以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
まず、図1を参照して本発明の実施形態に係る画像形成装置1の概略構成について説明する。画像形成装置1は、画像読取機能、ファクシミリー機能及び画像形成機能などを備えた複合機である。図1に示されるように、画像形成装置1は、画像読取部2、原稿カバー3、自動原稿送り装置(Auto Document Feeder;以下、ADFという)4、画像形成部5、シート給送装置7を備えている。なお、本発明に係る画像形成装置の一例として複合機である画像形成装置1を例示して説明するが、本発明はこれに限られず、例えばプリンター、ファクシミリー装置あるいは複写機も本発明に係る画像形成装置に該当する。
画像読取部2は、原稿から画像データを読み取る画像読取処理を実行する。図1に示されるように、画像読取部2は、コンタクトガラス10、読取ユニット11、ミラー12,13、光学レンズ14及びCCD(Charge Coupled Device)15などを備えている。
読取ユニット11は、LED光源16及びミラー17を備えており、ステッピングモーター等の駆動モーターを用いた移動機構(不図示)により副走査方向18(図1における左右方向)へ移動可能に構成されている。そして、前記駆動モーターにより読取ユニット11が副走査方向18へ移動されると、LED光源16から画像読取部2の上面に設けられたコンタクトガラス10へ向けて照射される光が副走査方向18へ走査される。
ミラー17は、LED光源16から光が照射されたときに、原稿又は原稿カバー3の裏面で反射した反射光をミラー12へ向けて反射させる。ミラー17で反射した光は、ミラー12,13により光学レンズ14に導かれる。光学レンズ14は、入射した光を集光してCCD15に入射させる。
CCD15は、受光した光をその光量(輝度の強度)に応じた電気信号(電圧)に変換して前記制御部へ出力する光電変換素子である。前記制御部では、CCD15からの電気信号を画像処理することにより原稿の画像データを生成する。なお、本実施形態では、撮像素子としてCCD15を用いた例について説明するが、CCD15による読取機構に代えて、焦点距離の短い密着型のイメージセンサー(CIS: Contact Image Sensor)を用いた読取機構を適用することも可能である。
画像読取部2には、原稿カバー3が回動自在に設けられている。原稿カバー3が回動操作されることにより、画像読取部2の上面のコンタクトガラス10が開閉される。原稿カバー3の回動支持部には、リミットスイッチなどのカバー開検出センサー(不図示)が設けられており、ユーザーが原稿の画像を読み取らせようとして原稿カバー3が開けられると、そのカバー開検出センサーが作動して、その検出信号(カバー開検出信号)が前記制御部に出力される。
ここで、画像読取部2による原稿画像の読み取りは、以下の手順で行われる。まず、原稿がコンタクトガラス10上に載置され、その後、原稿カバー3が閉姿勢にされる。その後、操作表示部(不図示)から画像読取指示が入力されると、読取ユニット11を副走査方向18の右向きへ移動させつつLED光源16から連続して順次1ライン分の光が照射される。そして、原稿又は原稿カバー3の裏面からの反射光がミラー17,12,13及び光学レンズ14を介してCCD15に導かれ、CCD15にて受光した光量に応じた光量データが順次制御部(不図示)に出力される。前記制御部は、光が照射された領域全体における光量データが得られると、その光量データを処理することにより、前記光量データから原稿の画像データを生成する。この画像データは、長方形状の画像を構成する画像データである。
なお、原稿カバー3にADF4が設けられている。ADF4は、原稿セット部19にセットされた一以上の原稿を複数の搬送ローラーにより順次搬送して、コンタクトガラス10上に定められた自動原稿読取位置を副走査方向18の右向きへ通過するように原稿を移動させる。ADF4による原稿の移動時は、前記自動原稿読取位置の下方に読取ユニット11が配置され、この位置で読取ユニット11により移動中の原稿の画像が読み取られる。原稿セット部19には、接点信号を出力可能な機械的なシートセンサー(不図示)が設けられており、原稿セット部19に原稿がセットされると、前記シートセンサーが作動して、その検出信号(原稿検出信号)が前記制御部に出力される。
