JP6062847B2 - 半導体光増幅器 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体光増幅器に係り、特に、活性層が歪量子井戸構造を有する半導体光増幅器に関する。
従来から、光通信システムに用いられる半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)として、井戸層と障壁層からなる量子井戸構造を有する活性層を備えたものが知られている。このような量子井戸活性層は、量子閉じ込めがないバルク結晶からなる活性層と比較して状態密度が低減されているため、光学利得の波長帯域が広くなっている。量子井戸活性層においては、量子閉じ込め効果により重いホールバンドと軽いホールバンドとが乖離している。
ここで、量子井戸活性層全体が基板と格子整合している場合には、重いホールの基底量子準位は軽いホールの基底量子準位よりも(電子エネルギーで見た場合に)高エネルギー側に存在するため、ホールは重いホールの基底準位へ集中する。この重いホールのバンド端では、双極子モーメント行列要素の絶対値の2乗はTEモードにのみ応答するため、TEモードの利得係数はTMモードの利得係数よりも大きくなる。
加えて、結晶成長方向を垂直方向とすると、量子井戸活性層は垂直方向の厚さに比較して水平方向の幅が大きいため、光閉じ込め係数はTEモードの方がTMモードより大きくなるので、TEモードの光学利得はTMモードの光学利得を上回ることになる。
しかしながら、通常、光通信システムを構成する光ファイバや各種光素子の状態は、外的要因(環境温度や外力等)によって時々刻々変化し、これに起因して光通信システムから送出される光信号の偏波方向も時々刻々変化している。このため、光通信システムに用いられるSOAには、任意の偏波方向の光信号に対して常に一定の光学利得を実現するために偏波無依存であることが求められる。
そこで、偏波無依存を実現するために、量子井戸活性層の井戸層に伸張歪を印加することにより、量子閉じ込め効果により乖離した重いホールバンドと軽いホールバンドを補正し、TEモード及びTMモードの光学利得を一致させたSOAが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、量子井戸活性層の障壁層に伸張歪を印加することにより、1550nm光波長帯において偏波無依存を実現する歪多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造も提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
非特許文献2では、障壁層に伸張歪を印加することにより、MQW構造の全域に亘り、軽いホールの基底量子準位を重いホールの基底量子準位よりも高エネルギー側にシフトさせた構造となっている。この構造により、TMモードの利得を向上させ、優れた偏波無依存の増幅動作特性を実現している。
P. Koonath, Sangin Kim, Woon-Jo Cho, A. Gopinath, "Polarization-insensitive quantum-well semiconductor optical amplifiers", IEEE Journal of Quantum Electronics, Volume 38, Issue 9, Sep 2002, p. 1282 -1290 K. Magari, M. Okamoto, Y. Noguchi, "1.55 μm polarization-insensitive high-gain tensile-strained-barrier MQW optical amplifier", IEEE Photonics Technology Letters, Volume 3, Issue11, Nov 1991, p. 998 -1000 J. Barrau, B. Brousseau, M. Brousseau, R. J. Simes and L. Goldstein, "Novel principle of confinement in quantum-well structures", Electronics Letters, Volume 28, Number 8, pp.786-788, 1992 C. P. Seltzer, S. D. Perrin, M. C. Tatham, D. M. Cooper, "Zero-net-strain multiquantum well lasers", Electronics Letters, Volume 27, Number 14, pp.1268-1270, 1991
しかしながら、非特許文献1に開示された構成のように、井戸層に均一に伸張歪を印加して偏波無依存のSOAを実現する場合、以下に述べるように伸張歪の増大により電子のヘテロ障壁が減少するという問題が生じることが非特許文献3に掲載されている。
伝導帯の電子に対する実効的なヘテロ障壁は、図14に示す井戸層541内の電子の基底量子準位と障壁層542の伝導帯端とのエネルギー差であるヘテロ障壁高さΔEとなる。図14(a)から図14(b)に示すように、井戸層541の伸張歪を増加させるとヘテロ障壁高さΔEは減少し、電子が井戸層541から障壁層542及びクラッド層にオーバーフローして広い帯域の利得スペクトルが得られなくなるとともに、雑音指数(NF:Noise Figure)の低減が困難となる。
また、非特許文献3では、静電遮蔽現象により電子が空間的に局在し、伝導帯に量子準位が生じることが主張されている。しかしながら、このような現象の下で所望するSOAの利得波長帯を設計することは困難である。そればかりでなく、例えばSOAに入射する信号光強度が高速で大きく変化する場合、SOA内のキャリア密度が高速で変化するため、静電遮蔽現象により形成された量子準位も変化し、信号光利得が低下するなどの問題も考えられる。
