特許文献1に開示されているような物理量検出センサー(振動型センサー)では、基台と振動片とを所定の位置関係で接続することにより、振動片で物理量を検出することが可能となる。しかし、近年、物理量検出センサーの高性能化および小型化等に伴って、基台と振動片とをより精緻な位置関係で配置する必要に迫られている状況になっている。これに対し、基台と振動片との平面視での位置決めに加え、基台と振動片とを傾き等のない平行な状態で位置決めすることが、従来開示されているような、振動片単体を基台に載置して接合する、製造方法では対応困難である、という課題があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る物理量検出センサーの製造方法は、固定部、可動部、前記固定部と前記可動部とを接続している継ぎ手部、および前記固定部から延出している枠部、を有するベース部と、2つの基部に挟まれている振動腕を有する感圧素子部、前記基部から延びている接続部、および前記接続部を介して前記基部と繋がっている接合部、を有する素子片と、接合材と、を用意する工程と、前記感圧素子部が前記継ぎ手部を跨ぎ、一方の前記基部が前記固定部に、また他方の前記基部が前記可動部にそれぞれ重なるように、前記素子片を前記ベース部へ配置する工程と、一方の前記基部を前記固定部に、他方の前記基部を前記可動部に、および前記接合部を前記枠部に、それぞれ前記接合材を介して接合する工程と、前記接続部を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
本適用例の物理量検出センサーの製造方法によれば、配置する工程において、素子片とベース部とは、素子片の感圧素子部が一方の基部をベース部の固定部に対向させ、さらに継ぎ手部を跨いで、他方の基部をベース部の可動部に対向させるようにして配置される。この配置により、素子片とベース部とは、素子片とベース部とが重なる方向から見た平面視で、互いに所定の位置関係で配置される。また、素子片の接合部は、接続部を介して感圧素子部と繋がっている。この場合、接合材は、素子片における基部および接続部、あるいはベース部における基部および接続部と対向する部位、のいずれかに配置されていれば良い。つまり、感圧素子部は、2つの基部と接続部とにおいてベース部と接した状態で配置される。これにより、感圧素子部は、2つの基部でのみベース部に配置されるような従来の製造方法に比べ、ベース部に対して、より傾き等の抑制された平行状態で配置することが可能である。このように配置された素子片とベース部とは、接合する工程において、一方の基部と固定部、他方の基部と可動部、接合部と枠部、のそれぞれが接合材で接合される。接合する工程では、配置する工程を経ていることにより、基部および接合部の位置で素子片とベース部とを正確な位置関係を保って接合することが可能である。そして、除去する工程において、接続部を除去すれば、感圧素子部は、単体としてベース部の所定位置に配置されることになる。また、枠部に残った接合部は、可動部が撓む等の動作以外の不要な振動等を抑制する効果を奏する。なお、ここでいう感圧素子部は背景技術における振動片に該当し、可動部等を含むベース部は、基台に該当する。
[適用例2]上記適用例に記載の物理量検出センサーの製造方法において、前記用意する工程では、前記素子片が、前記感圧素子部を挟んでいる2つの前記接合部を有することが好ましい。
この方法によれば、素子片は2つの接合部を有し、これら接合部が感圧素子部を挟んで配置されている。このような素子片を用意することにより、感圧素子部は、配置する工程および接合する工程を経てベース部に接合されると、2つの基部を結ぶ方向と直交する方向における傾き等が確実に抑制された状態になっている。これは、2つの基部を結ぶ方向における傾き等が、両基部で接合されることによって抑制された状態になっているのと同様な効果となっている。これにより、感圧素子部は、ベース部に対して、平面視で所定位置に配置されることに加え、ベース部に対してほぼ平行な間隔を保持して配置される。
[適用例3]上記適用例に記載の物理量検出センサーの製造方法において、前記用意する工程では、前記接合材がガラスである、ことが好ましい。
この方法によれば、素子片およびベース部の少なくともいずれかに配置されている接合材は、ガラスであることが好ましく、ガラスであれば、用意する工程で予め配置しておいても、変質等の恐れがなく安定した状態が維持される。そして、接合する工程で加熱すれば、素子片とベース部との接合が容易に可能である。なお、接合材は、素子片およびベース部への熱影響を抑制するために、低融点ガラスが好ましい。
