JP6107133B2 - 蛋白質吸着抑制用表面構造体、マイクロ流路、及びマイクロチップ - Google Patents

蛋白質吸着抑制用表面構造体、マイクロ流路、及びマイクロチップ Download PDF

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Description

本発明は、蛋白質吸着抑制用表面構造体、マイクロ流路、及びマイクロチップに関する。
液体中の蛋白質は、基材の表面に非特異的に吸着しやすいことが知られている。このような蛋白質の非特異的吸着は、例えば、蛋白質の分析における分析結果にばらつきの原因や、例えば、薬液バッグ、輸液バッグ、医療用チューブ等における有効成分量の低下などの原因となる。
近年、化学・医療・バイオ等の分野において、μ−TAS(Micro Total Analysis System)を用いた、ゲノム解析や、化学分析等が行われている。μ−TASとは、数mm〜数cm程度の基板上に、様々なマイクロ流路と、電極等の各種デバイスが集積されたマイクロチップである。μ−TASを用いることにより、一連の化学操作を短時間に効率的に行うことができ、微量の蛋白質でも検出等が可能となる。一方、微量の蛋白質を取り扱う場合、マイクロ流路表面における蛋白質の吸着による影響を受けやすいという問題があった。このような場合、例えば、定量対象の物質の流れが妨げられ、センサの感度が低下するという問題が発生する。
基材表面への蛋白質吸着を抑制する手法としては、基材表面を薬液により化学的に処理する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、疎水性微細シリカ化合物、フルオロアルキル基若しくはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物、又はこれらの複合化合物が塗設された微細流路を備えたマイクロチップが開示されている。
また、特許文献2には、基材表面の少なくとも一部が、特定のポリビニルアルコール−ポリ酢酸ビニル共重合体によって親水化処理された分画装置が開示されている。
一方、特許文献3には培養する細胞よりも相当直径の小さい複数の突起物を有する培養面を有する特定の細胞培養容器が開示されている。特許文献3によれば、剥離時の細胞への損傷を防ぎ、栄養物の運搬、老廃物排出を促進し、培養効率が改善できると記載されている。
国際公開第2009/145022号パンフレット 特許第4910700号公報 特許第4918755号公報
上記のような薬液による表面処理では、マイクロチップ等の使用時に薬液が溶出して試料を汚染するとともに、経時的に蛋白質吸着抑制効果が低下するという問題があった。また、薬液による表面処理の製造工程が必要であり、製造コストや廃液処理等の問題があった。そのため、薬液を用いることなく蛋白質の吸着を抑制する手法が求められている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、薬液を用いることなく蛋白質吸着を抑制することが可能な蛋白質吸着抑制用表面構造体、マイクロ流路、及びマイクロチップを提供することを目的とする。
本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体は、基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸構造体を有し、
前記微小突起は、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、
隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであり、
前記隣接する微小突起間の距離の平均値をdAVG、前記微小突起の付け根位置の断面の直径の平均値をRAVGとしたときに、RAVGがdAVGの90〜100%であり、
前記微小突起群が、頂点を複数有する微小突起を含み、
前記微細凹凸構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で45°以下である、蛋白質吸着抑制用表面構造体であることを特徴とする。
本発明に係るマイクロ流路は、液体を流すためのマイクロ流路であって、マイクロ流路用基材の当該マイクロ流路を形成する少なくとも一部の表面に、複数の微小突起が配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸構造体を有し、
前記微小突起は、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、
隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであり、
前記隣接する微小突起間の距離の平均値をdAVG、前記微小突起の付け根位置の断面の直径の平均値をRAVGとしたときに、RAVGがdAVGの90〜100%であり、
前記微小突起群が、頂点を複数有する微小突起を含み、
前記微細凹凸構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で45°以下であることを特徴とする。
本発明は、前記本発明に係るマイクロ流路を備えたマイクロチップを提供する。
本発明によれば、薬液を用いることなく蛋白質吸着を抑制することが可能な蛋白質吸着抑制用表面構造体、マイクロ流路、及びマイクロチップを提供することができる。
