JP6077924B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂中に水酸化マグネシウムを含有する樹脂組成物、および該樹脂組成物を用いた成形体、その樹脂組成物を用いて被覆された成形部品に関するものであり、難燃性の樹脂材料として有用な技術である。
従来より、自動車車両、鉄道車両、船舶、航空機、産業機材、電子機器、電子部品等に使用される絶縁電線、光ファイバケーブル等には、難燃性、耐熱性、機械特性(例えば、引張特性、耐摩耗性)など種々の特性が要求されている。
このため、これらの配線材に使用される被覆材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドが主として使用されていた。
しかし、これらを燃焼した場合には、被覆材料に含まれるハロゲン化合物から腐食性ガスが発生するという問題があった。このため、近年、ハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン難燃材料で被覆した難燃樹脂の検討が行われている。
ノンハロゲン難燃材料は、ハロゲンを含有しない難燃剤を樹脂に配合することで難燃性を発現させており、種々の樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂に、難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物を配合した材料が使用されている。このような金属水和物が高い難燃性を発現させるためには、ハロゲン系難燃剤と比較して大量に、それを配合する必要がある。
このような金属水和物の中でも、水酸化マグネシウムは難燃効果が比較的高く、ポリオレフィン系樹脂を中心とする樹脂に対して、ノンハロゲン難燃剤として広く使用されてきた。
しかし、水酸化マグネシウムを配合した樹脂組成物は、酸に対して弱く、例えば酸性雨、排気ガス中に含まれる窒素酸化物等、種々の酸性薬品等により、物性が大幅に低下する。
そこで水酸化マグネシウムの表面を、リン酸エステル等により表面処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。しかし、リン酸エステルで処理されている水酸化マグネシウムを用いると、樹脂組成物の機械的強度は大幅に低下し、またその耐酸性も不十分であった。
また特許文献2に示されるように、不定形シリカで表面処理する方法も提案されているが、この方法を用いても耐酸性は不十分であり、さらに耐酸性を向上させようとすると、樹脂組成物の分散性が著しく低下したり、耐水性が悪くなり体積固有抵抗の著しい低下が生じたりする。
また特許文献3には、不定形シリカと種々の表面処理剤の両方で表面処理された水酸化マグネシウムを用いた樹脂組成物を提案されている。その中で、不定形シリカとメチルハイドロジェンポリシロキサンの両方で処理なされた水酸化マグネシウムを用いた樹脂組成物が提案されている。しかし、この水酸化マグネシウムを含有する樹脂組成物を用いても、耐酸性は不十分であり、樹脂組成物の機械的強度の低下も大きく、また樹脂中での分散性の面でも課題がある。さらには不定形シリカとその他の種々の表面処理剤の両方で表面処理された水酸化マグネシウムを用いても、耐酸性は不十分であった。
一方、マレイン酸や(メタ)アクリル酸等で変性された樹脂を添加することで、成形体の耐酸性が改善されることが知られている。しかし、マレイン酸や(メタ)アクリル酸等で変性された樹脂の添加のみでは耐酸性が不十分であり、さらに、酢酸等の有機酸に対しては特に効果がなかった。
また、特許文献4には、不飽和カルボン酸の共重合体を含有するポリオレフィン系樹脂、水酸化マグネシウム、およびシリコーン化合物(例えば、メトキシ末端アミノエチルアミノプロピルポリシロキサン(SFR−100))を含有する樹脂組成物が提案されている。しかし、このシリコーン化合物は、末端アルコキシ変性シリコーン化合物であるため、樹脂組成物の耐酸性の改善効果が不十分であった。
特開平2−55746号公報 特開平1−320219号公報 特開2003−253266号公報 特開平6−306215号公報
そこで、本発明の目的は、耐酸性、機械的強度、及び難燃剤の分散性に優れた樹脂組成物、これを用いた成形体、並びに成形部品を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、樹脂成分中にカルボン酸基を有する樹脂を含有させ、特定のシリコーン化合物で表面処理等された水酸化マグネシウムを組み合わせることにより、耐酸性が非常に優れ、機械的強度、及び難燃剤の分散性が優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の樹脂組成物は、
(a)成分として、カルボン酸基を有する重合体を樹脂中に3〜80質量%含有する樹脂、
(b)成分として、水酸化マグネシウム、並びに
(c)成分として、側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物及び/又はその加水分解物
を含有し、前記(a)成分100質量部に対して前記(b)成分を10〜400質量部含有していることを特徴とする。
