JP6027995B2 - セラミックス製品の製造方法及びセラミックス製品 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミックス製品の製造方法及びセラミックス製品に関するものであり、特に、釉薬層に析出させた結晶により形成された模様を有するセラミックス製品の製造方法及びセラミックス製品に関するものである。
従来より、タイル、飲食器、花器等のセラミックス製品には、その表面にガラス質の釉薬層を有するものが多種存在し、釉薬層により、製品の強度、製品表面の硬度、耐摩耗性、耐薬品性等の製品特性を向上させ、さらには、セラミックス製品に装飾を施し、美しい外観を付与している。
また、釉薬層による装飾技法の一つとして、結晶釉による装飾が知られている。この技法は、セラミックス製品の素地に結晶釉を施し、得られた施釉品の施釉面上に、焼成によって核体となる核形成体を付着し、核形成体付着済の施釉品を焼成する際、特に冷却過程を制御することにより、釉薬の融液相中に融けている特定の成分を核形成体由来の核体を起因として析出させ、析出した結晶を肉眼での観察が可能な程度の大きさに成長させることで、結晶による模様が発現するようにしたものである。
このような結晶釉としては、その配合中に亜鉛華(ZnO)を含有する亜鉛結晶釉、ドロマイト(CaCO3・MgCO3)を含有するジオプサイド結晶釉、チタニア(TiO2)を含有するチタン結晶釉、骨灰(3CaO・P23)を含有する骨灰・酸化鉄結晶釉が知られている。
また、同様の技法として、下記特許文献1には、陶磁器の釉薬表面に加飾剤となる二酸化チタン水溶液を付着し、曜変核加飾剤の部分を核として、その周辺部位に光彩を含む曜変紋様を発生させたことを特徴とする曜変紋様陶が開示されている。
このように、これら技法は、いずれも模様形成に核体(融液体中から結晶が析出する際、微結晶が生成する最初のきっかけとなるもの)が不可欠である。つまり、上記の技法は、釉薬組成を焼成に対する安定性の低いものとすることにより、釉薬層に変化を生じさせるものであるから、変化発生(結晶発生)の有無についても不安定であり、確実に結晶を発生させ模様を形成するためには、起因となる核体が必要となる。
特開2009−196875号公報
しかし、釉薬表面に核形成体を付着させるためには、例えば、核形成体の粉末または粒塊を水中に懸濁させ(例えば、Na−CMC(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)等のバインダーを添加した水中に懸濁させる)、この懸濁液を刷毛、スポンジ等の吸水体に含ませ、これを施釉面に付着させればよいが、釉薬表面に核形成体を付着させることを不可欠とした模様形成方法では、核形成体の付着作業の機械化が困難で、主に手作業に頼ることとなるため、製造に手間が掛かりコスト高であった。
また、模様の全体観は、結晶の数量、結晶の大きさ、結晶の密度(単位面積当たりの結晶の数)等の結晶の析出状態により、大きく左右されるが、上記の核形成体の付着方法では、結晶の析出状態を平準化して、同様の全体観を有する製品を再現性よく安定して得ることが困難であった。
そこで、本発明は、釉薬層に析出した結晶により形成された模様を有するセラミックス製品を低コストで製造でき、かつ、同様の全体観を有する製品を再現性よく安定して得ることができるセラミックス製品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、セラミックス質の基材と、基材表面の少なくとも一部分に積重形成されたガラス質の釉薬層と、釉薬層に析出させた結晶で、模様を形成している結晶と、を有するセラミックス製品の製造方法であって、焼成によって核体を形成する核形成体で、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する核形成体を形成する第1工程と、焼成によって基材となる基材形成体で、その被施釉面に結晶釉が施される基材形成体を形成する第2工程で、坏土と、第1工程で形成した核形成体と、を配合して成形することにより、坏土を由来とする素地部と、素地部の中に複数散在している核形成体と、を有する基材形成体で、核形成体の一部が被施釉面に表出している基材形成体を形成する第2工程と、焼成によって釉薬層となる結晶釉で、析出させる結晶に含有される金属を含有する結晶釉を基材形成体の被施釉面に施す第3工程と、第3工程で得られた施釉品を焼成する第4工程で、基材形成体が焼結されるとともに、結晶釉が融解する温度以上の温度まで昇温し、当該最高温度を保持する第1ステップと、第1ステップでの最高温度から、結晶が析出する温度範囲まで降温し、当該結晶析出温度範囲を保持することにより、核形成体由来の核体を起因として、結晶釉に含有の成分から生成した結晶を析出させ、結晶を熟成して模様を発現させる第2ステップと、を有する第4工程と、を有することを特徴とする。
第1の構成のセラミックス製品の製造方法においては、2種以上の被配合物を配合して成形する、との従前から行われている簡単な方法で本発明を実施でき、このような方法は、機械化が容易であり、作業の機械化により、製造コストの低減を図ることができる。また、作業の機械化により、複数の基材形成体間における核形成体の散らばり具合が平準化されるため、製品間で全体観が大きく異なることがなく、同様の全体観を有するセラミックス製品を再現性よく安定して得ることができる。また、製造されたセラミックス製品においては、釉薬層に均質分布された複数の結晶による模様を有することにより、従来品とは異なる新たな風合い、趣を提供することができる。
