[第1実施形態]
以下に第1実施形態における座標入力装置100について説明する。
まず始めに本実施形態における座標入力装置100の構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は座標入力装置100の構成を示すブロック図であり、図2は座標入力装置100の外観模式図である。
座標入力装置100は図1に示すように、座標入力部1と、容量計測部2と、制御部3と、を備えている。座標入力部1は容量計測部2に接続されており、容量計測部2は制御部3に接続されている。また、制御部3は、外部機器50に対して制御信号を出力する。
座標入力部1は図2に示すように、操作者の指やタッチペン等の操作体60が入力操作面に近接または接触する近接操作によって入力操作が行われる。座標入力部1には、入力操作面に沿って複数の容量検出部1aがX方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に配置されている(M、Nは自然数とする)。
容量検出部1aは静電容量を有しており、操作者が入力操作を行うために座標入力部1に指等の操作体60を接触すると、接触された位置及びその周辺にある容量検出部1aの静電容量が増加する。
容量計測部2は複数の容量検出部1a毎の静電容量を計測し、計測した静電容量をアナログ信号からデジタル信号へ変換するAD変換(Analog‐to‐Digital変換)を行う。また、容量計測部2は、AD変換によってデジタル信号に変換された静電容量のデータを計測信号として制御部3へ出力する。
制御部3は容量計測部2を制御し、複数の容量検出部1a毎の計測信号の値を容量検出部1aの座標情報と関連付けて取得する。また制御部3は、容量計測部2から座標情報と関連付けて取得した計測信号を演算し、その結果に基づいて外部機器50に対して制御信号を出力する。また、制御部3にはタイマ機能やメモリ(図示せず)が備えられ、タイマ機能による制御間隔の管理や、取得した計測信号の値や計測信号の値を演算した結果を記憶することなどを行うことができる。
次に第1実施形態における座標入力装置100の動作について図3を用いて説明する。図3は第1実施形態に係る座標入力装置100の動作概要を示すフローチャートである。図3のフローチャートで示された処理手順は、制御部3に内蔵されているタイマ機能などによって定期的に繰り返して行われる。
まず制御部3は手順S1で、容量計測部2を制御して容量検出部1a毎の計測信号を取得し、容量検出部1aの座標情報に対応させて、制御部3に含まれるメモリに計測信号記憶領域を設定して記憶する。
次に、手順S2で制御部3は、計測信号記憶領域に記憶された計測信号の値に加重平均処理を行い、加重平均処理を行った結果を、加重平均データ記憶領域を設定して記憶する。
手順S3で制御部3は、手順S2で得られた加重平均処理を行った結果から操作位置を算出し、操作位置に対応した制御信号を出力する。
次に、図3のフローチャートに示した手順S1の処理について図2及び、図4から図6を用いて説明する。
図4は、図3に示したフローチャートの手順S1の詳細な処理手順を示したフローチャートである。
制御部3は、図4のフローチャートで示された手順S1_1で、計測信号の値を取得する対象となる容量検出部1aについて、X方向にm番目、Y方向にn番目の位置を座標情報(m,n)とすると、座標情報(m,n)に初期値(例えば、m=1,n=1)を設定し、手順S1_2で、座標情報(m,n)に対応した容量検出部1aの計測信号AD(m,n)の値を容量計測部2から取得する。
手順S1_3では、手順S1_2で取得された計測信号AD(m,n)の値を容量検出部1aの座標情報に対応させて、制御部3に含まれるメモリに計測信号記憶領域を設定して記憶する。
手順S1_4で座標情報(m,n)のmの値を1増加させ、手順S1_5でmの値をX方向の座標情報の最大値Mと比較する。mの値が最大値Mを超えていなければ手順S1_2に戻って、更新された次の座標の座標情報(m+1,n)に対応した容量検出部1aの計測信号AD(m+1,n)の値を取得する。以降、上記と同様に手順S1_2から手順S1_5までを、mの値が最大値Mより大きくなるまで繰り返す。
