本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
図1は第一実施形態を説明する図で、回折構造体10の構成を模式的に示す断面図である。回折構造体10は、第一層11及び第二層12を有し、第一層11と第二層12との界面に凹凸による回折構造10aが形成されている。本実施形態の回折構造10aはいわゆるレリーフ型ホログラムである。このように、本実施形態では回折構造体が具備する回折構造をレリーフ型ホログラムとした。しかしながら本発明はこれに限定されることなく、回折を利用して光を拡散させる機能を発揮することができれば他の回折構造を有する回折構造体としてもよい。他の回折構造としては、回折格子(グレーティング)、フレネルレンズ等の回折光学素子(DOE等)、体積型ホログラム、又は、任意のパターンが連続的に配置され、回折現象を発現する構造等を挙げることができる。
第一層11は、透光性を有する基材層の一方の面上にレリーフ型ホログラム形状10a(回折構造10a)を有する層が積層されて形成されている。基材層となる材料は、透明性、及び平滑性が高いものが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等を挙げることができる。基材層の厚さは1μm〜1mmが好ましく、より好ましくは10μm〜100μmである。
また、ホログラム形状10aを有する層は、生産性の観点から、硬化前にホログラム形状とし、何らかの手段でこれを硬化させることで形状を固定できる材料であることが好ましい。例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系化合物、不飽和ポリエステル系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物等からなるラジカル重合性プレポリマー、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和単量体等の中から選択した1種乃至2種以上からなる組成物からなる電離放射線硬化性樹脂を挙げることができる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又メタクリレートを意味する。
硬化に用いる電離放射線としては、紫外線、X線、可視光線等の電磁波、或いは電子線、イオン線等の荷電粒子線が用いられる。特に、電離放射線として紫外線を採用する場合、該電離放射線硬化性樹脂は紫外線硬化性樹脂と呼ばれる。
その他、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
またホログラム形状10aを有する層は第二層12より高い屈折率の材料で構成されている。
第二層12は、第一層11のうち、ホログラム形状10aを有する側の面に積層され、第一層11との界面にホログラム形状10aが形成される。また、第二層12は第一層11のホログラム形状10aを有する層より低い屈折率の材料で構成されている。
第二層12を構成する材料は透明性が高く、ホログラム形状10aに追随させるため、硬化前に第一層11に塗布する等して積層してから硬化させることができるものが好ましい。例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系化合物、不飽和ポリエステル系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物等からなるラジカル重合性プレポリマー、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和単量体等の中から選択した1種乃至2種以上からなる組成物からなる電離放射線硬化性樹脂を挙げることができる。
硬化に用いる電離放射線としては、紫外線、X線、可視光線等の電磁波、或いは電子線、イオン線等の荷電粒子線が用いられる。特に、電離放射線として紫外線を採用する場合、該電離放射線硬化性樹脂は紫外線硬化性樹脂と呼ばれる。
その他、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
なお、第二層12は第一層11のホログラム形状10aを有する層より低い屈折率の粘着剤により構成してもよい。粘着剤としてはアクリル樹脂系、シリコン樹脂系のものを適用することができる。該粘着剤の屈折率を低くする為に該粘着剤中に弗素系樹脂、弗化マグネシウム微粒子等の低屈折率材料を添加しても良い。第一層11と第二層12との屈折率差を実現する為の手段としては、第一層11中に、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン等の高屈折率材料からなる微粒子を添加することもできる。これら、低屈折率材料及び高屈折率材料の微粒子の平均粒子径は、可視光線波長域に於ける十分な透明性を確保する為に、可視光線の最短波長(380nm)以下、好ましくは、10nm〜200nmの範囲とする。第一層11と第二層12の屈折率差を十分大きくする場合は、両層の一方に高屈折率材料を添加し、かつ他方に低屈折率材料を添加することが好ましい。
ここで、第一層11のホログラム形状を有する層と、第二層12との屈折率差は特に限定されることはないが、0.1以上であることが好ましい。
本実施形態ではこのように第二層12を設けたが、本発明では必ずしも第二層を設ける必要はなく、少なくとも第一層11が設けられていればよい。ただし、凹凸形状により回折構造を形成する場合には、当該第二層により次のような効果を奏するものとなる。
すなわち、第二層12を設けることにより、ホログラム形状10aが第一層11と第二層12との界面に配置され、回折構造体10の表面にあらわれない。これにより、回折構造体10の表面は平滑面となり、他の部材に回折構造体10を積層させる際にもホログラム形状10aが存在することに配慮する必要がない。また、当該平滑面を利用して液晶表示装置の画面表層を光沢のある面とすることも可能である。さらに、ホログラム形状10aの一方と他方は必ず第一層11及び第二層12であり、回折構造体10をどのような層に積層させたとしてもホログラム形状10aを挟む一方と他方の材料が変化することがない。従って、回折構造体10がどのような層に積層されたかによらず同様の回折を得ることが可能である。