図1は、本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体の一例を模式的に示す、概略断面図である。 図2は、本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体の別の一例を模式的に示す、概略断面図である。 図3は、本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体の別の一例を模式的に示す、概略断面図である。 図4は、本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体の別の一例を模式的に示す、概略断面図である。 図5は、微小突起の形状の一例を模式的に示す、概略断面図である。 図6は、ドロネー図の一例を示す図である。 図7は、隣接突起間距離の計測に供する度数分布図である。 図8は、微小高さの説明に供する度数分布図である。 図9は本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体の製造方法の一例を示す概略図である。 図10は、本発明に係るマイクロ流路の一例を模式的に示す、概略断面図である。 図11は、本発明に係るマイクロチップの一例を模式的に示す概略図である。
以下、本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体、マイクロ流路、及びマイクロチップについて順に説明する。
[蛋白質吸着抑制用表面構造体]
本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体は、基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸構造体を有し、
前記微小突起は、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、
隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであることを特徴とする。
上記本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体について図を参照して説明する。図1は、本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す蛋白質吸着抑制用表面構造体10は、基材1の一面側に、複数の微小突起3が配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸構造体2を有する。
前記微小突起3は、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、隣接する微小突起間の距離dの平均が50〜500nmとなっている。
微細凹凸構造体2がこのような構造を有することにより、蛋白質が微小突起3の表面に接触した場合であっても、その接触面積が小さくなり、吸着しにくくなるか、或いは、吸着した場合であっても容易に脱着するものと推測される。また、突起間の距離dの平均を50〜500nmとすることにより、蛋白質が突起間に入り込みにくくなるものと推測される。これらの結果、優れた蛋白質吸着抑制効果を発現する。
図2〜図4はそれぞれ、本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体10の別の一例を模式的に示す断面図である。図2や図3に示されるように微細凹凸構造体2は隣接する微小突起3同士が密接するように配置されていてもよい。このように隣接する微小突起3同士が密接する場合には、蛋白質が微小突起間により入り込みにくくなり、微小突起の頂部が有する曲面とのみ接触することとなるため、より蛋白質吸着抑制効果に優れている。
また、本発明の蛋白質吸着抑制用表面構造体10は、図1〜3のように、微細凹凸構造体2が基材1とは別の材料からなる別層である微細凹凸層に形成されていてもよい。或いは、図4のように、本発明の蛋白質吸着抑制用表面構造体10は、基材1自体が微細凹凸構造体2を有するものであってもよい。
<微細凹凸構造体>
微細凹凸構造体は、複数の微小突起が配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸形状を有する。微小突起の形状は、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有する形状である。
突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなるとは、微小突起の深さ方向と直行する水平面で切断したと仮定したときの水平断面の断面積が、基材平面側、即ち微小突起の突起付け根位置から頂部に近づくに従い連続的に暫時減少することをいい、微小突起の突起付け根位置から、微小突起の頂部に向かうに従って、徐々に先細るような形状を表わす。また、頂部に曲面を有するとは、頂部に、球型、回転楕円体型、回転放物面型、釣鐘型等の曲面形状を有するか、又は、これらの曲面形状に近似し得る曲面形状を有することをいう。このような微小突起の形状の具体例としては、例えば、半円状、半楕円状、三角形状、放物状、釣鐘状等の垂直断面形状を有するものが挙げられるが、突起の頂部に下に凸の曲面、即ち、突起付け根位置側に凸の曲面を有するものであってもよい。
微小突起が頂部に曲面を有することにより、頂部が平面であるものと比較して、蛋白質の接触面積をより小さくすることができ、蛋白質の吸着抑制効果に優れている。蛋白質が入り込みにくい点から、中でも、頂部の曲率半径が50nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましい。一方、微小突起の成型容易性の点からは、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。
なお、本発明において頂部とは、頂点及びその近傍を示す概念であり、微小突起の頂点から、後述する微小突起の高さHの10%程度の長さの範囲をいう。
複数ある微小突起は同一の形状であっても、異なる形状であってもよい。
