JP6088163B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
サージが生じた状態でコンプレッサを使用し続けると、空気の流量制御が不安定になるだけでなく、コンプレッサの耐久性を損ない、寿命を短くしてしまう。したがって、コンプレッサのサージを抑制するための技術が必要となる。
以下、燃料電池システムが燃料電池車に搭載される場合について説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、船舶、航空機などの移動体、家庭用や業務用の定置式のものにも適用できる。
<燃料電池システムの構成>
図1に示す燃料電池システム1は、燃料電池10と、燃料電池10のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を供給するカソード系と、燃料電池10のアノードに対して水素(燃料ガス)を供給するアノード系と、燃料電池10の発電電力を消費する電力消費系と、これらを制御するECU51と、を備えている。
燃料電池10は、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、膜/電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を一対の導電性のセパレータ(図示せず)で挟持してなる単セル(図示せず)を複数積層して構成されている。
燃料電池10の各セパレータには、それぞれの膜/電極接合体の全面に水素又は酸素を供給するための溝及び貫通孔が形成されており、これらの溝及び貫通孔がカソード流路11(酸化剤ガス流路)、アノード流路12(燃料ガス流路)として機能している。したがって、燃料電池10のカソード流路11及びアノード流路12では、ガスが通流した場合に比較的大きな圧力損失(以下、圧損と記す)が生じる。
また、セパレータには、燃料電池10を冷却するための冷媒(例えば、エチレングリコールを含む水)を通流させる冷媒流路(図示せず)が形成されている。
O2+4H++4e−→2H2O・・・(式2)
カソード系は、コンプレッサ21と、加湿器22と、入口封止弁23と、出口封止弁24と、背圧弁25と、スタックバイパス弁26と、希釈器27と、を備えている。
なお、「酸化剤ガス供給流路」は、配管a1〜a4を含んで構成され、カソード流路11の流入口に接続されている。
また、コンプレッサ21が有する羽根車(図示せず)の回転軸にはモータ21aが設置され、ECU51からの指令に応じた回転速度で駆動する。
なお、加湿器22も、ガスが通流した場合の圧損が比較的大きい。
出口封止弁24は、例えば電磁作動式の開閉弁であり、配管a5を介してカソード流路11の流出口に接続されている。すなわち、出口封止弁24は、酸化剤オフガス排出流路に設けられ、閉状態において酸化剤オフガス排出側の配管a5を締め切る機能を有している。
入口封止弁23及び出口封止弁24は、燃料電池システム1のソーク時において単セルが劣化することを抑制するため、系外からの空気がカソード流路11に流入しないように閉弁される。
ここで、「通流抵抗低減流路」は、配管a9,a10を含んで構成され、一端がコンプレッサ21よりも下流側の酸化剤ガス供給流路(配管a2)に接続され、他端が酸化剤オフガス排出流路(配管a8)に接続されている。つまり、通流抵抗低減流路は、コンプレッサ21から送出される酸化剤ガスが、燃料電池10をバイパスして希釈器27に流入するように設けられている。
なお、スタックバイパス弁26は、後記する通流抵抗低減制御を実行する際に開弁される。
アノード系は、水素タンク31と、遮断弁32と、エゼクタ33と、パージ弁34と、を備えている。
遮断弁32は、配管b2を介してエゼクタ33に接続され、ECU51からの指令によって開かれると、水素タンク31からの水素が燃料ガス供給流路を介して燃料電池10のアノード流路12に供給されるようになっている。
なお、「燃料ガス供給流路」は、配管b1〜b3を含んで構成される。
電力消費系は、VCU41と、PDU42と、走行モータ43と、を備えている。
VCU41(Voltage Control Unit)は、ECU51からの指令に従って燃料電池10の発電電力やバッテリ(図示せず)の充放電を制御するものであり、DC/DCチョッパ、DC/DCコンバータなどの電子回路が内蔵されている。なお、図1では、VCU41と燃料電池10との間に設けられるコンタクタや、燃料電池10の出力電流・出力電圧を検出する出力検出器の図示を省略している。
走行モータ43は、例えば、永久磁石同期式の三相交流モータであり、PDU42によって変換された3相交流電力で燃料電池車の駆動輪を回転駆動させる。
