JP6051476B2 - 凍結耐性金被覆銀ナノプレート懸濁液 - Google Patents

凍結耐性金被覆銀ナノプレート懸濁液 Download PDF

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Description

本発明は、金で被覆された銀ナノプレート(以下、金被覆銀ナノプレートともいう)の懸濁液、特に、凍結耐性の優れた金被覆銀ナノプレートの懸濁液に関する。
銀ナノプレートは、光との相互作用(表面プラズモン共鳴:SPR)により光を吸収するため、その懸濁液はナノプレートの形状に応じて色を示すことが知られている。更に、銀ナノプレートの大きさや形状を制御することにより、吸収する光を変化させること、すなわち色を変化させることができることも知られている。
この性質を利用して、銀ナノプレートは、被験物質の検出試薬の標識(例えば、目的タンパク質の検出に用いられる抗体の標識)として用いられている。
一方、銀ナノプレートは酸化により溶解してその形状が変化する。この酸化による銀ナノプレートの形状変化は、意図していた色の変化を引き起こし得る。
そこで、銀ナノプレートを酸化に対して安定化するため、銀ナノプレートの表面を金で被覆することが行われている(特許文献1及び非特許文献1〜2)。
特許第3885054号
Materials Chemistry and Physics, 90 (2005), p.361-366 Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, p.5629-5633
銀ナノプレートの懸濁液は酸化に弱く、特にpHが低い条件下では不安定だった。また、銀ナノプレート又は金被覆銀ナノプレートの懸濁液は凍結に対して不安定であり、凍結時又は凍結乾燥時に凝集し、凍結物を融解後又は凍結乾燥物を再構成後、その特徴的な分光特性を失ってしまうので、その安定な保管方法やイムノクロマトキット作製時などの凍結乾燥工程にも耐える懸濁液が求められていた。したがって、本発明は、凍結や凍結乾燥に対して安定な金被覆銀ナノプレートの懸濁液を提供することを目的としている。
本発明者らは、金被覆銀ナノプレートの懸濁液について鋭意検討したところ、意外なことに、該懸濁液のpHを、従来の銀ナノプレートが不安定になる低pH領域に調整すると、該懸濁液が凍結に対して安定化することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示す懸濁液、及び、懸濁液を凍結に対して安定化する方法を提供するものである。
〔1〕金被覆銀ナノプレート及び水溶性高分子を含む懸濁液であって、
pHが6以下であることを特徴とする、懸濁液。
〔2〕pHが、4〜6である、前記〔1〕に記載の懸濁液。
〔3〕pHを、金被覆銀ナノプレート作製時からそのまま維持した、又は、無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸及び緩衝液から成る群から選択されるpH調整剤によって調整した、前記〔1〕又は〔2〕に記載の懸濁液。
〔4〕前記金被覆銀ナノプレート上の金の厚みの平均が、1.0nm以下である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の懸濁液。
〔5〕前記金被覆銀ナノプレート上の金の厚みの平均が、0.1〜0.7nmである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の懸濁液。
〔6〕前記水溶性高分子の濃度が、50μM以下である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の懸濁液。
〔7〕前記水溶性高分子の濃度が、25μM以下である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の懸濁液。
〔8〕前記金被覆銀ナノプレートが、被験物質に対する特異的結合物質を担持している、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の懸濁液。
〔9〕前記懸濁液が、凍結後に融解されたものであるか、又は、凍結乾燥後に再構成されたものである、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の懸濁液。
〔10〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の懸濁液の凍結物又は凍結乾燥物。
〔11〕金被覆銀ナノプレート及び水溶性高分子を含む懸濁液を凍結又は凍結乾燥に対して安定化する方法であって、
該懸濁液のpHを6以下に維持又は調整する工程を含むことを特徴とする、方法。
〔12〕前記pH維持又は調整工程において、前記懸濁液のpHを4〜6に調整する、前記〔11〕に記載の方法。
本発明の金被覆銀ナノプレートの懸濁液は、そのpHを従来の銀ナノプレートが不安定になる低pH領域に調整することで、凍結又は凍結乾燥後に、凝集物が発生することなく融解又は再構成することができ、凍結前の金被覆銀ナノプレートの特徴的な分光特性を維持することができる。したがって、本発明の懸濁液を用いることにより、金被覆銀ナノプレート(又は種々の被験物質を検出するために該被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレート)の懸濁液の凍結又は凍結乾燥が可能となるので、該懸濁液の保管又は運搬が容易になり、かつ、イムノクロマトキット作製時などの凍結乾燥工程にも耐性を持つようになる。