次に本実施形態に具備されるホログラム形状10aについて説明する。ホログラム形状10aは、第一層11側からの入射光を第二層12側に所定の範囲に拡散させるように出射可能な形状とされている。具体的には、回折構造体10を液晶表示装置100(図10参照)に配置し、矩形である回折構造体10の4つの辺のうち2つの辺を水平に、他の2つの辺を鉛直である姿勢(鉛直の姿勢)としたときに、該回折構造体10は、正面、水平面内となる方向及び垂直面内となる方向の視野角にのみ輝度分布が生じるように光を拡散させる。
従って液晶表示装置100では、観察者が画面を見る際には正面、水平面内、垂直面内の視野角で映像や画像を観察することができればよく、観察者にとって重要でない斜め方向面内の視野角に対して映像光の出射を抑制することができる。従って、不要な光の出射を抑制することができるので、光源からの光の利用効率を向上させることができる。また、回折を利用することにより光を拡散させるので、光散乱材等の屈折を利用する視野角拡大部材の場合に問題となっていた外光の後方散乱に起因するコントラスト低下、及び像の鮮明度が低下するいわゆる像ボケを防止することができる。
ここで、回折構造体10への入射光は、該回折構造体10の入射面法線に対して略平行であることを想定できる。具体的には、後述する液晶表示装置100のように、面光源装置110において光の方向が該法線方向に強く偏向されると共に、収束、平行化されて、回折構造体10の当該法線方向に略平行である光が該回折構造体10に入射するような場合である。このときの「略平行」とは、回折構造体10の入射面の法線方向に対して、半値角度が0°〜15°の範囲内の光を意味する。従って、回折構造体10への入射光が、半値角度で±1°〜±15°の広がりを有するものであっても上記した所望の光の拡散ができることが好ましい。
このようなホログラム形状10aは、上記のような機能を発揮するものであれば特に限定されることはないが、その中でも計算機ホログラムであることが好ましい。計算機ホログラムによれば出射光の拡散範囲や拡散の態様を任意に設定することができ、所望の光拡散特性を得ることができる。以下、本実施形態におけるホログラム形状10aについて、計算機ホログラムによるものを複数の例を挙げて説明する。
初めに第一の例にかかるホログラム形状10aによる光拡散特性を説明する。図2は当該第一の例にかかるホログラム形状10aによる光拡散特性を説明する図である。図2(a)〜図2(c)は、回折構造体10の視野角と輝度との関係を示す図である。より詳しくは、回折構造体10を液晶表示装置100(図10参照)に配置し、矩形である回折構造体10の4つの辺のうち2つの辺を水平に、他の2つの辺を鉛直である姿勢(鉛直の姿勢)として立てたときにおける視野角と輝度との関係を示した図である。図2(a)は水平面内における視野角と輝度との関係、図2(b)は垂直面内における視野角と輝度との関係、及び図2(c)は斜め45°の面内における視野角と輝度との関係である。当該第一の例のホログラム形状10aによれば、第一層11側から入射した光を回折して拡散するに際して、視野角0°付近(すなわち正面方向)において、高い輝度を有して光を出射することがわかる。それに加えて、水平方向面内及び垂直方向面内では視野角±30°〜±40°において輝度を有している。一方、斜め45°の面内では、視野角0°付近以外ではこのような輝度を有していない。従って、第一の例によれば、正面方向、水平面内の±30°〜±40°、及び垂直面内の±30°〜±40°において明るい映像光を観察することができる。
このような光拡散特性を得るためには、視野角0°付近の輝度は回折の0次光を利用し、水平面内の±30°〜±40°、及び垂直面内の±30°〜±40°の輝度は回折の1次光を利用することができる。従って計算機ホログラムの形状を得るに際しては1次光が所望の角度に回折するように構成すればよい。図3に説明のための図を示した。図3は、上記した光拡散特性のうち、1次光に関するものを表したグラフである。横軸が水平面内視野角、縦軸が垂直面内視野角である。図3に斜線で示した部分が1次光により輝度が得られるべき角度範囲である。従って、上記説明した光拡散特性は図3のように表すこともできる。そして図3に表した図に基づいてフーリエ変換により最終的にホログラム形状を得るための元となる図を得て、これに対してフーリエ変換等を施すことにより、最終的に上記した光拡散特性を具備する計算機ホログラムのホログラム形状を得ることができる。図3を用いてどのように具体的なホログラム形状10aを得るかについては後で説明する。
ここで、0次光の輝度の大きさ(視野角0°における輝度)に対する1次光の輝度の大きさ(視野角±30°〜40°における輝度)の割合は特に限定されることはないが、1次光の輝度の大きさは0次光の輝度の大きさに対して0.1倍以上であることが好ましい。
また、第一の例では、水平面内視野角±30°〜±40°における輝度と、垂直面内視野角±30°〜±40°における輝度と、は同じとなるように構成されているが(図2(a)、図2(b)参照)、垂直面内視野角±30°〜±40°の輝度よりも水平面内視野角±30°〜±40°の輝度を大きくしてもよい。これによれば回折構造体10を例えば据え置き型の液晶表示装置に配置した場合には、水平面内輝度分布が特に重要であることから、これに見合った光拡散特性とすることが可能である。
次に、第二の例にかかるホログラム形状10aによる光拡散特性を説明する。図4、図5には当該第二の例にかかるホログラム形状10aを説明する図のうち、図3に相当する図を示した。図4、図5のうち、図4に示した例は、水平面内視野角及び垂直面内視野角において複数の角度範囲で輝度が高くなる例である。より具体的には、0次光により正面で輝度が高いことに加え、1次光により水平面内及び垂直面内の±30°〜±40°、±60°〜±70°の範囲で輝度が高くなる。
一方、図5に示した例では、水平面内視野角及び垂直面内視野角において上記第一の例よりも広い角度範囲で輝度が高くなる例である。より具体的には、0次光により正面で輝度が高いことに加え、1次光により水平面内及び垂直面内の±30°〜±70°の範囲で輝度が高くなる。
このように第二の例では、水平面内及び垂直面内においてより広い範囲で光を拡散するホログラム形状が形成され、液晶表示装置に適用した場合にはこれに応じた広い視野角を得ることが可能となる。
次に第三の例にかかるホログラム形状10aによる光拡散特性を説明する。図6には当該第三の例にかかるホログラム形状10aを説明する図のうち、図3に相当する図を示した。図6に示した例では、第一の例で説明した視野角に加え、−10°〜+10°の範囲も輝度が高くなる。すなわち正面から水平面内±45°、及び正面から垂直面内の±45°まで連続的に光を拡散するようにホログラム形状10aが形成されている。従って液晶表示装置に適用した場合には、これに応じて正面から水平面内±45°及び正面から垂直面内±45°の範囲で連続的に映像を観察可能となる。