また、前記微細凹凸構造体を構成する微小突起群の中には、頂点を複数有する微小突起(以下、「多峰性の微小突起」と称する場合がある。)が含まれていても良い。なお、多峰性の微小突起との対比により、頂点が1つのみの微小突起を「単峰性の微小突起」と称する場合がある。また多峰性の微小突起、単峰性の微小突起に係る各頂点を形成する各凸部を、適宜、「峰」と称する。
本発明においては、前記微小突起群の中に多峰性の微小突起を含むことにより、蛋白質の接触面積をより小さくできるので、蛋白質吸着抑制効果の向上の点から好ましい。
図5は、多峰性の微小突起の説明に供する断面図(図5(a))、斜視図(図5(b))、平面図(図5(c))である。なお、この図5は、理解を容易にするために模式的に示す図であり、図5(a)は、連続する微小突起の頂点を結ぶ折れ線により断面を取って示す図である。図5において、xy方向は、基材1の面内方向であり、z方向は微小突起の高さ方向である。図5(a)に示す蛋白質吸着抑制用表面構造体において、単峰性の微小突起3は、例えば、基材1より離れて頂点に向かうに従って徐々に断面積(高さ方向に直交する面(図2においてXY平面と平行な面)で切断した場合の断面積)が小さくなって、頂点が1つにより作製される。一方、多峰性の微小突起としては、例えば、複数の微小突起が結合したかのように、頂部に溝が形成され、頂点が2つになったもの(3A)、頂点が3つになったもの(3B)、さらには頂点が4つ以上のもの(図示略)等が挙げられる。多峰性の微小突起は、頂部が複数の峰に***している微細構造の他、図5(b)、図5(c)に例示されるように、頂部に下に凸の曲面を有する凹部が存在する微細構造を有していても良い。
前記微細凹凸構造体に存在する全微小突起中における多峰性の微小突起の個数の比率は、特に限定されないが、前記効果を発揮する点からは、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上である。
本発明において隣接する突起間の距離d、及び、微小突起の高さHは以下の方法により測定される。
(1)先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と称する。)を検出する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunary Diagram)を作成する。ここでドロネー図とは、各極大点を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。図6は、ドロネー図(白色の線分により表される図である)を原画像と重ね合わせた図である。
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離の度数分布を求める。図7は、図6のドロネー図から作成した度数分布のヒストグラムである。なお、突起の頂部に溝状等の凹部が存在したり、あるいは頂部が複数の峰に***している場合は、求めた度数分布から、このような突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に***している微細構造に起因するデータを除去し、突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を作成する。
具体的には、突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に***している微小突起(多峰性の微小突起)に係る微細構造においては、このような微細構造を備えていない微小突起(単峰性の微小突起)の場合の数値範囲から、隣接する極大点間の距離が明らかに大きく異なることになる。この特徴を利用して対応するデータを除去することにより突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を検出する。より具体的には、例えば微小突起(群)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する単峰性の微小突起を選んで、その隣接する極大点間の距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接する極大点間の距離の平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。図7の例では、隣接する極大点間の距離が56nm以下のデータ(矢印Aにより示す左端の小山)を除外する。なお図7は、このような除外する処理を行う前の度数分布を示すものである。
(5)このようにして求めた隣接する極大点間の距離は、隣接する突起間の距離dに相当するものであり、この度数分布から隣接する突起間の距離の平均値dAVGを求めることができる。また、このようにして得られる度数分布を正規分布とみなすことにより標準偏差σを求めることができる。図6の例では、平均値dAVG=158nm、標準偏差σ=38nmとなった。
当該微小突起が一定周期で規則正しく配置されている場合、隣接する前記微小突起間の距離の平均値dAVGは、微小突起配列の周期pと一致するため、dAVG=pとなる。
本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体においては、蛋白質が突起間の隙間に入り込みにくく、蛋白質の吸着が抑制される点から、隣接する前記微小突起間の距離の平均値dAVGが50〜500nmの範囲内であり、中でも、50〜250nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。
また、本発明においては、隣接する微小突起間の距離dがある程度ばらついていること、即ち、各微小突起が、ランダムに配置されていることが、蛋白質の吸着が抑制される点から好ましい。図6の例で示される通り、微小突起がランダムに配置されることにより、微小突起がより密に配置されたり、大きさにばらつきがある蛋白質の吸着抑制を効率的に行え、蛋白質の吸着抑制効果が向上するためである。具体的には、上記の方法により求められた隣接する突起間の距離dの標準偏差σが、隣接する微小突起間の距離の平均値dAVGの10〜40%であることが好ましく、15〜35%であることがより好ましく、20〜30%であることが更により好ましい。