凍結前の金被覆銀ナノプレート懸濁液A(A)、懸濁液B(B)、懸濁液C(C)、懸濁液D(D)及び懸濁液E(E)の分光特性を示す。 凍結前の金被覆銀ナノプレート懸濁液A(A)、懸濁液F(F)、懸濁液G(G)、懸濁液H(H)及び懸濁液I(I)の分光特性を示す。 凍結融解懸濁液A(A)懸濁液B(B)、懸濁液C(C)、懸濁液D(D)及び懸濁液E(E)の分光特性を示す。 凍結融解懸濁液A(A)、懸濁液B(B)、懸濁液C(C)、懸濁液D(D)及び懸濁液E(E)の分光特性を示す。 凍結融解懸濁液A(A)、懸濁液F(F)、懸濁液G(G)、懸濁液H(H)及び懸濁液I(I)の分光特性を示す。 凍結融解懸濁液A(A)、懸濁液F(F)、懸濁液G(G)、懸濁液H(H)及び懸濁液I(I)の分光特性を示す。 凍結乾燥前の金被覆銀ナノプレート懸濁液A及び再構成懸濁液Aの分光特性を示す。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の金被覆銀ナノプレートの懸濁液は、金被覆銀ナノプレート及び水溶性高分子を含み、pHが6以下であることを特徴とする。
本発明の金被覆銀ナノプレートとは、銀ナノプレート(コア)の表面に金の被覆(シェル)を有するものをいう。
本発明では、被験物質の検出の技術分野で着色標識として用いられている銀ナノプレートを特に制限なく用いることができるが、以下に好ましい態様を詳述する。
銀ナノプレートとは、銀から製造されたナノプレート(板)をいう。
銀ナノプレートの主面の最大長さとなる粒子径(円形の場合は直径に相当し、三角形の場合は最大辺の長さに相当する)は、通常10〜1000nmであり、10〜150nmが好ましい。更に、銀ナノプレートのアスペクト比(粒子径/厚み)は、通常1.5以上であり、可視光領域にSPRの吸収波長が発現して多色設計が可能な1.5〜10が好ましい。近赤外光での検出に用いる場合には、SPRが800〜2000nmで発現するようなアスペクト比(例えば、アスペクト比7.5で900nm付近にSPRに由来する最大吸収波長が発現)のプレート状銀ナノ粒子を用いればよい。
銀ナノプレートの厚さは、プラズモン吸収することができるものであれば特に制限されず、一般的には40nm以下であり、好ましくは5〜20nmである。
銀ナノプレートの形状は、プラズモン吸収することができるものであれば特に制限されず、意図する色に応じた形状を採用することができる。具体例としては三角形状、五角形状、六角形状等の多角形状や、角がカーブ状となった円形状等の形状があげられる。
本発明では、単一種類(単一形状)の銀ナノプレートを用いてもよく、形状の異なる複数種類の銀ナノプレートの混合物を用いてもよい。
銀ナノプレートの大きさ(主面の最大長さ)並びに形状は、意図する色又は最大吸収波長に応じて適宜設定することができる。銀ナノプレートの最大吸収波長は、430〜2000nmの範囲で調整してもよく、好ましくは430〜1500nm、特に好ましくは430〜1000nmの範囲で調整してもよい。銀ナノプレートの大きさ及び形状と色との関係は、例えば特表2011−508072号公報に記載されている。例えば、銀ナノプレートを三形状および六角形状(主面の最大長さ:20nm、厚さ:5.1nm)とすると、赤紫色(最大吸収波長:538nm)を呈することができる。銀ナノプレートの最大吸収波長は、銀ナノプレート形成後の金による被覆、懸濁液のpHの調整及び被験物質に対する特異的結合物質の担持後に安定する。
銀ナノプレートは市販品を用いてもよく、公知の製造方法や後述の実施例に記載の方法に従って製造したものを用いてもよい。
銀ナノプレートの表面を被覆する金の厚さは、銀ナノプレートの発色性能に影響を与えない限り特に制限されないが、厚みの平均が、好ましくは1.0nm以下、より好ましくは0.7nm以下である。金の被覆の厚さが1.0nm以下であると、銀ナノプレートのプラズモン吸収を維持しつつ、銀ナノプレートの酸化を抑制することができる。
金の厚さの下限は、銀ナノプレート表面の金による被覆という目的を達成できるものであれば特に制限されないが、厚みの平均が、好ましくは0.1nm以上である。なお、本発明における金の厚みの平均とは、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF−STEM)を用いて測定された、銀ナノプレート表面の金の厚みより算出すれば良い。具体的には、HAADF−STEM像から任意の粒子10個について各粒子の任意の部位10点について、金の厚みを測定した計100点のデータの内、上下10%を除いた80点の平均値を金の厚みの平均とすれば良い。
被覆方法は、銀ナノプレート表面の金による被覆という目的を達成できるものであれば特に制限されない。したがって、公知の被覆方法や後述の実施例に記載の被覆方法を用いることができる。
本発明の金被覆銀ナノプレートは、銀ナノプレートの全ての表面が金で被覆されているものであってもよく、銀ナノプレートの表面の一部が金で被覆されているものであってもよい。銀ナノプレートの表面の全て又は一部が金で被覆されたことは、電子顕微鏡による観察及び物理化学的性質の測定など、通常用いられる種々の方法によって確認することができる。例えば、銀ナノプレートの表面の全て又は一部が金で被覆されると、酸又はナトリウム若しくは塩化物イオンに対する安定性が上昇し、酸化に対して安定なものとなる。そうすると、金被覆処理後に、酸性溶液(例えば、2%過酸化水素水)又は緩衝液(例えば、10mMのリン酸緩衝生理食塩水(二価イオンあり又はなし))中という銀ナノプレートにとって過酷な条件下で銀ナノプレートの懸濁液の分光特性(最大吸収波長)を測定しても、その分光特性が水中で測定したときと比較して僅かしか変化しない場合には、その銀ナノプレートは金で被覆されていると判断できる。
また、銀ナノプレートが金で被覆されていることは、金被覆銀ナノプレート懸濁液中の金及び銀濃度を測定することによっても確認できる。具体的には、以下の手順に示すように、懸濁液を遠心分離後、上澄み液を除去し、得られた沈殿物を、除去した上澄み液と同量の超純水で再度懸濁する。そして、その懸濁液に王水を添加後、煮沸して、得られた溶液を、ICP発光分析装置を用いて分析する。