また、非特許文献2に開示された構成のように、障壁層に伸張歪を印加する構成に関しては、以下のような問題がある。本願出願人は、1310nm帯のスーパールミネッセントダイオード(SLD:Super Luminescent Diode)において、1%以上の伸張歪を有する障壁層を10nm以上に亘って形成した場合に、障壁層と井戸層とのヘテロ界面の平坦性が失われる現象を観測している。従って、障壁層に上記のような伸張歪を印加することは、例えば1310nm帯のSOAにおいては光学利得特性の劣化や製造の困難性に繋がると推察される。
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、光通信を行う波長帯において、広い利得帯域に亘って偏波無依存の光増幅が可能な半導体光増幅器(SOA)を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の半導体光増幅器は、障壁層と複数の半導体層からなる複合量子井戸層とを有し、当該障壁層と当該複合量子井戸層とが交互に積層されてなる量子井戸の活性層が基板上に形成された半導体光増幅器において、前記複合量子井戸層の前記複数の半導体層は、当該複合量子井戸層内の量子準位を制御する少なくとも1層の量子準位制御層と、当該量子準位制御層よりもバンドギャップの小さい少なくとも1層の主量子井戸層とからなり、当該量子準位制御層及び当該主量子井戸層のうち、少なくとも1層が前記基板に対して伸張歪を有し、前記主量子井戸層が前記基板に対してほぼ無歪であり、前記量子準位制御層は、前記複合量子井戸層内の軽いホールの基底量子準位を重いホールの基底量子準位に近づけるように制御し、かつ電子−重いホール間の再結合効率よりも電子−軽いホール間の再結合効率が高い構成を有している。
ここで、バンドギャップとは、電子エネルギーで見た場合、価電子帯における最も高いエネルギーを有する価電子帯端と伝導帯端のエネルギー差のことを指す。
この構成により、複合量子井戸層内における伸張歪を有する層の価電子帯構造が軽いホールの量子準位を高エネルギー側へシフトさせるため、重いホールと軽いホールの量子準位を接近させることができる。
このような価電子帯構造において、量子井戸面内方向の有効質量は軽いホールが重いホールより大きいため状態密度が大きくなり、先に記したようなTEモードの光閉じ込め係数のTMモードに対する優位を打ち消すように作用し、TEモード及びTMモードの光学利得を一致させ偏波無依存を実現することができる。
また、複合量子井戸において主量子井戸層のバンドギャップが最も小さいことから、当該主量子井戸層は複合量子井戸内にポテンシャルが深い領域を生じさせるため、電子の量子準位エネルギーを低下させる。このため伝導帯の電子に関する実効的なヘテロ障壁高さを十分に大きくして電子のオーバーフローを低減できるので、利得帯域を拡大することができる。
また、本発明の請求項2の半導体光増幅器では、前記複合量子井戸層の前記複数の半導体層が1層の前記主量子井戸層及び1層の前記量子準位制御層からなる構成を有している。
この構成により、本発明の半導体光増幅器における複合量子井戸層を構成する層数が最も少なくなるため製造性が向上する。
また、本発明の請求項3の半導体光増幅器では、前記複合量子井戸層の前記複数の半導体層は、複数の前記量子準位制御層と、少なくとも1層以上の前記主量子井戸層とからなり、少なくとも2層以上の当該量子準位制御層が、少なくとも1層以上の当該主量子井戸層を両側から挟むように積層された構成を有している。
この構成により、複数の量子準位制御層及び主量子井戸層それぞれのバンドギャップ及び歪量を、独立に設定できるため本発明の半導体光増幅器が有する光学利得の波長域及び利得帯域などの設計の自由度が拡大できる。
また、この構成では複合量子井戸層内で伝導帯及び価電子帯ポテンシャルの形状を対称形状にできるため、電子−重いホール間の包絡波動関数の重なり積分値、及び、電子−軽いホール間の包絡波動関数の重なり積分値が向上するので、再結合効率を増大させることができ、さらなる光学利得の向上を実現することができる。
また、本発明の請求項4の半導体光増幅器では、前記複合量子井戸層の前記複数の半導体層は、複数の前記量子準位制御層と、少なくとも1層以上の前記主量子井戸層とからなり、前記障壁層と複数の当該量子準位制御層の間に、少なくとも1層以上の当該主量子井戸層を配置するように積層された構成を有している。
また、本発明の半導体光増幅器では、前記主量子井戸層が前記基板に対して圧縮歪を有する構成を有している。
この構成では、量子準位制御層に印加する伸張歪量を大きくすることにより、電子、軽いホール、及び重いホールに関して所望の量子準位を形成することができる。
即ち、圧縮歪を有する主量子井戸層が重いホールの量子準位エネルギーを上昇させ、かつ軽いホールの量子準位を低下させる。一方、伸張歪を有する量子準位制御層は、重いホールの量子準位エネルギーを低下させ、かつ軽いホールの量子準位を上昇させる。また、量子井戸ポテンシャルによるホールの閉じ込め効果が原因となり、重いホールに比較して軽いホールの量子準位が大きく低下するので、量子準位制御層に印加する伸張歪を大きくすることにより、重いホール及び軽いホールの基底量子準位を所望の間隔まで接近させることができる。このような量子準位を有する活性層により偏波無依存動作SOAを実現できる。
また、本発明の半導体光増幅器では、前記主量子井戸層が前記基板に対して無歪である構成を有している。
この構成では、伸張歪を有する量子準位制御層の層厚を臨界膜厚以下とすることで、量子準位制御層の伸張歪量の絶対値を1%未満に設定することができる。これにより、複合量子井戸を構成する各層の界面における応力を低減できるので結晶欠陥の発生を抑えて、電子、軽いホール、及び重いホールに関して所望の量子準位を形成することができる。
また、本発明の半導体光増幅器では、前記主量子井戸層が前記基板に対して伸張歪を有する構成を有している。
