回値(Pprev)に代入し、比較回路22での判定が継続される。
一方、変化量が所定の数値範囲と一致せず、状態変化または環境変化による電力の変化が生じたと判定された場合にも、待機期間が経過するまでは、制御回路20は停止状態を保つ。そして、電力の現在値(Pnow)を電力の前回値(Pprev)に代入し、比較回路22での判定が継続される。その後、最初に、電力の変化量が所定の数値範囲と一致した場合に制御回路20が起動される。
すなわち、電力の変化量、すなわち、電力の現在値(Pnow)と電力の前回値(Pprev)の差分(Pnow−Pprev)が算出される。電力の変化量(Pnow−Pprev)の算出は、第1の演算回路18で行われる。電力の変化量(Pnow−Pprev)は、例えば、その絶対値で表される。
次に、電力値の変化量(Pnow−Pprev)の絶対値と所定の数値範囲が比較される。この比較は、比較回路22で行われる。電力値の変化量(Pnow−Pprev)の絶対値は、例えば、ΔG−εより大きくΔG+εより小さいか否かが判定される。なお、ΔGは、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)である。
変化量が所定の数値範囲と一致せず、利得変化による電力の変化が生じていないと判定された場合には、制御回路20は停止状態のままで、電力の現在値(Pnow)を電力の前回値(Pprev)に代入し、比較回路22での判定が継続される。変化量が所定の数値範囲と一致し、利得変化による電力の変化が生じたと判定された場合、待機時間が終了し、制御回路20が起動回路24により起動される。
なお、変化量と所定の数値範囲との比較を行うために、比較回路22と異なる第2の比較回路を別途設けてもかまわない。
本実施形態によれば、状態変化または環境変化による電力変化が生じた後、最初にTPCが実行されるまで制御回路20の起動を行わない。すなわち、最初にTPCが実行されるまでインピーダンス整合の動作を行わず、TPCが実行されて初めてインピーダンス整合の動作を開始する。
一端TPCが実行されると、次にTPCが実行されるまで、ある程度の時間間隔が生じる蓋然性が高くなる。したがって、インピーダンス整合の動作中にTPCが実行される確率が低下する。よって、インピーダンス整合の動作中に利得変化による電力の変化が生じ、インピーダンス整合の不必要な動作や誤動作が生じることを抑制できる。
(第5の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、上記アンテナ装置で使用される無線周波数と、インピーダンス可変整合回路の最適インピーダンス状態との関係を記憶する記憶素子を、さらに備える以外は、基本的に第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。
図11は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。
アンテナ装置100は、記憶素子28を備える。記憶素子28は、アンテナ装置100で使用される無線周波数と、インピーダンス可変整合回路12の最適インピーダンス状態との関係を記憶する。具体的には、例えば、無線周波数と、その無線周波数でインピーダンス整合をとるために最適なインピーダンス値をインピーダンス可変整合回路12に指示するための指示パラメータXとの関係をテーブルとして記憶素子28が記憶する。
記憶素子28は、例えば、半導体メモリである。
アンテナ装置100で使用される無線周波数に関する情報は、例えば、無線機300から信号として制御回路20に伝達される。制御回路20は、無線機300から伝達された無線周波数に最適なインピーダンス状態を実現する指示パラメータXを記憶素子28から入手する。この指示パラメータXに基づき、インピーダンス可変整合回路12を制御する。
例えば、無線通信装置が複数の無線周波数帯を使用する場合、それぞれの無線周波数帯で最適な指示パラメータXが異なる。また、同一の周波数帯内であっても、帯域内の無線周波数ごとで最適な指示パラメータXが異なり得る。
本実施形態によれば、例えば、制御回路20の起動時に使用される無線周波数に最適な指示パラメータXを初期値としてインピーダンス整合を行うことが可能になる。また、例えば、通信中に使用される無線周波数が変化するような場合でも、使用される無線周波数に最適な指示パラメータXへ変更することにより、この指示パラメータXを初期値としてインピーダンス整合を行うことが可能になる。よって、迅速なインピーダンス整合を行うことが可能となる。また、インピーダンス整合のための不要な回路動作を抑制することにより、消費電力を削減することが可能となる。
(第6の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、具体的に、アンテナの形状およびアンテナとプローブの位置関係を示す以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
本実施形態において、アンテナが、給電点と上記給電点と離間した端部を備え、アンテナの端部とプローブの先端との距離が、アンテナ装置で使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下である。
図12は、本実施形態のアンテナとプローブの形状を示す模式図である。アンテナ10は枝分かれした導体である。アンテナ10は、インピーダンス可変整合回路12に接続される給電点10aと、給電点10aと離間した端部10b、10c、10dを備えている。アンテナ10は、枝分かれした形状により、複数の周波数で共振し、複数の周波数でインピーダンス整合することが可能となる。なお、アンテナ10の形状は、必ずしも図12の形状に限定されるものではない。