次に第四の例にかかるホログラム形状10aによる光拡散特性を説明する。図7に説明のための図を示した。図7の上段は、本例における水平面内輝度分布を示したものである。ここで、視野角0°に最大輝度を有する輝度分布が0次光によるもの、視野角0°でない角度に最大輝度を有する輝度分布は1次光によるものである。図7の下段は、このような輝度分布を実現するためのホログラム形状10aを得るための図で、図3に相当する図である。図7からわかるように、本例では、1次光の最大輝度となる視野角が、0次光の半値角(最大輝度に対して輝度が半分になる視野角の位置)よりも外側の視野角となるように構成されている。
このような光拡散特性を有するホログラム形状によれば、0次光と1次光との連続性を向上させることができる。従って液晶表示装置にこれを適用する場合には、正面から水平面内、及び正面から垂直面内に向けて連続的に映像を観察可能となる。
図7及び上記説明では水平面内視野角についてのみ説明したが、垂直面内視野角についても同様である。
以上説明した各例では、回折構造体10に入射する光が水平面内方向と垂直面内方向とで同様の広がりを有しているものとして説明した。しかしながら、回折構造体10を液晶表示装置に用いた場合においては、回折構造体10に入射する光が必ずしも水平面内方向と垂直面内方向とで同様の広がりを有しているとは限らない。このように入射光が方向によって異なる広がりを有している場合(例えば楕円状)には、このまま上記した回折構造体10を適用すると、水平面内と垂直面内とで、光を拡散する範囲が異なってしまう場合もある。これに対しては、予め当該入射光の特性を考慮して、水平面内と垂直面内とで同様の光拡散範囲を可能とするようにホログラム形状10aを補正しておくこともできる。また、このような水平面内と垂直面内とで光を拡散する範囲が異なることを利用し、所望の光拡散特性を得ることができるようにホログラム形状を形成しておくこともできる。
また、以上説明した各例は例示であり、上記の他にも所望の光拡散特性を得るためのホログラム形状を形成することが可能である。本実施形態では回折における0次光と1次光のみを考慮したが、2次光以上の高次光が考慮されてもよい。
次に、第二実施形態について説明する。図8は第二実施形態を説明する図で、回折構造体20の構成を模式的に示す断面図である。回折構造体20は、第一層11及び第二層22を有し、第一層11と第二層22との界面に凹凸による回折構造10a(ホログラム形状10a)が形成されている。ここで回折構造はいわゆるレリーフ型ホログラムである。本実施形態では第二層22の形態が、回折構造体10の第二層12とは異なるのみであり、他の構成については同様であることから、ここでは第二層22についてのみ説明し、他の部材については同じ符号を付すとともに、説明を省略する。
第二層22は、第一層11のうち、ホログラム形状10aを有する側の面に積層され、第一層11との界面にホログラム形状が形成される。また、第二層22は、透光性を有する主部22a内に光散乱材22bが分散されて構成されている。光散乱材22bは、主部22a内を進む光に対し、反射や屈折等によって、当該光の進行方向を変化させる作用を及ぼす。
より具体的には、主部22aは、第一層11のホログラム形状10aを有する層より低い屈折率の材料で構成されている。主部22aを構成する材料は透明性が高く、ホログラム形状に追随させるため硬化前に第一層11に塗布する等して積層してから硬化させることができるものが好ましい。例えば前記で列記した電離放射線硬化性樹脂等を挙げることができる。
一方、光散乱材22bの光散乱機能は、例えば、主部22aをなす材料とは異なる屈折率を有した材料とすることにより発揮可能である。その他、光に対して反射作用を及ぼし得る材料であってもよい。これには例えば、平均粒径が0.5μm〜100μm程度であるシリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の透明物質からなる粒子を用いることができる。
回折構造体20によれば、上記した回折構造体10で説明した効果に加えて次のような効果がある。すなわち、第二層22に光散乱材22bを含めることにより、ホログラム形状10aにおける回折に起因して波長分散が生じた場合であっても、これを第二層22の光散乱機能により、混ぜ合わせることができる。従って、観察角度によって色彩が変化して見えてしまう不具合を解消することが可能となる。また、回折構造体10により強く指向性が付与された回折散乱光に対して光散乱材によりその指向性を緩和し、0次光と1次光、又は1次光同士の光の拡散の連続性を向上させることができる。
以上説明した計算機ホログラムは、上記した各光学的機能を有する複数の微小な単位計算機ホログラムが並べられて複合化されたもの、又は単位計算機ホログラムが複眼状に配列されたものである。例えば、単位計算機ホログラムを正方形で形成して、複数の該正方形の単位計算機ホログラムを縦横格子状に密に配列したものや、縦又は横を一列置きに半ピッチずらせていわゆる千鳥状に配列したものを挙げることができる。また、単位計算機ホログラムを隙間なく密に配置するのではなく、所定の間隙を有してまばらに配置したり、所定のパターンに基づいて配置する態様も考えられる。もちろん単位計算機ホログラムの形状は正方形に限られることもなく、長方形やその他の多角形を含めて任意の形状で形成してもよい。さらに、1つの計算機ホログラムに含まれる単位計算機ホログラムの形状や配列形態は必ずしも一定である必要はなく、場所により変えられてもよい。
次に、回折構造体10の製造方法について一例を説明する。回折構造体10は、回折構造の具体的形状を得る工程、得られた回折構造に基づいて型を作製する工程、当該型を用いて回折構造を第一層に形成する工程、及び第二層を形成する工程を含んで製造される。以下各工程について説明する。
回折構造の具体的形状を得る工程は、上記した光学的機能を有する形状を得ることができれば公知の方法を用いることができる。ここでは、回折構造体10の好ましい態様として説明した計算機ホログラムのホログラム形状を得る方法について説明する。計算機ホログラム自体は公知であるので、当該計算機ホログラム形状を得るための方法についても公知の方法(例えば特許第4620220号)を適用することが可能である。ここではそのうちの一例を説明する。