この構成では、量子準位制御層に圧縮歪を印加することにより、電子、軽いホール、及び重いホールに関して所望の量子準位を形成することができる。
即ち、伸張歪を有する主量子井戸層が軽いホールの量子準位エネルギーを上昇させ、かつ重いホールの量子準位を低下させる。一方、圧縮歪を有する量子準位制御層は、軽いホールの量子準位エネルギーを低下させ、かつ重いホールの量子準位を上昇させる。また、量子井戸ポテンシャルによるホールの閉じ込め効果は、重いホールに比較して軽いホールの量子準位が大きく低下するので、量子準位制御層に比較的小さな圧縮歪を印加することにより、重いホール及び軽いホールの基底量子準位を所望の間隔まで接近させることができる。このような量子準位を有する活性層により偏波無依存動作SOAを実現できる。
また、本発明の半導体光増幅器では、前記量子準位制御層が前記基板に対して伸張歪を有する構成を有している。
この構成では、量子準位制御層に主量子井戸層とは異なる伸張歪を印加することにより、電子、軽いホール、及び重いホールに関して所望の量子準位を形成することができる。
即ち、伸張歪を有する主量子井戸層が軽いホールの量子準位エネルギーを上昇させ、かつ重いホールの量子準位を低下させる。一方、伸張歪を有する量子準位制御層も、軽いホールの量子準位を上昇させ、かつ重いホールの量子準位エネルギーを低下させる。また、障壁層と主量子井戸層及び量子準位制御層のポテンシャルによるホールの閉じ込め効果が原因となり、重いホールに比較して軽いホールの量子準位が大きく低下するので、主量子井戸層及び量子準位制御層に印加する伸張歪を適宜設定することにより、重いホール及び軽いホールの基底量子準位を所望の間隔まで接近させることができる。このような量子準位を有する活性層により偏波無依存動作SOAを実現できる。
また、このような層構成により、例えば、請求項に述べた構成と比較して量子準位制御層の伸張歪を低減できるため、複合量子井戸層の平均歪量を抑圧できる。これにより、複合量子井戸層を有する活性層の結晶性を向上することができる。
また、本発明の請求項の半導体光増幅器では、前記複合量子井戸層がIII−V族混晶であるInGaAsPからなる構成を有している。
この構成により、InGaAsP混晶の組成を調整することで軽いホール帯端及び、重いホール帯端を光通信波長帯において半導体光増幅器として所望のエネルギーレベルへシフトさせたポテンシャル構造を形成することができる。
また、本発明の請求項6の半導体光増幅器では、前記複合量子井戸層がInP/AlGaInAsまたはGaAs/AlGaInPからなる構成であってもよい。
本発明は、複合量子井戸層構造を構成する複数の半導体層のうちの少なくとも1層に伸張歪が印加されることにより、光通信を行う波長帯において、広い利得帯域に亘って偏波無依存の光増幅が可能な半導体光増幅器を提供するものである。
本発明の実施形態としての半導体光増幅器の構成を示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態としての半導体光増幅器の要部の構成を示す拡大断面図である。 本発明の第1の実施形態としての半導体光増幅器のバンド構造の一例を示す模式図である。 図3のバンド構造の伝導帯側を拡大して示す模式図である。 図3のバンド構造の価電子帯側を拡大して示す模式図である。 本発明の第2〜第5の実施形態としての半導体光増幅器の要部の構成を示す拡大断面図である。 本発明の第2の実施形態としての半導体光増幅器のバンド構造の一例を示す模式図である。 本発明の第3の実施形態としての半導体光増幅器のバンド構造の一例を示す模式図である。 本発明の第4の実施形態としての半導体光増幅器のバンド構造の一例を示す模式図である。 本発明の半導体光増幅器の構造条件を示す図である。 本発明の第5の実施形態としての半導体光増幅器のバンド構造の一例を示す模式図である。 本発明の半導体光増幅器の駆動電流に対する光学利得特性の一例を示すグラフである。 本発明の半導体光増幅器における歪補償構造の構造例を示す模式図である。 量子井戸構造の伝導帯の電子に対する実効的なヘテロ障壁と伸張歪の関係を説明する模式図である。
以下、本発明に係る半導体光増幅器(SOA)の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、各図面上の各構成の寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致していない。また、図3〜5,7〜9,11に示すバンド構造図において、伝導帯端(E)を太い実線で表し、価電子帯側の重いホール帯端(Ehh)及び軽いホール帯端(Elh)を、それぞれ太い実線及び太い破線で表す。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態としてのSOA1の構成について説明する。図1はSOA1の構成を示す斜視図であり、図2はSOA1の要部の構造を示す拡大断面図である。
即ち、図1に示すように、SOA1は、例えば、n型InP(インジウム・リン)からなるn型半導体基板11と、n型半導体基板11の上に形成されるn型InPからなるn型クラッド層12と、n型クラッド層12の上に形成されるInGaAsP(インジウム・ガリウム・砒素・リン)からなる光分離閉じ込め(SCH:Separate Confinement Heterostructure)層13と、SCH層13の上に形成されるInGaAsPからなる活性層14と、活性層14の上に形成されるInGaAsPからなるSCH層15と、SCH層15の上に形成されるp型InPからなるp型クラッド層18と、を備える。また、半導体基板11をp型InPとする構成では、n型クラッド層12をp型InPに置き換え、p型クラッド層18をn型InPに置き換えれば良い。
なお、n型クラッド層12、SCH層13、活性層14、及びSCH層15、及びp型クラッド層18はメサ型の光導波路を構成しており、このメサ型の光導波路の両側方にp型InPからなる下部埋め込み層16及びn型InPからなる上部埋め込み層17が形成されている。