手順S1_5でmの値を最大値Mと比較しmの値が最大値Mを超えた場合、手順S1_6でmの値を初期値(例えば1)に戻し、nの値を1増加させ、手順S1_7でnの値を最大値Nと比較する。nの値が最大値Nを超えていなければ手順S1_2に戻って、更新された次の座標の座標情報(m,n+1)に対応した容量検出部1aの計測信号AD(m,n+1)の値を取得する。以降、上記と同様に手順S1_2から手順S1_7までを、nの値が最大値Nより大きくなるまで繰り返す。
手順S1_7でnの値を最大値Nと比較しnの値が最大値Nを超えた場合、図3のフローチャートの手順S1の動作を終了する。以上の処理によって、X方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられているM×N個全ての容量検出部1aを走査し、それぞれの容量検出部1aの計測信号AD(m,n)の値の取得と記憶が完了したことになる。
以上のように、処理の順番を、X方向に1番目でY方向に1番目の座標からX方向に沿って順次決定し、X方向の端(m=M,n=1)まで進んだ次には、Y方向に一つ移動した(m=1,n=2)座標からX方向に沿って順次決定している。このように処理の順番を
順次決定する方法は、一般的にラスタ順またはラスタスキャン順と呼ばれている。
図5及び図6は、図4に示したフローチャートの動作によって取得した計測信号AD(m,n)の値に関する説明図である。図5(a)は、図2に示す座標入力部1の中心付近を近接操作した場合に手順S1で取得した計測信号AD(m,n)の値の例を示しており、座標情報(4,5)で最大値を示している。図5(b)は図5(a)の値を等高線グラフで表したものである。図6(a)は、図2に示す座標入力部1の外周付近を近接操作した場合に手順S1で取得した計測信号AD(m,n)の値の例を示しており、座標情報(8,1)で最大値を示している。図6(b)は図6(a)の値を等高線グラフで表したものである。説明を簡単にするために、m及びnはそれぞれ1から8までの値をとり、全てで64個のデータで構成している。以下の動作説明では、図5及び図6に示した計測値の例を用いて説明を進める。
次に、手順S2で行われる加重平均処理について、図5から図9を用いて説明を行う。図7は、図5に示す計測信号AD(m,n)の値を加重平均処理した結果を示す場合に関する説明図で、図7(a)は計算した結果の値を示しており、図7(b)は図7(a)の値を等高線グラフで表したものである。図8は、図6に示す計測信号AD(m,n)の値を加重平均処理した場合に関する説明図で、図8(a)は計算した結果の値を示しており、図8(b)は図8(a)の値を等高線グラフで表したものである。図9は、加重平均処理の重みと分母D(m,n)を説明する図で、図9(a)はガウス分布に基づく重みと座標情報の関係を示した図で、図9(b)は、注目座標の周囲に隣り合う座標情報の計測信号の数に応じて求めた、加重平均の重みの総数である分母の値である。
加重平均処理は、注目座標の座標情報(m,n)に対応した計測信号AD(m,n)の値と、注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報に対応した計測信号の値と、を用いて加重平均処理を行う。注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報の計測信号の数は、最大で8箇所分あり、それぞれ、AD(m−1,n−1)、AD(m−1,n)、AD(m−1,n+1)、AD(m,n−1)、AD(m,n+1)、AD(m+1,n−1)、AD(m+1,n)、AD(m+1,n+1)で表される。このとき注目座標の加重平均AV(m,n)の値は、次の式(1)で表される。
(式1)
AV(m,n)=[aAD(m,n)+b{AD(m−1,n)+AD(m,n−1)+AD(m,n+1)+AD(m+1,n)}+c{AD(m−1,n−1)+AD(m−1,n+1)+AD(m+1,n−1)+AD(m+1,n+1)}]/(a+4b+4c)