上記において、前記(b)成分が前記(c)成分によって表面処理されていることが好ましい。その際、前記(b)成分100質量部に対して、前記(c)成分を0.3〜9質量部含有していることが好ましい。
また、前記(a)成分に含有されるカルボン酸基を有する重合体が、(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン、(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、(a−3)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a−4)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体からなる群から選ばれる樹脂を少なくとも1種類以上含有するものであることが好ましい。このうち、前記(a)成分に含有されるカルボン酸基を有する重合体が、マレイン酸で変性された重合体であることが好ましい。
更に、前記(a)成分が、カルボン酸基を有しないポリオレフィン系樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、又はスチレン系共重合体のいずれか1つ以上を含有することが好ましい。
一方、本発明の成形体は、上記いずれかに記載の樹脂組成物を用いて成形されたことを特徴とする。また、本発明の成形部品は、上記いずれかに記載の樹脂組成物を用いて被覆された電線、ケーブル、光ファイバコード、または光ファイバケーブルから成ることを特徴とする。
本発明の樹脂組成物によると、耐酸性、機械的強度、及び難燃剤の分散性に優れたものとなる。その理由の詳細は不明であるが、次のように推測される。
まず、水酸化マグネシウム粒子の表面の一部が、特定のシリコーン化合物で表面処理等されることにより耐酸性を向上させることができ、一方で、このシリコーン化合物によって表面処理されていない表面部分は、カルボン酸基を有する樹脂と強い結合を生じる。これらの組み合わせにより酸に対して非常に強い特性を得ることが出来る。
また、上記のシリコーン化合物は撥水性を有し、これで表面処理されることにより酸物質を水酸化マグネシウム表面に近づけない働きを有する。この際、当該のシリコーン化合物はメチルハイドロジェンシリコーン化合物等の他のシリコーン化合物と比較し、強く水酸化マグネシウムと結合し、酸を水酸化マグネシウム粒子の表面に近づけない働きを行うのみならず、同時に水酸化マグネシウムを酸から守る働きも有する。
一方で、水酸化マグネシウムがカルボン酸基を有する樹脂と強い結合を生じるため、非常に高い強度や耐摩耗性を維持することが出来る。
シリコーン化合物は表面処理を行うと、水酸化マグネシウムを取り囲み、水酸化マグネシウムからの酸による劣化を抑えることが出来る。その一方で、シリコーン化合物は水酸化マグネシウムを完全に表面を覆うことは出来ない。一方、そのシリコーン化合物が水酸化マグネシウム粒子の表面に存在していない部分には、有効的にカルボン酸基を有する樹脂と結合することにより、高い耐酸性を有することが出来る。また一方で、当該のシリコーン化合物で表面処理された水酸化マグネシウム粒子は、樹脂中での分散性は非常に優れており、また、混練中に水酸化マグネシウム粒子とカルボン酸基を有する樹脂と結合するため、非常に優れた水酸化マグネシウム粒子の分散性を有し、難燃性や力学的強度に対しても有効性を持つことが出来る。
一方、マレイン酸や(メタ)アクリル酸等で変性された樹脂を添加することで耐酸性が改善されることは知られている。そこで特願昭63−153552、特願平7−117905の如く耐酸性の効果があるシリカで表面処理された水酸化マグネシウムをこの系で適用すると、マレイン酸や(メタ)アクリル酸等で変性された樹脂を添加していくと、逆に耐酸性が低下してしまう。このメカニズムははっきりしていないが、シリカで表面処理すると表面はマイナスで帯電しており、マレイン酸や(メタ)アクリル酸等で変性された樹脂の官能基もマイナスで帯電しているため、反発してしまって粒子と樹脂との界面に酸物質が侵入できるほどの隙間が生じ、逆に耐酸性を低下させてしまったものと考えられる。
一方でリン酸エステルで表面処理された水酸化マグネシウムは、ベース材料の樹脂がマレイン酸や(メタ)アクリル酸等で変性された樹脂を添加してもしなくてもある程度の耐酸性は得られるものの、耐酸性が不十分であり、さらに酢酸等の有機酸に対しても効果が小さい。また耐摩耗性や強度を向上することが出来ない。
本発明で使用されるシリコーン化合物は、表面処理によってその表面がマイナス帯電することが無く、カルボン酸基を有する樹脂の効果と併せ合って、非常に優れた耐酸性を生み出すことができ、さらに非常に優れた耐摩耗性や強度を得ることが出来る。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、(a)成分として、カルボン酸基を有する重合体を樹脂中に3〜80質量%含有する樹脂、(b)成分として、水酸化マグネシウム、並びに(c)成分として、側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物及び/又はその加水分解物を含有するものである。
(c)成分は、樹脂組成物中に混合される形で配合されていてもよいが、耐酸性、機械的強度、分散性を向上させる観点から、難燃剤である(b)成分が(c)成分によって表面処理されていることが好ましい。