プローブ14は、ここでは、対称な2本の導体で構成されたダイポール形状の差動型プローブである。アンテナ装置が接続される無線通信装置の電子部品等から発せられるノイズ耐性を高くする観点から差動型プローブであることが望ましいが、モノポール形状やループ形状等のプローブを適用することが可能である。
枝分かれしたアンテナ10の最も枝の長い部分の端部10b、いいかえれば、もっとも給電点10aから距離の遠い端部10bと、プローブ14の先端までの離間距離(図12中d)が、アンテナ装置100において使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下となるよう近接して配置される。使用される無線周波数によらず、インピーダンス整合の精度を向上させる観点から、枝分かれしたアンテナ10の最も枝の長い部分の端部10bとプローブ14の先端までの離間距離が、上記関係を充足することが望ましい。
アンテナ10の最も枝の長い部分の端部10bは、使用される無線周波数に依存せず、インピーダンス整合している場合に、もっとも電荷がたまりやすい。したがって、プローブ14による検出電力が他の端部10c、10dと比較して大きくなる。よって、インピーダンス整合の精度が向上する。
(第7の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、アンテナと、上記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合回路と、上記アンテナから放射される電力を受信するプローブと、上記プローブに接続される第1の電力検出器と、上記第1の電力検出器に接続され、上記第1の電力検出器により測定される電力値に基づき上記インピーダンス可変整合回路を制御する制御回路と、上記インピーダンス可変整合回路の上記アンテナに対して反対側に接続される第2の電力検出器と、上記第1の電力検出器により測定される第1の電力値と、上記第2の電力検出器により測定される第2の電力値を比較する比較回路と、上記比較回路の比較結果に基づき、上記制御回路を起動させる起動回路と、を備える。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。
図13は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。無線機300は、例えば、送信機である。このようにアンテナ装置100と、アンテナ装置100に接続される電力増幅器200、および、無線機300が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
アンテナ装置100は、アンテナ10と、インピーダンス可変整合回路12と、プローブ14、第1の電力検出器30、第2の電力検出器32、制御回路20、比較回路22、起動回路24を備える。
アンテナ10は導体である。アンテナ10は、無線機300から伝達される信号を送信する。アンテナ10は、例えば、給電点と反対側の端部が開放端となる逆Lアンテナである。なお、逆Lアンテナを用いることは、アンテナ装置100を備える無線通信装置の小型化や設計の容易化を図る観点から望ましいが、アンテナ10の形状は、逆Lアンテナに限られるものではない。
インピーダンス可変整合回路12は、アンテナ10の給電点に接続される。インピーダンス可変整合回路12は、インピーダンスを調整することにより、アンテナ10の入力インピーダンスと無線機300の出力インピーダンスを整合させる。
インピーダンス可変整合回路12は、例えば、2つの可変容量12a、12bで構成される。可変容量の使用数量や回路の接続トポロジーに制限は無い。また、可変容量の他に、可変インダクタやスイッチをインピーダンス可変素子として用いることも可能である。そして、これらの可変素子は、半導体、MEMS(Micro Electro Mechanical System)等、その機能の実現手段を選ばない。
プローブ14は、例えば、対称な2本の導体で構成されたダイポール形状の差動型プローブである。プローブ14は、アンテナ10の端部近傍に配置され、アンテナ10から放射される電力を受信する。アンテナ装置100が接続される無線通信装置の電子部品等から発せられるノイズ耐性を高くする観点から差動型プローブであることが望ましいが、モノポール形状やループ形状等のプローブを適用することが可能である。
第1の電力検出器30は、プローブ14に接続される。第1の電力検出器30は、プローブ14により受信される電力値(第1の電力値:P1)を測定する。第1の電力検出器30は、プローブ14で受信された電力信号の強度に対応した直流電圧、または、直流電流、またはバイナリデータを出力する機能を備える。
制御回路20は、第1の電力検出器30とインピーダンス可変整合回路12との間に接続される。制御回路20は、上記変化量に基づき、アンテナの入力インピーダンスと無線機の出力インピーダンスが整合するよう、インピーダンス可変整合回路12を制御する。制御回路20は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。
制御回路20は、例えば、第1の電力検出器30で検出される電力値が最大となるようインピーダンス可変整合回路12を制御する。アンテナ10の放射する電力が最大となれば、インピーダンスが整合しているとみなすことができる。具体的には、例えば、可変容量素子12a、12bのリアクタンス値を変更する。
第2の電力検出器32は、インピーダンス可変整合回路12の上記アンテナ10に対して反対側に接続される。第2の電力検出器32は、無線機300から電力増幅器200を介してアンテナ10に入力される電力値(第2の電力値:P2)を測定する。第2の電力検出器32は、プローブ14で受信された電力信号の強度に対応した直流電圧、または、直流電流、またはバイナリデータを出力する機能を備える。