図1に示されるように、画像形成部5は、画像読取部2で読み取られた画像データ、又は外部のパーソナルコンピューター等の情報処理装置から入力された印刷ジョブに基づいて画像形成処理(印刷処理)を実行する電子写真方式の画像形成手段である。具体的には、画像形成部5は、感光体ドラム20、帯電部21、現像部22、トナーコンテナ23、転写ローラー24、除電部25、定着ローラー26、加圧ローラー27などを備えている。なお、本実施形態では、電子写真方式の画像形成部5を例にして説明するが、画像形成部5は電子写真方式のものに限られず、インクジェット記録方式のものであっても、或いはそれ以外の記録方式又は印刷方式のものであってもかまわない。
画像形成部5では、シート給送装置7から供給されるシートに対する画像形成処理が以下の手順で行われる。まず、印刷指示を含む印刷ジョブが入力されると、帯電部21により感光体ドラム20が所定の電位に一様に帯電される。次に、レーザスキャナユニット(Laser Scanner Unit;LSU 不図示)により感光体ドラム20の表面に印刷ジョブに含まれる画像データに基づく光が照射される。これにより、感光体ドラム20の表面に静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム20上の静電潜像は現像部22によりトナー像として現像(可視像化)される。なお、現像部22には、トナーコンテナ23からトナー(現像剤)が補給される。続いて、感光体ドラム20に形成されたトナー像は転写ローラー24によりシートに転写される。その後、シートに転写されたトナー像は、そのシートが定着ローラー26及び加圧ローラー27の間を通過して排出される際に定着ローラー26で加熱されて溶融定着する。なお、感光体ドラム20の電位は除電部25で除電される。
シート給送装置7は、給紙カセット28と、カセット収容部30と、繰り出しローラー31と、給紙ローラー32と、分離ローラー33とを有する。図2に示されるように、給紙カセット28は、矩形の底壁280と、この底壁280の各辺に沿って立設された側壁281,282,285,286とを有し、画像形成部5によって画像が形成される対象のシート(原稿用紙)を収容する。給紙カセット28は、複数枚のシートを積層状態で収容可能である。
カセット収容部30は、この給紙カセット28を挿抜可能に支持する。図1においては、給紙カセット28が1段のみ図示されているが、カセット収容部30は、複数の給紙カセット28が上下に複数段収容可能に構成されていてもよい。カセット収容部30は、図1の左側部に給紙カセット28の出し入れを行うためのカセット挿抜口301を有する。給紙カセット28は、カセット挿抜口301を介して図1の左右方向に挿抜される。
図2(A)に示されるように、給紙カセット28の挿抜方向(図1の矢印18の方向)に対する両側壁281,282(図1の紙面表裏方向における側壁)には、各側壁281,282の各壁面からそれぞれ外方に延びる突起283,284がそれぞれ設けられている。突起283は、側壁281,282におけるカセット挿抜口301側に設けられている。突起284は、各側壁281,282におけるカセット挿抜口301と反対側の端部付近であって、側壁286寄りの位置に設けられている。
一方、図2(B)に示されるように、カセット収容部30には、給紙カセット28の各側壁281,282に対向してガイドフレーム500が設けられている。ガイドフレーム500の所定部位には、突起283,284が挿通するガイド溝部501を有する。突起283,284は、給紙カセット28の移動に伴いガイド溝部501内を相対的に移動する。すなわち、カセット収容部30に対する給紙カセット28の移動がガイド溝部501によってガイドされる。
図2(B)に示されるように、ガイド溝部501は、水平ガイド溝部5011と、傾斜ガイド溝部5012と、水平ガイド溝部5013とを有する。水平ガイド溝部5011は、所定の高さ位置において水平に延びる。傾斜ガイド溝部5012は、水平ガイド溝部5011の一方端部(カセット挿抜口301側の端部)からカセット挿抜口301側斜め上方に延びる。水平ガイド溝部5013は、傾斜ガイド溝部5012の一方端部(カセット挿抜口301側の端部)からカセット挿抜口301まで水平に延びる。
給紙カセット28がカセット収容部30に完全に収容された装着状態にあるとき、給紙カセット28の突起283,284は、水平ガイド溝部5011内に位置する。給紙カセット28が前記装着状態から引き抜かれて、その引き抜き方向に移動すると、その移動に伴い、突起283,284のうちカセット挿抜口301に近い方の突起283が傾斜ガイド溝部5012に進入する。これにより、給紙カセット28のうち側壁285側が上方に持ち上げられて、給紙カセット28が傾斜する。この傾斜状態は、挿入方向先端側の突起284が水平ガイド溝部5013内に位置するまで継続する。突起284が水平ガイド溝部5013内に進入してから給紙カセット28が所定量移動されると、給紙カセット28がカセット収容部30から抜き出される。