((a)成分)
本発明における(a)成分は、カルボン酸基を有する重合体を樹脂中に0.3〜30質量%含有する樹脂であり、耐酸性、押出形成特性、機械的強度を向上させる観点から、当該重合体を5〜65質量%含有することが好ましく、10〜60質量%含有することがより好ましい。
(a)成分としての樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂などがあり、熱可塑性樹脂が好ましいが、伸び特性や柔軟性などの観点から、(a)成分が、カルボン酸基を有しないポリオレフィン系樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、又はスチレン系共重合体のいずれか1つ以上を、更に含有することが好ましい。また、燃焼時にハロゲン系ガスの発生を防止する観点から、ハロゲン原子を含まないポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン系エラストマー、ポリブタジエン、イソプレン、エチレンープロピレン系ゴム、エチレン−プロピレン系ゴム等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド及びそのエラストマー、ポリウレタン、変性PPO、変性PPEやポリスチレンなどがあげられる。これらの中でもポリオレフィンやポリエステル、ポリアミドのエラストマーが好ましいが、熱可塑性樹脂の種類は任意である。
本発明に使用される樹脂には、カルボン酸基を有する重合体が含有されるが、当該重合体としては、カルボン酸基を有する化合物で変性された重合体、カルボン酸基を有するモノマーを重合又は共重合させて得られる単独重合体又は共重合体、官能基の置換によりカルボン酸基を導入した重合体などが挙げられる。
なかでも、(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン、(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、(a−3)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a−4)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体からなる群から選ばれる重合体が好ましい。これらのうち、マレイン酸で変性された重合体であるであることが好ましい。
(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン
本発明における不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンとは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸が、ポリオレフィンにグラフトした樹脂のことである。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを挙げることができる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体や、プロピレンと他の少量のαオレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体)、エチレンとαオレフィンとの共重合体等が挙げられる。
ポリオレフィンの変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸による変性量は、通常0.5〜15質量%である。
不飽和カルボン酸等により変性されたポリオレフィンとしては、具体的には例えば、アドマーQE810(三井化学製)、アドテックスL−6100M、L−6101等(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、アドマーXE070、NE070等(商品名、三井化学(株)製)、)、などが挙げられる。
(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体
本発明における不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がエチレン−酢酸ビニル共重合体にグラフトした樹脂のことである。
不飽和カルボン酸としては、(a−1)で使用されたものと同様のものを使用することが可能である。エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンに、酢酸ビニルを共重合させたものである。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の変性は、(a−1)と同様、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体と不飽和カルボン酸等を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸等による変性量は、通常0.5〜15質量%である。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、たとえば、アドマーVF600,VF500(三井化学)をあげることができる。
