本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る歯科用X線撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。本実施形態に係る歯科用X線撮影装置は、歯科用パノラマX線撮影や頭頸部X線CT撮影を行うことができる。本実施形態に係る歯科用X線撮影装置は、X線撮影装置本体1と、X線画像表示装置2を備え、通信ケーブル等によってデータを送受信する構成になっている。
X線撮影装置本体1は、被検者(患者)にX線を照射するX線照射部110と、被検者Oを透過したX線を検出するX線検出部120と、X線照射部110及びX線検出部120を対向して有する旋回アーム3とを備える。
パノラマ撮影においては、X線照射部110及びX線検出部120が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アーム3を水平移動及び水平旋回させながら断層撮影を行う。
X線撮影装置本体1は、被検者Oの顎顔面を保持する被検者保持手段(頭部固定部)4と、旋回アーム3を駆動する駆動ユニット部160と、撮影装置本体制御部170とをさらに備えている。撮影装置本体制御部170には操作パネル71aが付加されている。
X線照射部110は、X線を照射するX線管等からなるX線発生器112と、X線ビームの広がりを規制するスリット等からなるコリメータ111とを備えている。コリメータ111は、例えば、形状を異ならせた複数のスリットを形成したマスクで構成されており、スリットのいずれかを選択し、選択したスリットによってX線発生器112から照射されたX線ビームの広がりを制限する仕組みになっている。例えば、パノラマ撮影では、パノラマ用スリットが選択され、その選択されたパノラマ用スリットの形状に対応したX線細隙ビームが、X線検出部120のX線検出器121に向かって照射される。
X線検出部120は、2次元的に広がったCCDセンサやX線間接変換方式(FPD:フラットパネルディテクタ)センサ等からなるX線検出器121を設けたカセット122を備えている。カセット122はX線検出部120に対して着脱可能であるが、X線検出器121は、カセット122を介さずにX線検出部120に固定的に設けてもよい。なお、本実施形態に係る歯科用X線撮影装置はトモシンセシス法を採用しているため、X線検出器121は、その横(幅)方向にも複数のX線検出素子を有する。X線検出器121は、例えば、300fpsのフレームレート(1フレームは、例えば、64×1500画素)で入射X線を、当該X線の量に応じたデジタル電気量の画像データとして収集することができる。以下、この収集データを「フレームデータ」という。
駆動ユニット部160は、パノラマ撮影時に旋回軸3cを歯列弓に沿って移動させたりする旋回軸位置設定手段161と、旋回アーム3を回転させる旋回軸回転手段162とを備えている。旋回軸位置設定手段161は、旋回軸3cをXY方向(水平方向)に移動させるXYテーブルと、X軸モータ及びY軸モータとを備えている。旋回軸回転手段162は、旋回軸位置設定手段161のXYテーブルに設けられた旋回用モータを備えている。旋回用モータには、中空式で減速機を使用せずに負荷をモータに直結して駆動するダイレクトドライブ方式で高精度の位置決め機能を有するモータを用いている。旋回軸3cは、撮影開始時に被検者Oの正中線に一致するように設定される。
X線撮影装置本体1は、旋回アーム3を水平方向に直進移動させるための旋回アーム位置設定手段31をさらに備えている。旋回アーム位置設定手段31は、旋回可能な旋回テーブルと、旋回テーブルの上を直動可能なスライドテーブルとを備えている。
パノラマ撮影時やCT撮影時等には、X線照射部110及びX線検出部120の対は、被検者Oの口腔部を挟んで互いに対峙するように位置し、その対毎、一体に口腔部の周りを回転するように駆動される。ただし、この回転は単純な円を画く回転ではない。つまり、X線発生器112及びX線検出器121の対は、その対の回転中心RCが図2に示す如くY軸に沿って移動するように回転駆動される。Y軸は略馬蹄形の標準歯列SSの対称軸である。図2では、旋回アーム3の軌跡を、紙面右半分において所定のフレーム数おき(例えば30フレームおき)に1本図示しており、紙面左半分において図示を省略している。また、1本の軌跡のみX線照射部110及びX線検出部120を図示し、他の軌跡では図示を省略している。
撮影装置本体制御部170は、駆動ユニット部160を制御する制御プログラムを含んだ各種制御プログラムを実行する制御装置(例えばCPU)171と、X線照射部110を制御するX線発生部制御手段172と、X線検出部120を制御するX線検出部制御手段173とを備えている。操作パネル71aは、小型液晶パネルや複数の操作釦で構成されている。操作釦のほか、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段を用いることもできる。また、操作パネル71aが液晶モニタ等のディスプレイからなる表示手段を備えるようにしてもよい。
例えば、操作パネル71aに設けた表示手段に、X線撮影装置本体1の操作に必要な文字や画像等の情報を表示するように構成してもよい。また、X線パノラマ画像やX線CT画像を表示するX線画像表示装置2と接続して、X線画像表示装置2の表示手段26に表示される表示内容が操作パネル71aに設けた表示手段にも表示されるようにしてもよく、表示手段26に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作などを通してX線撮影装置本体1に各種の指令ができるようにしてもよい。
X線撮影装置本体1は、操作パネル71a、あるいはX線画像表示装置2からの指令に従って、歯列弓のパノラマ撮影などを実行する。また、各種指令や座標データ等をX線画像表示装置2から受け取る一方、撮影した画像データをX線画像表示装置2に送る。また、被撮影領域(撮影対象領域)rrの底辺は、X線照射部110から照射されるコーンビームの下縁の線が基準となる。
X線撮影装置本体1と接続されるX線画像表示装置2は、表示装置本体20を備えている。表示装置本体20には、例えば、液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示手段26や、キーボード、マウス等で構成された操作手段25が付加されている。表示手段26にX線画像が表示される。また、表示手段26に表示された文字や画像の上でのマウスでのポインタ操作等を通じて各種指令を与えることができる。表示手段26はタッチパネルで構成することもできるので、この場合、表示手段26は操作手段25を兼ねる。