また、このメサ型光導波路を基本横モード光が伝搬する方向を導波路の主軸方向とすると、SOA端面からメサ型光導波路に帰還する光を低減する目的で、前記端面の法線方向に対して前記主軸の方向を傾けたメサ型光導波路構成や、前記端面近傍でメサ型光導波路に水平面内において光導波損失が十分小さくなる程度の曲率半径を与え、前記端面に導波光が斜めに入射する構成としても良い。
p型InPからなるp型クラッド層18はSCH層15の上側及び上部埋め込み層17の上面に形成されており、このp型クラッド層18の上面には、p型InGaAsPからなるp型コンタクト層19が形成されている。さらに、このp型コンタクト層19の上面には、p型金属電極20が設けられている。また、n型半導体基板11の下面にはn型金属電極21が設けられている。
また、SOA1の劈開によって形成された光入射端面及び光出射端面には、それぞれ反射防止膜(図示せず)が施されている。
活性層14は、図2の拡大断面図に示すように、複数の半導体層からなる複合量子井戸層141と障壁層142とが繰返し交互に積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有する。あるいは、活性層14は、2つの障壁層142の間に1つの複合量子井戸層141が挟まれた単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造を有するものであっても良い。また、活性層14は、障壁層142を介さず、複合量子井戸層141を直接にSCH層13及びSCH層15で挟むSQW構造を有するものであっても良い。
複合量子井戸層141は、n型半導体基板11に対して伸張歪を有する量子準位制御層(歪印加層)143と、バンドギャップが量子準位制御層143よりも小さい主量子井戸層144と、を含む。
また、障壁層142は、量子準位制御層143及び主量子井戸層144よりも大きなバンドギャップを有している。なお、バンドギャップとは、特に指定しない限り伝導帯端と価電子帯端とのエネルギー差のうち最も小さいエネルギー差である。
2層の障壁層142の間には、複合量子井戸層141を構成する量子準位制御層143と主量子井戸層144とが隣接して積層された対が1つ配置される。主量子井戸層144はn型半導体基板11に対して無歪またはほぼ無歪である。あるいは、主量子井戸層144は、n型半導体基板11に対して伸張歪または圧縮歪を有していても良い。
図2に示すように、n型クラッド層12側から、障壁層142、主量子井戸層144、量子準位制御層143、障壁層142の順に層が積層されている。あるいは、n型クラッド層12側から、障壁層142、量子準位制御層143、主量子井戸層144、障壁層142の順に層が積層されていても良い。
また、InGaAsPからなるSCH層13は、そのバンドギャップがn型クラッド層12と障壁層142の間の範囲にある。同様に、SCH層15のバンドギャップは、p型クラッド層18と障壁層142の間の範囲にある。
上記のように構成されたSOA1においては、p型金属電極20とn型金属電極21との間に順方向に駆動電流が注入された状態で入射光が活性層14を伝搬すると、複合量子井戸層141の電子と軽いホールとの再結合による誘導放出により、主にTMモードの光学利得が得られる。同時に、複合量子井戸層141の電子と重いホールとの再結合による誘導放出により、主にTEモードの光学利得が得られる。
図3は、SOA1のバンド構造の要部を模式的に示す図である。なお、図3では、上方が電子に対するエネルギーが高くなるようにバンド構造が示されている。
図3は、量子準位制御層143の層厚が主量子井戸層144の層厚よりも大きく設計されたバンド構造の例を示している。量子準位制御層143では伸張歪により価電子帯の軽いホール帯端Elhと重いホール帯端Ehhの縮退が解けている。また、主量子井戸層144は無歪であるため、主量子井戸層144においては軽いホール帯端Elhと重いホール帯端Ehhは縮退している。
具体的には、量子準位制御層143の軽いホール帯端Elhが主量子井戸層144の価電子帯端Eよりも高エネルギー側にシフトするとともに、量子準位制御層143の重いホール帯端Ehhが主量子井戸層144の価電子帯端Eよりも低エネルギー側にシフトする。また、主量子井戸層144は量子準位制御層143よりバンドギャップが小さいため、量子準位制御層143における伝導帯端Eが主量子井戸層144の伝導帯端Eよりも高エネルギー側に存在する。
上記の構成により、軽いホールは複合量子井戸層141全体に広がるので、軽いホールの基底量子準位のエネルギーは大きくなる。一方、重いホールは主量子井戸層144の近傍に局在する傾向となるため、重いホールの基底量子準位のエネルギーは低下する。
さらに、軽いホール帯端Elhが重いホール帯端Ehhよりも高エネルギー側に位置しているため、軽いホールの基底量子準位が高エネルギー側にシフトして重いホールの基底量子準位に近づく。つまり、伸張歪を有する量子準位制御層143は、複合量子井戸層141内の軽いホールの基底量子準位を重いホールの基底量子準位に近づけるように制御していると言える。この結果、TEモードの光学利得とTMモードの光学利得を一致させて、偏波無依存を実現することができる。
このような構成は、歪量子井戸構造が作製可能な例えば、InP/AlGaInAs,GaAs/InGaAsP,GaAs/AlGaInPに適用することができる。
特に、図3の例で顕著であるが、電子に対するポテンシャルと重いホールに対するポテンシャルの形状は複合量子井戸層141内で非対称であるため、電子及び重いホールの存在確率密度分布は複合量子井戸層141の中心から偏っている。ここで、電子(またはホール)の存在確率密度分布とは、電子(またはホール)の波動関数ψ(x)の絶対値の2乗|ψ(x)|に相当するものである。