比較回路22は、第1の電力検出器30と第2の電力検出器32に接続される。比較回路22は、第1の電力検出器30により測定される第1の電力値と、第2の電力検出器32により測定される第2の電力値を比較する。比較回路22は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。
起動回路24は、比較回路22と制御回路20との間に接続される。起動回路24は、比較回路22の比較結果に基づき、制御回路20を起動させる。起動回路24は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。
例えば、比較回路22において、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比較の結果、状態変化または環境変化による電力の変化が生じたと判断できる場合は、制御回路20を起動させ、インピーダンス整合の動作を開始する。一方、例えば、比較回路22において、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比較の結果、状態変化または環境変化による電力の変化が生じていないと判断できる場合は、制御回路20を起動させず、インピーダンス整合の動作を行わない。
無線機300は、インピーダンス可変整合回路12のアンテナ10に対して反対側に接続される。また、電力増幅器200は、インピーダンス可変整合回路12と無線機300との間に接続される。
無線機300は、例えば、送信機である。また、電力増幅器200は、例えば、利得可変増幅器である。
電力増幅器200が、利得可変増幅器の場合、無線機300から出力される電力を段階的に増減させることが可能である。電力増幅器200の最小利得可変幅をΔG(dB)と表す。最小利得可変幅ΔGは、電力増幅器200による電力増減の単位となる電力値である。例えば、電力増幅器200により、アンテナ10に伝達される電力がΔG増減すると、アンテナ10放射する電力もΔG増減することになる。
以下、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の作用・効果について説明する。
制御回路20によるインピーダンス可変整合回路12の制御については、第1の実施形態と同様であるので、記述を省略する。
次に、制御回路20の起動に関する動作について説明する。図14は、本実施形態の制御回路の起動の一実施例を示すフローチャートである。
例えば、電力増幅器200により、無線機300の電力が増幅されアンテナ10に出力される電力が大きくなった場合、アンテナ10から放射される電力もアンテナ10に出力される電力に比例して大きくなる。したがって、アンテナ10から放射される電力が利得変化により変化した場合、第1の電力検出器30で検出される第1の電力値(P1)と第2の電力検出器32で検出される第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)は一定値となる。
一方、インピーダンス可変整合回路の状態変化や無線通信装置を取り巻く環境の変化、すなわち、状態変化または環境変化でインピーダンス不整合が生じ、アンテナ10から放射される電力が変化した場合、第1の電力検出器30で検出される第1の電力値(P1)と第2の電力検出器32で検出される第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)が変化する。したがって、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)を算出することにより、状態変化または環境変化によるインピーダンス不整合が生じたか否かを判断することが可能となる。
定常状態では、制御回路20は動作を停止している。制御回路20が動作を停止している状態でも第1および第2の電力検出器30、32による電力の測定は行われる。まず、第1の電力検出器30により第1の電力値(P1)を測定し、測定結果が比較回路22に入力される。また、第2の電力検出器32により第2の電力値(P2)を測定し、測定結果が比較回路22に入力される。そして、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)が算出される。
そして、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)の現在値(Dnow)を、この比の前回値(Dprev)に代入する。そして、再度、第1および第2の電力検出器30、32により第1の電力値(P1)および第2の電力値(P2)を測定し、測定結果が比較回路22に入力される。そして、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)が算出される。
次に、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)の現在値(Dnow)と、前回値(Dprev)の差分(Dnow−Dprev)が算出される。比の変化量(Dnow−Dprev)の算出は、比較回路22で行われる。比の変化量(Dnow−Dprev)は、例えば、その絶対値で表される。
次に、比の変化量(Dnow−Dprev)の絶対値と所定の閾値(Dth)が比較される。この比較は、比の変化量(Dnow−Dprev)の絶対値と所定の閾値(Dth)より大きいか否かの判定が行われる。閾値(Dth)は、例えば、電力増幅器200による電力変化が生じた場合、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)が変化していないとみなすことが出来る許容範囲を定義する値である。