また、第2には、上記第1の構成において、核形成体が釉薬原料粉体から造粒した粉粒体であり、坏土が坏土粉であり、基材形成体が前記粉粒体と、前記坏土粉と、を配合して成形した成形体であることを特徴とする。
第2の構成のセラミックス製品の製造方法においては、被配合物がともに粉状であるので、核形成体と坏土粉とを均質に混合して乾式加圧成形をすることができ、これにより、核形成体が、基材形成体の被施釉面の全体に、より均質に分布されるため、釉薬層の全体に結晶による模様が、より均質に分布されたセラミックス製品を得ることができる。
また、未焼成の核形成体と、未焼成の結晶釉とが接触した状態で焼成されることから、焼成中に相互に影響されて、結晶がより析出し易く、結晶の成長が促進される。
なお、第2−1の構成として、上記第2の構成において、釉薬原料粉体が、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する釉薬原料粉と、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有しない釉薬原料粉と、を配合した混合粉体であるとしてもよい。このセラミックス製品の製造方法においては、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する釉薬原料粉による単一体の場合よりも、核形成体の焼成中の挙動(融解の開始、融解の速度、結晶釉に及ぼす影響等)が安定するため、焼成過程の結晶析出温度、保持時間などの設定により、結晶の析出を制御し易くなり、このことにより、製品品質がより安定する。
また、上記第1又は第2又は第2−1の構成のセラミックス製品の製造方法において、析出させる結晶に含有される金属が亜鉛であるとしてもよい。よって、亜鉛の供給源として、亜鉛華を利用することができ、亜鉛華は品質の安定した釉薬原料であるため、結晶の析出状態がさらに安定する。
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、上記第3工程において、結晶釉をシート状に成形して釉薬シートを作製し、当該釉薬シートを基材形成体の被施釉面に貼り付けることにより、結晶釉を基材形成体の被施釉面に施すことを特徴とする。
第3の構成のセラミックス製品の製造方法においては、変則的な施釉についての対応が容易である。例えば、釉薬層を基材表面の複数の箇所に分散させて部分的に形成したい場合には、釉薬シートを切断して、釉薬層を形成したい上記各箇所(被施釉面)の形状と略同形状の釉薬シート切片を形成し、この釉薬シート切片を上記各被施釉面に貼り付けるだけで、確実かつ簡単に、複雑な施釉に対応することができ、これにより、釉薬層部分と非釉薬層部分とが混在し、釉薬層部分には析出結晶による模様が存在している独特のテクスチャーを創出することができる。
また、第4には、セラミックス質の基材と、基材表面の少なくとも一部分に積重形成されたガラス質の釉薬層と、釉薬層に析出して模様を形成している結晶と、を有するセラミックス製品であって、基材中に、析出した結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する粒塊が複数散在し、上記模様が、基材中の粒塊における釉薬層と接した粒塊と釉薬層との接点又はその近傍を中心に放射状に拡がっていることを特徴とする。
第4の構成のセラミックス製品においては、上記第1の構成のセラミックス製品の製造方法により得られることから、製造コストの低減を図ることができるとともに、同様の全体観を有するセラミックス製品を再現性よく安定して得ることができ、また、模様を形成するための主原料として、品質が安定している亜鉛華を利用することにより、製品品質をさらに安定させることができる。
また、第5には、上記第4の構成において、析出した結晶に含有される金属が亜鉛であり、上記結晶の主成分が、ウィレマイト(2ZnO・SiO2)であることを特徴とする。
なお、上記各構成において、セラミックス製品としては、セラミックス製のタイル、セラミックス製の飲食器、セラミックス製の花器等が挙げられる。
また、他の構成として、以下の構成としてもよい。すなわち、「セラミックス質のタイル基材と、タイル基材の表側の面部に積重形成されたガラス質の釉薬層と、釉薬層に析出させた亜鉛結晶で、模様を形成している亜鉛結晶と、を有するセラミックスタイルであって、その製造工程において、亜鉛華の粉末と、その他の釉薬原料粉と、を配合し造粒して核形成体を形成し、この核形成体と、坏土粉と、を配合して成形することにより、坏土粉を由来とする素地部と、素地部の中に複数散在している核形成体と、を有する成形体を作製し、当該成形体の表側の面部に、亜鉛華を含有させて調製した亜鉛結晶釉を施し、当該施釉品を加熱し、成形体が焼結されるとともに、亜鉛結晶釉が融解する温度以上の温度まで昇温し、当該最高温度を保持した後、亜鉛結晶が析出する温度範囲まで降温し、当該結晶析出温度範囲を保持することにより、核形成体由来の核体を起因として、亜鉛結晶釉に含有の成分から生成した亜鉛結晶を析出させ、亜鉛結晶を熟成して模様を発現させるようにした、ことを特徴とするセラミックスタイル。」としてもよい。