画像表示装置本体20は、各種プログラムを実行する制御装置(例えばCPU)21と、ハードディスク等で構成され各種撮影データや画像等を記憶する記憶部22と、画像再構成を行う画像生成手段23とを備えている。制御装置21、記憶部22、及び画像生成手段23は画像処理手段を構成している。記憶部22には、後述する歯列座標等も記憶される。制御装置21は、記憶部22に格納されたプログラムにより、各種動作を制御し、プログラムに従って画像生成手段23の機能を果たすように動作する。つまり、制御装置21は画像生成手段23を兼ねる。
記憶部22は、フレームデータやトモシンセシス断層画像などを記憶することができる。
図3は立位タイプのX線撮影装置本体1の外観例を示す図である。なお、ここでは立位タイプについて説明するが、当然の事ながら座位タイプのX線撮影装置本体を備える歯科用X線撮影装置にも本発明を適用することができる。図3(a)は上面図、図3(b)は正面図、図3(c)は側面図である。
X線撮影装置本体1は、床面に載置されるベース5と、ベース5から鉛直方向に立設された下部ポール6と、鉛直方向にスライド可能に下部ポール6に接続される上部ポール7と、上部ポール7の上端部に固定されている固定アーム8と、回転可能に固定アーム8に接続される旋回アーム3と、上部ポール7の中央部に固定されており被写体(例えば歯など)を含む人体の頭部を保持する頭部保持部9とを備えている。旋回アーム3はX線照射部110及びX線検出部120を有しており、頭部保持部9は被検者保持手段(頭部固定部)4を有している。実施形態では、固定アーム8が上部ポール7に固定されているが、例えば、X線撮影装置本体1を設置する部屋の壁や天井に固定アーム8が直接あるいは部屋の壁や天井との距離を調整することができる調整機構を介して取り付けられる態様であってもよい。
図4に、本実施形態に係るX線撮影装置の制御及び処理のためのブロック図を示す。同図に示す如く、X線撮影装置本体1からのデータは通信ラインを介してX線画像表示装置2に与えられる。
X線画像表示装置2は、例えば、大量の画像データを扱うため、大容量の画像データを格納可能な、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションで構成される。つまり、X線画像表示装置本体20は、その主要な構成要素して、制御装置21と、記憶部22と、画像生成手段23と、インターフェース24及び27とを備えており、それらが内部バス28を介して相互に通信可能に接続されている。制御装置21は、CPU21aと、OS等の制御プログラムが格納されたROM21bとを備えている。記憶部22は、バッファメモリ22aと、画像メモリ22bと、フレームメモリ22cとを備えている。制御装置21には、インターフェース24を介して操作手段25及び表示手段26が接続されている。
インターフェース27は、X線撮影装置本体1に接続されており、制御装置21とX線照射部110、X線検出部120との間で交わされる制御情報や収集データの通信を媒介する。また、これにより、制御装置21はX線撮影装置本体1で撮影したパノラマ画像を例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格により外部のサーバに送出できるようになっている。
バッファメモリ22aは、インターフェース27を介して受信した、X線検出部120からのデジタル電気量のフレームデータを一時的に記憶する。
また、画像生成手段23は、制御装置21の制御下に置かれ、パノラマ画像の作成を行うための処理を操作者との間でインターラクティブに実行する機能を有する。この機能を実現するためのプログラムは、ROM21bに予め格納されている。なお、このプログラムは予めROM21bに格納しておいてもよいが、場合によっては、外部システムから通信回線や持ち運び可能なメモリを介して、ROM21bや図示しない他の不揮発性記録媒体にインストールするようにしてもよい。
画像生成手段23により処理される又は処理途中のフレームデータ及び画像データは画像メモリ22bに読出し書込み可能に格納される。画像メモリ22bには、例えばハードディスクなどの大容量の記録媒体(不揮発性且つ読出し書込み可能)が使用される。また、フレームメモリ22cは、再構成されたパノラマ画像データなどを表示するために使用される。フレームメモリ22cに記憶される画像データは、インターフェース24を介して表示手段26に与えられ、表示手段26の画面に表示される。
制御装置21のCPU21aは、ROM21bに予め格納されている制御及び処理の全体を担うプログラムに従って、装置の構成要素の全体の動作を制御する。かかるプログラムは、操作者からそれぞれに制御項目についてインターラクティブに操作情報を受け付けるように設定されている。このため、CPU21aは、後述するように、フレームデータの収集(スキャン)などを実行可能に構成されている。
被検者Oが立位の姿勢で頭部保持部9に顎を置くことにより、被検者Oの頭部(顎部)の位置が旋回アーム3の回転空間のほぼ中央部で固定される。この状態で、旋回アーム3が被検者Oの頭部の周りをXY面に沿って回転する。
旋回アーム3が回転している間に、X線照射部110からX線が曝射される。このX線は、撮影位置に位置する被検者Oの顎部(歯列部分)を透過してX線検出部120に入射する。X線検出部120は、前述したように、非常に高速のフレームレート(例えば、300fps)で入射X線を検出し、対応するデジタル電気量の2次元のデジタルデータ(例えば64×1500画素)をフレーム単位で順次出力する。このフレームデータは、前述したように、通信ラインを介して、X線画像表示装置2のインターフェース27を介してバッファメモリ22aに一時的に保管される。この一時保管されたフレームデータは、その後、画像メモリ22bに転送されて保管される。
本実施形態では、パノラマ画像を得るためにトモシンセシス法を用いている。トモシンセシス法では、X線照射部110から被検者Oに対して複数の異なる角度でX線を曝射し、被検者Oを透過したX線をX線検出部120により検出し、複数の撮影画像(フレームデータ)が撮影され、画像メモリ22bに保管される。画像生成手段23は、画像メモリ22bに保管された複数の撮影画像(フレームデータ)から任意の断層面に基づいてトモシンセシス断層画像を再構成する。トモシンセシス断層画像はパノラマ画像として記憶部22に記憶されたり、表示手段26に表示されたりする。本実施形態では、図5に示す通り再構成領域R1の厚み方向のほぼ中央に標準歯列SSが位置するように再構成領域R1を設定するとともに、再構成領域R1において、Y軸の正方向(内側方向)から負方向(外側方向)に向かって0.5mmピッチで60層の断層を設定している。