一般に計算機ホログラムを求めるには次のようにする。すなわち、あるホログラムを想定し、それからの再生距離がホログラムの大きさにくらべて十分大きく、ホログラム面の法線に平行な光を照明した場合、再生像面で得られる回折光は、ホログラム面での振幅分布、及び位相分布のフーリエ変換で表される(フラウンホーファー回折)。そこで、再生像面に所定の回折光を与えるために、ホログラム面と再生像面との間で束縛条件を加えながら、フーリエ変換と逆フーリエ変換を交互に繰り返し、ホログラム面に配置する計算機ホログラムを求める方法が知られている(Gerchberg−Saxton反復計算法)。
そこで、Gerchberg−Saxton反復計算法を利用して、背後からホログラム面の法線に平行な光を照明した場合に所定の観察域へのみ光を回折する計算機ホログラムを得ることを考える。ここではわかりやすさのため、ホログラム面での振幅分布をAHOLO、ホログラム面での位相分布をφHOLO 、再生像面での振幅分布をAIMG 、再生像面での位相分布をφIMGで表現する。図9に流れを示した。
ここで、計算機ホログラムの具体的形状を得るに際しては、上記説明した図3、図4、図5、図6の角度分布をもとに振幅分布を作成して計算することにより算出することができる。
過程S1で計算機ホログラムが形成される面領域(x0≦x≦x1、y0≦y≦y1)において、初期値としてAHOLDに1を、φHOLDにランダムな値を与える。
過程S2で、その初期化した値に所定のフーリエ変換を施し、AIMG、φIMGを得る。
過程S3で、AIMGが所定の領域内でほぼ一定値になり、その所定領域外でほぼ0になったと判断された場合は、過程S1で初期化したAHOLDとφHOLDが所望の計算機ホログラムとなる。
一方、過程S3でこのような条件が満足されないと判断された場合は、過程S4で束縛条件が付与される。具体的には、上記の所定領域内ではAIMGが例えば1にされ、その他では0にされ、φIMGはそのままに維持される。
次に過程S5で束縛条件が付与された後の条件で所定の逆フーリエ変換が施される。
逆フーリエ変換で得られたホログラム面での値は、過程S6で束縛条件が付与され、AHOLDは1に、φHOLDは多値化(元の関数をデジタルな階段状の関数に近似(量子化))される。ただし、φHOLDが連続的な値を持ってもよい場合は、この多値化は必ずしも必要ない。
そして、過程S2にもどり、その値にフーリエ変換が施される。以降は上記と同様の処理がおこなわれ、過程S3の条件が満足されるまで(収束するまで)繰り返されて最終的な所望の計算機ホログラムを得ることができる。
次に、得られたホログラム形状に基づいて型を作製する工程について説明する。ホログラム形状10a(回折構造10a)を第一層11に形成させるためには、得られた計算機ホログラム形状を第一層11となるべき材料に転写可能な凹凸形状を有する型が必要である。ここではその型を作製する工程について説明する。このような型の作製も公知の方法を用いることができるが、以下に一例を説明する。
まず、合成石英等の基板上に表面低反射クロム薄膜を積層したフォトマスクブランク板のクロム薄膜上に、ドライエッチング耐性のあるレジスト層を薄膜状に形成する。ドライエッチング用レジストとしては、一例として、日本ゼオン株式会社製のZEP7000等を使用することができ、レジストの積層は、スピンナー等を用いた回転塗付によって行なう。
このレジスト層に対し、パターン露光を行なうが、パターン露光は、板状のパターン、レーザー描画装置によるレーザービームの走査、又は電子線描画装置による電子線の走査によりおこなうことができる。
この露光によりレジスト樹脂が硬化した易溶化部分と、未露光部分と、が形成されるので、現像液を噴霧して行なうスプレー現像等によって、溶剤現像して易溶化部分を除去し、レジストパターンを形成する。
形成されたレジストパターンを利用して、ドライエッチングにより、レジストで被覆されていない部分のクロム薄膜を除去し、除去した部分において、下層の石英基板を露出させる。次いで、露出した石英基板に対して、同様にドライエッチングを施して、石英基板をエッチングし、エッチングの進行により生じた凹部と、クロム薄膜およびレジスト薄膜とが下から順に被覆している石英基板の元の部分からなる凸部とを形成する。この後、レジスト薄膜を溶解等により除去し、石英基板がエッチングされて生じた凹部と、頂部にクロム薄膜が積層した部分からなる凸部とを有する石英基板を得る。
以上の方法のみでは、凸部と凹部の、2値的(高低の2段、深さとしては、元の石英基板の表面に加えて、もうひとつのレベルの面が生じる。)のものしか得られないが、上記で得られたものに対し、さらにレジストの形成→パターン露光→レジストの現像→クロム薄膜のドライエッチング→石英基板のドライエッチング→レジスト除去からなる、フォトエッチングの工程を繰り返すことにより、1回目のフォトエッチングにより生じた凹部、および凸部に対してさらにフォトエッチングを施すことができる。これを複数回繰り返すことにより、複数の高低差を有する凹凸を精度よく得ることが可能である。このようにして、所定の段数を得た後、クロム薄膜をウェットエッチングにより除去し、石英基板表面に所定の段数の深さの凹凸が形成された計算機ホログラムの型を得ることができる。
次に、作製した計算機ホログラムの型を用いて第一層11を作製する工程について説明する。当該型を使用して計算機ホログラムを複製する方法としては、例えば当該型を、加熱により軟化する樹脂層に押し付ける方法、インジェクション法、又はキャスティング法等を利用することできる。これら方法に使用する樹脂としては、熱可塑性、熱硬化性のいずれも使用できる。工業的には、好ましくは紫外線硬化性樹脂を含む未硬化樹脂組成物を型の凹凸が形成された面に接触させ、樹脂組成物の反対側に第一層11の基材層となるフィルムをラミネートして、樹脂組成物を型とプラスチックフィルムとの間に挟んだ状態とする。かかる状態から、紫外線を照射する等して樹脂組成物を硬化させ、しかる後に該フィルム及び硬化してかつホログラム形状が賦形された該紫外線硬化性樹脂組成物層とを型から離型すると、第一層11が形成される。すなわち、透光性を有する基材層の一方の面上にホログラム形状10aを有する層が積層された第一層11である。
次に、第一層11上に第二層12を積層する工程について説明する。第二層12は、上記例示したような硬化する前の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は紫外線硬化樹脂等をスキージを用いて第一層11上に塗工し、用いた材料に対応した硬化方法により硬化させて形成する方法を用いることが可能である。また、第二層12として粘着剤を用いる場合には、第一層11上に粘着剤を塗布する方法を用いることができる。