上記他の構成のセラミックスタイルにおいては、釉薬層に均質分布された複数の結晶による模様を有するタイルにより、従来のタイル張り面(タイル張りの壁面、タイル張りの床面等)とは異なる新たな風合い、趣を有するタイル張り面を構築することができる。
本発明に基づくセラミックス製品の製造方法及びセラミックス製品によれば、2種以上の被配合物を配合して成形する、との従前から行われている簡単な方法で本発明を実施でき、このような方法は、機械化が容易であり、作業の機械化により、製造コストの低減を図ることができる。また、作業の機械化により、複数の基材間における核形成体の散らばり具合が平準化するため、製品間で全体観が大きく異なることがなく、同様の全体観を有するセラミックス製品を再現性よく安定して得ることができる。
また、本発明に基づくセラミックス製品によれば、釉薬層に均質分布された複数の結晶による模様を有することにより、従来品とは異なる新たな風合い、趣を提供することができる。
本発明に基づくセラミックス製品(実施例1)の要部を示す写真であり、釉薬層に発現した模様の一例を示す写真である。 本発明に基づくセラミックス製品(実施例2)の要部を示す写真であり、釉薬層部分と、非釉薬層部分とにより構成された模様の一例を示す写真である。 本発明に基づくセラミックス製品の製造工程を示すフローチャートである。 基材形成体の平面図である。 図4のA−A断面要部拡大図である。
本発明においては、釉薬層に析出させた結晶により形成された模様を有するセラミックス製品を低コストで製造でき、かつ、同様の全体観を有する製品を再現性よく安定して得ることができるセラミックス製品の製造方法を提供するという目的を以下のようにして実現した。
本発明に基づくセラミックス製品は、セラミックス質の基材と、基材表面の少なくとも一部分に積重形成されたガラス質の釉薬層と、釉薬層に析出させた結晶C(図1、図2を参照)で、模様を形成している結晶Cと、を有するものである。なお、具体的には、結晶Cは、釉薬層内に析出している。なお、図1、図2において、引出し線により指示される結晶は、図面に表れている多数の結晶のうちの一部のみである。
ここで、セラミックス製品とは、主にセラミックス製のタイルであり、また、セラミックス製の飲食器、セラミックス製の花器等でもよく、例えば、セラミックス製のタイルの場合には、基材の表側の面部(壁下地、床下地等の被施工面に接着される側の面部とは、反対側の面部)に釉薬層が形成されている。
本実施例のセラミックス製品の製造方法を図3を使用して説明する。まず、核形成体を形成する(核形成体の形成工程である第1工程S11)。つまり、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する釉薬原料粉と、その他の釉薬原料粉(析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有しない釉薬原料粉)とを配合し、得られた混合粉体(釉薬原料粉体)を造粒し、粉粒体状に形成された核形成体を得る。なお、ここで粉粒体とは、粉体の一次粒子(他の粒子が全く付着していない1固体の粒子)が複数凝集した集合体のことである。
造粒方法としては、上記混合粉体をボールミルに投入し、これに水を加え、混合撹拌して、得られたスラリーを乾燥し、当該乾燥体を粗粉砕後、目標の最大粒径と同一目開きの篩から押し出し、また、押し出された粗粉砕物を、目標の最小粒径と同一目開きの篩で分級し、篩い上(篩を通らないもの)を核形成体として回収する。
また、造粒方法については、上記方法に代えて、噴霧乾燥機(スプレードライヤ)を用いたり、撹拌羽根式の粉体混合撹拌機を用いて、核形成体を作製するようにしてもよい。
噴霧乾燥機とは、スラリー等の被乾燥物を熱風中に噴霧し、被乾燥物の微細な飛沫から水分を瞬間的に奪って粉粒体状の乾燥物を得ることができる乾燥機で、この噴霧乾燥機により、釉薬原料粉体のスラリーを熱風中に噴霧し、得られた乾燥物を篩により分級し、目標の粒子径の粉粒体を回収して、核形成体とすればよい。
また、撹拌羽根式の粉体混合撹拌機とは、容器体と、容器体の内側に設けられた撹拌部で、回転可能な軸部と軸部から放射状に連設された複数の撹拌羽根とを有する撹拌部と、撹拌部の軸部を支持して回転させるための駆動部とを有するもので、この粉体混合撹拌機の容器体に乾燥した釉薬原料粉体を投入して、混合撹拌するとともに、少量の水分を撹拌中の釉薬原料粉体に加えることにより、釉薬原料粉体の粉粒体を形成し、得られた粉粒体を篩により分級し、目標の粒子径の粉粒体を回収して、核形成体とすればよい。
また、上記のように造粒された粉粒体をそのまま核形成体とはせず、粉粒体を適宜温度(粉粒体が緻密に焼結したり、ガラス化しない程度の温度)で仮焼して、半焼結させ、当該半焼結体を核形成体としてもよい。
なお、釉薬原料粉体を上記のような混合粉体はでなく、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する釉薬原料粉の一種のみの単一粉体としてもよく、その場合も混合粉体の場合と同様に造粒すればよい。
ここで、釉薬原料粉が、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有するとは、釉薬原料粉が、結晶釉から析出させようとする化合物(結晶)の成分元素である金属元素と同一の金属元素を成分とする化合物を主成分としている、または、含有している、ということである。
