JP4061040B2 - 多重量子井戸半導体素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信および光計測などの分野において光源となる半導体レーザー (以降、LD ( Laser Diode )と呼ぶ )、スーパールミネッセントダイオード (以降、SLD ( Super Luminescent Diode ) と呼ぶ )および発光ダイオード (以降、LED ( Light Emitting Diode )と呼ぶ )、また、光信号を増幅する半導体直接光増幅器 (以降、SOA ( Semiconductor Optical Amplifier ) と呼ぶ )などのように電子とホールが再結合する活性層に多重量子井戸 (以降、MQW ( Multiple Quantum Well ) と呼ぶ )を有する半導体素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、MQW 構造は、バンドギャップの狭い半導体からなる量子井戸 (以降、QW ( Quantum Well ) と呼ぶ )層と、この QW 層よりバンドギャップの広い半導体からなる障壁層が交互に積層されてなっており、特に QW 層の厚さは半導体内電子のド・ブロイ波長程度とし、一方、障壁層は電子のトンネル確率が無視できる厚さとするものである。
【0003】
例えば、MQW--LD (多重量子井戸半導体レーザー)の構造について簡単に述べると、MQW 構造は、その積層方向軸に沿って対向する側面から分離閉じ込め層などを介して、それぞれ、 p型および n型導伝性を有する半導体からなるクラッド層によって挟み込まれており、そして、これらクラッド層には、それぞれの導伝性に対応するキャリアを注入できるよう電極が形成されている。
このような層構造とすることで電子およびホールのQW層への量子閉じ込め効果が現われ、量子効果が働かないバルク型層構造では得られない優れた素子特性が得られている。
【0004】
このような MQW-LD の MQWにおけるキャリア、即ち電子およびホールの動きを説明すると次のようになる。
n型導伝性クラッド層および p型導伝性クラッド層から MQWに注入された、それぞれ電子およびホールは 3次元の運動自由度を有する電子およびホールとして MQW内障壁層のバンド端近傍を主に拡散過程により輸送される。
これら 3次元- キャリアは輸送過程中に QW に捕獲され、QW面内の 2次元にのみ運動の自由が許される 2次元- キャリアとなった後、発光再結合を通して誘導放出が生じレーザー光が得られる。
【0005】
これら 3次元- キャリアのうち、ホールには" 軽いホール" と" 重いホール" が存在し、重いホールは状態密度が大きいためホールの大多数を占めることになるが、障壁層の価電子帯端近傍における 3次元- 重いホール(以後、重いホールと呼ぶことにする)のモビリティ(70〜80 cm 2 V - 1 s - 1 程度)は、例えば電子(3500 cm 2 V - 1 s - 1 程度)に比較して大変小さいため輸送速度も 10 3 m/s 程度と遅くなり、特に高い光出力で LD を動作させるような状態では、 QW におけるキャリアの誘導放出による消費が著しくなるため、 MQW層の厚さである数十ナノメートル ( nm ) 程度の領域においても重いホール密度の分布は大きく変化し、図15に示すように MQW内において p型導伝性クラッド層側に高く片寄り不均一を一層著しいものとする。
【0006】
これに加え、MQW 内では電荷中正条件を満たすようにキャリアが配置することから電子も、この重いホールの分布に一致するように分布するため、MQW 内のそれぞれの QW へ捕獲されるキャリア密度も p型導伝性クラッド層に近い程高くなり、 QW ヘのキャリア注入不均一が生じる。
このような現象は MQW内において、動作している QW 数の減少、各 QW の光学利得係数および微分利得係数の不均一を招き LD の潜在的能力を引き出せないという問題があった。
【0007】
即ち、これらの問題は、例えば、文献、N. Tessler and G. Eisenstein,"Transient Carrier Dynamics and Photon-Assisted Transport in Multiple-Quantum-Well Lasers",IEEE Photon. Tech. Lett.,Vol.5, pp.291-293, 1993に述べられているように、障壁層の価電子帯端をモビリティの小さい重いホールが拡散過程などにより緩慢に輸送されることに集約される。
【0008】
一方、この緩慢な輸送という現象は、文献、C. H. Lin, C. L. Chua, Z. H. Zhu, and Y. H. Lo, " On Nonuniform Pumpiung for Multiple-quantum Well Smiconductor Lasers ", Appl. Phys. Lett. Vol.65 (19), pp.2383-2385, 1994 に述べられているように LD の直接変調における高速化を妨げるという問題もある。
【0009】
これらの問題は、従来より実験および理論を通して研究が行われてきており、例えば以下の文献、N. Tessler and G. Eisenstein, " On Carrier Injection and Dynamics in Quantum Well Lasers ", IEEE J. Quantum Electron., Vol.29, pp.1586-1595, 1993 で取り上げられ MQW内の量子井戸へのキャリア注入不均一の存在することが指摘されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来構造の MQWを有する LD などの半導体光素子において MQW内の各 QW へのキャリア注入不均一に起因して、内部微分量子効率および微分利得係数が低下するため光出力の低下や直接変調帯域の減少など素子特性の抑圧が生じていた。