給紙カセット28の挿抜方向(図2(A)の矢印18の方向)両側に位置する側壁285,286のうち挿入方向先端側の側壁286には、給紙カセット28の挿抜方向に延びる延設部287が形成されている。延設部287は、本発明の突出部の一例である。延設部287には、上方に起立する上向き突起状の係合部2871(本発明の係合片の一例)が設けられている。この係合部2871は、後述するように連結部材102との連結に用いられる。
図4に示されるように、給紙カセット28は、リフト板288と押し上げ部材289とを有する。リフト板288には、用紙が積載される。押上げ部材289は、リフト板288の底面のうち給紙カセット28の側壁286側の端部に連結されており、駆動モーター(不図示)から駆動力を受けて昇降する。押上げ部材289は、幅方向に延びる回転軸(不図示)に取り付けられ、回転軸は本体の駆動部(不図示)とカップリング(不図示)で連結されている。押上げ部材289は、前記回転軸の回転により回動し、リフト板288の側壁286側の端部を昇降させる。給紙カセット28からシートが繰り出される際には、押し上げ部材289によってリフト板288が前記のような態様で押し上げられ、リフト板288に積載されたシートが後述する繰り出しローラー31に所定の力で押し付けられる。
繰り出しローラー31は、カセット収容部30に挿入された給紙カセット28の側壁286側の端部の近傍に回転可能に設けられている。繰り出しローラー31は、側壁286の上端部からカセット挿抜口301側へ離間した位置、詳細には、リフト板288の先端部288Aの上方に配置されている。繰り出しローラー31は、リフト板288により押し上げられたシートのうち最上位置のシートに接触しており、回転されることにより接触しているシートを繰り出す。その繰り出し方向は、給紙カセット28がカセット収容部30に挿入される方向(図1では右方向)と同方向である。繰り出しローラー31の支持機構については後述する。
給紙ローラー32は、繰り出しローラー31に対して繰り出し方向下流側に回転可能に設けられている。給紙ローラー32は、繰り出しローラー31により繰り出されたシートを分離ローラー33とでニップしつつ、図4において反時計周りに回転されることにより画像形成部5に向けて搬送する。
分離ローラー33は、給紙ローラー32の下方に設けられている。分離ローラー33は、一定の負荷がかかるまで、給紙ローラー32の回転に従動回転し、繰り出しローラー31により繰り出されたシートを給紙ローラー32とでニップする。分離ローラー33は、前記一定の負荷以上の負荷がかかると前記従動回転が停止する。前記一定の負荷とは、2枚のシートが重送された場合の負荷である。分離ローラー33は、前記従動回転が停止することで、繰り出しローラー31により複数枚のシートが重なった状態で繰り出された場合に、最上位置のシートとそれ以外のシートとを分離する。これにより、給紙ローラー32及び分離ローラー33によりシートが1枚ずつ画像形成部5へ搬送される。
繰り出しローラー31、給紙ローラー32及び分離ローラー33は、回転軸が互いに平行である。繰り出しローラー31と給紙ローラー32とはホルダー34により支持されている。ホルダー34は、繰り出しローラー31と給紙ローラー32との相対位置関係(両ローラー31、32間の距離や軸方向における位置の関係)を保持しつつ、繰り出しローラー31及び給紙ローラー32を回転自在に支持する。ホルダー34は、第2ホルダーに相当する。給紙ローラー32の回転軸321に揺動支持軸341(図4参照)が連結されている。揺動支持軸341は、駆動モーター(不図示)により回転駆動される。よって、揺動支持軸341は、駆動モーター(不図示)により回転駆動されると、揺動支持軸341(図4参照)に連結された給紙ローラー32の回転軸321が回転し、給紙ローラー32が回転する。すなわち、給紙ローラー32と揺動支持軸341が一体回転する。また、ホルダー34は、トリクリミッター(不図示)を介して揺動支持軸341に連結されている。揺動支持軸341は、前記トルクリミッターの設定トルクより大きい負荷が掛かる給紙ローラー32の回転時には、ホルダー34に対して空転する。また、ホルダー34は、後述するように、繰り出しローラー31を第1揺動位置(図8(A)に示す位置;接触位置に相当)と第2揺動位置(図8(B)に示す位置;退避位置に相当)との間で変位可能に支持する。図8(A)に示す第1揺動位置は、給紙カセット28内のシートS1に繰り出しローラー31が接触する位置である。図8(B)に示す第2揺動位置は、給紙カセット28内のシートS1から繰り出しローラー31が離間する位置である。このようなホルダー34の揺動により、給紙ローラー32の位置が一定のまま繰り出しローラー31が変位可能である。
