JP6060376B2 - 自己始動形永久磁石同期電動機およびそれを搭載した送風装置 - Google Patents

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本発明は、主にパイプ用ファンや一般型換気扇などの換気装置や、機器組み込み用の冷却ファンなどを駆動する自己始動形永久磁石同期電動機と送風装置に関するものである。
従来、この種の自己始動形永久磁石同期電動機は、特許文献1に開示された構成のものが知られている。
以下、その自己始動形永久磁石同期電動機について図8〜9を参照しながら説明する。
図8〜9に示すように、自己始動形永久磁石同期電動機101は、回転軸102と、この回転軸102の外周に一体化され回転自在に保持された回転子103と、この回転子103の外周に、この回転子103とは非接触で近接配置して電機子巻線104を巻装した固定子105により構成される。
また、自己始動形永久磁石同期電動機の回転子103は、積層鉄心107と始動用かご形導体110と、この始動用かご形導体110に埋設した永久磁石111とで構成されて、回転子磁極を形成している。積層鉄心107は、円形状の回転子鉄心を、軸方向に所定の積厚まで積層して形成したものである。始動用かご形導体110は、回転子103の外径付近に形成した複数の導体バー108とこの導体バー108の両端に設けたエンドリング109とをアルミダイカストで一体成型したものである。永久磁石111は、この始動用かご形導体110に導体バー108より内径側に埋設されている。
また、回転子103の回転子鉄心は、回転子103の外周付近に導体バー108を成形するための複数の回転子スロット112と、回転子スロット112より内径側に永久磁石111を埋設するためのスリット113と、回転軸102を圧入するための円形の軸孔114で構成される。
したがって、回転子103の中心には、回転軸102を圧入するための円柱形状の軸孔114が成形されている。回転子103は、回転軸102を圧入し一体化することで、回転自在に構成される。
特開2001−86670号公報
自己始動形永久磁石同期電動機101は、始動時には回転子103の始動用かご形導体110により誘導電動機として動作する。そして、同期速度近くまで加速すると、回転子103に埋設した永久磁石111の回転子磁極が、電機子巻線104で作られる同期速度の回転磁界に引込まれ、同期機として運転される電動機である。
このような従来の自己始動形永久磁石同期電動機101は、回転子103の始動用かご形導体110の抵抗値を小さくすることで、誘導電動機として動作している時の最大トルク時の回転数を高くする。また、最大トルクを大きくすることでスムーズに同期引込する構成となっていた。
しかしながら、自己始動形永久磁石同期電動機101の回転子103の回転子鉄心は、導体バー108を形成するための回転子スロット112と、永久磁石111を埋設するためのスリット113と、回転軸102を圧入するための軸孔114により構成されている。そのため、回転子103の中心に形成された円柱形状の軸孔114に回転軸102を圧入した時に回転子鉄心が変形する。この回転子鉄心の変形により、始動用かご形導体110の応力が高まり、ひずみを生じる。そのため、導体抵抗値が増大することでトルク特性の低下し、同期引込性の低下の原因となる場合がある。
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、自己始動形永久磁石同期電動機の回転子に回転軸を圧入した時に生じる、回転子鉄心の変形を緩和することで、スムーズな同期引込性を有する自己始動形永久磁石同期電動機を提供することを目的とする。
そして、この目的を達成するために、本発明の自己始動形永久磁石同期電動機は、
回転軸と、
この回転軸の外周に一体化され回転自在に保持された回転子と、
この回転子の外周に、この回転子とは非接触で近接配置した固定子を有し、
前記回転子は、
円形状の回転子鉄心を軸方向に所定の積厚まで積層して形成した円柱形状の積層鉄心と、
回転子外径付近に形成した複数の導体バーと前記導体バーの両端に設けたエンドリングとをアルミダイカストで一体成型した始動用かご形導体と、
この導体バーより内径側に埋設した永久磁石とで構成され、
前記回転子鉄心は、
少なくとも一対の永久磁石を所定の直径に対して線対称に埋設するためのスリットと、
前記回転子鉄心の中心に楕円形状の軸孔を有し、
前記楕円形状の軸孔は、
前記直径と平行に楕円の長径を配置したものであり、
これにより所期の目的を達成するものである。
