JP6078505B2 - ロックタイプ双方向クラッチ - Google Patents
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Description
断面A−A図に示されるように、ロックタイプ双方向クラッチLCのハウジングHG内においては、入力軸ISが複数の扇形部に分割され、扇形部の内側に出力軸OSが嵌め込まれる。出力軸OSには、入力軸ISの隣接する扇形部の間に入り込む突起部が設けてあり、この突起部の先端に形成したV字状凹所とハウジングHGとの間には、ローラRが設置される。
これに対し、出力軸OSが回転したときは、図8(b)に示すように、ローラRがV字状凹所の斜面に押し上げられて径方向の外方に移動し、ハウジングHGと出力軸OSの突起部との間に噛み込まれる。そのため、出力軸OSがロックされてその位置で停止し、入力軸ISに回転が伝達されることはない。図7の昇降装置では、モーターMによる駆動を停止しても、物品Wが自重により落下するのを自動的に阻止することができる。このような双方向クラッチは、本出願人の特許出願に係る特許第4850653号公報に開示されている。
ロックタイプ双方向クラッチは、例えば、複写機のフィニッシャーにおいて、複写済みの用紙を載せた用紙テーブルを上下させる昇降装置、あるいは、建築物の窓のブラインドを昇降する昇降装置に適用することができる。これを利用すると、簡易な装置による自動的な動力伝達の制御が可能となって、例えば電磁クラッチにより制御する場合のような、電力等の使用が不必要となるとともに、出力軸側から不測の逆入力があった場合に、駆動源のモーターを保護することも可能となる。
図7の双方向クラッチでは、入力軸ISの扇形部と出力軸OSの突起部との間などに間隙が存在するので、作動中に衝撃音が発生する。さらに、双方向クラッチを図7の昇降装置に適用した場合、モーターMを正転させて物品Wを上昇するときは問題ないが、モーターMを逆転させ物品Wを下降するときに、物品Wの重力に起因して出力軸OSの速度が細かな変動を繰り返し、振動や異音を生じることがある。これは、次の理由による。
本発明の課題は、対をなす2個のローラを使用して、出力軸の正転及び逆転に応じて異なるローラを噛み込ませるように構成し、しかも、一体型のばねを配置して組み立て加工を容易とし、上述の問題点を解決することにある。
「固定されたハウジングの内部に、入力軸に結合される入力部材、出力軸に結合される出力部材、及び、前記ハウジングと前記出力部材との間に配置された複数のローラを備え、前記出力部材の回転による前記入力部材の回転は、前記ローラが前記ハウジングと前記出力部材との間に噛み込まれて阻止されるとともに、前記入力部材の回転は、前記入力部材が前記ローラの噛み込みを解除して前記出力部材に伝達されるロックタイプ双方向クラッチであって、
複数の前記ローラは、前記出力部材が正回転のときに噛み込むローラと逆回転のときに噛み込むローラとが、対をなして前記ハウジングと前記出力部材との間に配置され、かつ、前記ローラの全てがばねにより噛み込み方向に付勢されており、さらに、
前記出力部材には、径方向に突出するばね保持部が形成され、
前記ばねは、前記ローラの全てを付勢する一体型のばねであって、前記出力部材の軸方向側部に当接された円周部と、前記円周部から径方向に突出する複数の連結部と、前記連結部から軸方向に曲げられた2個の板ばね部とが形成されており、前記2個の板ばね部が、前記出力部材のばね保持部を挟んで設置されている」
ことを特徴とするロックタイプ双方向クラッチとなっている。
つまり、対をなす2個のローラは、噛み込み状態の直前の位置に置かれていて、出力部材が回転したときには直ちに噛み込みを生じ、出力部材の回転からロックに至るまでの遊び量は、両方向の回転に対し1個のローラを噛み合わせる双方向クラッチと比べると、非常に小さな値となる。そのため、作動時の衝撃や騒音を低減できるとともに、出力部材が入力部材よりもオーバーランすることに伴って生じる、出力部材の速度変動あるいは衝撃音も小さいものに抑制することが可能である。
