以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す各実施形態では、N型を第1導電型、P型を第2導電型とするが、これらは反対でも良い。また、以下に示す各断面図の縦方向の長さ(図中、上下方向の長さ)は、理解を促進するために誇張して記載している。
[第1実施形態の説明]
図1は、第1実施形態に係る半導体装置100の構成を示す断面図である。図1において、N型高濃度の炭化珪素半導体基板1(第1導電型の半導体基板)の表面には、炭化珪素(SiC)からなるN型低濃度の第1ドリフト領域2が形成されている。また、第1ドリフト領域2の、半導体基板1との接続面と反対側の主面(図中、上側の面)の一部には、P型の分離領域3(第2導電型の分離領域)が形成されている。また、分離領域3の、第1ドリフト領域2との接続面の反対側となる主面(図中、上側の面)には、N型高濃度の接続領域4が形成される。
更に、接続領域4の、分離領域3との接続面の反対側となる主面(図中、上側)には、N型低濃度の第2ドリフト領域5が形成される。
そして、第1ドリフト領域2と、分離領域3と、接続領域4、及び第2ドリフト領域5は、絶縁膜6に覆われている。該絶縁膜6には、第1コンタクトホール12が形成されている。そして、この第1コンタクトホール12を介して、第1電極8が設けられている。即ち、第1電極8は、第1ドリフト領域2を2つに区分したとき、一方の領域(図中、右側の領域)に直接的に形成されている。従って、該第1電極8を介して、第1ドリフト領域2と接続領域4が接続されるので、これらは電気的に同電位となる。
更に、絶縁膜6には、第2コンタクトホール13が形成されており、該第2コンタクトホール13を介して、第2電極9が設けられている。従って、第2電極9と第2ドリフト領域5が接続されるので、これらは電気的に同電位となる。また、半導体基板1の、他の主面(図中、下側の面)には、第3電極10が形成されている。なお、上記した第1電極8、第2電極9、及び第3電極10の材料として、例えばTi,Ni,Mo等のメタル材が用いられる。
上記の構造において、第1電極8がアノードとなり、第1ドリフト領域2がカソードとなる第1ダイオード(第1半導体素子)が構成されている。なお、この第1ダイオードは、金属と半導体との接触により構成されるので、ショットキーバリアダイオード(SBD)となる。更に、第1電極8は、第1ダイオードのアノード電極となり、第3電極10は第1ダイオードのカソード電極となる。
また、第2電極9がアノードとなり、第2ドリフト領域5がカソードとなる第2ダイオード(第2半導体素子)が構成されている。なお、第2ダイオードについても前述した第1ダイオードと同様に、金属と半導体との接触により構成されるので、ショットキーバリアダイオードとなる。更に、第2電極9は、第2ダイオードのアノード電極となり、第1電極8は第2ダイオードのカソード電極となる。上記の構成により、図1に示した半導体装置100は、半導体基板1上に2つのショットキーバリアダイオード(第1ダイオード及び第2ダイオード)が積層している構造となる。
次に、図2〜図10を用いて、第1実施形態に係る半導体装置を製造する手順について説明する。まず、図2に示す工程において、N+型炭化珪素半導体基板1上に、N−型炭化珪素、P−型炭化珪素、N+型炭化珪素、N−型炭化珪素を順次にエピタキシャル成長させて、第1ドリフト領域2、分離領域3(第1の工程)、接続領域4(第2の工程)、及び第2ドリフト領域5(第3の工程)を形成する。ここで、炭化珪素(SiC)にはいくつかのポリタイプ(結晶多形)が存在し、ここでは代表的な4Hとして説明する。
N+型炭化珪素半導体基板1は、数十〜数百μm程度の厚さを有する。N−型の第1ドリフト領域2は、例えば、不純物濃度が1E14〜1E18cm−3で、厚さが数μm〜数十μmとして形成される。P−型の分離領域3は、例えば、不純物濃度が1E16〜1E20cm−3で、厚さが数μm〜数十μmとして形成される。N+型の接続領域4は、厚さが数μm〜数十μmとして形成される。N−型の第2ドリフト領域5は、例えば、不純物濃度が1E14〜1E18cm−3で、厚さが数μm〜数十μmとして形成される。
次に、図3,図4に示す工程において、第2ドリフト領域5、接続領域4、及び分離領域3を選択的に除去する。この工程では、まず、図3に示すように、第2ドリフト領域5上にマスク材11を形成する。マスク材11は、一例としてシリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては、熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。
次に、マスク材11の上にレジストをパターニングする(図示せず)。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィー法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクとして、マスク材11をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウエットエッチングや、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることができる。
次に、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。この方法で、図3に示すようにマスク材11をパターンニングして、第2ドリフト領域5、接続領域4、及び分離領域3を一括除去する。除去方法としては、ドライエッチング法を用いることが好適である。次に、マスク材11を除去する。マスク材11は、シリコン酸化膜の場合はフッ酸洗浄で除去する。除去後の構造は、図4に示すようになる。この工程によって、第1ドリフト領域2が露出する(図4中、右側の領域)。ここで、図4に示す例では、第1ドリフト領域2は、第2ドリフト領域5、接続領域4、及び分離領域3を一括除去する際のオーバーエッチング量無し、としているが、第1ドリフト領域2はオーバーエッチングによって若干除去されても良い。
次の工程として、図5に示すように、絶縁膜6を堆積する。絶縁膜6の材料として、シリコン窒化膜、サフィア、或いはシリコン酸化膜等が挙げられる。ここでは、一例として、シリコン酸化膜を絶縁膜6として用いる場合について説明する。堆積方法はCVDを用いることが好適である。
絶縁膜6を堆積した後、第3電極10を形成する。第3電極10を形成する方法としては、半導体基板1の裏面にメタルを堆積し、合金化させる。一例として、Niをメタルとして採用し、堆積後1000℃のアニールを1分間行うことで、SiとNiの合金が半導体基板1の裏面に形成される。
次に、図6〜図8に示す工程において、第1電極8と第1ドリフト領域2が接触し、第2電極9と第2ドリフト領域5が接触するように、絶縁膜6に、第1コンタクトホール12、及び第2コンタクトホール13を形成する。この工程についても、前述した図3,図4の工程と同様に、マスクによる選択エッチングを行う。この工程で使うマスク材11としては、レジストが好適である。図6に示すように、まず、絶縁膜6の全面にマスク材11となるレジストを塗布し、フォトリソグラフィー法を用いてマスク材11上にレジストをパターニングする。
その後、図7に示すように、等方エッチング法を用いて絶縁膜6を除去する。等方エッチング法としては、例えば、フッ酸を用いたウエットエッチング法が好適である。このエッチングは、接続領域4を一部露出するようにオーバーエッチングを行う(図7では、接続領域4の右側が一部露出している)。次いで、図8に示すように、マスク材11となるレジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。
