以下、本発明の引出し装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図4ないし図7において、10は引出し装置としてのカップホルダで、このカップホルダ10は、例えば、自動車などの車両のインストルメントパネル中央のセンタクラスタ、あるいは、インストルメントパネルに対向した両側の座席間のセンタコンソールなどに備えられ、缶、コップなどである飲料のカップCを保持する車両用収納装置である。
そして、このカップホルダ10は、本体ケース11と、この本体ケース11に対して出し入れ(進退)可能に設けられた引出しケースとしての収納ケースであるホルダ本体12と、このホルダ本体12を本体ケース11に対して収納した状態で保持可能なロック機構13と、ホルダ本体12を本体ケース11に対して突出(進出)方向に付勢するコイルスプリング14とを備えている。
なお、以下、ホルダ本体12が本体ケース11から突出(進出)する方向すなわち乗員側を手前側である前側、ホルダ本体12が本体ケース11に収納(退避)する方向を奥側である後側とし、両側方向及び上下方向については、自動車に取り付けた状態を例として説明する。
そして、図1などに示すコイルスプリング14は、金属線材などをコイル状に巻回して形成した、いわゆるトーションスプリング(ねじりばね)であり、コイル状に巻回された円筒状の本体部17と、この本体部17の一端から線状に突出する一方の腕部としての固定腕部18と、この本体部17の他端から線状に突出する他方の腕部としての可動腕部19とを一体に備えている。固定腕部18は、本体ケース11に対して固定される固定点となる部分であり、直線状に形成されている。また、可動腕部19は、本体ケース11に対して回動可能に係止される部分であり、本体部17に対して固定腕部18と反対方向に向けて直線状に突出している。すなわち、固定腕部18と可動腕部19とは、自然状態(標準状態)で、平面視で所定の開き角度、例えば約180°の鈍角をなすように突出している。さらに、可動腕部19は、固定腕部18よりも長尺に形成されており、先端部がホルダ本体12の一端側(上側)へと屈曲されて付勢対象、本実施の形態ではホルダ本体12(図4)と当接して付勢力を作用させる作用点となる当接部19aとなっている。そして、このコイルスプリング14は、固定腕部18と可動腕部19とが所定の開き角度に復帰する方向に付勢力を作用させるように構成されている。すなわち、このコイルスプリング14は、固定腕部18と可動腕部19とを、コイルの巻き込み方向に接近させる(開き角度を小さくする(ねじり角を大きくする))ときに、固定腕部18と可動腕部19との開き角度が大きくなる(ねじり角が小さくなる)方向に付勢力(応力)を作用させ、ねじり角が大きいほど付勢力が大きくなるように設定されている。本実施の形態では、コイルスプリング14は例えば右巻きに形成されており、図1において、可動腕部19を固定腕部18に対して相対的に時計回り方向に回動させたときには、可動腕部19が反時計回り方向へと付勢力を発生させるようになっている。
また、図1ないし図7に示すように、本体ケース11は、例えば合成樹脂などにより一体成形され、平面視で四角形状に形成された底面部21を備え、この底面部21の一側縁に、前後方向に沿って長手方向を有する第1の壁部としての右壁部である一方の側壁部22が立ち上げられ、底面部21の他側縁に、前後方向に沿って長手方向を有する左壁部である他方の側壁部23が立ち上げられ、これら一方及び他方の側壁部22,23の前側の上部間が上壁部24により左右に連結され、かつ、底面部21の後端縁に、側壁部22,23と交差(直交)する左右両側方向に沿って長手方向を有する第2の壁部としての後壁部である端壁部25が立ち上げられて、前側から後側へと長手方向に連通開口する扁平な角筒状に形成され、この本体ケース11の内側が、収納部26となっている。また、この本体ケース11の前端部には、底面部21、側壁部22,23及び上壁部24と連続する角筒状の筒状部27が形成され、この筒状部27の前端部が、ホルダ本体12を出し入れするための開口部28となっている。そして、この本体ケース11は、インストルメントパネルやセンタコンソールなどの車体側に組み込まれ、前端部に位置する開口部28が乗員に対向して開口している。