また、本発明においては、隣接する微小突起が密接していることが好ましい。本発明において密接とは、隣接する微小突起の付け根位置が接しているか、接しているほど近いことをいい、具体的には、微小突起の付け根位置の断面の直径の平均値をRAVGとしたときに、RAVGがdAVGの80〜105%であることが好ましく、90〜100%であることがより好ましい。なお、上記RAVGは、微小突起の付け根位置の断面が円であればその直径をR、円以外であれば、断面の幅の最大値と最小値とを求め、その平均値をRとして、平均値を求めたものである。
また、同様の手法を適用して突起の高さを定義する。この場合、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。図8は、このようにして求められる突起付け根位置を基準(高さ0)とした突起高さHの度数分布のヒストグラムを示す図である。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値HAVG、標準偏差σを求めることができる。図8の例では、平均値HAVG=178nm、標準偏差σ=30nmである。なお図8に示す突起高さHのヒストグラムにおいて、多峰性の微小突起の場合は、頂点を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが混在することになる。そこでこの場合は麓部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。
本発明の蛋白質吸着抑制用表面構造体において、微小突起の高さの平均値HAVGは特に限定されない。中でも、微小突起の高さの平均値HAVGが40〜1200nmであることが好ましく、50〜1000nmであることがより好ましい。
また、微小突起のアスペクト比(平均突起高さHAVG/平均隣接突起間隔dAVG)が0.8〜2.5であることが好ましく、更に、0.8〜2.1であることがより好ましい。アスペクト比が上記下限値以上であれば、蛋白質の接触面積をより小さくし易く、上記上限値以下であれば、微小突起が倒れ込みにくい。
また、微小突起は高さにばらつきを有していてもよい。高さにばらつきがある場合には、大きさにばらつきのある蛋白質の吸着抑制を効果的に行うことが期待できる。微小突起の高さのばらつきは特に限定されないが、上記の方法により求められた微小突起の高さHの標準偏差σが、突起高さの平均値HAVGの2〜30%であることが好ましく、5〜25%であることがより好ましく、10〜20%であることが更により好ましい。
本発明において、前記微細凹凸構造体を、基材とは別の材料からなる別層である微細凹凸層に形成する場合、当該微細凹凸層の厚みは、特に限定されないが、通常3〜30μmである。なお、この場合の微細凹凸層の厚みとは、微細凹凸層の基材側の界面から、最も高さの高い微小突起の頂部の高さまでの基材平面に対する垂線方向の距離を意味する(図3中のT)。
また、本発明において、前記微細凹凸構造体は、基材の両面に形成されていても良い。
本発明の蛋白質吸着抑制用表面構造体は、前記微細凹凸構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で45°以下であることが好ましく、20°以下であることが特に好ましい。これにより、液体が蛋白質吸着抑制用表面構造体の表面に濡れ広がり易くなるため、液体が均一に広がりやすく、流路内壁を親水加工することにより、流路を形成した際に、流体の流れを制御し、流速が安定し易い効果も有する。また、前記微細凹凸構造体の表面における純水の静的接触角は、特に限定されないが、通常3°以上である。
なお、本発明において静的接触角は、測定対象物の表面に1.5μLの純水を滴下し、着滴10秒後に、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出するθ/2法に従って測定した接触角とする。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いることができる。
また、前記静的接触角は、微細凹凸構造体を形成する材料、微細凹凸構造体の凹凸形状等を変更することにより、調整することができる。
<微細凹凸構造体の材料>
当該微細凹凸構造体の材料は特に限定されず、樹脂製の他、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等の無機材料製、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属製等、用途に応じて適宜選択して用いることができる。
中でも、樹脂を含有してなるものであることが好ましく、更に樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。微細凹凸構造体の形成に用いられる樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。なお、本発明において樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
前記樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を使用することができる。また、非反応性重合体を含有してもよい。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