次に、図9,図10に示す工程においては、第1電極8、第2電極9を形成する。この際、第1電極8と第2電極9が同じメタル材料で形成されていることが好適であり、メタルとしては、Ti、Ni、Mo等を用いることができる。ここでは、Tiを用いる場合について説明する。まず、Tiを堆積する。堆積方法は、一例としてMOCVD法好適である。次に、マスクによるTiの選択エッチングを行う。マスク材11としては、レジストが好適であり、パターニング後の形状を図9に示す。次に、Tiの等方エッチングを行う。エッチング方法は塩酸を用いたウエットエッチングでもよい。エッチング後の断面構造を図10に示す。以上の工程を経て、図1に示した第1実施形態に係る半導体装置100が完成する。
次に、図1に示す構成の半導体装置における基本的な動作について説明する。図11は、第1実施形態に係る半導体装置100を用いて構成される三相インバータ装置を示す回路図である。このインバータ装置は、バッテリVB(例えば、直流400V)と、コンデンサC1と、合計6個のスイッチ素子Q1〜Q6、及び還流素子q1〜q6にて構成されている。そして、このインバータ装置は、3相のモータ負荷M1に接続されている。
スイッチ素子Q1〜Q6、及び還流素子q1〜q6はそれぞれ半導体素子で構成される。また、スイッチ素子Q1〜Q6と還流素子q1〜q6はそれぞれ対になっており、バッテリVBのプラス側(P点)と出力側(S点)間に設けられる素子が上アームであり、バッテリVBのマイナス側(N点)と出力側(S点)間に設けられる素子が下アームである。そして、上アームと下アームの、一対の還流素子(ダイオード)q1,q2を、図1に示す半導体装置100により構成することができる。なお、図11に示す例に限らず、上下アームに配置される2つのダイオード素子の機能を、本実施形態で示す半導体装置100で実現することができる。
図1に示した半導体装置100と、図11に示すインバータ装置を対応させると、図1に示した第1電極8が、図11に示す出力点(S点)に対応し、第2電極9が、マイナス側の点(N点)に対応し、第3電極10が、プラス側の点(P点)に対応する。このように、第2電極9と第1電極8との間に形成された第2ダイオード(前述したように、第2電極9がアノード極、第1電極8がカソード極となるショットキーバリアダイオード)は、下アームの還流素子q2に対応する。また、第1電極8と第3電極10との間に形成された第1ダイオード(上述したように、第1電極8がアノード極、第3電極10がカソード極となるショットキーバリアダイオード)は、上アームの還流素子q1に対応する。そして、本実施形態の半導体装置100の、第3電極10の電位を400V(バッテリVBの出力電圧)に固定し、第2電極9の電位を0V(グランド電圧)に固定する。また、第1電極8の出力側の電位はインバータ装置の動作に応じて変化する。
そして、モータ負荷M1のコイルからの還流電流を、出力側のS点(第1電極8)に流そうとすると(モータ負荷M1からS点に向かって流れる電流)、このときS点の電位が、マイナス側(N点)に対して正の電位となる。また、出力側からモータ負荷M1のコイルに電流が流れる場合には、S点の電位はマイナス側(N点)に対して負の電位となる。例えば、第1ダイオード(q1)及び第2ダイオード(q2)のオン電圧をVfとして、逆方向の耐圧を600Vとする。そして、モータ負荷M1からS点に電流が流れるとき、S点の電位が400V+Vfのときに第1ダイオード(q1)がオンして、電流が第1電極8(図11のS点)から第3電極10(図11のP点)に流れる。つまり、第1ダイオード(q1)に還流電流が流れる。
このとき、第2ダイオード(q2)では、第2電極9(図11のN点)が0Vなので、第1電極8(図11のS点)の電位の400V+Vfが耐圧の600V以下であれば、第2ダイオード(q2)には電流がほぼ流れない。
一方、S点からモータ負荷M1に電流が流れる場合には、S点の電位が−Vf以下のときに第2ダイオード(q2)がオンして、電流が第2電極9(N点)から第1電極8(S点)に流れ、更にモータ負荷M1に流れる。つまり、図11に示すN点は0ボルトであるから、S点が−Vf以下であれば、第2ダイオード(q2)はオンする。
このとき、第1ダイオード(q1)は、第3電極10(P点)の電位が400Vで、第1電極8(S点)の電位が−Vfの場合には、「400V−(−Vf)」が600V以下であれば、第1ダイオード(q1)には電流がほぼ流れない。
ここで、一般的に用いられる整流ダイオードのオン電圧Vfは、4V以下であるから、上記の2つのダイオード(q1,q2)のうちの一方がオンであれば、他方はオフとなり、同時にオンすることは無い。従って、本実施形態に係る半導体装置100は、インバータ装置に用いられる上下アームの還流機能を有することになる。
ここで、第1ダイオードの動作時における電流経路には、主として図1に示した第1ドリフト領域2の抵抗(これを、R2とする)、半導体基板1の抵抗(これを、R1とする)が存在する。一方、第2ダイオードの動作時における電流経路には、主として第2ドリフト領域5の抵抗(これを、R5とする)、接続領域4の抵抗(これを、R4とする)が存在する。
抵抗R2と抵抗R5の大きさは、ドリフト領域の厚さと不純物濃度に依存し、これらのドリフト領域の厚さと不純物濃度は耐圧に基づいて決定されるので、耐圧を一定のレベルに保持することを優先させると、ドリフト領域の厚さ、及び不純物濃度を変えることができない。従って、抵抗値も変えることができない。
しかし、図1に示したように、第2ドリフト領域5は、第1ドリフト領域2の一部分となる領域上に形成されている。換言すれば、第1ドリフト領域2の平面視の面積は、第2ドリフト領域5の平面視の面積より大きい。これに対して、第1電極8と第2電極9の面積がほぼ同一であり、電流が電極からドリフト領域に流れるため、ドリフト領域の面積が大きい方が、電流の広がりで、抵抗を低減することができる。その結果、抵抗R2をR5よりも小さくすることができる。つまり、抵抗値を任意に設定することができる。
また、抵抗R1は、半導体基板1の厚さに依存して決定し、抵抗R4は、接続領域4の厚さに依存して決定する。ここで、半導体基板1の厚さは製造上基板が歪まないように一般的なSiC(炭化珪素)半導体装置は、150μm程度の基板厚さが必要となる。しかし、本実施形態では、接続領域4の厚さは増大させることができるので、これによって、半導体基板1の厚さを低減させることができる。例えば、接続領域4の厚さを50μmとすれば、半導体基板1の厚さは100μmにすることができる。
従来の場合は、上アームの素子と下アームの素子は別々で製造することで、用いる基板の厚さ両方とも150μmが必要であった。本実施形態では、上アームの半導体基板と下アームの接続領域の厚さは両方とも150μm以下にできる。これによって、従来より上下アームともオン抵抗を下げられる。また、抵抗R1については、前述した電流の広がり効果により、抵抗をより一層低減することができる。
更に、前述した特許文献1(特開2004−140068)では、上アームと下アームの還流素子を接続するために、双方の還流素子を金属板に張り付ける等の方法を用いた。この方法によると、双方の還流素子において、半導体とメタルとが接触する面積が大きくなってしまう。これに起因して、半導体とメタルの接触で発生するコンタクト抵抗、寄生容量、寄生インダクタンスが2つの接触箇所から発生し、素子動作するときのスイッチング損失が増加することになる。これに対して、本実施形態に係る半導体装置100を用いる場合には、半導体とメタルの接触は1箇所であるため、コンタクト抵抗、寄生容量、寄生インダクタンスを従来と比較して低減することが可能となる。