1.金被覆銀ナノプレート懸濁液を遠心分離(25,000rpm、26,000g
)後、上澄み液を除去し、得られた沈殿物を、除去した上澄み液と同量の超純水
で再度懸濁する。
2.上記工程1で得られた懸濁液に王水を添加後、5分間煮沸して、金及び銀を王水
中へ溶解させる。
3.上記工程2で得られた溶液を、ICP発光分析装置を用いて測定する。
なお、各金属の濃度は、任意濃度の標準サンプルを上述と同様に測定することで作成した検量線より算出する。
得られた各金属の濃度から、金と銀の比率が明らかとなり、銀ナノプレート表面が金で被覆されていること、そして、その金の厚さを確認することができる。例えば、三角形の銀ナノプレート上の金の厚さは、以下のようにして算出することができる。
1.ICP発光分析結果(例)
金濃度:銀濃度=1:4
2.銀ナノプレートの体積(形状:正三角形、高さ:30nm、厚さ8nmの場合)
式:(三角形の面積)×(厚さ)
=(30nm×(30×2÷√3)nm÷2)×8nm
=4157nm(=4157×10−21cm
3.銀の比重
10.51g/cm
4.三角形の銀ナノプレートの質量
式:(三角形の銀ナノプレートの体積)×(銀の比重)
=(4157×10−21cm)×10.51g/cm
=4.37×10−17
5.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の質量(X)
1:4=X:4.37×10−17
X=1.09×10−17
6.金の比重
19.32g/cm
7.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の体積
式:(金の質量)÷(金の比重)
=1.09×10−17g ÷ 19.32g/cm
=5.64×10−19cm(=564nm
8.三角形の銀ナノプレートの表面積
式:(三角形の面積)+(粒子側面の面積)
=(30×(60÷√3)÷2)×2+(8×(60÷√3))×3
=1871nm
9.三角形の銀ナノプレートに被覆している金の厚さ
式:(三角形の銀ナノプレートに被覆している金の体積)
÷(三角形の銀ナノプレートの表面積)
=564nm÷1871nm
=0.30nm(=3.0Å)
このように、ICP発光分析装置を用いた分析の結果、金濃度と銀濃度の比率が1:4であることがわかった場合には、金被覆処理を施した銀ナノプレート(形状:正三角形、高さ:30nm、厚さ8nmの粒子の場合)の表面の金の厚さは、0.30nmであると計算できる。これは、金原子が一層から二層被覆していることを意味している。
金被覆銀ナノプレートは市販品を用いてもよく、公知の製造方法や後述の実施例に記載の方法に従って製造したものを用いてもよい。
本発明では、単一種類の金被覆銀ナノプレートを用いてもよく、形状や大きさの異なる複数種類の金被覆銀ナノプレートの混合物を用いてもよい。
本発明の金被覆銀ナノプレートの懸濁液(以下、本発明の懸濁液ともいう)では、固体の金被覆銀ナノプレートが液体の分散媒中に懸濁している。
分散媒としては、金被覆銀ナノプレートを分散できるものであれば特に制限なく用いることができる。具体例としては、水、水性緩衝液(酢酸緩衝液、りん酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ほう酸緩衝液、酒石酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、HEPES緩衝液など)、エタノールやメタノール等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等が挙げられる。分散媒は、生化学実験において好適であるため、好ましくは水である。
分散媒は一種類であってもよく、複数種類の混合物であってもよい。
金被覆銀ナノプレートの懸濁液は、静置状態で金被覆銀ナノプレートが分散媒中に分散しているものであってもよく、静置状態では金被覆銀ナノプレートは沈降しているが振盪や超音波分散することにより分散媒中に分散するものであってもよい。
金被覆銀ナノプレートの懸濁液は、金被覆銀ナノプレートの製造方法を実施した結果生じた懸濁液をそのまま用いたものであってもよく(但し、後述の水溶性高分子及びpHの要件を満たしていることを条件とする)、前記の懸濁液から金被覆銀ナノプレートを分離し、次いで分散媒中に分散させたものであってもよい。
懸濁液の製造方法に特に制限はなく、公知の製造方法や後述の実施例に記載の製造方法を用いることができる。
本発明の懸濁液の銀含有率は、懸濁液の総質量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは1〜0.000015質量%、特に好ましくは0.1〜0.000015質量%である。懸濁液の銀含有率が50質量%以下であると、分散安定性の向上及び分光特性を利用した生化学試験(例えば、イムノクロマト試験)に用いた時に発色の確認(例えば、イムノクロマト試験の場合、検出ラインの目視確認)が容易になるといった効果が得られる。
本発明における水溶性高分子とは、分子量が500〜1,000,000、好ましくは500〜100,000の水溶性物質をいう。本発明に於ける水溶性とは、常温常圧下で高分子が水に0.001質量%以上溶解することをいう。
前記水溶性高分子としては、溶液又は懸濁液の凍結に対する安定性を向上するために通常用いられる種々の水溶性高分子を、特に制限されることなく用いることができる。具体例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアリルアミン、デキストラン、ポリメタクリルアミド、ポリビニルフェノール、ポリ安息香酸ビニル、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ビス(p−スルホナトフェニル)フェニルホスフィンやポリスチレンスルホン酸等があげられる。また、本発明の懸濁液中の金属微粒子と化学結合する官能基である水酸基、メルカプト基、ジスルフィド基、アミノ基などで上記具体例の水溶性高分子が修飾されていてもよい。