本実施形態の電力通信機は、電力増幅器200を備えることで、通信状態の変化に合わせて送信電力を制御するTPC(Transmission Power Control)を行う。このため、電力検出器16で検出される電力値の変化が、状態変化または環境変化によるインピーダンス不整合によるものか、電力増幅器200(利得変化)によるものかを区別することが望ましい。
本実施形態では、図14に示すように、例えば、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)の絶対値が所定の閾値(Dth)以下である場合、比の変化が誤差の範囲であり、状態変化または環境変化による変化が生じていないと判定する。状態変化または環境変化による電力の変化が生じていないと判定された場合には、制御回路20は停止状態のままで、比の現在値(Dnow)を電力の前回値(Dprev)に代入し、比較回路22での判定が継続される。
一方、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の比(D=P1/P2)の絶対値が所定の閾値(Dth)より大きい場合、状態変化または環境変化による比の変化が生じたと判定される。この場合、制御回路20が起動される。
制御回路20の起動は、比較回路22での判定に基づき起動回路24から出される制御回路20への起動信号によって実行される。制御回路20はインピーダンス可変整合回路12を制御し、例えば、図2で示した実施例によりインピーダンス整合動作を行う。
本実施形態によれば、検出部となるプローブ14を開放端であるアンテナ先端近傍に配置することにより、アンテナのインピーダンス整合状態を、プローブ14による検出電力の大小で評価することが可能である。したがって、アンテナ装置の使用周波数によらず広い無線周波数帯域で精度の高いインピーダンス整合を簡易かつ小型の構成で実現できる。また、本実施形態のアンテナ装置100におけるインピーダンス整合のための損失はプローブ14の検出電力のみである。したがって、極めて低損失なアンテナ装置が実現できる。さらに、制御回路20によるインピーダンス可変整合回路12の制御で、自動的にインピーダンス整合を実行することが可能となる。
また、本実施形態によれば、第1の電力検出器30、第2の電力検出器32、比較回路22、起動回路24を設けることにより、TPC制御のため電力増幅器200によって生ずる電力変化と、状態変化または環境変化によりインピーダンスが不整合になったことによる電力変化を区別することが可能となる。さらに、電力変化がインピーダンスの不整合によるものではないと判断した場合に、インピーダンス可変整合回路12の駆動させないことで、不要な回路動作を抑制できる。よって、例えば、消費電力の低減が実現される。また、第1の電力検出器30と第2の電力検出器32の2つの検出器で検出される電力の比を用いて電力変化の要因を区別することで、精度の高い判定と行うことが可能となる。
(第8の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、第1および第2の電力検出器30、32が対数ピーク電力検出器であること、比較回路が減算回路を含み比較回路22で第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)に対し減算処理が行われること以外は、第7の実施形態と同様である。したがって、第7の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
なお、対数ピーク電力検出器とは、検出される電力の値の対数を出力する電力検出器である。したがって、本実施形態では、第1および第2の電力検出器30、32から出力される第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)が測定された電力の対数値である。
図15は、本実施形態の制御回路の起動の一実施例を示すフローチャートである。
本実施形態では、第1の電力検出器30により検出される電力と、第2の電力検出器32により検出される電力の比(D)を、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)の差分として算出することができる。これは、第1の電力値(P1)と第2の電力値(P2)が検出された電力の対数であるため、検出された電力の除算処理が減算処理となるからである。この減算処理は、例えば、比較回路22内の減算回路で実行される。その他のフローは第7の実施形態と同様である。
本実施形態によれば、第1の電力検出器30により検出される電力と、第2の電力検出器32により検出される電力の比(D)を、減算処理により算出することが可能となる。したがって、例えば、比較回路22のソフトウェア処理量を軽減することが可能となる。また、例えば、比較回路22のハードウェアの構成を簡易にできる。
(第9の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、アンテナと、上記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合回路と、上記アンテナから放射される電力を受信するプローブと、上記プローブに接続される第1の電力検出器と、上記第1の電力検出器に接続され、上記第1の電力検出器により測定される電力値に基づき上記インピーダンス可変整合回路を制御する制御回路と、上記インピーダンス可変整合回路の、上記アンテナに対して反対側に接続される第2の電力検出器と、上記第1の電力検出器により測定される第1の電力値と、上記第2の電力検出器により測定される第2の電力値を比較する比較回路と、上記比較回路の比較結果に基づき、上記制御回路を起動させる起動回路と、を備える。そして、比較回路の比較結果に基づき、上記第1の電力値に対し所定のバイアス値を加算または減算する演算回路を、さらに備える。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。
