JP6089657B2 - 低温での水素脆化感受性に優れた高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

低温での水素脆化感受性に優れた高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高圧水素ガスに接触する部品に用いられるオーステナイト系ステンレス鋼(以下、高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼という)に関する。
たとえば、燃料電池自動車や燃料電池自動車の燃料を取り扱う水素ステーションには、水素を高圧ガス状態で貯留するタンク、バルブ、配管、配管継手等の高圧水素に接触する部品が多数必要である。かかる高圧水素ガスに接触する部品に用いる材料としては、高圧水素環境において優れた機械的強度、耐食性及び耐水素脆化を備えることが求められている。
従来、高圧水素ガスに接触する部位に用いられるステンレス鋼としては、SUS316、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼が一般的である。SUS316L等は、機械的強度、耐食性及び耐水素脆化の特性に比較的優れたものであるが、未だ改善の余地がある。たとえば、特許文献1及び2に記載されたステンレス鋼は、SUS316L等をさらに改良しようとしたものである。
また、燃料電池自動車の普及には、車載タンクの70MPa以上への高圧化が不可欠とされている。高圧の車載タンクへの水素充填時には、車載タンク内の温度上昇を抑制するために、充填前の水素を−40℃程度まで冷却するプレクールと呼ばれるステップを実施することが必要である。このため、−40℃程度の高圧水素に接触する場合の材料の特性を維持することも十分に検討する必要が出てきた。
特許第4539559号公報 特開2011−208269号公報
水素環境下で使用される一般的なオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316L等は、上述したごとく、機械的強度、耐食性及び耐水素脆化の特性に比較的優れたものであるが、Moを比較的多く含んだ高価な材料となっている点が一つの問題である。
また、オーステナイト系ステンレス鋼であっても、その成分によっては、部品への加工時等に加工誘起マルテンサイトを生じる場合がある。このマルテンサイト組織は、水素脆化感受性を高めるため好ましくない。特に、−40℃程度の低温環境下では、水素脆化感受性がより高まる。
一方、特許文献1に記載のステンレス鋼は、冷間加工による高強度化を目的として、方向の異なる2回の冷間加工を行い、冷間加工材の集合組織の状態を制限したものである。しかしながら、−40℃程度の低温下で水素脆化感受性が高まることに関して対応した点は全くない。
また、特許文献2に記載のステンレス鋼は、Mo及びN等を含み、かつ2.0%以下のCuを含むオーステナイト系ステンレス鋼であって、加工に伴う加工誘起マルテンサイトの生成を抑制可能なものとされている。しかしながら、特許文献2においても、特許文献1の場合と同様に、−40℃程度の低温下で水素脆化感受性が高まることに関して対応した点は全くなく、さらに、高価なMoを含むことを必須としており、低コスト化も実現されていない。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、Moを含有せず安価であり、−40℃においても水素脆化感受性が低い高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、質量%で、C:0.06%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.7%以下、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0%以上13.5%以下、Cr:16.5%以上20.0%以下、N:0.05%以上0.09%以下を含むと共に、式1を満足し、
式1:3.7Ni+2.5Mn−1.6Cr−0.9Si+266N−33>0
残部がFeおよび不可避不純物からなり、
金属組織中に加工誘起マルテンサイト及びδフェライトが存在しておらず、
−40℃における水素雰囲気中で行う引張試験により得られる絞り(A)と、−40℃における窒素雰囲気中で行う引張試験により得られる絞り(B)との比である相対絞り(A/B)が0.9以上であることを特徴とする低温での水素脆化感受性に優れた高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼にある(請求項1)。
上記高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼は、上記各成分の範囲内において上記式1を満たす成分組成に限定してある。これにより、機械的強度及び耐食性に優れ、−40℃の低温においても水素脆化感受性が低く、かつ安価な高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼を得ることができる。
すなわち、上記ステンレス鋼は、上記特定の成分組成への限定によって、溶融凝固時の凝固モードをAモードとすることによる偏析の軽減、δフェライトの生成及び加工誘起マルテンサイトの生成の抑制、プラナーな転位構造の抑制等を図ることができる。そして、上記ステンレス鋼は、これらの相乗効果によって、従来の水素用のステンレス鋼よりも安価で、同等以上の機械的強度及び耐食性を具備し、かつ、−40℃という低温での水素脆化感受性を低く抑えることができる特性を備えることができる。