ECU51(Electric Control Unit:制御手段)は、CPU、RAM、ROM、各種インタフェースなどの電子回路を備えて構成され、その内部に記憶したプログラムに従って各種機能を発揮する。
ECU51には、各センサ類からの検出信号や、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量を示す信号などが入力される。そして、ECU51は、入力される各信号に応じて各弁の開閉、各ポンプの駆動、VCU41の動作などを制御する。
IG61(Ignition Switch)は、燃料電池システム1が搭載される燃料電池車の起動スイッチであり、運転席周りに配置されている。そして、IG61は、そのON/OFF信号をECU51に出力するようになっている。
また、系外(車外)の大気圧を検出する大気圧センサ(圧力検出手段:図示せず)が、例えばコンプレッサ21よりも上流側の配管a1に設置されている。
次に、図2のフローチャートと、図3のタイムチャートとを参照しつつ、システム起動時における燃料電池システム1の動作について説明する。ちなみに、図2の「START」において、IG61はOFFであり、燃料電池システム1はソーク状態(長時間停止状態)であるものとする。
大気圧Patmが所定値P1未満である場合(S102→Yes)、ECU51の処理はステップS104に進む。なお、大気圧Patm(つまり、コンプレッサ21の吸入側の圧力)が低い場合、コンプレッサ21の圧力比が大きくなってサージが発生しやすい。この場合、ECU51は、後記するステップS104〜S106において通流抵抗低減制御を実行し、コンプレッサ21の吐出側にかかる圧力を小さくしてサージの発生を未然に回避する。なお、通流抵抗低減制御については、後記する。
また、大気圧Patmが所定値P1以上である場合(S102→No)、ECU51の処理はステップS103に進む。
つまり、ステップS102及びS103の条件のうち少なくとも一つが成立している場合、ECU51の処理はS104に進む。
ちなみに、このとき、入口封止弁23及び出口封止弁24は閉弁されている(図3(b)の時刻t2〜t3)。したがって、コンプレッサ21が起動すると、図4の太線矢印で示すように、系外(車外)から配管a1を介して取り込まれた空気は、コンプレッサ21によって吸引・圧縮され、配管a2、通流抵抗低減流路(配管a9,a10)、及び配管a8を介して希釈器27に流入する。さらに、希釈器27に流入した空気は、配管b7を介して系外に排出される。
その結果、起動時の低回転速度領域においてコンプレッサ21の圧力比(吸入側圧力に対する吐出側圧力の比)を小さくできるため、サージの発生を未然に回避できる。
コンプレッサ21の起動が完了した場合(S106→Yes)、ECU51の処理はステップS107に進む。一方、コンプレッサ21の起動が完了していない場合(S106→No)、ECU51の処理はステップS106の処理を繰り返す。
このように、スタックバイパス弁26を開弁し、通流可能状態にしてからコンプレッサ21を起動し、通流抵抗低減流路(配管a9,a10)に空気を送出する制御(図2のS104〜S106)を、以下では「通流抵抗低減制御」と記す。
カソード流路11に空気を供給できる状態である場合(S107→Yes)、ECU51の処理はステップS108に進む。一方、カソード流路11に空気を供給できる状態でない場合(S107→No)、ECU51の処理はステップS107の処理を繰り返す。
次に、ステップS110においてECU51は、スタックバイパス弁26を閉弁して通流不可状態とし(図3(a)の時刻t5)、ステップS114に進む。
ステップS111においてECU51は、カソード流路11に空気を供給できるか否かを判定する。当該判定は、前記したステップS107と同様である。カソード流路11に空気を供給できる状態である場合(S111→Yes)、ECU51の処理はステップS112に進む。一方、カソード流路11に空気を供給できる状態でない場合(S111→No)、ECU51はステップS111の処理を繰り返す。
このように、ステップS102及びS103の条件のいずれも成立しない場合、ECU51は前記した通流抵抗低減制御を実行せず、スタックバイパス弁26を閉状態のままにする。
次に、ステップS115においてECU51は、燃料電池10の開放セル電圧(OCV)が所定値V1よりも高いか否かを判定する。なお、開放セル電圧は、燃料電池10とVCU41との間に介在する出力検出器(図示せず)によって検出され、ECU51に入力される。また、所定値V1は予め設定された値である。
このようにして、システム起動処理が完了する(図3の時刻t6)。なお、「システム起動処理が完了した」とは、アノード系、カソード系、冷媒系、及び電力消費系の準備が整い、要求出力に応じて燃料電池車を走行できる状態になることを意味している。