一方、軽いホールに対するポテンシャルは、その矩形形状の幅が主量子井戸層144の層厚よりも十分に大きな量子準位制御層143の層厚で規定されるため、軽いホールの存在確率密度分布は複合量子井戸層141内でほぼ対称な分布となる。
このようなポテンシャル設計により、重いホール及び軽いホールの基底量子準位を十分接近させることができる。また、TEモードの光学利得が主である電子−重いホール間の再結合率よりも、TMモードの光学利得が主である電子−軽いホール間の再結合率が大きくなる。
先にも述べたように、一般的なスラブ型の量子井戸活性層は水平方向に広いためTEモードの光閉じ込め係数がTMモードの同係数に比較してより大きくなるが、上記のポテンシャル設計により、TEモードの光学利得が相対的に大きくなる問題を軽減することも期待できる。これにより、光学利得の偏波無依存化の実現が容易になる。
また、図3に示したバンド構造について、複合量子井戸層141の一部を構成する主量子井戸層144は、量子準位制御層143よりも伸張歪量が小さいため、井戸層全体に均一な伸張歪が印加された従来の構成と比較して、複合量子井戸層141の伝導帯における電子の基底量子準位が低く抑えられる。この結果、複合量子井戸層141の電子の基底量子準位と障壁層142の伝導帯端とのエネルギー差であるヘテロ障壁高さΔEが大幅に減少することを回避でき、複合量子井戸層141から障壁層142への電子のオーバーフローを抑制することができる。
図4は、図3のバンド構造の伝導帯側を拡大して示す図である。以下では、非特許文献1に掲載されているInGaAsP井戸層に均一な伸張歪が印加された従来の構成における活性層の実効的なヘテロ障壁高さΔE'と、本実施形態の構成であるSOA1における活性層14の実効的なヘテロ障壁高さΔEをシミュレーションにより比較した結果を説明する。
シミュレーションの結果、非特許文献1に示されているInGaAsP/InP系よりなる従来の構成におけるヘテロ障壁高さΔE'が30.8meVとなったのに対し、本実施形態のSOA1におけるヘテロ障壁高さΔEは53.6meVとなり、本実施形態のSOA1では電子のオーバーフローを防止する効果が高いことが確認できた。
図5は、図3のバンド構造の価電子帯側を拡大して示す図である。図5に示したバンド構造においては、軽いホール帯端Elhが凸型形状となっている。このようなポテンシャル設計により、重いホールの基底量子準位と軽いホールの基底量子準位との基底準位差をバンド内緩和のエネルギー幅(約6.6meV)よりも狭くすることができ、これら2つの基底量子準位を信号光の偏波無依存増幅が実現できるレベルまで近づけることが可能となる。
以下、本発明に係るSOA1の製造方法の一例を説明する。
まず、有機金属気相成長(MOVPE)法を用いてn型InPからなるn型半導体基板11上に、n型InPからなるn型クラッド層12、これに引き続きInGaAsPからなるSCH層13をエピタキシャル成長する。なお、このSCH層13のバンドギャップはn型クラッド層12と障壁層142の間の範囲にある。
次に、SCH層13の上に、InGaAsPからなる障壁層142、n型半導体基板11に対して無歪またはほぼ無歪のInGaAsPからなる主量子井戸層144、n型半導体基板11に対して伸張歪を有するInGaAsPからなる量子準位制御層143、及びInGaAsPからなる障壁層142がこの順に積層されてなるMQW構造またはSQW構造の活性層14を形成する。なお、主量子井戸層144の歪量に関しては、本発明の半導体光増幅器に要求される利得波長帯域などにより、既に述べたようにn型半導体基板11に対して無歪ばかりではなく圧縮歪や伸張歪を設定することもできる。
このようにして形成された活性層14の上に、バンドギャップがp型クラッド層18と障壁層142の間の範囲にあるSCH層15を形成する。
次に、SCH層15の上に、p型InPからなるp型クラッド層18の下層部を成長形成する。さらに、プラズマCVD法を用いてSiNx膜またはSiO2膜からなる絶縁膜をp型クラッド層18の下層部の上面に積層した後、レジストを塗布し、フォトリソグラフィによってストライプ状のマスクパターンを露光して現像する。
このストライプ状のマスクパターンを用いて、絶縁膜の両側をフッ酸によるエッチングで除去する。続いて残ったレジストを剥離除去して、ストライプ状のマスクパターンの形状が転写された絶縁膜のエッチングマスクを形成する。
そして、上記により設定された絶縁膜のエッチングマスクと、塩酸、過酸化水素水、及び水の混合液からなるエッチング液を用いて、p型クラッド層18の下層部、SCH層15、活性層14、SCH層13、n型クラッド層12をウェットエッチングして、メサストライプを形成する。
次に、ウェットエッチングで除去された部分にMOVPE法を用い、絶縁膜のエッチングマスクを成長阻害マスクとして利用して、p型InPからなる下部埋め込み層16及びn型InPからなる上部埋め込み層17を順次積層して埋め込む。
次に、絶縁膜のエッチングマスクをフッ酸で除去して、メサストライプの上面を表出し、p型クラッド層18の下層部と組成の等しいp型InPからなる埋め込み層を積層してp型クラッド層18を完成し、その上部にp型InGaAsPからなるp型コンタクト層19をMOVPE法によって積層する。
そして、p型コンタクト層19上にp型金属電極20を、n型半導体基板11の底面にn型金属電極21を蒸着法で形成して、アロイ、メッキ工程を行い、半導体ウエハを完成する。
次に、この半導体ウエハに対して所定位置で劈開やダイシングを行うことにより、個々のチップに分離する。さらに、分離されたチップの光入射端面及び光出射端面に反射防止膜(図示せず)を形成する。これで本実施形態のSOA1が完成する。
以上説明したように、本実施形態のSOA1は、重いホールと軽いホールの量子準位を接近させてTEモード及びTMモードの光学利得を一致させ、偏波無依存を実現することができる。
また、本実施形態のSOA1は、伝導帯の電子に関する実効的なヘテロ障壁高さΔEを十分に大きくして、複合量子井戸層141から障壁層142に漏れ出る電子を低減することができる。