本発明によれば、回転軸と、この回転軸の外周に一体化され回転自在に保持された回転子と、この回転子の外周に、この回転子とは非接触で近接配置した固定子を有し、前記回転子は、円形状の回転子鉄心を軸方向に所定の積厚まで積層して形成した円柱形状の積層鉄心と、回転子外径付近に形成した複数の導体バーと前記導体バーの両端に設けたエンドリングとをアルミダイカストで一体成型した始動用かご形導体と、この導体バーより内径側に埋設した永久磁石とで構成され、前記回転子鉄心は、少なくとも一対の永久磁石を所定の直径に対して線対称に埋設するためのスリットと、前記回転子鉄心の中心に楕円形状の軸孔を有し、前記楕円形状の軸孔は、前記直径と平行に楕円の長径を配置した自己始動形永久磁石同期電動機の構成とする。
これにより、自己始動形永久磁石同期電動機の回転子に回転軸を圧入した時に生じる、回転子鉄心の変形が緩和される。そのため、始動用かご形導体に生じる応力が低減し、導体抵抗値の増大を抑制することができる。その結果、スムーズな同期引込性を有する自己始動形永久磁石同期電動機が提供できるという効果を得ることできる。
軸流送風機を搭載した換気装置の設置状態を示す断面図 自己始動形永久磁石同期電動機の構成を示す分解斜視図 自己始動形永久磁石同期電動機の回転子の構成を示す分解斜視図 軸流送風機に搭載される自己始動形永久磁石同期電動機の回転数−トルク特性を示すグラフ 従来の自己始動形永久磁石同期電動機の(A)回転子鉄心の平面図、(B)回転軸を圧入した時に生じる回転子鉄心の変形を示す平面図 本発明の実施の形態1における自己始動形永久磁石同期電動機の(A)回転子鉄心の平面図、(B)回転軸を圧入した時に生じる回転子鉄心の変形を示す平面図 本発明の実施の形態2における自己始動形永久磁石同期電動機の(A)回転子鉄心の平面図、(B)回転軸を圧入した時に生じる回転子鉄心の変形を示す平面図 従来の自己始動形永久磁石同期電動機を示す図 従来の自己始動形永久磁石同期電動機の回転子鉄心の平面図
本発明の請求項1記載の自己始動形永久磁石同期電動機は、回転軸と、この回転軸の外周に一体化され回転自在に保持された回転子と、この回転子の外周に、この回転子とは非接触で近接配置した固定子を有し、前記回転子は、円形状の回転子鉄心を軸方向に所定の積厚まで積層して形成した円柱形状の積層鉄心と、回転子外径付近に形成した複数の導体バーと前記導体バーの両端に設けたエンドリングとをアルミダイカストで一体成型した始動用かご形導体と、この導体バーより内径側に埋設した永久磁石とで構成され、前記回転子鉄心は、少なくとも一対の永久磁石を所定の直径に対して線対称に埋設するためのスリットと、前記回転子鉄心の中心に楕円形状の軸孔を有し、前記楕円形状の軸孔は、前記直径と平行に楕円の長径を配置した構成とする。
これにより、自己始動形永久磁石同期電動機の回転子に回転軸を圧入した時に生じる、回転子鉄心の変形が緩和される。そのため、始動用かご形導体に生じる応力が低減し、導体抵抗値の増大を抑制することができる。その結果、スムーズな同期引込性を有する自己始動形永久磁石同期電動機が提供できるという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に示すように、軸流送風機1は、自己始動形永久磁石同期電動機2を搭載し、この自己始動形永久磁石同期電動機2の回転軸3に、プロペラファン4を取り付けたものである。換気装置5は、軸流送風機1を内蔵し、軸流送風機1によって室内空気を吸込み口から吸い込んで、建物の壁6を貫通して屋外に排出するものである。
図2に示すように、自己始動形永久磁石同期電動機2は、回転自在に保持された回転子7と固定子9により構成される。回転子7は、炭素鋼鋼材からなる回転軸3の外周に一体化され回転自在に保持されている。固定子9は、この回転子7の外周に、この回転子7とは非接触で近接配置して電機子巻線8を巻装したものである。
図3に示すように、この回転子7は、円柱形状の積層鉄心11と、始動用かご形導体14と永久磁石15とで構成され、回転子磁極を形成している。積層鉄心11は、電磁鋼板からなる円形状の回転子鉄心10を、軸方向に所定の積厚まで積層して形成される。始動用かご形導体14は、回転子7の外径付近に形成した複数の導体バー12とこの導体バー12の両端に設けたエンドリング13とをアルミダイカストで一体成型したものである。永久磁石15は、希土類磁石等からなり、始動用かご形導体14に設けた導体バー12より内径側に埋設されたものである。
ここで、軸流送風機1に搭載される自己始動形永久磁石同期電動機2の特性について説明する。
図4は、自己始動形永久磁石同期電動機2の回転数−トルク特性を示すグラフである。