つまり、システム起動処理(図3の時刻t1〜t6)は、図2のステップS102〜S115の処理のほか、アノード系、冷媒系、電力消費系などの起動処理も含んでいる。
ここで「燃料ガスの供給に関わる機器」とは、例えば、遮断弁32、パージ弁34、遮断弁32とエゼクタ33との間に設置されるインジェクタ(図示せず)、水素の循環をアシストする水素ポンプ(図示せず)、それらを制御するドライバ(図示せず)などである。
ちなみに、アノード系のシステム起動処理を行う場合、ECU51は、遮断弁32を開弁してアノード流路12に水素を供給し、併せてパージ弁34を開弁してアノード流路12の空気を希釈器27にパージする。
図5は、コンプレッサの吸入流量と圧力比との関係を示す特性図である。図5に示す特性図の横軸はコンプレッサ21の吸入流量であり、縦軸はコンプレッサ21の圧力比である。また、図5の左上に示す斜線領域はサージが発生する領域(サージ領域)であり、図5の右下に示す領域はサージが発生しない領域(正常領域)である。
なお、コンプレッサ21が停止している初期状態では吸入流量がゼロであり、圧力比は1.0である(図3の時刻t0〜t2に対応)。
この場合、コンプレッサ21の下流側の流路に加湿器22及びカソード流路11が存在するため圧損が大きく、前記下流側の圧力が高くなる。そうすると、コンプレッサ21の圧力比が大きくなるため、図5の破線矢印に示すように、コンプレッサ21の吸入流量0〜QSの範囲において動作点がサージ領域に入ってしまう。
このように本実施形態では、コンプレッサ21の回転速度が小さい起動時でのサージを未然に回避し、燃料電池システム1を安定して起動できる。その結果、コンプレッサ21の故障を防止し、耐久性を向上させることができる。
ここで、図7に示す比較例のように、スタックバイパス弁26を閉弁し、入口封止弁23及び出口封止弁24を開弁した状態でコンプレッサ21を起動すると、次のような事態が生じる。
つまり、図7に示す比較例では、IG61からON信号が入力されてから、システム全体の起動が完了するまでの時間(時刻t10〜t15)が非常に長くなる。
また、カソード流路11に空気を供給できる状態において(図3の時刻t4)、既にコンプレッサ21の起動が完了している(図3の時刻t3)。したがって、前記状態になった直後に大流量(図3の目標流量QA)の空気をカソード流路11に供給し、カソード系の起動がスムーズに進む。
ちなみに、前記した効果は、燃料電池車のソーク時間が長く、システム起動に長時間を要する場合や(図2のS103→Yes)、エアベアリング式のコンプレッサのように起動に所定時間を要する場合において特に顕著となる。
第2実施形態は、第1実施形態と比較してエキスパンダ28が設けられ、通流抵抗低減流路(配管a10,a11)がエキスパンダ28の下流側に接続されている点が異なるが、その他の点は第1実施形態と同様である。したがって、当該異なる部分について説明し、重複した説明を省略する。
また、エキスパンダ28の羽根車は、コンプレッサ21の羽根車(図示せず)と、伝達軸21bを介して連結されている。ちなみに、伝達軸にはクラッチ(図示せず)が設けられ、当該クラッチは、ECU51によってON(連結)/OFF(非連結)制御される。
コンプレッサ21の起動時にECU51はスタックバイパス弁26を開弁して通流可能状態とし、入口封止弁23及び出口封止弁24を閉弁する。そうすると、コンプレッサ21から吐出された空気は、配管a2、通流抵抗低減流路(配管a10,a11)、及び配管a9を介して希釈器27に流入し、配管b7を介して系外に排出される。
さらにカソード流路11から流出したカソードオフガスは、配管a5〜a7を介してエキスパンダ28に流入し、前記羽根車を回転させる。当該回転エネルギは、伝達軸21b及びクラッチ(図示せず)を介してコンプレッサ21に供給される。
本実施形態に係る燃料電池システム1Aによれば、コンプレッサ21の起動時においてサージが生じることを未然に回避するとともに、システム起動処理に要する時間を短縮できる。
また、本実施形態では、酸化剤オフガスの流体エネルギをエキスパンダ28の羽根車の回転エネルギに変換し、コンプレッサ21に伝達する。したがって、コンプレッサ21の駆動がエキスパンダ28によってアシストされるため、燃料電池システム1A全体でのエネルギ効率を向上させることができる。
第3実施形態は、第1実施形態と比較して、アノード流路12を掃気するための掃気ガス導入流路(配管c1,c2)が設けられ、コンプレッサ21の起動時に空気を送出する通流抵抗低減流路(配管c1,c3,c4)が設けられている点が異なるが、その他の点は第1実施形態と同様である。したがって、当該異なる部分について説明し、重複した説明を省略する。