本発明の懸濁液に含まれる水溶性高分子の種類は、該懸濁液の用途に依存する。例えば、生体実験や細胞実験に使用する場合、生体適合性が良好なポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなどが挙げられる。
本発明の懸濁液においては、水溶性高分子の濃度が低くても、凍結に対して安定であり得る。本発明の懸濁液中に溶解又は分散している水溶性高分子の濃度(懸濁液1リットルあたりの水溶性高分子のモル数)は、50μM以下、好ましくは25μM以下、特に好ましくは10μM以下である。水溶性高分子の濃度が50μM以下であると、該濃度が50μMを超える場合と比較して、後述するような被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレートの懸濁液による該被験物質の検出感度を高めることができる。本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、水溶性高分子の濃度が50μM以下であると、例えば、被験物質に対する特異的結合物質が金被覆銀ナノプレートに良好に担持されるか、又は、被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレートが該被験物質と安定した複合体を形成するため、結果として該被験物質の検出感度が高まると考えられる。
本発明における懸濁液のpHは、本技術分野で用いられている一般的なpH測定法、例えばガラス電極法において測定された室温下(20〜30℃)におけるpHをいう。
金被覆銀ナノプレートの懸濁液のpHが6以下になると、該懸濁液の凍結又は凍結乾燥に対する安定性が高くなる。金被覆銀ナノプレートを作製したときに、その懸濁液のpHがすでに6以下であれば、該pHを維持してもよく、pH6以下の範囲内で適宜調整してもよい。また、pHが6よりも高い金被覆銀ナノプレートの懸濁液について、凍結又は凍結乾燥の処理を施す前に、そのpHを6以下に調整してもよい。本発明の懸濁液のpHは6以下であり、例えば5以下、4以下、3以下、2以下又は1以下であってもよい。
前記金被覆銀ナノプレートが、後述する被験物質に対する特異的結合物質を担持している場合には、該被験物質に対する特異的結合物質の活性のことを考慮して、適切なpHに調整してもよく、例えば、本発明の懸濁液のpHを、1以上、2以上、3以上、4以上又は5以上に調整してもよい。
ある態様では、本発明の懸濁液のpHを4〜6に調整してもよく、好ましくは約5に調整する。
本発明の懸濁液を調製するためのpH調整剤としては、溶液又は懸濁液のpHを調整するために通常用いられる種々のpH調整剤を、特に制限されることなく用いることができる。具体例としては、pHを上げる場合、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、重炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属の重炭酸塩、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素カルシウムなどのアルカリ土類金属の重炭酸塩、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びアンモニア水などの無機塩基、又は、ピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン及びヒスチジンなどの有機塩基があげられ、pHを下げる場合、塩酸、硫酸、硝酸、ほう酸、ふっ化水素酸、炭酸、過酸化水素水及びりん酸などの無機酸、又は、カルボキシル基を有するギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、安息香酸、フタル酸及びグルクロン酸、スルホン酸基を有するメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸、その他フェノールなどの有機酸をあげることができる。また、酢酸緩衝液、りん酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ほう酸緩衝液、酒石酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、HEPES緩衝液などの緩衝液を用いて、pHを調整してもよい。
また、pHが6以下であると、被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレートの懸濁液による被験物質の検出感度も高くなる。
本発明の懸濁液は、金被覆銀ナノプレートへ悪影響を与えない限り任意の成分を含んでいてもよい。任意成分としては、金被覆銀ナノプレートの製造方法を実施する際に用いた試薬(例えば、水素化ホウ素ナトリウムやアスコルビン酸)や、分散剤(例えば、クエン酸三ナトリウム)等があげられる。
本発明の懸濁液は、凍結耐性が高い、すなわち凍結又は凍結乾燥に対して安定である。凍結又は凍結乾燥に対して安定とは、これらの処理を施しても、凍結時の温度や使用するpH調整剤の種類によらず、凍結融解後又は再構成後も、該懸濁液が凍結又は凍結乾燥前と変わらない分光特性(例えば、消光度又は吸光度のスペクトルパターン)を有することをいう。
前記凍結の手段としては、通常用いられる種々の手段を、特に制限されることなく用いることができる。例えば、−20℃の冷凍庫内で凍結してもよく、−198℃の液体窒素内で凍結してもよく、−79℃のドライアイスで冷やした冷媒(例えば、アセトン)内に懸濁液の入った容器を浸し凍結してもよい。調製された凍結物は、室温、又は、水浴若しくはインキュベーターなど温度を一定に制御可能な又は温度を可変可能な装置で融解して、再度懸濁液とすることができる。