(式1)であらわされる加重平均処理の計算式に、注目座標に近いほど、平均値を計算するときの重みを大きくし、遠くなるほど重みを小さくなるようにガウス分布の関数を用いて求めた図9(a)に示す重みを付与する。本実施形態においてはa=4、b=2、c=1となる。分母D(m,n)は、加重平均処理を行う領域の、それぞれの座標の計測信号に乗じられる重みの総数なので16となり、(式1)は(式2)で表すことができる。
(式2)
AV(m,n)=[4AD(m,n)+2{AD(m−1,n)+AD(m,n−1)+AD(m,n+1)+AD(m+1,n)}+AD(m−1,n−1)+AD(m−1,n+1)+AD(m+1,n−1)+AD(m+1,n+1)]/16
このようにガウス分布に基づいた重み付けを行うことで、注目座標に対して大きな重みが設定され、注目座標から離れた座標周辺座標になるほど小さな重みが設定される。このような重み付けで加重平均処理を行うことで周辺座標の影響による歪みを小さくした平滑化が可能となる。
図7は、図5に示す計測信号AD(m,n)の値を加重平均処理した結果を示す場合に関する説明図である。図5に示すように、座標入力部1の中心付近を近接操作した場合に手順S1で取得した計測信号の値の場合には、特に問題なく加重平均処理ができる。しかし、座標入力部1の外周に沿った位置に存在する容量検出部1aに対応した座標を示す、mの値が1の場合とnの値が1の場合及び、mの値が最大値Mの場合とnの値が最大値Nの場合は、注目座標の外側に容量検出部1aが存在しない。つまり、mの値が1の場合とnの値が1の場合は、近接する8つの近接座標に対応した計測信号のうち(m−1,n−1)(m−1,n)(m−1,n+1)及び(m−1,n−1)(m,n−1)(m+1,n−1)に対応する計測信号が存在しない。また、mの値が最大値Mの場合とnの値が最大値Nの場合は、注目座標に近接する8つの近接座標に対応した計測信号のうち(m+1,n−1)(m+1,n)(m+1,n+1)及び(m−1,n+1)(m,n+1)(m+1,n+1)に対応する計測信号が存在しない。
図8は、図6に示す計測信号AD(m,n)の値を単に加重平均処理した場合の説明図である。図6に示すように、座標入力部1の外周付近を近接操作した場合に手順S1で取得した計測信号AD(m,n)の値の場合では、図7に比べて最大値が大幅に低くなっている。また、座標情報(8,1)の部分の加重平均AV(m,n)の値は、計測信号では最大値を示していた座標の加重平均AV(m,n)の値が周囲の加重平均値より低くなっている。このように、座標入力部1の外周に沿った位置の座標に存在する容量検出部1aの加重平均AV(m,n)の値を(式2)単純に(式2)を用いて計算した場合、加重平均AV(m,n)の値が、正しく計算できなくなってしまう。そこで、本発明では座標入力部1の外周に沿った位置に存在する容量検出部1aに対応した座標では、存在しない座標の計測信号の値とその座標に付与される重みを除外して加重平均処理を行うようにした。
以下に、座標入力部1の外周に沿った位置の座標に存在する容量検出部1aに対応する計測信号の加重平均処理について説明を行う。
注目座標の座標情報(m,n)が(1,1)の場合、注目座標に対応する容量検出部1aの計測信号AD(m,n)は、AD(1,1)となる。注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報のうち、AD(0,0)、AD(0,1)、AD(0,2)、AD(1,0)、AD(2,0)に対応する計測信号が存在しておらず、AD(1,2)、AD(2,1)、AD(2,2)の3箇所に対応する計測信号が存在している。これらの座標の計測信号を用いて、存在しない座標の計測信号の値とその座標に付与される重みを除外して(式1)を書き換え、存在する座標の重み付けは、(式2)と同じとすると、(式3)のように書き換えることができる。
(式3)
AV(1,1)=[4AD(1,1)+2AD(1,2)+2AD(2,2)+AD(2,2)]/(4+2×2+1×1)