底面部21は、略平面状に形成されており、ホルダ本体12の下部と対向している。また、この底面部21には、両側方向の中央部に、前後方向に沿って第1の壁部としてのリブ状の隔壁部30が立ち上げられ、この隔壁部30によって、収納部26が、一側及び他側に位置する一方及び他方の(一対の)収納部26a,26bに区画されている。この隔壁部30は、端壁部25と交差(直交)する方向に沿って前方へと延びている。すなわち、この隔壁部30は、端壁部25と所定の第1角度(例えば90°)をなす方向に沿って形成されている。さらに、この隔壁部30は、端壁部25の両側方向の中央部と連続して直角状の角部をなしている。そして、底面部21には、収納部26(収納部26a,26b)の両側にて、ホルダ本体12の下部(底部)と摺接してホルダ本体12をガイドするガイド用のガイド部31,31が前後方向に沿って直線長手状で、かつ、この底面部21に対して上方に段差状に突出して設けられている。すなわち、このガイド部31,31は、一方の収納部26aの内部においては、一方の側壁部22及び隔壁部30に沿って形成され、他方の収納部26bの内部においては、他方の側壁部23と隔壁部30とに沿って形成されている。
なお、一方の収納部26aと他方の収納部26bとは基本的に同一の構成となっているので、以下、説明をより明確にするために、特記しない限り、収納部26とは収納部26a,26bの少なくともいずれか、あるいは双方を指すものとし、共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
また、一方の側壁部22は、端壁部25と交差(直交)する方向に沿って前方へと延びる連続した板状となっている。すなわち、この一方の側壁部22は、端壁部25と所定の第1角度(例えば90°)をなす方向に沿って形成されている。さらに、この一方の側壁部22は、後端部が端壁部25の一側部と連続して直角状の角部をなしている。そして、この一方の側壁部22の外面には、補強用のリブ33が格子状に設けられている。
また、他方の側壁部23は、端壁部25と交差(直交)する方向に沿って前方へと延びる連続した板状となっている。すなわち、この他方の側壁部23は、端壁部25と所定の第1角度(例えば90°)をなす方向に沿って形成されている。さらに、この他方の側壁部23は、後端部が端壁部25の他側部と連続して直角状の角部をなしている。そして、この他方の側壁部23の外面には、補強用のリブ34が格子状に設けられている。
また、上壁部24は、底面部21に対して略平行となるように上方に離間されており、かつ、後端部が端壁部25に対して前方に離間されている。この上壁部24の端壁部25の前方に位置する後端部には、収納部26に対応して、ホルダ本体12のストッパ用のストッパ凹部36が切り欠き形成されている。さらに、この上壁部24の上部には、補強用のリブ37が格子状に形成されている。
また、端壁部25は、側壁部22,23、及び隔壁部30と交差(直交)する方向に沿って延びる連続した略板状となっている。さらに、この端壁部25には、収納部26のガイド部31,31間に位置して、端壁部25から前方に突出する被取付部40が設けられている。すなわち、この被取付部40は、底面部21から立ち上げられ上下方向に沿って平面状でホルダ本体12の後部に対向する対向面部である前面部41と、この前面部41の上部と連続し端壁部25の上部と面一となる平面状の上面部42と、底面部21から立ち上げられ前面部41及び上面部42の両側に連続し前後方向に沿って平面状の側面部43,43とを有している。さらに、この被取付部40には、前面部41の中央部に、ロック機構13が嵌合される嵌合開口部45が開口されているとともに、この嵌合開口部45の一側に、コイルスプリング14の固定腕部18が係止保持される保持部46が形成されている。そして、この被取付部40の近傍には、コイルスプリング14の本体部17を係止する本体係止部47と、コイルスプリング14の可動腕部19の回動を規制する規制部48と、コイルスプリング14の可動腕部19の下部と相対的に摺接する摺接支持部としての回動スペーサ部49とが配置されている。