このようにして、第1実施形態に係る半導体装置100では、1つの基板上に半導体を積層して2つの半導体素子(第1半導体素子、第2半導体素子)を形成する構造であり、第2半導体素子(第2ダイオード)よりも下方となる位置に第1半導体素子(第1ダイオード)が形成される。また、接続領域4と第1半導体素子の第1電極8が同電位となる。これによって、以下に示す(1)〜(3)に示す利点がある。
(1)1つの支持基板に積層して、2つの半導体素子(第1ダイオード及び第2ダイオード)が製造される。従って、1つの基板を有効利用することができ、基板抵抗を低減することができる。その結果、電力損失を低減することができる。
一般的に、素子製造上ウェハが歪まないように、エピタキシャル層と支持基板のトータル厚さがは約150μm以上とする必要がある。例えば、エピタキシャル厚が5μmの素子を別々に製造する場合は、各素子には145μmの厚さの支持基板がないと歪みが生じる。また、1つの基板上に、積層ではなく水平に2つの素子を作る場合でも、各素子が145μmの厚さの支持基板が必要となる。
そして、この支持基板の抵抗成分が素子のオン抵抗に含まれることになるので、損失が大きくなる。第1実施形態では、支持基板が1つで2つの半導体素子を積層すると、2つの半導体素子のエピタキシャル厚を5μmとした場合には、支持基板厚さが2つの半導体素子の合計で140μmで良い。一例として、接続領域4の厚さを50μmとすると、基板の厚さは90μmで済む。そして、第1半導体素子と第2半導体素子の基板抵抗は90μmの基板部の抵抗と接続部の抵抗となり、それぞれを別々に製造した場合の145μmよりも薄く、基板抵抗を低くできる。その結果、素子の定常損失を低減することができる。
(2)第1半導体素子(第1ダイオード)において、電流の広がりによるエピタキシャル抵抗と基板抵抗の低減効果で、損失の低減に繋がる。第1実施形態に係る半導体装置100の構造では、第2半導体素子(第2ダイオード)の直下に分離領域3と第1ドリフト領域2を形成するエピタキシャル層で、第1半導体素子の電流経路の幅は、第1半導体素子の幅と第2半導体素子の幅を加算した幅になる。これによって、第1半導体素子に電流が流れるときの電流密度が低減し、電流集中による発熱を低減できる。一般的に、熱によって抵抗が増加するので、発熱を低減することは、オン抵抗の低減に繋がり、素子の定常損失を低減することができる。
(3)出力電極の寄生抵抗、寄生容量、寄生インダクタンスを低減することができ、スイッチング損失を低減することができる。従来における半導体装置では、出力電極用の金属板に2つの素子を貼り付けるので、金属と半導体素子との間に、2回の張り合わせが必要となる。これによって接触時に発生するコンタクト抵抗や、寄生インダクタンス、寄生容量が二重に発生することになる。
第1実施形態に係る半導体装置100では、第1電極8が出力電極となるので、第1半導体素子と金属電極の1回の接続で済む。このため、メタルと半導体材料の接続面積が小さく、コンタクト抵抗や、寄生インダクタンス、寄生容量が従来より低くなり、素子のスイッチング損失を低減することができる。
また、第1半導体素子と第2半導体素子をダイオードとすることにより、インバータ等の電力変換回路に応用する際の、上下アーム還流素子として利用することができる。
更に、第1半導体素子の第1電極8が分離領域3と接続することで、分離領域3と第1ドリフト領域2間ではPNダイオードとして機能を有する。よって、分離領域3を利用することで、追加のP型の不純物注入が必要なく、ダイオードを容易に形成でき、コストダウンを図ることができる。また、第1ドリフト領域2のほぼ全域が電流経路となり、大電流を流すことが可能となる。
更に、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法では、分離領域3を形成する工程(第1の工程)、接続領域を形成する工程(第2の工程)、及び第2ドリフト領域5を形成する工程(第3の工程)として、エピタキシャル成長法を用いているので、イオン注入による結晶へのダメージが小さく信頼性が高い。
また、SiCの半導体装置において一般的にイオン注入の場合は、注入した不純物の量が全て活性化しない。活性化率は不純物の種類によって異なる。このため、活性化した不純物濃度を調整することが難しい。特に、第2ドリフト領域5の不純物濃度としては、一般的に1E16/cm3が用いられる。そして、この不純物濃度を、イオン注入により調整することは難しい。このため、電気特性のバラツキが大きく信頼性が低下する。これに対し、本実施形態で示したように、エピタキシャル成長法を用いると、不純物濃度を調整し易いので、信頼性を向上させることができる。
なお、上述した第1実施形態に係る半導体装置100において、第1電極8と第2電極9を、ポリシリコンとすることも可能である。ポリシリコンとすることにより、該ポリシリコンの不純物濃度でダイオードのオン電圧Vfを調整することができる。また、第1電極8と第2電極9を、Mo、Ti、Al、Ni等のメタル材料を用いることができ、更には、SiGeやGaAs等の化合物半導体を用いることも可能である。
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る半導体装置は、図1に示した半導体装置と同様であり、製造時の工程が相違する。以下、第2実施形態に係る半導体装置を製造する手順について、図12〜図16を参照して説明する。
炭化珪素にはいくつかのポリタイプ(結晶多形)が存在し、ここでは代表的な4Hとして説明する。
まず、図12に示すように、N+型炭化珪素半導体基板1の主面に第1ドリフト領域2を形成する。この工程では、N+型炭化珪素半導体基板1上に、N−型炭化珪素をエピタキシャル成長し、第1ドリフト領域2を形成する。N+型炭化珪素半導体基板1は、数十から数百μm程度の厚みを有する。N−型の第1ドリフト領域2は、例えば、不純物濃度が1E14〜1E18cm−3、厚さが数μm〜数十μmとして形成される。
また、図12とは別の工程で、他のN+型炭化珪素半導体基板51上に上記と同一の方法を用いて第2ドリフト領域5を形成する。この構成は、後述する図15に示す工程で使用する。
次いで、図13に示すように、図12に示した第1ドリフト領域2の上面に、分離領域3(第1の工程)を形成する。この工程では、第1ドリフト領域2にマスク使用せず、その全面にイオン注入し、分離領域3を形成する。分離領域3は、P型となるように、一例としてAlを不純物として注入する。P−型の分離領域3は、例えば、不純物濃度が1E16〜1E20cm−3、厚さが数μm〜数十μmとして形成されても良い。
その後、図14に示すように、接続領域4を形成する(第2の工程)。この工程においては、分離領域3にマスク使用せずに、その全面にイオン注入し、接続領域4を形成する。接続領域4は、N+型となるように、窒素やリン等を不純物として注入する。N+型の接続領域4は、厚さが数μmとして形成されても良い。不純物濃度は、1E18cm−3〜1E20cm−3とするのが好適である。
次に、図15に示すようにウェハ接合法によるウェハ接合を行う(第3の工程)。前述の第2ドリフト領域5の露出した主面(上述した、他のN+型炭化珪素半導体基板51と反対の主面、即ち、図15に示す第2ドリフト領域5の下方の主面)と、接続領域4の露出した主面(図15に示す接続領域4の上方の主面)にて、ウェハ接合を行う。その方法として、高真空中で接続領域4と第2ドリフト領域5の接続する面にイオンビームや中性原子ビームを照射し、これにより、SiC表面の酸化膜や吸着層が除去され、SiCが本来持っている空きボンド(活性化された表面)が現れる。そして、活性化された表面どうしを接触させると、2つのSiCが接合される。