前記樹脂としては、中でも成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。本発明に用いられる電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体又は重合体を適宜混合したものであり、適宜重合開始剤を用いて電離放射線により硬化されるものである。また、本発明において成形性に優れるとは、所望の形状に精度良く成形できることをいう。
中でも、本発明に用いられる樹脂組成物は、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系の電離放射線硬化性樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、更に、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するアクリレート系の電離放射線硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
前記樹脂組成物は、さらに必要に応じて、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。
また、本発明に用いられる微細凹凸構造体の材料は、平坦な膜としたときの表面における、純水の静的接触角がθ/2法で90°以下であることが好ましい。
<基材>
蛋白質吸着抑制用表面構造体に用いられる基材は、特に限定されず、樹脂製、無機材料製、金属製等、用途に応じて適宜選択して用いることができる。
樹脂製の基材の材質としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、フルオロカーボン系樹脂等を挙げられる。
また、無機材料としては、例えば、ソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等が挙げられる。
前記基材の厚みは、用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmであり、前記基材は、ロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。
本発明に用いられる基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されて
もよい。
また、図1〜3に示すように、微細凹凸構造体が基材とは別の材料により形成される場合は、基材と当該微細凹凸構造体との密着性や、塗工適性、表面平滑性等の基材表面性能を向上させるためのプライマー層を基材上に形成してもよい。このプライマー層は、基材および微細凹凸構造体との双方に密着性を有するものの中から選択して用いることができる。
<蛋白質吸着抑制用表面構造体の製造方法>
本発明の蛋白質吸着抑制用表面構造体の製造方法は、上記特定の形状を形成できる従来公知の方法の中から、用いる材質などによって適宜選択すればよい。
例えば、図1〜3の例では、(A)基材上に、微細凹凸構造体形成用の硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、所望の微細凹凸形状を有する微細凹凸構造体形成用原版の凹凸形状を、前記硬化性樹脂組成物の塗膜に賦型した後、当該硬化性樹脂組成物を硬化させることにより微細凹凸構造体を形成し、前記微細凹凸構造体形成用原版から剥離する方法や、(B)基材上に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱して当該熱可塑性樹脂を液状とした後、所望の微細凹凸形状を有する微細凹凸構造体形成用原版の凹凸形状を、前記熱可塑性樹脂組成物の塗膜に賦型し、当該熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に冷却して、前記原版を剥離する方法等が挙げられる。前記硬化性樹脂組成物を硬化させる方法は、当該硬化性樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
また、図4に示すように、基材の表面に微細凹凸構造体を賦型して、基材と微細凹凸構造体とを単層構造としてもよい。
前記微細凹凸構造体形成用原版としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製であっても良いが、通常、金属製が好適に用いられる。耐変形性および耐摩耗性に優れているからである。
前記微細凹凸構造体形成用原版の微細凹凸形状を有する面は、特に限定されないが、酸化されやすく、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。
前記微細凹凸構造体形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は各種の中間層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に凹凸形状を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
前記微細凹凸構造体形成用原版に微細凹凸形状を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によって前記アルミニウム層の表面に複数の微細孔を形成する陽極酸化工程と、前記アルミニウム層をエッチングすることにより前記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、前記アルミニウム層を前記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより前記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。