また、燃料電池システム1Bは、配管c1,c3,c4を含む通流抵抗低減流路を備えている。配管c3の一端は配管c1に接続され、他端は二方弁30(通流可否切替手段)に接続されている。また、配管c4の一端は二方弁30に接続され、他端は系外と連通している。
そうすると、コンプレッサ21のモータ21aが駆動し始めることで配管a1を介して空気が取り込まれ、配管c1,c3,c4を含む通流抵抗低減流路を介して系外に排出される(通流抵抗低減制御)。
なお、コンプレッサ21が起動した後は、入口封止弁23及び出口封止弁24を開弁し、二方弁30を閉弁して通流不可状態にする。これによって、コンプレッサ21の駆動により吐出された空気は、配管a2〜a4を介してカソード流路11に供給される。そして、カソード流路11から流出した空気は、配管a5〜a8,b7を介して系外に排出される。
本実施形態に係る燃料電池システム1Bによれば、コンプレッサ21の起動時においてサージが生じることを未然に回避するとともに、システム起動処理に要する時間を短縮できる。また、アノード流路12を掃気することで、生成水の凍結やフラッディングを防止できる。
以上、本発明に係る燃料電池システムについて前記各実施形態により説明したが、本発明の実施態様はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、前記各実施形態では、コンプレッサ21としてエアベアリング式のモータターボ型コンプレッサを用いた例を示したが、これに限らない。その他、転がり軸受などを備えたコンプレッサなどにも適用できる。
この場合において、前記所定時間Δt0は予め設定された値であり、コンプレッサ21の応答遅れを考慮して定められる。つまり、所定時間Δt0は、ECU51から起動指令が入力された後、コンプレッサ21が所定の目標回転速度に到達すると見込まれる時間(+所定の余裕時間)である。
10 燃料電池
11 カソード流路(酸化剤ガス流路)
12 アノード流路(燃料ガス流路)
21 コンプレッサ(圧縮機)
21a モータ
26 スタックバイパス弁(通流可否切替手段)
28 エキスパンダ
29 掃気ガス導入弁
30 二方弁(通流可否切替手段)
32 遮断弁(機器)
43 走行モータ
51 ECU(制御手段)
a1,a2,a3,a4 配管(酸化剤ガス供給流路)
a5,a6,a7,a8 配管(酸化剤オフガス排出流路)
a9,a10 配管(通流抵抗低減流路)
Claims (3)
- 燃料ガス流路に燃料ガスが供給され、酸化剤ガス流路に酸化剤ガスが供給されて発電する燃料電池と、
前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、
前記酸化剤ガス流路から排出される酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス供給流路に設けられ、前記酸化剤ガス流路に向けて酸化剤ガスを供給する圧縮機と、
一端が前記圧縮機よりも下流側の前記酸化剤ガス供給流路に接続され、他端が前記酸化剤オフガス排出流路に接続されるか又は系外と連通する通流抵抗低減流路と、
前記通流抵抗低減流路に設けられる通流可否切替手段と、
制御手段と、
前記圧縮機よりも上流側の前記酸化剤ガス供給流路の圧力を検出する圧力検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、燃料電池システムの起動時、
前記圧力検出手段によって検出される圧力が所定値未満である場合、前記通流可否切替手段を通流可能状態にして前記圧縮機を起動させ、前記通流抵抗低減流路に酸化剤ガスを送出する通流抵抗低減制御を実行した後、
前記圧縮機を駆動させつつ前記通流可否切替手段を通流不可状態とし、前記酸化剤ガス供給流路を介して前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスを供給すること
を特徴とする燃料電池システム。 - 前記制御手段は、
前記通流抵抗低減制御を開始してから所定時間が経過した後、前記圧縮機を駆動させつつ前記通流可否切替手段を通流不可状態とし、前記酸化剤ガス供給流路を介して前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスを供給すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記制御手段は、
前記燃料電池システムを起動する際、前記燃料ガス流路への燃料ガスの供給に関わる機器の起動制御と、前記通流抵抗低減制御とを並行して実行すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
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