次に、図16に示すように、第2ドリフト領域5を露出させる。この工程では、CMP化学機械研磨にて機械的に半導体基板51(図15参照)を除去することで、第2ドリフト領域5を露出させる。それ以降は、第1実施形態で示した図3から図10までに示した工程と同様の工程で、第2実施形態に係る半導体装置100を形成することができる。
そして、第2実施形態に係る半導体装置100は、前述した第1実施形態と対比して、分離領域3と接続領域4が、イオン注入によって形成される点で相違する。一般的に、SiCの半導体製造に要するコストは、半分以上がエピタキシャル成長の工程である。第2実施形態では、第1実施形態と対比してエピタキシャル成長の工程が少なく、低コストで半導体装置を製造することが可能となる。
更に、イオン注入する際にはウェハ全面に注入することで、マスクによる合わせずれが生じない。或いは、マスクを使用する必要が無い。よって、信頼性の向上、及び低コスト化を図ることができる。
即ち、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法では、分離領域3と接続領域4をイオン注入で形成する。また、第2ドリフト領域5を、他のN+型炭化珪素半導体基板51にエピタキシャル成長させる。そして、第2ドリフト領域5と接続領域4をウェハ接合する。その後、他のN+型炭化珪素半導体基板51をCMPで除去する。これによって、分離領域3と接続領域4の低コストで形成でき、全体のコスト低減を図ることができる。また、分離領域3と接続領域4のイオン注入プロセスは、マスクを使用せず、ウェハ全面に注入することでができるので、マスク、及びその処理工程に要する費用を削減でき、コストを低減できる。また、マスク使用しないことにより、マスク合わせによる合わせずれが生じることを防止でき、信頼性を向上させることができる。
[第3実施形態の説明]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、前述した第2実施形態と対比して、図14に示した接続領域4を形成する方法(第2の工程)が相違する。即ち、第3実施形態では、接続領域4の材料をウェハ接合してからCMP研磨することで、接続領域4を形成している。分離領域3を形成するまでの工程(第1の工程)は、前述した第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
第3実施形態の接続領域4を形成する工程(第2の工程)では、N+の半導体基板(他の第1導電型の半導体基板)の一方の主面を、分離領域3の露出している主面にウェハ接合する。具体例として、接続領域4を形成する材料がN型の不純物を高濃度で注入されたN+SiCとすると、分離領域3の露出している主面に別の数十μm以上のN+SiC半導体基板を貼る(ウェハ接合する)。これによって、N+SiC半導体基板は接続領域4となる。
その方法としては、高真空中で接続領域4と第2ドリフト領域5の接続する面にイオンビームや中性原子ビームを照射し、これにより、SiC表面の酸化膜や吸着層が除去され、SiCが本来持っている空きボンド(活性化された表面)が現れる。そして、活性化された表面どうしを貼り合わせると、接続領域4と分離領域3がウェハ接合される。
次に、CMP化学機械研磨法を用いて、接続領域4を設計通りの厚さとなるように研磨する。例えば、接続領域4の厚さを50μmにする。それ以降は、前述した第2実施形態で説明した図14以降の工程と同一の工程であるので、説明を省略する。
このようにして、第3実施形態に係る半導体装置100では、ウェハ接合で接続領域4を形成するので、接続領域4の深さ設計の自由度が大きくなる。更に、接続領域4の深さが数μm以上の場合には、イオン注入を用いる場合と対比して、コストを低減することができる。
即ち、ウェハ接合にて接続領域4を形成する場合は、接続領域4の厚さは自由に調整でき、第1半導体素子と第2半導体素子の支持基板部の厚さを調整できるので、支持基板によって発生する抵抗分の調整が可能になる。例えば、接続領域4を形成する基板をウェハ接合に後にCMPで削ることにより、接続領域4の厚さが調整できる。これによって、接続領域4が発生する抵抗成分も調整できる。また、SiCの半導体製造プロセスにおいて、ウェハが歪まないための条件は、一般的にはウェハの厚さを150μm以上とすることである。本実施形態では、半導体基板1、第1ドリフト領域2、分離領域3、接続領域4、及び、第2ドリフト領域5の総厚さを150μmとすれば、半導体装置製造上でウェハ歪みが発生しない。第1半導体装置の支持部は半導体基板1であり、第2半導体装置の支持部は接続領域4であるから、接続領域4と半導体基板1の厚さを調整することで、第1半導体素子、及び第2半導体素子の抵抗成分を調整することができる。
[第4実施形態の説明]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図17は、第4実施形態に係る半導体装置101の構成を示す断面図である。
第4実施形態に係る半導体装置101は、前述した第1実施形態と対比して、第1電極8が第1ドリフト領域2と接触しておらず、分離領域3と接している点で相違している。即ち、第1電極8は、第1ドリフト領域2を2つに区分したとき、一方の領域(図中、右側の領域)に間接的に形成されている。それ以外の構成は、前述した第1〜第3実施形態に係る半導体装置100と同一である。
次に、第4実施形態に係る半導体装置101の製造方法について説明する。半導体基板1、第1ドリフト領域2、分離領域3、接続領域4、及び、第2ドリフト領域5を形成する手順については、前述した第1〜第3実施形態に示したいずれかの方法を用いることができる。
次に、前述した図3に示した工程と同様に、エッチング用マスク材11(図3参照)を形成し、エッチングを行う。エッチングは、第2ドリフト領域5を選択的に除去することにより分離領域3を露出させ(第4の工程)、第1ドリフト領域2に届かないように時間設定して行う。エッチング後、マスク材を除去した形状を、図18に示す。その後は、前述した図5以降の工程と同様の工程を実施することにより、図17に示す半導体装置101が形成される。
第4実施形態に係る半導体装置101の動作は、前述した第1実施形態に係る半導体装置100の動作とほぼ同様である。相違点としては、第1実施形態に係る半導体装置100の第1ダイオード(図1の、第1電極8、第1ドリフト領域2、半導体基板1、第3電極10からなるダイオード)は、第1電極8がアノード領域として機能している。そして、第1電極8は、メタルや基板と異なる材料の半導体材料を用いることができ、ユニポーラ素子として動作することが考えられる。
これに対して、第4実施形態に係る半導体装置101では、P型の分離領域3がアノード領域として機能する。これによって、第4実施形態に係る半導体装置101の第1ダイオードは、バイポーラ素子となる。
また、第1実施形態の場合において、第1電極8は一部の第1ドリフト領域2上にのみ形成される。従って、第1ダイオードが動作する際に、第1電極8と該第1電極8に接する第1ドリフト領域2が主な電流経路となる。これに対して、第4実施形態では、分離領域3がアノード領域とされている。そして、図17に示すように、第4実施形態の構造で示す分離領域3は、第1ドリフト領域2の全域に接している。このため、第1ダイオードの電流経路は、第1ドリフト領域2の全域となる。その結果、前述した第1実施形態と同様の効果を達成できると共に、第1ダイオードが動作するときに、第1実施形態に示した半導体装置100よりも大きい電流経路を形成することができる。また、設計上の自由度が向上する。