保持部46は、コイルスプリング14の底面部21からの浮き上がりを防止する浮き上がり防止部としての保持開口部51と、この保持開口部51に隣接し固定腕部18の回動を規制する回動規制部52と、保持開口部51に連通するスリット53と、このスリット53の縁部に突設されたガイドリブ54とを備えている。
保持開口部51は、前面部41にて嵌合開口部45の一側方に離間された位置に、例えば両側方向に長手状の四角形状に形成されている。そして、この保持開口部51の上縁部51aが、コイルスプリング14の固定腕部18の上側と当接してコイルスプリング14の上方への浮きを規制する浮き規制部となっている。
また、回動規制部52は、前面部41にて保持開口部51の一側縁部に、一方の側面部43と略面一に連続し上下方向に沿って長手方向を有するリブ状に形成され、下端部が底面部21と連続している。この回動規制部52は、保持開口部51に先端側が挿入されたコイルスプリング14の固定腕部18の基端部に当接する傾斜状の規制面52aを一方の側面部43と反対側の側部に備え、この固定腕部18が一側方向、すなわち図1などに示す時計回り方向(右回り方向)、換言すれば、コイルスプリング14の巻き戻し方向へと回動しないように規制している。また、規制面52aは、保持開口部51の一側部と連続しており、この保持開口部51側に向けて傾斜している。すなわち、この規制面52aは、前側から後側へと、一側である右側から他側である左側に向けて徐々に傾斜している。したがって、この規制面52aは、端壁部25(被取付部40の前面部41)に対して鋭角状に傾斜している。
また、スリット53は、コイルスプリング14を本体ケース11に組み付ける際に固定腕部18を挿入する開口であり、被取付部40の上面部42から前面部41に亘って開口されて保持開口部51と連通している。このスリット53は、前後方向に沿って長手方向を有する直線状の長孔状に形成されているとともに、基端側である前面部41側から先端側である後側へと、一側である右側から他側である左側に向けて徐々に傾斜している。すなわち、このスリット53は、端壁部25(被取付部40の前面部41)に対して鋭角状に傾斜している。そして、このスリット53は、回動規制部52の規制面52aよりも前後方向に対する傾斜が小さく設定されており、スリット53から挿入された固定腕部18が、底面部21側である下方へと移動することで、回動規制部52の規制面52aの傾斜に沿ってスリット53に対して左側へと傾斜されてスリット53の位置からずれ、保持開口部51の上縁部51aの下部に入り込むようになっている。
また、ガイドリブ54は、コイルスプリング14を本体ケース11に組み付ける際に固定腕部18をスリット53へとガイドするもので、スリット53の一側縁部の長手方向全体に亘って、被取付部40の上面部42から上方に向けて突設され、上部に、スリット53に向けて下方に傾斜したガイド面54aを備えている。
また、本体係止部47は、コイルスプリング14の本体部17に挿入されてこの本体部17を保持するもので、底面部21から上方に向けて突出しており、一方の収納部26aでは、この一方の収納部26aの一側をなす一方の側壁部22、及び端壁部25に近接した位置、換言すれば端壁部25と一方の側壁部22とが連続する角部近傍に配置され、他方の収納部26bでは、この他方の収納部26bの一側をなす隔壁部30、及び端壁部25に近接した位置、換言すれば端壁部25と隔壁部30とが連続する角部近傍に配置されている。すなわち、この本体係止部47は、収納部26a,26bの右側後部に配置されている。ここで、この本体係止部47の位置は、一方の側壁部22(隔壁部30)に対して、この本体係止部47に本体部17を挿入させるとともにスリット53に固定腕部18を挿入させたコイルスプリング14の可動腕部19が、このコイルスプリング14の自然状態で干渉する位置となっている。換言すれば、本体係止部47は、その中心軸を中心として、この本体係止部47に本体部17が挿入固定されたコイルスプリング14の可動腕部19の先端部(当接部19a)を通る仮想的な円が、端壁部25及び一方の側壁部22(隔壁部30)と干渉する位置となっている。