そして、本実施形態では、FBP法を用いてフレームデータから60層の断層に対応する60層のトモシンセシス断層画像を再構成している。
60層のトモシンセシス断層画像は、60層のパノラマ画像として画像メモリ22bに保管される。画像メモリ22bに保存されたパノラマ画像は、表示手段26に様々な態様で表示される。なお、表示態様は例えば操作手段25から与えられるユーザの指示に基づいて設定される。
次に、FBP法を用いてトモシンセシス断層画像を再構成する処理の一例を図6のフローチャートに従い説明する。
操作パネル71a、あるいはX線画像表示装置2からの指令に従って、トモシンセシス断層画像を生成する場合、画像生成手段23は、まず、ディフェクト登録データを読み込み、ディフェクトテーブルを作成する(ステップS1)。そして、制御装置171は、フレームの軌道データを読み込む(ステップS2)。
次に、画像生成手段23は、白黒反転用ルックアップテーブルを作成する(ステップS3)。続いて、画像生成手段23は、濃度補正用画像を読み込み、濃度補正データを作成する(ステップS4)。
そして、X線撮影装置本体1は、データ収集のためのスキャンを実行する(ステップS5)。これにより、旋回アーム3及びX線照射部110が予め設定されている制御シーケンスに沿って駆動する。すなわち、X線照射部110及びX線検出部120の対が被検者Oの顎部の周囲を回転し、その回転動作の間に、X線照射部110はX線を曝射する。X線検出部110から曝射されたX線は被検者Oを透過してX線検出部120により検出される。したがって、前述したように、X線検出器121から例えば300fpsのレートでX線透過量を反映したデジタル電気量のフレームデータ(投影データ)が出力される。このフレームデータは画像メモリ22bに保管される。
画像生成手段23は、投影データを読み込み、投影データに対して、ディフェクト補正、濃度補正、及び白黒反転補正を行う(ステップS6)。
ステップS6で読み込んだ各投影データにおいては、X線検出部110から曝射されたX線が透過するボクセルについてのみ計算をすればよい。各投影データにおいては、X線が透過するボクセルの範囲が狭いので、X線が透過するボクセルについてのみ計算を行うようにすることで、計算時聞を短縮することができる。
したがって、画像生成手段23は、フレームデータごとに、各断層面において計算するボクセルの範囲をあらかじめ指定する歯列方向計算範囲テーブルを作成する(ステップS7)。
再構成計算後の各トモシンセシス断層画像は、前歯部分の横方向のボクセル数が異なるため横方向の長さが一致せず、且つ、X線源から各断層面の最高点を見た仰角が異なるため縦方向の長さが一致せず、そのままでは複数層のトモシンセシス断層画像同士を比較して断層深さによる歯の様子を比較する場合等に不便である。したがって、画像生成手段23は、再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の横方向および縦方向の長さを一致させるための歯列位置補正を行うために必要なテーブルとして、各軌道(各フレーム)においてX線検出器121の中心に入射するX線が透過するボクセルを指定するテーブルと高さの比を決めるためのテーブルを作成する(ステップS8)。
次に、画像生成手段23は、再構成領域を占める各ボクセル頂点の実際の位置座標を算出する(ステップS9)。
続いて、画像生成手段23は、軌道データ(アーム角度と懸垂軸位置)と、ステップS5のスキャンによるデータ収集処理で得られた投影データとを読み込み(ステップS10)、投影データとフィルタ関数を畳み込み積分する(ステップS11)。
その後、画像生成手段23は、計算を簡単化するため、畳み込み積分の算出結果毎に、図7に示す通り、X線発生器112の中心(X線源)が原点、X線検出器121の中心位置がY軸上の正方向になるように、X線発生器112、再構成領域R1、及びX線検出器121からなる系の回転移動と並行移動によって、系の座標変換を行う(ステップS12)。
次に、ステップS13において画像生成手段23が実行するFBP法を用いた再構成計算について図8A〜図16を参照して説明する。
まず、X線検出器121の検出面の或るピクセルに着目し、X線発生器112からのX線がその着目ピクセルに入射する場合を考える。
着目ピクセルに入射するX線は被写体を透過する際に減弱し、X線検出器121に取り込まれるX線が減少する。つまり、複数のボクセルによって構成される図7に示す再構成領域R1を設定すると、着目ピクセルには、ボクセルを透過したX線が入射し、そのX線が透過したボクセルの分だけX線が減弱して着目ピクセルの輝度値に反映されることになる。
着目ピクセルに入射するX線が断層面内の複数のボクセルの一部分を透過する場合は、各ボクセルのX線が透過した部分の体積比に応じてX線が減弱し、その減弱度合いが着目ピクセルの輝度値に反映される。
つまり、着目ピクセルに入射するX線が透過した各ボクセルは、各ボクセルのX線が透過した部分の体積比の割合で着目ピクセルの輝度値に寄与している。逆に考えれば、着目ピクセルの輝度値を、着目ピクセルに入射するX線が透過した各ボクセルのX線が透過した部分の体積比で分割すると、各分割値は、各ボクセルのX線が透過した部分のX線減弱に対応する。
図8Aは、X線検出器121の検出面の一部であるピクセル群PXGとボクセルVX1〜VX4との位置関係の一例を示す斜視図である。図8Bは、図8Aで示した位置関係を示す上面図である。ピクセル群PXGはピクセルPX1〜PX16によって構成されている。図8A及び図8Bに示す位置関係において、着目ピクセルをピクセルPX11とすると、ボクセルVX1〜VX4が着目ピクセルに入射するX線が透過したボクセルとなる。
一方、着目ピクセルに反映されるX線減弱すなわち着目ピクセルの輝度値は、着目ピクセルの輝度値と、着目ピクセルに入射するX線が透過した全ボクセルのX線が透過した部分の総体積に対する当該全ボクセル中の或る一つボクセルのX線が透過した部分の体積の割合との乗算値を、当該全ボクセル中の個々のボクセルに関して和をとったものになっている。したがって、或るボクセルに着目した場合、その着目ボクセルを透過するX線は複数のピクセルに入射するため、着目ボクセルにおけるX線減弱の影響が、各ピクセルに対応する体積比に応じて各ピクセルに与えられることになる。つまり、各ピクセルに対して、影響を受けたX線減弱の内、着目ボクセルがそのピクセルに与える影響の比(体積比)と、輝度値との乗算値をとり、その乗算値をピクセルについて積分することで、着目ボクセル全体のX線減弱を求めることができる。すなわち、着目ボクセルへの逆投影が得られることになる。