この問題を回避するためには、障壁層価電子帯端における重いホールの輸送を促進しなければならない。
【0011】
このような輸送の促進を実現するために、以下の輸送機構を採用すればよい。
1 )MQW 構造のバンド全体を傾斜することにより、重いホールをドリフト輸送させる。2 )障壁層を薄くすることにより、重いホールをトンネル輸送させる。
この根拠について若干の説明を加える。
1 )に述べた、ドリフト輸送による重いホールの輸送促進は電場によりホールを加速することであるから明らかに拡散過程に比較し輸送速度は高速化する。
また、2 )に関しては、例えば 1480 nm帯歪み MQW - LD について計算すると、QWの価電子帯端と障壁層の価電子帯端の差、即ち、価電子帯側ヘテロ障壁高さ( Vhh)近傍の運動エネルギーを有する重いホールの速度は 10 5 m/sのオーダーであり極めて高速な輸送過程である。
【0012】
例えば、LDについて見れば、これらの機構を採用して素子性能の向上を達成するためには MQW構造の採用により得られる、高い光学利得および偏光消光比、狭いスペクトラム幅などの優れた特性を維持しながら重いホールの輸送を促進することにより、拡散定数を等価的に増大しなければならない。
この観点から上記の機構を眺めてみると、MQW 構造のバンドを全体的に傾斜させることにより重いホールのドリフト輸送は促進することが考えられるが、量子井戸内の電子と重いホールの波動関数の重なり積分値から求められる振動子強度が減少するため光学利得が低下する問題が起きる。
一方、障壁層を薄くすることで重いホールのトンネル輸送は促進されるが量子閉じ込め効果が弱くなるため MQW構造により得られた良好な LD 特性を失うという問題がある。
【0013】
このような問題点に関して、特開平7-193323号公報 においては量子井戸を挟む障壁層が3 層で構成され、かつ、量子井戸に近い側からバンドギャップが第1 の障壁層および第2 の障壁層と順次階段状に増加する構成、即ち、量子井戸- 第1 の障壁層- 第2 の障壁層- 第1 の障壁層- 量子井戸なる障壁層構造が提案されている。
この構成においては、量子井戸から第2 の障壁層に進行するホールの波動関数に対して第1 の障壁層が無反射コーティング膜の働きをすると述べられている。
しかし、この構成においても実際の結晶成長時においては第1 および第2 の障壁層および量子井戸の間では結晶構成原子の相互拡散が生じるため、第1の障壁層をホールの波動関数に対する無反射コーティング膜とするような厳密な層構成の制御は事実上不可能である問題があった。
【0014】
本発明の目的は、このような問題を解決し、MQW 構造により得られる良好な素子特性を維持したまま、MQW 内障壁層の価電子帯端における重いホールの輸送を促進することにより、重いホールの拡散定数を等価的に増大させ、各 QW へのホールおよび電子注入の不均一が抑制された多重量子井戸半導体素子を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前述の目的を達成するために、本発明の第1の態様によると、第1 の導伝性を有する半導体基板上に第1 の導伝性を有する半導体クラッド層、半導体よりなる活性層、第2 の導伝性を有する半導体クラッド層および第2 の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層が順次積層され、かつ、前記基板および前記コンタクト層表面に、それぞれ電極が形成されて成るダブルヘテロ構造における、前記活性層が、前記第1 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第1 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層と、前記第2 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第2の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層との間に、量子井戸層と障壁層が交互に積層され、かつ、該量子井戸層が2 層以上である層構成から成る多重量子井戸半導体素子において、前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層であり、前記障壁層はそれぞれ複数の内部障壁層からなり、かつ、各障壁層内において当該障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さが前記第 1 の導伝性を有するクラッド層から前記第 2 の導伝性を有するクラッド層の方向に沿って、大きいヘテロ障壁高さから小さいヘテロ障壁高さへと階段状に変化し、当該階段状に変化する障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さの傾きの平均の絶対値が 2.5 × 10 6 eV / m から 3.3 × 10 6 eV / m の範囲であることを特徴とする多重量子井戸半導体素子が提供される。
【0016】
