以下に、本発明に係る光学的距離計測装置の実施例1から実施例7を各図面に基づき、詳細に説明する。
本発明に係る光学的距離計測装置の実施例1を以下に図1及び図2を参照しつつ説明する。本実施例は、走査ビームを測定対象物で反射する反射光学系の装置とされている。図1は、実施例に係る反射光学系の装置の構成を示すブロック図である。
この図1に示すように、コヒーレントな照射光であるレーザー光が照射(出射)される光源であるレーザー光源21と、AODドライバー24が接続されて動作が制御される音響光学素子(AOD)23との間に、このレーザー光から平行光を得られるように収差補正されたコリメーターレンズ22が配置されている。従って、本実施例では、レーザー光源21から出射された直線偏光のレーザー光が、コリメーターレンズ22により平行光とされる。
また、この音響光学素子23に続いて、2群のレンズからなる瞳伝達レンズ系25、入力されたレーザー光を2次元走査する2次元走査素子である2次元走査デバイス26、入力されたレーザー光を本来的には分離して出射するためのものである無偏光のビームスプリッタ27が、順に並んで配置されている。そして、図1に示すように瞳伝達レンズ系25に向かう側のレーザー光の光路を光軸Lとしている。さらに、ビームスプリッタ27の下側に隣り合って、2群のレンズからなる瞳伝達レンズ系30が位置し、この隣に対物レンズ31が測定対象物G1と対向して配置されている。つまり、これら部材も光軸Lに沿って並んでいることになる。
以上より、レーザー光源21から出射された照射光は、コリメーターレンズ22により平行光となり、AODドライバー24からの電気信号により音響光学素子23が照射光に変調を与える。この時の変調をDSB変調にした場合、周波数の相互に隣接した2つのビームを作成することができる。これに伴い、音響光学素子23によりビーム対とされたレーザー光が光軸Lに沿って、瞳伝達レンズ系25、2次元走査デバイス26、ビームスプリッタ27、瞳伝達レンズ系30、対物レンズ31を順に経て、測定対象物G1に照射される。この際、2次元走査デバイス26の動作により、このレーザー光が走査ビームとなって測定対象物G1上で2次元的に走査される。
そして、レーザー光源21からの直線偏光の照射光が対物レンズ31を経て測定対象物G1に照射され、測定対象物G1でこの照射光は反射される。この際、測定対象物G1にて反射した走査ビームは回折光となり、対物レンズ31、瞳伝達レンズ系30及びビームスプリッタ27の順で戻って平行光となる。
他方、光軸Lが通過する方向に対して直交する方向であって無偏光のビームスプリッタ27の隣の位置には、測定対象物G1で反射した回折光を2つの方向に分けるための分離素子である無偏光のビームスプリッタ10が位置している。これに伴いビームスプリッタ27で反射して、本来の光軸Lに対して直交する反射光の光軸Lに沿ってビームスプリッタ10にこの反射光が入射される。
また、このビームスプリッタ10の図1の左側には同じく無偏光のビームスプリッタ11が位置しており、このビームスプリッタ11の左側には偏光子1及び受光素子群5が連続して配置されていて、同じくビームスプリッタ11の下側には偏光子2及び受光素子群6が連続して配置されている。但し、これら偏光子1と偏光子2とは相互に直交する偏光軸を有している。従って、ビームスプリッタ11で分離された光は、相互に直交する偏光軸を有する2つの偏光子である偏光子1と偏光子2を介して、偏光軸を直交させた光が受光素子群5と受光素子群6にそれぞれ入射される。
さらに、このビームスプリッタ10の図1の上側には、無偏光のビームスプリッタ12が位置しており、このビームスプリッタ12の左側には偏光子3及び受光素子群7が連続して配置されていて、同じくビームスプリッタ12の上側には偏光子4及び受光素子群8が連続して配置されている。但し、これら偏光子3と偏光子4とは相互に直交する偏光軸を有している。従って、ビームスプリッタ12で分離された光は、相互に直交する偏光軸を有する2つの偏光子である偏光子3と偏光子4を介して、偏光軸を直交させた光が受光素子群7と受光素子群8にそれぞれ入射される。
以上より、偏光子1の偏光軸と偏光子2の偏光軸は相互に90度相違した向きとなっており、偏光子3の偏光軸と偏光子4の偏光軸も相互に偏光軸は90度相違した向きとなっている。但し、偏光子1の偏光軸と偏光子3の偏光軸とが相互に45度を有するように、これらを配置するものとする。なおここで、ビームスプリッタ11、12が分離用ビームスプリッタとされ、ビームスプリッタ11および偏光子1、2が第1偏光素子とされ、ビームスプリッタ12および偏光子3、4が第2偏光素子とされる。
具体的には、測定対象物G1が複屈折性や旋光性を有する物体の場合、照射された照射光の偏光状態が測定対象物G1で変化を受けつつ反射され、対物レンズ31、瞳伝達レンズ系30を経てビームスプリッタ27に戻り、このビームスプリッタ27でビームスプリッタ10側に反射される。また、この反射された光は、ビームスプリッタ10により2つの方向に分けられ、それぞれがさらにビームスプリッタ11とビームスプリッタ12により計4つに分けられる。
これに伴って、ビームスプリッタ11で分離された光は、相互に直交する偏光軸を有する偏光子1と偏光子2を介して、それぞれ受光素子群5と受光素子群6に入射され、受光素子群5で強度I1の光を検出し、受光素子群6で強度I2を検出する。同様に、ビームスプリッタ12で分離された光は、相互に直交する偏光軸を有する偏光子3と偏光子4を介して、それぞれ受光素子群7と受光素子群8に入射され、受光素子群7で強度I3の光を検出し、受光素子群8で強度I4を検出する。