図9Aは、X線検出器121の検出面の一部であるピクセル群PXGとボクセルVX1との位置関係の一例を示す斜視図である。図9Bは、図9Aで示した位置関係を示す上面図である。図9A及び図9Bに示す位置関係において、着目ボクセルをボクセルVX1とすると、着目ボクセルVX1全体のX線減弱は、(1)ピクセルPX5の輝度値と、着目ボクセルVX1の体積に対する着目ボクセルVX1のピクセルPX5に入射するX線が透過した部分の体積の割合との乗算値、(2)ピクセルPX6の輝度値と、着目ボクセルVX1の体積に対する着目ボクセルVX1のピクセルPX6に入射するX線が透過した部分の体積の割合との乗算値、(3)ピクセルPX7の輝度値と、着目ボクセルVX1の体積に対する着目ボクセルVX1のピクセルPX7に入射するX線が透過した部分の体積の割合との乗算値、(4)ピクセルPX9の輝度値と、着目ボクセルVX1の体積に対する着目ボクセルVX1のピクセルPX9に入射するX線が透過した部分の体積の割合との乗算値、(5)ピクセルPX10の輝度値と、着目ボクセルVX1の体積に対する着目ボクセルVX1のピクセルPX10に入射するX線が透過した部分の体積の割合との乗算値、及び(6)ピクセルPX11の輝度値と、着目ボクセルVX1の体積に対する着目ボクセルVX1のピクセルPX11に入射するX線が透過した部分の体積の割合との乗算値、の和となる。
具体的には、ボクセルを透過するX線は直進するので、各ボクセルについて、X線検出器121の検出面をX線入射方向でボクセル位置まで投影させる。逆に、各ボクセルについて、ボクセルをX線入射方向でX線検出器121の検出面の位置まで投影させてもよい。
直方体であるボクセルのいずれの構成面もX線入射方向に対して垂直でない場合、例えば図10に示すようにX線入射方向に対するボクセルの厚みがボクセルVX1内で一様ではないので、ピクセルによってはボクセルの薄い部分を透過したX線が入射される場合もあり、これを厳密に計算すると、逆投影の計算時間が膨大になる。
そこで、本実施形態では、直方体のボクセルを、直方体のボクセルと同一の体積であってX線入射方向に対する厚みが一様な斜四角柱に近似して、逆投影を行う。当該斜四角柱は、X線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面を、両方又は片方のみ各対向構成面を含む平面上で平行移動させることによって、2つの底面とし、直方体のボクセルと同一の体積であってX線入射方向に対する厚みを一様とした形状である。このような近似を行ってもトモシンセシス断層画像の画質には殆ど影響しない。
図11Aは、ボクセルVX1を近似する斜四角柱の一例を示す図である。図11Aに示す斜四角柱OP1は、長方形RT2及びRT3を底面とし、X線入射方向に対する厚みを一様とした形状である。長方形RT1は、図9A及び図9Bに示すボクセルVX1の構成面のうち、X線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面に含まれる辺以外の着目ボクセルVX1の各辺の中点を頂点とする長方形である。着目ボクセルVX1内に形成される長方形RT1を斜視図で示すと、図11Bのようになる。長方形RT2は、図9A及び図9Bに示すボクセルVX1の構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面のX線検出器121に近い方をそのX線検出器121に近い方の対向構成面を含む平面上で平行移動させたものである。長方形RT3は、図9A及び図9Bに示すボクセルVX1の構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面のX線検出器121に遠い方をそのX線検出器121に遠い方の対向構成面を含む平面上で平行移動させたものである。そして、長方形RT1〜RT3の各外周はX線入射方向から見て一致している。
着目ボクセルを図9A及び図9Bに示すボクセルVX1とすると、着目ボクセルVX1全体のX線減弱は、(1)ピクセルPX5の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX5に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(2)ピクセルPX6の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX6に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(3)ピクセルPX7の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX7に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(4)ピクセルPX9の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX9に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(5)ピクセルPX10の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX10に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(6)ピクセルPX11の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX11に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、の和となる。長方形RT1の各頂点の座標は、着目ボクセルVX1の各頂点の座標から算出することができる。また、上記の各面積は、長方形RT1のX座標およびZ座標と、X線検出器121の検出面に形成されているピクセルの各格子点のX座標およびZ座標とから算出することができる。
長方形RT1は、上述した通り、着目ボクセルVX1の構成面のうち、X線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面に含まれる辺以外の着目ボクセルVX1の各辺の中点を頂点とする長方形である。これにより、X線検出器121の検出面に平行な方向に関して、斜四角柱OP1が、着目ボクセルVX1に対して偏ることを防止することができ、近似によるトモシンセシス断層画像の画質への影響を最小化することができる。ただし、着目ボクセルVX1を近似する斜四角柱の位置設定は、本実施形態の設定に限定されるものではない。例えば、X線検出器121の検出面に平行な方向に関して、斜四角柱OP1が、着目ボクセルVX1に対して偏ることがあまり問題にならない場合には、着目ボクセルVX1を近似する斜四角柱を、図12に示す斜四角柱OP2、図13に示す斜四角柱OP3、図14に示す斜四角柱OP4、図15に示す斜四角柱OP5などにしてもよい。