前記凍結乾燥の手段としては、通常用いられる種々の手段を、特に制限されることなく用いることができる。例えば、凍結乾燥機で凍結乾燥してもよく、簡易な方法として、懸濁液の凍結物が入った容器内を真空ポンプで減圧し、該凍結物内の水分を昇華させ、凍結乾燥してもよい。調製された凍結乾燥物は、水道水、イオン交換水、蒸留水、超純水、又は、各種緩衝液やpH調整剤でpH調整された水などで再構成して、再度懸濁液とすることができる。また、再構成の際に超音波によって懸濁液内の固形物を粉砕してもよい。
凍結後に融解して調製された懸濁液又は凍結乾燥後に再構成して調製された懸濁液を、さらに凍結又は凍結乾燥してもよい。
本発明の金被覆銀ナノプレートは、被験物質に対する特異的結合物質を担持してもよい。用語「担持」は、共有結合若しくは非共有結合又は直接的若しくは間接的な結合などの様式にかかわらず、金被覆銀ナノプレートと被験物質に対する特異的結合物質とが結合して複合体を形成していることを意味している。担持の方法としては、通常の担持方法を特に制限なく用いることができ、物理吸着、化学吸着(表面への共有結合)、化学結合(共有結合、配位結合、イオン結合又は金属結合)等を利用して、金被覆銀ナノプレートと被験物質に対する特異的結合物質とを直接的に結合させる方法や、金被覆銀ナノプレートの表面に後述する水溶性高分子の一部を結合させて、該水溶性高分子の末端又は主鎖若しくは側鎖に、直接的又は間接的に被験物質に対する特異的結合物質を結合させる方法を採用することができる。例えば、被験物質に対する特異的結合物質が抗体である場合には、本発明の懸濁液と抗体の溶液とを混合し、振盪し、遠心分離することで、抗体を担持した金被覆銀ナノプレートを沈殿物として得ることができる。
前記被験物質に対する特異的結合物質としては、検出の対象である被験物質を、該被験物質との複合体形成により検出できるものであれば、特に制限されることなく採用することができる。
被験物質が抗原である場合には、該抗原に対する特異的結合物質は抗体であってもよい。前記抗体は、前記抗原に対して特異的に結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体又はそれらの断片であってもよく、該断片は、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab’)フラグメント又はF(v)フラグメントであってもよい。被験物質としての抗原は、B型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)、アスペルギルス・フラバスのアフラトキシン(B1、B2、G1、G2又はM1など)、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン又は溶連菌のストレプトリジンOなどの病原性微生物が有する物質であってもよく、C反応性タンパク質(CRP)、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン又は絨毛性ゴナドトロピンなどの生体内物質であってもよく、血液型抗原などの糖鎖抗原であってもよい。そして、被験物質がホルモン又はサイトカインなどの生体内物質である場合には、該生体内物質に対する特異的結合物質は、抗体だけでなく受容体であってもよく、被験物質が糖鎖抗原である場合には、該糖鎖抗原に対する特異的結合物質は、抗体だけでなくレクチンであってもよい。
被験物質が抗体である場合には、該抗体に対する特異的結合物質は抗原であってもよい。前記抗原は、前記抗体に対して特異的に結合する抗原全体又はその断片であってもよく、それらを他の担体と結合した融合物質であってもよい。被験物質としての抗体は、抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体又は抗リン脂質抗体などの自己抗体であってもよく、抗クラミジア抗体、抗HIV抗体又は抗HCV抗体などの外来抗原に対する抗体であってもよい。
被験物質が糖鎖である場合には、該糖鎖に対する特異的結合物質はレクチンであってもよい。前記レクチンは、前記糖鎖に特異的に結合するガレクチン、C型レクチン、マメ科レクチン又はそれらの断片であってもよい。被験物質としての糖鎖は、単糖又は多糖であってもよく、それらがタンパク質又は脂質に結合した複合糖質であってもよい。例えば、被験物質がマンノースを含む糖鎖である場合には、該糖鎖に対する特異的結合物質としてマメ科レクチンのコンカナバリンA(ConA)を使用することができる。
被験物質がレクチンである場合には、該レクチンに対する特異的結合物質は糖鎖であってもよい。前記糖鎖は、前記レクチンに特異的に結合する単糖、多糖、複合糖質又はそれらが他の担体と結合した融合物質であってもよい。被験物質としてのレクチンは、ガレクチン、C型レクチン又はマメ科レクチンであってもよい。例えば、被験物質がマメ科レクチンのコンカナバリンA(ConA)である場合には、該レクチンに対する特異的結合物質としてマンノースを含む糖鎖を使用することができる。
被験物質と該被験物質に対する特異的結合物質の組み合わせは、上述した例の他にも、ホルモン又はサイトカインとそれに結合する受容体、受容体とそれに結合するホルモン又はサイトカイン、酵素とそれに結合する基質、基質とそれに結合する酵素、ビオチンとアビジン又はストレプトアビジン、アビジン又はストレプトアビジンとビオチン、IgGとプロテインA又はプロテインG、プロテインA又はプロテインGとIgG、あるいは、第1の核酸とそれに結合する第2の核酸であってもよい。前記第2の核酸は、前記第1の核酸と相補的な配列を含む核酸であってもよい。