また、第2ドリフト領域5の除去工程(第4の工程)で、分離領域3を露出させ、更に、第1電極8を堆積することにより、PN型ダイオードを容易に形成できる。従って、コストダウンを図ることができる。
[第5実施形態の説明]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図19は、第5実施形態に係る半導体装置102の構成を示す断面図である。第5実施形態に係る半導体装置102は、前述した第4実施形態と対比して、一部の分離領域3に形成されたバッファ層7を有している点で相違する。また、該バッファ層7は、一方の面が第1ドリフト領域2と接し、他方の面が第1電極8に接している。
以下、第5実施形態に係る半導体装置102の製造方法について説明する。図19に示す半導体基板1、第1ドリフト領域2、分離領域3、接続領域4、第2ドリフト領域5を形成する工程は、前述した第1〜第3実施形態のうちのいずれかの方法を採用することができる。
次に、図3に示した工程と同様に、エッチング用マスク材11を形成し、エッチングを行う。エッチングは分離領域3を露出させ、第1ドリフト領域2に届かないように時間設定して行う。
エッチングした後、露出している分離領域3がN型となるように不純物のイオン注入を行う。不純物の注入深さは分離領域3より深くする。即ち、第4の工程後に露出する分離領域3にN型(第1導電型)となる不純物を注入する。これによって、バッファ層7が形成される(第5の工程)。例えば、イオン注入は窒素、またはリンを注入する。注入ドーズ量については、分離領域3の不純物濃度よりも濃く注入する。これによって、P型である分離領域3はN型となる。注入深さは分離領域3より深く、第1ドリフト領域2にまで達するのが好適である。
イオン注入後、マスク材の11を除去する。このときの構造を図20に示す。この後は前述した図5以降の工程と同様の工程を実施し、図19に示す如くの断面構造を有する半導体装置102を形成することができる。
第5実施形態に係る半導体装置102の動作は、前述した第1実施形態に係る半導体装置100とほぼ同様である。相違点としては、第1実施形態では、第1ダイオードは第1電極8がアノード領域として機能しており、第1電極8のエッジは第1ドリフト領域2に形成されている。従って、第1ダイオードが逆バイアスされるときに第1電極8のエッジ部に電界が集中し易く、耐圧がそれほど高くない。
これに対して、第5実施形態に係る半導体装置102では、第1電極8のエッジはバッファ層7と接しており、エッジと接するバッファ層7は分離領域3に形成されている。構造上で分離領域3は、第1電極8のエッジと接し、且つ、エッジより深く位置することになっている。これによって、第1ダイオードに逆バイアスをかける際に、エッジの電界集中がエッジと接する分離領域によって緩和される。従って、第1実施形態と対比して、第1ダイオードの耐圧を高めることができる。
また、第5実施形態に係る半導体装置102では、第1半導体素子がユニポーラダイオードである場合に、耐圧を向上させることができる。また、第1半導体素子としての第1ダイオードは、アノード領域とバッファ層との接合面にユニポーラダイオードとして形成される。例えば、アノード領域がメタル材料であればショットキーバリアダイオード(SBD)が形成される。しかし、このSBDの耐圧はアノード領域の端部の電界集中によって決められ、アノードの端部をP型領域で保護するのが通常の方法である。本実施形態では、バッファ層7がP型の分離領域3に形成されるため、アノードの端部が分離領域3によって保護され、端部の電界集中を防ぐことができる。その結果、耐圧を向上させることができる。
また、バッファ層7が露出した分離領域3に第1導電型となるように不純物を注入することで、低コストで形成できる。即ち、一般的には、第1ドリフト領域2を露出させ、次に第1導電型となるバッファ層を堆積する。この方法では、バッファ層が露出する分離領域3の表面が凹形状となり、アノードの端部は分離領域と接することはできない。このため、アノードの端部を分離領域3と接するために再度のエッチングを行う必要があり、コスト増になる。第5実施形態に係る半導体装置102では、これを解決できる。
[第6実施形態の説明]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図21は、第6実施形態に係る半導体装置103の構成を示す断面図である。図21において、N型高濃度の炭化珪素半導体基板1の表面上には、炭化珪素からなるN型低濃度の第1ドリフト領域2が形成されている。
また、第1ドリフト領域2の、半導体基板1の接続面に対して反対側となる主面の一部には、P型の分離領域3が形成される。更に、分離領域3の、第1ドリフト領域2との接続面と反対側の主面の一部に、N型高濃度の接続領域4が形成される。
また、接続領域4の、分離領域3との接続面の反対側の主面に、N型低濃度の第2ドリフト領域5が形成される。更に、分離領域3の他の部分(接続領域4が形成される領域以外の領域)には、N型の高濃度の第1ソース領域15が形成される。更に、P型分離領域3、及び、第1ソース領域15を貫通するように、第1の溝23が形成されている。第1の溝23は、第1ドリフト領域2に至っている。また、第1の溝23の内面には第1ゲート絶縁膜18が形成され、該第1ゲート絶縁膜18を介して、第1の溝23内に第1ゲート電極17が形成されている。第1ゲート電極17は、第1の溝23の上面に形成された層間絶縁膜6に覆われている。
更に、第1ソース領域15から分離領域3を貫通するように、高濃度のP型第1導電領域16が形成され、該第1導電領域16は分離領域3と接して、同電位となる。また、第1導電領域16は、第1の溝23の両側にそれぞれ形成される。また、第1ソース領域15と第1導電領域16は、第1電極8と接して同電位となり、第1ゲート電極17とは、層間絶縁膜6によって絶縁される。
また、第2ドリフト領域5に、P型の第2ウェル領域14を形成する。第2ウェル領域14の上面には、高濃度のN型第2ソース領域19が形成される。更に、第2ウェル領域14及び第2ソース領域19を貫通するように、第2の溝24が形成されている。第2の溝24は、第2ドリフト領域5に達している。また、第2の溝24の内面には、第2ゲート絶縁膜22が形成され、該第2ゲート絶縁膜22を介して第2の溝24内に第2ゲート電極21が形成されている。第2ゲート電極21は、絶縁膜6(層間絶縁膜)に覆われている。
更に、一部が第2ソース領域19に形成される高濃度のP型第2導電領域20有し、第2導電領域20は、第2ウェル領域14と接して同電位となる。また、第2導電領域20は、第2の溝24の両側にそれぞれ形成される。
第2ソース領域19及び第2導電領域20は、第2電極9と接して同電位となり、第2ゲート電極21とは、層間絶縁膜6によって絶縁される。また、層間絶縁膜6の下部に第1ゲート絶縁膜18を除去せずに残した領域もある。これは動作に影響せず、絶縁性を層間絶縁性を高める効果もある。
そして、図21に示す半導体装置103の構造において、第3電極10、第1ドリフト領域2、分離領域3、第1ソース領域15、第1電極8、及び第1ゲート電極17により、第1トランジスタ(第1半導体素子)が構成される。第3電極10は、第1トランジスタのドレイン電極と見なすことができ、第1ドリフト領域2は、ドレインと見なすことができ、分離領域3は第1チャンネルを形成するウェルと見なすことができる。更に、第1ソース領域15は、第1トランジスタのソースで、第1電極8はソース電極となり、第1ゲート電極17は第1トランジスタのゲート電極になる。分離領域3の電位は、第1導電領域16を介して、第1電極8で調整することができる。