本実施形態のアンテナ装置は、第1および第2の演算回路を備える以外は、基本的に第7の実施形態と同様である。したがって、第7の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
図16は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。無線機300は、例えば、送信機である。このようにアンテナ装置100と、アンテナ装置100に接続される電力増幅器200、および、無線機300が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
アンテナ装置100は、アンテナ10と、インピーダンス可変整合回路12と、プローブ14、第1の電力検出器30、第2の電力検出器32、第1の演算回路18、制御回路20、比較回路22、第2の演算回路26、起動回路24を備える。
第1の演算回路18は、第1の電力検出器30、および、第2の電力検出器32に接続される。第1の演算回路18は、第1の電力検出器30で検出される第1の電力値と、第2の電力検出器32で検出される第2の電力値に対して演算を行う。第1の演算回路18は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。
また、第2の演算回路26は、比較回路22と制御回路20との間に接続される。第2の演算回路26は、比較回路22の比較結果に基づき、第1の電力検出器30で検出された第1の電力値に、所定のバイアス値を加算または減算する。第2の演算回路26は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。
例えば、利得変化による検出電力の変化が生じたと判断できる場合は、利得変化による変化を打ち消すために、第1の電力値に対し所定のバイアス値を加算または減算する。このバイアス値は、例えば、第2の電力値の変化量、すなわち電力増幅器200で増減された電力の変化量である。制御回路20は、所定のバイアス値が加算または減算された変化量に基づき、インピーダンス可変整合回路12を制御する。
以下、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の作用・効果について説明する。
図17は、本実施形態のインピーダンス整合の一実施例を示すフローチャートである。
最初に制御回路20を起動し、インピーダンス可変整合回路12によるインピーダンスの自動整合動作を開始する。そして、第1の電力検出器30により第1の電力値の現在値(P1now)と、第2の電力検出器32により第2の電力値の現在値(P2now)を測定し、測定結果が第1の演算回路18に入力される。そして、第1の電力の現在値(P1now)を第1の電力値の前回値(P1prev)に代入する。また、第2の電力値の現在値(P2now)を第2の電力値の前回値(P2prev)に代入する。そして、再度、第1の電力検出器30により第1の電力値の現在値(P1now)と、第2の電力検出器32により第2の電力の現在値(P2now)を測定し、測定結果が第1の演算回路18に入力される。
次に、第2の電力値の現在値(P2now)、第2の電力値の前回値(P2prev)の差分(P2now−P2prev)の絶対値、すなわち、第2の電力値の変化量と、所定の閾値(Pth)とを比較する。この比較は、比較回路22で行われる。
第2の電力値の差分(P2now−P2prev)の絶対値が所定の閾値(Pth)より大きい場合、これは、例えば、インピーダンス整合動作中に、電力増幅器200により電力が増加されるような場合である。この場合、例えば、状態変化または環境変化による電力値の増減と、利得変化による電力値の増減が第1の電力の電力値の変化量に含まれている。したがって、効率的に、または誤動作を避けるようにインピーダンス整合を行うには、利得変化による第2の電力値の増減分をバイアス値として補償してやることが望ましい。
そこで、第1の電力値の前回値(P1prev)に、利得変化による電力値の増減分として、例えば、第2の電力値の差分(P2now−P2prev)を加算する。
仮に、差分(P2now−P2prev)の絶対値が所定の閾値(Pth)以下の場合は、第1の電力値の変化量が、利得変化による変化を含まないため、バイアス値の加算は実行されない。
なお、バイアス値の加算または減算は、第2の演算回路26により実行される。
次に、第1の電力値の現在値(P1now)と前回値(P1prev)の大小関係を比較する。これにより、アンテナ10の放射する電力の増減を判断する。
仮に、現在値(P1now)が前回値(P1prev)よりも大きい場合、XにX+UDを代入する。仮に、現在値(P1now)が前回値(P1prev)よりも小さい場合、UDに逆符号の−UDを代入した後、XにX+UDを代入する。
ここで、Xはインピーダンス可変整合回路12内のインピーダンス可変素子のインピーダンス値を指示するための指示パラメータである。そして、UDは、指示パラメータの最小単位である。Xを、UDを最小単位として変化させることにより、インピーダンス可変整合回路12のインピーダンスが変化し、アンテナ10の放出する電力もインピーダンスの整合状態に応じて変化する。指示パラメータは、例えば、可変容量12a、12bのリアクタンス値である。
現在値(P1now)が前回値(P1prev)よりも大きい場合は、Xの変化方向を同一方向に維持させるため、上述のようにXにX+UDを代入する。これにより、アンテナ10の放出する電力が増加することになる。一方、仮に、現在値(P1now)が前回値(P1prev)よりも小さい場合、Xの変化方向を逆方向にするために、UDに逆符号の−UDを代入した後、XにX+UDを代入する。これにより、Xの値が逆方向に変化し、アンテナ10の放出する電力が増大することになる。このようにして、アンテナ10の放出する電力が最大となるようにインピーダンス可変整合回路12を制御する。