前記被験物質を検出する場合には、本発明の懸濁液を該被験物質と混合して、該被験物質と該被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレートとの複合体を形成する工程、及び、該複合体を検出する工程を含む方法で検出してもよい。
前記複合体は、被験物質の検出の分野で通常用いられる手段又は凝集物若しくは沈殿物を検出するのに通常用いられる手段を、特に制限なく利用することによって検出することができる。例えば、前記複合体の形成を、消光度測定、吸光度測定、濁度測定、粒度分布測定、粒子径測定、ラマン散乱光測定、色調変化の観察、凝集又は沈殿形成の観察、イムノクロマトグラフィー、電気泳動、及び、フローサイトメトリーから成る群から選択される手段によって検出してもよい。
吸光度は、平行光線が物体中を透過するときの該物体の光吸収の強さをいうが(狭義の吸光度)、実測にあたっては、該物体の表面での反射又は散乱などによる光の損失も考慮する必要がある(広義の吸光度)。光の吸収、反射及び散乱などのあらゆる要因による光の損失の強度を意味する広義の吸光度を、本明細書では特に消光度という。被験物質と該被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレートとの複合体が形成すると、該金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長前後の波長領域における消光度又は吸光度が減少する。
消光度測定又は吸光度測定は、200〜2500nmの範囲の波長領域で行ってもよく、430〜2000nmの範囲の金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長において行ってもよい。消光度又は吸光度は、これらの測定のために通常用いられる紫外可視分光光度計(例えば、紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PC、株式会社島津製作所)などによって測定してもよい。
被験物質と該被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレートとの複合体が形成すると、該金被覆銀ナノプレート同士が該被験物質を介して架橋され、単独の金被覆銀ナノプレートよりも粒子径が大きくなる。懸濁液中に分散している粒子の粒子径が大きくなると、該懸濁液に入射する光の吸収、反射又は散乱が増大し、該懸濁液は濁りを示す。濁りを示す懸濁液での光の吸収、反射又は散乱は、消光度又は吸光度として測定することができ、このような濁り度合いに依存して上昇する消光度又は吸光度を濁度ともいう。
本発明の懸濁液においては、被験物質と該被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレートとの複合体が形成することで複数の粒子が隣接して存在する場合、双極子−双極子相互作用により金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長よりも長波長側に、前記複合体の形成に依存して消光度又は吸光度が上昇する波長領域が存在している(Nano Lett., Vol. 4, No. 9, (2004), p.1627-1631)。この波長領域における消光度又は吸光度を濁度として測定することにより、前記複合体を検出してもよい。例えば、金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長が458nmである場合には、560〜730nmの波長領域において濁度測定を行ってもよく、金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長が532nmである場合には、630〜810nmの波長領域において濁度測定を行ってもよく、金被覆銀ナノプレートの最大吸収波長が630nmである場合には、730〜900nmの波長領域において濁度測定を行ってもよい。濁度は、その測定のために通常用いられる紫外可視分光光度計(例えば、紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PC、株式会社島津製作所)又は濁度計などによって測定してもよい。
本発明の懸濁液は、前記被験物質を検出する方法に使用するためのキットに含めてもよい。該キットは、被験物質の標準品、イムノクロマト試験紙、又は、使用方法を記載した取扱説明書をさらに含んでもよい。
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
1.金属微粒子懸濁液の作製
1−1.銀ナノプレートの作製
1−1−1.銀ナノプレートの種粒子の作製
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液20mLに、0.5g/Lの分子量70,000ポリスチレンスルホン酸水溶液1mLと、10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液1.2mLとを添加し、次いで、20mL/minで攪拌しながら、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを添加した。得られた溶液をインキュベーター(30℃)中に60分間静置し、銀ナノプレートの種粒子の水懸濁液を作製した。
1−1−2.銀ナノプレート懸濁液Aの作製
蒸留水200mlに、10mMのアスコルビン酸水溶液4.5mLを添加し、上述の銀ナノプレートの種粒子の水懸濁液4mlを添加した。得られた溶液に、0.5mMの硝酸銀水溶液120mLを30mL/minで攪拌しながら添加した。硝酸銀水溶液の添加が終了した4分後に攪拌を停止し、25mMのクエン酸ナトリウム水溶液20mlを添加し、得られた溶液を大気雰囲気下のインキュベーター(30℃)中に100時間静置し、プレート状銀ナノ粒子の水分散液である銀ナノプレート懸濁液Aを調製した。
1−2.金被覆銀ナノプレートの作製