図12に示す近似を行う場合、着目ボクセルを図9A及び図9Bに示すボクセルVX1とすると、着目ボクセルVX1全体のX線減弱は、(1)ピクセルPX5の輝度値と、長方形RT4の面積に対する長方形RT4のピクセルPX5に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(2)ピクセルPX6の輝度値と、長方形RT4の面積に対する長方形RT4のピクセルPX6に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(3)ピクセルPX7の輝度値と、長方形RT4の面積に対する長方形RT4のピクセルPX7に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(4)ピクセルPX9の輝度値と、長方形RT4の面積に対する長方形RT4のピクセルPX9に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(5)ピクセルPX10の輝度値と、長方形RT4の面積に対する長方形RT4のピクセルPX10に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(6)ピクセルPX11の輝度値と、長方形RT4の面積に対する長方形RT4のピクセルPX11に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、の和となる。なお、長方形RT4は、図9A及び図9Bに示すボクセルVX1の構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面のX線検出器121に遠い方である。
図13に示す近似を行う場合、着目ボクセルを図9A及び図9Bに示すボクセルVX1とすると、着目ボクセルVX1全体のX線減弱は、(1)ピクセルPX5の輝度値と、長方形RT5の面積に対する長方形RT5のピクセルPX5に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(2)ピクセルPX6の輝度値と、長方形RT5の面積に対する長方形RT5のピクセルPX6に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(3)ピクセルPX7の輝度値と、長方形RT5の面積に対する長方形RT5のピクセルPX7に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(4)ピクセルPX9の輝度値と、長方形RT5の面積に対する長方形RT5のピクセルPX9に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(5)ピクセルPX10の輝度値と、長方形RT5の面積に対する長方形RT5のピクセルPX10に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(6)ピクセルPX11の輝度値と、長方形RT5の面積に対する長方形RT5のピクセルPX11に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、の和となる。なお、長方形RT5は、図9A及び図9Bに示すボクセルVX1の構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面のX線検出器121に近い方である。
図14に示す近似を行う場合、着目ボクセルを図9A及び図9Bに示すボクセルVX1とすると、着目ボクセルVX1全体のX線減弱は、(1)ピクセルPX5の輝度値と、長方形RT6の面積に対する長方形RT6のピクセルPX5に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(2)ピクセルPX6の輝度値と、長方形RT6の面積に対する長方形RT6のピクセルPX6に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(3)ピクセルPX7の輝度値と、長方形RT6の面積に対する長方形RT6のピクセルPX7に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(4)ピクセルPX9の輝度値と、長方形RT6の面積に対する長方形RT6のピクセルPX9に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(5)ピクセルPX10の輝度値と、長方形RT6の面積に対する長方形RT6のピクセルPX10に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(6)ピクセルPX11の輝度値と、長方形RT6の面積に対する長方形RT6のピクセルPX11に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、の和となる。なお、長方形RT6は、図9A及び図9Bに示すボクセルVX1の構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面に含まれる辺以外の着目ボクセルVX1の各辺をX線検出器121に遠い方から1:2で分割する分割点を頂点とする長方形である。
図15に示す近似を行う場合、着目ボクセルを図9A及び図9Bに示すボクセルVX1とすると、着目ボクセルVX1全体のX線減弱は、(1)ピクセルPX5の輝度値と、長方形RT7の面積に対する長方形RT7のピクセルPX5に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(2)ピクセルPX6の輝度値と、長方形RT7の面積に対する長方形RT7のピクセルPX6に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(3)ピクセルPX7の輝度値と、長方形RT7の面積に対する長方形RT7のピクセルPX7に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(4)ピクセルPX9の輝度値と、長方形RT7の面積に対する長方形RT7のピクセルPX9に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(5)ピクセルPX10の輝度値と、長方形RT7の面積に対する長方形RT7のピクセルPX10に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(6)ピクセルPX11の輝度値と、長方形RT7の面積に対する長方形RT7のピクセルPX11に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、の和となる。なお、長方形RT7は、図9A及び図9Bに示すボクセルVX1の構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面に含まれる辺以外の着目ボクセルVX1の各辺をX線検出器121に遠い方から2:1で分割する分割点を頂点とする長方形である。