以上のような方法により回折構造体10を製造することができる。
次に、上記した回折構造体10を用いた液晶表示装置100について説明する。図10は表示装置100のうち、液晶パネル101、及び面光源装置110に注目して示した分解斜視図である。図10及び適宜示す図により液晶表示装置100について説明する。
表示装置100は、液晶パネル101、及び面光源装置110を備えている。また、表示装置100には、説明は省略するが、その他これが表示装置として動作するために必要とされる通常の機器を具備している。
図10では紙面上が観察者側となる。
液晶パネル101は、観察者側に配置された上偏光板102、面光源装置110側に配置された下偏光板105、及び上偏光板102と下偏光板105との間に配置された液晶層106と、を有している。
上偏光板102は、PVA層103、回折構造体10、及び反射防止層104(AR層104)が積層されて構成されている。
PVA層103は、PVA(ポリヴィニルアルコール)の層にヨウ素を含浸した上で延伸してなる物であり、液晶層106に積層され、入射した光を直交する二つの偏光成分(例えば、P波およびS波等)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)の偏光成分(例えば、P波)を透過させ、当該一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)の偏光成分(例えば、S波)を吸収する機能を有する層であり、実質的に偏光作用を発現する偏光板本体(いわゆる「偏光子」)に相当する。当該PVA層103は公知のものを適用することができる。
回折構造体10は、PVA層103に積層される上記第一実施形態で説明したものであり、入射した光を拡散して出射する機能を有している。
AR層104は、回折構造体10に積層されて液晶パネル101の最も観察者側に配置される層であり、光の反射を防止する機能を有する。これにより、液晶パネル101の表面へのいわゆる写り込みを防止することができる。このようなAR層は公知のものを用いることができる。
下偏光板105にも、PVA層が含まれており、入射した光を直交する二つの偏光成分(例えばP波およびS波等)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)の偏光成分(例えば、P波)を透過させ、当該一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)の偏光成分(例えば、S波)を吸収する機能を有する。
液晶層106は、1対の硝子板間に液晶材料が封入されてなる。そして、画素を形成する単位セルが複数配置され、単位セル毎に、電界印加がなされ得るようになっており、電界印加された単位セル内の液晶分子の配向方向が変化する。面光源装置110側(すなわち入光側)に配置された下偏光板105を透過した特定方向の偏光成分(本実施形態においては、P波)は、電界印加された単位セルを通過する際にその偏光方向を90°回転させ、その一方で、電界印加されていない単位セルを通過する際にその偏光方向を維持する。このため、単位セルへの電界印加の有無によって、下偏光板105を透過した特定方向の偏光成分(P波)が、下偏光板105の出光側に配置された上偏光板102のPVA層103(偏光子)をさらに透過するか、又は、PVA層103で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。
このようにして液晶パネル101では、面光源装置110からの光の透過又は遮断を単位セル(画素)毎に制御し、映像を表現することができるように構成されている。
次に面光源装置110について説明する。図11には、図10にXI−XIで示した線に沿った面光源装置110の断面図、図12にはXII−XIIで示した線に沿った断面図を示した。
面光源装置110は、液晶パネル101のうち、観察者側とは反対側に配置され、液晶パネル101に面状の光を出射する照明装置である。図10〜図12からわかるように、面光源装置110は、エッジライト型の面光源装置として構成され、導光板111と、光源115と、光学シート120と、反射シート125と、を有している。
導光板111は、図10〜図12からわかるように、基部112と、単位光学要素部113とを有している。基部112は、平板状の部材であり、透光性を有する主部112a内に光散乱材(光拡散性粒子)112bが分散されて構成されている。光散乱材112bは、主部112a内を進む光に対し、反射や屈折等によって、当該光の進路方向を変化させる作用を及ぼす。このような光散乱材112bの光拡散機能(光散乱機能)は、例えば、主部112aをなす材料とは異なる屈折率を有した光散乱材112bを用いることにより可能となる。その他、光に対して反射作用を及ぼし得る材料であってもよい。
単位光学要素部113は、図10〜図12からわかるように、基部112の面のうち光学シート120側の面に形成される部位であり、複数の単位光学要素113aが並列されている。単位光学要素113aは、図12に現れる断面を維持して紙面奥手前方向に延びる柱状の要素であり、その延在する方向は、単位光学要素113aが配列される方向と直交する方向である。
図13は図12の単位光学要素113aの部分に注目した拡大図を示した。図13からわかるように、単位光学要素113aは、基部112の一方の面上に底辺を有し、基部112から突出する凸状の三角柱形状である。図示の主切断面形状(単位光学要素の延在方向と直交する断面における形状)においては三角形形状を有している。本実施形態の単位光学要素113aでは、底辺に対向する頂点が主切断面形状としては曲線状とされている。
また、単位光学要素113aの当該主切断面形状は、次の条件Aおよび条件Bのうちの少なくとも一方を満たすようになっていることが好ましい。
条件A:主切断面三角形形状の頂角以外の角、すなわち、主切断面三角形形状の基部112上に位置する底角の角度θ1、θ2が、25°以上45°以下である。
条件B:単位光学要素113aの底辺の長さWaに対する、単位光学要素113aの高さHaの比(Ha/Wa)が、0.2以上0.5以下である。