尚、これら各受光素子群5〜8は、測定対象物G1のファーフィールド(遠視野)面に配置されているだけでなく、本実施例では2つの光センサである受光素子5A〜8A、5B〜8Bにより構成されている。但し、この内の受光素子群5を例として挙げれば、図2に示すように走査ビームLAのスポットの中心となる光軸Lに沿った方向に対して略垂直な面上であってこの光軸Lを通る境界線Sを挟んで、これら受光素子5A、5Bがそれぞれ配置されている。つまり、境界線Sの片側にずれて受光素子5Aが位置し、これと境界線Sの反対側にずれて受光素子5Bが位置していて、測定対象物G1で反射することで経由した走査ビームLAをこれら各受光素子5A、5Bが受光する。
さらに、各受光素子5A、5Bは図示しない光電変換部を有した構造とされていて、各受光素子5A、5Bが走査ビームLAを受光してそれぞれ光電変換することになる。また、この各受光素子5A、5Bは、信号比較器33にそれぞれ接続されるのに伴って、信号比較器33が各受光素子5A、5Bからの信号により、各偏光軸の強度情報や測定対象物G1の位相情報を得ることになる。そして、この信号比較器33が、最終的にデータを処理して測定対象物G1のプロフィル等の計測値を得るデータ処理部34に繋がっている。このため、本実施例では、これら信号比較器33及びデータ処理部34が計測部とされている。
また、レーザー光源21は半導体レーザーであり、コヒーレントなレーザー光を発生する。このレーザー光をコリメーターレンズ22により平行光束にし、瞳伝達レンズ系25に入射させる。このとき、レーザー光の入射ビーム径は、瞳伝達レンズ系25との兼ね合いより、絞り機構(図示せず)等を用いて適正化しておくことにする。
この一方、音響光学素子23にはAODドライバー24より、sin(2πfct)sin(2πfmt)のようなDSB変調信号が変調信号として加えられる。この様な変調を行うと、fc+fmとfc-fmの2つの周波数変調が加えられたことになる音響光学素子23は、ブラッグ回折格子のピッチdに相当する音波の粗密波を発生する。すなわち、超音波の速度をVa、印加する周波数をfとすると、d=Va/fとなる。具体的には、この粗密波により、音響光学素子23に入射されたレーザー光は、±1次回折光に分離され、各々の回折光は周波数fc±fmの周波数で変調される。
ここで、音響光学素子23と2次元走査デバイス26との間に配置されている瞳伝達レンズ系25は、コリメーターレンズ22の出射面位置を次の2次元走査デバイス26に共役に伝達するための光学系である。この瞳伝達レンズ系25を通過したレーザー光は、2次元走査デバイス26を経由して走査ビームとなってビームスプリッタ27に送られるが、このビームスプリッタ27からの走査ビームは、対物レンズ31の瞳位置に共役にする瞳伝達レンズ系30を介して対物レンズ31に入射する。
次に、無偏光のビームスプリッタ10〜12及び偏光子1〜4を介して偏光された光を受光する各受光素子群5〜8に関して説明する。
各受光素子群5〜8に関しては、それぞれ両方の受光素子5A〜8A、5B〜8Bでそれぞれ受光して光電変換することもできる。但し、上記と同様に受光素子群5を例として説明が、図2に示す光軸Lを通る境界線Sを境界とした2分割受光領域の片側に位置する受光素子のみでも、各偏光軸の強度情報や位相ずれの情報である位相情報を検出できることが、本実施例の一つの特徴である。
このように2分割受光領域の片側のみでも各偏光軸の強度情報や位相情報を検出できる理由としては、図2に示す対物レンズ31の光軸L方向に対して略垂直な方向を境界線Sとし、この境界線Sで区分けされた片側にある一方の受光素子5Aのみでも十分に強度情報や位相情報を検出でき、または、他の片側にある他方の受光素子5Bのみでも同じく十分に位相情報を検出できるからである。もちろん、両方の受光素子5A、5Bで情報を同時に検出することもできる。
ただし、測定対象物G1から回折されて各々の受光素子5A、5Bに到達する光の位相は、光軸Lを境界とする受光素子5A、5B間で逆相になる。従って、受光素子5A、5Bで光電変換された相互に逆相の各々の位相情報の信号に基づいて信号比較器33が最終的にデータを処理してデータ処理部34が測定対象物G1のプロフィル等の光学的距離の計測値を得ることになる。
つまり、前述の測定対象物G1で反射された走査ビームを光電変換した信号により、各偏光軸の強度情報や測定対象物G1の位相情報を各受光素子群5〜8から信号比較器33が得て、この信号比較器33と接続されたCPUやメモリ等からなるデータ処理部34にこの強度情報や位相情報を送り込むことになる。これに伴い、データ処理部34でこの強度情報や位相情報を平面に対する走査情報とともに記録していき、測定対象物G1の表面についてのプロファイル情報等の計測値を簡単に導くことができる。
以上より、本実施例によれば、面内の分解能が高く、しかも面外において高さや屈折率分布に対する分解能が高く、また、通常の結像光学系では取得不可能な細胞等の厚みを持った生体試料の3次元的な情報を生きた状態でリアルタイムに得ることのできる光学的距離計測装置が提供されるようになる。
これに伴って、このような本光学系を用いれば、2次元走査を行うたびに3次元計測データを取得することが可能となる。このため、本光学系によれば、細胞や微生物の状態変化や、この状態変化に伴うこれらの表面状態および内部状態の過渡的な変化等を、高速に観察、計測することができる。従って、製品化されている裸眼立体ディスプレイや偏光めがねを使用した3次元ディスプレイ等を用いることにより、3次元立体画像を表示することもできるので、教育や研究、医療において、有用な装置とすることができる。
他方、本実施例において偏光状態を検出するために少なくとも3つの無偏光のビームスプリッタ10〜12と4つの偏光子1〜4を採用したが、これらの替わりに相互に角度を相違させた複数の偏光ビームスプリッタを配置することで、無偏光のビームスプリッタ及び偏光子を採用した場合と同様な計測が可能になる。尚、ビームスプリッタ11、12自体を偏光ビームスプリッタに替えた場合、偏光子は不要になる。特に偏光ビームスプリッタを採用した場合には、相互に直交する偏光状態を作り出すことができるので、偏光ビームスプリッタを2組用意し、一方の組の偏光ビームスプリッタを他方の組の偏光ビームスプリッタに対して45°回転させることで、効率よく偏光状態の計測が行える。