図4に示されるように、分離ローラー33は、ホルダー35により回転可能に支持されている。ホルダー35は、揺動支持軸351により支持されており、後述するように、分離ローラー33を第3揺動位置(図9(A)に示す位置)と第4揺動位置(図9(B)に示す位置)との間で変位可能に支持する。図9(A)に示す第3揺動位置は、分離ローラー33が給紙ローラー32に接触するときの位置である。図9(B)に示す第4揺動位置は、分離ローラー33が給紙ローラー32から所定量離間するときの位置である。ホルダー35は、コイルスプリング36(本発明の付勢手段の一例)によって給紙ローラー32側へ弾性状態で常時付勢されている。ホルダー35は、第1ホルダーに相当する。
図3は、カセット収容部30を上方から見た給紙ローラー32周辺の構造を示す模式平面図である。図3に示されるように、シート給送装置7は、伝達機構100と伝達機構200とを有する。伝達機構100は第1伝達機構に相当し、伝達機構200は第2伝達機構に相当する。係合部2871及び当接部1023は、伝達機構100及び伝達機構200の構成要素である。
伝達機構100は、給紙ローラー32によるシート搬送方向に対する両側方にそれぞれ設置されている。なお、図3の破線は、給紙ローラー32により給送されているシートを示す。図3〜図5に示されるように、伝達機構100は、長尺レバー部101(本発明のレバー部の一例)と、連結部材102(本発明の連結部の一例)と、扇形レバー部103(本発明の係合部の一例)と、被押圧レバー部104(本発明の被係合部の一例)とを有する。本実施形態では、伝達機構100を構成する各構成要素は、カセット収容部30の奥部、詳細には、カセット収容部30に給紙カセット28が装着された状態で、側壁286よりも挿入方向側のスペースに配置されている。
長尺レバー部101は、図6にも示すように長尺状の部材である。長尺レバー部101は、給紙ローラー32の両側方において揺動可能に支持されている。長尺レバー部101の下端部1011は、前記各ローラー31〜33の回転軸と平行な揺動支持軸106が設けられている。この揺動支持軸106は、装置本体の本体フレーム(不図示)に回動自在に支持されている。長尺レバー部101の上端が自由端部である。
連結部材102は、本体フレーム(不図示)に回動支点1021で揺動可能且つ給紙カセット28の挿抜方向にスライド可能に支持されている。連結部材102は、給紙カセット28の側壁286の近傍に設置された矩形状の枠体であり、給紙カセット28が装着された状態において給紙カセット28の側壁286に連結する。具体的には、図3、図6に示されるように、連結部材102は、その矩形を構成する4辺のうちの1辺が給紙カセット28の側壁286に平行となる姿勢で、給紙カセット28の側壁286の近傍に配設されている。連結部材102は、当接部1023で給紙カセット28の側壁286に形成された延設部287の係合部2871と当接して係合する。これにより、連結部材102は、給紙カセット28に連結されている。よって、給紙カセット28が引き抜かれると、連結部材102も引き抜き方向に引っ張られる。また、後述するように、連結部材102は、給紙カセット28との係合が解除可能となっている。
前述したように、給紙カセット28がカセット収容部30から引き抜かれる過程において、ガイド溝部501の前述した形状により給紙カセット28が水平状態から傾斜状態に遷移する状況が生じる。給紙カセット28と連結部材102との係合は、給紙カセット28が前記傾斜状態になるまでは解除されず、給紙カセット28が前記傾斜状態になると解除される。このときの連結部材102の位置が係合解除位置である。長尺レバー部101は、給紙カセット28の引き抜きに伴い、上端がその引き抜き方向へ傾倒する。そして、長尺レバー部101は、後述するように、初期位置から一定量回動すると前記初期位置に向けて付勢される状態となるため、給紙カセット28と連結部材102との係合が解除されると、長尺レバー部101は、その付勢力により前記初期位置に復帰する。前記初期位置は、挿抜方向両端部1023、1024のうち給紙カセット28から遠い方の端部1024に長尺レバー部101が当接する態様で連結部材102が揺動支持軸106を回転支点として傾倒する位置である。