また、本発明の第2の態様によると、第 1 の導伝性を有する半導体基板上に第 1 の導伝性を有する半導体クラッド層、半導体よりなる活性層、第 2 の導伝性を有する半導体クラッド層および第 2 の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層が順次積層され、かつ、前記基板および前記コンタクト層表面に、それぞれ電極が形成されて成るダブルヘテロ構造における、前記活性層が、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層と、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層との間に、量子井戸層と障壁層が交互に積層され、かつ、該量子井戸層が 2 層以上である層構成から成る多重量子井戸半導体素子において、前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層であり、前記障壁層はそれぞれ複数の内部障壁層からなり、かつ、各障壁層内において当該障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さが前記第 1 の導伝性を有するクラッド層から前記第 2 の導伝性を有するクラッド層の方向に沿って、小さいヘテロ障壁高さから大きいヘテロ障壁高さへと階段状に変化し、当該階段状に変化する障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さの傾きの平均の絶対値が 2.5 × 10 6 eV / m から 3.3 × 10 6 eV / m の範囲であることを特徴とする多重量子井戸半導体素子が提供される。
【0017】
また、本発明の第3の態様によると、第 1 の導伝性を有する半導体基板上に第 1 の導伝性を有する半導体クラッド層、半導体よりなる活性層、第 2 の導伝性を有する半導体クラッド層および第 2 の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層が順次積層され、かつ、前記基板および前記コンタクト層表面に、それぞれ電極が形成されて成るダブルヘテロ構造における、前記活性層が、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層と、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層との間に、量子井戸層と障壁層が交互に積層され、かつ、該量子井戸層が 2 層以上である層構成から成る多重量子井戸半導体素子において、前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層であり、前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において当該障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さが、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層から前記第 2 の導伝性を有するクラッド層の方向に沿って、大きいヘテロ障壁高さから小さいヘテロ障壁高さへと連続的に変化し、当該連続的に変化する障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さの傾きの平均の絶対値が 2.5 × 10 6 eV / m から 3.3 × 10 6 eV / m の範囲であることを特徴とする多重量子井戸半導体素子が提供される。
【0018】
また、本発明の第4の態様によると、第 1 の導伝性を有する半導体基板上に第 1 の導伝性を有する半導体クラッド層、半導体よりなる活性層、第 2 の導伝性を有する半導体クラッド層および第 2 の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層が順次積層され、かつ、前記基板および前記コンタクト層表面に、それぞれ電極が形成されて成るダブルヘテロ構造における、前記活性層が、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層と、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層との間に、量子井戸層と障壁層が交互に積層され、かつ、該量子井戸層が 2 層以上である層構成から成る多重量子井戸半導体素子において、前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層であり、前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において当該障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さが、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層から前記第 2 の導伝性を有するクラッド層の方向に沿って、小さいヘテロ障壁高さから大きいヘテロ障壁高さへと連続的に変化し、当該連続的に変化する障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さの傾きの平均の絶対値が 2.5 × 10 6 eV / m から 3.3 × 10 6 eV / m の範囲であることを特徴とする多重量子井戸半導体素子が提供される。
【0026】
本発明を適用することにより、障壁層の価電子帯端近傍において障壁層厚が薄くなるため重いホールのトンネル効果が顕著となり、MQW 構造により得られる良好な素子特性を維持したまま、この重いホールの輸送が促進される。
また、障壁層の価電子帯端では重いホールがポテンシャルの傾斜によりドリフト輸送されることから、障壁層上に重いホールが存在する時間が短縮される。このことは、障壁層で起きる再結合が減少するため注入電流のうち無効成分が減少するという利点もある。
これに加え、 p型導伝性クラッド層側から n型導伝性クラッド層側方向に向かった障壁層バンドギャップ形状として、内部障壁層のバンドギャップが大きいバンドギャップから小さいバンドギャップへと順次配列するもの、また、障壁層のバンドギャップが連続的な傾斜を有する場合は、大きいバンドギャップから小さいバンドギャップへ連続的に変化させることにより、重いホールのドリフト輸送を更に促進することもできる。