また、この本体係止部47は、被取付部40の前面部41の前方で、かつ、この前面部41の一側寄りの位置に、保持開口部51の一側縁部及び回動規制部52の前方に対向して配置されている。さらに、この本体係止部47は、一側に位置するガイド部31に対して他側方向へと僅かに離間されて配置されている。そして、この本体係止部47の他側部、すなわちガイド部31と反対側である左側部には、上下方向である軸方向に沿ってリブ状の回り止め部47aが突設されている。この回り止め部47aは、本体係止部47に組み付けられたコイルスプリング14の本体部17の内部に当接してこのコイルスプリング14を回り止めしている。さらに、この本体係止部47の先端部である上端部は、被取付部40の上面部42と略面一な位置となっており、基端部である下端部には、本体部17(コイルスプリング14)の下部を支持するリブ状のスペーサ部56が底面部21上から突出して放射状にそれぞれ形成されている。
また、規制部48は、本体ケース11に組み付けられたコイルスプリング14の可動腕部19の一側(右側)に当接することでこの可動腕部19の一側方向、すなわちコイルスプリング14を巻き戻す方向(付勢力を開放する方向)への回動を規制するもので、本体係止部47に対して端壁部25(被取付部40)と反対側、すなわち前方で、かつ、本体係止部47の前側に突出するスペーサ部56の前端近傍に位置し、底面部21から壁状(リブ状)に突出している。そして、この規制部48は、本体係止部47に係止保持されたコイルスプリング14の本体部17の一側である右側と接する仮想的な接線に沿って直線状に形成されており、前後方向に対して、前側から後側へと、一側である右側に向けて傾斜している。すなわち、この規制部48は、平面視で、保持部46のスリット53及び回動規制部52に対して、コイルスプリング14の自然状態での開き角度よりも小さい所定の角度(鈍角)をなすように、これら保持部46のスリット53及び回動規制部52と交差する方向に沿って傾斜している。したがって、コイルスプリング14は、本体ケース11に組み付けた状態で所定のねじり角に設定されて可動腕部19がコイルスプリング14の巻き戻し方向に付勢された状態となっているとともに、保持部46に保持された固定腕部18に対する可動腕部19の角度が、可動腕部19と規制部48との当接により、所定の角度以下に設定されている。換言すれば、可動腕部19は、本体ケース11に対して付勢状態で組み付けられ、規制部48と端壁部25(被取付部40の前面部41)との間の範囲が回動可能な範囲となっている。また、この規制部48は、底面部21からの突出量が、スペーサ部56よりも大きく、かつ、本体係止部47よりも小さく設定されており、上端部が保持開口部51よりも下方に位置している。さらに、この規制部48は、コイルスプリング14の可動腕部19の基端側寄りの位置に当接するようになっている。そして、この規制部48の前端部には、一側方、すなわち可動腕部19の回動方向と反対側に向けて補強部48aが突設され、平面視でL字状となっている。
また、回動スペーサ部49は、本体係止部47の中心軸を中心として底面部21上に例えば略1/4円弧状に湾曲して突設されたリブであり、コイルスプリング14の可動腕部19が上部に沿って摺動するようになっている。したがって、この回動スペーサ部49により、コイルスプリング14の可動腕部19と底面部21との接触抵抗が低減され、可動腕部19が底面部21に対して一定の高さ位置を円滑に回動するようになっている。さらに、この回動スペーサ部49は、底面部21からスペーサ部56と略等しい高さに突出している。そして、この回動スペーサ部49は、本体係止部47の中心軸位置及び規制部48の前方でかつ本体係止部47の中心軸位置よりも一側寄りの位置に一端部が位置し、他端部が端壁部25(被取付部40の前面部41)と連続している。