条件Aおよび条件Bの少なくとも一方が満たされる場合、後述するように、導光板111から出光する光のうち、単位光学要素113aが配列される方向(図12の紙面左右方向)に沿った成分について極めて効果的に集光作用が及ぼされる。
また、本実施形態では、単位光学要素113aは図12、図13に現れる断面(単位光学要素113aが配列される方向に沿った断面であるが、各単位光学要素113aの主切断面にも合致する。)において、二等辺三角形としている。これによれば、正面方向輝度を効果的に上昇させること、および、単位光学要素113aの配列方向に沿った面内での輝度の角度分布に対称性を付与することができる。従って、当該断面における断面三角形形状の二つの底角θ1、θ2は等しいことが好ましい。
なお、本件明細書における「三角形形状」とは、厳密な意味での三角形形状のみでなく、製造技術における限界や成型時の誤差等を含む略三角形形状を含むものであっても、本発明の奏するべき光学的機能と同等の機能を確保し得る範囲内であれば、「三角形形状」に包含される。また同様に、本明細書において用いる、その他の形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「楕円」、「円」等の用語も、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差を含めて解釈することとする。
以上のような構成を有する導光板111の寸法は、一例として、以下のように設定され得る。まず、単位光学要素113aの具体例として、導光板111の板面に沿った幅Wa(図13参照)を20μm以上500μm以下とすることができ、導光板111の板面への法線方向ndに沿った単位光学要素113aの高さHa(図13参照)を4μm以上250μm以下とすることができる。また、単位光学要素113aの断面形状が三角形形状からなる場合には、頂角θ3(図13参照)の角度を90°以上125°以下とすることができる。
一方、基部112の厚さは、0.5mm〜6mmとすることができる。
以上のような構成からなる導光板111は、押し出し成型により、または、基材上に単位光学要素113aを賦型することにより、製造することができる。導光板111の基部112の主部112a及び単位光学要素113aをなす材料としては、種々の材料を使用することができる。ただし、表示装置に組み込まれる光学シート用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性および加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。一方、光散乱材112bは、一例として、平均粒径が0.5μm〜100μm程度であるシリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の透明物質からなる粒子を用いることができる。
なお、押し出し成型で製造された導光板111においては、基部112と、単位光学要素部113と、が一体的に形成され得る。また、押し出し成型によって導光板111を製造する場合、単位光学要素部113が、基部112の主部112aをなす材料と同一の樹脂材料であってもよい。
図10〜図12に戻って、光源115について説明する。光源115は、導光板111の基部112の板状の対向する2組の側面のうち、単位光学要素113aが延在する長手方向(延在方向)両端となる一組の側面のそれぞれに配置される。光源の種類は特に限定されるものではないが、線状の冷陰極管等の蛍光灯、点状のLED(発光ダイオード)、又は白熱電球等の種々の態様で構成され得る。本実施形態では光源115は複数のLEDにからなり、不図示の制御装置により各LEDの出力、すなわち、各LEDの点灯および消灯、及び/又は、各LEDの点灯時の明るさを、他のLEDの出力から独立して調節し得るように構成されている。
次に光学シート120について説明する。図10〜図12からわかるように、光学シート120は、シート状に形成された本体部121と、本体部121の面のうち、導光板111に対向する面、つまり入光側面に設けられた単位プリズム部122と、を有している。
この光学シート120は、後述するように、入光側から入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させ、正面方向(出光面の法線方向)の輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)を有している。この集光機能は、主として、光学シート120のうち、単位プリズム部122によって発揮される。
図10〜図12に示すように、本体部121は、単位プリズム部122を支持する平板状のシート状部材として機能する。そして、本体部121の面のうち、導光板111に対面する側とは反対側の面が出光側面となる。本実施形態において、本体部121の出光側面は、平坦(平ら)で平滑な面として形成されている。ただし、出光側面は平滑面であることに限定されることはなく、微小な凹凸が付された面(いわゆるマット面)であってもよく、必要に応じた表面形態を適用することが可能である。
単位プリズム部122は、図10〜図12によく表れているように、複数の単位プリズム122aが本体部121の入光側面に沿って並べられるように配置されている。より具体的には、単位プリズム122aは、当該並べられる方向に直交する方向に、図11に示した所定の主切断面形状を維持して延びるように形成された柱状の部材である。その延在する方向は、単位プリズム122aが並べられる方向に直交する方向である他、上記した導光板111の単位光学要素113aが延びる方向に対して90度ずれた方向である。従って、単位プリズム122aの延在方向と単位光学要素113aの延在方向とは表示装置を正面から見た場合に直交する。
また、単位プリズム122aの長手方向は、正面から観察した場合に、液晶パネル101の下偏光板105の透過軸と交差している。好ましくは、光学シート120の単位プリズム122aの長手方向は、液晶パネル101の下偏光板105の透過軸に対して、表示装置の表示面と平行な面(光学シート120の本体部121のシート面と平行な面)上で45°より大きく135°より小さい角度で交差している。なお、ここでいう角度は、単位プリズム122aの長手方向と下偏光板105の透過軸とによってなされる角度のうちの、小さい方の角度、すなわち、180°以下の角度のことを意味している。とりわけ、本実施形態においては、光学シート120の単位プリズム122aの長手方向は、液晶パネル101の下偏光板105の透過軸に対して直交し、光学シート120の単位プリズム122aが並べられる方向は、液晶パネル101の下偏光板105の透過軸と平行になっていることが好ましい。