1−2−1.金被覆銀ナノプレート懸濁液Aの作製
上記銀ナノプレート懸濁液A 120mlに、0.125mMのポリビニルピロリドン(PVP)(分子量:40,000)の水溶液9.1mlを添加し、0.5Mのアスコルビン酸水溶液1.6mlを添加した後、0.16mMの塩化金酸水溶液9.6mlを0.5mL/minで攪拌しながら添加した。得られた溶液をインキュベーター(30℃)中に24時間静置し、金被覆銀ナノプレート懸濁液Aを調製した。
金被覆銀ナノプレート懸濁液Aの主要分散媒は水であった。
金被覆銀ナノプレート懸濁液Aに含まれる金被覆銀ナノプレートは、主面の最大長(粒子径)の平均が31nmの三角形状を含む多角形状、円形状であるプレートの混合物であり、厚さの平均は8nmであった。また、金被覆銀ナノプレート懸濁液Aに含まれる金被覆銀ナノプレートにおける金の厚さの平均は、HAADF−STEMによれば、0.30nmであった。
金被覆銀ナノプレート懸濁液Aにおけるポリスチレンスルホン酸の濃度は0.98nMであった。
金被覆銀ナノプレート懸濁液AにおけるPVPの濃度は8.1μMであった。なお、金の厚みの平均は、HAADF−STEM像から任意の金被覆ナノプレート粒子10個について、各粒子の任意の部位10点について、金の厚みを測定した計100点のデータの内、上下10%を除いた80点の平均値を用いた(後述の金被覆銀ナノプレート懸濁液B及びCも同様)。
金被覆銀ナノプレート懸濁液AのpHは、室温下(20℃)で4.0であった。pH測定は株式会社堀場製作所のtwinpHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた(以下、同様)。
金被覆銀ナノプレート懸濁液Aの銀含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0016質量%であった。
1−3.金被覆銀ナノプレート懸濁液のpH調整
1−3−1.pH5〜8に調整された金被覆銀ナノプレート懸濁液(懸濁液B〜E)の調製(pH調整剤:炭酸ナトリウム)
1−2−1で得られた金被覆銀ナノプレート懸濁液A 10mLに190mMの炭酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら添加し、金被覆ナノプレート懸濁液のpHを調整した。190mMの炭酸ナトリウム水溶液の添加量及び作製した懸濁液のpHを表1に示す。
Figure 0006051476
懸濁液B、C、D及びEの主要分散媒は水であった。
懸濁液B、C、D及びEに含まれる金被覆銀ナノプレートは、主面の最大長の平均が31nmの三角形状を含む多角形状、円形状であるプレートの混合物であり、厚さの平均は8nmであった。また、懸濁液B、C、D及びEに含まれる金被覆銀ナノプレートにおける金の厚さの平均は、HAADF−STEMによれば、0.30nmであった。
懸濁液B、C、D及びEにおけるポリスチレンスルホン酸の濃度は0.94nMであった。
懸濁液B、C、D及びEにおけるPVPの濃度は7.8μMであった。
懸濁液B、C、D及びEの銀含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0015質量%であった。
1−3−2.pH5〜8に調整された金被覆銀ナノプレート懸濁液(懸濁液F〜I)の調整(pH調整剤:水酸化ナトリウム)
1−2−1で得られた金被覆銀ナノプレート懸濁液A 5mLに190mMの水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら添加し、金被覆ナノプレート懸濁液のpHを調整した。190mMの炭酸ナトリウム水溶液の添加量及び作製した懸濁液のpHを表2に示す。
Figure 0006051476
懸濁液F、G、H及びIの主要分散媒は水であった。
懸濁液F、G、H及びIに含まれる金被覆銀ナノプレートは、主面の最大長の平均が31nmの三角形状を含む多角形状、円形状であるプレートの混合物であり、厚さの平均は8nmであった。また、懸濁液F、G、H及びIに含まれる金被覆銀ナノプレートにおける金の厚さの平均は、HAADF−STEMによれば、0.30nmであった。
懸濁液F、G、H及びIにおけるポリスチレンスルホン酸の濃度は0.94nMであった。
懸濁液F、G、H及びIにおけるPVPの濃度は7.8μMであった。
懸濁液F、G、H及びIの銀含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0015質量%であった。
2.凍結物及び融解懸濁液又は再構成懸濁液の作製
2−1.凍結物の作製
2−1−1.作製条件:−20℃
金被覆銀ナノプレート懸濁液Aを20mL容バイヤル瓶に10mL注入後蓋をし、−20℃下(冷凍庫内)で一晩静置して凍結し、凍結物Aを得た。金被覆銀ナノプレート懸濁液B、C、D、E、F、G、H及びIも同様に凍結し、凍結物B、C、D、E、F、G、H及びIを得た。
2−1−2.作製条件:−198℃
金被覆銀ナノプレート懸濁液Aを20mL容バイヤル瓶に10mL注入後、キムワイプで瓶の口を覆い、輪ゴムで止め、−198℃下(液体窒素内)に5分間浸し、凍結物Aを得た。金被覆銀ナノプレート懸濁液B、C、D、E、F、G、H及びIも同様に凍結し、凍結物B、C、D、E、F、G、H及びIを得た。
2−2.凍結融解懸濁液の作製
上記2−1−1で作製した凍結物A、B、C、D、E、F、G、H及びIを室温(24℃)下で2時間静置して融解し、凍結融解懸濁液A、B、C、D、E、F、G、H及びIを作製した。上記2−1−2で作製した凍結物A、B、C、D、E、F、G、H及びIも同様に融解し、凍結融解懸濁液A、B、C、D、E、F、G、H及びIを作製した。
2−3.凍結乾燥物の作製
上記2−1−2のように凍結物Aを作製後、直ちに真空ポンプ(佐藤真空株式会社製、TSW−50)を使用して減圧した。6時間減圧下で水を昇華させ、凍結乾燥物Aを得た。