一方、ホルダ本体12は、収納部26に進退可能に嵌合される基体であるホルダ基体61と、このホルダ基体61に取り付けられた第1支持部としての支持体62と、ホルダ基体61の前端部に取り付けられた操作部63とを備えている。そして、このホルダ本体12は、収納部26の一方及び他方の収納部26a,26bのそれぞれに独立して進退可能に取り付けられた一方及び他方のホルダ本体12a,12bが設定されている。なお、これらホルダ本体12a,12bは、左右両側方向に互いに線対称に形成されて略同一の構成となっているため、以下、説明をより明確にするために、特記しない限り、ホルダ本体12とはホルダ本体12a,12bの少なくともいずれか、あるいは双方を指すものとし、共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
ホルダ基体61は、例えば合成樹脂などの部材により形成され、水平方向に沿って延びる四角形平板状の天板部65と、この天板部65の両側から垂直下方に向けて延びる側板部66,66と、天板部65の後端部から垂直下方に向けて延びる後板部67と、側板部66の下端部から天板部65と平行に水平方向に沿って延びる支持板部68とを一体的に備え、扁平な略角筒状となっている。
天板部65は、前後方向に沿って長手方向を有している。この天板部65の前端部寄りの位置には、カップCの下端側が挿入される保持孔部71が開口されている。さらに、この天板部65の後端部の左右両側方向の中央部には、ホルダ本体12と被取付部40及びコイルスプリング14との干渉を避けるための切欠部72が四角形状に形成され、この切欠部72の内部に、後方に向けて突出する突出部73が形成されている。そして、この突出部73の後端部には、ロック機構13と係合可能な被係合部であるストライク部74が突設されている。さらに、この天板部65には、本体ケース11のストッパ凹部36と当接することで本体ケース11に対するホルダ本体12の突出状態での停止位置(突出限(前進限))を設定するストッパ部75が突出部73の前部にて上方に向けて突設されている。
保持孔部71は、本体ケース11に対してホルダ本体12を前側に突出させた状態で外部に露出し、ホルダ本体12を本体ケース11に対して挿入して収納させた状態で本体ケース11内に隠れる位置となっている。
また、ストライク部74は、本体ケース11に対してホルダ本体12を後側に収納させた状態でロック機構13に係止されるもので、後方に向けて水平状に突出しており、先端部の両側に、係止爪部74a,74aが突設されている。したがって、このストライク部74により、本体ケース11に対するホルダ本体12の収納状態での停止位置(収納限(後退限))が設定されている。
また、後板部67は、天板部65の後端部の側板部66,66の後端部から、切欠部72の内縁部に亘って連続して形成されている。そして、この後板部67は、切欠部72の内部において、突出部73の下方に位置して左右両側方向に延び、コイルスプリング14の可動腕部19の当接部19aと当接する当接面部となっている。
また、支持板部68は、保持孔部71に挿入されたカップCの下部を下方から支持するもので、天板部65の保持孔部71の前側の位置の下方に対向して形成されている。さらに、この支持板部68の上部には、保持孔部71の前縁部よりも僅かに後方に位置して、カップCの下部の前側の外側面部に当接する当接支持部68aが設けられている。
また、支持体62は、保持孔部71に挿入されたカップCの後側の外側面部を弾性的に支持するもので、前端部が保持孔部71の後縁部から前方へと突出して保持孔部71の前縁部に対して離間され、スプリングなどの図示しない弾性部材により前方に向けて付勢されている。したがって、この支持体62により、保持孔部71に挿入保持されるカップCの大きさを無段階に調節可能となっている。
また、操作部63は、乗員などが把持、あるいは押動などしてホルダ本体12を操作するためのものであり、本体ケース11に対してホルダ本体12を収納させた状態で開口部28に嵌合して、カップホルダ10の前部に露出している。