給紙カセット28がカセット収容部30に挿入される場合、給紙カセット28における延設部287の係合部2871とガイド溝部501との係合に従う姿勢で給紙カセット28がカセット収容部30に挿入されていく。ここで、図7(A)に示されるように、給紙カセット28における延設部287の係合部2871には、延設部287の先端に向かって下方に傾斜する傾斜面2871Aが形成されている。したがって、給紙カセット28の全ての突起283、284が水平ガイド溝部5011内に進入して給紙カセット28が水平姿勢になり給紙カセット28が一定量移動すると、この傾斜面2871Aが連結部材102に当接する。ここで、連結部材102は、挿抜方向両端部1023、1024のうち給紙カセット28から遠い方の端部1024がコイルスプリング40により給紙カセット28と反対側の斜め上方に引張状態で常時引っ張られ、連結部材102は、回動支点1021と反対側の端部1023が下向きに付勢される。よって、連結部材102は、端部1023が給紙カセット28の係合部2871に押し付けられる。したがって、図7(B)に示されるように、給紙カセット28における係合部2871の傾斜面2871Aが連結部材102から押圧力を受けつつ連結部材102と摺接しながら移動する。そして、図7(C)に示されるように、給紙カセット28の延設部287の係合部2871の位置が連結部材102の枠内の中空部分に達すると、その係合部2871が連結部材102の枠内の中空部分に嵌まり込み、連結部材102と給紙カセット28とが係合する。
長尺レバー部101は、この連結部材102の枠内の中空部分を挿通する。連結部材102は、長尺レバー部101の揺動支持軸106よりやや上方の位置で長尺レバー部101と係合する。したがって、給紙カセット28の引き抜きに伴う連結部材102の移動により、長尺レバー部101は、揺動支持軸106を揺動中心として給紙カセット28の引き抜き方向側へ(図4の反時計回りに)揺動する。このように、長尺レバー部101は、カセット収容部30に対して給紙カセット28が抜き出されるときに加えられる引き抜き方向の引き抜き力を給紙カセット28の挿入方向端部から受け取り、給紙カセット28の引き抜き力を受けて給紙カセット28と連結された状態で引き抜き方向へ揺動される。
扇形レバー部103及び被押圧レバー部104は、給紙カセット28が引き抜かれるときに、長尺レバー部101の揺動により生じた動力を、ホルダー34を給紙カセット28内のシートに繰り出しローラー31が接触する位置から離間する位置へ変位させる方向の力に変換してホルダー34に伝達するためのものである。扇形レバー部103及び被押圧レバー部104は、図3に示されるように、長尺レバー部101に対して揺動支持軸106の軸方向側方の位置であってシートの通過領域W1から外れた予め定められた位置に設けられている。
扇形レバー部103は、略扇形の板状体である。扇形レバー部103は、その板面の法線が揺動支持軸106と平行となる向きで、長尺レバー部101の揺動支持軸106に取り付けられている。したがって、扇形レバー部103は、長尺レバー部101の揺動に連動する。
扇形レバー部103は、図4に示されるように、揺動支持軸106の軸方向における平面視(図3の矢印Cの方向から見た平面視)で、円弧部1031と、円弧部1032と、直線部1033と、直線部1034と、直線部1035とを有する。直線部1033は、円弧部1031の一方端に交差する。直線部1034は、円弧部1032の一方端に交差する。直線部1035は、直線部1033の他方端と円弧部1032の他方端とに交差する。直線部1033の他方端と直線部1034の他方端とは交差する。扇形レバー部103は、この交差部分の近傍において揺動支持軸106と連結されている。
円弧部1031の径は、直線部1033の長さと同一である。円弧部1032の径は、直線部1034の長さと同一である。円弧部1031の径(直線部1033の長さ)は、円弧部1032の径(直線部1034の長さ)より短い。円弧部1031は、円弧部1032より給紙カセット28側に位置する。
被押圧レバー部104は、ホルダー34と一体化された板状体である。したがって、被押圧レバー部104が揺動すると、ホルダー34が被押圧レバー部104と同じ揺動方向に揺動する。