ステップS5において縦長のX線細隙ビームがX線発生器112から照射されるため、X線発生器112から照射されるX線のX軸方向(=X線検出器121の横方向)の広がりは小さく、X線発生器112から照射されるX線のZ軸方向(=X線検出器121の縦方向)の広がりは大きい。したがって、X軸方向(=X線検出器121の横方向)に関しては、着目ボクセルの位置に係わらず、上記において説明した図10〜図15のように、X線入射方向をX線検出器121の検出面に対して垂直として扱うことができるが、Z軸方向(=X線検出器121の縦方向)に関しては、X線入射方向を一律にX線検出器121の検出面に対して垂直として扱うことができず、着目ボクセルの位置がZ軸方向に関して原点から離れているほど着目ボクセルを透過するX線はX線検出器121の検出面に対してZ軸方向に斜めに入射する。ここで、着目ボクセルを透過するX線がX線検出器121の検出面に対してZ軸方向に斜めに入射する場合の逆投影について図16を参照して説明する。図16は、着目ボクセルVX1を透過するX線がX線検出器121の検出面に対してZ軸方向に斜めに入射する場合の一例を示す図である。図16においても、図10〜図15と同様に、直方体のボクセル(例えば図16における着目ボクセルVX1)を、直方体のボクセルと同一の体積であってX線入射方向に対する厚みが一様な斜四角柱(例えば図16における斜四角柱OP6)に近似して、逆投影を行う。当該斜四角柱は、X線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面を、両方又は片方のみ各対向構成面を含む平面上で平行移動させることによって、2つの底面とし、直方体のボクセルと同一の体積であってX線入射方向に対する厚みを一様とした形状である。
図16に示す近似を行う場合、着目ボクセルを図9A及び図9Bに示すボクセルVX1とすると、着目ボクセルVX1全体のX線減弱は、(1)ピクセルPX5の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX5に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(2)ピクセルPX6の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX6に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(3)ピクセルPX7の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX7に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(4)ピクセルPX9の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX9に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(5)ピクセルPX10の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX10に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、(6)ピクセルPX11の輝度値と、長方形RT1の面積に対する長方形RT1のピクセルPX11に入射するX線が透過した部分の面積の割合との乗算値、の和となる。なお、長方形RT1は、上述した通り、着目ボクセルVX1の構成面のうち、X線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面に含まれる辺以外の着目ボクセルVX1の各辺の中点を頂点とする長方形である。
上記の説明では、着目ボクセルのいずれの構成面もX線検出器121の検出面と平行でない場合と、着目ボクセルを透過するX線の入射方向がX線検出器121の検出面に対して垂直でない場合とを分け、両者とも同様の近似を行うことができることを示したが、着目ボクセルのいずれの構成面もX線検出器121の検出面と平行でなく且つ着目ボクセルを透過するX線の入射方向がX線検出器121の検出面に対して垂直でない場合にも同様の近似を行うことができる。
図9A及び図9BではボクセルVX1のみを図示しているが、再構成領域R1の全ボクセルについて、同様の逆投影を行うようにする。なお、再構成の計算において、図7に示すX軸およびY軸とそれらに直交するZ軸によって定義される直交座標系を用いてもよく、動径r、第1の偏角θ、および第2の偏角φによって定義される極座標系を用いてもよい。極座標系を用いる場合、X線発生器112の中心(X線源)から一つのボクセルまでの距離を動径rとする。また、X線発生器112の中心(X線源)から一つのボクセルの端から端までの撮影に必要な縦方向の画角θ1は微小であるで、sinθ1をθ1に近似することができる。同様に、X線発生器112の中心(X線源)から一つのボクセルの端から端までの撮影に必要な横方向の画角φ1は微小であるで、sinφ1をφ1に近似することができる。
なお、ボクセルの形状は直方体であるが、直方体には縦、横、高さの長さがすべて等しい特殊な一例である立方体も含まれる。同様に、ボクセルの構成面、及び、当該構成面に平行なボクセルの断面の各形状は長方形であるが、長方形には縦、横の長さが等しい特殊な一例である正方形も含まれる。また、着目ボクセルの構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が辺で存在する二対の対向構成面がある場合には、一対の対向構成面のみを着目ボクセルの構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面として選択するとよい。また、着目ボクセルの構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が点で存在する三対の対向構成面がある場合には、一対の対向構成面のみを着目ボクセルの構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面として選択するとよい。