そして、同じXの値をN(Nは所定の自然数)回繰り返した場合は、アンテナ10の放出する電力が最大となり、インピーダンスの整合がとれたと判断し、制御回路20の動作を停止する。インピーダンスの変化方向の変化の回数を、同じXの値を繰り返す回数を数えることによって計測している。
本実施形態において、制御回路20によりインピーダンス可変整合回路12を制御する際の電力値の最小変化幅が、電力増幅器200の最小利得可変幅よりも小さいとことが望ましい。すなわち、指示パラメータXを、その最小単位であるUDだけ変化させた際の電力値の変化幅が、電力増幅器200の最小利得可変幅ΔG(dB)より小さいことが望ましい。これにより、電力値の変化量が、利得変化による変化を含むか否かの判定が容易になるからである。
制御回路20の起動に関する動作については、第7の実施形態と同様である。
本実施形態によれば、インピーダンス整合の動作中にTPCが行われ、電力増幅器200による電力の増減が生じたとしても、比較回路22がこの利得変化による電力変化の有無を判断する。さらに、利得変化による第1の電力値の変化を、適切なバイアス値を検出された第1の電力値に加減することにより補償する。したがって、状態変化または環境変化による第1の電力値の変化に基づき、インピーダンス整合動作を実行することが可能となる。よって、不必要な動作を排除して効率的なインピーダンスの自動整合が可能となる。また、インピーダンスの自動整合における誤動作を抑制することが可能となる。
(第10の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、上記アンテナ装置で使用される無線周波数と、インピーダンス可変整合回路の最適インピーダンス状態との関係を記憶する記憶素子を、さらに備える以外は、基本的に第7の実施形態と同様である。したがって、第7の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。
図18は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。
アンテナ装置100は、記憶素子28を備える。記憶素子28は、アンテナ装置100で使用される無線周波数と、インピーダンス可変整合回路12の最適インピーダンス状態との関係を記憶する。具体的には、例えば、無線周波数と、その無線周波数でインピーダンス整合をとるために最適なインピーダンス値をインピーダンス可変整合回路12に指示するための指示パラメータXとの関係をテーブルとして記憶素子28が記憶する。
記憶素子28は、例えば、半導体メモリである。
アンテナ装置100で使用される無線周波数は、例えば、無線機300から信号として制御回路20に伝達される。制御回路20は、無線機300から伝達された無線周波数に最適なインピーダンス状態を実現する指示パラメータXを記憶素子28から入手する。この指示パラメータXに基づき、インピーダンス可変整合回路12を制御する。
例えば、無線通信装置が複数の無線周波数帯を使用する場合、それぞれの無線周波数帯で最適な指示パラメータXが異なる。また、同一の周波数帯内であっても、帯域内の無線周波数ごとで最適な指示パラメータXが異なり得る。
本実施形態によれば、例えば、制御回路20の起動時に使用される無線周波数に最適な指示パラメータXを初期値としてインピーダンス整合を行うことが可能になる。また、例えば、通信中に使用される無線周波数が変化するような場合でも、使用される無線周波数に最適な指示パラメータXへ変更することにより、この指示パラメータXを初期値としてインピーダンス整合を行うことが可能になる。よって、迅速なインピーダンス整合を行うことが可能となる。また、インピーダンス整合のための不要な回路動作を抑制することにより、消費電力を削減することが可能となる。
(第11の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、第6の実施形態のアンテナの形状およびアンテナとプローブの位置関係を、第7の実施形態に適用した掲題である。したがって、第6および第7の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
本実施形態において、アンテナが、給電点と上記給電点と離間した端部を備え、アンテナの端部とプローブの先端との距離が、アンテナ装置で使用される最大無線周波数に対応する波長の8分の1以下である。よって、インピーダンス整合の精度が向上する。
(第12の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、アンテナと、上記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合回路と、上記アンテナから放射される電力を受信するプローブと、上記プローブに接続される第1の電力検出器と、上記第1の電力検出器に接続され、上記第1の電力検出器により測定される電力値に基づき上記インピーダンス可変整合回路を制御する制御回路と、上記インピーダンス可変整合回路の、上記アンテナに対して反対側に接続される第2の電力検出器と、上記第1の電力検出器により測定される第1の電力値と、上記第2の電力検出器により測定される第2の電力値を比較する比較回路と、を備える。そして、比較回路の比較結果に基づき、上記第1の電力値に対し所定のバイアス値を加算または減算する演算回路を、さらに備える。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。
本実施形態のアンテナ装置は、起動回路を備えないこと以外は、基本的に第9の実施形態と同様である。したがって、第9の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