尚、本光学系においては、図1に示す一つの2次元走査デバイス26を用いた例で説明をしたが、単純な一方向だけのデータが必要なアプリケーションであれば、この2次元走査デバイスを1次元走査デバイスに置き換えても同様な効果が得られることになる。これらの1次元走査デバイスとして、ガルバノミラー、レゾナントミラー、回転ポリゴンミラー等を採用することができる。
また、一つの2次元走査デバイス26の替わりに、2つの独立した1次元走査デバイスを相互に直交したX方向用とY方向用の2つ用意し、これらを瞳伝達レンズ系25の前後に配置することによっても2次元走査デバイス26と同様の機能を実現できる。なお、例えばマイクロマシーンの技術を用いたマイクロミラーデバイスを用いても良い。このマイクロミラーデバイスとしては、1次元用、2次元用ともに知られ製品化されている。さらに、1次元走査デバイスを1つと測定対象物G1を支持する図示しないテーブルとを相互に直交する形で採用することもできる。
尚、本実施例においては、相互に近接した2つの照射光によるDSB変調を採用したので、受光素子で検出する場合はヘテロダイン検波となるが、単一周波数変調としても良く、この場合には一つの照射光の検波となる。また、本実施例の場合、照射光は測定対象物G1に直線偏光で照射され、ビームスプリッタ27で反射された光は直線偏光主体となる。ここで、「主体」とは、測定対象物G1により偏光面が回転するものの、大きく変化することは少ないので、照射した偏光状態がわずかに変化するという意味である。
次に、本発明に係る光学的距離計測装置の実施例2を以下に図3を参照しつつ説明する。本実施例も走査ビームを測定対象物で反射する反射光学系の装置とされている。
図3は、実施例に係る反射光学系の装置の構成を示すブロック図である。主要な光学系は前記した装置と同じなので説明を割愛するが、本実施例では、光学系の途中で平行光束となる部位である瞳伝達レンズ系25と2次元走査デバイス26との間に1/4波長板14を配置し、この1/4波長板14によりレーザー光源21よりのレーザー光である照射光を円偏光としている。なお、本実施例においては、音響光学素子23及びAODドライバー24は必要としない。
従って、本実施例では、測定対象物G1には円偏光のレーザー光である照射光が照射される。ただし、測定対象物G1が複屈折性や旋光性を有する物体の場合、この測定対象物G1が有する複屈折性や旋光性により照射された偏光状態が変化を受けて楕円偏光として反射され、対物レンズ31、瞳伝達レンズ系30を経てビームスプリッタ27まで戻る。そして、このビームスプリッタ27にて実施例1と同様にビームスプリッタ10側に反射される。
この結果として、ビームスプリッタ11、12及び偏光子1〜4を介して、受光素子群5〜8においては楕円偏光として回折光が実施例1と同様に検出される。尚、瞳伝達レンズ系25と2次元走査デバイス26との間に1/4波長板14を配置する替わりに、光学系の途中で平行光束となる部位である対物レンズ31の手前の部分とされる瞳伝達レンズ系25と対物レンズ31との間に、この1/4波長板14を配置しても良い。
以上より、本実施例も実施例1と同様に、面内の分解能が高く、しかも面外において高さや屈折率分布に対する分解能が高く、また、通常の結像光学系では取得不可能な細胞等の厚みを持った生体試料の3次元的な情報を生きた状態でリアルタイムに得ることのできる光学的距離計測装置が提供されるようになる。
尚、本実施例においては、半導体レーザーであるレーザー光源21からのレーザー光が直接変調となっていることから、当然に単一周波数変調となる。また、1/4波長板14はレーザー光源21寄りの位置となる瞳伝達レンズ系25と2次元走査デバイス26との間に配置されていることから、測定対象物G1に円偏光で照射され、ビームスプリッタ27で反射された光は円偏光主体となる。
次に、本発明に係る光学的距離計測装置の実施例3を以下に図4を参照しつつ説明する。本実施例は、走査ビームが測定対象物を透過する透過光学系の装置とされている。
図4は、本実施例に係る透過光学系の装置の構成を示すブロック図である。主要な光学系は前記した反射光学系の装置と同じなので説明を割愛するが、この透過光学系の装置では、実施例1及び実施例2と比較して対物レンズ31で集光された光が測定対象物G2を透過することになる。
また、本実施例では、透過光学系であることからビームスプリッタ27が不要になり、これに合わせて測定対象物G2を介した対物レンズ31と反対側における光軸Lの延長線上の位置に、測定対象物G2を透過した光を平行光とするレンズ13及びビームスプリッタ10が連続して配置されている。このため、対物レンズ31にて集光された光は測定対象物G2を透過して、レンズ13により平行光束になる。ビームスプリッタ10以降に、実施例1の反射光学系の装置で使用したビームスプリッタ11、12及び偏光子1〜4を位置関係が相違するものの同様に配置することで、実施例1及び実施例2の反射光学系の装置と同様に動作する。
具体的には、ビームスプリッタ10の下側にビームスプリッタ11が位置しており、このビームスプリッタ11の下側には偏光子1及び受光素子群5が連続して配置されていて、同じくビームスプリッタ11の左側には偏光子2及び受光素子群6が連続して配置されている。さらに、ビームスプリッタ10の図4の左側にビームスプリッタ12が位置しており、このビームスプリッタ12の左側には偏光子3及び受光素子群7が連続して配置されていて、同じくビームスプリッタ12の上側には偏光子4及び受光素子群8が連続して配置されている。