次に単位プリズム122aの配列方向の断面形状について説明する。図14は、図11のうち、光学シート120の一部を拡大した図である。ここでndは本体部121のシート面の法線方向を表わしている。
図14からわかるように、本実施形態では、単位プリズム122aは、本体部121の導光板111側の面が突出した二等辺三角形の断面を有している。つまり、本体部121のシート面と平行な方向の単位プリズム122aの幅は、本体部121の法線方向ndに沿って本体部121から離れるにつれて小さくなる。
また、本実施形態では、単位プリズム122aの外輪郭は、本体部121の法線方向ndと平行な軸を対称軸として、線対称となっており、断面が二等辺三角形である。これにより、光学シート120の出光面における輝度は、単位プリズム122aの配列方向に平行な面において、正面方向を中心として対称的な輝度の角度分布を有するようになる。
ここで、単位プリズム122aの寸法は特に限定されるものではないが、頂角θ4は60°〜70°(図14参照)、底辺幅Wは50μm程度(図14参照)とすることにより適切な集光特性を得ることができることが多い。
以上のような構成からなる光学シート120は、押し出し成型により、又は、基材上に単位プリズム122aを賦型することにより製造することができる。光学シート120をなす材料としては、種々の材料を使用することができる。ただし、表示装置に組み込まれる光学シート用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性および加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。
本実施形態では上記のように断面形状が三角形である単位プリズムについて説明したが、これに限定されるものでなく、当該三角形の頂点部が短い上底となる台形、頂点の1つが導光板111側に対峙した五角形であってもよい。また斜面の形状が折れ線状や曲線であってもよい。
図10〜図12に戻って、面光源装置110の反射シート125について説明する。反射シート125は、導光板111の裏面から出射した光を反射して、再び導光板111内に光を入射させるための部材である。反射シート125は、金属等の高い反射率を有する材料からなるシート、高い反射率を有する材料からなる薄膜(例えば金属薄膜)を表面層として含んだシート等のいわゆる鏡面反射を可能とするものを好ましく適用することができる。これにより、光の収束性を向上させることが可能となり、エネルギー利用効率をよくすることができる。
次に、以上のような構成を備える表示装置100の作用について、光路例を示しつつ説明する。ただし当該光路例は光路を概念的に示すものであり、屈折や反射の程度を厳密に表したものでない。
まず、図11に示すように、光源115で発光された光は、導光板111の側面の入光面を介して導光板111内に入射する。図11には、一例として、光源115から導光板111に入射した光L21、L22の光路例が示されている。
図11に示すように、導光板111へ入射した光L21、L22は、導光板111の単位光学要素部113の面及びその反対側の裏面において、空気との屈折率差による全反射を繰り返し、単位光学要素113aの延在方向へ進んでいく。
ただし、導光板111の基部112のうち主部112aには光散乱材112bが分散されている。このため、図11に示すように、導光板111内を進む光L21、L22は、光散乱材112bによって進行方向を不規則に変更され、全反射臨界角未満の入射角度で単位光学要素部113及びその反対側の面に入射することもある。この場合、当該光は、導光板111の単位光学要素部113及びその反対側の面から出射し得る。
単位光学要素部113から出射した光L21、L22は、導光板111の出光側に配置された光学シート120へと向かう。一方、単位光学要素部113とは反対側である裏面から出射した光は、導光板111の背面に配置された反射シート125で反射され、再び導光板111内に入射して導光板111内を進むことになる(図示は省略)。
導光板111内を進行する光と、導光板111内に分散された光散乱材112bと、の衝突は、導光板111内の導光方向に沿った各区域において生じる。このため、導光板111内を進んでいる光は、少しずつ、出光面から出射するようになる。これにより、導光板111の単位光学要素部113から出射する光の導光方向に沿った光量分布を均一化させることができる。
とりわけ、図示する導光板111の単位光学要素部113は複数の単位光学要素113aによって構成され、各単位光学要素113aの断面形状は、三角形または三角形の頂角を面取りしてなる形状となっている。すなわち、単位光学要素113aは、導光板111の裏面に対して傾斜面113aa、113abを有して構成されている(図13参照)。従って、単位光学要素113aを介して導光板111から出射する光L21、L22は、例えば図13に光L41で示したように、導光板111から出射するときに屈折する。この屈折は、単位光学要素113aの配列方向において、シート面法線ndに近づく(法線ndとのなす角が小さくなる)屈折である。このような作用により、単位光学要素部113は、導光方向と直交する方向に沿った光の成分について、透過光の進行方向を正面方向側に絞り込むことができる。すなわち、単位光学要素部113は、導光方向と直交する方向に沿った光の成分に対して、集光作用を及ぼすようになる。
上述したように、以下の条件Aおよび条件Bの少なくとも一方が満たされる場合、単位光学要素部113は、導光板111から出光する光に対し、極めて効果的に上記の集光作用を及ぼすようになる(図13参照)。
条件A:主切断面三角形形状の頂角以外の角、すなわち、主切断面三角形形状の基部112上に位置する底角の角度θ1、θ2が、25°以上45°以下である。
条件B:単位光学要素113aの幅Waに対する、単位光学要素113aの基部高さHaの比(Ha/Wa)が、0.2以上0.5以下である。
以上のようにして、導光板111から出射する光の出射角度は、導光板111の単位光学要素113aの配列方向と平行な面において、正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込まれる。