再構成領域R1の全ボクセルについて逆投影の計算が完了すると、ステップS13におけるFBP法を用いた再構成計算が完了する。その後、画像生成手段23は、軌道データが終了するか否か判断し(ステップS14)、終了していない場合にはステップS10に戻り、前述の動作を繰り返す。
一方、各ボクセルをX線が透過した回数(n)は軌道によって異なるので、画像生成手段23は、その回数を計算過程で算出しておき(ステップS15)、最終結果をnで分割する(ステップS16)。
前述した通り、再構成計算後の各トモシンセシス断層画像は、前歯部分の横方向のボクセル数が異なるため横方向の長さが一致しておらず、且つ、X線源から各断層面の最高点を見た仰角が異なるため縦方向の長さが一致していないので、画像生成手段23は、ステップS8で事前に作成しておいた歯列位置補正用テーブルを用いて、再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の横方向および縦方向の長さを一致させるための歯列位置補正を行う (ステップS17)。
具体的には、図17に示すように、補正基準として用いる任意の断層面以外の或る断層面上のボクセルの輝度を補正基準として用いる任意の断層面に投影したときの、補正基準として用いる任意の断層面上でのボクセルの輝度に基づいて、再構成計算後の前記トモシンセシス断層画像各々の横方向および縦方向の長さを一致させるための位置補正を行う。
補正基準として用いる任意の断層面以外の或る断層面上のボクセルの輝度の補正基準として用いる任意の断層面への投影は、本来なら各フレームで全てのピクセルについてX線の透過経路を調べて計算すべきであるが、X線検出器121の幅(=X線検出器121の横方向の長さ)が非常に狭く(例えば64ピクセル)、隣り合うフレーム間の変化も小さいので、或る断層面の特定のボクセルを透過するX線の経路は隣り合うフレーム間でほぼ変化しないと仮定し、各フレームについてX線検出器121の中心に入射するX線の透過経路のみを考慮して計算している。
以下、補正基準として用いる任意の断層面(以下、基準断層面layと称する)上の高さ方向(=X線検出器121の縦方向)が所定の位置であるボクセル及び二つの或る断層面j=j1、j2上の高さ方向が所定の位置であるボクセルを便宜上断層面毎に真っ直ぐ一列に並べた図18を参照して、位置補正について詳説する。
基準断層面lay以外の或る断層面j=a上のボクセルi=bの輝度を基準断層面layに投影したときに、その投影した輝度が基準断層面lay上のボクセルi=c上にくるのであれば、基本的にはその投影した輝度を位置補正後における或る断層面j=a上のボクセルi=cの輝度として扱う。a、b、cはそれぞれ任意の自然数である。そして、1本のフレームのX線が、断層面及び高さ方向が同一である複数のボクセルを透過する場合は、1本のフレームのX線が、中間面(=X線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面に含まれる辺以外のボクセルの各辺の中点を頂点とする長方形。図18中の点線を参照。)を透過したボクセルのみを、1本のフレームのX線が透過したボクセルとする。
つまり、或るフレームにおいて、基準断層面lay以外の或る断層面j=a上のX線が透過する1個のボクセルi=bが基準断層面lay上のボクセルi=cに1対1で対応している場合(図18に示すパターンI)は、基準断層面layに投影した輝度を位置補正後における或る断層面j=a上のボクセルi=cの輝度として扱う。また、1対1対応でなくても、基準断層面lay上の1個のボクセルを通過するX線のフレームが1本である場合(図18に示すパターンI’)も同様に、或るフレームにおいて、基準断層面lay以外の或る断層面j=a上のX線が透過する1個のボクセルi=bが基準断層面lay上のボクセルi=cにくるのであれば、その投影した輝度を位置補正後における或る断層面j=a上のボクセルi=cの輝度として扱う。
しかし、複数本のフレームのX線が基準断層面lay上の1個のボクセルを透過する場合(図18に示すパターンII)、基準断層面lay上のボクセルをどのフレームのX線も透過しない場合(図18に示すパターンIII)は、輝度値を調整する必要がある。
高さ方向に関しても考え方は同様である。ただし、高さ方向はボクセルの並び方が規則的であるので、図18に示すパターンIIにおいて基準断層面lay上の1個のボクセルを透過するX線の本数が限定的になり、図18に示すパターンIIIに該当する基準断層面lay上のボクセルが連続して並ぶ個数の最大値が限定的になる。また、本来ならフレーム毎に高さ方向におけるX線の拡がり角度を調べるべきであるが、本実施形態では計算を単純化するため、前歯方向へ入射するフレームのデータを全てのフレームで採用する。
上述した考え方に沿ったステップS17の歯列位置補正の一例を図19に示すフローチャートを参照して説明する。
図19に示す歯列位置補正の一例ではまず初めに、画像生成手段23は、再構成領域R1の各断層面のボクセル数を記憶部22から読み込む(ステップS171)。
次に、画像生成手段23は、ステップS16で算出した再構成計算後の各ボクセルの輝度値cal(i,j,k)のデータを記憶部22から読み込む(ステップS172)。iは断層面及び高さ方向が同一であるボクセル群中の対象ボクセルの並び順序を特定するための変数であり、jは対象ボクセルが属する断層面を特定するための変数であり、kは高さ方向に関する対象ボクセルの位置を特定するための変数である。
次に、画像生成手段23は、フレーム毎及び断層面毎にX線検出器121の中心に入射するX線が透過するボクセルの歯列座標を記憶部22から読み込むとともに、各断層面の最高点をX線源とX線検出器121を結ぶ各線分の高さ方向距離の比を記憶部22から読み込む(ステップS173)。
次に、画像生成手段23は、ステップS173の読み込み結果を用いて、基準断層面lay上の歯列座標iのボクセルを透過するN(i)個のフレームの内n(i)番目のX線が透過する、或る断層面jのボクセルの歯列座標ii(i, j, n(i))を、各フレームおよび各断層面について計算する(ステップS174)。
次に、画像生成手段23は、ステップS173の読み込み結果を用いて、基準断層面lay上の歯列座標kのボクセルを透過するH(k)個のフレームの内h(k)番目のX線が透過する、或る断層面jのボクセルの歯列座標kk(k, j, h(k))を、各フレームおよび各断層面について計算する(ステップS175)。
次に、画像生成手段23は、ボクセルの歯列座標i、歯列座標k、n(i)、h(k)のループで断層面jのボクセルの輝度値を基準断層layに投影したときの輝度値datawa(i,j,k)を、断層面j上の点(ii,j,kk)の輝度値cal(ii,j,kk)から計算する(ステップS176)。