実施例において用いる引張試験片の形状を示す説明図。
まず、上記ステンレス鋼における化学成分組成の限定理由を説明する。
C:0.06%以下、
Cは、ステンレス鋼の精錬工程において混入することを避け難い元素である。Cを過剰に含有すると粗大なクロム炭化物を形成し、炭化物周辺の金属相に含有されるCr濃度が低下してしまうため、0.06%以下とする。好ましくは、C含有量は0.05%以下とするのがよい。
Si:1.0%以下、
Siは、ステンレス鋼の溶製において還元精錬を行うために必要な成分である。しかし、Siを過剰に添加するとフェライトを安定化させ、オーステナイトを不安定化させるため、上限を1.0%とする。好ましくは、Si含有量は0.60%以下とするのがよい。
Mn:1.7%以下、
Mnは、オーステナイトの安定化に有効な元素である。しかし、Mnを過剰に添加するとガスのリークを引き起こす原因となる可能性がある粗大なMnSを形成しやすくなるため、1.7%以下とする。
P:0.040%以下、
Pは、ステンレス鋼の精錬工程において混入することを避け難い元素である。Pを過剰に含有すると凝固時にワレを生じやすくなるため、0.040%以下とした。好ましくは、P含有量は0.035%以下とするのがよい。
S:0.030%以下、
Sは、鋼中のMnと結びつきMnSを形成し、機械加工時の切り粉の破砕性を向上させるため、機械加工により部品を製作する上で切削性の改善に有効な元素である。しかし、Sを過剰に添加するとガスのリークを引き起こす原因となる可能性がある粗大なMnSを形成しやすくなるため、0.030%以下とした。好ましくはS含有量は0.010%以下とするのがよい。
Ni:8.0%以上13.5%以下、
Niは、オーステナイトの安定化に非常に有効な元素である。そのため、下限を8%とした。好ましくは、Ni含有量は12.0%以上とするのがよい。一方で、価格変動が激しい元素でもあるため、その上限を13.5%とした。
Cr:16.5%以上20.0%以下、
Crは、鋼材に優れた耐食性を付与する元素である。Cr含有量が少なすぎると加工誘起マルテンサイトが生じやすいため16.5%以上とする。好ましくは、Cr含有量は17.0%以上とするのがよい。一方、Cr含有量が多すぎるとフェライトが安定化してオーステナイトが不安定になるため20.0%以下とする。好ましくは、Cr含有量は19.5%以下とするのがよい。
N:0.05%以上0.09%以下、
Nは、加工誘起マルテンサイトやδフェライトの生成を抑制し、オーステナイトの安定化に非常に有効な元素である。また、安価な添加元素である。N含有量が少ないとオーステナイトが不安定化するため、下限を設け、0.05%以上とする。一方、オーステナイト系ステンレス鋼において過剰に添加すると切削性が低下すると共に、低温にて延性−脆性遷移挙動を示す傾向が一般に知られているため、上限を0.09%とした。
式1:3.7Ni+2.5Mn−1.6Cr−0.9Si+266N−33>0
上記ステンレス鋼は、上記成分範囲を前提とし、さらに上記式1を具備する範囲に各成分の含有量を規制する。上記式1は、上記成分範囲において、オーステナイトの安定化に着目し、加工誘起マルテンサイトの生成抑制および、δフェライトの生成抑制を図るべく、オーステナイト形成元素によるオーステナイトの安定化効果が、フェライト生成元素のフェライト安定化効果を上回るようにしたものである。Cr含有量を上記範囲に限定して加工誘起マルテンサイトの生成を抑制することを前提として、式1中のCrの項に起因する負の値を打ち消すようにNi、Mn、Nを添加することとなるため、オーステナイトを安定化し、加工誘起マルテンサイトの抑制も当然図られる。
なお、上記ステンレス鋼は、Moを添加せずコストを低下させることを一つの目的としている。また、Moを省略した成分系においては、耐水素脆化特性が劣るBCC構造を成す加工誘起マルテンサイトを生じやすくなることから、BCC構造を徹底的に排除するよう式1を満たす成分に限定し、解除するに至った。しかしながら、スクラップ等の原料からMoが混入することが起こりうる。この場合においても、Moの含有量は、不可避的不純物の範囲として0.10%以下に制限すればよい。
また、上記ステンレス鋼は、室温大気中での引張試験において測定した絞りが70%以上であることが好ましい(請求項2)。上記引張試験は、室温大気中での通常の引張試験であり、歪速度が2×10-6sec-1以上2×10-3sec-1以下の範囲内で行う試験である。上記絞りが70%以上である場合には、上記の優れた耐水素脆化特性と相俟って、高圧水素中においても絞りの低下が少なく、非常に高い絞りを維持することができ、適用可能な部品の範囲を広げることができる。
上記高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼に係る実施例につき、比較例と共に説明する。本例では、成分組成が異なる複数種類の試料を準備して、常温での通常の引張試験(試験1)を実施して各種評価を行うと共に、一部の試料について特定の条件のSSRT(Slow Strain Rate Test)(試験2)を実施して評価した。
(試験1)
(試験片準備)
表1に示すごとく、実施例、比較例の試料として、成分組成が異なる10種類の試料を準備した。
