JP6102548B2 - 新規エチルアダマンタンジカルボン酸エステル化合物、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]式(1)で表されるエチルアダマンタンジカルボン酸エステル化合物。
(b)次いでアルコールと反応させ、式(1)で表されるエチルアダマンタンジカルボン酸エステル化合物を得る工程(以下、「エステル化工程」と略すこともある)、からなる。
1−エチルアダマンタンのカルボニル化反応は、HF及びBF3の存在下で一酸化炭素の加圧下に実施する。これにより、式(2)で表されるエチルアダマンタンジカルボン酸フロライドが、種々の副生物(異性体を含む)とともに得られる。
本実施形態のカルボニル化工程に使用する一酸化炭素は、窒素やメタン等の不活性ガスが含まれていても良いが、一酸化炭素分圧として0.5〜5MPa、好ましくは1〜4MPaの範囲で実施する。一酸化炭素分圧が0.5MPaより高ければ、カルボニル化反応が十分に進行し、不均化や重合等の副反応が併発せず、高収率で目的物であるエチルアダマンタンジカルボンジカルボン酸フロライドを得ることができる。また一酸化炭素分圧は5MPa以下であることが設備負荷の観点から好ましい。
カルボニル化工程に使用するHFは、反応の溶媒であり、触媒であり、かつ副原料となるため、実質的に無水のものを用いる。HFの使用量は、原料の1−エチルアダマンタンに対して10〜60モル倍、好ましくは15〜50モル倍である。HFのモル比が10モル倍以上あれば、カルボニル化反応は効率良く進行し、不均化や重合等の副反応を抑制でき、高収率で目的物であるエチルアダマンタンジカルボンジカルボン酸フロライドを得ることができる。また、原料コスト及び生産性の観点から60モル倍以下のHFの使用が好ましい。
BF3の使用量は、原料の1−エチルアダマンタンに対して0.3〜2.0モル倍、好ましくは0.5〜1.5モル倍の範囲である。BF3のモル比が0.3モル倍以上であれば、カルボニル化反応は効率良く進行する。また、BF3のモル比が2.0モル倍以下であれば、BF3分圧が過剰になって一酸化炭素分圧が抑制される状態にはならないため良好な収率が得られる。
カルボニル化反応の形式には特に制限なく、回分式、半連続式、連続式等の何れの方法でも良い。
カルボニル化反応で生成したエチルアダマンタンジカルボン酸フロライド反応液は、炭素数1〜4のアルコールと反応させてエチルアダマンタンジカルボン酸エステル化合物とする。反応装置の腐食性の観点から、この際、エチルアダマンタンジカルボン酸フロライド反応液に所定量のアルコールを添加していく方法が好ましい。
また、カルボニル化反応で生成したエチルアダマンタンジカルボン酸フロライド反応液は、直接エステル化反応の原料として使用することができるが、(I)過剰のHFを留去した後、蒸留等の常法により精製し、エステル化工程の原料として用いることもできるし、(II)過剰のHFを留去した後、加水分解させて相当するカルボン酸を得て、該カルボン酸を蒸留等の常法により精製後にエステル化工程の原料として用いることもできる。
<分析方法、条件>
ガスクロマトグラフィーは、島津製作所製GC−17AとキャピラリーカラムとしてULBON製 HR−1(0.32mmφ×25m×0.50μm)を用いた。昇温条件は100℃から300℃まで5℃/min.で昇温した。
ガスクロマトグラフィー分析により、原料のエチルアダマンタンの重量割合(wt%)を内部標準法により求め、転化率を下記式により算出した。
転化率(mol%)=100−{原料の残存量/原料の仕込み量×100}
[エチルアダマンタンジカルボン酸エステル化合物収率、エステル化合物組成比]
ガスクロマトグラフィー分析により、生成物である数種類のエチルアダマンタンジカルボン酸エステル化合物(以下“ジ体”と略すことがある)の重量割合(wt%)を内部標準法により求め、ジ体合計収率、各ジ体の生成比を下記式により算出した。なお、ジ体には、後述するように比較的生成量の多い3種類の成分があり、これらを各々、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕と称し、これら3種以外の成分はその他のジ体とする。
{ジ体合計収率(モル%)}={ジ体〔A〕取得量/280.4+ジ体〔B〕取得量/294.4+ジ体〔C〕取得量/308.4+その他のジ体取得量/294.4}/{原料の仕込み量/164.3}×100
{ジ体組成比(%)}={各ジ体組成(ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体)(%)}/{ジ体合計組成(%)}×100
Waters社製GC−MS装置 GCT Premier
装置 :Bruker Avance 600II(600MHz−NMR)
モード:Proton、Carbon、Carbon(Inverse gate decoupling法)、DEPT90°、135°、HSQC、HMBC、COSY
溶媒 :CDCl3(重クロロホルム)
内部標準物質:テトラメチルシラン
エチルアダマンタンジカルボン酸ジメチルエステル化合物の製造
ナックドライブ式攪拌機と上部に3個の入口ノズル、底部に1個の抜き出しノズルを備え、ジャケットにより内部温度を抑制できる内容積500mlのステンレス製オートクレーブに、冷却下1−エチルアダマンタン(上海博康精細化工有限公司製)66.0g(0.40mol)、無水HF241.2g(12.05mol),BF3 20.4g(0.30mol)を仕込み、内容物を撹拌し液温を78℃に昇温した後、一酸化炭素により3MPaまで昇圧した。その後、圧力を3MPa、液温を78℃に3時間保ってカルボニル化反応させた。
引き続いて、反応温度を5℃まで冷却した後、メタノールをオートクレーブ上部より25.7g(0.80モル)供給して、撹拌下にて1時間エステル化を行った。
反応液をオートクレーブ底部より氷水中に抜き出し、油相と水相を分離した後、油相を2%苛性ソーダ水溶液100mlで2回,蒸留水100mlで2回洗浄し、10gの無水硫酸ナトリウムで脱水した。
得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率99.1モル%,ジ体合計収率48.2モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々14.7%、57.2%、12.5%、15.6%であった。
得られた液を理論段数20段の精留塔を用いて精留を行ったところ(留出温度165℃、真空度5torr)、主留部分としてジ体〔A〕13.0%、ジ体〔B〕53.2%、ジ体〔C〕11.6%、その他のジ体15.4%のものが55.9g(蒸留収率90.4モル%、エステル化反応液基準)で得られた。蒸留による組成比率の大きな変動はなかった。
主生成物について、さらに、理論段数50段の精留塔を使用して精留し、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕を分取した。3成分は、GC−MSで分子量は其々280、294、308であった。
また、各成分について、前記NMR装置を用いて、1H−NMR測定、13C−NMR測定、13C−NMR測定(Inverse gate decoupling法)、dept90−NMR測定、dept135−NMR測定、HSQC−NMR測定、HMBC−NMR測定、COSY−NMR測定を行った。
1H−NMR測定及び13C−NMR測定の結果を以下に示し、Inverse gate decoupling法によるNMR測定、dept135°、90°−NMR測定、HSQC−NMR測定、HMBC−NMR測定、COSY−NMR測定及び結果を図1〜24に示す。