同様に、注目座標の座標情報(m,n)が(1,n)(但しnは1<n<Nの自然数)の場合、注目座標の座標情報(m,n)に対応する容量検出部1aの計測信号AD(m,n)は、AD(1,n)となる。注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報のうち、AD(0,n−1)、AD(0,n)、AD(0,n+1)、に対応する計測信号が存在しておらず、AD(1,n−1)、AD(1,n+1)、AD(2,n)、AD(2,n−1)、AD(2,n+1)の6箇所に対応する計測信号が存在している。これらの座標の計測信号を用いて、存在しない座標の計測信号の値とその座標に付与される重みを除外して(式1)を書き換え、存在する座標の重み付けは、(式2)と同じとすると、(式4)のように書き換えることができる。
(式4)
AV(1,n)=[4AD(1,n)+2AD(1,n−1)+2AD(1,n+1)+2AD(2,n)}+AD(2,n−1)+AD(2,n+1)]/(4+3×2+2)
(式3)及び(式4)に示すように、分子には注目座標の座標情報(m、n)に対応した容量検出部1aの計測信号AD(m,n)の値及び、注目座標の周囲に隣り合う座標情報に対応した計測信号AD(m,n)の値が入るため、座標入力部1に対する操作状況によってその値は変化する。分母D(m,n)は注目座標の位置によって、注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報の計測信号の数と位置からあらかじめ算出しておくことができる。各容量検出部1aの座標情報(m、n)に対応して求めた加重平均処理に用いる分母D(m,n)を図9(b)に示す。
以上のように、注目座標が座標入力部1の外周に沿った位置に存在する容量検出部1aに対応した座標の場合には、注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報の計測信号の数に応じて求めた、加重平均の重みの総数である分母D(m,n)の値を変えて加重平均を算出する。
図9(b)は、注目座標に対して加重平均処理を行う際の注目座標の座標情報(m、n)に対応した分母D(m,n)の値を示している。図9に示した分母D(m,n)の値はあらかじめ制御部3に含まれるメモリに分母値記憶領域を設定して記憶させておく。m及びnは図5及び図6に示す計測信号AD(m,n)の値と同様にそれぞれ1から8までの値をとり、全てで64個のデータで構成している。
次に、加重平均処理の手順について図10を用いて説明する。
図10は、図3に示したフローチャートの手順S2で行われる加重平均処理の詳細な処理手順を示したフローチャートである。
制御部3は、図10のフローチャートで示された手順S2_1で、平滑化処理を行う際の注目座標の座標情報を初期値(m=1,n=1)に設定し、手順S2_2に移行する。
手順S2_2で制御部3は、注目座標に対応した計測信号AD(m,n)の値を計測信号記憶領域から取得する。また、注目座標に近接する8つの近接座標に対応した計測信号AD(m−1,n−1)、AD(m−1,n)、AD(m−1,n+1)、AD(m,n−1)、AD(m,n+1)、AD(m+1,n−1)、AD(m+1,n)、AD(m+1,n+1)の値を計測信号記憶領域から取得する。
なお、注目座標の座標情報(m,n)は、前述した計測信号AD(m,n)の値の取得を行う際との順序と同様に、マトリクス状に配置された複数の容量検出部1aのうち、一端に位置する容量検出部1aに対応する座標情報からラスタ順に従って決定される。
mの値が1の場合とnの値が1の場合及び、mの値が最大値Mの場合とnの値が最大値Nの場合は、注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報のうち座標入力部1の外側となってしまう座標情報の箇所には容量検出部1aが存在しない。そのため、mの値が1の場合は隣り合う8つの座標情報に対応した計測信号の値のうち、(m−1,n−1)、(m−1,n)(m−1,n+1)に対応する計測信号の値が存在しない。また、nの値が1の場合は隣り合う8つの座標情報に対応した計測信号の値のうち、(m−1,n−1)、(m,n−1)、(m+1,n−1)に対応する計測信号の値が存在しない。