導光板111から出射した光は、その後、光学シート120へ入射する。光学シート120の単位プリズム122aは、導光板111の単位光学要素113aと同様に、単位プリズム122aの入光面での屈折によって透過光に対して集光作用を及ぼす。ただし、光学シート120でその進行方向を変化させられる光は、光学シート120のうち、単位プリズム122aの配列方向と平行な面内の成分であり、導光板111で集光させられた成分とは異なる。すなわち、図14にL51で示したように、単位プリズム122aに入射した光は、単位プリズム122aと空気との屈折率差に基づいてその界面で全反射する。そのとき、単位プリズム122aの斜辺はシート面法線ndに対してθ4/2傾いているので、界面における反射光は入射光よりも法線ndに近付けられる角度となる。
つまり、導光板111は、導光板111の単位光学要素113aの配列方向と平行な面において、光の進行方向を正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込むようになる。その一方で、光学シート120では、光学シート120の単位プリズム122aの配列方向と平行な面において、光の進行方向を正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込むようになる。したがって、光学シート120での光学的作用によって、導光板111で上昇されられた正面方向輝度を害すことなく、さらに、正面方向輝度を上昇させることができる。
ここで、液晶パネル101の下偏光板105は、一方の偏光成分である例えばP波のみを選択的に透過させ、他方の偏光成分である例えばS波を吸収してしまう。したがって、単位プリズム122aの配列方向と交差する単位光学要素113aの配列方向に沿った成分が導光板111によって十分に正面方向に集光されているとの前提に立つと、正面方向からの観察において、光学シート120の単位プリズム122aの長手方向が、液晶パネル101の下偏光板105の透過軸に対して、45°より大きく135°より小さい角度で交差していることが好ましく、とりわけ、単位プリズム122aの配列方向が、下偏光板105の透過軸と平行になっていることが好ましい。このような構成によれば、液晶パネル101での光源光の利用効率をさらに上昇させることができる。
光学シート120の単位プリズム122a、導光板111の単位光学要素113aは、導光方向に直交する光の成分を集光させることに強く特化して断面形状を決定され得る。このように設計された面光源装置110によれば、光の利用効率を大幅に向上させることが可能となる。
さらに、光路について説明する。上記のように面光源装置110を出射した光は、液晶パネル101の下偏光板105に入射する。下偏光板105は、入射光のうち、一方の偏光成分を透過させ、その他の偏光成分を吸収する。下偏光板105を透過した光は、画素毎への電界印加の状態に応じて、選択的に上偏光板102のPVA層103を透過するようになる。このようにして、下偏光板105、液晶層106、上偏光板102のPVA層103により面光源装置110からの光を画素毎に選択的に透過させることにより、液晶表示装置100の観察者が、映像を観察することができるようになる。
上述したように、面光源装置110の出光面における正面方向輝度は、導光板111による集光作用及び光学シート120による集光作用により、高められている。すなわち、本実施形態における液晶表示装置100においては、導光板111の単位光学要素113aおよび光学シート120の単位プリズム122aによって光の進行方向を正面方向を中心とした狭い角度範囲内に変化させる機能(集光機能)による光源光の利用効率の改善によって、正面方向輝度を極めて効果的に上昇させることができる。そしてこれにより位相差フィルムが不要となる。
さらに、PVA層103を透過した光は映像光として回折構造体10に入射する。回折構造体10は上記したように、該回折構造体10の法線方向に略平行な光を所望の角度範囲に広げることが可能である。従って、回折構造体10に入射した映像光は視野角が広げられるように観察者側に出射される(図10のL61参照)。
ここで、上記したように映像光は面光源装置110により集光されているので、このように集光された映像光をそのまま出射すると視野角が比較的狭い。これに対して、回折構造体10により視野角を拡大することができる。また、その際には、光散乱材等の屈折を利用することにより視野角を拡大する場合に問題となっていた外光の後方散乱に起因するコントラスト低下や像の鮮明度が低下するいわゆる像ボケを防止することができる。
また、液晶表示装置100では、回折構造体10の光拡散特性により、観察者が画面を見る際には正面、水平面内、垂直面内の視野角で映像や画像を観察することができればよく、観察者にとって重要でない斜め方向面内の視野角に対して映像光の出射を抑制することができる。従って、不要な光の出射を抑制することができるので、光源からの光の利用効率を向上させることができる。
さらに、回折構造体10の回折構造10a(ホログラム形状10a)を計算機ホログラムとすれば、光の拡散範囲等を所望のものに調整することができる。
なお、ここで説明した液晶表示装置100の構成は例示であり、本発明の趣旨に反しない限りは構成を変更することも可能である。例えば、ここでは回折構造体10を適用した液晶表示装置100を説明したが、回折構造体10のかわりに、回折構造体20を適用してもよい。また、上偏光板102では液晶層106側にPVA層103、その観察者側に回折構造体10を配置したが、これとは逆に液晶層側に回折構造体10を配置し、その観察者側にPVA層を設けても良い。
また、回折構造体10を用いたときにおいて、回折に起因する波長分散を考慮して、当該波長分散を打ち消すようなさらなる機能層を設けてもよい。また、さらに他の機能を有する層を設けることもできる。例えばAR層の代わりに防眩機能を有する層(AG層)を配置してもよい。
さらに、面光源装置についても、上記した面光源装置110に限られることなく、液晶パネルの法線方向に対して略平行な光を効率良く出射することができれば他の形態であってもよい。例えば、本実施形態の面光源装置110では、導光板111において基部112の光学シート120側に単位光学要素部113を配置した例を説明した。しかしながらこれに限定されることなく、単位光学要素部が基部の反射シート側に設けられたり、基部の光学シート側及び反射シート側の両面に設けられたり、又は単位光学要素部が配置されずに基部のみより形成されてたりする形態であってもよい。また、導光板を配置することなく、光源からの光を斜めに傾斜するように直接光学シートに出射する形態を採用することもできる。