また、ロック機構13は、いわゆるオルタネイト動作をするプッシュラッチであり、例えば嵌合開口部45に嵌合される角筒状の筐体81を備え、この筐体81の内部に、進退に伴い開閉するアーム82,82と、このアーム82,82を付勢する図示しない付勢手段と、アーム82,82を筐体81に対して没入(退避)した位置で係止する動作とこの係止を解除してアーム82,82を筐体81に対して突出(進出)可能とする動作とを交互に行う図示しないラッチ機構とが設けられている。そして、このロック機構13は、アーム82,82がホルダ本体12のストライク部74の係止爪部74a,74aを受けて付勢手段の付勢に抗して筐体81内へと押し込まれて没入することにより、アーム82,82が閉じた状態でラッチ機構がアーム82,82を係止し、ホルダ本体12を保持(ロック)するとともに、この状態からさらにアーム82,82が押し込まれることでラッチ機構がアーム82,82の係止を解除し、付勢手段により付勢されたアーム82,82が筐体81から突出して開くことでホルダ本体12の保持を解除するようになっている。
次に、カップホルダ10の組み立て手順を説明する。
まず、予め成形した本体ケース11の収納部26に対して、別途組み立てホルダ本体12を挿入して進退可能に取り付ける。
次いで、本体ケース11の収納部26にコイルスプリング14を組み付ける。このとき、まず、自然状態のコイルスプリング14の本体部17を本体係止部47と位置合わせしてこの本体係止部47に上方から組み付けるとともに、固定腕部18をスリット53へと上方から挿入する(図3(a))。このとき、固定腕部18は、ガイドリブ54のガイド面54aに沿ってスリット53へと導かれ、このスリット53へと容易に挿入される。
さらに、コイルスプリング14をさらに下方(底面部21側)へと押し込むと、回動規制部52に固定腕部18が当接することで、この固定腕部18が回動規制部52に沿って傾斜し、スリット53に対して側方へとずれて保持開口部51内へと導かれ、上縁部51aの下部により上方へ抜け止めされる。また、本体部17は、本体係止部47の回り止め部47aが内面に当接し、コイルスプリング14の本体係止部47の周方向への回動(空回り)が防止される。
この後、作業者は、可動腕部19を、固定腕部18に接近させる方向、すなわちコイルスプリング14の付勢力が増す巻き込み方向へと回動させる(図3(b))。このとき、コイルスプリング14は、本体部17が本体係止部47の回り止め部47aによって回り止めされているとともに、固定腕部18が回動規制部52及び保持開口部51により保持されていることで、この保持されている固定腕部18を支点として付勢力に抗して可動腕部19を容易に撓ませることができる。
そして、作業者が可動腕部19を、規制部48を超える位置まで回動させた後(オーバーストロークした後)、可動腕部19の保持を解除すると、可動腕部19が僅かに復帰し、規制部48に係止される。この結果、コイルスプリング14が本体ケース11に取り付けられる。
この後、本体ケース11の収納部26の開口部28にロック機構13を取り付けて、カップホルダ10が完成する。なお、ホルダ本体12及びロック機構13は、コイルスプリング14の取り付けの作業性を確保できていれば、その取り付けの順序は、コイルスプリング14の前でも後でもよい。
次に、カップホルダ10の動作を説明する。
ホルダ本体12を本体ケース11に収納する際には、操作部63を介してホルダ本体12を収納部26へと後方に押し込むと、ホルダ本体12がガイド部31,31上を摺接して一方の側壁部22、他方の側壁部23及び隔壁部30に沿う方向である後方へとスライドし、後板部67が切欠部72の位置でコイルスプリング14の可動腕部19の当接部19aと当接する(図5)。この状態からホルダ本体12をさらに収納部26へと押し込むと、コイルスプリング14の可動腕部19が付勢に抗して、腕部18,19間の角度が縮小される巻き込み方向(図5中の時計回り方向)へと、規制部48から離反されて回動スペーサ部49上を摺接しながら後方に回動する。そして、ホルダ本体12の後部に突出するストライク部74が、嵌合開口部45から収納部26内に突出するロック機構13のアーム82,82間に挿入され、さらにホルダ本体12を後方に押し込むと、ストライク部74がアーム82,82を筐体81内へと押し込み、アーム82,82が閉じて係止爪部74a,74aを両側から保持して係止した状態でロック機構13がホルダ本体12をロックする(図6)。したがって、ホルダ本体12は、コイルスプリング14によって前方に向けて付勢力が与えられた状態のままロック機構13によって収納部26に収納保持される。この状態で、操作部63が開口部28を覆って乗員側に露出している。