【0027】
本発明による重いホールの輸送に与える作用について述べる。
p 側電極から注入された電流は、重いホールとして p型導伝性クラッド層および p型分離閉じ込め層を順次通過し MQWに到達する。ここから重いホールは、拡散、ドリフト、トンネルなどの過程により n型分離閉じ込め層側に向かい MQW内を輸送されるが、電荷中正条件が満たされているとドリフト輸送は無視できるため 3次元- 重いホールの主な輸送は拡散とトンネル過程となる。
【0028】
例えば、通常の LD においては、自由キャリア吸収によるスロープ効率の低下および、しきい注入電流の上昇を避ける目的で MQWには不純物ドープを行わない。このため、それぞれは均一なバンドギャップで、かつ互いに異なったバンドギャップからなる量子井戸および障壁層のポテンシャル形状は、図16中の実線で示すように、ほぼ矩形となる。
この従来構造の MQWにおいて、評価を行った 3次元自由度を有する重いホールのトンネル過程を図16中の一点鎖線で示す。
この重いホールのエネルギーとトンネル確率の関係は、1480 nm 光波長帯歪み MQW-LD において図17のようになる。
ここで、MQW IN - MQWOUT は MQW領域全体をトンネルする過程(図16中の MQWIN - MQWOUT 過程)であり、 QW 1 - QW4 は 1番目の量子井戸に入った重いホールが 4番目の QW にトンネルする過程(図16中の QW 1 - QW4 過程)であり、また、QWj - QWj + 1 は隣接する QW をトンネルする過程(図16中の QW j - QWj + 1 過程)である。
【0029】
図17の重いホールのトンネル確率のエネルギースペクトラムに示すように、従来構造の MQWでは、何れのトンネル過程においても重いホールのエネルギーで Vhh を有する障壁層の価電子帯端近傍においてトンネル確率が極めて小さく、矢印で示したトンネル確率スペクトラムピークと Vhh の差として定義した、重いホールに対する障壁ポテンシャル増大が生じる。
図17に示した従来構造 MQWにおける重いホールのトンネル確率スペクトラム図中の矢印で示した Vhh に最寄りのピークの" 障壁ポテンシャル増大" 、" スペクトラムピーク半値全幅" および "トンネル寿命" を表1に示す。この表から、トンネル寿命はピコからサブピコ秒のオーダーであり極めて高速であるが、障壁ポテンシャル増大はバンド内緩和広がり(約 6 meV)以上に大きくなるため、重いホールのトンネル効果による輸送は困難となる。
【0030】
【表1】
【0031】
この理由は、従来構造の MQWにおいては、特に価電子帯側で急峻なポテンシャル周期が存在するため、このポテンシャルによる重いホールの波動関数の反射波が障壁層の価電子帯端のエネルギー近傍で強く重ね合わさりトンネル輸送が抑圧されるためである。
この結果、重いホールはこの領域を拡散過程により輸送されることになり重いホールの輸送は緩慢なものとなる。
一方、トンネル輸送抑圧を避ける目的で、LD特性の低下が生じない範囲で価電子帯側のポテンシャル周期を変調する MQW構造の検討も行ったが、重いホールのトンネル確率スペクトラムに明確な変化は得られず、この MQW構造によっても重いホールの輸送の促進は困難である。
【0032】
これに対して、図8に示す複数の内部障壁層よりなる障壁層を有する、本発明を適用した MQW構造においては、障壁層の価電子帯端近傍における層厚が薄くなるために、障壁層の価電子帯端近傍のエネルギーを有する重いホールのトンネル効果が顕著となり、重いホールの輸送が MQW内で促進される。
【0033】
本発明による重いホールの障壁層価電子帯端近傍におけるトンネル確率スペクトラムの例を図9に示す。
これは、3 層の内部障壁層( dB1 , dB2 , dB3)よりなる障壁層を有する MQWのものであり、内部障壁層厚は全て 3 nm ( = dB1 = dB2 = dB3)、内部障壁層の価電子側ヘテロ障壁差をδV 1 = δV 2 = 10 meV とし、内部障壁層のうち最大のバンドギャップを有するものは、従来構造に用いられた障壁層バンドギャップと同一としている。
【0034】
表2に、この例における、図9中の矢印で示した Vhhに最寄りのピークの障壁ポテンシャル増大、スペクトラムピーク半値全幅およびトンネル寿命を示す。
この例では、図9中の矢印で示した Vhhに最寄りのピークについて、MQW IN - MQWOUT 過程のトンネル輸送は障壁ポテンシャル増大が約 16 meV と大きいため期待できないが、QW1 - QW4 および QW j - QWj + 1 過程では表2に示すように障壁層価電子帯端近傍にサブピコ秒のトンネル寿命を有するパスが存在することがわかり、重いホールの輸送を促進する。
【0035】
【表2】
【0036】
また、本発明は障壁層設計の自由度が大きいことも特徴であり、内部障壁層として d B1 = 4 nm, dB2 = 3 nm, dB3 = 2 nm を設定した例を図10に示す。
表3に、この例における、図10中の矢印で示した Vhhに最寄りのピークの障壁ポテンシャル増大、スペクトラムピーク半値全幅およびトンネル寿命を示す。
この構造において、図10中の矢印で示した Vhhに最寄りのピークについて、MQW IN - MQWOUT 、QW1 - QW4 および QW j - QWj + 1 の何れの過程においても表3に示すように、障壁層価電子帯端近傍にピコからサブピコ秒のトンネル寿命を有するトンネルパスを作ることができ、この例においても重いホールの輸送促進が実現される。
【0037】
【表3】
【0038】
このことは、複数の内部障壁層よりなる障壁層を作製にあたり、作製精度が比較的緩和されることを示しており MQW製造上望ましい特徴となる。