また、入射系の平行光束になる部分とされる対物レンズ31の手前の部分とされる瞳伝達レンズ系25と対物レンズ31との間に、1/4波長板14が配置されている。このようにすれば実施例2と同様に測定対象物G2に円偏光状態のレーザー光が照射される。これに伴い、本実施例においても音響光学素子23及びAODドライバー24は存在していない。
特に、通常の顕微鏡のように対物レンズ31の直前にポートを用意し、1/4波長板14を着脱可能に挿入できるように切替機構を設けておくことが考えられる。このようにすれば、ポートに対しての1/4波長板14の着脱切り替えにより、直線偏光のレーザー光の入射と円偏光のレーザー光の入射の場合とで、測定対象物G2の偏光状態による変化をさらに詳細に解析可能ともなる。
なお、図3に示す実施例2の反射光学系の装置でも同様に、対物レンズ31の手前の部分に1/4波長板14を配置すれば、同様に切替機構を設けることで、この1/4波長板14を着脱可能にできる。他方、本実施例でも図3に示すように2次元走査デバイス26と瞳伝達レンズ系30の間に1/4波長板14を配置しても良い。
他方、本実施例においても偏光状態を検出するために少なくとも3つの無偏光のビームスプリッタ10〜12と4つの偏光子1〜4を採用したが、実施例1と同様にこれらの替わりに相互に角度を相違させた複数の偏光ビームスプリッタを配置することで、無偏光のビームスプリッタ及び偏光子を採用した場合と同様な計測が可能になる。また、実施例1と同様に本実施例においても受光素子群5〜8は、測定対象物G2のファーフィールド面に配置されているだけでなく、それぞれ2つの受光素子により構成されている。
従って、実施例1と同様に、受光素子群5〜8を構成する受光素子5A〜8A、5B〜8Bでそれぞれ光電変換された偏光軸の強度情報だけで無く位相情報が得られる。そして、この位相情報の信号により、信号比較器33が測定対象物G2の位相情報を得ることになる。最終的にデータを処理してデータ処理部34が測定対象物G2のプロフィル等の光学的距離の計測値を得ることができる。この結果として、本実施例によっても、実効上分解能が高く空間周波数の欠損のない光学的距離計測装置が提供されるようになる。
特に、本実施例のように透過光学系の装置では、実施例1及び実施例2と同様な作用効果を奏するだけでなく、無染色、非侵襲で生きたままの細胞の状態変化をリアルタイムに観察できるので、iPS、ES細胞の正常かどうかの検査やがん細胞の有無検査等に大きな役割を果たすことができる。これは、電子顕微鏡のような高倍率であっても生体を殺した状態でないと観測できない測定器とは大きく異なる特徴である。
尚、本実施例においては、レーザー光源21からのレーザー光が直接変調となっていることから、当然に単一周波数変調となる。また、1/4波長板14は対物レンズ31の手前の部分とされる瞳伝達レンズ系25と対物レンズ31との間に配置されていることから、測定対象物G2に円偏光で照射され、レンズを透過した光は円偏光主体となる。
次に、前記した実施例1〜3において光学的距離、複屈折率、偏光情報等を同時に計測できる理由を以下に説明する。
直線偏光、もしくは1/4波長板14により円偏光となったレーザー光が、測定対象物G1、G2によりビームスプリッタ11、12及び各々の偏光軸を有する偏光子1〜4を経て、受光素子群5〜8にて強度I1,I2,I3,I4の光を得ることになる。この時における受光素子群5〜8で検出される光の強度と楕円偏光との関係を図5に示すグラフを参照しつつ説明する。
図5に示す軸Exを偏光子1の偏光軸とし、同じく軸Eyを偏光子2の偏光軸とすることで、光の電場ベクトルを設定する。この際、測定対象物G1、G2による偏光は一般的に楕円偏光となる。この楕円偏光を図5に表す楕円Dとした場合、この楕円Dの長軸Tに沿った長径をaとし、これと直交する短径をbとするのに伴い、軸Exに対する楕円Dの長軸Tの傾き角θを下記(1)式のように表すことができる。
ここで、受光素子群5で検出される強度I1は、軸Ey方向において0の値なので下記(2)式で求まる。同様に受光素子群6で検出される強度I2は、軸Ex方向において0の値なので下記(3)式で求まる。
一方、軸Ey及び軸Exに対して45°傾いた傾斜軸Sx、 Syでは簡単な変形より、受光素子群7で検出される強度I3の値が下記(4)式で求まる。同様に受光素子群8で検出される強度I4の値が下記(5)式で求まる。ここで、軸Exに対して45°傾いた傾斜軸である偏光子3の偏光軸をSxとし、同様に軸Eyに対して45°傾いた傾斜軸である偏光子4の偏光軸をSyとする。
これらの式から、(2)式+(3)式の左辺の値に対して(4)式+(5)式の左辺の値は、2倍となるため、(2)式から(5)式のうち独立な方程式は3つとなる。したがって、上記式より、a,b,θの3変数が独立に求められる。これら3変数a,b,θの式を記述すると下記のようになる。なおここで、β=cosθとする。また、強度I1と強度I2の値により、2つの値がそれぞれ求まるので、大きい値を長径aとし、小さい値を短径bとする。また、下記の3変数a,b,θの式においては、I2>I1とした場合を示してあるが、I2<I1の場合には、bが長径を表し、aが短径を表すことになる。
次に、上記光学系において、1/4波長板14を瞳伝達レンズ系25と2次元走査デバイス26との間に挿入した場合を考える。
測定対象物G1、G2には円偏光のレーザー光が照射されるが、測定対象物G1、G2が有する複屈折性により受光素子群5〜8上では、楕円偏光として上記と同様に検出される。複屈折による楕円偏光の長径方向の位相をδa、短径方向の位相をδbとすると、位相差δは下記式により求まる。
δ=δa−δb=2π/λ d(na-nb)
ここで、dは測定対象物G1、G2の厚み、naは長径方向の屈折率、nbは短径方向の屈折率をそれぞれ表す。楕円偏光の長径と短径の比をεとすると、一般に下記式によりこの比εは求まる。