[適用例4]上記適用例に記載の物理量検出センサーの製造方法において、前記用意する工程では、前記感圧素子部と前記ベース部とが同じ材質である、ことが好ましい。
この方法によれば、接合する工程において、加熱や紫外線照射等をして接合する場合、ベース部と感圧素子部とが熱膨張や変質等で異なる挙動をしないため、感圧素子部は、接合による歪み等の不具合が生じることがない。また、ベース部とベース部に接合された感圧素子部と に熱が付与された場合等において、ベース部および感圧素子部の熱膨張が同一であるため、感圧素子部の振動腕が熱膨張差により拘束を受けるようなことがない。そのため、感圧素子部は、異なる温度環境下でも、その検出性能を維持することが可能である。
[適用例5]上記適用例に記載の物理量検出センサーの製造方法において、前記配置する工程では、突き当て治具を用意し、突き当て治具に前記ベース部および前記素子片を当接させて位置決めをする、ことが好ましい。
この方法によれば、用意する工程で用意したベース部および素子片を、突き当て治具上で位置決めして配置する。このように、突き当て治具を用いれば、ベース部または素子片に位置合わせ部等をさらに設ける必要がない。また、突き当て治具は、配置する工程より後の工程でもそのまま活用でき、ベース部および素子片の正確な位置の維持に貢献すること等が可能である。
[適用例6]本適用例に係る物理量検出センサーは、固定部、可動部、前記固定部と前記可動部とを接続している継ぎ手部、および前記固定部から延出し肉厚部を有している枠部、を有するベース部と、前記継ぎ手部を跨いで前記固定部または前記可動部に接合している2つの基部、および前記基部に挟まれている振動腕、を有する感圧素子部と、を備えていることを特徴とする。
本適用例の物理量検出センサーによれば、物理量が付加されることによる可動部の動作を、感圧素子部が検出する構成である。この物理量検出センサーは、可動部を支持している固定部から延出する枠部に肉厚部を有していて、肉厚部は、可動部が撓む等の動作以外の不要な振動等を抑制する働きを果たしている。このような肉厚部を有する物理量検出センサーは、物理量に応じて可動部が的確に動作して、高い検出性能を有するセンサーである。
[適用例7]上記適用例に記載の物理量検出センサーにおいて、前記肉厚部は、前記感圧素子部と、前記感圧素子部を前記ベース部へ接合するための接合部と、前記感圧素子部と前記接合部とを繋いでいる接続部と、を有する素子片を前記ベース部へ位置合わせして配置し、前記感圧素子部の一方の前記基部を前記固定部に接合し、他方の前記基部を前記可動部に接合し、前記接合部を前記枠部に接合し、接合後に前記接続部を除去して前記枠部に残った前記接合部により形成されている、ことが好ましい。
この構成によれば、肉厚部の形成において、肉厚部となる接合部を有している素子片とベース部とは、素子片の感圧素子部における一方の基部をベース部の固定部に接合し、さらに継ぎ手部を跨いで、他方の基部をベース部の可動部に対向させるようにして接合している。また、素子片の接合部は、接続部を介して感圧素子部と繋がっていて、感圧素子部は、2つの基部と接続部とにおいてベース部に接合している。このように接合された素子片とベース部とは、接続部を除去すれば、感圧素子部は、単体としてベース部の所定位置に配置されることになる。即ち、感圧素子部は、ベース部に対して、素子片とベース部とが重なる方向から見た平面視で、互いに所定の位置関係に配置されていて、また、ベース部に対してほぼ平行な間隔を保持して配置されている。そして、接続部の除去により枠部に残った接合部は、可動部が撓む等の動作以外の不要な振動等を抑制する働きを果たす肉厚部として機能する。これにより、物理量検出センサーは、高性能な検出機能を有することになる。
[適用例8]本適用例に係る物理量検出装置は、上記適用例に記載の物理量検出センサーと、前記物理量検出センサーを収容するパッケージと、を備えていることを特徴とする。
本適用例の物理量検出装置によれば、物理量検出センサーをパッケージに収容していることにより、パッケージ外の雰囲気や温度等の外乱要因による影響を抑制して、物理量を検出することが可能である。また、パッケージ内を減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気等にして、物理量検出センサーの安定した検出を維持すること等も可能である。