これにより、本発明の半導体光増幅器を動作させる際の無効電流を抑圧できる。また、複合量子井戸層141内のキャリア密度を高くできるため、光学利得の向上、光学利得波長帯域の拡大、及び雑音指数(NF:Noise Figure)の低減を実現することができる。
また、本実施形態のSOA1を1310nm波長帯に適用する場合においては、特に障壁層142をn型半導体基板11に対して無歪と設定することにより、障壁層142と複合量子井戸層141とのヘテロ界面の平坦性を十分に保つことが可能となるため、良好な光学利得特性と製造の容易性とを実現することができる。これにより、SOAを光学利得特性の劣化をもたらさずに容易に製造することが可能となる。なお、1310nm帯とは、1280nm〜1340nmの波長を含むものとする。
また、本実施形態のSOA1は、特に主量子井戸層144がn型半導体基板11に対して無歪である場合には、活性層14全体の歪量を抑えて、効果的に複合量子井戸層141内において所望のポテンシャルを形成することができる。
以下に述べるように、主量子井戸層144のバンドギャップ波長と層厚を変えながら量子準位制御層143の層厚と歪量の関係についてシミュレーションすることにより、本実施形態のSOA1を作製するための構造条件を調べた。その結果を図10に示す。
図10では、横軸をナノメートル(nm)単位で表した量子準位制御層143の層厚(dQLC)とし、縦軸をパーセント(%)単位で表した量子準位制御層143の歪量(εQLC)としている。
例えば1300nm波長帯に対して本実施形態のSOA1を適用した場合、図10(a)に斜線を施した領域、即ち、以下の(1)式と(2)式で表す直線f1(dQLC)及びf2(dQLC)に挟まれた領域で、かつ、−1.5%≦εQLC<0の条件で、SOA1を作製できることがわかった。
f1(dQLC)=0.24×dQLC−1.9 ・・・・・(1)
f2(dQLC)=0.24×dQLC−2.95 ・・・・・(2)
なお、(1)式は利得波長帯の限界線となり、この直線よりεQLCが大きく、かつ負となる領域では、利得波長帯が1300nmからシフトしてしまう。また、(2)式で示す直線よりεQLCが小さく、かつ負となる領域、及び、εQLC<−1.5%である領域では、量子準位制御層143と障壁層142の界面においてヘテロ障壁がType−II型となり、電子の輸送を妨げるバンド構造となってしまう。
また、例えば1500nm波長帯に対して本実施形態のSOA1を適用した場合、図10(b)に斜線を施した領域、即ち、以下の(3)式と(4)式で表す直線f3(dQLC)及びf4(dQLC)に挟まれた領域で、かつ、−1.5%≦εQLC<0の条件で、SOA1を作製できることがわかった。
f3(dQLC)=0.25×dQLC−2.0 ・・・・・(3)
f4(dQLC)=0.2×dQLC−4.0 ・・・・・(4)
なお、(3)式は量子準位制御層143の混晶組成の限界線となり、この直線よりεQLCが大きく、かつ負となる領域では、量子準位制御層を成長することができない。一方、(4)式で示す直線よりεQLCが小さく、かつ負となる領域では、量子準位制御層143の層厚が臨界膜厚を超えるようになり、良好な結晶成長が困難となる。
また、εQLC<−1.5%である領域では、量子準位制御層143と障壁層142の界面においてヘテロ障壁がType−II型となり、電子の輸送を妨げるバンド構造となってしまう。
(第2の実施形態)
続いて、本発明における第2の実施形態としてのSOA2について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
図6の拡大断面図に示すように、活性層24は、複数の半導体層からなる複合量子井戸層241と障壁層142とが繰返し交互に積層されたMQW構造を有する。あるいは、活性層24は、2つの障壁層142の間に1つの複合量子井戸層241が挟まれたSQW構造を有するものであっても良い。また、活性層24は、障壁層142を介さず、複合量子井戸層241を直接にSCH層13及びSCH層15で挟むSQW構造を有するものであっても良い。
本実施形態においては、複合量子井戸層241は、複数の量子準位制御層143と、当該複数の量子準位制御層143よりバンドギャップの小さい主量子井戸層144と、を有し、量子準位制御層143と主量子井戸層144とが交互に積層されてなる。ここで、複数の量子準位制御層143は層厚及びバンドギャップが全て等しいものとする。
以下では、2つの量子準位制御層143の間に1つの主量子井戸層144が挟まれた構造を例に挙げて説明する。
図7は、SOA2のバンド構造の要部を模式的に示す図である。図7に示す例では、量子準位制御層143において伸張歪により価電子帯の軽いホール帯端Elhと重いホール帯端Ehhの縮退が解け、軽いホール帯端Elhが重いホール帯端Ehhより高エネルギー側にシフトしている。また、主量子井戸層144においては、圧縮歪により軽いホール帯端Elhが重いホール帯端Ehhより低エネルギー側へシフトすることにより価電子帯の縮退が解けている。
具体的には、量子準位制御層143の軽いホール帯端Elhが主量子井戸層144の軽いホール帯端Elhよりも高エネルギー側に存在するとともに、量子準位制御層143の重いホール帯端Ehhが主量子井戸層144の重いホール帯端Ehhよりも低エネルギー側に位置する。
つまり、複合量子井戸層241内において、伸張歪を有する量子準位制御層143は、圧縮歪を有する主量子井戸層144による軽いホールの基底量子準位の低エネルギー側へのシフト量を相殺して、軽いホールの基底量子準位を重いホールの基底量子準位に近づけるように制御していると言える。
ここで説明したSOA2では、電子、軽いホール、及び重いホールに対するポテンシャルは、いずれも複合量子井戸層241内で対称形状となるため、電子、軽いホール、及び重いホールの存在確率密度分布もいずれも複合量子井戸層241内で対称な分布となる。