つまり、析出させる結晶が亜鉛(Zn)を含有する結晶であれば、亜鉛(Zn)を含有する釉薬原料粉、例えば、亜鉛華(ZnO)粉等であり、析出させる結晶がカルシウム(Ca)を含有する結晶であれば、カルシウム(Ca)を含有する釉薬原料粉、例えば、石灰(CaCO3)粉、珪灰石(CaSiO3)粉、ドロマイト(CaCO3・MgCO)粉等であり、析出させる結晶がマグネシウム(Mg)を含有する結晶であれば、マグネシウム(Mg)を含有する釉薬原料粉、例えばドロマイト(CaCO3・MgCO)粉、タルク(3MgO・4SiO2・H20)粉等であり、析出させる結晶がチタン(Ti)を含有する結晶であれば、チタニア(TiO2)粉等である。
また、その他の釉薬原料粉とは、析出させる結晶が含有する金属を含有しない釉薬原料粉であり、析出させる結晶が含有する金属が亜鉛ならば、例えば、石灰、珪灰石、長石(Na,K,Ca,Ba)(Si,Al)48)、アルミナ(Al23)、珪石(SiO2)等であり、析出結晶が含有する金属がカルシウムならば、例えば、長石、アルミナ、珪石等であり、析出結晶が含有する金属がマグネシウムならば、例えば、石灰、珪灰石、長石、アルミナ、珪石等であり、析出結晶が含有する金属がチタニアならば、例えば、石灰、珪灰石、長石、アルミナ、珪石等である。
このように、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する釉薬原料粉と、その他のセラミックス原料粉と、を配合することにより、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する釉薬原料粉の単一体の場合よりも、核形成体の焼成中の挙動(融解の開始、融解の速度、結晶釉に及ぼす影響等)が安定し、結晶の析出を制御し易くなる。
次に、基材形成体を形成する(基材形成体の形成工程である第2工程S12)。つまり、坏土粉と、前工程(S11)で形成した複数の核形成体と、を配合して成形し、成形体(基材形成体)を作製する。
上記坏土は、一般的なセラミックス製品、例えば、セラミックス製のタイル、セラミックス製の飲食器、セラミックス製の花器等の坏土と同様のものである。つまり、陶石、蝋石、長石、石灰、珪灰石、粘土、カオリン、珪石、アルミナ等のセラミックス原料の中から1種又は2種以上を選択して配合し、当該配合物をボールミル等により粉砕混合して調製したものである。
坏土中のセラミックス原料の配合比率については、後工程での焼成温度、成形体(基材形成体)の熱膨張係数、組み合わせる結晶釉の熱膨張係数等の諸条件を考慮し、適宜決定すればよい。
このように、坏土と、核形成体と、を配合して成形することにより、図4、図5に示すように、製品の素地形状に成形された坏土(素地部)20の中に核形成体30が複数散在し、散在している核形成体30の一部が成形体の被施釉面に表出している。
また、粉粒体状の核形成体と坏土粉とは、均質に混合することが容易であり、これにより、核形成体が成形体中に均質に分散され、その被施釉面においては、表出した核形成体が均質に分布することとなる。
また、核形成体は、焼成によって核体となり、結晶の析出を誘発するものであるため、基材形成体の被施釉面に表出している核形成体の数量は、析出する結晶の数量に影響し、ひいては結晶により形成される模様の全体観に影響する。よって、坏土と、核形成体との配合割合については、目的とする模様の全体観を考慮し、適宜決定すればよい。
なお、基材を多層構造にしてもよく、例えば、二層構造のタイル基材の場合には、裏側(下側)層を形成する坏土に核形成体を配合せず、表側(上側)層にのみ核形成体を配合することにより、単層の基材の場合と比べて、より少ない数量の核形成体により、同等の結晶模様を形成することができる。
また、上記のように成形された成形体をそのまま基材形成体とはせず、成形体を適宜温度(成形体が緻密に焼結したり、ガラス化しない程度の温度)で締め焼きして、得られた焼き締め素地を基材形成体としてもよい。
次に、前工程(S12)で形成した基材形成体の被施釉面に結晶釉を施す(施釉工程である第3工程S13)。結晶釉としては、その配合中に亜鉛華(ZnO)を含有する亜鉛結晶釉、ドロマイト(CaCO3・MgCO3)を含有するジオプサイド結晶釉、チタニア(TiO2)を含有するチタン結晶釉、骨灰(3CaO・P23)を含有する骨灰・酸化鉄結晶釉等が挙げられる。つまり、結晶釉は、析出させようとする結晶に含有される金属を含有するものであり、例えば、析出させる結晶が亜鉛(Zn)を含有する結晶であれば、亜鉛華(ZnO)を含有する亜鉛結晶釉とし、析出させる結晶がカルシウム(Ca)を含有する結晶であれば、ドロマイト(CaCO3・MgCO3)を含有するジオプサイド結晶釉や骨灰(3CaO・P23)を含有する骨灰・酸化鉄結晶釉とし、析出させる結晶がマグネシウム(Mg)を含有する結晶であれば、ドロマイト(CaCO3・MgCO3)を含有するジオプサイド結晶釉とし、析出させる結晶がチタン(Ti)を含有する結晶であれば、チタニア(TiO2)を含有するチタン結晶釉とする。
これら各釉の配合原料としては、亜鉛結晶釉については、長石、石灰、亜鉛華、珪石等が挙げられ、ジオプサイド結晶釉については、長石、ドロマイト、珪石等が挙げられ、チタン結晶釉については、長石、石灰、亜鉛華、カオリン、珪石、チタニア等が挙げられ、骨灰・酸化鉄結晶釉については、長石、タルク、炭酸バリウム、カオリン、珪石、骨灰等が挙げられる。
各結晶釉中の原料配合比率については、上記坏土の場合と同様に、焼成条件、組み合わせる基材形成体の熱特性等を考慮し、適宜決定すればよい。