[適用例9]本適用例に係る電子機器は、上記適用例に記載の物理量検出センサーを備えている、ことを特徴とする。
本適用例の電子機器によれば、上記適用例の物理量検出センサーの製造方法により製造された物理量検出センサーを搭載していて、この物理量検出センサーは、感圧素子部がベース部に対して、平面視で所定位置に配置されていることに加え、ベース部に対してほぼ平行な間隔を保持して配置されているため、安定した検出特性を維持することが可能である。このような電子機器は、機器としての特性および信頼性の向上を図ることが可能である。
[適用例10]本適用例に係る移動体は、上記適用例に記載の物理量検出センサーを備えている、ことを特徴とする。
本適用例の移動体によれば、上記適用例の物理量検出センサーの製造方法により製造された物理量検出センサーを搭載していて、この物理量検出センサーは、感圧素子部がベース部に対して、平面視で所定位置に配置されていることに加え、ベース部に対してほぼ平行な間隔を保持して配置されているため、安定した検出特性を維持することが可能である。このような移動体は、物理量検出センサーの検出機能により移動状態や姿勢等の把握が確実にでき、安全で安定した移動をすることが可能である。
以下、本発明の物理量検出センサーの製造方法、物理量検出センサー、物理量検出装置、電子機器および移動体について、その好適な構成例を添付図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
(物理量検出装置)
図1(a)は、本発明に係る実施形態1における物理量検出装置の構成を示す平面図である。図1(b)は、物理量検出装置の構成を示す断面図であり、図1(a)におけるI−I線に沿う断面を表している。そして、図1では、互いに直交する3つの軸として、x軸、y軸、z軸を図示している。
図1に示すように、物理量検出装置1は、パッケージ10と、ベース部21および感圧素子部22を有している物理量検出センサー20と、を備えている。まず、パッケージ10は、パッケージベース101およびリッド102からなっている。パッケージベース101は、z軸方向から見た平面視で四角形の形状をなす平板である。このパッケージベース101は、物理量検出センサー20のベース部21を固定するための段部103を有していて、それらは、y軸方向の一方の端部にx軸に沿って設けられている段部103aと、y軸方向の他方の端部における2つの角部近傍にそれぞれ設けられている段部103b,103cと、である。また、パッケージベース101は、平板を貫通している孔および孔を塞ぐための封止材からなる封止部104と、段部103a,103b,103cの設けられている面と反対側の面に形成され外部の発振回路等と接続するための外部端子107と、を有している。このパッケージベース101は、セラミックグリーンシートを焼成した酸化アルミニウム焼結体で形成されている。セラミックの酸化アルミニウム焼結体は、パッケージ用として優れているが、加工が難しい材料である。しかし、この場合、パッケージベース101が平板状であるため、平板以外の形状に形成する場合と比べて、容易に形成することができる。なお、パッケージベース101は、水晶、ガラスおよびシリコン等の材料を用いて形成することもできる。
リッド102は、内部側に凹状に形成されている収容部106を有し、パッケージベース101の段部103a,103b,103cをガイドにして、感圧素子部22を覆うように配置されパッケージベース101に固定される。このリッド102は、パッケージベース101と同じ材料や、コバール、ステンレス鋼などの金属等を用いることができ、ここでは、収容部106の形成がセラミックより容易に行なえるコバールを用いている。そして、リッド102は、シームリング105を介してパッケージベース101に接合されると、収容部106を減圧された気密状態等に封止することができる。
ここで、収容部106の封止は、パッケージベース101とリッド102との接合後、封止部104の孔から収容部106内の空気を抜いて減圧し、孔をロウ材(封止材)で塞ぐ方法で行われている。これにより、物理量検出センサー20は、減圧されて気密状態の収容部106内に封止される。なお、収容部106の内部は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填されていてもよい。なお、物理量検出装置1は、感圧素子部22がベース部21に対してリッド102の側に設けられているが、ベース部21に対してパッケージベース101の側に設けられている構成も考えられる。また、パッケージベース101が凹状に形成され、リッド102が平板であっても良い。