したがって、上記した手順により楕円偏光の長径と短径を計測すれば、位相差δすなわち、屈折率差を検出することができる。
また、レーザー光を測定対象物G1、G2に照射しつつ走査した場合、光軸L方向に対して垂直な境界線Sを挟んだ少なくとも片側の受光素子で取得した光の変調信号を信号比較器33等が信号処理する。このことにより0次回折光の振幅M0とこの0次回折光に対する1次回折光の振幅M1との間の位相差θ0が求められるので、この位相差θ0から光学的距離nhが得られる。
ここで、γ=M1/M0とした。γは0次回折光と1次回折光との光の比である。
θoは0次回折光に対する1次回折光の位相差なので、θoとγよりΘoを求める。
さらに、Θo=(2π/λ)nhより、光学的距離nhを求めることができる。
例えば水及び細胞を図示しないプレパラートとカバーガラスとの間に挟んで測定するような場合、この光学的距離は、周りの既知の媒質である水の屈折率と2つの偏光軸における細胞の屈折率の差と高さの積で表される。上記楕円偏光の情報より楕円Dの傾き角θがわかるので、これに伴って偏光軸において検出された光学的距離と上記した楕円偏光の情報により複屈折率を導出することができる。このように光学的距離を2つの偏光軸で導出し、さらに、少なくとも3つの偏光軸にて楕円偏光の状態を検出することで、光学的距離、複屈折率、偏光情報等を同時に計測できる。
しかも後程述べる本発明の各実施例によれば、これらの情報の取得が空間周波数の高い領域で可能となるので、極めて高い分解能で細胞等の動的変化を追うことができる。さらに、偏光状態の変化や複屈折率を検出することで、細胞を構成している物質を類推することも可能となる。また、複屈折率や複屈折性等をある範囲で抜き出して表示することにより、物質の動きを無染色にて視覚的かつ3次元的に表すこともできる。
すなわち、入射の偏光状態を予め固定しておけば、測定対象物G1、G2の有する旋光性や複屈折性の情報が反映する楕円偏光の状態を少なくとも相互に異なる3つの偏光軸を有する偏光子を通過した光量で同定することができる。
上記した手順は、細胞に染色が施されているといったような強度情報のみを有する場合にも適用できる。この場合、受光素子群5〜8を構成する2つの受光素子5A〜8A、5B〜8Bの両方を用いずに、光軸Lを境界とした片側の受光素子5A〜8Aで得られたデータでも良く、これら2つの受光素子5A〜8A、5B〜8Bの合算データでも良い。つまり、この強度情報のみの用途に限定するならば、受光素子は1つでも良い。ただし、この場合、染色された物質と細胞の有する物質のいずれが屈折率に影響を与えたか否かの判断はできない。
そこで、光軸Lを境界とした片側の受光素子5A〜8A或いは受光素子5B〜8Bにて情報を取得し、無染色の細胞のように位相情報を有するものに対して、その光学的距離を可視化もしくは計測した情報と本偏光状態の解析結果の両方を考慮することが考えられる。このことにより、測定対象物G1、G2の有する複屈折を定量化し、またその光学軸を決められることが本発明の実施例における大きな特徴である。
この際、レーザー光の走査に伴う空間周波数を受光素子にて電気的信号に変換し、この電気的信号の直流成分や交流成分等を用い、信号処理により定量化するので、測定対象物G1、G2内に構造がある場合には、本発明は特に有効となる。すなわち、測定対象物G1、G2の光学的距離とともに内部の偏光状態を計測できるので、3次元的に屈折率分布等をリアルタイムの測定できることになる。また、以下の実施例において述べるが、0次回折光と空間周波数の高い1次回折光を干渉させる光学系を併用することで、光学的距離と偏光状態の解析が、従来の光学顕微鏡よりも高い分解能で実行することができる。
本発明に係る光学的距離計測装置の実施例4を以下に図6を参照しつつ説明する。
本実施例は、0次回折光と高い空間周波数の1次回折光を合成する光学系に本発明を適用する例であり、図6はこの実施例の構成を示す概略図である。本実施例では、光を照射する光源であるレーザー光源21が図示しないコリメーターレンズ22、瞳伝達レンズ系25、30、2次元走査デバイス26等の光学系を介して、対物レンズ31と対向して配置されている。このため、このレーザー光源21が照射した光が、透過物の測定対象物G2に収束照射されている。このレーザー光源21の収束照射の照射光軸とされる光軸L上には、凸レンズとされるレンズ45が位置していて、測定対象物G2を透過して出射された光束をレンズ45が平行な光束に変換している。
このレンズ45の下方の光軸L上には、レンズ45から出射された平行な光束をそれぞれ左右に分割する2つのビームスプリッタ50、53が連続して配置されており、これらの下方の光軸L上には、ビームスプリッタ10〜12、偏光子1〜4、受光素子群5〜8が実施例3と同様に配置されている。このため、光軸L上の光は、これら光学素子のセットによって偏光軸の相互に異なる4つの偏光の強度情報に変換される。
この一方、光軸Lに対して図6の右側に傾きを有した傾斜光軸とされる光軸L1上には、凸レンズとされるレンズ46が位置しており、このレンズ46が測定対象物G2から出射された光束を平行な光束としている。この光軸L1上には、この平行な光束を下方に反射するための反射鏡48が配置されており、また、この反射鏡48の下方には、ビームスプリッタ51が位置している。このため、レンズ46とビームスプリッタ51との間に配置される反射鏡48が、レンズ46からの出射光をビームスプリッタ51側に反射させている。他方、上記と同様の構成を有したレンズ47、反射鏡49、ビームスプリッタ52が光軸Lを挟んで対称に図6の左側にも光軸L2に沿って配置されている。
そして、レンズ45により平行光とされた測定対象物G2からの0次回折光の一部は、ビームスプリッタ50を介して、ビームスプリッタ51に送られる。光軸Lに対して斜めに配置されたレンズ46により平行光束となった1次回折光とこの0次回折光の一部とが、ビームスプリッタ51により合成される。