(a−3)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体にグラフトした樹脂のことである。不飽和カルボン酸としては、(a−1)で使用されたものと同様のものを使用することが可能である。
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の変性は、(a−1)と同様、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体と不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸による変性量は、通常0.5〜15質量%である。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、たとえば、モディパーA−5200、A−8200(日本油脂)グレード名をあげることができる。
(a−4)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体とは、スチレン系共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がスチレン系共重合体にグラフトした樹脂のことである。不飽和カルボン酸としては、(a−1)で使用されたものと同様のものを使用することが可能である。
スチレン系共重合体とは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及びランダム構造を主体とする共重合体およびその水素添加物である。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどが挙げられる。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。
スチレン系共重合体の変性は、(a−1)と同様、例えば、スチレン系共重合体と不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸による変性量は、通常0.5〜15質量%である。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体としては、たとえば、クレイトン1901FG(クレイトン(株))、タフテックM(旭化成(株))をあげることができる。
本発明においては、(a)成分として、(a−1)〜(a−4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を使用することが好ましい。
((b)成分)
本発明における(b)成分は、水酸化マグネシウムであり、それ自体が燃焼しないこと、分解時に吸熱をすること、そして分解して熱容量の大きな水分子を放出することにより、ノンハロゲン難燃剤として優れた特性を有する。水酸化マグネシウムは、平板状の粒子で配合されるのが好ましく、特に、六角形平板状の粒子であることが好ましい。
水酸化マグネシウムの平均粒子径は、樹脂組成物に対する分散性、難燃性、機械強度の維持等の観点から、0.1〜2μmが好ましく、0.3〜1.5μmよりが好ましい。平均粒子径は、レーザー回折法により測定される値であり、具体的には実施例の記載による。
水酸化マグネシウム粒子のBET比表面積は、樹脂組成物に対する分散性、難燃性、機械強度の維持等の観点から、3〜15m/gが好ましく、4〜12m/gがより好ましい。BET比表面積は、BET法により測定される値であり、具体的には実施例の記載による。
水酸化マグネシウム粒子は、代表的には以下のようにして得られる。塩化マグネシウム又はその水和物の水溶液を調製し、そこにアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)を添加してサスペンジョンを得た後、このサスペンジョンに水熱処理を施してスラリーを得て、次いでスラリーをろ過、洗浄、乾燥することで所望の水酸化マグネシウム粒子を製造することができる。後工程である表面処理を湿式法で行う場合には、水熱処理を経たスラリーをろ過、洗浄した後、再度純水に戻して水酸化マグネシウムのスラリーとした上で、表面処理剤を添加することが好ましい。上記水熱処理は、オートクレーブ等の公知の耐圧加熱容器にて、撹拌下、100〜250℃で1〜10時間程度熱処理することで行うことができる。
水酸化マグネシウム粒子は、必ずしも純度100%である必要はなく、その製法等に応じて不純物を含有する場合がある。例えば、鉄、銅、マンガン、クロム、コバルト、ニッケル、バナジウムなどの金属の化合物である。これらの不純物の含有量は、金属換算で、粒子中に0.1質量%以下であることが望ましい。
本発明では、(a)成分である樹脂100質量部に対して、(b)成分である水酸化マグネシウムを10〜400質量部含有しているが、樹脂組成物に対する難燃性と耐酸性の付与、機械強度の維持等の観点から50〜350質量部含有していることがより好ましく、120〜300質量部含有していることが更に好ましい。
((c)成分)