このように、複数のローラの全てを付勢するばねが一体化され、出力部材の軸方向側部に設置されるため、例えば、引用文献2のコイルばねを圧縮しながらローラの間に挿入する作業と比較すると、ばねを双方向クラッチに組み付ける作業が極めて容易となる。つまり、この一体型のばねは、後述の図6に示すように、出力部材に単に重ねるようにして組み込むことができ、機械的な自動組み立ても容易にできることとなる。
また、ローラを付勢する2個の板ばね部が、出力部材に形成されたばね保持部を挟んで設置されるため、ばね保持部が板ばね部のストッパとして機能し、板ばね部の過大な変形を防止する。その結果、板ばね部の耐久性が向上するとともに、ローラの過大な変位も防止されることとなり、ローラの噛み込み及びその解除が、遅れることなく迅速に行われ、ロックタイプ双方向クラッチとして的確な作動が実行される。
請求項3の発明は、上記のような、薄板の鋼材からなるばねの円周部に凹凸を形成し、これを出力部材の軸方向側部に当接するものであり、請求項4の発明は、円周部の内方に弾性力を有する内方ばねを設けて出力部材の軸方向側部に当接するものである。このような構造としたときは、凹凸部分あるいは内方ばねによって一体型のばねに軸方向の弾性力が付与される。そのため、ばねの円周部と出力部材の軸方向側部との間には、摩擦に基づく制動力が作用し、やはり出力部材とばねとの相対的なずれが防止される。
そして、請求項6の発明のように、入力部材の突出し部における解除部を出力部材に向けて軸方向に延長すると(後述の図3(a´)参照)、噛み込みを解除する際にローラとの接触部分が拡がり、解除作動がより安定して行われることとなる。
請求項8の発明は、ハウジング、入力部材及び出力部材を、金属粉末の焼結により成形するものであって、複雑な形状のものであっても寸法精度等の優れた製品を得ることが可能である。
入力部材2と出力部材3とは、図6の組み立て図にも示すとおり、出力部材3の5個の被伝達部32が入力部材2の伝達部22の間に入り込むよう、重ねて組み合わされる。組み合わされたときは、入力部材2の解除部23が出力部材3のカム面31の外方に突き出すこととなる。
図3(a´)に示す入力部材の変形例は、入力部材2´の突出し部21´における解除部23´を、出力部材3のカム面31側に向けて軸方向に延長したものである。こうすると、噛み込みを解除するときの解除部23´とローラ4との接触部分が拡大し、より安定した解除作動を行わせることが可能となる。
出力部材3のカム面31は、入力部材2の解除部23が置かれた図の中央部が最も外方に突き出し、その両側は、ハウジング1の内周面11との距離が徐々に広がる対称的な斜面の形状をなしている。右側の斜面に配置されたローラ4Rと左側の斜面に配置されたローラ4Lとは、それぞれ板ばね部53によって中央側に押圧されている。
図4に示すとおり、一体型のばね5は、ステンレス鋼等の薄い鋼材を加工したものであって、リング状の円周部51と、この円周部51から径方向に突出する5個の連結部52と、それぞれの連結部52から軸方向に曲げられた2個の板ばね部53とが形成されている。ばね5は、図1(a)に示すように、出力部材3の軸方向側部に設置されて円周部51が側部に当接する。この実施例のばね5には、5個の凸状部を有する中央孔5Hが形成してあり、中央孔5Hが、出力部材3の軸方向側部に設けた、対応する形状を有する薄い凸部3M(図3(b)参照)に嵌め込まれ、これにより、ばね5が出力部材3に対し相対的に回転してずれの起こる事態が防止される。
ばね5Aでは、薄板の鋼材からなるばねの円周部51Aが軸方向に凹凸をなすように形成されている。ばね5Aをシールド体13と出力部材3との間に置き、円周部51Aを出力部材3の軸方向側部に当接したときは、その凹凸の弾性力によって、円周部51Aと出力部材3との間に摩擦に基づく制動力が作用する。
ばね5Bでは、円周部51Bの内方に軸方向の弾性力を有する内方ばね5BTを設け、これを出力部材3の軸方向側部に当接して、円周部51Bと出力部材3との間に摩擦に基づく制動力を作用させる。また、ばね5B´では、内方ばね5B´Tがリング形状をなすばねであって、内方ばね5B´Tの一つに直径の両端が円周部51B´に接続されるとともに、それと直交する部分の両端が上方に反り返るように曲げられ、これによって軸方向の弾性力が付与されている。