同様にレンズ45により平行光とされた測定対象物G2からの0次回折光の一部は、ビームスプリッタ53を介して、ビームスプリッタ52に送られる。光軸Lに対してレンズ46と反対側の斜めに配置されたレンズ47により平行光束となった−1次回折光とこの0次回折光の一部とが、ビームスプリッタ52により合成される。
本実施例においては、ビームスプリッタ51の下側には、ビームスプリッタ12、偏光子3、4、受光素子群7、8が配置されている。また、ビームスプリッタ52の下側には、ビームスプリッタ11、偏光子1、2、受光素子群5、6が配置されている。
さらに、前述の受光素子群5〜8だけでなく、受光素子群7、8や受光素子群5、6が、これら受光素子群からの信号を比較するための信号比較器33にそれぞれ接続されている。そして、この信号比較器33が、最終的にデータを処理して測定対象物G2のプロフィル等を得るデータ処理部34に繋がっている。このため、信号比較器33及びデータ処理部34に、光軸L上の0次回折光を受光する受光素子群5〜8、光軸Lに対して右側に位置する受光素子群7、8及び、光軸Lに対して左側に位置する受光素子群5、6からのそれぞれ偏光の強度情報が入力されてデータを処理するので、これら信号比較器33及びデータ処理部34が計測部とされる。
具体的には、ビームスプリッタ51により合成された光は、ビームスプリッタ12、偏光子3、4及び受光素子群7、8により偏光軸の相互に異なる2つの偏光の強度情報に変換される。また、ビームスプリッタ52により合成された光は、ビームスプリッタ11、偏光子1、2及び受光素子群5、6により偏光軸の相互に異なる2つの偏光の強度情報に変換される。但し、偏光子3、4による偏光軸に対して偏光子1、2による偏光軸はそれぞれ45°傾いている。
つまり、1次回折光と0次回折光の一部及び、−1次回折光と0次回折光の一部は、偏光軸の異なる4つの偏光に分離され、受光素子群7、8及び受光素子群5、6でそれぞれ強度情報に変換される。この4つの強度情報のうち前述のように3つが独立なので、これらから楕円偏光状態を検出することができる。また、光軸L上の0次回折光に関しても、偏光軸の異なる4つの偏光に分離され、受光素子群5〜8により強度情報に変換される。
この時、測定対象物G2が位相物体であれば、1次回折光と−1次回折光は位相が相互に180°異なるので、光学的距離情報は片側の2つの受光素子群で取得することができる。もちろん、光軸Lを挟んだ両側の計4つの受光素子群で光学的距離情報を取得することもできる。また、偏光に関する情報は、±1次回折光には依存しないので、両方の受光素子群で異なる偏光軸の情報を取得してもよいことになる。
以上のようにすれば、測定対象物G2が複屈折性や旋光性を有していた場合、例えば左側のビームスプリッタ52により合成された光から受光素子群5にて取得した光学的距離と受光素子群6にて取得した光学的距離は、相互に異なる値となって計測される。この場合、受光素子群5及び受光素子群6にて受光した2つの光は同じパスを通過しているので、異なった値は測定対象物G2の屈折率の違いを表すことになる。
この光学的距離の情報と楕円偏光の長径と短径の比等の情報より、複屈折を有する測定対象物G2の屈折率を計測可能となる。この場合、特に0次回折光と高い空間周波数を有する1次回折光が走査により変調をうけ、これを受光素子群が検出するので、高分解能を有する光学的距離情報と同時に高分解能の偏光情報を得ることができる。このように複屈折率や複屈折性等の情報から細胞等を染色せずに、1回の走査で光学的距離情報と偏光情報を同時にしかも高分解能で得ることができるので、極めて有用な装置となる。
なお、4つの偏光状態を同時に取得できるような、対物レンズ31の光軸L上のビームスプリッタ10〜12、偏光子1〜4、受光素子群5〜8等よりなる光学素子のセットを各部分に配置して、ビームスプリッタ51により合成された光及び、ビームスプリッタ52により合成された光からそれぞれ強度情報を得ても良い。また、空間周波数の低い情報をそれほど必要としないならば、対物レンズ31の光軸L上の受光素子群5〜8等は省略しても良い。
また、本実施例においては、4種類の偏光子を採用しているが、一般的には相互に異なる偏光軸を有した偏光子であってもよい。但し、例えば偏光子1を基準に偏光子2,3,4の偏光軸を45,90,135度と等間隔に回転させることが考えられる。さらに、無偏光のビームスプリッタの替わりに偏光ビームスプリッタを2組採用し、これらの偏光ビームスプリッタを相互に回転させつつ配置しても良い。例えばP偏光とS偏光を検出する偏光ビームスプリッタとこの偏光ビームスプリッタに対して45度傾けた偏光ビームスプリッタで本実施例を代用してもよい。
本発明に係る光学的距離計測装置の実施例5を以下に図7を参照しつつ説明する。
本実施例は、0次回折光と高い空間周波数の1次回折光を合成して高分解能を有する別の光学系に本発明を適用する例であり、図7はこの実施例の構成を示す概略図である。
本実施例においては平行光束が対物レンズ31に入射され測定対象物G2に収束されるまでは、図6と同様となっている。つまり、実施例2の透過光学系の装置の下部にこの図に示す傾けた光学系を配置するものである。尚、図7において、コリメーターレンズ22、瞳伝達レンズ系25、30、2次元走査デバイス26等の光学系は図示を省略している。
但し、本実施例では、対物レンズ31の光軸Lに対して実質上傾けた光軸L3上に、測定対象物G2を透過して回折された0次回折光の一部とこの0次回折光を含まない空間周波数の高い1次回折光の一部を平行光とするレンズ61を配置する。これにより、測定対象物G2を透過した0次回折光の一部と1次回折光の一部とを、0次回折光の光軸Lと1次回折光の光軸L1との間の中間的な傾き角を有した光軸L3だけ傾けた状態のレンズ61に取り入れることができる。