更に、図21に示す半導体装置103の構造において、第1電極8、接続領域4、第2ドリフト領域5、第2ウェル領域14、第2ソース領域19、第2ゲート電極21から、第2トランジスタ(第2半導体素子)が構成される。第1電極8は、第2トランジスタのドレイン電極と見なすことができ、第2ドリフト領域5はドレインと見なすことができ、第2ウェルは第2チャンネルを形成するウェルと見なすことができる。第2ソース領域19は、第2トランジスタのソースで、第2電極は第2トランジスタのソース電極となる。また、第2ゲート電極21は第2トランジスタのゲート電極となる。
次に、第6実施形態に係る半導体装置103の製造方法について説明する。まず、半導体基板1、第1ドリフト領域2、分離領域3、接続領域4、第2ドリフト領域5を、前述の第1〜第3実施形態にて示したいずれかの方法を用いて形成する。
次に、図22に示すように、マスクを使用せずに第2ドリフト領域5にAl(アルミニウム)を注入して、P型の第2ウェル領域14を形成する。一例として、注入濃度を1E16〜1E19/cm3で、注入深さは0.6μm程度が好適である。
次いで、図3に示した工程と同様に、エッチング用のマスク材11(図3参照)を形成し、エッチングを行う。エッチングは第2ドリフト領域5を選択的に除去して分離領域3を露出させ(第4の工程)、第1ドリフト領域2に届かないように時間設定して行う。このエッチングにより、第2ドリフト領域5が選択的に除去される。エッチング後、マスク材11を除去した形状を図23に示す。
その後、図24に示すように、高濃度のN型第1ソース領域15、及び第2ソース領域19を形成する。この2つの領域は同時に形成しても良いし、個別に形成してもよい。同時に形成する場合は、形成された両領域の濃度と深さが同じで、個別に形成する場合は、各領域の濃度と深さをそれぞれ異なるように形成できる。設計するデバイスに応じて製造方法を選択できる。
ここでは、同時に形成する場合を例に挙げて説明する。マスクを使用せずに基板全面にN型となる不純物を注入する。また、N型不純物としては窒素を用いることができる。注入後形成される断面構造を、図24に示す。注入の濃度は、1E18〜1E20/cm3が好適で、深さとしては0.2μm程度が好適である。第1ソース領域15と第2ソース領域19はそれぞれ分離領域3と第2ウェル領域14に形成されるので、分離領域3と第2ウェル領域14より深く注入することは好ましくない。
次いで、高濃度のP型第1導電領域16と第2導電領域20を形成する。ここでは、双方を同時に形成する場合の例を説明する。第1導電領域16、及び第2導電領域20は、マスクでパターニングされた基板に、P型となる不純物のイオンを注入することにより形成することができる。イオン注入領域をパターニングするために、下記に示す工程により、表面上にマスク材を形成してもよい。
マスク材としてはシリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては、熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。次に、マスク材上にレジストをパターニングする(図示省略)。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィー法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、マスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウエットエッチングや、反応性イオンエッチング等のドライエッチングを用いることができる。次いで、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。マスク材をマスクとし、P型不純物としてはアルミやボロンを用いることができる。この際、基体温度を600℃程度に加熱した状態でイオン注入することで、注入領域に結晶欠陥が生じるのを抑制することができる。
イオン注入後、マスク材を、例えばフッ酸を用いたウェットエッチングによって除去する。次に、イオン注入した不純物を熱処理することで活性化する。熱処理温度としては1700℃程度の温度を用いることができ、雰囲気としてはアルゴンや窒素を用いることが好適である。第1導電領域16、及び第2導電領域20形成後の断面形状を、図25に示す。
次に、第1の溝23、及び第2の溝24を形成する。第1の溝23及び第2の溝24についても、それぞれを同時に形成する方法、及び個別に形成する方法の2つの方法がある。同時形成では、同一の深さのものができ、深さが相違するようにしたい場合には、個別に形成する方法を用いる。ここでは、同時形成する場合を例に挙げて説明する。
まず、第1ソース領域15と第2ソース領域19上にマスク材11(図3参照)を形成する。マスク材としては、前述した図3に示した工程と同様に、パターニングされた絶縁膜を使用することができる。次に、マスク材をマスクとして、図26に示すように、第1ソース領域15に第1の溝23を形成し、第2ソース領域19に第2の溝24を形成する。これらの各溝23,24を形成する方法としては、ドライエッチング法を用いることが好適である。第1の溝23、及び第2の溝24の深さは、分離領域3、及び第2ウェル領域14の深さより深くする必要がある。そして、第1の溝23及び第2の溝24を形成した後に、マスク材を除去する。例えば、マスク材がシリコン酸化膜の場合はフッ酸洗浄で除去する。第1の溝23、及び第2の溝24を形成後の断面構造は、図26に示す通りである。
次に、図27に示すように、第1ゲート絶縁膜18と第2ゲート絶縁膜22を形成する。第1ゲート絶縁膜18と第2ゲート絶縁膜22は同時に形成することが好適である。形成方法としては、熱酸化法或いは堆積法を用いることができる。一例として、熱酸化法の場合では、基体を酸素雰囲気中に、温度を1100℃程度に加熱することで、基体が酸素に触れる全ての部分において、シリコン酸化膜が形成される。第1ゲート絶縁膜18と第2ゲート絶縁膜22を形成後、第2ウェル領域14と分離領域3のゲート絶縁膜界面の界面準位を低減するために、窒素、アルゴン、N2O等の雰囲気中で1000℃程度のアニールを行っても良い。第1ゲート絶縁膜18、及び第2ゲート絶縁膜22を形成後の断面構造を図27に示す。
次に、第1ゲート電極17と第2ゲート電極21を形成する。第1ゲート電極17と第2ゲート電極21を同時に形成することが好適で、ここでは同時に形成する方法を説明する。第1ゲート電極17と第2ゲート電極21の材料としては、ポリシリコン(図28の符号25)を用いることが一般的で、ここではポリシリコンを用いる例について説明する。ポリシリコンの堆積方法としては、減圧CVD法を用いることができる。ポリシリコンの堆積厚さは、第1の溝23、及び第2の溝24を埋めるように設定する。例えば、第1の溝23及び第2の溝24の幅が1μmの場合は、ポリシリコンの厚さは0.5μmよりも厚くする。
また、ポリシリコンの堆積後に、950℃でPOCl3(塩化ホスホリル)中にアニールすることで、N型のポリシリコンが形成され、第1ゲート電極17と第2ゲート電極21に導電性を持たせる。ポリシリコンの堆積後の断面構造を図28に示す。続いて、ポリシリコンのエッチングを行う。エッチングの方法としては、等方性エッチングが好適であり、第1の溝23及び第2の溝24の内部以外のポリシリコンを除去する。エッチングは反応性ガスによるドライエッチングやウェットエッチング等の方法でエッチングすることが可能である。エッチング後の断面構造を図29に示す。
その後、層間絶縁膜6を形成する。材料はシリコン酸化膜が好適であり、形成方法はCVD法を用いることができる。層間絶縁膜6を形成した後の断面構造を図30に示す。