(物理量検出センサー)
次に、物理量検出センサー20について、図1に加え図2を参照して説明する。図2は、物理量検出センサーの構成を示す斜視図であり、図1の物理量検出装置1が備えている物理量検出センサー20を斜視した図である。
物理量検出センサー20は、パッケージベース101に固定されるベース部21と、ベース部21に固定され加速度等の物理量を検出するための感圧素子部22と、を有している。ベース部21は、水晶板からエッチング等で形成され、x−y平面に沿って位置する板状の形態である。このベース部21は、平面視で略4角形のリング状である固定部211(211a〜211f)と、固定部211の内部側(リング状内)に配置されている可動部212(212a,212b)と、固定部211と可動部212とを接続している継ぎ手部213と、を有している。
固定部211は、x軸およびy軸に沿ってリング状をなす枠部211aと、x軸に沿う一方の枠部211aの中央からy軸に沿って外部側へ突出している素子載置部211bと、y軸に沿う一方の枠部211aから分岐し枠部211aの外周に沿って素子載置部211bの近傍までL字状に延出している腕部211cと、y軸に沿う他方の枠部211aから分岐し枠部211aの外周に沿って素子載置部211bの近傍までL字状に延出している腕部211dと、x軸に沿う他方の枠部211aの一端から分岐し枠部211aの外周に沿って腕部211dの分岐近傍までL字状に延出している腕部211eと、x軸に沿う他方の枠部211aの他端から分岐し枠部211aの外周に沿って腕部211cの分岐近傍までL字状に延出している腕部211fと、を有している。
腕部211c,211d,211e,211fは、ベース部21をパッケージベース101へ固定するための部位であり、腕部211cの先端部が支持部217(217a)(図1)を介して段部103aに固定され、腕部211dの先端部が支持部217(217b)を介して段部103aに固定され、腕部211eの先端部が支持部217(217c)を介して段部103bに固定され、腕部211fの先端部が支持部217(217d)を介して段部103cに固定されている。支持部217は、この場合、接着剤であって、腕部211c,211d,211e,211fを介して、固定部211の全体を所定の間隙を設けた状態で段部103に固定している。
可動部212は、枠部211aによって囲まれていて、素子載置部211bが形成されている枠部211aに継ぎ手部213を介して接続されている。つまり、可動部212は、継ぎ手部213によって枠部211aに片持ち支持された状態である。そして、可動部212は、継ぎ手部213と反対方向へy軸に沿って延出している素子載置部212aと、素子載置部212aの両側に設けられy軸に沿ってそれぞれ延出している質量体載置部212b,212bと、を有している。
そして、可動部212の2つの質量体載置部212b,212bには、錘の役目をする質量体215がそれぞれ設けられている。質量体215は、一方の質量体載置部212bの主面側に設けられている質量体215aと、平面視で質量体215aと重なるように該主面と反対側の面に設けられている質量体215cと、他方の質量体載置部212bの主面側に設けられている質量体215bと、平面視で質量体215bと重なるように該主面と反対側の面に設けられている質量体215dと、を有している。これら質量体215は、接着部216を介して可動部212に固定されていて、接着部216は、この場合、質量体215の重心位置に設けられている接着剤であって、質量体215と可動部212とを所定の間隙を空けた状態で固定している。
継ぎ手部213は、固定部211と可動部212との間に設けられ、固定部211と可動部212とを接続している。この場合、継ぎ手部213は、そのx軸方向の幅が可動部212のx軸方向の幅よりも小さく設定されている。また、可動部212と継ぎ手部213とは、それぞれの幅方向に直交する中心線が一致している配置になっている。