同様に、mの値が最大値Mの場合は、(m+1,n−1)(m+1,n)(m+1,n+1)に対応する計測信号の値が存在せず、nの値が最大値Nの場合は、(m−1,n+1)、(m,n+1)、(m+1,n+1)に対応する計測信号の値が存在しない。このように注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報の箇所に容量検出部1aが存在しない場合には、その座標情報に対応した計測信号の値を”0”に設定して手順S2_3に移行する。
手順S2_3で制御部3は、注目座標の座標情報(m、n)に対応した分母D(m,n)の値を分母値記憶領域から取得し、手順S2_4に移行する。
手順S2_4では、取得した注目座標の座標情報(m,n)に対応した計測信号AD(m,n)の値と、注目座標の周囲に隣り合う8つの座標情報に対応した計測信号AD(m,n)の値と、注目座標に対応した分母D(m,n)の値と、を用いて、(式5)の計算式にて加重平均AV(m,n)の値を算出する。
(式5)
AV(m,n)=[4AD(m,n)+2{AD(m−1,n)+AD(m,n−1)+AD(m,n+1)+AD(m+1,n)}+AD(m−1,n−1)+AD(m−1,n+1)+AD(m+1,n−1)+AD(m+1,n+1)]/D(m,n)
手順S2_5では、手順S2−4で計算した注目座標の加重平均AV(m,n)の値を制御部3に含まれる加重平均記憶領域に記憶し、手順S2_6に移行する。
手順S2_6で座標情報(m,n)のmの値を1増加させ、手順S2_7でmの値をX方向の座標情報の最大値Mと比較する。mの値が最大値Mを超えていなければ手順S2_2に戻って、更新された次の注目座標の座標情報(m+1,n)に対応した計測信号の値を計測信号記憶領域から取得する。以降、上記と同様に手順S2_2から手順S2_6までを、mの値が最大値Mより大きくなるまで繰り返す。
手順S2_7でmの値を最大値Mと比較しmの値が最大値Mを超えた場合、手順S2_8でmの値を初期値(例えば1)に戻し、nの値を1増加させ、手順S2_9でnの値を最大値Nと比較する。nの値が最大値Nを超えていなければ手順S2_2に戻って、更新された次の注目座標の座標情報(m,n+1)に対応した計測信号の値を計測信号記憶領域から取得する。以降、上記と同様に手順S2_2から手順S2_7までを、nの値が最大値Nより大きくなるまで繰り返す。
手順S2_9でnの値を最大値Nと比較しnの値が最大値Nを超えた場合、図3のフローチャートの手順S2の動作を終了する。以上の処理によって、X方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられているM×N個全ての容量検出部1aに対応した加重平均処理及び加重平均処理結果の記憶が完了したことになる。
図11は図10の加重平均処理後の値に関する説明図である。図11(a)は、図6に示した手順S2で取得した計測信号AD(m,n)の値から、上述した手順S2の加重平均処理を行った結果得られた加重平均AV(m,n)の値である。図11(b)は図11(a)の値を等高線グラフで表したものである。
図11に示す通り、図6で示した座標入力部1の外周付近を近接操作した場合であっても、操作されているm=8、n=1に相当する位置が極大値となっている。単純に加重平均を行った図8に比較して、最大値が大幅に低くなったり、計測信号の値が最大値を示していた座標の加重平均AV(m,n)の値が周囲の加重平均値より低くなったりすることはなく適切に加重平均処理を行うことができる。
図12は、図3に示したフローチャートの手順S3の操作位置算出処理の詳細な手順を示したフローチャートである。
制御部3は、図12のフローチャートで示された手順S3_1で、操作位置の算出を行なうための最大値保持メモリ(AVmax)と、最大値の座標情報を記憶するメモリ(Pmax)の値を消去(0に設定)し手順S3_2に移行する。