実施例1〜4、比較例6〜7、比較例9〜10の試料については、次の手順により作製した。まず、各試料の原料の溶解、精錬及び鋳込みをVIM(Vacuum Induction Melting:真空誘導溶解装置)を用いて行い、30〜50kgの鋼塊を得る。この鋼塊に1250℃にてソーキング熱処理を施した後に、鍛伸により直径20mmの丸棒を得た。これらの丸棒に1040℃にて固溶化熱処理を実施した。その後、図1に例示するごとく、丸棒を加工して、長手方向中央部に直径3mm長さ20mmの平行部を有する引張試験片1を採取した。
比較例5および比較例8の試料は、市場に流通しているSUS304および、ASTMType205の固溶化熱処理状態の丸棒を入手して用いた。これらの丸棒から上記と同様に直径3mm長さ20mmの平行部を有する引張試験片1(図1)を採取した。なお、上記比較例10は、SUS316L相当のものであり、水素用ステンレス鋼として多用されているものである。
(引張試験の実施)
上記10種類の試料に対して、常温にて歪速度が2×10-5sec-1以上2×10-3sec-1以下の範囲に収まる通常の引張試験を実施した。
(δフェライト、加工誘起マルテンサイトの判定方法)
ポータブル型の透磁率計を用いて、引張試験前の引張試験片と、引張試験後の引張試験片における破断部近傍にて透磁率を測定した。引張試験前の引張試験片にて透磁率が1.03以上の試料は、δフェライトが存在していると判断した。また、引張試験後の引張試験片の破断部近傍において、引張試験前の透磁率を上回る透磁率を示したものは、引張試験による塑性変形によって加工誘起マルテンサイトが生じたと判断した。
判定結果は、表1に示す。δフェライトについての判定は、これが生成していた場合を「×」とし、生成していない場合を「○」として示した。加工誘起マルテンサイトについての判定は、これが生成していた場合を「×」とし、生成していない場合を「○」として示した。
Figure 0006089657
(試験1の結果)
実施例1〜4は、Moを含有していない分加工誘起マルテンサイトが生じ易くなるが、適正な成分調整によって、δフェライトおよび加工誘起マルテンサイトの生成が抑制されていた。これにより、耐水素脆化特性に優れると考えられる。
比較例5は、式1を満たしておらず、δフェライトを有し、かつ、誘起加工マルテンサイトを有している。δフェライト及び誘起加工マルテンサイトがBCC結晶構造であるため、水素環境下にて脆化しやすいものと考えられる。
比較例6は、式1を満たしておらず、誘起加工マルテンサイトは生じないが、δフェライトが生じている。δフェライトがBCC結晶構造であるため、水素環境下にて脆化しやすいものと考えられる。
比較例7は、式1を満たしており、δフェライトも誘起加工マルテンサイトも生じていないが、NiとCrの添加量が多く、Moを低減した省資源性が損なわれ、工業的に価値が見出せない。
比較例8は、式1を満たしており、δフェライトや加工誘起マルテンサイトは抑制されている。一方、C及びNの添加量が上述した範囲を超えている。特にNの過剰添加によって、プラナーな転位構造が生じることにより、耐水素脆化特性にも影響することが考えられる。
比較例9は、Siが範囲を超えており、Nが少なく、式1を満たしておらず、δフェライト及び誘起加工マルテンサイトを有している。このことから水素環境下において脆化しやすいものと考えられる。
比較例10は、Moを含有している。式1を満たし、δフェライト及び加工誘起マルテンサイトが生じていない。
(試験2)
試験2は、表1に示す試料のうち、実施例1、比較例5、比較例8及び比較例10を選択し、これらに、表2に示す試験環境におけるSSRTを実施し、耐水素脆化特性を直接的に評価するものである。
(試験片準備)
実施例1の試料としては、試験1に示した手順で実施した固溶化熱処理のままの状態のもの(冷間加工率0%)以外に、固溶化熱処理後に20%の冷間加工を施したもの及び25%の冷間加工を施したものを準備した。比較例5及び比較例8の試料としては、固溶化熱処理のままの状態のもの(冷間加工率0%)のみを準備した。比較例10の試料としては、固溶化熱処理後に25%の冷間加工を施したもののみ準備した。
実施例1の冷間加工率0%のものは、上記と同様にして固溶化熱処理まで実施した直径20mmの丸棒を用い、これを直径3mm長さ20mmの平行部を有する引張試験片に加工して試験2に供した。
実施例1の冷間加工率20%のものは、直径20mmの固溶化熱処理材を旋盤加工により直径16.8mmに加工し、これに冷間引抜加工を施して直径15.0mmの引抜材丸棒を作製し、この丸棒中心部から長手方向に、試験片の平行部が直径3mm長さ20mmの引張試験片を採取して試験2に供した。
実施例1及び比較例10の冷間加工率25%のものは、直径20mmの固溶化熱処理材を旋盤加工により直径17.3mmに加工し、これに冷間引抜加工を施して直径15.0mmの引抜材丸棒を作製し、丸棒中心部から長手方向に、試験片の平行部が直径3mm長さ20mmの引張試験片を採取して試験2に供した。
比較例5及び比較例8のものは、市中に流通しているSUS304及びType205の固溶化熱処理状態の丸棒を入手し、その中心部から直径3mm長さ20mmの平行部を有する引張試験片を採取して試験2に供した。
(SSRTの実施)