微細な凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。前記陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な孔をそれぞれ目的とする深さ及び微小突起形状に対応する形状に作製することができる。
このようにして、前記微細凹凸構造体形成用原版は、深さ方向に徐々に断面積が小さくなり、先端部が曲面を有する多数の微細孔が密に作製される。当該微細凹凸構造体形成用原版を用いて製造される微細凹凸構造体には、前記微細孔に対応して突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有する微細突起が複数配置された微小突起群を備えた微細凹凸構造体が形成される。
また、前記微細凹凸構造体形成用原版の形状としては、所望の形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、平板状であっても良く、ロール状であっても良いが、前記微細凹凸構造体形成用原版は、生産性向上の観点からは、ロール状の金型(以下、「ロール金型」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。
本発明において用いられるロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微細な凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
図9に、微細凹凸構造体形成用の樹脂組成物として光硬化性樹脂組成物を用い、微細凹凸構造体形成用原版としてロール金型を用いた場合に、基材上に微細凹凸構造体を形成する方法の一例を示す。
図9に示す方法では、樹脂供給工程において、ダイ11により帯状フィルム形態の基材1に、未硬化で液状の光硬化性樹脂組成物を塗布し、微小突起形状の受容層2’を形成する。なお光硬化性樹脂組成物の塗布については、ダイ11による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ13により、微細凹凸層形成用原版であるロール金型12の周側面に基材1を加圧押圧し、これにより基材1に受容層2’を密着させると共に、ロール金型12の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に、受容層2’を構成する光硬化性樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により光硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより基材1の表面に微細凹凸構造体2を作製する。続いて剥離ローラ14を介してロール金型12から、硬化した微細凹凸構造体2と一体に基材1を剥離する。必要に応じてこの基材1に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して蛋白質吸着抑制用表面構造体10を作製する。これにより蛋白質吸着抑制用表面構造体は、ロール材による長尺の透明基材1に、微細凹凸構造体形成用原版であるロール金型12の周側面に作製された微細凹凸形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
また上述の実施形態では、ロール金型を使用した賦型処理によりフィルム形状の蛋白質吸着抑制用表面構造体を生産する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、蛋白質吸着抑制用表面構造体の形状に係る基材の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による賦型用金型を使用した枚葉の処理により蛋白質吸着抑制用表面構造体を作成する場合等、賦型処理に係る工程、微細凹凸構造体形成用原版は、蛋白質吸着抑制用表面構造体の形状に係る基材の形状に応じて適宜変更することができる。
<蛋白質吸着抑制用表面構造体の用途>
本発明の蛋白質吸着抑制用表面構造体は、液体中に溶解乃至分散した蛋白質と接触し得る種々の基材に好適に用いることができる。具体的には、例えば、後述するマイクロ流路やマイクロチップの他、薬液バッグ、輸液バッグ、細胞培養バッグ、医療用チューブ、血管カテーテル、人工血管、ソフトコンタクトレンズ等の各種医療用具や、フラスコ、ディッシュ、プレート、遠沈管、遠心用チューブ等の各種実験器具等が挙げられる。これらの用途に本発明の蛋白質吸着抑制用表面構造体を用いることにより、有効成分量の低下や収量の低下を抑制できたり、細胞等の性質が変化することを抑制できたり、目詰まりや品質の低下を抑制できたりする。
[マイクロ流路]
本発明のマイクロ流路は、液体を流すためのマイクロ流路であって、当該マイクロ流路の少なくとも一部の表面に、複数の微小突起が配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸構造体を有し、
前記微小突起は、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、
隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであることを特徴とする。
本発明のマイクロ流路は、液体の通過が可能であるように、二次元及び/又は三次元的に所望の形状に形成された流路である。
マイクロ流路の平面形状は、特に限定されるものではなく、用途、サイズ等を考慮して、任意に設定することができる。マイクロ流路の断面(流体の流れ方向に垂直に交わる断面)形状は、例えば、四角形、台形等の多角形及びこれらの角部分が丸みを帯びた形状、円形、だ円形、ドーム形状あるいは左右非対称の不均一形等どのような形状であってもよい。マイクロ流路は、全長にわたって同じ断面形状及び大きさであってもよいが、部分的に異なる形状及び大きさであってもよい。例えば、試料を導入及び/又は排出する部分等は、完全にマイクロ流路が密閉された状態ではなく、上部の一部が開放状態になっていてもよいし、容積を測定する部分又は光学系を利用して測定を行う検出部等では、一定の断面積が維持されていればよいし、徐々に又は段階的に細く又は太くなる部分があってもよい。