本発明における(c)成分は、側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物及び/又はその加水分解物である。本発明において、「側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物」とは、アルコキシ基を少なくとも側鎖に有するシリコーン化合物であり、アルコキシ基を末端にも有していてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられ、2種以上のアルコキシ基が混在していても良い。
シリコーン化合物は、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサンなどのシロキサンを繰り返し単位として有する化合物である。(c)成分は、これらの化合物の側鎖及び/又は末端の一部又は全部がアルコキシ基で置換されたものが例示される。
また、アルコキシ変性シリコーン化合物の加水分解物とは、アルコキシ基の一部又は全部が加水分解されて、ヒドロキシル基が生成したものである。
具体的には、前記アルコキシ変性シリコーン化合物の加水分解物として、
RO−(Si・CH・OR−O)m−(Si・CH・OH−O)n−R (1)
または
HO−(Si・CH・OR−O)m−(Si・CH・OH−O)n−R (2)
または
HO−(Si・CH・OR−O)m−(Si・CH・OH−O)n−H (3)
で表されるメチルシリコーン化合物などが挙げられる。
ただし、Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基の少なくとも一員を示し、m,nは整数で、m≧0、n≧1、m+n=2〜10万である。なお前記のRは一種類の官能基である必要はなく、例えばメチル基とエチル基のように2種以上のアルキル基が混在していても良い。(Si・CH・OR−O)m(Si・CH・OH−O)nとの記載は、(Si・CH・OR−O)mのブロックと(Si・CH・OH−O)nのブロックとが別々に存在することではなく、(Si・CH・OR−O)の部分がm個と、(Si・CH・OH−O)の部分がn個存在することを示している。
式(1),(2),(3)の違いは、出発材料のRO−(Si・CH・OR−O)m+n−R等から加水分解が進行している程度に有る。そして式(1),(2),(3)のいずれのシリコーン化合物でも良く、また式(1),(2),(3)の化合物が混在していてもよい。
側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物は撥水性を有し、酸物質を水酸化マグネシウム表面に近づけない働きを有する。また側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物は、メチルハイドロジェンシリコーン等の他のシリコーン化合物よりも強く水酸化マグネシウムと結合するので、耐酸性を著しく向上させる。これは側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物が水酸化マグネシウムと加水分解反応して結合するためであると考えられる。さらに側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物は、有機酸に対しても無機酸に対しても耐酸性を向上させ、特に無機酸に対する効果が大きい。
一方、従来のSiOは水に接すると水を内部に包含する性質を有しており、したがってSiOで表面処理された水酸化マグネシウムは耐水性が非常に悪く、組成物を水に浸堰されると体積固有抵抗が大幅に低下するような問題があった。しかし、側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物は水酸化マグネシウムと強く結合し、撥水性を有するため、樹脂組成物等の耐水性を向上させる。
本発明においては、(b)成分である水酸化マグネシウムが、(c)成分である側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物によって表面処理されていることが好ましいが、(c)成分が単に樹脂組成物中に混合されていてもよい。単に(c)成分が樹脂組成物中に混合されている場合でも、(b)成分の表面付近に存在する(c)成分は、表面に化学結合して、表面処理と同様の効果を得ることができる。
(c)成分で表面処理されている場合、(b)成分と(c)成分とをバランスよく化学結合させることで耐酸性等を高めることと表面処理剤の凝集防止の観点から、(b)成分100質量部に対して、(c)成分を0.3〜9質量部含有していることが好ましく、0.5〜7質量部含有していることがより好ましい。
(c)成分で表面処理されていない場合、(b)成分と(c)成分とをバランスよく化学結合させることで耐酸性等を高めることと表面処理剤の凝集防止の観点から、(b)成分100質量部に対して、(c)成分を0.5〜12質量部含有していることが好ましく、1〜9質量部含有していることがより好ましい。
(c)成分のような表面処理剤を用いて、水酸化マグネシウム粒子の表面処理を行う場合、公知の湿式法を適用することができる。また、所望の表面処理レベルが得られる限り、公知の乾式法による表面処理も採用することができる。
湿式法としては、上記水酸化マグネシウム粒子の製造方法にて得た水酸化マグネシウムのスラリーに表面処理剤を溶液状態又はエマルジョン状態で加え、例えば5〜95℃程度の温度で機械的に混合すればよい。乾式法としては、水酸化マグネシウムの粉末をヘンシェルミキサー等の混合機により、攪拌下で表面処理剤を液状、エマルジョン状、あるいは固体状で加え、加熱又は非加熱下に十分に混合すればよい。表面処理剤の水酸化マグネシウム粒子表面への定着性の点から、表面処理を湿式法にて行うことが好ましい。