このように0次回折光の光軸Lに対してレンズ61を傾斜して設置することで、0次回折光の一部だけでなく、同じレンズを用いた場合に比較してより高い空間周波数を有した1次回折光の一部を取り入れることができ、これら0次回折光と1次回折光の干渉を実現している。
さらに、光軸L3上にはロンボイドプリズム62が配置されていて、レンズ61により平行光束とされた光は、このロンボイドプリズム62により上記した0次回折光の一部と0次回折光を含まない空間周波数の高い1次回折光の一部を合成する。また、ロンボイドプリズム62は、透明な面であって光を入射する為の入射面62A及びこれと対向する透明な面である出射面62Bを有する他、このロンボイドプリズム62の斜めの一面を半透鏡62Cとし、この半透鏡62Cと反対の面を半透鏡62Dとし、このロンボイドプリズム62を通過して各光束を受ける光学素子をこれらの面62B〜62Dと対向して配置する。
つまり、図7に示すように、半透鏡62Cと対向して、ビームスプリッタ11、偏光子1、2、受光素子群5、6のセットを配置し、さらに、出射面62Bと対向してビームスプリッタ10〜12、偏光子1〜4、受光素子群5〜8のセットを配置し、また、半透鏡62Dと対向して、ビームスプリッタ12、偏光子3、4、受光素子群7、8のセットを配置することで、これら各光学素子のセットに光束が導かれるようにする。
さらに、受光素子群5〜8、受光素子群7、8及び受光素子群5、6が、これら受光素子群からの信号を比較するための信号比較器33にそれぞれ接続されている。そして、この信号比較器33が、最終的にデータを処理して測定対象物G2のプロフィル等を得るデータ処理部34に繋がっている。このため、光軸L3上の0次回折光の一部と1次回折光の一部をそれぞれ受光する受光素子群5〜8、受光素子群7、8及び受光素子群5、6からの偏光の強度情報が、信号比較器33及びデータ処理部34に入力されてデータを処理するので、これらが計測部とされる。
ここで、半透鏡62Cと対向するビームスプリッタ11、偏光子1、2、受光素子群5、6のセットは、レンズ61の0次回折光を含む1次回折光との干渉となっているので、対物レンズ31のNAに匹敵する空間周波数まで分離できる。一方、出射面62Bと対向するビームスプリッタ10〜12、偏光子1〜4、受光素子群5〜8のセットおよび、半透鏡62Dと対向するビームスプリッタ12、偏光子3、4、受光素子群7、8のセットでは、対物レンズ31のNA以上の1次回折光を0次回折光と合成しているので、対物レンズ31のNA以上の空間周波数まで分離できることになる。
これらの空間周波数は、測定対象物G2にレーザー光を走査しつつ照射することにより、各受光素子群で電気的な変調信号に変換されて検出される。そして、この検出された変調信号の交流信号に基づき、高分解能の光学的距離情報と同時に高分解能の偏光状態を得ることができる。
なお、ロンボイドプリズム62の各面62B〜62Dに対向する光学素子のいずれも、4つの偏光状態を同時に取得するビームスプリッタ10〜12、偏光子1〜4、受光素子群5〜8により構成してもよい。また、ロンボイドプリズム62の右側斜面である半透鏡62Dに偏光ビームスプリッタを貼り付ける等することで、下側に位置するビームスプリッタ10〜12等や右側に位置するビームスプリッタ12等の光学素子の替わりに、受光素子のみを直接配置することができる。
さらに、本実施例のロンボイドプリズム62等の光学系に相当するロンボイドプリズム等の光学系を別途追加して用意し、対物レンズ31の光軸Lを境界とした逆側に、上記した光学系と傾きが対称となるようにこのロンボイドプリズム62に対して45°傾けて、これらロンボイドプリズム等の光学系を配置することが考えられる。尚、以上のようなものは図6に示す実施例4の変形とも言える。
尚、無偏光のビームスプリッタの替わりに偏光ビームスプリッタを2組採用し、この偏光ビームスプリッタを回転させつつ配置しても良い。例えばP偏光とS偏光を検出する偏光ビームスプリッタとこの偏光ビームスプリッタに対して45度傾けた偏光ビームスプリッタで本実施例を代用してもよい。
本発明に係る光学的距離計測装置の実施例6を以下に図8を参照しつつ説明する。
本実施例は、高分解能を有するさらに別の光学系に本発明を適用する例であり、図8は、この実施例の構成を示す概略図である。
本実施例は測定対象物G2を透過した走査ビームに対して横分解能を向上させつつ処理するために、例えば実施例2の透過光学系の装置の下部にこの図に示す傾けた光学系を配置するものである。尚、図8において、コリメーターレンズ22、瞳伝達レンズ系25、30、2次元走査デバイス26等の光学系は図示を省略している。
そして、本実施例では、対物レンズ31の光軸とされる0次回折光の光軸Lに対して傾斜して、測定対象物G2より回折された光を平行光とするレンズ61が設置されている。これにより、測定対象物G2を透過した0次回折光の一部と1次回折光の一部とを、0次回折光の光軸Lと1次回折光の光軸L1との間の中間的な傾き角を有した光軸L3だけ傾けた状態のレンズ61に取り入れることができる。
このことで、0次回折光の一部だけでなく、同じレンズを用いた場合に比較してより高い空間周波数を有した1次回折光の一部を取り入れて、これら0次回折光と1次回折光の干渉を実現している。なお、図示しないものの、本実施例においては、光軸Lに対して対象な位置に同様な光学系が配置されている。
また、図8に示すように、このレンズ61を通過して光束を受ける光学素子が対向して配置されている。つまり、ビームスプリッタ10〜12、偏光子1〜4、受光素子群5〜8のセットがレンズ61と対向して配置されている。このように、レンズ61を傾けることで0次回折光の一部と1次回折光の一部を取得し、このレンズ61により平行光束にした回折光同士が光学素子のセットに導かれるようになっている。