なお、施釉方法については、例えば、スプレー法、ウォーターフォール法等の従来の施釉方法を適用できるが、これらに代えて、釉薬シートを用いるようにしてもよい。
釉薬シートとは、結晶釉を水中に懸濁させたスラリーに水溶性のバインダーを添加し、これを混合撹拌してシート形成用スラリーを調製し、このシート形成用スラリーをドクターブレード法によりシート状に成形した後、乾燥して水分を除去したものである。つまり、釉薬シートとは、結晶釉をシート状に成形したものであり、結晶釉を構成している一次粉子同士は、バインダーにより結着されている。
施釉の際には、釉薬シートを基材形成体の被施釉面に貼り付ければよく、釉薬シートに含有されるバインダーにより、釉薬シートを基材形成体に強く押し付けるだけで圧着可能な場合は、そのようにすればよく、また、Na−CMC水溶液等の適宜糊剤を介して貼り付けるようにしてもよい。
また、この釉薬シートによる施釉は、変則的な施釉についての対応が容易である。例えば、釉薬層を有するタイルの場合、一般的に釉薬層は基材の表側の面部(壁下地、床下地等の被施工面に接着される面部とは、反対側の面部)の全領域に形成されているが、例えば、釉薬層を基材表側面部の一部分にのみ形成したい場合、従来の施釉方法においては、基材表側面部の釉薬層を形成したい部分(被施釉面)を除いた部分を剥離紙等でマスキング処理した後、施釉を行い、その後、剥離紙を取り除いて焼成する必要がある。つまり、従来の方法では、手間が掛かるだけでなく、剥離紙を取り除く際、施釉済み釉薬の一部が剥落して欠点が発生することもある。そこで、本発明においては、釉薬シートを利用することにより、上記のような手間が掛からず、また、上記欠点の発生を防止することもできる。
つまり、釉薬シートを切断する等して、被施釉面と略同一の形状に調製した釉薬シートの切片(これを「釉薬シート切片」とする)を被施釉面に貼り付け、釉薬シート切片貼り付け済みの基材形成体を焼成するだけで、基材の表側の面部の一部分にのみ釉薬層が形成されたタイルを得ることができる。
また、例えば、焼成呈色が異なる複数種類の釉薬シート切片(つまり、顔料を含有させた、複数の釉薬シートの切片で、各釉薬シートに含有させた顔料の配合が異なる複数種類の釉薬シートの切片)を作製し、各釉薬シート切片を基材の所望の箇所に貼り付ければ、色彩の異なる釉薬層が所望の形態で配列され、また各釉薬層においては、結晶が析出して模様が発現しており、つまり、この施釉方法によれば、従来品にはない独特のテクスチャーを有するセラミックス製品を容易に製造することができる。
次に、前工程(S13)で得られた施釉品を焼成する焼成工程(第4工程S14)について説明する。まず、基材形成体が焼結されるとともに、結晶釉が融解する温度以上の温度まで昇温し、当該最高温度を保持する(第1ステップ)。次に、前記最高温度から、結晶が析出する温度範囲まで降温し、当該結晶析出温度範囲を保持する(第2ステップ)。最後に、常温まで降温する(第3ステップ)。
ここで、結晶の析出について、亜鉛結晶釉の場合を例に説明する。以上のように焼成することにより、亜鉛結晶釉中に過剰に含まれていた亜鉛華は、上記第1ステップでは融解液中に融け込み、また、基材形成体の被施釉面に散在していた核形成体についても、同様に融解する。
なお、上記の「過剰に含まれていた亜鉛華」とは、亜鉛結晶釉が焼成される温度で亜鉛結晶釉が融解するのに必要とされる亜鉛成分量を供給するのに必要な亜鉛華量を超えて含まれていた亜鉛華であり、亜鉛結晶釉が融解するのに必要とされる亜鉛成分量とは、当該焼成温度と、亜鉛結晶釉中の亜鉛以外の成分、例えば、カリウム成分、ナトリウム成分、カルシウム成分等の亜鉛成分以外の融剤成分、アルミナ成分、シリカ成分等からゼーゲル式を利用して算出され得る亜鉛成分の必要量のことである。
そして、第2ステップで温度が下げられることにより、釉薬融液相中の亜鉛は過飽和状態となり、特に核形成体が散在していた部位では、核形成体に由来の融解亜鉛により、他の部位に比べて亜鉛濃度が局所的に高く、この亜鉛濃度が局所的に高い部位(核体)は、他の部位より結晶が析出し易い。
よって、まず、核体部位にて極微細な結晶(ウィレマイト:2ZnO・SiO2)が析出し、これを芯とし、続いて結晶釉に由来の亜鉛が、先に析出した結晶(芯)表面にて生成され、これが連続し、結晶は核体を中心に放射状に成長する。なお、結晶は、釉薬層に析出するが、具体的には、釉薬層の内部に析出する。
つまり、第2ステップで結晶析出温度範囲を保持することにより、核体を起因として析出した結晶は熟成され、肉眼で観察される大きさの模様を発現する。
なお、核形成体における基材形成体の被施釉面に表出していた部分と、核形成体における基材形成体中に埋没していた部分とは、焼成工程(第4工程S14)における挙動が異なり、また、核形成体の融点が、焼成工程の第1ステップでの最高温度以下(低融点)であるのか、第1ステップでの最高温度超過(高融点)であるのかによって、核形成体の挙動、結晶析出に及ぼす影響が異なる。
まず、低融点の核形成体の場合について説明すると、低融点の核形成体は、焼成工程の第1ステップで、核形成体の全体が融解し、第2ステップで、基材形成体の被施釉面に表出していた部分は、上記のように、核体を形成し、結晶釉から結晶を析出させるとともに、核体自身からも結晶を析出させる。
つまり、結晶釉に由来の亜鉛を成分とする化合物が生成して結晶化するとともに、核体に由来の亜鉛を成分とする化合物が生成して結晶化し、結晶釉に由来の結晶と核体に由来の結晶とが一体化して成長する。