本発明のロックタイプ双方向クラッチは、複数のローラ4の全てを付勢するばね5が一体化されており、また、複数のローラ4は、予め治具を用いて整列させておけば、同時に挿入することが可能である。そのため、ばね5やローラ4を双方向クラッチに組み付ける作業が極めて容易であり、機械的な自動組み立ても容易にできることとなる。
2、2´ 入力部材
22 伝達部
23、23´ 解除部
3 出力部材
31 カム面
32 被伝達部
33 ばね保持部
4 ローラ
5 ばね
51 円周部
53 板ばね部
Claims (8)
- 固定されたハウジングの内部に、入力軸に結合される入力部材、出力軸に結合される出力部材、及び、前記ハウジングと前記出力部材との間に配置された複数のローラを備え、前記出力部材の回転による前記入力部材の回転は、前記ローラが前記ハウジングと前記出力部材との間に噛み込まれて阻止されるとともに、前記入力部材の回転は、前記入力部材が前記ローラの噛み込みを解除して前記出力部材に伝達されるロックタイプ双方向クラッチであって、
複数の前記ローラは、前記出力部材が正回転のときに噛み込むローラと逆回転のときに噛み込むローラとが、対をなして前記ハウジングと前記出力部材との間に配置され、かつ、前記ローラの全てがばねにより噛み込み方向に付勢されており、さらに、
前記出力部材には、径方向に突出するばね保持部が形成され、
前記ばねは、前記ローラの全てを付勢する一体型のばねであって、前記出力部材の軸方向側部に当接される円周部と、前記円周部から径方向に突出する複数の連結部と、前記連結部から軸方向に曲げられた2個の板ばね部とが形成されており、前記2個の板ばね部が、前記出力部材のばね保持部を挟んで設置されていることを特徴とするロックタイプ双方向クラッチ。 - 前記ローラを付勢する前記ばねが薄板の鋼材からなり、前記出力部材の軸方向側部には、前記ばねの円周部に設けた中央孔を嵌め込む凸部が形成されている請求項1に記載のロックタイプ双方向クラッチ。
- 前記ローラを付勢する前記ばねが薄板の鋼材からなり、前記出力部材の軸方向側部に当接される円周部に凹凸が形成されている請求項1に記載のロックタイプ双方向クラッチ。
- 前記ローラを付勢する前記ばねが薄板の鋼材からなり、前記出力部材の軸方向側部に当接される円周部の内方に、軸方向の弾性力を付与する内方ばねが設けられている請求項1に記載のロックタイプ双方向クラッチ。
- 前記入力部材には、前記出力部材と当接して回転させる伝達部と、前記ローラの噛み込みを解除する解除部とを形成した複数の突出し部を放射方向に設けるとともに、前記出力部材には、前記入力部材の突出し部の間に入り込んで伝達部と当接する複数の被伝達部を軸方向に突出して設け、かつ、前記入力部材と前記出力部材とを軸方向に重ねて、前記入力部材の回転が前記出力部材に伝達されるように組み合わせる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のロックタイプ双方向クラッチ。
- 前記入力部材の突出し部に形成された解除部が出力部材に向けて軸方向に延長され、噛み込みを解除するときの前記ローラとの接触部分が拡大された請求項5に記載のロックタイプ双方向クラッチ。
- 前記ハウジングの内周面が円形断面であり、前記ローラが配置される部分の前記出力部材には、前記ハウジングの内周面との径方向の距離が変化するカム面が形成される請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のロックタイプ双方向クラッチ。
- 前記ハウジング、前記入力部材及び前記出力部材が、金属粉末の焼結により成形される請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のロックタイプ双方向クラッチ。
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