図9に示した本発明を適用した MQWの1例における、重いホール輸送促進により得られる等価的な重いホールの拡散定数( DTN)および、この拡散定数 DTNの従来構造の拡散定数 Dp に対する増倍率( DTN / Dp )を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
この構造においては、先に述べたように障壁ポテンシャル増大が大きいため、MQW IN - MQWOUT 過程が期待できないため、これを除いた場合においても、拡散定数増倍率( MD = D TN / Dp )は 4〜14倍程度になる。
この MD と重いホールの MQW内分布の関係は、4 層の QW よりなる共振器長が 1 mm を有する 1480 nm光波長帯LDにおいて光出力( POUT )が 400 mW であるとき図11のように MD が 5〜10程度で、この分布が、ほぼフラットとなる。
即ち、本発明を採用することにより重いホールの輸送が促進され MQW内キャリア密度分布が均一になる。
【0041】
また、この LD の光出力 400 mW における 4層の個別 QW への注入電流と MD の関係は図12のようになり、従来構造(即ち、 MD =1の場合)では、最も p側クラッド層に近い QW (量子井戸-1)と最も遠い QW (量子井戸-4)の間の注入電流の差は約 40 mAであるが、本発明を採用することにより、この差を 8 mA から 4 mA 程度と 1/5 から 1/10に抑圧することができる。
【0042】
本発明における最適障壁層構造条件は、V hh の近傍に、MQW IN - MQWOUT 過程、QW1 - QW4 および QW j - QWj + 1 過程のそれぞれのトンネル確率スペクトラムのピークが集合するものであることは明らかであり、また、これらのピーク値が 0.5を超えるものとする。
本発明において、このような条件を満たすトンネル確率スペクトラムのシミュレーション結果を図13に例示する。
【0043】
図14には、図8に示す内部障壁層の価電子帯側ヘテロ障壁差δV 1 とδV 2 の組み合わせの関係における上記の最適条件を満たすものおよびこれを満たさないものを、それぞれ○印および×印で示し、かつ、隣あう内部障壁層の中心の位置におけるヘテロ障壁高さを結んで得られる複数の障壁高さの傾きの平均値の絶対値を 10 6 eV/mを単位として各印しの右肩に添付した。
図14から最適条件は2 本の破線の間のであり、障壁層の価電子帯端における平均傾きの絶対値として 2.5×106 eV/mから 3.3×106 eV/mの範囲となる。
また、図14で示した最適条件は内部障壁層の価電子帯側ヘテロ障壁高さが単調増加もしくは単調減少する場合であるが、一方、このヘテロ障壁高さが障壁層中央付近で最も高い構造も考えられる。トンネル効果は障壁層厚に最も依存するため、この場合においては、障壁層の価電子帯端における平均傾きの絶対値として 2.5×106 eV/mよりも大きく 6.6×106 eV/m以下の範囲で内部障壁層を作製すればよい。
【0044】
これらの障壁層価電子帯端における平均傾きは、内部障壁層の価電子帯側高さが階段状に配列している場合であるが、多重量子井戸に用いられる障壁層厚のレベルにおいて、この階段のステップ数を増し、かつ、この間隔を狭めてシミュレーションを行っても結果に有意な差はみとめられず。障壁層価電子帯端が連続的に変化する場合においても障壁層の価電子帯端における平均傾きの絶対値の最適条件は同一となる。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明に係る半導体レーザー素子の製造手順を通して、本発明の第1の実施の形態を図1および図7を用いて説明する。
先ず、n 型導伝性 InP基板 1上に有機金属気相成長法などにより n型導伝性 InPバッファー層 2を成長する。
【0046】
次に、 n型導伝性 GaInAsP混晶よりなる分離閉じ込め層および無ドープ GaInAsP混晶よりなるスペーサ層を、それぞれ、層厚 2μm 、15 nm および 10 nm程度成長し、数 nm から十数 nm の層厚を有する QW および数 nm の層厚を有する複数の内部障壁層を、重いホールに対するヘテロ障壁高さが高いものから低いものへ順次積層することによりなる障壁層であり、この積層構造からなる障壁層と QW 層を交互に成長して図1に示す価電子帯構造を有する MQW構造を形成する。
尚、内部障壁層および QW としては、無歪み、圧縮歪みおよび伸張歪みを印加する何れの混晶でもよい。
【0047】
この上に、無ドープ GaInAsP混晶よりなるスペーサ層、p 型導伝性の GaInAsP混晶よりなる分離閉じ込め層を成長し、MQW 構造とスペーサ層および分離閉じ込め層からなる活性層 3を形成する。
これに引き続き、p 型導伝性 InPクラッド層 4を成長して図7 ( a )のような、活性層 3を有する多層構造半導体基板 5を作製する。
【0048】
次に、この多層構造半導体基板 5上に幅として数μm程度の誘電体膜などからなるストライプ状耐エッチングマスク 6を形成した後、臭素系エッチング液などを用いて、多層構造半導体基板 5を活性層 3より深い位置までエッチングを行い、先の耐エッチングマスク 6で保護された部分以外の多層構造半導体を除去し、図7 ( b )のような、活性層 3を含んだメサ状ストライプが形成された基板 7を作製する。
【0049】
このメサ形成ストライプ基板 7上に有機金属気相成長法もしくは液相成長法により p型導伝性 InP第1埋め込み層 8および n型導伝性 InP第 2埋め込み層 9を順次、埋め込み成長した後、耐エッチングマスク 6を除去し、この上に p型導伝性 GaInAsP混晶よりなるコンタクト層 10 を成長して図7 ( c )に示すような、埋め込み結晶成長基板 11 を完成する。
【0050】