手順S3_2で制御部3は、操作位置算出を行う座標情報(m,n)を初期値(m=1,n=1)に設定し、手順S3_3で座標情報(m,n)に対応した加重平均AV(m,n)の値を加重平均記憶領域から取得し、手順S3−4に移行する。
手順S3_4で制御部3は、手順S3_3で取得した座標情報(m,n)に対応した加重平均AV(m,n)の値を、取得した加重平均AV(m,n)の値の最大値を保存する最大値保持メモリ(AVmax)の値と比較を行う。比較の結果、手順S3_3で取得した座標情報(m,n)に対応した加重平均AV(m,n)の値が最大値保持メモリ(AVmax)の値より大きい場合は手順S3_5へ移行する。また、手順S3_3で取得した座標情報(m,n)に対応した加重平均AV(m,n)の値が最大値保持メモリ(AVmax)の値以下の場合は手順S3_7に移行する。
手順S3_5で制御部3は、最大値保持メモリ(AVmax)に手順S3_3で取得した座標情報(m,n)に対応した加重平均AV(m,n)の値を記憶し、手順S3_6に移行する。
手順S3_6で制御部3は、手順S3_3で取得した座標情報(m,n)に対応した加重平均AV(m,n)の座標情報(m,n)を最大値の座標情報を記憶するメモリに記憶し(Mmax=m、Nmax=n)、手順S3_7に移行する。
手順S3_7で制御部3は座標情報(m,n)のmの値を1増加させ、手順S3_8でmの値を最大値Mと比較する。mの値が最大値Mを超えていなければ手順S3_3に戻って、手順S3_7で更新された次の座標情報(m+1,n)に対応した加重平均AV(m+1,n)の値を加重平均記憶領域から取得する。以降、上記と同様に手順S3_3から手順S3_7までを、mの値が最大値Mより大きくなるまで繰り返す。
手順S3_8で制御部3は、mの値を最大値Mと比較し、mの値が最大値Mを超えた場合、手順S3_9でmの値を初期値に戻し、nの値を1増加させる。手順S3_10でnの値を最大値Nと比較し、nの値が最大値Nを超えていなければ手順S3_3に戻って、手順S3_9更新された座標情報(m,n+1)に対応した加重平均AV(m,n+1)の値を加重平均記憶領域から取得する。以降、上記と同様に手順S3_3から手順S3_9までを、nの値が最大値Nより大きくなるまで繰り返す。
手順S3_10でnの値を最大値Nと比較し、nの値が最大値Nを超えた場合、手順S3_11へ移行する。この場合、X方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に設けられているM×N個全ての容量検出部1aに対応した座標情報の計測信号AD(m,n)の値に対して最大値検出処理及び記憶が完了したことになる。
手順S3_11で制御部3は、最大値保持メモリ(AVmax)の値と操作による接触を判断するための接触閾値との比較を行う。比較した結果最大値保持メモリ(AVmax)の値が接触閾値より大きい場合には手順S3_12に移行し、最大値保持メモリ(AVmax)の値が接触閾値以下の場合には手順S3_13に移行する。
手順S3_12では、手順S3_11で操作による接触有と判断されたので、最大値の座標情報を記憶するメモリ(Mmax,Nmax)に記憶された座標情報(m,n)に対応した制御信号を出力して図2のフローチャートの手順S3の動作を終了する。
手順S3_13では、手順S3_11で操作による接触無と判断されたので、無入力に対応した制御信号を出力して図2のフローチャートの手順S3の動作を終了する。
以上のように、加重平均AV(m,n)の値を加重平均記憶領域から取得して最大値を求め、操作による接触を判断する。接触有と判断された場合は最大値の座標情報を記憶するメモリ(Mmax,Nmax)に対応した制御信号を出力し、接触無と判断された場合は、無入力に対応した制御信号を出力する。従って、操作位置に応じた出力を得ることができ、座標入力動作を行うことができる。
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