N(i)≠0かつH(k) ≠0の場合、すなわちi、kともにパターンIまたはパターンIIに該当する場合、輝度値datawa(i,j,k)は下記の(1)式で表される。
N(i)≠0かつH(k)=0の場合、すなわちiはパターンIまたはパターンIIに該当し、kはパターンIIIに該当する場合、輝度値datawa(i,j,k)は下記の(2)式で表される。
N(i)=0かつH(k) ≠0の場合、すなわちiはパターンIIIに該当し、kはパターンIまたはパターンIIに該当する場合、輝度値datawa(i,j,k)は下記の(3)式で表される。
N(i)=0かつH(k) =0の場合、すなわちi、kともにパターンIIIに該当する場合、輝度値datawa(i,j,k)は下記の(4)式で表される。
ただし、上記の(3)式および(4)式中のi1、i2は、基準断層面lay上のボクセルの歯列座標iに対応するフレームがない場合(n(i)=0)において、その前後のフレームのn(i)>0を満たすiに対応する断層面j上の歯列座標iiであり、i1≦i2を満たす。上記の(2)式および(4)式中のk1、k2も高さ方向について同様に考える。また、i1、i2、k1、k2で示される各座標位置の少なくとも一つがトモシンセシス断層画像を形成する領域から外れる場合は、輝度値datawa(i,j,k)を0にする。
ここでi1+1<i2の場合を考えると、パターンIIIのときに、基準断層layよりもボクセル数が多い断層面(例えば図18に示す断層面j=2)上にフレームのX線が透過していないボクセル(例えば図18に示すボクセル)が存在することになるが、このボクセルの輝度値を使用しないというのは望ましくない。したがって、この場合は、次のような処理を行うことが望ましい。
i1=ii(i−Δ1,j,N(i−Δ1))、i2=ii(i+Δ2,j,N(i+Δ1))とし、基準断層面lay上の歯列座標iに対応する断層面j上の歯列座標を下記の(5)式で表される実数ijとする。ここで、Δ1+Δ2−1は基準断層面lay上のフレームのX線が透過しない連続したボクセルの個数である。
k1、k2も高さ方向について同様に考える。そして、i1+1<i2及び/又はk1+1<k2の場合は、上記(2)式の代わりに下記(6)式を用い、上記(3)式の代わりに下記(7)式を用い、上記(4)式の代わりに下記(8)式を用いるようにする。ただし、下記(6)式〜(8)式中のflr(x)は実数x以下となる整数のうち最大の整数を表している。
上述した輝度値datawa(i,j,k)の計算が完了すると、図19に示す位置補正処理(ステップS17の処理の一例)が完了する。
ステップS17の処理が完了して得られた60層のトモシンセシス断層画像は、60層のパノラマ画像として画像メモリ22bに保管される。最後に、制御装置21は、例えば操作手段25から与えられるユーザの指示や予めROM21bに記憶されている表示設定に応じて、再構成されたパノラマ画像を表示手段26に表示させる(ステップS18)。
以上のように、本実施形態では、FBP法を用いた再構成計算において、再構成領域を構成する直方体のボクセルへの逆投影を行う代わりに、再構成領域を構成する直方体のボクセルの構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面の一方、又は、当該対向構成面に平行な当該ボクセルの断面への逆投影を行うので、逆投影の計算時間を大幅に短縮することができる。したがって、FBP法を用いて少ない再構成計算量でトモシンセシス断層画像を再構成することができる。
さらに、本実施形態では、再構成計算後の各トモシンセシス断層画像を横方向、縦方向それぞれで一律に拡大あるいは縮小して位置補正を行うのではなく、補正基準として用いる任意の断層面以外の或る断層面上のボクセルの輝度を補正基準として用いる任意の断層面に投影したときの、補正基準として用いる任意の断層面上でのボクセルの輝度に基づいて位置補正を行う。これにより、FBP法を用いた再構成計算後の各トモシンセシス断層画像を歪みの発生を抑えて位置補正することができる。
なお、本発明に係るX線撮影装置は、歯科用X線撮影装置に限らず、FBP法を用いてフレームデータからトモシンセシス断層画像を再構成するX線撮影装置全般に適用することができる。例えば、肋骨を撮影対象とする場合、標準歯列座標群の代わりに、標準的な肋骨の形状に対応する標準肋骨座標群が用いられることになる。
また、上述した実施形態では、位置補正によって再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の横方向および縦方向の長さを一致させたが、再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の横方向の長さが異なることがあまり問題にならない場合には、位置補正によって再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の縦方向のみの長さを一致させてもよく、再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の縦方向の長さが異なることがあまり問題にならない場合には、位置補正によって再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の横方向のみの長さを一致させてもよい。
また、上述した実施形態では、位置補正によって再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の横方向および縦方向の長さを一致させたが、位置補正によって再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の横方向および縦方向の長さを略一致させてもよい。つまり、例えば、複数層のトモシンセシス断層画像同士を比較して断層深さによる歯の様子を比較する場合等に不便にならない程度で、位置補正後において再構成計算後の各トモシンセシス断層画像の横方向および縦方向の長さに差があってもよい。
また、上述した実施形態では、FBP法を用いた再構成計算において、再構成領域を構成する直方体のボクセルへの逆投影を行う代わりに、再構成領域を構成する直方体のボクセルの構成面のうちX線入射方向から見て重複する領域が存在する一対の対向構成面の一方、又は、当該対向構成面に平行な当該ボクセルの断面への逆投影を行ったが、本発明はこれに限定されることはなく、FBP法を用いた再構成計算において、再構成領域を構成する直方体のボクセルへの逆投影を行うようにしても構わない。