図4において、横軸は自己始動形永久磁石同期電動機2の回転数を表し、縦軸はそのトルクを表している。始動時には、前記固定子9の電機子巻線8に商用交流電源を印加することで、固定子9の電機子巻線8に電流が流れだす。その電流による起磁力により固定子9の電機子巻線8から回転磁界が発生する。そして、回転子7の始動用かご形導体14に発生する誘導電流との相互作用によって誘導電動機として回転子7が始動する(図4の領域A)。
一方、回転子7が固定子9の回転磁界の同期速度付近まで加速されると、回転子7の永久磁石15による回転子磁極が、固定子9の電機子巻線8がつくる同期速度の回転磁界に引き込まれて同期機として運転する(図4の領域B)。
したがって自己始動形永久磁石同期電動機は、誘導電動機として動作する図4の領域Aにおいて、最大トルク時の回転数を高く、最大トルク値を大きくすることにより、スムーズに同期引込できることになる。
図4の領域Aにおいて、所期の回転数−トルク特性を達成するには、始動用かご形導体14全体の抵抗値を小さくすればよい。すなわち、導体バー12やエンドリング13の断面積を大きくすると共に、始動用かご形導体14をアルミダイカストで成型する時、アルミニウムを十分に充填することにより、始動用かご形導体14全体の抵抗値が小さくなる。
次に、回転子鉄心10と、回転子7に回転軸3を圧入した時に生じる回転子鉄心10の変形について説明する。
図5〜7に、従来の回転子鉄心と回転軸を圧入した時に生じる回転子鉄心の変形を示す。
図5に記載の従来の回転子鉄心10Aは、外周付近に導体バー12を成形するための複数の回転子スロット16と、回転子スロット16より内径側に、直径17に対して線対称に一対の永久磁石15を埋設するためのスリット18Aと、回転軸3を圧入するためのほぼ真円の軸孔19Aで構成されている。
図5(A)は、回転軸3を圧入する前の回転子鉄心10Aを示し、図5(B)は、円形状の軸孔19Aに回転軸3を圧入した時の回転子鉄心10Aの変形を示す。
図5(B)で示すように、炭素鋼鋼材からなる回転軸3を電磁鋼板からなる回転子鉄心10Aの軸孔19Aに圧入すると、回転軸3より弾性率の低い回転子鉄心10Aは、軸孔19Aの破線に示す様に外径方向に一様に変形しようとする。しかしながら、回転子鉄心10Aのスリット18Aには回転子鉄心10Aの弾性率と異なる永久磁石15が埋設されていることから、図5(B)の破線に示す様に直径17方向に変形を生じる。その変形は回転子鉄心10の外周付近に導体バー12を成形するための複数の回転子スロット16にまで及ぶこととなる。そして、回転子鉄心10より弾性率の低い、回転子スロット16の内部に成形されたアルミニウムの導体バー12の応力が高まり、導体バー12にひずみや変形が生じる。その結果、始動用かご形導体14全体の抵抗値が大きくなる。
従って、図4の領域Aにおいて、最大トルク時の回転数が低下し、最大トルクの値が小さくなることから、同期引込性が低下することとなる。
図6は、本発明の実施の形態1における回転子鉄心と回転軸を圧入した時に生じる回転子鉄心の変形を示す。
図6に記載の本発明の実施の形態1における回転子鉄心10Bは、従来の回転子鉄心10Aに対して、回転軸3を圧入するための軸孔19Bは楕円形状であり、直径17上に楕円の長径を配置されている点である。
図6(A)は、回転軸3を圧入する前の回転子鉄心10Bを示し、楕円形状の軸孔19Bに回転軸3を圧入した時の回転子鉄心10Bの変形を示す。
図6(B)に示すように、炭素鋼鋼材からなる回転軸3を電磁鋼板からなる回転子鉄心10Bの楕円状の軸孔19Bに圧入すると、回転軸3より弾性率の低い回転子鉄心10が、の軸孔19Bの破線に示す様に外径方向に変形しようとする。そして、楕円形状の軸孔19Bの長径を直径17に平行に配置していることから、直径17方向に加わる力が小さく、図5と比較して直径17方向に変形しにくくなる。すなわち、回転軸3を圧入するために設けた楕円形状の軸孔19Bの長径を、直径17と平行に配置したことにより、回転軸3の圧入に対する回転子鉄心10Bの変形が緩和されたためである。
上記構成により、アルミニウムからなる始動用かご形導体14に生じる応力が低減し、
導体抵抗値の増大を抑制することができる。そして、その結果、スムーズな同期引込性を有する自己始動形永久磁石同期電動機を提供することができる。
なお、本実施の形態では、永久磁石15を埋設するためのスリット18Bの形状を矩形上のもので説明したが、円弧形状等他の形状のものであってもよい。
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2の自己始動形永久磁石同期電動機の回転子鉄心10Cを示す図である。