そして、感圧素子部22は、固定部211の素子載置部211bに接合材223で固定されている一方の基部221aと、可動部212の素子載置部212aに接合材223で固定されている他方の基部221bと、基部221aと基部221bとの間にあって物理量を検出するための振動梁部(振動腕)222(222a,222b)と、を有している。即ち、感圧素子部22は、固定部211と可動部212とに接続し、継ぎ手部213を跨ぐように配置されている。この場合、振動梁部222は、その形状が角柱状であり、振動梁部222a,222bのそれぞれに設けられた励振電極(図示せず)に駆動信号(交流電圧)が印加されると、x軸に沿って、互いに離間または近接するように屈曲振動をする。励振電極は、駆動信号の印加のために、図示しない配線によって外部端子107と電気的に接続されている。
この感圧素子部22は、水晶の原石等から所定の角度で切り出された水晶基板を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によってパターニングすることにより形成されている。このように、感圧素子部22をベース部21と同質材料である水晶で形成すれば、感圧素子部22とベース部21との線膨張係数の差を小さくすることができて好ましい。これは、感圧素子部22およびベース部21を水晶以外の材料で形成する場合にも当てはまることである。
そして、y軸に沿う一方の枠部211aにおいて、継ぎ手部213と腕部211cとの間に位置する部位には、図1にも示してある肉厚部218(218b)が接合材223で固定され、y軸に沿う他方の枠部211aにおいて、継ぎ手部213と腕部211dとの間に位置する部位には、肉厚部218(218a)が接合材223で固定されている。この場合、接合材223は、低融点のガラスである。
次に、物理量検出センサー20の動作について説明する。図3(a)(b)は、物理量検出センサーの動作を示す断面図である。図3(a)(b)では、肉厚部218を省略して描いてある。図3(a)に示すように、物理量検出センサー20に、例えば、+z方向の矢印α1方向に物理量である加速度が印加されると、可動部212には−z方向に力が作用し、可動部212は継ぎ手部213を支点として−z方向に変位する。これにより、感圧素子部22には、y軸に沿って基部221aと基部221bとが互いに離れる方向の力が加わり、感圧素子部22の振動梁部222には引っ張り応力が生じる。そのため、振動梁部222の振動する周波数である共振周波数は、高くなる。
一方、図3(b)に示すように、物理量検出センサー20に、例えば、−z方向の矢印α2方向に加速度が印加されると、可動部212には+z方向に力が作用し、可動部212は、継ぎ手部213を支点として+z方向に変位する。これにより、感圧素子部22には、y軸に沿って基部221aと基部221bとが互いに近づく方向の力が加わり、感圧素子部22の振動梁部222には圧縮応力が生じる。そのため、振動梁部222の共振周波数は、低くなる。
物理量検出センサー20では、上記のような感圧素子部22の共振周波数の変化を検出している。即ち、物理量検出センサー20に加わる加速度は、上記の検出された共振周波数の変化の割合に応じて、ルックアップテーブルなどによって定められた数値に変換することで導出される。
なお、物理量検出センサー20は、上述した加速度センサーとして用いることができるほかに、傾斜センサーとしても用いることができる。傾斜センサーとしての物理量検出センサー20は、傾斜による姿勢の変化に応じて、物理量検出センサー20に対する重力加速度が加わる方向が変化することにより可動部212が撓み、感圧素子部22の振動梁部222に引っ張り応力や圧縮応力が生じる。そして、振動梁部222の共振周波数が変化することになり、その変化に基づいて、傾斜による姿勢の状態が導出される。
(物理量検出センサー製造方法)
次に、物理量検出センサー20の製造方法について、説明する。図4は、物理量検出センサーの製造方法を示すフローチャートである。また、図5(a)は、ベース部の形態を示す平面図、図5(b)は、素子片の形態を示す平面図である。そして、図6は、ベース部と素子片との接合方法を示す斜視図であり、図7は、接続部の除去方法を示す斜視図である。