この埋め込み結晶成長基板 11 を 100μm程度になるまで n型導伝性 InP基板 1側を研摩した後、この研摩された n型導伝性 InP基板面および p型導伝性 GaInAsPコンタクト層 10 側の結晶成長面に、それぞれ Au-Geおよび Au-Znを真空蒸着法により被着し、熱処理を行ってn側電極 12 およびp側電極 13 とし、図7 ( d )に示すオーミック電極形成基板 14 を完成する。
【0051】
引き続いて、このオーミック電極形成基板 14 をメサストライプ垂直方向に共振器長とするため数 100μmから数mm間隔で劈開切断し、埋め込まれた複数のメサストライプが並列に並んでいる半導体レーザーバーとした後、このバーをメサストライプを中心に幅として数100 μm間隔で切断して半導体レーザーチップを完成させる。
【0052】
これまで、InP 結晶基板上に GaInAsP混晶および InP結晶層を成長してなる GaInAsP/InP系 LD 素子について説明を行ってきたが、本発明は、この結晶および混晶系に限らず、例えば、InGaAlAs/InP、GaInAsP/GaAs、AlGaAs/GaAs 、AlGaInP/GaAs系などの III-V族化合物半導体ばかりではなく II-VI族化合物半導体よりなる MQW構造に適用できることは明らかである。
【0053】
また、ここで述べた半導体レーザーの製造手順では第1の導伝性および第2の導伝性として、それぞれn型導伝性およびp型導伝性を仮定して、n型導伝性基板上に混晶層を積層成長してなる多層構造半導体基板を例にとって実施の形態を説明してきたが、第1の導伝性および第2の導伝性として、それぞれp型導伝性およびn型導伝性としても本発明を適用できることも明らかである。
【0054】
一方、本発明を伝導体側に適用することにより、例えば AlGaAs/GaAs系における Xバンドおよび Lバンドのように比較的電子の有効質量が重い伝導体バンドの電子輸送を促進できることも容易に類推できる。
【0055】
本発明は MQW構造に特徴のあるものであるから、第1の実施の形態における MQW構造以外の部分は全て同一として、その他の実施の形態について述べる。
第 2の実施の形態について図2に示す。
この実施の形態では、数 nm から十数 nm の層厚を有する QW および数 nm から十数 nm の層厚を有する障壁層の積層構造よりなる MQWにおいて、障壁層の重いホールに対するヘテロ障壁高さが、高いものから低いものへ連続的に減少する構造である。
この実施の形態においても、内部障壁層および量子井戸としては、無歪み、圧縮歪みおよび伸張歪みを印加する何れの混晶でもよい。
【0056】
第 3の実施の形態について図3に示す。
この実施の形態では、重いホールに対する複数の内部障壁層のヘテロ障壁高さが、低いものから高いものへ順次積層することによりなる障壁層を有する MQW構造である。
【0057】
第 4の実施の形態について図4に示す。
この実施の形態では、数 nm から十数 nm の層厚を有する QW および数 nm から十数 nm の層厚を有する障壁層の積層構造よりなる MQWにおいて、障壁層の重いホールに対するヘテロ障壁高さが、低いものから高いものへ連続的に増大する構造である。
【0058】
第 5の実施の形態について図5に示す。
この実施の形態では、重いホールに対する複数の内部障壁層のヘテロ障壁高さが、低いものから高いものを経て低いものへ順次積層することによりなる障壁層を有する MQW構造である。
【0059】
第 6の実施の形態について図6に示す。
この実施の形態では、数 nm から十数 nm の層厚を有する QW および数 nm から十数 nm の層厚を有する障壁層の積層構造よりなる MQWにおいて、障壁層の重いホールに対するヘテロ障壁高さが、低いものから高いものを経て低いものへ連続的に変化する構造である。
【0060】
尚、これら第 3〜 6の実施の形態においても、内部障壁層および QW としては、無歪み、圧縮歪みおよび伸張歪みを印加する何れの混晶でもよい。
本発明を適用した 4層の QW よりなる 1480 nm光波長帯歪み MQW-LD を試作し、従来の歪み MQW-LD と比較実験を行った結果、内部微分量子効率に関して従来の歪み MQW-LD は 90 % 程度であったものが、本発明を適用した素子では、ほぼ 100 %に向上すること、および光出力の向上が確認されている。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、多重量子井戸半導体素子において複数の障壁層のそれぞれを当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層とすることとしたから、MQW 構造により得られる良好な素子特性を維持したまま、MQW 内障壁層の価電子帯端における重いホールの輸送が促進され、重いホールの拡散定数を等価的に増大し、各 QW へのホールおよび電子注入の不均一が抑制された多重量子井戸半導体素子が提供される。
【0062】
半導体光素子について言えば、従来構造の MQWを有する LD 、SLD 、LED および SOAなどの半導体光素子に比較して、光出力の向上や直接変調周波数帯域の拡大、光学増幅利得の向上した半導体光素子を提供できる。
MQW-LD については、ここまで、4 層の QW を有するものを例にとって説明を行ってきた。これより QW 層数の多い MQW-LD においては、同一の注入電流で比較すると4 層の QW を有する MQW-LD に比べ微分利得が高い状態で動作が可能となり線幅増大係数の減少によるレーザー発振線幅の狭窄および高出力化など LD の高性能化が予想されていたが、重いホール輸送の障害により予想された性能を有するものは実現できなかった。しかし、本発明を採用することにより、重いホール輸送の障害が排除されるので、その実現が可能になる。