本発明のマイクロ流路について図を参照して説明する。図10は、本発明に係るマイクロ流路の一例を模式的に示す、概略断面図である。本発明のマイクロ流路は、図10の例に示されるように、少なくとも一部の表面に、上記特定の微細凹凸構造体2を有し、通常、一部に流路を形成するための壁面5を有し、液体が特定の方向に流れるような形状を有するものである。図示はしないが、壁面5に微細凹凸構造体2を有していてもよい。また、マイクロ流路の上部にカバープレート6を用いて蓋をしてもよく、当該カバープレート6のマイクロ流路に対応する面7が微細凹凸構造体2を有していてもよい。
なお、図10においては、説明の都合上、マイクロ流路用基材4とカバープレート6との間に隙間を有しているが、通常、マイクロ流路用基材4とカバープレート6とは、密着させて用いるものである。
本発明のマイクロ流路は、上記特定の微細凹凸構造体2を有することにより、流路内での蛋白質の吸着が抑制されるとともに、表面に存在する微細凹凸形状のために、流路内の親液性が向上し、液体が流路内全体に均一にぬれ広がり、流路内を均一に流れやすく、流速を一定に制御し易い。
マイクロ流路の幅は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択すればよく、中でも、1〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましく、50〜300μmであること更により好ましい。
また、マイクロ流路の深さは、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択すればよく、中でも、10〜1000μmであることが好ましく、50〜500μmであることがより好ましい。
マイクロ流路用基材、及びカバープレートは、前記本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体に用いられる基材と同様のものを用いることができる。
また、マイクロ流路における微細凹凸構造体は、前記本発明に係る蛋白質吸着抑制用表面構造体に用いられる微細凹凸構造体と同様のものとすることができるのでここでの説明は省略する。
[マイクロチップ]
本発明に係るマイクロチップは、前記本発明に係るマイクロ流路を備えることを特徴とする。本発明に係るマイクロチップについて図を参照して説明する。図11は、本発明に係るマイクロチップの一例を模式的に示す概略図である。図11によれば、マイクロチップ用基材8にマイクロ流路20が形成されており、流路の一部に貯留部9が形成されている。図示はしないが、マイクロチップ用基材8上にカバープレートを有していてもよく、当該カバープレートの貯留部に対応する部分が、開口部を形成していてもよい。
なお、本発明のマイクロチップにおいて、マイクロ流路20、貯留部9やその他の構成は、マイクロチップの目的に応じて適宜形成されるものであり、図11の例に示された構成に限られるものではない。例えば、マイクロ流路の端部又は途中には、試料の導入口、排出口及び/又は液溜等が形成されていたり、遠心分離部、計量部、混合反応部、光学的または電気的測定部等が、それら自体又はそれらを連結させるマイクロ流路として一連構造で形成されていてもよい。
また、種々の二次元及び/又は三次元形状直線的なあるいは屈曲又は湾曲したパターンを有するマイクロ流路等を有する第1基板と、第一基板と同一又は異なるパターンを有する第2基板とが、熱圧着や接着剤などによって張り合わされたものであってもよい。
本発明のマイクロチップは、前記本発明に係るマイクロ流路を備えることにより、蛋白質の吸着が抑制されるとともに、流路内を流れる液体の流速が安定するため、蛋白質を溶解乃至分散した液体を高精度で操作することができ、蛋白質の測定等の精度が向上する。
このようなマイクロチップは、医療、食品、創薬等の種々の分野において、DNA、酵素、タンパク質、ウィルス、細胞などの種々の生体物質(主に液体の状態)を、分析、検出、反応、測定等するための基板として利用されるものであり、例えば、臨床分析チップ、環境分析チップ、遺伝子分析チップ(DNAチップ)、たんぱく質分析チップ(プロテオームチップ)、糖鎖チップ、クロマトグラフチップ、細胞解析チップ、製薬スクリーニングチップ等と種々の呼び名で提供されている全てのチップを包含する。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1:蛋白質吸着抑制用表面構造体の製造)
(1)微細凹凸構造形成用原版Aの作成
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に、複数の微細孔を備えた凹凸形状を有する陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、微細凹凸構造体形成用原版Aを得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均隣接微細孔間距離200nm、平均深さ100nm、孔径100nmで、深さ方向に徐々に断面積が小さくなり、先端部が曲面を有する多数の微細孔が密に形成され、且つ、微小突起の一部が、頂点を複数有する微小突起となるような微細孔が存在する微細凹凸形状であった。
(2)微細凹凸構造体Aの形成