また、核形成体が含有する成分で、結晶化する化合物の生成に関与しない成分は、第3ステップで、固化し、ガラス化して釉薬層と一体となり、このことにより、基材形成体の被施釉面に表出していた部分の含有成分で、結晶化する化合物の生成に関与しない成分は、視認できなくなり、模様をより美しく見せることができる。
また、低融点の核形成体における基材形成体中に埋没していた部分は、第1ステップでは、上記のように融解し、第2ステップ及び第3ステップで温度が下げられることにより、固化して、ガラス質の粒塊を形成する。なお、基材の表面から一部が露出した核形成体における結晶の生成に関与しない部分については、露出した部分がガラス化して釉薬層の一部を形成する(なお、基材の表面から一部が露出した核形成体における結晶の生成に関与する部分については、結晶化している)。よって、該露出した部分の内側の(つまり、基材中の)ガラス化した粒塊は釉薬層と接しているといえる。
つまり、低融点の核形成体により製造した場合、焼成後の基材中には、核形成体がガラス化した粒塊が複数散在し(つまり、基材中に、析出した結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する粒塊が複数散在する)、そのなかでも釉薬層の直下に存在する粒塊では、その一部が釉薬層と接触しており、この粒塊と釉薬層との接点またはその近傍を中心に放射状に拡がるように、結晶が成長し、模様が発現しており、このように形成された模様を有していることにより、放射状の模様が釉薬層における最深部側(基材側)に形成され、釉薬層に立体感や深味が増し、視覚的訴求効に優れたテクスチャーが創出される。
次に、高融点の核形成体の場合について説明する。焼成工程の第1ステップ及び第2ステップで、核形成体全体の焼結が進行することとなるが、基材形成体の被施釉面に表出していた部分においては、核形成体に含有される亜鉛(または、核形成体に含有される亜鉛と、その周囲の亜鉛以外の成分の一部と)が、融解状態の結晶釉と接触することにより融解し、融解した亜鉛が核形性体から供給されることにより、融解状態の結晶釉中には、亜鉛濃度が局所的に高い部位(核体)が形成される。
このように、融解状態の結晶釉中に亜鉛濃度が局所的に高い部位が存在しているとともに、融解状態の結晶釉中に融解していない微小固体(核形成体の亜鉛以外の成分を主成分として焼結したもの)が存在していることにより、亜鉛濃度が高い部位と、上記微小固体との界面では、結晶が析出し易くなり、上記の低融点の核形成体の場合と同様に、結晶釉に由来の亜鉛を成分とする化合物が生成して結晶化するとともに、核体に由来の亜鉛を成分とする化合物が生成して結晶化し、結晶釉に由来の結晶と核体に由来の結晶とが一体化して成長する。
また、核形成体が含有する成分で、結晶化する化合物の生成に関与しない成分は、微小焼結体(上記微小固体)として、模様の中心に残存することとなる。
また、核形成体における基材形成体中に埋没していた部分は、第1ステップ及び第2ステップで焼結され非ガラス質(セラミックス質と考えられる)の粒塊を形成する。なお、基材の表面から一部が露出した核形成体における結晶の生成に関与しない部分については、露出した部分が非ガラス質として釉薬層の一部を形成する(なお、基材の表面から一部が露出した核形成体における結晶の生成に関与する部分については、結晶化している)。よって、該露出した部分の内側の(つまり、基材中の)非ガラス質の粒塊は釉薬層と接しているといえる。
つまり、高融点の核形成体により製造した場合、焼成後の基材中には、核形成体は非ガラス質の粒塊として複数散在し(つまり、基材中に、析出した結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する粒塊が複数散在する)、そのなかでも釉薬層の直下に存在する粒塊では、その一部が釉薬層と接触しており、この粒塊と釉薬層との接点またはその近傍を中心に放射状に拡がるように、結晶が成長し、模様が発現しており、このように形成された模様を有していることにより、放射状の模様が釉薬層における最深部側(基材側)に形成され、釉薬層に立体感や深味が増し、視覚的訴求効に優れたテクスチャーが創出される。
なお、結晶は核体が存在しないと全く析出しないというわけではなく、核体が釉薬融液相中に存在しない場合でも、例えば、結晶釉の組成、焼成条件を最適に整えれば結晶は析出し、熟成時間を長く取れば、結晶は肉眼観察できる程の大きさにまで成長する。しかし、この場合、焼成条件の僅かなズレにより、結晶が析出する確率が著しく低下し、また結晶を成長させるのに長時間を要する。そこで、本発明においては、核形成体に由来の核体により、結晶を確実に析出させるとともに、結晶の成長速度を高めるのであり、結晶が確実に析出することにより、製品歩留まりが向上し、結晶が短時間で成長することにより、焼成時間を短縮して、燃料費を削減し、製造コストの低廉化を図ることができる。
次に、実施例を示し本発明について更に詳細に説明する。
まず、亜鉛華の粉体、長石の粉体、及び水をボールミルに投入し、混合撹拌して、適宜粒度まで細磨し、釉薬原料粉体のスラリーを作製した。亜鉛華の粉体と長石の粉体との配合比率については、釉薬原料粉体の全体に対して、重量比で、亜鉛華の粉体が66.7重量%、長石の粉体が33.3重量%とした。