また、第1の実施形態のSOA1と比較して、伸張歪を有する量子準位制御層143の一層当たりの層厚が薄くなるため、更に良好なヘテロ界面を形成できる。
(第3の実施形態)
図8は、SOA3のバンド構造の要部を模式的に示す図である。図8に示す例では、量子準位制御層143において伸張歪により価電子帯の軽いホール帯端Elhと重いホール帯端Ehhの縮退が解け、軽いホール帯端Elhが重いホール帯端Ehhより高エネルギー側にシフトしている。また、主量子井戸層144は無歪であるため、主量子井戸層144においては軽いホール帯端Elhと重いホール帯端Ehhは縮退している。
具体的には、量子準位制御層143の軽いホール帯端Elhが主量子井戸層144の価電子帯端Eよりも高エネルギー側にシフトするとともに、量子準位制御層143の重いホール帯端Ehhが主量子井戸層144の価電子帯端Eよりも低エネルギー側にシフトする。
つまり、伸張歪を有する量子準位制御層143は、複合量子井戸層241内の軽いホールの基底量子準位を重いホールの基底量子準位に近づけるように制御していると言える。
ここで説明したSOA3では、電子、軽いホール、及び重いホールに対するポテンシャルは、いずれも複合量子井戸層241内で対称形状となるため、電子、軽いホール、及び重いホールの存在確率密度分布もいずれも複合量子井戸層241内で対称な分布となる。
(第4の実施形態)
図9は、SOA4のバンド構造の要部を模式的に示す図である。図9に示す例では、量子準位制御層143において伸張歪により価電子帯の軽いホール帯端Elhと重いホール帯端Ehhの縮退が解け、軽いホール帯端Ehhが重いホール帯端Elhより高エネルギー側にシフトしている。また、主量子井戸層144においても、伸張歪により軽いホール帯端Elhが重いホール帯端Ehhより高エネルギー側へシフトすることにより価電子帯の縮退が解けている。
具体的には、量子準位制御層143の軽いホール帯端Elhが主量子井戸層144の軽いホール帯端Elhよりも高エネルギー側に存在するとともに、量子準位制御層143の重いホール帯端Ehhは主量子井戸層144の重いホール帯端Ehhよりも低エネルギー側に位置する。
つまり、複合量子井戸層241内において、伸張歪を有する主量子井戸層144及び量子準位制御層143は、複合量子井戸層の価電子帯が形成するポテンシャルによる量子サイズ効果のために生じる、軽いホールの基底量子準位が低エネルギー側へシフトする現象を抑制している。
この作用により、SOA4は、軽いホールの基底量子準位を重いホールの基底量子準位に近づけるように制御していると言える。また、このような層構成により、例えば、SOA3と比較して量子準位制御層143の伸張歪を低減できる。このため、複合量子井戸層241の平均歪量を抑圧できるので複合量子井戸層241の結晶性を向上できる利点がある。
ここで説明したSOA4では、電子、軽いホール、及び重いホールに対するポテンシャルは、いずれも複合量子井戸層241内で対称形状となるため、電子、軽いホール、及び重いホールの存在確率密度分布もいずれも複合量子井戸層241内で対称な分布となる。
以下に述べるように、量子準位制御層143が伸長歪を有する構成例について、主量子井戸層144のバンドギャップ波長と層厚を変えながら量子準位制御層143の層厚と歪量の関係についてシミュレーションすることにより、本実施形態のSOA2からSOA4を作製するための構造条件を調べた。その結果を図10に示す。
図10では、横軸をナノメートル(nm)単位で表した量子準位制御層143の層厚(dQLC)とし、また縦軸をパーセント(%)単位で表した量子準位制御層143の歪量(εQLC)としている。
例えば1300nm波長帯に対して本実施形態のSOA2からSOA4を適用した場合、図10(c)に斜線を施した領域、即ち、以下の(5)式と(6)式で表す直線f5(dQLC)及びf6(dQLC)に挟まれた領域で、かつ、εQLC<0及びdQLC≧2nmの条件で、SOA2からSOA4を作製できることがわかった。
f5(dQLC)=0.06×dQLC−0.67 ・・・・・(5)
f6(dQLC)=0.04×dQLC−1.38 ・・・・・(6)
なお、(5)式は利得波長帯の限界線となり、この直線よりεQLCが大きく、かつ負となる領域では、利得波長帯が1300nmからシフトしてしまう。一方、(6)式で示す直線よりεQLCが小さく、かつ負となる領域では、量子準位制御層143と障壁層142の界面においてヘテロ障壁がType−II型となり、電子の輸送を妨げるバンド構造となってしまう。また、dQLC<2nmの条件では、量子準位制御層143による量子準位の制御が困難となる。
また、例えば1500nm波長帯に対して本実施形態のSOA2からSOA4を適用した場合、図10(d)に斜線を施した領域、即ち、以下の(7)式と(8)式で表す直線f7(dQLC)及びf8(dQLC)に挟まれた領域で、かつ、−1.5%≦εQLC<0の条件で、SOA2からSOA4を作製できることがわかった。
f7(dQLC)=0.432×dQLC−2.32 ・・・・・(7)
f8(dQLC)=0.2×dQLC−4.0 ・・・・・(8)
なお、(7)式は量子準位制御層143の混晶組成の限界線となり、この直線よりεQLCが大きく、かつ負となる領域では、量子準位制御層を成長することができない。一方、(8)式で示す直線よりεQLCが小さく、かつ負となる領域では、量子準位制御層143の層厚が臨界膜厚を超えるようになり、良好な結晶成長が困難となる。
また、εQLC<−1.5%である領域では、量子準位制御層143と障壁層142の界面においてヘテロ障壁がType−II型となり、電子の輸送を妨げるバンド構造となってしまう。
(第5の実施形態)