また、本発明は重いホールの輸送を促進するものであるから、例えば、 LD における注入電流による直接変調の周波数帯域の拡大が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するための図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を説明するための図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態を説明するための図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態を説明するための図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態を説明するための図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態を説明するための図である。
【図7】本発明を適用した半導体レーザー素子の製作工程を表わす図であり、(a)は多層構造半導体基板を、(b)はメサ状ストライプが形成された基板を、(c)は埋め込み結晶成長基板を、(d)はオーミック電極形成基板をそれぞれ示す図である。
【図8】本発明を適用した MQWの1例を説明するための図である。
【図9】本発明を適用した MQWの1例における、3 次元自由度を有する重いホールのエネルギーとトンネル確率の関係を表わす図であり、(a)は重いホールが隣接するQWをトンネルする過程、(b)は1番目のQWに入った重いホールが4番目のQWにトンネルする過程、(c)は重いホールが MQW領域全体をトンネルする過程での重いホールのエネルギーとトンネル確率の関係をそれぞれ表す図である。
【図10】本発明を適用した MQWの他の 1例における、3 次元自由度を有する重いホールのエネルギーとトンネル確率の関係を表わす図であり、(a)は重いホールが隣接するQWをトンネルする過程、(b)は1番目のQWに入った重いホールが4番目のQWにトンネルする過程、(c)は重いホールが MQW領域全体をトンネルする過程での重いホールのエネルギーとトンネル確率の関係をそれぞれ表わす図である。
【図11】本発明を適用した MQWにおける、3 次元自由度を有する重いホールの等価的拡散定数の増倍率と MQW内の同ホールの密度分布との関係を表わす図である。
【図12】本発明を適用した MQWにおける、3 次元自由度を有する重いホールの等価的拡散定数の増倍率と MQW内の各QWへの注入電流との関係を表わす図である。
【図13】本発明を適用した MQWの最適障壁層構造条件におけるトンネル確率スペクトラムの例を示す図である。
【図14】本発明を適用した MQWの内部障壁層の価電子帯側ヘテロ障壁差の組み合わせにおける最適障壁層構造の関係を示す図である。
【図15】従来構造の MQW内における、3 次元自由度を有する重いホール密度分布の偏りを示す図である。
【図16】従来構造の MQWにおいて、評価を行った 3次元自由度を有する重いホールのトンネル過程を示す図である。
【図17】従来構造の MQWにおける、3 次元自由度を有する重いホールのエネルギーとトンネル確率の関係を表わす図であり、(a)は重いホールが隣接するQWをトンネルする過程、(b)は1番目のQWに入った重いホールが4番目のQWにトンネルする過程、(c)は重いホールが MQW領域全体をトンネルする過程での重いホールのエネルギーとトンネル確率の関係をそれぞれ表わす図である。
【符号の説明】
1 n型導伝性InP 基板(第1の導伝性を有する半導体基板)
2 n型導伝性InP バッファー層(第1の導伝性を有する半導体クラッド層)
3 活性層
4 p型導伝性InP クラッド層(第2の導伝性を有する半導体クラッド層)
5 多層構造半導体基板
6 ストライプ状耐エッチングマスク
7 メサ形状ストライプ基板
8 p型導伝性InP 第1埋め込み層
9 n型導伝性InP 第2埋め込み層
10 コンタクト層(第2の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層)
11 埋め込み結晶成長基板
12 Au-Ge を蒸着してなるn側電極
13 Au-Zn を蒸着してなるp側電極
14 オーミック電極形成基板
Claims (4)
- 第1 の導伝性を有する半導体基板(1)上に第1 の導伝性を有する半導体クラッド層(2)、半導体よりなる活性層(3)、第2 の導伝性を有する半導体クラッド層(4)および第2 の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層(10)が順次積層され、かつ、前記基板および前記コンタクト層表面に、それぞれ電極(12,13)が形成されて成るダブルヘテロ構造における、前記活性層が、前記第1 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第1 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層と、前記第2 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第2 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層との間に、量子井戸層と障壁層が交互に積層され、かつ、該量子井戸層が2 層以上である層構成から成る多重量子井戸半導体素子において、
前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層であり、
前記障壁層はそれぞれ複数の内部障壁層からなり、かつ、各障壁層内において当該障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さが前記第 1 の導伝性を有するクラッド層から前記第 2 の導伝性を有するクラッド層の方向に沿って、大きいヘテロ障壁高さから小さいヘテロ障壁高さへと階段状に変化し、