この図において、実施の形態1(図6に示す回転子鉄心10B)と異なるところは、永久磁石15を埋設するスリット18Cは、所定の直径17と線対称に略円弧上に4個以上に分割し配置されている点である。
そして、隣接するスリット18C同士の間隔は、直径17にあたる部分に形成される間隔D1を、他の部分のスリット18C同士の間隔D2よりも大きく取っている。
また、図6と同じ構成要素については同じ符号を用い、その説明を省略する。また、図1の軸流送風機1を搭載した換気装置5および図2の自己始動形永久磁石同期電動機2を示す構成図についても同様のため、その説明を省略する。
この場合、上述のごとく、回転軸3を楕円形状の軸孔19Cに圧入することで回転子鉄心10Cの軸孔19Cに変形を生じる。永久磁石15を埋設するためのスリット18Cが略円弧上に4分割に配置されている。そのため、永久磁石15に生じる応力が分散され、また、直径17方向に生じる変形をより低減することができる。
したがって、回転子7の外周付近に設けたアルミニウムからなる始動用かご形導体14に生じる応力がより低減し、導体抵抗値の増大をより抑制することができる。その結果、
よりスムーズは同期引込性を有する自己始動形永久磁石同期電動機を提供することができる。
また、本発明の自己始動形永久磁石同期電動機2は、回転子鉄心10Cに設けた回転軸3を圧入するための楕円形状の軸孔19Cの長径を所定の直径17と平行に配置したことから、回転軸3を軸孔19Cに圧入することで回転子鉄心10Cに生じる変形を低減できる。そして、回転子7の外周付近に設けたアルミニウムからなる始動用かご形導体14に生じる応力が低減し、導体抵抗値の増大を抑制することができる。したがって、誘導電動機動作時の最大トルク時の回転数を高く、最大トルク値を大きくすることによりスムーズに同期引込できる。
また、間隔D1を間隔D2よりも大きく取っているため、直径17と直交する方向に加わる力はスリット18Cによって妨げられる。一方、直径17方向に加わる力は、間隔D1によって外周方向へ逃げることになり、全体の変形が抑えられることになる。
本発明にかかる自己始動形永久磁石同期電動機は、回転子鉄心の中心部に設けた回転軸圧入用の軸孔を楕円形状とすることで、回転軸圧入時の回転子鉄心の変形が緩和され、始動用かご形導体に生じる応力を低減することから、導体抵抗の変化を抑制でき、同期引込性が向上する。そして、パイプ用ファンや一般型換気扇などの換気装置や、機器組み込み用の冷却ファンなどを駆動する自己始動形永久磁石同期電動機と送風装置として有用である。
1 軸流送風機
2 自己始動形永久磁石同期電動機
3 回転軸
4 プロペラファン
5 換気装置
6 壁
7 回転子
8 電機子巻線
9 固定子
10 回転子鉄心
10A、10B、10C 回転子鉄心
11 積層鉄心
12 導体バー
13 エンドリング
14 始動用かご形導体
15 永久磁石
16 回転子スロット
17 直径
18 スリット
18A、18B、18C スリット
19 軸孔
19A、19B、19C 軸孔

Claims (4)

  1. 回転軸と、
    この回転軸の外周に一体化され回転自在に保持された回転子と、
    この回転子の外周に、
    この回転子とは非接触で近接配置した固定子を有し、
    前記回転子は、
    円形状の回転子鉄心を軸方向に所定の積厚まで積層して形成した円柱形状の積層鉄心と、
    回転子外径付近に形成した複数の導体バーと前記導体バーの両端に設けたエンドリングとをアルミダイカストで一体成型した始動用かご形導体と、
    この導体バーの内周側に埋設した永久磁石とで構成され、
    前記回転子鉄心は、
    少なくとも一対の永久磁石を所定の直径に対して線対称に埋設するためのスリットと、
    前記回転子鉄心の中心に楕円形状の軸孔を有し、
    前記楕円形状の軸孔は、
    前記直径と平行に楕円の長径を配置した自己始動形永久磁石同期電動機。
  2. 前記スリットは、前記直径と線対称に4個以上の偶数個配置した請求項1に記載の自己始動形永久磁石同期電動機。
  3. 隣接した前記スリット同士の間隔は、前記直径部分の間隔を他の間隔よりも大きくした請求項2記載の自己始動形永久磁石同期電動機。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の自己始動形永久磁石同期電動機を搭載した送風装置。
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