本実施形態の座標入力装置100では、複数の容量検出部1aがマトリクス状に配置され、操作体60が近接操作を行う座標入力部1と、複数の容量検出部1a毎の静電容量を計測し、計測した静電容量をAD変換して計測信号AD(m,n)として出力する容量計測部2と、容量計測部2を制御し、計測信号AD(m,n)を容量検出部1aの座標情報(m,n)と関連付けて取得するとともに、計測信号AD(m,n)を演算し、その結果に基づいて制御信号を出力する制御部3と、を備えて構成した。制御部3は、容量検出部1aの座標情報(m,n)に従って注目座標を決定し、注目座標の計測信号AD(m,n)の値と、注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報の計測信号の値と、を用いて加重平均処理を行い、加重平均処理は、注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報の計測信号の数に応じて重みの総数を変えて算出するようにした。
これにより、注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報の計測信号の数に応じて分母となる重みの総数を変えて加重平均処理を行うので、座標入力装置100の外周部に位置する容量検出部1aの計測信号AD(m,n)の値を加重平均した場合の誤差を低減することができる。このため外周部に入力操作されても入力座標の検出誤差を低減することができる座標入力装置を提供することができる。
また、本実施形態の座標入力装置100では、注目座標の周囲に隣り合う複数の座標情報の計測信号の数が最大で8箇所とした。
これにより、マトリクス状に配置された容量検出部1aのうち、注目座標に隣り合う全ての座標情報の計測信号を用いて加重平均処理を行うので、位置検出精度を高くすることができる。
また、本実施形態の座標入力装置100では、加重平均処理はガウス分布に基づく加重平均処理とした。
これにより、ガウス分布に基づいて加重平均処理を行うことから、操作体60の位置に応じた適切な平滑化が可能となり、位置検出精度を高くすることができる。
以上のように、本発明の実施形態に係る座標入力装置100を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
(1)本実施形態において、座標入力部1には、入力操作面に沿って複数の容量検出部1aがX方向にM個、X方向と直交するY方向にN個がマトリクス状に配置されている例を示して説明を行ったが、図13(a)に示すような配置に変更して実施しても良い。図13(a)は、容量検出部1aの配置を説明する図で、”×”で示された座標には容量検出部1aは存在せず、”○”で示された座標には容量検出部1aが配置されていることを示している。このように配置することで、楕円形や円形の座標入力部に容易に対応することができる。また、この場合、加重平均の重みの総数である分母の値は図13(b)の値を使用することができる。
(2)本実施形態において、最大値の座標情報を記憶するメモリ(Mmax,Nmax)に対応した制御信号を出力する例を示して説明を行ったが、最大値の座標情報と隣り合う座標との計測信号の値からより正確な検知位置を推定するように構成しても良い。また複数の座標の加重平均の値から、2次関数や3次関数を用いて近似を行いより詳細に座標情報を算出するようにしても良い。
(3)本実施形態において、制御部3で使用するデータについて具体的な数値を示して説明を行ったが、組込む機器や想定される使用状態に合わせ適宜値を変えて実施しても良い。また、固定の値で例示した数値も周囲温度や動作環境の変動等に応じて補正等を行うように変更して実施しても良い。
(4)本実施形態において、計測信号AD(m,n)の値を直接取込んで処理行う例を示したが、温度変化による計測信号の値の変動や雑音等の影響を除去する処理を行ってから検知するよう変形して実施しても良い。
(5)本実施形態において、座標入力部1の1箇所に入力操作されている例を示して説明を行ったが、一点の最大値を検出する最大値検出処理を複数の極大値を検出するように変更し、複数の極大値の座標情報を記憶するように構成しても良い。このように変更することで容易に2点以上の検知を行うことが可能となり、より多様な入力操作に対応することが可能な座標入力装置を提供することができる。