次に、上記の釉薬原料粉体スラリーを乾燥し、得られた乾燥体を粗粉砕後、目開き0.5mmの篩から押し出し、最小粒径については目標を設定せず、篩を通ったもの全てを核形成体として回収した。
次に、スプレードライヤにより造粒された、磁器質タイル用の坏土粉と、上記核形成体とを配合し、当該配合物を回転ドラム式ミキサーにより混合した後、タイル成形用の金型を用いて乾式加圧成形し、得られた成形体(タイル生地)を基材形成体とした。坏土粉と核形成体との配合比率については、重量比で、坏土粉の全体100重量%に対して、核形成体が0.3重量%とした。
そして、スプレー法により、上記タイル生地の被施釉面に結晶釉を施し、当該施釉品を焼成して、析出結晶による模様を有するタイルを得た。結晶釉の配合については、結晶釉の全体に対して、重量比で、亜鉛華が23.8重量%、長石が47.6重量%、石灰が9.5重量%、珪石が14.3重量%、炭酸バリウムが4.8重量%とした。
また、焼成条件については、常温から、基材形成体が焼結されて磁器化するとともに、結晶釉が融解する温度以上の温度である1240℃まで昇温し、当該最高温度を1.5時間保持した後、結晶が析出する温度範囲の温度である1120℃まで降温し、当該温度を3時間保持した後、常温まで降温した。
本実施例により得られたタイルにおいては、図1に示すように、釉薬層が基材表側面部の全領域に形成され、析出させた結晶が釉薬層の全域に略均質に分散していて、結晶により形成された模様が釉薬層の全域に発現していた。
まず、亜鉛華の粉体、長石の粉体、及び水をボールミルに投入し、混合撹拌して、適宜粒度まで細磨し、釉薬原料粉体のスラリーを作製した。亜鉛華の粉体と長石の粉体との配合比率については、釉薬原料粉体の全体に対して、重量比で、亜鉛華の粉体が66.7重量%、長石の粉体が33.3重量%とした。
次に、上記の釉薬原料粉体スラリーを乾燥し、得られた乾燥体を粗粉砕後、目開き0.5mmの篩から押し出し、最小粒径については目標を設定せず、篩を通ったもの全てを核形成体として回収した。
次に、スプレードライヤにより造粒された、磁器質タイル用の坏土粉と、上記核形成体とを配合し、当該配合物を回転ドラム式ミキサーにより混合した後、タイル成形用の金型を用いて乾式加圧成形し、当該成形体(タイル生地)を締め焼きして、得られたタイル素地を、基材形成体とした。ここでタイル素地とは、後工程の焼成工程(結晶釉中に結晶を析出させるための焼成工程)での最高温度よりも低い温度でタイル生地(成形体)のみを焼成したものである。つまり、タイル素地である基材形成体は、磁器質としては未完全焼結状態で、若干の多孔質性及び吸水性を有している。なお、坏土粉と核形成体との配合比率については、重量比で、坏土粉の全体100重量%に対し、核形成体が0.3重量%とした。
次に、結晶釉を水中に懸濁させたスラリーに水溶性のバインダーを添加し、混合撹拌してシート形成用スラリーを調製し、このシート形成用スラリーをドクターブレード法によりシート状に成形した後、乾燥して釉薬シートを作製した。結晶釉とバインダーとの配合比率については、結晶釉とバインダーとの全体に対して、重量比で、結晶釉が98重量%、バインダーが2%とした。また、結晶釉の配合については、結晶釉の全体に対して、重量比で、亜鉛華が23.8重量%、長石が47.6重量%、石灰が9.5重量%、珪石が14.3重量%、炭酸バリウムが4.8重量%とした。
次に、上記の釉薬シートを切断して、大きさの異なる略三角形状の3つの釉薬シート切片を作製し、各釉薬シート切片を同一のタイル素地の表側の面部にそれぞれ個別に貼り付けることにより、結晶釉を基材形成体に施釉し、当該施釉品を焼成した。焼成の条件としては、常温から、基材形成体が焼結されて磁器化するとともに、結晶釉が融解する温度以上の温度である1240℃まで昇温し、当該最高温度を1.5時間保持した後、結晶が析出する温度範囲の温度である1120℃まで降温し、当該温度を3時間保持した後、常温まで降温した。
本実施例により得られたタイルにおいては、図2に示すように、釉薬層が基材表側面部の3箇所に部分的に形成され、析出させた結晶が各釉薬層の全域に略均質に分散していて、結晶により形成された模様が各釉薬層の全域に発現していた。つまり、結晶により形成された模様が、磁器質タイル表側の複数箇所において、一定範囲内に限定的に発現しており、従来品にはない新たなテクスチャーを有するタイルを得ることができた。なお、図2において、模様が表れていない領域については、結晶釉が施釉されていないので、模様が表れない。
以上のように、本発明に基づくセラミックス製品の製造方法によれば、釉薬層に析出した結晶により形成された模様を有するセラミックス製品の製造を機械化することが容易であり、作業の機械化により、製造コストの低減を図ることができる。
つまり、2種以上の被配合物を配合して成形する、との方法は、機械化が容易であり、このような方法は、従前から行われてきた核形成体の付着方法、つまり、核形成体を水中に懸濁させ、この懸濁液を刷毛、スポンジ等の吸水体に含ませ、これを手作業で施釉面に付着させる、との方法に比べて手間が掛からず、低コストによる製造が可能である。
また、作業の機械化により、上記手作業に比べて、複数の基材形成体間における核形成体の散らばり具合のバラツキが少なく、散らばり具合が平準化されるため、複数の製品間で全体観が大きく異なることがなく、同様の全体観を有するセラミックス製品を再現性よく安定して得ることができる。