被押圧レバー部104は、扇形レバー部103の円弧部1031及び円弧部1032に対向する。具体的には、給紙カセット28の装着状態では、被押圧レバー部104の先端は、円弧部1031に非接触状態で対向している。そして、給紙カセット28の引き出しによる長尺レバー部101の揺動に伴って扇形レバー部103が給紙カセット28側に揺動すると、被押圧レバー部104は、段差面である直線部1035に当接する。被押圧レバー部104は、直線部1035から押圧力を受け、被押圧レバー部104が給紙カセット28側への揺動を開始する。そして、扇形レバー部103がさらに所定角度だけ揺動すると、被押圧レバー部104は、扇形レバー部103の円弧部1032に乗り上げる。これ以降、被押圧レバー部104は更なる揺動のための押圧力を扇形レバー部103から受けなくなるため、被押圧レバー部104の揺動は停止する。なお、扇形レバー部103は、被押圧レバー部104と扇形レバー部103の円弧部1032とが摺接しながらさらに揺動する。
被押圧レバー部104が扇形レバー部103の直線部1035から押圧力を受けて給紙カセット28側に揺動すると、揺動支持軸341が図4において反時計回りに回動する。これに伴い、ホルダー34は、揺動支持軸341を揺動中心として、繰り出しローラー31が上方に移動するように揺動する。このとき、繰り出しローラー31が給紙カセット28内の最上位置のシートと非接触状態となる。
このように、扇形レバー部103は、長尺レバー部101の揺動により生じた動力を被押圧レバー部104に伝達し、被押圧レバー部104に一体化されたホルダー34を前記第1揺動位置から前記第2揺動位置へ変位させる。
以上のように、伝達機構100は、カセット収容部30に対して給紙カセット28が引き抜かれるときに加えられる引き抜き方向の引き抜き力を給紙カセット28の前記挿入方向端部から受け取る。そして、伝達機構100は、ホルダー34を、繰り出しローラー31の前記第1揺動位置に対応する位置から前記第2揺動位置に対応する位置へ変位させる方向の力に変換してホルダー34に伝達する。
図5に示されるように、伝達機構200は、給紙ローラー32によるシート搬送方向に対して両側方に設置されている。伝達機構200は、前述の長尺レバー部101と、ガイドレバー部201と、突起202とを有する。本実施形態では、伝達機構200を構成する各構成要素は、カセット収容部30の奥部、詳細には、カセット収容部30に給紙カセット28が装着された状態で、側壁286よりも挿入方向側のスペースに配置されている。ガイドレバー部201は、本発明の伝達片に相当する。突起202は、本発明の突起に相当する。
ガイドレバー部201は、扇形を有する板状体である。ガイドレバー部201は、ガイドレバー部201の板面の法線が揺動支持軸106と平行となる向きで長尺レバー部101に固着されている。ガイドレバー部201は、長尺レバー部101に固着されているため長尺レバー部101とともに揺動する。また、扇形レバー部103は、揺動支持軸106を介して長尺レバー部101と一体化されているため、ガイドレバー部201と扇形レバー部103とは一体的に揺動する。
図6に示されるように、ガイドレバー部201は、係合溝部2011を有する。係合溝部2011は、傾斜溝部2012と円弧状溝部2013とを有する。傾斜溝部2012は、円弧状溝部2013より給紙カセット28側に位置する。具体的には、傾斜溝部2012は、給紙カセット28側から長尺レバー部101側に向かって斜め下方に延びる短尺の溝部である。円弧状溝部2013は、傾斜溝部2012に連続し、給紙カセット28側から長尺レバー部101側に向かって円弧状を延びる溝部である。この円弧状溝部2013の円弧の中心は、長尺レバー部101の揺動支持軸106である。このように傾斜溝部2012と円弧状溝部2013とでは、長尺レバー部101の揺動支持軸106からの距離が異なる。係合溝部2011は、本発明の係合溝部に相当する。
突起202は、ホルダー35の回転軸方向両側壁の外側面から立設し、ガイドレバー部201の係合溝部2011に挿通する。突起202は、長尺レバー部101が初期位置に位置するときには傾斜溝部2012内に位置する。そして、突起202は、長尺レバー部101及びガイドレバー部201の揺動に伴って傾斜溝部2012から円弧状溝部2013に相対移動する。突起202は、長尺レバー部101が前記初期位置から微小角度(以下、第1揺動角度という)だけ揺動される区間の間のみ傾斜溝部2012内に位置する。突起202は、長尺レバー部101の揺動角度が前記微小角度以上となる区間においては、円弧状溝部2013内に位置する。