当該階段状に変化する障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さの傾きの平均の絶対値が 2.5 × 10 6 eV / m から 3.3 × 10 6 eV / m の範囲であることを特徴とする多重量子井戸半導体素子。 - 第 1 の導伝性を有する半導体基板(1)上に第 1 の導伝性を有する半導体クラッド層(2)、半導体よりなる活性層(3)、第 2 の導伝性を有する半導体クラッド層(4)および第 2 の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層(10)が順次積層され、かつ、前記基板および前記コンタクト層表面に、それぞれ電極(12,13)が形成されて成るダブルヘテロ構造における、前記活性層が、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層と、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層との間に、量子井戸層と障壁層が交互に積層され、かつ、該量子井戸層が 2 層以上である層構成から成る多重量子井戸半導体素子において、
前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層であり、
前記障壁層はそれぞれ複数の内部障壁層からなり、かつ、各障壁層内において当該障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さが前記第 1 の導伝性を有するクラッド層から前記第 2 の導伝性を有するクラッド層の方向に沿って、小さいヘテロ障壁高さから大きいヘテロ障壁高さへと階段状に変化し、
当該階段状に変化する障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さの傾きの平均の絶対値が 2.5 × 10 6 eV / m から 3.3 × 10 6 eV / m の範囲であることを特徴とする多重量子井戸半導体素子。 - 第 1 の導伝性を有する半導体基板(1)上に第 1 の導伝性を有する半導体クラッド層(2)、半導体よりなる活性層(3)、第 2 の導伝性を有する半導体クラッド層(4)および第 2 の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層(10)が順次積層され、かつ、前記基板および前記コンタクト層表面に、それぞれ電極(12,13)が形成されて成るダブルヘテロ構造における、前記活性層が、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層と、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込 め層との間に、量子井戸層と障壁層が交互に積層され、かつ、該量子井戸層が 2 層以上である層構成から成る多重量子井戸半導体素子において、
前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層であり、
前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において当該障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さが、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層から前記第 2 の導伝性を有するクラッド層の方向に沿って、大きいヘテロ障壁高さから小さいヘテロ障壁高さへと連続的に変化し、
当該連続的に変化する障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さの傾きの平均の絶対値が 2.5 × 10 6 eV / m から 3.3 × 10 6 eV / m の範囲であることを特徴とする多重量子井戸半導体素子。 - 第 1 の導伝性を有する半導体基板(1)上に第 1 の導伝性を有する半導体クラッド層(2)、半導体よりなる活性層(3)、第 2 の導伝性を有する半導体クラッド層(4)および第 2 の導伝性を有する半導体よりなるコンタクト層(10)が順次積層され、かつ、前記基板および前記コンタクト層表面に、それぞれ電極(12,13)が形成されて成るダブルヘテロ構造における、前記活性層が、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層と、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層に接して形成された、前記第 2 の導伝性を有するクラッド層よりバンドギャップの小さい半導体よりなる分離閉じ込め層との間に、量子井戸層と障壁層が交互に積層され、かつ、該量子井戸層が 2 層以上である層構成から成る多重量子井戸半導体素子において、
前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において価電子帯端ポテンシャル形状が傾斜した障壁層であり、
前記障壁層はそれぞれ当該障壁層内において当該障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さが、前記第 1 の導伝性を有するクラッド層から前記第 2 の導伝性を有するクラッド層の方向に沿って、小さいヘテロ障壁高さから大きいヘテロ障壁高さへと連続的に変化し、
当該連続的に変化する障壁層と前記量子井戸層の間のホールに対するヘテロ障壁高さの傾きの平均の絶対値が 2.5 × 10 6 eV / m から 3.3 × 10 6 eV / m の範囲であることを特徴とする多重量子井戸半導体素子。
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