図11は、第5の実施形態としてのSOA5のバンド構造の要部を模式的に示す図である。この構成は第4の実施形態の変形構造である。図11に示す例では、量子準位制御層143において圧縮歪により価電子帯の軽いホール帯端Elhと重いホール帯端Ehhの縮退が解け、重いホール帯端Ehhが軽いホール帯端Elhより高エネルギー側にシフトしている。また、主量子井戸層144においては、伸張歪により軽いホール帯端Elhが重いホール帯端Ehhより高エネルギー側へシフトすることにより価電子帯の縮退が解けている。
具体的には、量子準位制御層143の軽いホール帯端Elhが主量子井戸層144の軽いホール帯端Elhよりも低エネルギー側に存在するとともに、量子準位制御層143の重いホール帯端Ehhも主量子井戸層144の重いホール帯端Ehhよりも低エネルギー側に位置する。
つまり、複合量子井戸層341内において、圧縮歪を有する量子準位制御層143は、伸張歪を有する主量子井戸層144による軽いホールの基底量子準位の高エネルギー側へのシフト量を抑制して、軽いホールの基底量子準位を重いホールの基底量子準位に近づけるように制御していると言える。
ここで説明したSOA5では、電子、軽いホール、及び重いホールに対するポテンシャルは、いずれも複合量子井戸層341内で対称形状となるため、電子、軽いホール、及び重いホールの存在確率密度分布もいずれも複合量子井戸層341内で対称な分布となる。
SOA2、SOA3、SOA4、及びSOA5について説明したようなポテンシャル設計により、光学利得の偏波無依存化を実現でき、第1の実施形態で説明した非対称型のポテンシャルを有する複合量子井戸構造に比較して、電子−重いホール間の再結合率、及び、電子−軽いホール間の再結合率を促進させ、光学利得の向上を実現することができる。
図12は、本発明に係るSOAについて、p型金属電極20とn型金属電極21を介して順方向に注入された駆動電流に対する、TEモード及びTMモードの光学利得特性の例を示すグラフである。このグラフから、本発明に係るSOAがほぼ偏波無依存の増幅動作特性を実現していることが確認できる。
なお、これまでの説明においては、複合量子井戸層が2層及び3層の半導体層からなる構造について述べたが、本発明は複合量子井戸層が更に多数の半導体層からなる構成としても良い。
また、複合量子井戸層が3層より多数の半導体層よりなる構造において、例えば図13に示すように、伸張歪を有する量子準位制御層443aと圧縮歪を有する量子準位制御層443bとを交互に配置することにより、本発明における複合量子井戸層441を例えば非特許文献4に示されているような歪補償構造とすることができる。
このような構造とすることにより、複合量子井戸層の結晶欠陥の発生を抑制し、SOAの動作信頼性を更に向上できる。なお、複合量子井戸層441において、図13に示した伸張歪を有する量子準位制御層443aと圧縮歪を有する量子準位制御層443bの配置を入れ替えた構成としても良い。
一方、複合量子井戸層が2層及び3層の半導体層からなる構造において、量子準位制御層が伸張歪を有する構造では障壁層142に圧縮歪を印加することにより、この複合量子井戸層を歪補償構造とすることができる。なお、障壁層142に圧縮歪を印加する構造は、複合量子井戸層が3層より多数の半導体層よりなる構造に適用しても良い。
1〜5 半導体光増幅器(SOA)
11 n型半導体基板(基板)
14,24 活性層
141,241,341,441 複合量子井戸層
142 障壁層
143,443a,443b 量子準位制御層
144 主量子井戸層

Claims (6)

  1. 障壁層(142)と複数の半導体層からなる複合量子井戸層(141,241,341,441)とを有し、当該障壁層と当該複合量子井戸層とが交互に積層されてなる量子井戸の活性層(14,24)が基板(11)上に形成された半導体光増幅器(1〜5)において、
    前記複合量子井戸層の前記複数の半導体層は、当該複合量子井戸層内の量子準位を制御する少なくとも1層の量子準位制御層(143,443a,443b)と、当該量子準位制御層よりもバンドギャップの小さい少なくとも1層の主量子井戸層(144)とからなり、当該量子準位制御層のうち、少なくとも1層が前記基板に対して伸張歪を有し、
    前記主量子井戸層が前記基板に対してほぼ無歪であり、
    前記量子準位制御層は、前記複合量子井戸層内の軽いホールの基底量子準位を重いホールの基底量子準位に近づけるように制御し、かつ電子−重いホール間の再結合効率よりも電子−軽いホール間の再結合効率が高いことを特徴とする半導体光増幅器。
  2. 前記複合量子井戸層の前記複数の半導体層が1層の前記主量子井戸層及び1層の前記量子準位制御層からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体光増幅器。
  3. 前記複合量子井戸層の前記複数の半導体層は、複数の前記量子準位制御層と、少なくとも1層以上の前記主量子井戸層とからなり、少なくとも2層以上の当該量子準位制御層が、少なくとも1層以上の当該主量子井戸層を両側から挟むように積層されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体光増幅器。
  4. 前記複合量子井戸層の前記複数の半導体層は、複数の前記量子準位制御層と、少なくとも1層以上の前記主量子井戸層とからなり、前記障壁層と複数の当該量子準位制御層の間に、少なくとも1層以上の当該主量子井戸層を配置するように積層されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体光増幅器。
  5. 前記複合量子井戸層がIII−V族混晶であるInGaAsPからなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体光増幅器。
  6. 前記複合量子井戸層がInP/AlGaInAsまたはGaAs/AlGaInPからなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体光増幅器。
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