ここで、揺動支持軸106の位置から突起202の位置までの距離を第1距離という。揺動支持軸106の位置から円弧状溝部2013の上側のエッジ2013Aまでの距離を第2距離という。
前述したように、分離ローラー33は、コイルスプリング36によって給紙ローラー32側へ弾性状態で常時付勢されている。一方、給紙カセット28がカセット収容部30に挿入されているか又は完全に抜き出されている通常の状態では、突起202は、傾斜溝部2012のエッジには当接しない。この状態におけるホルダー35の位置が当接位置に相当する。
この通常時における第1距離は第2距離よりも長い。したがって、ガイドレバー部201の揺動により突起202が円弧状溝部2013に進入すると、突起202は、この円弧状溝部2013の上側のエッジ2013Aに当接し、且つ、そのエッジ2013Aから揺動支持軸106に向かう方向の力を受けて揺動支持軸106側に移動する。したがって、突起202ひいてはホルダー35は、コイルスプリング36の付勢力に抗して揺動支持軸106側に押し下げられる。これにより、ホルダー35に支持されている分離ローラー33が給紙ローラー32から離間される。この状態におけるホルダー35の位置が離間位置に相当する。
円弧状溝部2013は、所定の長さを有する。所定の長さとは、長尺レバー部101が給紙ローラー32と分離ローラー33とのニップ位置よりさらに給紙カセット28側に揺動可能となるような長さである。これにより、給紙ローラー32と分離ローラー33とによるニップから解放されたシートに長尺レバー部101に当接し、長尺レバー部101でそのシートが給紙カセット28側に押し戻される。円弧状溝部2013の上側のエッジ2013Aは、カム部を構成する。
このように、伝達機構200は、カセット収容部30に対して給紙カセット28が抜き出されるときに加えられる引き抜き方向の引き抜き力を給紙カセット28の前記挿入方向端部から受け取る。伝達機構200は、分離ローラー33が給紙ローラー32側へ弾性状態で常時付勢されているときのホルダー35の位置(前記当接位置)から分離ローラー33が給紙ローラー32から所定量離間するときのホルダー35の位置(前記離間位置)へホルダー35を変位させる方向の力に変換してホルダー35に伝達する。
次に、給紙カセット28の挿抜に伴う伝達機構100及び伝達機構200の動作について説明する。給紙カセット28がカセット収容部30に挿入されている状態であるものとする。
給紙カセット28がカセット収容部30から引き出しが開始されると、給紙カセット28に連結された連結部材102が給紙カセット28とともに引き抜き方向に移動する。この連結部材102の移動に伴い、長尺レバー部101は、揺動支持軸106を揺動中心として給紙カセット28側に揺動する。
伝達機構100においては、長尺レバー部101が給紙カセット28側に揺動すると、長尺レバー部101に固着された扇形レバー部103も給紙カセット28側に揺動する。この扇形レバー部103の移動に伴い、被押圧レバー部104は、扇形レバー部103の円弧部1031を摺接し、やがて直線部1035に当接する。被押圧レバー部104は、段差面となる直線部1035に当接すると、その直線部1035から押圧力を受け、被押圧レバー部104が給紙カセット28側に揺動する。このとき、被押圧レバー部104と連結されているホルダー34は、ホルダー34を支持する揺動支持軸341を揺動中心として、繰り出しローラー31が上方に移動するように揺動する。
扇形レバー部103がさらに揺動して被押圧レバー部104が扇形レバー部103の円弧部1032に乗り上げると、被押圧レバー部104の揺動は停止する。このとき、繰り出しローラー31が給紙カセット28内の最上位置のシートと非接触状態となる。
このように、給紙カセット28の引き抜きと同時に繰り出しローラー31が上方へ移動される。よって、給紙カセット28が勢いよく引き出されたとしても、その引き抜きによって移動する最上位置のシートに繰り出しローラー31が接触する期間がほとんど発生しない。そのため、シートが繰り出しローラー31との摩擦力によってカセット収容部30に取り残されるという事態が生じるのを回避することができる。
給紙カセット28における延設部287の係合部2871とガイド溝部501との係合により、給紙カセット28が傾斜する。これにより、給紙カセット28と連結部材102との係合が解除され、給紙カセット28がカセット収容部30から抜き出される。