まず、工程S1において、ベース部と素子片とを用意する。ベース部21は、図5(a)に示すように、固定部211と、可動部212と、継ぎ手部213と、を有している。また、素子片30は、図5(b)に示すように、y軸に沿って配置されている基部221aおよび基部221bを有している感圧素子部22と、感圧素子部22を挟むように感圧素子部22に対してx軸方向の対称位置に配置されている接合部31aおよび接合部31bと、基部221aの一方の端部からx軸方向へ延出してy軸方向へL字状に折れ曲がって接合部31aに接続し、さらにy軸に沿って除去用端部33aまで延在している接続部32aと、基部221aの他方の端部からx軸方向へ延出してy軸方向へL字状に折れ曲がって接合部31bに接続し、さらにy軸に沿って除去用端部33bまで延在している接続部32bと、を有している。この場合、除去用端部33a,33bは、基部221bに対してx軸方向の対称位置に設けられている。また、接合材223は、基部221a,221bおよび接合部31a,31bのベース部21と対向する面側に設けられている。この工程S1は、用意する工程に該当する。ベース部および素子片の用意終了後、工程S2へ進む。
工程S2において、突き当て治具でベース部を位置決めして配置する。ここでの配置は、図6に示すように、突き当て治具40にベース部21を載置する。突き当て治具40は、平面視でベース部21より大きな四角形状をなしていて、角部の一箇所からx軸およびy軸に沿ってL字状に延在する突起状のガイド部41と、ガイド部41からx軸方向に離れた位置にx軸に沿って設けられている突起状のガイド部42と、を有している。ベース部21の突き当て治具40への載置は、腕部211dのL字状部をガイド部41に沿って突き当てつつ、腕部211cをガイド部42に突き当てて行う。これにより、突き当て治具40に対して、ベース部21が位置決めされた状態で載置される。ベース部21の載置後、工程S3へ進む。
工程S3において、素子片をベース部に重ねて配置する。素子片30の配置は、図6に示すように、接続部32aのL字状部をガイド部41に沿って突き当てつつ、接続部32bをガイド部42に突き当てて、ベース部21に重ねる。これにより、感圧素子部22の一方の基部221aは、ベース部21の素子載置部211bに配置され、他方の基部221bは、可動部212の素子載置部212aに配置される。また、素子片30の接合部31aは、枠部211aの継ぎ手部213と腕部211dとの間に位置する部位に配置され、接合部31bは、枠部211aの継ぎ手部213と腕部211cとの間に位置する部位に配置される。このようにして、突き当て治具40により、素子片30がベース部21に位置決め配置される。素子片30の位置決め配置後、工程S4へ進む。
工程S4において、素子片に錘をのせてベース部方向に押圧をかける。つまり、突き当て治具40にそれぞれ位置決めされて配置されているベース部21および素子片30に対して、素子片30がベース部21にほぼ均等な圧力で押し付けられている状態となるように、平板状の錘50を素子片30に載置する。これら工程S2、S3およびS4は、配置する工程に該当する。錘50による押圧後、工程S5に進む。
工程S5において、ベース部21および素子片30を加熱して接合する。ベース部21および素子片30を加熱すると、基部221a,221bおよび接合部31a,31bのベース部21と対向する面側に設けられている接合材223が溶融し、ベース部21と素子片30とが接合する。この場合、ベース部21と素子片30とは、基部221a,221bの2箇所と、接合部31a,31bの2箇所と、でx軸方向およびy軸方向の位置決めがなされていて、合計4箇所で正確な配置に接合されている。この工程S5は、接合する工程に該当する。接合後、工程S6へ進む。
工程S6において、接続部を除去する。図7では、接続部32aを除去した状態を示し、一方、接続部32bは除去前の状態である。接続部32aの除去は、図7に示すように、まず、除去用端部33aと枠部211aとの間に刃状の工具を差し込んで、除去用端部33aを枠部211aから離反させ、除去用端部33aに繋がっている接続部32aを枠部211aから離反させる。これにより、枠部211aに接合されている接合部31aは、接続部32aから切り離されて枠部211a側に残り、肉厚部218aとして機能することになる。さらに、接続部32aを枠部211aから離反させていくと、接続部32aは、基部221aからも切り離されて、除去が完了する。接続部32bの除去も接続部32aの除去と同様に行い、接続部32bは、接合部31bおよび基部221aから切り離されて、除去が完了する。枠部211a側に残った接合部31bは、肉厚部218b(図1、図2)として機能することになる。ここでは、接続部32a,32bを、完全に除去する設定である。この工程S6は、除去する工程に該当する。以上で物理量検出センサー20の製造法に関するフローが終了する。