図19は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。無線機300は、例えば、送信機である。このようにアンテナ装置100と、アンテナ装置100に接続される電力増幅器200、および、無線機300が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
アンテナ装置100は、アンテナ10と、インピーダンス可変整合回路12と、プローブ14、第1の電力検出器30、第2の電力検出器32、第1の演算回路18、制御回路20、比較回路22、第2の演算回路26を備える。
本実施形態においては、例えば、制御回路20を常時起動状態としておいてもかまわない。
本実施形態によれば、第9の実施形態同様、状態変化または環境変化による第1の電力値の変化に基づき、インピーダンス整合動作を実行することが可能となる。よって、不必要な動作を排除して効率的なインピーダンス整合が可能となる。また、インピーダンス整合における誤動作を抑制することが可能となる。
(第13の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、アンテナと、上記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合回路と、上記アンテナから放射される電力を受信するプローブと、上記プローブに接続される電力検出器と、上記電力検出器に接続され、上記電力検出器により測定される電力値に基づき上記インピーダンス可変整合回路を制御する制御回路と、上記インピーダンス可変整合回路に入力される電力の増幅に関する情報に基づき、上記制御回路を起動させる起動回路と、を備える。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の、上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。そして、無線機300が、電力増幅器200および起動回路24へTPC制御信号を伝達するTPC制御回路300aを内蔵している。
図20は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。無線機300は、例えば、送信機である。このようにアンテナ装置100と、アンテナ装置100に接続される電力増幅器200、および、無線機300が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
アンテナ装置100は、アンテナ10と、インピーダンス可変整合回路12、プローブ14、電力検出器16、第1の演算回路18、制御回路20、比較回路22、起動回路24を備える。
また、本実施形態では、無線機300が、電力増幅器200および起動回路24へTPC制御信号を伝達するTPC制御回路300aを内蔵している。TPC制御回路300aは、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。また、例えば、アナログ回路やデジタル回路等のハードウェアによって構成されるものであってもかまわない。
本実施形態は、比較回路22と起動回路24の動作、および、その動作を実現する構成が異なる以外は第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
電力増幅器200は、TPC制御回路300aからのTPC制御信号により、送信電力を変化させる。TPC制御信号は、起動回路24にも伝達される。TPC制御信号は、インピーダンス可変整合回路12に入力される電力の増幅に関する情報を含む。
比較回路22は、第1の演算回路18と制御回路20との間に接続される。比較回路22は、第1の演算回路18で算出されるアンテナ10の電力値の変化量と所定の閾値(ε)を比較する。この比較は、電力の変化量がインピーダンス整合動作をすべき大きさか否かを判定するために行われる。
起動回路24は、比較回路22と制御回路20との間に接続される。起動回路24は、比較回路22の比較結果と、TPC制御信号に基づき、制御回路20を起動させる。
例えば、比較回路22において電力値の変化量が閾値以上と判定され、かつ、TPC制御信号が電力増幅器200による増幅を指令していない場合、状態変化または環境変化による不整合が生じていると起動回路24が判断する。そして、起動回路24は制御回路20を起動させ、インピーダンス整合の動作を開始する。
一方、例えば、比較回路22において電力値の変化量が閾値未満と判定される場合、または、TPC制御信号が電力増幅器200による増幅を指令している場合は、電力値の変化量が小さいか、電力値の変化が利得変化によると起動回路24が判断する。そして、起動回路24は制御回路20を起動させず、インピーダンス整合の動作を行わない。
本実施形態によれば、起動回路24がTPC制御回路300aからのTPC制御信号により、利得変化による電力値の変化が生じているか否かを判断する。したがって、より高い精度でインピーダンス自動整合の要否を判断できる。よって、一層、安定したインピーダンス自動整合が実現される。
(第14の実施形態)
本実施形態のアンテナ装置は、アンテナと、上記アンテナに接続されるインピーダンス可変整合回路と、上記アンテナから放射される電力を受信するプローブと、上記プローブに接続される電力検出器と、上記電力検出器に接続され、上記電力検出器により測定される電力値に基づき上記インピーダンス可変整合回路を制御する制御回路と、上記インピーダンス可変整合回路に入力される電力の増幅に関する情報に基づき、上記制御回路を起動させる起動回路と、上記インピーダンス可変整合回路に入力される電力の増幅に関する情報に基づき、上記変化量に対し所定のバイアス値を加算または減算する演算回路を、備える。