なお、長尺レバー部101は、前記初期位置に向けて付勢されているため、給紙カセット28と連結部材102との係合が解除されると、長尺レバー部101は、その付勢力により前記初期位置に復帰する。
一方、伝達機構200においては、長尺レバー部101が揺動すると、この長尺レバー部101と固着されたガイドレバー部201も給紙カセット28側に揺動する。このガイドレバー部201の揺動に伴い、ガイドレバー部201に形成されている係合溝部2011に挿通するホルダー35の突起202が係合溝部2011内を相対移動する。
長尺レバー部101の揺動角度が前記第1揺動角度に達するまで、突起202は、傾斜溝部2012内に位置する。この区間では、長尺レバー部101の揺動は所謂遊びの揺動となる。この遊びの揺動区間は、突起202が円弧状溝部2013の上側のエッジ2013Aに当接しないようにするためのものであり、微小な揺動区間である。したがって、長尺レバー部101の揺動が開始するのとほぼ同時に突起202が円弧状溝部2013の上側のエッジ2013Aに当接するものとみなすことができる。
長尺レバー部101の揺動角度が前記第1揺動角度を超えると、突起202は、円弧状溝部2013に進入する。突起202は、円弧状溝部2013に位置している間、この円弧状溝部2013の上側のエッジ2013Aに当接し、且つ、そのエッジ2013Aから揺動支持軸106に向かう方向の力を受ける。したがって、突起202ひいてはホルダー35は、コイルスプリング36の付勢力に抗して揺動支持軸106側に押し下げられる。このとき、突起202は、長尺レバー部101が初期位置に戻るようにガイドレバー部201を押し返す。すなわち、長尺レバー部101は、初期位置から一定量回動すると、前記初期位置に向けて付勢される。これにより、ホルダー35に支持されている分離ローラー33が給紙ローラー32から離間される。よって、給紙カセット28の引き抜き時において給紙ローラー32と分離ローラー33との間にシートがニップされている場合に、そのシートがこれらのローラー32,33によるニップから解放される。
これにより、給紙ローラー32と分離ローラー33との間にシートがニップされたまま給紙カセット28が引き出されることにより、給紙カセット28のシートがカセット収容部30に取り残されるのを防止することができる。
長尺レバー部101が更に揺動され、その揺動角度が予め定められた第2揺動角度に達すると、長尺レバー部101は、給紙ローラー32と分離ローラー33とによるニップ位置に達する。そして、長尺レバー部101の揺動角度が前記第2揺動角度を超えると、長尺レバー部101は、前記ニップ位置より給紙カセット28側に揺動する。これにより、給紙ローラー32と分離ローラー33とによるニップから解放されたシートが長尺レバー部101により給紙カセット側28に押し戻される。
これにより、給紙ローラー32と分離ローラー33とによるニップから解放されたシートが給紙カセット28からはみ出た状態で給紙カセット28が引き出されるのを防止し、給紙カセット28に確実に収容された状態で給紙カセット28が引き出される。
そして、本実施形態では、給紙カセット28が引き抜かれる際に、分離ローラー33を給紙ローラー32から離間させる機能と、給紙ローラー32と分離ローラー33とによるニップから解放されたシートを給紙カセット側28に押し戻す機能と、同じ部材(長尺レバー部101)の動きに基づいて実現される。よって、シート給送装置7、ひいては画像形成装置1を従来の構成に比して小型化することができる。
特に本実施形態では、伝達機構100及び伝達機構200を給紙カセット28における挿入方向端部の近傍に集約して配置したので、給紙カセット28が引き出されると速やかに繰り出しローラー31をシートから離間させたり、分離ローラー33を給紙ローラー32から離間させたりするための構成が大型化するのを回避することができる。すなわち、装置の大型化を回避しつつ、給紙カセット28の引き抜き動作に連動して繰り出しローラー31の離間動作を行わせる連動応答性を向上させて、給紙カセット28内のシートがカセット収容部30に取り残されることなく取り出すことができる。また、取っ手の無い給紙カセット28にも採用することができる。
伝達機構100及び伝達機構200の構成は、前記の構成に限定されず、給紙カセット28の抜き出し時に係合部2871と当接部1023とが係合することによりホルダー34,35が変位すれば、どのような力の伝達構造であってもよい。