SSRTを実施した。SSRTの歪速度は、3×10-6sec-1もしくは5×10-6sec-1とした。また、試験環境条件は、表2に示すごとく、雰囲気の種類は、大気、水素、窒素のいずれかとし、雰囲気の温度は、−40℃、室温、90℃のいずれかとし、雰囲気の圧力は、大気圧、70MPa、75MPa、85MPaのいずれかとした。表2に示した「相対絞り」は、大気中又は窒素中の結果に対する、水素中の結果を示すものであり、1を超える場合には、水素中の場合の絞り値が大気又は窒素中よりも高く、1未満の場合にはその逆を意味している。
Figure 0006089657
(試験2(SSRT)の結果)
表2より知られるごとく、比較例10(SUS316L相当)の冷間引抜材(冷間加工率25%)は、相対絞り0.9以上の優れた耐水素特性を示している。また、比較例10の結果から、−40℃と室温と90℃の相対絞りを比較すると、−40℃の方が水素の影響を受けやすいことが確認でき、これは従来から知られている事実と一致する。
実施例1では、冷間引抜の有無に関わらず、−40℃から90℃の範囲にて70MPa以上の高圧水素ガス雰囲気であっても、相対絞り0.9以上の優れた耐水素特性が得られている。Moの含有がない分加工誘起マルテンサイトが生じやすくなっているはずであるが、他の成分を調整することで加工誘起マルテンサイトを抑制することができている。これにより、実際に、−40℃においても相対絞り0.9以上の優れた耐水素特性が得られることがわかった。
一方、比較例5では、相対絞りは0.8未満である。試験1の結果を合わせて考察すると、加工誘起マルテンサイトやδフェライトといったBCCの結晶構造を持つ相が原因で、水素に対して脆化を示しているといえる。室温よりも−40℃の方が水素の影響を受けやすくなる事実を考えると、比較例5の場合には、−40℃において試験を行えば、相対絞りが0.8未満となることは間違いない。
比較例8では、加工誘起マルテンサイトやδフェライトが認められないが、水素に対して脆化を示している。これは、転位の構造によるものと考えられる。上述したごとく、N量が多くプラナーな転位構造となっており、水素に対して脆化を示している。室温よりも−40℃の方が水素の影響を受けやすくなる事実を考えると、−40℃においても相対絞りが0.8未満となることは間違いない。
以上の結果から、上記各成分の範囲内において上記式1を満たす成分組成に限定することによって、機械的強度及び耐食性に優れ、−40℃の低温においても水素脆化感受性が低く、かつ安価な高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼が得られることがわかる。
なお、−40℃においても優れた耐水素特性を示している実施例1において、EPMAを用いて調査したところ、Ni濃度が低い領域ではCr濃度も低くなっており、凝固時にδフェライトを生成しないAモードで凝固したことが確認できた。凝固時にδフェライトを生成させると、その後のソーキング熱処理によりオーステナイト化されたとしても局部的にオーステナイトが不安定な偏析領域が残留し望ましくないが、本発明における成分では、Aモード凝固となっており、オーステナイトが不安定な偏析領域の生成を防いでいる。
1 引張試験片

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.06%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.7%以下、P:0.040%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0%以上13.5%以下、Cr:16.5%以上20.0%以下、N:0.05%以上0.09%以下を含むと共に、式1を満足し、
    式1:3.7Ni+2.5Mn−1.6Cr−0.9Si+266N−33>0
    残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    金属組織中に加工誘起マルテンサイト及びδフェライトが存在しておらず、
    −40℃における水素雰囲気中で行う引張試験により得られる絞り(A)と、−40℃における窒素雰囲気中で行う引張試験により得られる絞り(B)との比である相対絞り(A/B)が0.9以上であることを特徴とする低温での水素脆化感受性に優れた高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼。
  2. 室温大気中での引張試験において測定した絞りが70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の低温での水素脆化感受性に優れた高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 請求項1又は2に記載の低温での水素脆化感受性に優れた高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼を製造する方法であって、
    固溶化熱処理を施した後、冷間加工を施さない、あるいは、
    固溶化熱処理を施した後、冷間加工(加工方向を途中で異なる方向に変更する場合を除く)を施すことを特徴とする低温での水素脆化感受性に優れた高圧水素用オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法
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