また、坏土粉と、粉粒体状の釉薬原料粉体(核形成体)と、を配合して成形体(基材形成体)を成形するようにしたので、被配合物がともに粉状であることにより、核形成体と坏土粉とを均質に混合して乾式加圧成形をすることができ、これにより、核形成体が、基材形成体の被施釉面の全体に、より均質に分布されるため、釉薬層の全体に結晶による模様が、より均質に散在するセラミックス製品を得ることができる。
また、上記成形体に施釉することにより、未焼成の核形成体と、未焼成の結晶釉とが接触した状態で焼成されることから、焼成中に相互に影響されて、結晶がより析出し易く、結晶の成長が促進される。
また、釉薬原料粉体が、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する釉薬原料粉と、その他の釉薬原料粉と、を配合した混合粉体であることことから、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する釉薬原料粉による単一体の場合よりも、核形成体の焼成中の挙動(融解の開始、融解の速度、結晶釉に及ぼす影響等)が安定するため、焼成過程の結晶析出温度、保持時間などの設定により、結晶の析出を制御し易くなり、このことにより、製品品質がより安定する。
また、析出させる結晶に含有される金属が亜鉛であることから、亜鉛の供給源として、亜鉛華を利用することができ、亜鉛華は品質の安定した釉薬原料であるため、結晶の析出状態がさらに安定する。
また、焼成工程において、結晶釉をシート状に成形して釉薬シートを作製し、当該釉薬シートを基材形成体の被施釉面に貼り付けるようにしたので、変則的な施釉についての対応が容易である。例えば、釉薬層を基材表面の複数の箇所に分散させて部分的に形成したい場合には、釉薬シートを切断して、釉薬層を形成したい上記各箇所(被施釉面)の形状と略同形状の釉薬シート切片を形成し、この釉薬シート切片を上記各被施釉面に貼り付けるだけで、確実かつ簡単に、複雑な施釉に対応することができ、これにより、釉薬層部分と非釉薬層部分とが混在し、釉薬層部分には析出結晶による模様が存在している独特のテクスチャーを創出することができる。
また、本発明の製造方法により製造されたセラミックス製品は、釉薬層に均質分布された複数の結晶による模様を有することにより、従来製品とは異なる風合い、趣を醸し出すことができる。
C 結晶
S11 核形成体の形成工程(第1工程)
S12 基材形成体の形成工程(第2工程)
S13 施釉工程(第3工程)
S14 焼成工程(第4工程)
20 素地部
30 核形成体

Claims (5)

  1. セラミックス質の基材と、基材表面の少なくとも一部分に積重形成されたガラス質の釉薬層と、釉薬層に析出させた結晶で、模様を形成している結晶と、を有するセラミックス製品の製造方法であって、
    焼成によって核体を形成する核形成体で、析出させる結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する核形成体を形成する第1工程と、
    焼成によって基材となる基材形成体で、その被施釉面に結晶釉が施される基材形成体を形成する第2工程で、坏土と、第1工程で形成した核形成体と、を配合して成形することにより、坏土を由来とする素地部と、素地部の中に複数散在している核形成体と、を有する基材形成体で、核形成体の一部が被施釉面に表出している基材形成体を形成する第2工程と、
    焼成によって釉薬層となる結晶釉で、析出させる結晶に含有される金属を含有する結晶釉を基材形成体の被施釉面に施す第3工程と、
    第3工程で得られた施釉品を焼成する第4工程で、基材形成体が焼結されるとともに、結晶釉が融解する温度以上の温度まで昇温し、当該最高温度を保持する第1ステップと、第1ステップでの最高温度から、結晶が析出する温度範囲まで降温し、当該結晶析出温度範囲を保持することにより、核形成体由来の核体を起因として、結晶釉に含有の成分から生成した結晶を析出させ、結晶を熟成して模様を発現させる第2ステップと、を有する第4工程と、を有することを特徴とするセラミックス製品の製造方法。
  2. 核形成体が釉薬原料粉体から造粒した粉粒体であり、坏土が坏土粉であり、基材形成体が前記粉粒体と、前記坏土粉と、を配合して成形した成形体であること特徴とする請求項1に記載のセラミックス製品の製造方法。
  3. 上記第3工程において、結晶釉をシート状に成形して釉薬シートを作製し、当該釉薬シートを基材形成体の被施釉面に貼り付けることにより、結晶釉を基材形成体の被施釉面に施すことを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス製品の製造方法。
  4. セラミックス質の基材と、基材表面の少なくとも一部分に積重形成されたガラス質の釉薬層と、釉薬層に析出して模様を形成している結晶と、を有するセラミックス製品であって、
    基材中に、析出した結晶に含有される金属と同一種類の金属を含有する粒塊が複数散在し、
    上記模様が、基材中の粒塊における釉薬層と接した粒塊と釉薬層との接点又はその近傍を中心に放射状に拡がっていることを特徴とするセラミック製品。
  5. 析出した結晶に含有される金属が亜鉛であり、上記結晶の主成分が、ウィレマイト(2ZnO・SiO2)であることを特徴とする請求項に記載のセラミックス製品。
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