また、ホルダ本体12を本体ケース11から引出す際には、図6に示す収納状態から操作部63を後方に押し込むと、ホルダ本体12がロック機構13の付勢手段に抗して後方へと押し込まれることで、ロック機構13のラッチ機構によるアーム82,82の保持が解除され、アーム82,82が前方へと突出して開き、ストライク部74の係止爪部74a,74aの係止を解除する。このため、コイルスプリング14の可動腕部19が巻き戻し方向へと、回動スペーサ部49上を摺接しながら規制部48と当接するまで前方に回動することで、可動腕部19の当接部19aと後板部67が当接しているホルダ本体12が前方へと押し出され、ガイド部31,31上を摺接して前方へとスライドして本体ケース11から前方に突出する。そして、乗員などが、本体ケース11の開口部28から前方へと突出したホルダ本体12の操作部63を前方へと引出すと、保持孔部71が本体ケース11から前方に露出し、ストッパ部75がストッパ凹部36に当接する位置でホルダ本体12が本体ケース11に対して仮係止される。この状態で、乗員などは、カップCの下端側を保持孔部71に挿入すると、支持体62が付勢に抗して後方へと移動し、保持孔部71の前縁部と支持体62との間でカップCの下側の外側面部が前後に挟持されるとともに、カップCの下部が支持板部68及び当接支持部68aによって支持され、カップCがカップホルダ10に保持される。
このように、本実施の形態では、底面部21の一方の側壁部22(隔壁部30)及び端壁部25に近接した位置に、コイルスプリング14の本体部17に挿入されてこの本体部17を係止する本体係止部47を設けるとともに、固定腕部18を保持する保持部46に、端壁部25側にて本体係止部47の突出方向と同方向に沿って固定腕部18を挿入可能なスリット53を設けることで、コイルスプリング14を組み付ける際に、コイルスプリング14を撓ませることなく本体部17を本体係止部47に係止するとともに固定腕部18をスリット53から保持部46へと挿入した後、この固定腕部18の保持を利用しながら可動腕部19を固定腕部18との角度が縮小される巻き込み方向に回動させて撓ませて規制部48に係止できる。すなわち、コイルスプリング14の組み付け作業を、コイルスプリング14を自然状態のまま固定腕部18をスリット53(保持部46)へ挿入するとともに本体部17に本体係止部47を挿入させる作業と、可動腕部19を撓ませて規制部48に係止する作業とに分割できる。しかも、コイルスプリング14は、回動規制部52及び保持開口部51により保持されている固定腕部18を支点として可動腕部19のみを撓ませればよく、片手で作業できる。したがって、コイルスプリング14を撓ませて強い反力を保持した状態を維持したまま本体部17、固定腕部18及び可動腕部19を同時に組み付ける必要がなく、一方の側壁部22(隔壁部30)及び端壁部25に近接しコイルスプリング14を撓ませるための作業スペースが比較的狭い位置であっても、コイルスプリング14を本体ケース11に容易に組み付けできる。
また、規制部48は、スリット53に対して固定腕部18と可動腕部19との所定の開き角度よりも小さい所定の角度をなす方向に沿うため、コイルスプリング14の可動腕部19を面状に確実に係止でき、コイルスプリング14の組み付けの作業性がより向上する。
さらに、スリット53の縁部に、このスリット53に挿入される固定腕部18を第1係止部へと導くガイドリブ54を突設することで、固定腕部18をスリット53に対してより容易かつ確実に挿入でき、コイルスプリング14の組み付けがより容易になる。
なお、上記の一実施の形態において、ホルダ本体12は、左右一対としたが、例えば上下に配置してもよいし、前後方向だけでなく、例えば上下方向に沿って長手方向を有するように配置してもよい。
また、ホルダ本体12は、本体ケース11に対して、3つ以上配置してもよいし、1つでもよい。
さらに、上記の引出し装置の構造は、カップホルダ10に限らず、例えば小物入れや灰皿などの車両の内部に備えられる任意の引出し装置、あるいは、車両以外のものに用いる任意の引出し装置とすることができる。