なお、層間絶縁膜6を堆積した後の工程は、前述した第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。以上の工程により、図21に示した第6実施形態に係る半導体装置103が完成する。
次に、第6実施形態に係る半導体装置103の基本的な動作について説明する。図31は、第6実施形態に係る半導体装置103を用いて構成した3相インバータ装置の構成を示す回路図である。このインバータ装置は、前述した図11に示したインバータ装置と同一構成であり、バッテリVB(例えば、直流400V)と、コンデンサC1と、合計6個のスイッチ素子Q1〜Q6、及び還流素子q1〜q6にて構成されている。そして、このインバータ装置は、3相のモータ負荷M1に接続されている。
スイッチ素子Q1〜Q6、及び還流素子q1〜q6はそれぞれ半導体素子で構成される。また、スイッチ素子Q1〜Q6と還流素子q1〜q6はそれぞれ対になっており、バッテリVBのプラス側(P点)と出力側(S点)間に設けられる素子が上アームであり、バッテリVBのマイナス側(N点)と出力側(S点)間に設けられる素子が下アームである。そして、上アームと下アームの、一対のスイッチ素子(トランジスタ)Q1,Q2を、図21に示す半導体装置103により構成することができる。なお、図31に示す例に限らず、上下アームに配置される2つのトランジスタの機能を、第6実施形態で示す半導体装置で実現することができる。
図21に示した半導体装置103と、図31に示すインバータ装置を対応させると、図21に示した第1電極8が、図31に示す出力点(S点)に対応し、第2電極9が、マイナス側の点(N点)に対応し、第3電極10が、プラス側の点(P点)に対応する。このように、第2電極9と第1電極8との間に形成された第2トランジスタは、下アームのスイッチ素子Q2に対応し、第1電極8と第3電極10との間に形成された第1トランジスタは、上アームのスイッチ素子Q1に対応する。
また、上アームのスイッチ素子Q1である第1トランジスタの制御用ゲート電極G1は、図21に示す第1ゲート電極17と同電位であり、下アームのスイッチ素子Q2である第2トランジスタの制御用ゲート電極G2は、図21に示す第2ゲート電極21と同電位である。そして、各制御用ゲート電極G1、G2の電位を制御して、第1トランジスタQ1、及び第2トランジスタQ2のオン・オフを制御する。また、第1トランジスタQ1に対して第1ダイオードq1が対になり、第2トランジスタQ2に対して第2ダイオードq2が対になっている。第1ダイオードq1、及び第2ダイオードq2は、還流用に用いられる。
ここで一例として、第1トランジスタQ1のオン動作について説明する。図21に示す第3電極10と、第1ドリフト領域2と、分離領域3と、第1ソース領域15と、第1電極8、及び第1ゲート電極17により第1トランジスタが構成される。第1トランジスタは、第1電極8の電位を基準として、第3電極10に所定の正の電位を印加した状態で第1ゲート電極17の電位を制御することで、トランジスタとして機能する。即ち、第1ゲート電極17と第1電極8間の電圧を所定の閾値電圧以上にすると、第1ゲート絶縁膜18と分離領域3の界面に反転層が形成されるのでオン状態となり、第3電極10から第1電極8に向けて電流が流れる。
一方、第1ゲート電極17と第1電極8間の電圧を所定の閾値電圧以下にすると、反転層が消滅しオフ状態となり、電流が遮断される。この際、第3電極10と第1電極8との間には数百〜数千ボルトの高電圧が印加される。また、第2トランジスタについても前述の第1トランジスタと同様に動作する。第2トランジスタの基準電位は図31に示すN点の電位となる。
図31に示す3相インバータ装置によりモータ負荷M1を駆動する場合は、一般的に、1つの相の上アームのスイッチ素子をオンさせ、別の相の下アームのスイッチ素子をオフさせる。これによって一つの電流ループを形成させ、モータ負荷M1を駆動する。また、インバータ装置の動作上、バッテリのショート(短絡事故)を防止するために、第1トランジスタQ1と同相の第2トランジスタQ2を同時にオンすることはない。
以下、第6実施形態に係る半導体装置103の動作を、図31に示すインバータ装置を用いて説明する。図21に示す第1トランジスタの第1電極8、第3電極10、第1ゲート電極17は、図31のS点、P点、G1点に対応する。第2トランジスタの第2電極9、第1電極8、第2ゲート電極21は、N点、S点、G2点に対応する。
まず、S点からモータ負荷M1に電流を流す場合の動作について説明する。この場合は第1トランジスタQ1をオンにして、第2トランジスタQ2をオフにする。即ち、S点の電位を基準にして、G1点の電位を第1トランジスタQ1の閾値電位より大きくして、第1トランジスタをオンさせる。これと同時にG2点の電位を第2トランジスタQ2の閾値電位より低くし、第2トランジスタQ2をオフ状態にする。但し、第2トランジスタQ2の基準電位はN点の電位である。これによって、P点からS点に電流が流れ、S点からモータ負荷M1に電流が流れる。
次に、モータ負荷M1からS点に電流が流れ込む場合について説明する。この場合は、第1トランジスタQ1をオフし、第2トランジスタQ2をオンして、電流ループを構成する。即ち、S点の電位を第1トランジスタQ1の基準電位とし、G1点の電位を第1トランジスタQ1の閾値電位より小さくし、第1トランジスタQ1をオフ状態にする。これと同時に、G2点の電位を第2トランジスタQ2の閾値電位よりも高くし、第2トランジスタQ2をオン状態にする。但し、第2トランジスタQ2の基準電位はN点の電位である。これによって、電流がモータ負荷M1からS点に流れ、更にはS点からN点に流れる。
また、ここで上アームの第1トランジスタQ1がオンの動作時での電流経路においては、第1ドリフト領域2の抵抗R2、及び半導体基板1の抵抗R1が存在する。下アームの第2トランジスタQ2の動作時での電流経路においては、第2ドリフト領域5の抵抗R5、接続領域4の抵抗R4が存在する。ここで、前述したように、抵抗R2と抵抗R5の大きさは、ドリフト領域の厚さと不純物濃度に依存し、これらのドリフト領域の厚さと不純物濃度は耐圧に基づいて決定されるので、耐圧を一定のレベルに保持することを優先させると、ドリフト領域の厚さ、及び不純物濃度を変えることができない。従って、抵抗値も変えることができない。
しかし、図21に示したように、第2ドリフト領域5は、第1ドリフト領域2の一部分となる領域上に形成されている。換言すれば、第1ドリフト領域2の平面視の面積は、第2ドリフト領域5の平面視の面積より大きい。これに対して、第1電極8と第2電極9の面積がほぼ同一であり、電流が電極からドリフト領域に流れるため、ドリフト領域の面積が大きい方が、電流の広がりで抵抗を低減することができる。その結果、抵抗R2を抵抗R5よりも小さくすることができる。
このようにして、第6実施形態に係る半導体装置103では、前述した第1実施形態と同様に、第1電極8が出力電極(図31のS点)となるので、第1半導体素子と金属電極の1回の接続で済む。このため、メタルと半導体材料の接続面積が小さく、コンタクト抵抗や、寄生インダクタンス、寄生容量が従来より低くなり、素子のスイッチング損失を低減することができる。
また、第1半導体素子、及び第2半導体素子をトランジスタとすることにより、インバータ等の電力変換回路に応用する際の、上下アームスイッチング素子として利用することができる。
更に、第1半導体素子のトランジスタのPWELL領域は、分離領域3の一部からなっている。分離領域3を利用することでトランジスタを容易に形成でき、コストダウンを図ることができる。
また、第2ドリフト領域5の除去工程(第4の工程)で、分離領域3を露出することにより、第1電極を8堆積することで、PN型ダイオードを容易に形成できる。従って、コストダウンを図ることができる。