ここで、以上のような物理量検出センサー20の製造方法の特徴をまとめて述べる。物理量検出センサー20の製造方法において、素子片30は、感圧素子部22に対してそれぞれ対称に配置され感圧素子部22と接続部32a,32bで繋がっている2つの接合部31a,31bを有している。この素子片30をベース部21に接合すると、2つの基部221a,221bを結ぶ方向と直交する方向における傾き、即ちy軸(図7)回りの回転、等が抑制された状態で感圧素子部22を固定することができる。これにより、2つの基部221a,221bを結ぶ方向における傾き等が抑制された状態になっていることと合わせ、感圧素子部22は、ベース部21に対して、全方向でほぼ平行な間隔を保持し、且つ平面視でも所定位置に確実に配置される。また、接続部32a,32bの除去後、ベース部21に残った接合部31a,31bは、肉厚部218a,218bとして、可動部212が撓む等の動作以外の不要な振動等を抑制する働きをする。こうして製造された物理量検出センサー20は、物理量に応じて可動部212が的確に動作し、その動作を感圧素子部22が検出することが可能な検出性能の高いセンサーである。
また、物理量検出センサー20をパッケージに収容した物理量検出装置1によれば、パッケージ10外の雰囲気や温度等の外乱要因による影響を抑制して物理量を検出することができ、検出センサーとしての安定した検出性能を維持することができる。
(実施形態2)
次に、物理量検出センサー20の製造方法における他の好適な例について説明する。図8は、実施形態2における素子片の形態を示す平面図である。実施形態2における物理量検出センサーの製造方法は、素子片30Aの形態が実施形態1における素子片30とは異なっている。従って、異なっている箇所以外は、素子片30と同符号を付して説明する。
図8に示すように、素子片30Aは、y軸に沿って配置されている基部221aおよび基部221bを有している感圧素子部22と、感圧素子部22に対してx軸方向の対称位置に配置されている接合部31aおよび接合部31bと、基部221aの一方の端部からx軸方向へ延出してy軸方向へL字状に折れ曲がって接合部31aに接続し、さらにy軸に沿って除去用端部33aまで延在している接続部32aと、除去用端部33aからx軸方向へ延出し除去用端部33aと基部221bとを接続している接続部32cと、を有している。そして、素子片30Aは、基部221aの他方の端部からx軸方向へ延出してy軸方向へL字状に折れ曲がって接合部31bに接続し、さらにy軸に沿って除去用端部33bまで延在している接続部32bと、除去用端部33bからx軸方向へ延出し除去用端部33bと基部221bとを接続している接続部32dと、を有している。この場合、除去用端部33a,33bは、基部221bに対してx軸方向の対称位置に設けられている。また、接合材223は、基部221a,221bおよび接合部31a,31bのベース部21と対向する面側に設けられている。つまり、素子片30Aは、素子片30に接続部32cおよび接続部32dを付加した形態である。
このように、素子片30Aが接続部32aおよび接続部32bに加え、接続部32cおよび接続部32dを有していることにより、素子片30Aは、接合部31a,31bおよび基部221a,221bの4箇所が、接続部32a,32bに加え、接続部32c,32dでも接続され、歪み等を規制された状態で、ベース部21に接合されることになる。これにより、感圧素子部22の基部221a,221bは、ベース部21に対して、素子片30の場合よりも傾き等が確実に抑制され、且つ、より正確な位置に接合される。この素子片30Aを用意して製造された物理量検出センサー(不図示)は、物理量をより精緻に検出することが可能な検出性能の高いセンサーである。
(電子機器)
次に、物理量検出センサー20を用いた電子機器について、説明する。図9(a)は、物理量検出センサーを搭載しているビデオカメラを示す斜視図、図9(b)は、物理量検出センサーを搭載している携帯電話を示す斜視図である。これら電子機器としてのビデオカメラ500および携帯電話600は、本発明に係る物理量検出センサー20を搭載している。最初に、図9(a)に示すビデオカメラ500は、受像部501と、操作部502と、音声入力部503と、表示ユニット504と、を備えている。このビデオカメラ500は、物理量検出センサー20を備えており、例えば3つの物理量検出センサー20を備えていれば、X軸、Y軸、Z軸(不図示)の3方向の加速度等を検出して、手ぶれ等を補正する機能を発揮できる。これにより、ビデオカメラ500は、鮮明な動画映像を記録することができる。