(b)成分の表面処理には、(c)成分以外の表面処理剤を併用することが可能である。これらの表面処理剤は、本発明の効果を逸脱しない物質と量に限定される。追加して処理される表面処理剤としては、当該の側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物以外のシリコーン化合物、種々のシランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤や脂肪酸系、リン酸エステル、或いはアルミナ、チタニア、ジルコニア等が挙げられる。これらの表面処理剤の量は、特には限定しないが、水酸化マグネシウム100質量部に対して通常0.05〜7質量部程度である。
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物は、前記の(a)成分〜(c)成分以外の成分を必要に応じて含有していてもよい。例えば、さらに難燃助剤を配合することにより、水酸化マグネシウム粒子の配合割合を少なくすることができ、また難燃効果を向上させることができる。
難燃助剤としては、赤リン、炭素粉末あるいはこれらの混合物が好ましい。赤リンとしては、難燃剤用の通常の赤リンの他に、例えば熱硬化性樹脂、ポリオレフィン、カルボン酸重合体、酸化チタンあるいはチタンアルミ縮合物で表面被覆した赤リンが使用できる。また、炭素粉末としては、カーボンブラック、活性炭あるいは黒鉛が挙げられ、このカーボンブラックとしては、オイルファーネス法、ガスファーネス法、チャンネル法、サーマル法又はアセチレン法のいずれの方法によって調製されたものであってもよい。
難燃助剤を配合する場合、難燃性組成物全量に対して、0.5〜20質量%の範囲が好ましく、1〜15質量%の範囲がより好ましい。
また、本発明の樹脂組成物には、その他の添加剤を配合することも可能であり、例えば耐酸化剤、老化防止剤、耐候剤、銅害防止剤、熱安定剤、軟化剤、可塑剤、潤滑剤、滑剤、充填剤、着色剤、相溶化剤、耐電防止剤、発泡剤、架橋剤、架橋助剤など種々の添加剤があげられる。またこれらの添加剤は1種及び2種以上配合しても良い。これらの添加剤は、(a)成分100質量部に対し、30質量部以下の割合が好ましい。
(製造方法)
本発明の樹脂組成物は、(a)成分である樹脂中に、(b)成分、(c)成分を分散することによって得ることができ、成形体は樹脂組成物を成形機によって成形することによって得られる。
このような成分を熱可塑性樹脂に分散させる方法としては。例えばロール混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸混練機、2軸混練機によって混合される。また成形体は(b)成分等を分散させ又は分散させつつ、押出成形機、射出成形機、ブロー成形機、プレス成形機、カレンダー成形機等、積層成形等で成形される。また得られた樹脂組成物や成形体は、加熱処理又は電子線、紫外線処理等の種々の方法で架橋反応を施してもよい。架橋方法としては化学架橋法、電子線架橋、シラン架橋法などがあげられる。
(用途)
以上のような本発明の樹脂組成物は、自動車車両、鉄道車両、船舶、航空機、産業機材、電子機器、電子部品等に好適に使用される難燃性の樹脂組成物であり、例えば、当該分野における成形体、成形部品などの製造に使用される。
本発明の成形体は、以上のような樹脂組成物を用いて成形されたものであり、例えば、容器、ケース、ボール、玩具などの樹脂製品、フレーム、枠体、コーナ部材、嵌め込み部材などの樹脂部材、シート、棒状体、筒状体などの樹脂材料が挙げられる。
また、本発明の成形部品は、本発明の樹脂組成物を用いて被覆された電線、ケーブル、光ファイバコード、または光ファイバケーブルから成る成形部品である。例えば、電気・電子機器の内部ないしは外部配線に使用される絶縁電線、電気コード、自動車用ケーブル、通信用電線・ケーブル、電力用電線・ケーブル、光ファイバコード・ケーブルなどが挙げられる。
以下、実施例等に基づいて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は当該実施例により何ら限定されるものではない。なお、水酸化マグネシウムの物性は次ようにして測定した。
(1)平均粒子径の測定
エタノール50mLを100mL容量のビーカーに採り、約0.2gの乾燥させた水酸化マグネシウム粒子を入れ、3分間の超音波処理を施して分散液を調製した。この調製液をレーザー回折法−粒度分布計(日機装株式会社製 Microtrac HRA Model 9320−X100)を用いて体積基準のD50値を平均粒子径[μm]として測定した。
(2)BET比表面積の測定
乾燥させた水酸化マグネシウム粒子について、BET法−比表面積計(日機装株式会社製 β sorb Model 4200)を用いてBET比表面積を測定した。
(難燃剤Aの製造例)