[第7実施形態の説明]
図32は、本発明の第7実施形態に係る半導体装置104の構成を示す断面図である。第7実施形態は、前述した第6実施形態に係る半導体装置103(図21)と対比して、分離領域3の表面の全域において接続領域4が存在し、接続領域4が第6実施形態で示した半導体装置103のソース領域として機能する点で相違する。このため、第6実施形態で示した半導体装置103に用いられている第1ソース領域15が使用されていない。また、第1導電領域16は、接続領域4に形成される。第1の溝23は、接続領域4、分離領域3を貫通して形成され、第1ドリフト領域2まで達している。
第7実施形態に係る半導体装置104の製造方法は、前述した第6実施形態にて示した第2ウェル領域14を形成した後、イオン注入法を用いて高濃度のN型第2ソース領域19を形成する。この処理では、マスクを使用せずに全面注入するのが良い。また、第2ソース領域19を形成した後、第2ドリフト領域5をエッチングする工程は、前述した図3に示した工程と同様に、エッチング用マスク材11を形成して、エッチングを行う。
エッチングは、接続領域4を露出させ(第4の工程)、第1ドリフト領域2に届かないように時間設定して行う。このエッチングでは、第2ドリフト領域5を選択的に除去する。そして、エッチングした後に、マスク材11を除去する。以降の工程は、前述した第6実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、第7実施形態に係る半導体装置104の動作についても、前述した第6実施形態と同様であるので、説明を省略する。
また、第7実施形態では、第1半導体素子のトランジスタ(第1トランジスタ)のチャンネルが形成するPWELL領域は、分離領域3になっている。トランジスタのソースは接続領域4からなる。そして、接続層と分離領域を利用することでトランジスタを容易に形成することができ、コストダウンを図ることができる。また、第1電極8は、接続領域4のみと接続することで同電位とすることができる。
更に、第2ドリフト領域5の除去工程で、接続領域4を露出することにより、接続領域4がトランジスタのソース領域となるため、トランジスタを容易に形成することができ、コストダウンを図ることができる。
[第8実施形態の説明]
図33は、本発明の第8実施形態に係る半導体装置105の構成を示す断面図である。第8実施形態(図33)と第7実施形態(図32)の相違点は、第2ドリフト領域5の下に接する接続領域4の厚さが、第1電極8の下に接する接続領域の4の厚さより厚いことである。
第8実施形態に係る半導体装置105の製造方法は、前述した第7実施形態と対比して、第2ドリフト領域5のエッチング工程において、接続領域4を露出させ、且つ接続領域4の一部もエッチングされるようにエッチング時間設定する点である。これによって、エッチングされない第2ドリフト領域5の下側に接続する接続領域4は、露出する接続領域4よりも厚くなる。これ以外の工程は第7実施形態と同様であるので説明を省略する。また、第8実施形態に係る半導体装置105の動作についても、前述した第7実施形態と同様であるので、説明を省略する。
また、図33において、第2トランジスタのオン動作時の電流経路は第1電極8から、接続領域4、第2ドリフト領域5、第2電極9の順になる。一方、第1トランジスタのオン動作時の電流経路は、第3電極10から、第1ドリフト領域2、接続領域4、第1電極8の順になる。このため、接続領域4は2つのトランジスタの経路に存在し、接続領域4が全域に亘って薄い場合には、第2トランジスタの経路にある接続領域4のシート抵抗が大きくなり、損失となる。即ち、第2トランジスタにとっては、接続領域4が厚い方が抵抗が小さくなる。これとは反対に、接続領域4が全域に亘って厚い場合には、第1半導体素子(第1トランジスタ)の経路にある接続領域4の抵抗が大きくなる。第1トランジスタにとっては接続領域が薄い方が抵抗が小さくなる。
即ち、第8実施形態に係る半導体装置105では、接続領域4と分離領域3との接触面から、接続領域4と第2ドリフト領域5との接触面までの垂直方向の距離が、接続領域4と分離領域3との接触面から、接続領域4と第1電極8との接触面まで垂直方向の距離より大きい。換言すれば、図33に示す第1電極8の下端面が接続領域4の上端面よりも下方に入り込んでいる。
つまり、第2トランジスタの電流経路にある接続領域4が厚く、第1トランジスタの電流経路にある接続領域4が薄い構造になっているので、双方のトランジスタのオン動作時の損失を低減できるという効果を発揮する。
[第9実施形態の説明]
次に、本発明の第9実施形態について説明する。図34は、第9実施形態に係る半導体装置106の構成を示す断面図である。第9実施形態に係る半導体装置106は、前述した第1実施形態と対比して、第2ドリフト領域5の両側面の少なくとも一部に、P型の保護領域31が形成される点で相違している。この半導体装置106の製造方法は、P型保護領域31以外については、前述した第1実施形態と同様である。また、P型保護領域31は、イオン注入法を用いることにより形成することができる。動作についても、前述した第1実施形態と同様である。第1電極8が正の電位で、第2電極9が負の電位の場合、両電極間の電位差はP型保護領域31が存在することにより緩和され、P型保護領域31を設けない場合よりも大きくすることができる。
このように、第9実施形態に係る半導体装置106は、第2ドリフト領域5の両側にP型保護領域31を形成することにより、接続領域4と第2電極9間の耐圧を向上させることができる。また、第2ドリフト領域5と第1電極8間の絶縁性を高めることができ、信頼性を向上させることができる。また、このP型保護領域31は第1実施形態以外の実施形態で示した半導体装置についても、同様の効果を達成することができる。
以上、本発明の半導体装置及びその製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
例えば、上述した各実施形態では、半導体基板1として炭化珪素半導体基板を用いる例について説明したが、本発明はこれに限らず、バンドギャップの広い半導体材料、例えば、GaN、ダイヤモンド、ZnO、AlGaN等を用いることができる。
また、第1ゲート電極17、第2ゲート電極21として、N型ポリシリコンを用いる例について説明したが、P型ポリシリコンを用いても良い。また、P型ポリ炭化珪素、SiGe、Al等を用いても良い。更に、第1ゲート絶縁膜18,22においては、シリコンの酸化膜を用いる例を説明したが、シリコンの窒化膜でも良い。或いは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層でも良い。シリコン窒化膜の場合では、等方性エッチングの場合は160℃の熱燐酸による洗浄でエッチングができる。
また、前述した第3実施形態、第4実施形態、第6実施形態では、異種材料アノード領域はメタルを用いて良いし、半導体とメタルの合金でも良いし、それ以外の導体でも良い。メタルの材料の例として、Ni、Ti、Mo等が挙げられる。堆積方法は、電子ビーム蒸着やMOCVD、スパッタ等の方法が考えられる。半導体とメタルの合金としては、SiNi、SiW、TiSi等でも良い。堆積方法はスパッタ等を用いることができる。それ以外に、TiN、TaN、WN等の導体を異種材料アノード領域にできる。
更に、異種材料アノード領域は、ドリフト領域とバンドギャップが異なる半導体材料の場合はポリシリコンを用いて説明したが、Ge、Sn、GaAs等でも良い。導電性を持たせるにはイオン注入でもよい。注入原子はN型の場合は、P、As、Sb等を用いることができる。P型の場合は、B、Al、Ga等が良い。