また、図9(b)に示す携帯電話600は、複数の操作ボタン601と、表示ユニット602と、カメラ機構603と、シャッターボタン604と、を備えていて、電話機およびカメラとして機能する。この携帯電話600は、物理量検出センサー20を備えており、例えば3つの物理量検出センサー20を備えていれば、X軸、Y軸、Z軸(不図示)の3方向の加速度等を検出することにより、カメラ機構603の手ぶれ等を補正する機能を発揮できる。これにより、携帯電話600は、カメラ機構603により鮮明な画像を記録することができる。
(移動体)
次に、物理量検出センサー20を用いた移動体について、説明する。図9(c)は、物理量検出センサーを搭載している移動体を示す斜視図である。図9(c)に示すように、この場合の移動体700は、自動車であって、物理量検出センサー20が備えられている。移動体700において、物理量検出センサー20は、車体701に搭載されている電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)703に内蔵されている。電子制御ユニット703は、例えば物理量検出センサー20が加速度計や傾斜計として車体701の状態を検出すること等により、移動体700の姿勢や移動状況等を把握し、タイヤ702等の制御を的確に行うことができる。これにより、移動体700は、安全で安定した移動をすることができる。
以上説明した物理量検出センサーの製造方法、物理量検出センサー、物理量検出装置、電子機器および移動体は、各実施形態における形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
(変形例1)物理量検出センサー20の製造方法の工程S1(用意する工程)において、素子片30の接合部31は、2つ(接合部31a,31b)設けられているが、この形態に限定されるものではない。例えば、素子片30が1つまたは3つ以上の接合部31を有していても良い。その場合、接合部31は、感圧素子部22に対してx軸およびy軸方向のそれぞれにバランスがとれた配置であることが好ましい。
(変形例2)接合材223は、素子片30の基部221a,221bおよび接合部31a,31bに予め設けているが、基部221a,221bおよび接合部31a,31bに対向するベース部21の部位側に設ける設定であっても良い。また、基部221a,221bにおいては素子片30側に接合材223を設け、接合部31a,31bにおいてはベース部21側に接合材223を設ける設定や、素子片30およびベース部21の両側に接合材223を設ける設定等であっても良い。
(変形例3)工程S2,S3,S4(配置する工程)では、突き当て治具40のガイド部41,42によって、ベース部21と素子片30とをそれぞれの最外形で位置合わせしているが、ガイド部がピン等の形態であって、ベース部21と素子片30とを任意位置で位置合わせしても良い。また、突き当て治具40を用いずに、ロボットハンド等によって画像認識をしながらベース部21と素子片30とを位置合わせしても良い。これによれば、ベース部21や素子片30の形状変更に対して、迅速に対応することができる。
(変形例4)工程S6(除去する工程)では、素子片30の接続部32を完全に除去しているが、例えば、接合部31に所定形状が残るように設定しても良い。これによれば、接合材223を設ける面積が小さくても、十分な質量の接合部31を肉厚部218として残すことができる。
(変形例5)感圧素子部22を含む素子片30の材質は、既述した水晶のほかに例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電材料を用いることができる。また、素子片30は、感圧素子部22が圧電材料の皮膜を備えている構成であれば、シリコンやゲルマニウム等の非圧電材料を用いることもできる。
(変形例6)物理量検出センサー20は、ビデオカメラ500、携帯電話600および移動体700の他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等に適用することができる。また、物理量検出センサー20を発振源とする発振器にも適用することができる。