100L容量のポリエチレン製容器に3.8N−HCl溶液を67L入れ、攪拌下に汎用水酸化マグネシウム(以下、「Mg(OH)」とも記載する)粉末7.4kgを少量ずつ全量加えて溶解しろ過した。なおHClとMg(OH)は当量で溶解させており、ろ別して得られた人工MgCl溶液をEDTA滴定法で定量分析した結果、MgCl濃度で170g/Lであった。この人工MgCl溶液を44L分取し、これに8.3N−NaOH溶液17Lを攪拌下にゆっくりと添加し(Mg2+とOHのモル数比は1:1.8)、4.1kgのMg(OH)を析出させた。さらに純水を加え、67Lのサスペンジョンを調製した。このサスペンジョンを100L容量のハステロイC−276製接液部を有するオートクレーブ内に流し込み、攪拌下に190℃で5時間の水熱処理を行った。
水熱処理後のスラリーをろ過後、固形分に対し20倍容量以上の純水で充分洗浄した。その後、再び純水に戻し、Mg(OH)固形分濃度として100g/Lの乳化スラリーを調製した。この乳化スラリー33Lを70L容量のSUS316製容器に採取し(Mg(OH)固形分質量として3.3kg相当)、攪拌しながら80℃になるまでスラリーを加温した。このスラリーに含まれる水酸化マグネシウムの平均粒子径は1.2μm、BET比表面積は4.5m/gであった。その後、側鎖メトキシ変性メチルシリコーン(信越化学工業株式会社製,商品名:AFP−1)を、Mg(OH)固形分質量100質量部に対し3質量部添加した後、80℃で1時間の表面処理を行った。
表面処理後に真空ろ過を行い、Mg(OH)固形分質量に対し5倍容量以上の純水で洗浄した。洗浄後に乾燥、粉砕してMg(OH)の粉末(本発明の難燃剤A)を得た。全有機炭素分析計(堀場製作所製EMIA−810)での測定よって、得られた表面処理後のMg(OH)粒子の表面には、添加した側鎖メトキシ変性メチルシリコーン略全量が付着していることが確認された(以下の難燃剤B〜Dについても同様)。
(難燃剤Bの製造例)
Mg(OH)固形分質量100質量部に対し、側鎖メトキシ変性メチルシリコーンを0.6質量部添加した以外は、難燃剤Aと同様にして難燃剤Bを製造した。
(難燃剤Cの製造例)
Mg(OH)固形分質量100質量部に対し、側鎖メトキシ変性メチルシリコーンを1質量部添加した以外は、難燃剤Aと同様にして難燃剤Cを製造した。
(難燃剤Dの製造例)
Mg(OH)固形分質量100質量部に対し、側鎖メトキシ変性メチルシリコーンを9質量部添加した以外は、難燃剤Aと同様にして難燃剤Dを製造した。
(難燃剤Eの製造例)
Mg(OH)固形分質量100質量部に対し、側鎖アミノ・両末端メトキシ変性メチルシリコーン(信越化学工業株式会社製,商品名:KF−8001)を3質量部添加した以外は、難燃剤Aと同様にして難燃剤Eを製造した。
(難燃剤Fの製造例)
Mg(OH)固形分質量100質量部に対し、片末端ポリエーテル・片末端メトキシ変性メチルシリコーン(信越化学工業株式会社製,商品名:KF−889)を3質量部添加した以外は、難燃剤Aと同様にして難燃剤Fを製造した。
(難燃剤Gの製造例)
Mg(OH)固形分質量100質量部に対し、ステアリル燐酸エステル換算量が2質量部となるように、80℃で5質量部に調製したステアリル燐酸エステルナトリウム水溶液を添加したこと以外は、難燃剤Aと同様にして難燃剤Gを製造した。
(難燃剤Hの製造例)
Mg(OH)固形分質量100質量部に対し、ステアリン酸換算量が2.5質量部となるように、80℃で5質量部に調製したステアリン酸ナトリウム水溶液を添加したこと以外は、難燃剤Aと同様にして難燃剤Hを製造した。
(難燃剤Iの製造例)
Mg(OH)固形分質量100質量部に対し、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製,商品名:KBM−1003)を0.5質量部添加した以外は、難燃剤Aと同様にして難燃剤Iを製造した。
以上の難燃剤A〜Iについて、表面処理に使用した化合物とその添加量を表1に示す。
Figure 0006077924
(難燃剤Jの製造例)
難燃剤Aの製造と同じ条件で、20倍容量以上の純水で充分洗浄するまでの工程を実施し、その後、乾燥、粉砕を行って、表面処理されていない水酸化マグネシウムからなる難燃剤Jを製造した。
(実施例1〜9、比較例1〜6)
難燃剤A〜Iの水酸化マグネシウムを用い、表2の配合物をバンバリーミキサーにて所定の配合で混合し、220℃で混練を行い、フィーダールーダーにてペレットを作成した。このペレットを用いて、25mmの押出機にて導体径1/0.8TAの外側に2.4mmの外径で、得られた樹脂材料を被覆し、電線を得た。押出ヘッド温度は230℃であった。
(実施例10)
実施例1において、難燃剤Aの代わりに、難燃剤Jを150質量部と側鎖メトキシ変性メチルシリコーン(信越化学工業株式会社製,商品名:AFP−1)7.5質量部を用いること以外は、実施例1と同じ条件で、電線を作製した。
(比較例7)
実施例1において、カルボン酸基を有する重合体を用いることなく、表2に示す配合にしたこと以外は、実施例1と同じ条件で、電線を作製した。
(評価試験)
得られた電線を用いて、以下の評価試験を行った。
1.引張試験(電線)
電線から導体を引き抜き管状片を作成し、JIS C3005の条件で引張試験を行った。引張速度は200mm/分で行った。引張強さが10MPa以上、伸びは100%以上で合格である。
2.耐酸性試験1