また、本実施形態の無線通信装置は、上記アンテナ装置に加え、上記インピーダンス可変整合回路の、上記アンテナに対して反対側に接続される無線機と、上記インピーダンス可変整合回路と上記無線機との間に接続される電力増幅器を、さらに備える。そして、無線機300が、電力増幅器200および起動回路24へTPC制御信号を伝達するTPC制御回路300aを内蔵している。
図21は、本実施形態のアンテナ装置および無線通信装置の構成を示す模式図である。本実施形態の無線通信装置は、アンテナ装置100、電力増幅器200、無線機300を備える。無線機300は、例えば、送信機である。このようにアンテナ装置100と、アンテナ装置100に接続される電力増幅器200、および、無線機300が無線通信装置を構成する。無線通信装置は、例えば携帯電話である。
アンテナ装置100は、アンテナ10、インピーダンス可変整合回路12、プローブ14、電力検出器16、第1の演算回路18、制御回路20、比較回路22、起動回路24、第2の演算回路26を備える。
また、本実施形態では、無線機300が、電力増幅器200および起動回路24へTPC制御信号を伝達するTPC制御回路300aを内蔵している。TPC制御回路300aは、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。また、例えば、アナログ回路やデジタル回路等のハードウェアによって構成されるものであってもかまわない。
本実施形態は、比較回路22、起動回路24、第2の演算回路26の動作、および、その動作を実現する構成が異なる点以外は第2の実施形態と同様である。したがって、第2の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
電力増幅器200は、TPC制御回路300aからのTPC制御信号により、送信電力を変化させる。TPC制御信号は、起動回路24および第2の演算回路26にも伝達される。TPC制御信号は、インピーダンス可変整合回路12に入力される電力の増幅に関する情報を含む。
比較回路22は、第1の演算回路18と制御回路20との間に接続される。比較回路22は、第1の演算回路18で算出されるアンテナ10の電力値の変化量と所定の閾値(ε)を比較する。この比較は、電力の変化量がインピーダンス整合動作をすべき大きさか否かを判定するために行われる。
起動回路24は、比較回路22と制御回路20との間に接続される。起動回路24は、比較回路22の比較結果と、TPC制御信号に基づき、制御回路20を起動させる。
例えば、比較回路22において電力値の変化量が閾値以上と判定され、かつ、TPC制御信号が電力増幅器200による増幅を指令していない場合、状態変化または環境変化による不整合が生じていると起動回路24が判断する。そして、起動回路24は制御回路20を起動させ、インピーダンス整合の動作を開始する。
一方、例えば、比較回路22において電力値の変化量が閾値未満と判定される場合、または、TPC制御信号が電力増幅器200による増幅を指令している場合は、電力値の変化量が小さいか、電力値の変化が利得変化によると起動回路24が判断する。そして、起動回路24は制御回路20を起動させず、インピーダンス整合の動作を行わない。
第2の演算回路26は、例えば、電力検出器16と制御回路20との間に接続される。第2の演算回路26は、TPC制御信号に基づき、電力検出器16で検出された電力値の変化量に対し所定のバイアス値を加算または減算する。第2の演算回路26は、例えば、マイクロコンピュータのようなハードウェアと、半導体メモリに記憶されるソフトウェアとの組み合わせにより実現される。
例えば、TPC制御信号が、TPC制御信号が電力増幅器200による増幅を指令している場合は、利得変化による変化を打ち消すために、電力値に対し所定のバイアス値を加算または減算する。このバイアス値は、例えば、電力増幅器200の最小利得可変幅である。制御回路20は、所定のバイアス値が加算または減算された変化量に基づき、インピーダンス可変整合回路12を制御する。
一方、TPC制御信号が、TPC制御信号が電力増幅器200による増幅を指令していない場合、第2の演算回路26はバイアス値の加算または減算を行わない。
本実施形態によれば、起動回路24がTPC制御回路300aからのTPC制御信号により、利得変化による電力値の変化が生じているか否かを判断する。したがって、より高い精度でインピーダンス自動整合の要否を判断できる。よって、一層、安定したインピーダンス自動整合が実現される。
また、本実施形態によれば、インピーダンス整合の動作中にTPCが行われ、電力増幅器200による電力の増減が生じたとしても、TPC制御回路300aからのTPC制御信号により、第2の演算回路26がこの利得変化による電力変化の有無を高い精度で判断する。さらに、利得変化による電力値の変化を、適切なバイアス値を検出された電力値に加減することにより補償する。したがって、状態変化または環境変化による電力値の変化に基づき、インピーダンス整合動作を実行することが可能となる。よって、不必要な動作を排除して効率的なインピーダンスの自動整合が可能となる。また、インピーダンスの自動整合における誤動作を抑制することが可能となる。
そして、本実施形態では、利得変化による電力値の変化をTPC制御信号により直接判定できる。このため、制御回路20によりインピーダンス可変整合回路12を制御する際の電力値の最小変化幅と、電力増幅器200の最小利得可変幅との大小関係に、特に制約を設けなくとも、利得変化の有無の変化が容易に実現できる。したがって、無線通信装置の設計の自由度があがる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換えまたは変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。