厚さ2mmのシート状のポリメタクリル酸メチル(PMMA)基材(三井化学社製)を準備し、当該基材を150℃で加熱して軟化させた後、当該基材に前記微細凹凸構造形成用原版Aを接触させて10MPaで加圧した。加圧したまま基材を冷却し、次いで前記微細凹凸構造形成用原版Aを剥離することにより、隣接する突起間の距離の平均値が100nm、平均突起高さ200nmで、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、更に、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起である、微細凹凸構造体Aを得た。
(実施例2:蛋白質吸着抑制用表面構造体の製造)
(1)微細凹凸構造体形成用樹脂組成物の調製
ジペンタエリスリトールへキサアクリレート(DPHA)20重量部、アロニックスM−260(東亜合成社製)70重量部、ヒドロキシエチルアクリレート10重量部、及び光重合開始剤としてルシリンTPO(BASF社製)3重量部を混合し、紫外線硬化性の微細凹凸構造体形成用樹脂組成物を調製した。
(2)微細凹凸構造体Bの形成
前記微細凹凸構造体形成用樹脂組成物を、前記微細凹凸構造体形成用原版Aの微細凹凸面が覆われ、微細凹凸構造体を有する微細凹凸層の硬化後の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cmの加重で圧着した。原版全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して微細凹凸構造体形成用樹脂組成物を硬化させた。その後原版より剥離し、基材と、隣接する突起間の距離の平均値が100nm、平均突起高さ200nmで、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、更に、微小突起の一部が頂点を複数有する微小突起である、微細凹凸構造体Bと基材との積層体を得た。
(比較例1)
厚さ2mmのシート状のポリメタクリル酸メチル(PMMA)基材(三井化学社製)を準備し、これを比較構造体とした。
(評価)
各実施例で得られた蛋白質吸着抑制用表面構造体と比較構造体について、下記の評価を行った。
<蛋白質吸着抑制評価>
各実施例で得られた蛋白質吸着抑制用表面構造体と比較構造体とをそれぞれ、HRP標識抗ウサギIgG抗体(PBSに溶解 濃度1μg/ml;ROCKLAND社製)に1時間浸漬した後、当該構造体を0.05%Tween20(和光純薬工業社製)含有リン酸バッファー(PBS)に1分間浸漬を3回繰り返すことにより洗浄して未吸着の抗体(蛋白質)を十分に除去した。次いで、空気を吹き付けて乾燥し、得られた構造体にそれぞれテトラメチルベンジジン(TMB)溶液(TMBW−0100−01;BioFX Laboratories社製)1mLを滴下して、TMBを発色反応させた。5分後に、構造体にそれぞれと1mlの0.5規定硫酸を滴下して、反応を停止させた。得られた発色TMB液について、それぞれプレートリーダー(SpectraMax Me2;Molecular Device社製)を用いて450nmの吸光度を測定した。比較例1の吸光度を1として規格化した値を、表1に示す。
[結果のまとめ]
表1の結果から、実施例1及び2の表面構造体は、蛋白質の吸着抑制効果に優れていることが明らかとなった。
1 基材
2 微細凹凸構造体
2’ 受容層
3、3A〜3D 微小突起
4 マイクロ流路用基材
5 壁面
6 カバープレート
7 カバープレートのマイクロ流路に対応する面
8 マイクロチップ用基材
9 貯留部
10 蛋白質吸着抑制用表面構造体
11 ダイ
12 ロール金型
13 押圧ローラ
14 剥離ローラ
20 マイクロ流路
30 マイクロチップ

Claims (5)

  1. 基材の少なくとも一方の面に、複数の微小突起が配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸構造体を有し、
    前記微小突起は、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、
    隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであり、
    前記隣接する微小突起間の距離の平均値をdAVG、前記微小突起の付け根位置の断面の直径の平均値をRAVGとしたときに、RAVGがdAVGの90〜100%であり、
    前記微小突起群が、頂点を複数有する微小突起を含み、
    前記微細凹凸構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で45°以下である、蛋白質吸着抑制用表面構造体。
  2. 前記微細凹凸構造体に存在する全微小突起中における頂点を複数有する微小突起の個数の比率が10%以上である、請求項1に記載の蛋白質吸着抑制用表面構造体。
  3. 液体を流すためのマイクロ流路であって、マイクロ流路用基材の当該マイクロ流路を形成する少なくとも一部の表面に、複数の微小突起が配置されてなる微小突起群を備えた微細凹凸構造体を有し、
    前記微小突起は、突起付け根位置より頂部に向かうに従って、水平断面の断面積が徐々に小さくなり、且つ、頂部に曲面を有し、
    隣接する前記微小突起間の距離の平均が50〜500nmであり、
    前記隣接する微小突起間の距離の平均値をdAVG、前記微小突起の付け根位置の断面の直径の平均値をRAVGとしたときに、RAVGがdAVGの90〜100%であり、
    前記微小突起群が、頂点を複数有する微小突起を含み、
    前記微細凹凸構造体の表面における純水の静的接触角が、θ/2法で45°以下である、マイクロ流路。
  4. 前記微細凹凸構造体に存在する全微小突起中における頂点を複数有する微小突起の個数の比率が10%以上である、請求項3に記載のマイクロ流路。
  5. 請求項3または4に記載のマイクロ流路を備えた、マイクロチップ。
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