電線を約10cm管状片として取りだし、重量を測定した後に、10%酢酸に40℃24時間浸堰した。浸堰後管状片を取りだし、管状片を蒸留水にて十分に洗浄した後に常温で乾燥させ、重量を測定した。重量変化が10%以下であれば合格である。
3.耐酸性試験2
電線を約10cm管状片として取りだし、重量を測定した後に、10%塩酸に40℃24時間浸堰した。浸堰後シートを取りだし、シートを蒸留水にて十分に洗浄した後に常温で乾燥させ、重量を測定した。重量変化が5%以下であれば合格である。
4.耐酸性試験3
電線を約10cm管状片として取りだし、重量を測定した後に、10%硫酸に40℃24時間浸堰した。浸堰後管状片を取りだし、管状片を蒸留水にて十分に洗浄した後に常温で乾燥させ、重量を測定した。重量変化が3%以下であれば合格である。
5.分散状態試験
電線の表面を観察し、白い水酸化マグネシウムの凝集を確認した。目視で白い水酸化マグネシウムの凝集が見られないものを○、電線10mmの長さで2個以下の凝集物が確認されたものを△、それ以上の凝集が確認されたものを×とした。
以上の評価結果を、樹脂組成物の配合と共に、表2に示す。
Figure 0006077924
表中の製品名は次のものを使用した。
PB−222A(サンアロマー(株)製のランダムポリプロピレン)
ユメリット0540F(宇部丸善石油化学製、メタロセンポリエチレン)
EV360(三井デュポンポリケミカル製、エチレン−酢酸ビニル共重合体)
NUC6510(日本ユニカー(株)製のエチレン−アクリル酸エチル共重合体)
アドマーQE810(三井石油化学工業社製、不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン(不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン)
タフテックM(旭化成社製、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体)
イルガノックス1010(チバ社製のヒンダードフェノール系酸化防止剤)
表2の結果から明らかなように、実施例1〜10の樹脂組成物は、電線に用いた場合に、優れた耐酸性、機械的強度を有していた。また、殆どのものが難燃剤の分散性にも優れていた。
これに対して、末端メトキシ変性メチルシリコーンを用いた比較例1〜2では、酢酸と塩酸に対する耐酸性が劣っていた。また、ステアリル燐酸エステルナトリウムを用いた比較例3では、酢酸に対する耐酸性が劣り、ステアリン酸ナトリウムを用いた比較例4では、引張強度と耐酸性が劣り、ビニルトリメトキシシランを用いた比較例5では、酢酸に対する耐酸性が劣った。難燃剤の含有量が多すぎる比較例6では、全ての評価項目が劣っていた。更に、カルボン酸基を有する重合体を用いない比較例7、8では、強度が低く耐酸性が劣っていた。

Claims (8)

  1. (a)成分として、カルボン酸基を有する重合体を樹脂中に3〜80質量%含有する樹脂、
    (b)成分として、水酸化マグネシウム、並びに
    (c)成分として、前記(b)成分の表面に化学結合した側鎖アルコキシ変性シリコーン化合物を含有し、前記(a)成分100質量部に対して前記(b)成分を10〜400質量部含有していることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記(b)成分が前記(c)成分によって表面処理されている請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記(b)成分100質量部に対して、前記(c)成分を0.3〜9質量部含有している請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記(a)成分に含有されるカルボン酸基を有する重合体が、(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン、(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、(a−3)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(a−4)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体からなる群から選ばれる樹脂を少なくとも1種類以上含有するものである請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 前記(a)成分に含有されるカルボン酸基を有する重合体が、マレイン酸で変性された重合体である請求項4に記載の樹脂組成物。
  6. 前記(a)成分が、カルボン酸基を有しないポリオレフィン系樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、又はスチレン系共重合体のいずれか1つ以上を含有する請求項1〜5いずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6いずれかに記載の樹脂組成物を用いて成形された成形体。
  8. 請求項1〜6いずれかに記載の樹脂組成物を用いて被覆された電線、ケーブル、光ファイバコード、または光ファイバケーブルから成る成形部品。
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