1H−NMR(600MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:0.821(t,3H)、1.212(m,2H)、1.417(d,2H)、1.583(m,4H)、1.792(d,4H)、1.986(m,2H)、2.215(m,1H)、3.667(s,6H)
13C−NMR(600MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:6.90、28.33、33.95、36.73、37.66、39.57、39.95、40.77、41.81、51.77、177.36
これらの測定結果から総合的に判断して、ジ体〔A〕はジメチル-5−エチルアダマンタン −1,3−ジカルボキシレートであると同定された。
1H−NMR(600MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:0.801(t,3H)、1.191(m,2H)、1.302(m,2H)、1.384(m,2H)、1.1.512(m,4H)、1.677(m,2H)、1.757(d,2H)、2.157(m,3H)、3.653(s,6H)
13C−NMR(600MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:6.96、28.70、33.36、33.56、35.75、37.79、39.97、40.85、442.23、42.46、43.10、45.82、47.90、51.22、51.68、171.89、177.69
これらの測定結果から総合的に判断して、ジ体〔B〕はメチル−3−エチル−5−(2−メトキシ−2−オキソエチル)アダマンタン−1−ジカルボキシレートであると同定された。
1H−NMR(600MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:0.785(t,3H)、1.159(m,2H)、1.275(m,4H)、1.321(m,2H)、1.376(m,2H)、1.479(m,4H)、2.127(m,5H)、3.647(s,6H)
13C−NMR(600MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:7.03、29.15、33.75、33.99、35.77、40.11、42.01、45.92、46.86、47.90、51.12、172.06
これらの測定結果から総合的に判断して、ジ体〔C〕はジメチル−2,2−(5−エチルアダマンタン−1,3−ジイル)ジアセテートであると同定された。
カルボニル化反応圧力を2MPaで行った以外は実施例1と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率99.1モル%,ジ体合計収率39.5モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々7.2%、61.0%、13.6%、18.2%であった。
カルボニル化反応時間を6時間で行った以外は実施例2と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率99.1モル%,ジ体合計収率45.0モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々16.5%、54.3%、11.6%、17.5%であった。
カルボニル化反応のBF3仕込み量を13.6g(0.20mol)で行った以外は実施例2と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率99.0モル%,ジ体合計収率36.3モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり
、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々18.6%、58.1%、7.6%、15.8%であった。
カルボニル化反応のBF3仕込み量を34.1g(0.50mol)で行った以外は実施例2と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率98.9モル%,ジ体合計収率26.6モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々15.6%、47.1%、14.3%、23.0%であった。
カルボニル化反応の各仕込み量を1−エチルアダマンタン33.0g(0.20mol)、無水HF160.8g(8.03mol),BF3 10.2g(0.15mol)、にした以外は実施例2と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率98.9モル%,ジ体合計収率45.4モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々10.5%、56.7%、13.7%、19.0%であった。
カルボニル化反応のHF仕込み量を160.8g(8.03mol)で行った以外は実施例2と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率99.3モル%,ジ体合計収率27.9モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々11.4%、57.6%、9.3%、21.7%であった。
カルボニル化反応温度を86℃で行った以外は実施例2と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率99.0モル%,ジ体合計収率37.2モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々10.5%、54.5%、14.3%、20.7%であった。
カルボニル化反応温度を70℃で行った以外は実施例2と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率99.1モル%,ジ体合計収率42.2モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々18.5%、56.1%、10.9%、14.5%であった。
カルボニル化反応温度を50℃で行った以外は実施例2と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率98.8モル%,ジ体合計収率24.0モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々8.2%、75.0%、10.6%、6.2%であった。
カルボニル化反応の各仕込み量を1−エチルアダマンタン33.0g(0.20mol)、無水HF201.0g(10.04mol),BF3 10.2g(0.15mol)、一酸化炭素圧3MPa、反応時間6時間で行った以外は実施例9と同様にカルボニル化とエステル化と反応生成液の処理を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで内部標準分析した結果、転化率100モル%,ジ体合計収率55.1モル%(1−エチルアダマンタン基準)であり、ジ体〔A〕、ジ体〔B〕、ジ体〔C〕、その他のジ体のジ体組成比は其々13.2%、60.9%、12.5%、13.4%であった。
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