ただし、本実施例では、前記した偏光子1〜4と受光素子群5〜8間にレンズ63をそれぞれ挿入する形で配置し、受光素子群5〜8の受光面がほぼレンズ63の焦点位置となるようにする。しかし、受光素子群5〜8の受光面が測定対象物G2の結像面である必要性は必ずしもなく、デフォーカス気味でも0次回折光と1次回折光は十分に干渉するので、この場合でも問題ない。この結果として本実施例においても、前記各実施例と同様に異なる4つの偏光軸における強度情報を各受光素子群5〜8により検出することができる。
以上より、本実施例も実施例1から実施例5と同様に、面内の分解能が高く、しかも面外において高さや屈折率分布に対する分解能が高く、また、通常の結像光学系では取得不可能な細胞等の厚みを持った生体試料の3次元的な情報を生きた状態でリアルタイムに得ることのできる光学的距離計測装置が提供されるようになる。
以上の様にすれば、極めて簡単に空間周波数の高い領域まで、情報を取得することができ、MTF特性の改善が図れる。このことで、横分解能を高くする必要のあるような測定対象物G2に対しても、信頼度の高い光学的距離を測定することが可能となる。尚、本実施例の場合、レンズ63を用いているので、このレンズ63に入射される0次回折光と1次回折光の位相差がそのまま反映される程度の波面収差は許容される。このため、高額なレンズを用いる必要性はない。
また、図4、図6、図7に示す各光学系は紙面内に描かれているが、紙面に対して垂直な方向に同様な光学系を追加して配置することとしても良い。このようにすることで、検出する偏光軸を相互に異なる4つの向きに配置できることとなり、方向性のない検出が行えるようになる。また、各偏光軸の向きについては、配置および計算を簡単にするために45°ずつ軸を相互に異ならせるようにすると良い。
本発明に係る光学的距離計測装置の実施例7を以下に図9を参照しつつ説明する。
図9はこの実施例の構成を示す概略図であるが、本実施例は実施例6の変形例である。 このため、実施例6で説明した内容を以下省略する。
図9に示すように、本実施例もレンズ61を通過して光束を受ける光学素子がレンズ61に対向して配置されているが、本実施例ではビームスプリッタ12、偏光子3、4、受光素子群7、8のセットがこのレンズ61と対向して配置されている。このことで、レンズ61を傾けて0次回折光の一部と1次回折光の一部を取得し、このレンズ61により平行光束にした回折光同士が光学素子のセットに実施例6と同様に導かれるようになっている。
この一方、本実施例では対物レンズ31の光軸Lに対して光軸L1と対称な位置に、−1次回折光の光軸L2がある。そして、0次回折光の光軸Lと−1次回折光の光軸L2との間の中間的な傾き角を有した光軸L4だけ傾けた状態で配置したレンズ61に、測定対象物G2を透過した0次回折光の一部と−1次回折光の一部とを取り入れる。そして、図9に示すように、このレンズ61を通過して光束を受ける光学素子のセットが前記と同様に対向して配置されている。但し、光軸L4上では、ビームスプリッタ11、偏光子1、2、受光素子群5、6のセットがレンズ61と対向して配置されている。このことで傾けられたレンズ61が0次回折光の一部と−1次回折光の一部を取得し、このレンズ61により平行光束にした回折光同士が各光学素子のセットに導かれるようになっている。
また、本実施例では、前記した偏光子3、4と受光素子群7、8間にレンズ63をそれぞれ挿入する形で配置し、受光素子群7、8の受光面がほぼレンズ63の焦点位置となるようにする。ただし、受光素子群7、8の受光面が測定対象物G2の結像面である必要性は必ずしもなく、デフォーカス気味でも0次回折光と1次回折光は十分に干渉するので、この場合でも問題ない。同様に偏光子1、2と受光素子群5、6間にもレンズ63をそれぞれ挿入する形で配置し、受光素子群5、6の受光面がほぼレンズ63の焦点位置となるようにする。ただし、受光素子群5、6の受光面が測定対象物G2の結像面である必要性は必ずしもなく、デフォーカス気味でも0次回折光と1次回折光は十分に干渉するので、この場合でも問題ない。
以上の結果として本実施例においても、前記各実施例と同様に相互に異なる4つの偏光軸における強度情報を各受光素子群7、8及び受光素子群5、6が検出することができる。このため、本実施例も実施例1から実施例6と同様に、面内の分解能が高く、しかも面外において高さや屈折率分布に対する分解能が高く、また、通常の結像光学系では取得不可能な細胞等の厚みを持った生体試料の3次元的な情報を生きた状態でリアルタイムに得ることのできる光学的距離計測装置が提供されるようになる。
但し、本実施例では、光軸L3上に存在する光学系のセットの偏光子3、4の偏光方向に対して光軸L4上に存在する光学系のセットの偏光子1、2の偏光方向を45度傾けている。 他方、ビームスプリッタ及び偏光子の替わりに偏光ビームスプリッタを採用することができ、この場合には、一方の偏光ビームスプリッタに対して他方の偏光ビームスプリッタを45度傾けて配置すればよい。
尚、偏光に関する情報は、最低異なる3つの偏光軸を有した偏光板等の偏光子を介した光の強度を受光素子で検出すればよいので、光学素子のセットの構成は上記したものに限らない。また、図面紙面内の光学系を偏光検出ができるような上記光学系とし、図面紙面に対して垂直方向には、光学的距離の算出や観測をするだけの偏光検出をしない光学系にすることもできる。
さらに、上記実施例では、各受光素子群を構成する各受光素子が境界線で区画された何れかの側に位置しているが、境界線を跨いで受光素子を配置しても良い。この場合でも、境界線の片側にずれた形で受光素子が位置していれば良い。
以上、本発明に係る各実施例を説明したが、本発明は前述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。