2−4.再構成懸濁液の作製
上記2−3で作製した凍結乾燥物Aの入った50mL容ナス型フラスコに10mLの超純水を注入し、再構成懸濁液Aを作製した。
3.各種懸濁液の評価
3−1.分光特性測定
3−1−1.金被覆銀ナノプレート懸濁液の分光特性測定
金被覆銀ナノプレート懸濁液A〜Iを超純水で3.4倍希釈し、分光特性を測定した。分光特性の測定は、紫外可視近赤外分光光度計(装置名:紫外可視近赤外分光光度計 MPC3100UV−3100PC、製造元:株式会社島津製作所)を用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で実施した。分光特性の測定結果を図1及び2に示す。
金被覆銀ナノプレート懸濁液A〜Iの消光度のスペクトル(吸収スペクトル)は、最大吸収波長にわずかな相違が見られるものの、ほとんど同じパターンを示した(図1及び2)。このことは、調整するpH及びpH調整剤の種類によっては、金被覆銀ナノプレートの懸濁液の分光特性はほとんど変化しないことを示している。
3−1−2.凍結融解懸濁液の分光特性測定
上記2−2の凍結融解懸濁液A〜I及びA〜Iを超純水で3.4倍に希釈し、分光特性を測定した。分光特性の測定は、3−1−1と同様の条件で実施した。分光特性の測定結果を図3〜6に示す。また、凍結前の懸濁液の消光度と比較した凍結融解後の消光度の保持率及び最大吸収波長の変化量を、表3〜6にまとめた。
Figure 0006051476
Figure 0006051476
Figure 0006051476
Figure 0006051476
凍結融解の前と後では、金被覆銀ナノプレートの懸濁液の最大吸収波長はほとんど同じだった。金被覆銀ナノプレートの懸濁液のpHを、調製時のpH4でそのまま維持して又は炭酸ナトリウムによってpH5又は6に調整して、−20℃又は−198℃で凍結後に融解すると、炭酸ナトリウムによってpH7又は8に調整した場合と比較して、融解後の消光度保持率が高かった(図3及び4、表3及び4)。また、金被覆銀ナノプレートの懸濁液のpHを、調製時のpH4でそのまま維持して又は水酸化ナトリウムによってpH5又は6に調整して、−20℃又は−198℃で凍結後に融解すると、水酸化ナトリウムによってpH7又は8に調整した場合と比較して、融解後の消光度保持率が高かった(図5及び6、表5及び6)。
3−1−3.再構成懸濁液の分光特性測定
上記2−4で作製した再構成懸濁液Aを超純水で3.4倍に希釈し、分光特性を測定した。分光特性の測定は3−1−1と同様の条件で実施した。分光特性の測定結果を図7に示す。また、凍結前の懸濁液の消光度と比較した再構成後の消光度の保持率及び最大吸収波長の変化量を、表7にまとめた。
Figure 0006051476
金被覆銀ナノプレートの懸濁液のpHが6以下である場合には、それを凍結乾燥後に再構成しても、凍結乾燥前の消光度を高く保持していた。
以上より、金被覆銀ナノプレートの懸濁液のpHを6以下に維持又は調整すれば、凍結又は凍結乾燥処理を施しても、凍結時の温度や使用するpH調整剤の種類によらず、該懸濁液が凍結又は凍結乾燥に対して安定化され、凍結融解後又は再構成後も凍結又は凍結乾燥前の消光度を保持できること、すなわち分光特性が変わらないことがわかった。
本発明は、金被覆銀ナノプレートの懸濁液の分野で利用することができる。本発明の懸濁液を用いることにより、金被覆銀ナノプレート(又は被験物質に対する特異的結合物質を担持した金被覆銀ナノプレートの懸濁液)の懸濁液の凍結又は凍結乾燥が可能となるので、該懸濁液の保管又は運搬が容易になり、かつ、イムノクロマトキット作製時などの凍結乾燥工程にも耐性を持つようになる。

Claims (11)

  1. 金被覆銀ナノプレート及び水溶性高分子を含む懸濁液であって、
    pHが6以下であることを特徴とする、懸濁液。
  2. pHが4〜6である、請求項1に記載の懸濁液。
  3. pHを、金被覆銀ナノプレート作製時からそのまま維持した、又は、無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸及び緩衝液から成る群から選択されるpH調整剤によって調整した、請求項1又は2に記載の懸濁液。
  4. 前記金被覆銀ナノプレート上の金の厚みの平均が、1.0nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の懸濁液。
  5. 前記金被覆銀ナノプレート上の金の厚みの平均が、0.1〜0.7nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の懸濁液。
  6. 前記水溶性高分子の濃度が、50μM以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の懸濁液。
  7. 前記水溶性高分子の濃度が、25μM以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の懸濁液。
  8. 前記金被覆銀ナノプレートが、被験物質に対する特異的結合物質を担持している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の懸濁液。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の懸濁液の凍結物又は凍結乾燥物。
  10. 金被覆銀ナノプレート及び水溶性高分子を含む懸濁液を凍結又は凍結乾燥に対して安定化する方法であって、
    該懸濁液のpHを6以下に維持又は調整する工程を含むことを特徴とする、方法。
  11. 前記pH維持又は調整工程において、前記懸濁液のpHを4〜6に調整する、請求項10に記載の方法。
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